(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099646
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】焦点検出装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20230706BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20230706BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20230706BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20230706BHJP
G03B 13/34 20210101ALI20230706BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20230706BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G02B7/04 E
G02B7/08 A
G03B13/36
G03B13/34
H04N23/67
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079962
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2018135198の分割
【原出願日】2018-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】木下 朗
(57)【要約】
【課題】焦点検出の予測の精度を向上させる。
【解決手段】焦点検出装置は、フォーカスレンズを有する光学系を通過した光束により形成された被写体の像を撮像する撮像部と、前記撮像部に配置され、光電変換されて蓄積された電荷に基づく信号を出力する画素と、前記信号に基づいて、前記光学系による像の位置と前記撮像部との位置とのずれ量であるデフォーカス量を算出するデフォーカス算出部と、前記画素が、前記電荷を蓄積する蓄積タイミングを算出するタイミング算出部と、前記フォーカスレンズの位置を取得する取得部と、前記蓄積タイミングでの前記フォーカスレンズの位置と前記デフォーカス算出部が算出した前記デフォーカス量とに基づいて、前記フォーカスレンズの駆動量を演算する演算部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを有する光学系を通過した光束により形成された被写体の像を撮像する撮像部と、
前記撮像部に配置され、光電変換されて蓄積された電荷に基づく信号を出力する画素と、
前記信号に基づいて、前記光学系による像の位置と前記撮像部との位置とのずれ量であるデフォーカス量を算出するデフォーカス算出部と、
前記画素が、前記電荷を蓄積する蓄積タイミングを算出するタイミング算出部と、
前記フォーカスレンズの位置を取得する取得部と、
前記蓄積タイミングでの前記フォーカスレンズの位置と前記デフォーカス算出部が算出した前記デフォーカス量とに基づいて、前記フォーカスレンズの駆動量を演算する演算部と、
を有する焦点検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサの焦点検出画素で得られた信号に基づいて焦点検出を行うカメラが知られている(特許文献1参照)。連続撮影の際に、焦点検出の予測の精度を向上させる要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様による焦点検出装置は、フォーカスレンズを有する光学系を通過した光束により形成された被写体の像を撮像する撮像部と、前記撮像部に配置され、光電変換されて蓄積された電荷に基づく信号を出力する画素と、前記信号に基づいて、前記光学系による像の位置と前記撮像部との位置とのずれ量であるデフォーカス量を算出するデフォーカス算出部と、前記画素が、前記電荷を蓄積する蓄積タイミングを算出するタイミング算出部と、前記フォーカスレンズの位置を取得する取得部と、前記蓄積タイミングでの前記フォーカスレンズの位置と前記デフォーカス算出部が算出した前記デフォーカス量とに基づいて、前記フォーカスレンズの駆動量を演算する演算部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】撮影視野内に設定されるフォーカスエリアを例示する図である。
【
図3】カメラシステムの要部構成を説明するブロック図である。
【
図5】フォーカスエリアに対応する枠を、撮像面の対応する位置に重ねた模式図である。
【
図6】
図6(a)はn+1コマ目の撮像における先幕、後幕の走行曲線を示す図、
図6(b)は連写時に行われるAF動作を説明する図である。
【
図7】
図7(a)は後幕の走行曲線を拡大した図、
図7(b)は撮像面における像高と補正量との関係を例示する図である。
【
図8】
図8は、瞳位置と撮像面へ入射される光線を示す模式図である。
図8(a)は標準的な射出瞳距離の場合を示す図、
図8(b)は
図8(a)よりも短い場合を示す図、
図8(c)は
図8(a)よりも長い場合を示す図である。
【
図9】補正後の後幕第1時間および後幕第2時間を格納したテーブルを例示する図である。
【
図10】第2の実施形態による焦点検出装置の構成を例示する図である。
【
図11】連写時に行われるAF動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の実施の形態に係る焦点検出装置は、例えば、レンズ交換式カメラシステムに搭載される。
<AF動作の概要>
はじめに、
図1、
図2を参照してAF(自動焦点調節)動作の概要を説明する。
図1は、一実施の形態によるカメラボディ2に交換レンズ3が装着される前のカメラシステム1の斜視図である。カメラボディ2と交換レンズ3の結合は、ボディ側マウント210とレンズ側マウント310のバヨネット構造により行われる。カメラボディ2と交換レンズ3が結合すると、それぞれのマウント近傍に設けられた接点端子同士が物理的に接触し、電気的に接続される。
【0007】
図2は、カメラボディ2の撮像素子260によって撮像される撮影視野50を示している。また、撮影視野50の中のフォーカスエリアPを例示する図であり、撮像画像とともに示してある。撮像領域50には、21点のフォーカスエリアPが設けられている。フォーカスエリアは、焦点検出エリア、焦点検出位置、測距点、オートフォーカス(AF)ポイントとも称される。
なお、図示したフォーカスエリアPの数と位置は一例に過ぎず、
図2の態様に限定されるものではない。
【0008】
図4で詳細に説明する焦点検出装置は、交換レンズ3を通過した光束により形成された被写体の像の位置と、カメラボディ2の撮像素子260の撮像面260Sの位置と、のずれ量であるデフォーカス量(ピントずれ量)を検出するために、交換レンズ3の異なる瞳を通過する一対の光束による被写体像の像ずれ量(位相差)を、フォーカスエリアPごとに検出する。そして、例えば、複数のフォーカスエリアPの中から選んだフォーカスエリアPに対応する領域に存在する被写体の像の位置を撮像素子260の撮像面260Sの位置に合わせる(合焦する)ように、交換レンズ3に含まれるフォーカスレンズの位置を調節する、AF動作を行う。
【0009】
AF動作に採用するフォーカスエリアPは、ユーザの操作によって任意に選ぶことも、カメラボディ2が自動で選ぶことも可能である。フォーカスエリアPがユーザの操作によって選ばれるAFモードの場合、焦点検出装置は、ユーザの操作によって選択されたフォーカスエリアPに存在する被写体像の像ずれ量を検出する。そして、焦点検出装置は、選択したフォーカスエリアPに存在する被写体に焦点を合わせるようにAF動作を行う。
【0010】
また、フォーカスエリアPが自動で選ばれるAFモードの場合、カメラボディ2が上記21点のうちいずれか少なくとも1つのフォーカスエリアPを選択する。例えば、
図2に示す例で、人物の顔に焦点を合わせるモードが選択されている場合、人物の顔部分に含まれている2点のフォーカスエリアP(i)、P(ii)をカメラボディ2は選択し、その2つのフォーカスエリアP(i)、P(ii)ごとにそれぞれの被写体像の像ずれ量を検出する。
【0011】
焦点検出装置は、2点のフォーカスエリアP(i)、P(ii)のうち、例えばカメラシステム1に一番近い(至近)、またはコントラストが一番高いフォーカスエリアがP(ii)の場合、フォーカスエリアP(ii)を選択する。そして、焦点検出装置は、選択したフォーカスエリアP(ii)に存在する顔部分に焦点を合わせるようにAF動作を行う。
なお、焦点検出装置は、顔部分に含まれるとして選択した2つのフォーカスエリアP(i)、P(ii)の両方のデフォーカス量を考慮して、顔部分に焦点を合わせるようにAF動作を行うこともできる。例えば2つのデフォーカス量の平均値を算出して、算出した平均値のデフォーカス量でフォーカスレンズを駆動(AF動作)しても良いし、2つのデフォーカス量ができるだけ被写界深度に入るように加重平均を算出してAF動作を行っても良い。
【0012】
(第1の実施形態)
上述したようなAF動作を行うカメラシステム1について、さらに詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態によるカメラシステム1の要部構成を説明するブロック図である。
<交換レンズ>
交換レンズ3は、レンズ側マウント310、レンズ側制御部330、レンズ側通信部340、レンズ側記憶部350、撮像光学系360、レンズ駆動部370、絞り駆動部380、および振れセンサ390を有する。レンズ駆動部370は、レンズ駆動部370aおよび370bを含む。
【0013】
円環状のレンズ側マウント310には、レンズ側端子保持部320が設けられる。レンズ側端子保持部320は、光軸Oを中心とした円弧状に複数のレンズ側端子を有する。複数のレンズ側端子には、例えば、交換レンズ3がカメラボディ2に装着されたことをカメラボディ2に伝える装着検出端子、交換レンズ3とカメラボディ2との間の通信で使用する通信用端子、カメラボディ2から交換レンズ3へ電力が供給される給電用端子、および接地用端子(グラウンド)等が含まれる。
【0014】
レンズ側制御部330は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ側制御部330は、レンズ側記憶部350に記憶されている制御プログラムを実行して交換レンズ3の各部を制御する。レンズ側制御部330は、レンズ側通信部340、レンズ側記憶部350、レンズ駆動部370a、レンズ駆動部370b、絞り駆動部380、および、振れセンサ390と接続される。
【0015】
レンズ側通信部340は、ボディ側通信部240との間で所定の通信を行う。レンズ側通信部340は、レンズ側制御部330および上述した通信用端子と接続される。レンズ側通信部340とボディ側通信部240との間で行われる通信により、後述する撮像光学系360などを移動させる指示や、撮像光学系360などを駆動する駆動部の状態を示す情報などの送信要求等が、交換レンズ3へ送信される。また、レンズ側通信部340とボディ側通信部240との間で行われる通信により、撮影光学系360の駆動状態などが交換レンズ3からカメラボディ2へ送信される。
【0016】
交換レンズ3における駆動部の状態とは、レンズ駆動部370aおよびレンズ駆動部370bのそれぞれが、対応するフォーカスレンズ361a、振れ補正レンズ361bを駆動している状態や駆動後の状態をいう。一方、フォーカスレンズ361a、振れ補正レンズ361bの位置や交換レンズ3の駆動部の状態などを示す情報、レンズ側記憶部350から読み出された情報などが、交換レンズ3からカメラボディ2へ送信される。
【0017】
レンズ側記憶部350は、不揮発性の記憶媒体によって構成される。レンズ側記憶部350は、レンズ側制御部330によってデータの記録と読み出しが制御される。レンズ側記憶部350は、レンズ側制御部330が実行する制御プログラム等を記憶する他に、交換レンズ3の機種名を示すデータ(機種名情報とも称する)や、撮像光学系360の光学特性を示すデータ等を記憶することができる。レンズ側記憶部350は、レンズ側制御部330と接続される。
【0018】
撮像光学系360は、カメラボディ2の撮像素子260の撮像面260Sに被写体光を導く。撮像光学系360の光軸Oは、レンズ側マウント310およびボディ側マウント210および撮像面の中心位置と略一致する。撮像光学系360は、例えば、フォーカスレンズ361aと、振れ補正レンズ361bと、絞り362とを含む。撮像光学系360の少なくとも一部は、レンズ駆動部370や手動操作により、光軸O方向に移動可能に構成されている。
例えばフォーカスレンズ361aは、レンズ駆動部370aにより、光軸O方向に進退移動が可能に構成されている。フォーカスレンズ361aが移動することにより、撮像光学系360により形成される被写体像の位置が変更される。これによりAF動作(合焦)が行われる。
【0019】
例えば振れ補正レンズ361bは、レンズ駆動部370bにより、光軸Oと交差する方向に移動可能に構成されている。振れ補正レンズ361bが移動することにより、撮像素子260の撮像面260Sでの被写体像の揺動(像振れ)が抑えられる。振れ補正レンズ361bを動かす振れ補正は、カメラシステム1が有する防振機能の一つである。
【0020】
絞り362は、撮像素子260へ入射する光量を調節する。絞り362は、絞り駆動部380や手動操作により、絞り羽根が駆動され開口径(絞り値)を変化させることが可能に構成されている。絞り362の開口径は、絞り駆動部380のエンコーダ等によって検出可能に構成されている。
【0021】
レンズ駆動部370a、レンズ駆動部370bはそれぞれ、モータまたはアクチュエータと、レンズ駆動機構によって構成される。レンズ駆動部370aは、レンズ側制御部330から出力される駆動信号により、フォーカスレンズ361aを光軸O方向に沿って移動させる。フォーカスレンズ361aの移動方向や移動量、移動速度などは、例えば、ボディ側制御部230から指示される。フォーカスレンズ361aの位置は、レンズ駆動部370aのエンコーダ等の位置検出機構によって検出可能に構成されている。
【0022】
レンズ駆動部370bは、レンズ側制御部330から出力される駆動信号により、振れ補正レンズ361bを光軸Oと交差する方向に移動させる。振れ補正レンズ361bの移動方向や移動量、移動速度などは、例えば、レンズ側制御部330から指示される。振れ補正レンズ361bの位置は、レンズ駆動部370bのホールセンサ等によって検出可能に構成されている。
レンズ駆動部370aおよびレンズ駆動部370bは、それぞれレンズ側制御部330と接続される。
【0023】
絞り駆動部380は、モータおよび絞り駆動機構によって構成される。絞り駆動部380は、例えば、レンズ側制御部330からの指示に基づき、絞り362の開口径を変化させる。絞り駆動部380は、レンズ側制御部330と接続される。
【0024】
振れセンサ390は、ジャイロセンサ等を含み手振れ等によるカメラシステム1の振れを検出する。振れセンサ390は、
図1のX軸回りの振れ角度成分およびY軸回りの振れ角度成分を検出する。また振れセンサ390は加速度センサ等も備え、光軸Oと直交する方向への振れを検出しても良い。振れセンサ390による検出信号は、レンズ側制御部330へ送出される。これによりいわゆる防振制御が行われる。すなわちレンズ側制御部330へ送られた振れセンサ390の検出信号に基づいて、レンズ駆動部370bにより補正レンズ361bが光軸Oと交差する方向に移動することにより、撮像素子260の撮像面260Sでの被写体像の揺動(像振れ)が抑えられる。
【0025】
<カメラボディ>
カメラボディ2は、ボディ側マウント210、ボディ側制御部230、ボディ側通信部240、電源部250、シャッタ装置255、撮像素子260、センサ駆動部265、信号処理部270、操作部材280、および表示部290を有する。センサ駆動部265は第2の実施形態において使用されるため、第1の実施形態では省略しても構わない。
【0026】
円環状のボディ側マウント210には、ボディ側端子保持部220が設けられる。ボディ側端子保持部220は、複数のボディ側端子を有し、上述したレンズ側端子と接触する。複数のボディ側端子もレンズ側端子と同様に、例えば、カメラボディ2に交換レンズ3が装着されたことをカメラボディ2へ伝える装着検出端子、カメラボディ2と交換レンズ3との間の通信で使用される通信用端子、カメラボディ2から交換レンズ3へ電力が供給される給電用端子、および接地用端子(グラウンド)等が含まれる。
【0027】
ボディ側制御部230は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。ボディ側制御部230は、記憶部235に記憶されている制御プログラムを実行してカメラボディ2内の各部を制御する。ボディ側制御部230は、ボディ側通信部240、電源部250、シャッタ装置255、撮像素子260、センサ駆動部265、信号処理部270、操作部材280および表示部290と接続される。
【0028】
ボディ側制御部230は、記憶部235を含む。記憶部235は、ボディ側制御部230によってデータの記録と読み出しが制御される。記憶部235は、ボディ側制御部230が実行する制御プログラム等を記憶する他に、ボディ側通信部240で受信された交換レンズ3の機種名情報、交換レンズ3の光学特性を示すデータ等を記憶することができる。
【0029】
ボディ側通信部240は、レンズ側通信部340との間で上述した通信を行う。ボディ側通信部240は、ボディ側制御部230および上述した複数のボディ側端子と接続される。
電源部250は、不図示の電池の電圧をカメラシステム1の各部で使用される電圧に変換し、カメラボディ2の各部、および、交換レンズ3へ供給する。電源部250は、ボディ側制御部230の指示により、給電先ごとに給電のオンとオフとを切換え可能である。電源部250は、ボディ側制御部230および上述した給電用端子と接続される。
【0030】
シャッタ装置255は、撮像素子の前に配置されるフォーカルプレーンシャッタであり、先幕および後幕とこれらを駆動するアクチュエータ機構を有する。シャッタ装置255は、ボディ側制御部230によって開閉制御される。シャッタ装置255(先幕)が開くと、被写体からの光が撮像素子260の撮像面260Sに導かれる。シャッタ装置255(後幕)が閉じると、被写体からの光が遮光される。
【0031】
撮像素子260は、例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子である。撮像素子260は、ボディ側制御部230からの制御信号により、撮像面260Sに形成される被写体像を撮像して撮像信号を出力する。撮像素子260は、ボディ側制御部230および信号処理部270と接続される。
【0032】
撮像素子260は、撮像面260Sに配置された、画像生成用の画素(撮像用画素と称する)と焦点検出用の画素(焦点検出用画素と称する)とを有する。撮像用画素で生成される信号(以下、撮像用画素信号と呼ぶ)は、後述する信号処理部270によって画像データの生成に用いられる。また、焦点検出用画素で生成される信号(以下、焦点検出用画素信号と呼ぶ)は、後述する信号処理部270によって交換レンズ3による像の合焦状態を検出する焦点検出処理に用いられる。
なお、撮像用にも焦点検出用にも使用可能な信号を出力する画素を撮像素子260に設ける構成にしてもよい。
【0033】
センサ駆動部265は、例えば、アクチュエータとセンサ駆動機構によって構成される。センサ駆動部265は、ボディ側制御部230から出力される指示に基づき、光軸Oと交差する方向に撮像素子260を移動させる。撮像素子260が移動することにより、撮像素子260の撮像面に対する被写体像の振れ(像振れ)が抑えられる。撮像素子260を動かす振れ補正は、カメラシステム1が有する防振機能の一つである。
移動する撮像素子260の位置は、センサ駆動部265のホールセンサ等によって検出可能に構成されている。撮像素子260の移動方向や移動量、移動速度などは、例えば、ボディ側制御部230から指示される。センサ駆動部265は、ボディ側制御部230と接続される。
【0034】
信号処理部270は、撮像素子260から出力された撮像用画素信号に対して所定の画像処理を行って画像データを生成する。生成された画像データは、不図示の記憶媒体(メモリーカード)に所定のファイル形式で記録されたり、表示部290での撮影画像の確認画像の表示や撮影前のスルー画像の表示のために用いられたりする。信号処理部270は、ボディ側制御部230、撮像素子260、および表示部290と接続される。
【0035】
また、信号処理部270は、撮像素子260から出力された焦点検出用画素信号を用いて、位相差検出方式によって交換レンズ3で形成された被写体像の位置と撮像素子260の撮像面260S(
図4)との差であるデフォーカス量を算出する。信号処理部270は、算出したデフォーカス量と焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの位置とに基づいて、対象とする被写体像が撮像面260Sに合焦するフォーカスレンズ361aの位置である合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を算出する。この焦点検出演算によって算出されたフォーカスレンズ361aの移動量に基づくフォーカス駆動の指示は、フォーカスレンズ361aの移動方向、移動量などを示すデータとともにカメラボディ2から交換レンズ3へ送信される。
【0036】
レリーズボタンや操作スイッチ等を含む操作部材280は、カメラボディ2の外装面に設けられる。ユーザは、操作部材280を操作することにより、撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。操作部材280は、ユーザの操作に応じた操作信号をボディ側制御部230へ送出する。
【0037】
表示部290は、例えば液晶表示パネルによって構成される。表示部290は、ボディ側制御部230からの指示により、信号処理部270によって処理された画像データに基づく画像や、操作メニュー画面等を表示する。また、表示部290はタッチパネルを備え、操作部材280の一部を兼ねても良い。表示部290は、ボディ側制御部230および信号処理部270と接続される。
【0038】
カメラボディ2は、上述した通信により、例えば、フォーカス駆動指示、振れ補正動作の開始指示、絞り駆動指示、情報の送信要求、カメラボディ2の情報(撮像モード情報、ISO感度、動画記録中か否か等)などを、交換レンズ3へ送る。交換レンズ3は、カメラボディ2からの指示に応じて、フォーカスレンズ361aを駆動し、振れ補正動作を開始し、絞り362を駆動する。
【0039】
一方、交換レンズ3は、上記通信により、例えば、撮像光学系360の光学特性、フォーカスレンズ361aの位置、振れセンサ390で検出された振れ量、交換レンズ3によって補正された振れ量などを示す情報、カメラボディ2から要求された情報などを、カメラボディ2へ送信する。
【0040】
図4は、
図3に例示した構成のうち、第1の実施形態による焦点検出装置の構成を説明する図である。
図4には、レンズ側制御部330と、レンズ側通信部340と、フォーカスレンズ361aと、レンズ駆動部370aと、ボディ側制御部230と、ボディ側通信部240と、シャッタ装置255と、撮像素子260と、信号処理部270とを示す。
上述したように、撮像素子260は撮影光学系360による光束が入射する撮像面260Sを有する。撮像面260Sの前面(撮影光学系360側)にシャッタ装置255が配置される。シャッタ装置は先幕255aおよび後幕255bを備える。先幕255aおよび後幕255bはそれぞれ複数のシャッタ羽根からなり、
図4画面において上から下方向にそれぞれ走行する。
図4は、先幕255aの全てのシャッタ羽根が下方へ開き移動を終え、後幕255bの全てのシャッタ羽根が上方で待機している閉じる前で、シャッタ全開状態を示し、撮影光学系360による光束が撮像面260Sに入射する状態を示している。
【0041】
<AF動作の説明>
以下、本実施の形態における、レリーズボタンを押下している間、複数の画像撮影を続けて行う連写時に行われるAF動作について説明する。カメラボディ2は、レリーズボタンの全押し操作が継続されている間に、1コマの撮像を連続して複数コマ分行う。ボディ側制御部230は、撮像素子260に電荷蓄積動作を開始させ、シャッタ装置255の先幕255aを開駆動させる。ボディ側制御部230は、続いてシャッタ装置255の後幕255bを閉駆動させると、撮像素子260から信号処理部270へ転送された焦点検出用画素信号に基づき、信号処理部270に焦点検出演算を行わせる。
【0042】
ボディ側制御部230は、上記焦点検出演算結果に基づいて、ボディ側通信部240およびレンズ側通信部340を介してレンズ側制御部330へフォーカス駆動を指示する。レンズ側制御部330は、フォーカス駆動の指示に応じてレンズ駆動部370aによりフォーカスレンズ361aを移動させる(合焦制御)。
【0043】
図5は、
図2のフォーカスエリアPに対応する21個の枠PSを、撮像面260Sの対応する位置に重ねた模式図である。撮像面260Sの光軸Oに対応する位置を像高y=0とする。また、撮像面260Sの短辺方向(画像の縦方向)は像高y=-aから+aまでとする。撮像面260Sにおいて枠PSの中心位置は撮像画面260Sの短辺方向で、像高y=-bから+bまでとする。
図4を用いて説明したように、シャッタ装置255の先幕255aおよび後幕255bはそれぞれ複数のシャッタ羽根からなり、
図5に矢印で示すように上から下方向にそれぞれ走行する。
図5は先幕255aの全てのシャッタ羽根が下方へ開き移動を終え、後幕255bの全てのシャッタ羽根が上方で待機して閉じる前の状態を示している。
【0044】
信号処理部270が算出するフォーカスレンズ361aの移動量は、デフォーカス量の算出に用いた焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの位置を起点として算出された合焦位置までの移動量である。焦点検出用画素信号が取得された時点とは、採用されたフォーカスエリアPに対応する枠PSの位置に配置された焦点検出用画素の露光期間(電荷蓄積期間)であり、枠PSの位置をシャッタ装置255の先幕255aが通過する開口時刻から後幕255bが通過する遮光時刻までの時間に相当する。
【0045】
図6は、連写時に行われるAF動作を説明するタイミングチャートである。信号処理部270は、nコマ目、n+1コマ目、…において、それぞれシャッタ装置255の先幕255aが開かれると電荷蓄積を行い、後幕255bが閉じられて電荷蓄積を終了した撮像素子260から読み出され信号処理部270へ転送された撮像用画素信号に対して所定の画像処理を行って、1コマの画像を生成する。また、信号処理部270は、電荷蓄積を終了した撮像素子260から読み出され信号処理部270へ転送された焦点検出用画素信号に基づいて焦点検出演算を行う。ボディ側制御部230は、信号処理部270による焦点検出演算結果に基づき、撮影コマ毎に交換レンズ3へフォーカス駆動を指示する。例えば、撮像素子260の蓄積期間と蓄積期間との間にフォーカス駆動指示を行う。
【0046】
図6の例では、カメラボディ2から交換レンズ3へ、前コマの撮像時に取得された焦点検出用画素信号に基づくフォーカス駆動の指示を、次コマを撮像する前に送信する。
図6は、撮像素子260の電荷蓄積中にもフォーカスレンズ361aを移動させる例である。
【0047】
以下、n+1コマ目に着目して説明する。
図6(a)は横軸が時間、縦軸は撮像素子260の縦方向の位置であり、曲線61は、n+1コマ目の撮像における先幕255aの走行曲線(先幕255aのシャッタ羽根の走行方向の最後端位置)を示す。また、曲線62は、n+1コマ目の撮像における後幕255bの走行曲線(後幕255aのシャッタ羽根の走行方向の最先端位置)を示す。ボディ側制御部230は、時刻t0においてシャッタ装置255に先幕255aをリリースさせる信号を出力し、時刻t2においてシャッタ装置255に後幕255bをリリースさせる信号を出力する。
【0048】
シャッタ装置255は、設計値として第1時間と第2時間が定められている。第1時間は、シャッタ幕をリリースする信号が入力されてからシャッタ幕が像高y=+aの位置を通過する時刻までの時間をいう。
まず、先幕255aの移動について説明する。先幕255aは、シャッタリリース前は、撮像面260Sの全面を覆っており、先幕255aの最後端は像高y=+aよりも高い(遠い)位置に位置している。先幕255aをリリースする信号が入力され、実際に先幕255aが移動し始めて(
図5の矢印)も初期段階では先幕255aの最後端は像高y=+aよりも高い(遠い)位置を移動している。そして第1時間が経過したとき(後述する時刻t1)に、先幕255aの最後端が撮像面260aの最上端(像高y=+a)の位置に到達し、その後、先幕255aの最後端は撮像面260aの像高-a<y<+aを移動し、y=-aを超えて(y=-aよりも遠い位置まで移動して)停止する。先幕255aが像高-a<y<+aの間を移動している間に、撮像面260Sに撮影光学系360による光束が入射する。すなわち第1時間が経過したときに、撮像面260Sの最上部が開口され、撮像面260Sの最上部への光束の入射が開始される。以上のとおり、第1時間は、先幕255aをリリースさせる信号から撮像面260Sの最上部への光束の入射が開始される遅れ時間であり、顔出し時間とも称される。第2時間は、先幕が像高y=+aの位置を通過してから像高y=-aの位置を通過する時刻(後述する時刻t4)までの時間をいう。つまり、第2時間は、先幕255aの最後端が撮像面260Sの全面を通過する時間であり、幕走行時間とも称される。
後幕255bの最先端は、シャッタリリース前は、像高y=+aよりも高い(遠い)位置に位置している。後幕255bをリリースする信号が入力され、実際に後幕255bが移動し始めても第1時間が経過するまでは後幕255bの最先端は像高y=+aよりも高い(遠い)位置を移動している。そして第1時間が経過したとき後幕255bの最先端が撮像面260aの最上端(像高y=+a)の位置に到達し、その後、後幕255aの最先端は撮像面260aの像高-a<y<+aを移動し、y=-aを超えて(y=-aよりも遠い位置まで移動して)停止する。後幕255bの最先端も第2時間の間に、像高y=+aから像高y=-aの位置を通過する。
本実施の形態では、先幕255aについての第1時間および第2時間を先幕第1時間および先幕第2時間と呼ぶ。また、後幕255bについての第1時間および第2時間を後幕第1時間および後幕第2時間と呼ぶ。本実施の形態では、先幕第1時間と後幕第1時間は略等しく、先幕第2時間と後幕第2時間は略等しく構成されている。
【0049】
上述したように、先幕255aは、時刻t0から先幕第1時間が経過した時刻t1に、先幕255aの最後端が像高y=+aの位置を通過する。これにより、先幕255aが開き始め、撮像面260Sの最上部が開口(顔出し)する(撮像素子260に光が入射し始める)。先幕255aの最後端は、時刻tb1に像高y=+bの位置(
図5、枠PS51の位置)を通過し、時刻t3に像高y=0の位置(
図5、枠PS52の位置)を通過し、時刻tb3に像高y=-bの位置(
図5、枠PS53の位置)を通過し、時刻t4に像高y=-aの位置を通過する。時刻t1から時刻t4までが先幕第2時間である。
【0050】
後幕255bの最先端は、時刻t2から後幕第1時間が経過した時刻t4に、像高y=+aの位置を通過する。これにより、後幕255bが閉じ始める(撮像素子260の遮光を始める)。後幕255bは、時刻tb2に像高y=+b(
図5、枠PS51の位置)の位置を通過し、時刻t5に像高y=0の位置(
図5、枠PS52の位置)を通過し、時刻tb4に像高y=-bの位置(
図5、枠PS53の位置)を通過し、時刻t6に像高y=-aの位置を通過する。時刻t4から時刻t6までが後幕第2時間である。
【0051】
<像高に基づく露光タイミングの算出>
図5に例示したように、本実施の形態ではシャッタ装置255の先幕255a、後幕255bがY軸の-方向(矢印方向)に移動する。そのため、撮像面260SにおいてY軸方向に像高が異なる位置の枠PS51、PS52、PS53は、それぞれ先幕255aの最後端、後幕255bの最先端が通過する時刻が異なることから、焦点検出用画素の露光タイミングが異なる。
【0052】
そのため、ボディ側制御部230は、採用されたフォーカスエリアPに対応する枠PSの像高に基づいて焦点検出用画素の露光タイミングを算出し、算出した露光タイミングにおけるフォーカスレンズ361aの位置を算出する。
図6(b)にフォーカスレンズ361aの位置を示す位置情報を丸印(○)で示す。フォーカスレンズ361aの位置情報は、所定時間ごとに行われる交換レンズ3とカメラボディ2との間の通信によってレンズ側制御部330からボディ側制御部230へ送信される。
【0053】
ボディ側制御部230は、レンズ側制御部330から送信されたフォーカスレンズ361aの位置情報と、算出した露光タイミングとに基づき、焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの位置を算出する。ボディ側制御部230は、算出したフォーカスレンズ361aの位置を信号処理部270へ送る。このように構成することにより、信号処理部270は、焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの位置を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を適切に算出することができる。
【0054】
ボディ側制御部230は、撮像素子260の蓄積期間中にもフォーカスレンズ361aが移動する場合、蓄積期間中におけるフォーカスレンズ361aの位置を平均した平均位置を、焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの位置として扱う。ボディ側制御部230は、レンズ側制御部330から送信されたフォーカスレンズ361aの位置情報と、上記のように算出した露光タイミングとに基づいて平均位置を算出する。
このように構成することにより、信号処理部270は、フォーカスレンズ361aの移動中に焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの平均位置を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を適切に算出することができる。
【0055】
<シャッタの走行特性に応じた露光タイミングの算出>
一般に、シャッタ装置255を構成するフォーカルプレーンシャッタは、バネなどによって付勢されている。そのため、先幕255aの最後端、後幕255bの最先端の走行速度は、上記先幕第2時間、後幕第2時間内で一定とはならない。例えば、先幕第2時間、後幕第2時間の前半(像高y=+aからy=+b)では、リリースされた先幕255a、後幕255bは速度が遅い状態から徐々に加速する。これに対し、先幕第2時間、後幕第2時間の後半では、先幕255a、後幕255bの走行速度が設計速度に達しているため、像高y=0からy=-aまで略等速で走行する。
【0056】
図7(a)は、後幕255bの最先端の走行曲線を拡大した図であり、撮像面260Sにおける像高yと、後幕255bが通過する時刻t(
図6(a))との関係を例示する図である。後幕255bの最先端の実際の走行曲線71を実線により示し、走行曲線71を近似した近似直線72を破線により示す。近似直線72は、全範囲(y=+aからy=-a)で1つの近似直線を求めても良いし、y>0とy<0のそれぞれに分けて2つの近似直線72を求めても構わない。あるいは、直線72は、後幕255bの速度変化が大きく変わるところを境として、例えばy>+bと+b<yとの2つに分けても良いし、さらにy>+b、+b<y<-bおよび-b<yの3つに分けても良い。
図6(a)で示したように、時刻t2においてリリースされた後幕255bの最先端は、時刻t4において像高y=+aを通過し、時刻tb2において像高y=+bを通過し、時刻t5において像高y=0を通過する。さらに、時刻tb4において像高y=-bを通過し、時刻t6において像高y=-aを通過する。
【0057】
走行曲線71が示すように、シャッタ装置255の後幕255bの最先端の走行特性は、幕走行時間と走行距離とが比例しない非線形である。そのため、ボディ側制御部230が採用されたフォーカスエリアPに対応する枠PSの位置の像高に基づいて焦点検出用画素の露光タイミングを算出する場合、像高に比例して単純に露光タイミングをずらすだけでは、算出する露光タイミングと実際にシャッタ装置255が開くタイミングとが一致しない。
【0058】
本実施の形態によるボディ側制御部230は、採用されたフォーカスエリアPに対応する枠PSの焦点検出用画素の露光タイミングを算出するとき、シャッタ装置255の走行特性に合わせて露光タイミングを算出する。具体的に説明すると、ボディ側制御部230は、幕走行時間と走行距離とが比例する線形関係を有するかのように、走行曲線71を直線近似する。上述した走行曲線71を直線近似する場合には、y>0とy<0の領域に分けて2つの近似直線72を算出する。
算出した近似直線72を使用して、各枠PSの露光タイミングを算出する。y>0とy<0でそれぞれ算出した、像高に対して比例関係にある近似直線72を使用して各枠PSを通過する時間を算出し、露光のタイミングを算出する。
なお、近似直線72を使用せずに、走行曲線71を使って露光タイミングを算出しても良い、また直線近似した近似直線72に対し、実際の走行曲線71と近似直線72との差分を補正しても構わない。
図7(b)は、撮像面260Sにおける像高yと、差分を補正する場合の補正量との関係を例示する図である。
このように構成することで、露光タイミングの算出処理を、簡単で精度よく算出することができる。
【0059】
図5-
図7を参照して、枠PS51、PS52、PS53の露光タイミングの算出を説明する。ボディ側制御部230の記憶部235には、
図7(a)の近似直線72を示すデータが記憶されている。この近似直線72に基づいて後幕255bの最先端が通過する時刻を算出する。例えば
図5の枠PS52では後幕255bの最先端がy=0を通過する時刻が、
図7の近似直線72から露光のタイミングはt5と算出される。
なお、走行曲線71を使用して算出しても構わない。ボディ側制御部230の記憶部235に
図7(a)の走行曲線71を示すデータを記憶しておく。走行曲線71は、例えば、製造時に後幕255bの走行曲線を測定し、記憶部235に記憶する。走行曲線71を記憶する代わりに、近似曲線72と
図7(b)の補正量を記憶しても構わない。その場合には、
図7(a)の走行曲線71は、近似直線72を
図7(b)の補正量によって補正することにより算出できる。
図7(b)の補正量は、予めシャッタ装置255の幕走行時間を実測することによって求めてもよいし、シャッタ装置255の設計値に基づく値を採用してもよい。ボディ側制御部230は、シャッタ装置255に後幕255bをリリースさせる信号を出力する時刻t2を起点として、走行曲線71に基づいて後幕255bの最先端が通過する時刻を算出する。
また本実施形態では、露光タイミングを後幕255bの最先端の走行曲線71または近似直線72から求めたが、先幕255aの最後端を使用しても構わない。また各枠PSを先幕255aの最先端が通過するタイミングと後幕255bの最先端が通過するタイミングをそれぞれ算出し、両者の真ん中のタイミングを露光タイミングとして算出しても構わない。
【0060】
(枠PS51)
枠PS51の露光タイミングを算出する場合、ボディ側制御部230は、近似直線72に基づいて、後幕255bの最先端が枠PS51を通過する時間を求めるために、後幕第1時間(51)および後幕第2時間(51)を算出する。後幕第1時間(51)は、近似直線72に基づいて算出される、後幕255bをリリースする信号が入力されてから後幕255bの最先端が像高y=+aに到達するまでの時間である。後幕第2時間(51)は、近似直線72に基づいて算出される、後幕255bの最先端が像高y=+aから枠PS51が位置する像高y=+bまで走行する時間である。すなわち後幕第1時間(51)は、時刻t2から時刻t4までの時間(
図6参照)に相当し、後幕第2時間(51)は、時刻t4から時刻tb2までの時間(
図7参照)に相当する。時刻tb2は、枠PS51の位置における蓄積終了時刻である。ボディ側制御部230は、時刻tb2から蓄積時間を遡った時刻tb1を算出し、蓄積開始時刻とする。以上の演算により、枠PS51の露光タイミングは時刻tb1から時刻tb2までとなる。
なお、本実施形態では枠PS51の真ん中を後幕255bが通過する時刻を蓄積終了時刻としたが、枠PS52のY軸の正方向の一辺(枠PS52の最上端)を後幕255bが通過する時刻、または枠PS52のY軸の負方向の一辺(枠PS52の最下端)を後幕255bが通過する時刻を蓄積終了時刻としても良い。
【0061】
(枠PS52)
枠PS52の露光タイミングを算出する場合、ボディ側制御部230は、近似直線72に基づいて、後幕255bの最先端が枠PS52を通過する時間を求めるために、後幕第1時間(52)および後幕第2時間(52)を算出する。後幕第1時間(52)は、近似直線72に基づいて算出される、後幕255bをリリースする信号が入力されてから後幕255bの最先端が像高y=+aに到達するまでの時間であり、上記の後幕第1時間(51)と同じである。後幕第2時間(52)は、近似直線72に基づいて算出される、後幕255bの最先端が像高y=+aから枠PS52が位置する像高y=0まで走行する時間である。すなわち後幕第1時間(52)は、時刻t2から時刻t4までの時間(
図6参照)に相当し、後幕第2時間(52)は、時刻t4から時刻t5までの時間(
図7参照)に相当する。時刻t5は、枠PS52の位置における蓄積終了時刻である。ボディ側制御部230は、時刻t5から蓄積時間を遡った時刻t3を算出し、蓄積開始時刻とする。以上の演算により、枠PS52の露光タイミングは時刻t3から時刻t5までとなる。
【0062】
(枠PS53)
枠PS53の露光タイミングを算出する場合、ボディ側制御部230は、近似直線72に基づいて、後幕255bの最先端が枠PS53を通過する時間を求めるために、後幕第1時間(53)および後幕第2時間(53)を算出する。後幕第1時間(53)は、近似直線72に基づいて算出される、後幕255bをリリースする信号が入力されてから後幕255bの最先端が像高y=+aに到達するまでの時間であり、上記の後幕第1時間(51)と同じである。後幕第2時間(53)は、近似直線72に基づいて算出される、後幕255bの最先端が像高y=+aから枠PS53が位置する像高y=-bまで走行する時間である。すなわち後幕第1時間(53)は、時刻t2から時刻t4までの時間(
図6参照)に相当し、後幕第2時間(51)は、時刻t4から時刻tb4までの時間(
図7参照)に相当する。時刻tb4は、枠PS53の位置における蓄積終了時刻である。ボディ側制御部230は、時刻tb4から蓄積時間を遡った時刻tb3を算出し、蓄積開始時刻とする。以上の演算により、枠PS53の露光タイミングは時刻tb3から時刻tb4までとなる。
【0063】
以上の説明をまとめると以下の通りである。シャッタ装置255の先幕255a、後幕255bがY軸方向に移動するため、撮像面260SにおいてY軸方向に像高が異なる位置の枠PS51、PS52、PS53は、それぞれ先幕255aの最後端、後幕255bの最先端が通過する時刻が異なる。これにより、枠PS51、PS52、PS53における焦点検出用画素の露光タイミングが異なる。
【0064】
枠PS51、PS52、PS53における焦点検出用画素の露光タイミングが異なると、フォーカスレンズ361aが移動中である場合、枠PS51、PS52、PS53においてそれぞれ焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの平均位置が異なる。
【0065】
しかしながら、ボディ側制御部230は、採用されたフォーカスエリアPに対応する枠PSの像高に基づき、対応する枠PS51、PS52、PS53における焦点検出用画素の露光タイミングを算出し、算出した露光タイミングにおけるフォーカスレンズ361aの平均位置を算出する。
図6(b)に示すように、カメラボディ2のボディ側制御部230は、レンズ側制御部330から送信されたフォーカスレンズ361aの位置情報と、算出した露光タイミングとに基づき、焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの平均位置を算出する。ボディ側制御部230は、算出したフォーカスレンズ361aの平均位置を信号処理部270へ送る。このように構成することにより、信号処理部270は、焦点検出用画素信号が取得された時点のフォーカスレンズ361aの平均位置を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を適切に算出することができる。
【0066】
<瞳位置による変更>
後幕第1時間および後幕第2時間は、撮像光学系360の瞳位置によってその長さを補正する。本実施の形態では、撮像光学系360の射出瞳の位置から撮像面260Sまでの距離を瞳距離と称する。
図8は、瞳距離と撮像面260Sへ入射される光線を示す模式図である。
図8(a)、(b)、(c)は光学系の瞳距離が異なる場合を示している。瞳距離は(b)<(a)<(c)である。
【0067】
一般に、撮像光学系360の光学特性により、撮像面260Sにおいて光軸Oに近い中央部には、撮像光学系360を通過した光が略垂直に入射するのに対し、撮像面260Sにおいて像高が高い位置ほど、撮像光学系360を通過した光が斜めに入射される。撮像光学系360を通過した光が斜めに入射される光の角度は、瞳距離が短くなるほど大きくなる。
【0068】
シャッタ幕255a、255bが走行する位置は、撮像面260Sよりも撮像光学系360に近い。そのため、
図8(b)において顕著に見られるように、像高が高い位置に斜めに光線が入射される場合、撮像面260Sよりも撮像光学系360に近い位置にあるシャッタ装置255のシャッタ幕255a、255bが光線を遮る像高h1と、実際に撮像面260Sに入射する光線の像高h2とが異なる。そして、上記像高h1と、上記像高h2との差は、瞳距離が短くなるほど大きくなる。
図8(b)の像高h1と像高h2との差g2は、
図8(a)の像高h1と像高h2との差g1より大きく、
図8(a)の像高h1と像高h2との差g1は、
図8(c)の像高h1と像高h2との差g3よりも大きい。
【0069】
レンズ側制御部330は、後幕255bについての後幕第1時間および後幕第2時間を、上記瞳距離によって変化させる。具体的には、撮像光学系360の瞳距離が短いほど、後幕第1時間を長く補正するとともに、後幕第2時間の終了時刻を短く補正する。このように構成することにより、撮像光学系360の瞳距離によって、シャッタ幕255a、255bが存在する像高h1と実際に撮像面260Sに入射する光線の像高h2が異なることに起因する露光時間(電荷蓄積時間)の違いを考慮して、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。
【0070】
また、シャッタ幕が存在する像高h1と実際に撮像面260Sに入射する光線の像高h2が異なることに起因する露光時間(電荷蓄積時間)の違いを考慮して、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることによって、信号処理部270は、焦点検出用画素信号が取得された露光時間(電荷蓄積時間)のフォーカスレンズ361aの平均位置を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を適切に算出することができる。
【0071】
補正後の後幕第1時間および後幕第2時間を、テーブル値として記憶部235に記憶してもよい。
図9は、テーブル値を例示する図である。
図9のテーブルには、
図8(a)の瞳位置に対応する交換レンズAと、
図8(b)の瞳位置に対応する交換レンズBと、
図8(c)の瞳位置に対応する交換レンズCとについて、それぞれ、撮像面260SにおいてY軸方向に像高が異なる位置の枠PS51、PS52、PS53の第1時間(51)、第2時間(51)、第1時間(52)、第2時間(52)、第1時間(53)、第2時間(53)の値が格納される。
【0072】
本実施の形態では、先幕第1時間と後幕第1時間は略等しく、先幕第2時間と後幕第2時間は略等しいこととしたので、テーブルは1つでよい。もし先幕255aと後幕255bの走行性能が異なる場合など、先幕第1時間と後幕第1時間が異なる、あるいは先幕第2時間と後幕第2時間が異なる場合は、それぞれに対応してテーブルを用意すれば良い。
交換レンズ3の種類が4種以上の場合は、
図9のテーブルに追加の交換レンズの値を加えればよい。また、撮像面260SにおいてY軸方向に像高が異なる位置の枠PS51、PS52、PS53以外にもフォーカスエリアを加える場合には、加えた位置に対して
図9のテーブルに値を加えればよい。
【0073】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施形態では、連写撮影において、焦点検出用画素で電荷を蓄積中のフォーカスレンズの位置と算出したデフォーカス量とに基づいて、次の撮像のためにフォーカスレンズを駆動するのでフォーカスレンズの合焦速度が速くなる。
また、フォーカスレンズが駆動中にも撮像を行うので撮像速度を上げることができる。また連写の速度を上げることもできる。
シャッタの後幕の走行速度が一定でない非線型の走行特性を有していても、後幕による遮光時刻を基に、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。適切な焦点検出用画素の露光タイミングを求めることは、フォーカスレンズの駆動量を演算する基になるフォーカスレンズの位置を正しく求めることにつながる。
【0074】
(2)シャッタ装置の走行曲線に基づく後幕による遮光時刻を基に、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。
【0075】
(3)撮像素子内におけるフォーカスエリア(合焦エリア)に対応する枠の位置に対応した遮光タイミング(開口時間)を求める。このように構成したので、撮像面において後幕の走行方向(Y軸方向)に像高が異なる複数の位置の枠において後幕が通過する時刻が異なっても、それぞれの位置において焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。
【0076】
(4)撮像光学系の射出瞳距離の情報を用いて遮光タイミングを求める。このように構成したので、撮像光学系の射出瞳距離の違いによって、後幕が光線を遮る像高と実際に撮像面に入射する光線の像高が異なることに起因する露光時間(電荷蓄積時間)の違いを考慮して、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。
【0077】
(5)シャッタは、撮像素子の露光を開始する先幕と遮光する後幕とを有する。このように構成したので、先幕による露光開始時刻、後幕による遮光時刻を基に、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。
【0078】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、カメラボディ2のセンサ駆動部265を用いて撮像素子260を光軸Oと交差する方向に移動させて振れ補正を行う。第2の実施形態によるカメラシステム1の要部構成は、
図3と同様である。ボディ側制御部230は、撮像素子260が光軸Oと交差する方向に移動量(移動した位置)によって、第1の実施形態において説明した後幕第1時間および後幕第2時間の長さを補正する。以下、詳細に説明する。
【0079】
図10は、
図3に例示した構成のうち、第2の実施形態による焦点検出装置の構成を説明する図である。
図10には、レンズ側制御部330と、レンズ側通信部340と、フォーカスレンズ361aと、レンズ駆動部370aと、振れ補正レンズ361bと、レンズ駆動部370bと、振れセンサ390と、ボディ側制御部230と、ボディ側通信部240と、シャッタ装置255と、撮像素子260と、センサ駆動部265と、信号処理部270とを示す。
【0080】
<振れ補正動作の説明>
振れセンサ390は、例えば、角速度センサ390aと加速度センサ390bとによって構成される。角速度センサ390aは、カメラシステム1の回転運動によって発生する角速度を検出する。角速度センサ390aは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸、光軸Oと平行な軸の各軸回りの回転をそれぞれ検出し、検出信号をレンズ側制御部330へ送出する。角速度センサ390aは、ジャイロセンサとも称される。
【0081】
また、加速度センサ390bは、カメラシステム1の並進運動で発生する加速度を検出する。加速度センサ390bは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸方向の加速度をそれぞれ検出し、検出信号をレンズ側制御部330へ送出する。加速度センサ390bは、Gセンサとも称される。なお、振れセンサ390はカメラボディ2内に配置しても良い。角速度センサ390aおよび加速度センサ390dの両方をカメラホディ2内に配置しても良いし、いずれか一方をカメラボディ2内に配置し他方を交換レンズ3内に配置しても良い。
【0082】
カメラシステム1は、レンズ駆動部370bによって振れ補正レンズ361bを駆動させて行う振れ補正と、センサ駆動部265によって撮像素子260を駆動させて行う振れ補正とが可能に構成されている。そのため、例えば、振れセンサ390による検出信号に基づいて振れ補正レンズ361bを駆動する振れ補正を行い、振れ補正レンズ361bによる振れ補正しても残る(残留する)振れ量について、撮像素子260を駆動して振れ補正を行う。
【0083】
一般に、カメラシステム1で発生する振れは、カメラシステム1の回転運動に伴う角度振れと、カメラシステム1の並進移動に伴う並進振れとに分けられる。レンズ側制御部330は、振れセンサ390の検出信号に基づいて、角度振れと並進振れをそれぞれ算出する。
レンズ側制御部330は、例えば、角速度センサ390aによるX軸と平行な軸回り(Pitch方向)の検出信号を用いて、回転運動によるY軸方向の角度振れを算出する。また、レンズ側制御部330は、角速度センサ390aによるY軸と平行な軸回り(Yaw方向)の検出信号を用いて、回転運動によるX軸方向の角度振れを算出する。
【0084】
さらにレンズ側制御部330は、加速度センサ390bによるX軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるX軸方向の並進振れを算出する。また、レンズ側制御部330は、加速度センサ390bによるY軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるY軸方向の並進振れを算出する。
【0085】
そして、レンズ側制御部330は、上記X軸方向およびY軸方向の角度振れと、上記X軸方向およびY軸方向の並進振れとをX軸、Y軸ごとに足し合わせて、X軸方向およびY軸方向の全振れ量を算出する。例えば、ある軸方向について算出された角度振れと並進振れの向きが同じ場合は、足し合わせにより全振れ量が大きくなるが、算出された2つの振れの向きが異なる(向きに逆方向の成分がある)場合は、足し合わせにより全振れ量が小さくなる。このように、各軸の角度振れ、並進振れの向きにより正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。
【0086】
レンズ側制御部330はさらに、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の全振れ量に基づいて、撮像素子260の撮像面260Sにおける位置に換算した撮像面全振れ量を、X軸方向とY軸方向とについてそれぞれ算出する。
【0087】
レンズ側制御部330は、例えば、算出した撮像面全振れ量のうち、予め定めた分担比の振れ量を打ち消す向きに、振れ補正レンズ361bを移動させるための振れ補正レンズ361bの目標位置を、X軸方向とY軸方向とについてそれぞれ演算する。分担比は、交換レンズ3で行う振れ補正量と、カメラボディ2で行う振れ補正量の比である。
【0088】
振れ補正レンズ361bの目標位置を演算したレンズ側制御部330は、レンズ駆動部370bへ駆動信号を出力し、振れ補正レンズ361bを駆動させる。駆動信号を受けたレンズ駆動部370bは、振れ補正レンズ361bを光軸Oと交差するX軸およびY軸方向へ、それぞれ上記X軸方向の目標位置、上記Y軸方向の目標位置へ移動させる。
【0089】
一方、ボディ側制御部230は、通信によってボディ側通信部240で受信された撮像面全振れ量のうち、上記分担比の振れ量を打ち消す向きに撮像素子260を移動させるための撮像素子260の目標位置を、X軸方向とY軸方向とについてそれぞれ演算する。
【0090】
撮像素子260の目標位置を演算したボディ側制御部230は、センサ駆動部265へ駆動信号を出力し、撮像素子260を駆動させる。駆動信号を受けたセンサ駆動部265は、撮像素子260を光軸Oと交差するX軸およびY軸方向へ、それぞれ上記X軸方向の目標位置、上記Y軸方向の目標位置へ移動させる。
上述では、角度振れと併進振れを足し合わせた結果を、交換レンズ3で行う振れ補正量と、カメラボディ2で行う振れ補正量とに分担したが、例えば交換レンズ3(レンズ側制御部330)で角度振れの振れ補正を行いカメラボディ2(ボディ側制御部230)で併進振れの振れ補正を行っても良い。
【0091】
<振れ補正時の変更>
センサ駆動部265が移動させる撮像素子260の移動方向がY軸方向の成分を有する場合、シャッタ装置255はカメラボディに固定されているため、撮像素子260とシャッタ装置255のY軸方向の相対的な位置関係が変化する。すなわち、撮像素子260が振れ補正のためにY軸方向に移動することによって走行するシャッタ幕255a,255bに対して撮像素子260の相対位置が変わる。後幕255bに着目すると、上述した後幕第1時間、後幕第2時間に変化が生じる。そのため、ボディ側制御部230は、算出した撮像素子260の目標位置のY軸成分に基づき、後幕第1時間および後幕第2時間の長さを以下のように補正する。
【0092】
例えば、後幕255bが走行する方向と撮像素子260が振れ補正のために移動する方向とが等しい場合(撮像素子260がY軸の-方向に移動する場合)、後幕255bの撮像素子260に対する走行速度は相対的に低下する。この場合、ボディ側制御部230は、後幕255bの撮像素子260に対する走行速度が低下するほど、後幕第1時間および後幕第2時間をいずれも長く補正する。このように構成することにより、振れ補正を行うセンサ駆動部265が撮像素子260を後幕255bの走行方向と同じ方向に移動させた場合、ボディ側制御部230は、後幕255bの撮像素子260に対する走行速度の低下を考慮して、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。
【0093】
また、上記振れ補正に伴う後幕255bの撮像素子260に対する走行速度の低下を考慮して焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることによって、信号処理部270は、焦点検出用画素信号が取得された露光時間(電荷蓄積時間)のフォーカスレンズ361aの平均位置を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を適切に算出することができる。
【0094】
上記と異なり、後幕255bが走行する方向と撮像素子260が振れ補正のために移動する方向とが反対の場合(撮像素子260がY軸の+方向に移動する場合)、後幕255bの撮像素子260に対する走行速度は相対的に上昇する。この場合、ボディ側制御部230は、後幕255bの撮像素子260に対する走行速度が上昇するほど、後幕第1時間および後幕第2時間をいずれも短く補正する。このように構成することにより、振れ補正を行うセンサ駆動部265が撮像素子260を後幕255bの走行方向と反対方向に移動させた場合、ボディ側制御部230は、後幕255bの撮像素子260に対する走行速度の上昇を考慮して、焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることができる。
【0095】
また、上記振れ補正に伴う後幕255bの撮像素子260に対する走行速度の上昇を考慮して焦点検出用画素の露光タイミングを適切に求めることによって、信号処理部270は、焦点検出用画素信号が取得された露光時間(電荷蓄積時間)のフォーカスレンズ361aの平均位置を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を適切に算出することができる。
上記の第2の実施の形態では、レンズ駆動部370bによって振れ補正レンズ361bを駆動させて行う振れ補正と、センサ駆動部265によって撮像素子260を駆動させて行う振れ補正とを行う例示をしたが、撮像素子260を駆動させる振れ補正のみでも良い。すなわち、交換レンズ3が振れ補正レンズ361bを備えず、ボディ側制御部230の指示によるセンサ駆動部265で撮像素子260を駆動させて振れ補正を行っても良い。
【0096】
上述した第2の実施の形態による焦点検出装置によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果の他に、以下の作用効果が得られる。すなわち、焦点検出装置は、撮像素子260を駆動するセンサ駆動部265と、撮像素子260の位置を検出するセンサ駆動部265とを有し、ボディ側制御部230は、センサ駆動部265で検出された位置を用いて遮光時刻を求める。
このように構成したので、シャッタ装置255の後幕255bの撮像素子260に対する走行速度が相対的に変化しても、ボディ側制御部230は、後幕255bの相対的な走行速度の変化を考慮して、焦点検出用画素の遮光時刻を適切に求めることができる。この結果、信号処理部270が、実際の電荷蓄積時間のフォーカスレンズ361aの平均位置を起点として合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を適切に算出できる。
【0097】
(変形例1)
上述した説明では、先幕255aと後幕255bとを有するシャッタ装置255を例に説明したが、先幕255aが省略され、後幕255b相当のみを有するシャッタ装置を備えるようにしてもよい。ボディ側制御部230は、電子シャッタ制御により撮像素子260に電荷蓄積動作を開始させて、続いてシャッタ装置255を閉駆動させる。ボディ側制御部230は、撮像素子260から信号処理部270へ転送された焦点検出用画素信号に基づき、信号処理部270に焦点検出演算を行わせる。
【0098】
変形例1の場合、採用されたフォーカスエリアPに対応する枠PSの位置に配置された焦点検出用画素に対して電子シャッタ制御により電荷蓄積動作を開始させる時刻は、上述した実施形態において算出した蓄積開始時刻に相当する。
すなわち、枠PS51の露光タイミングを算出する場合、枠PS51の位置における蓄積終了時刻である時刻tb2から蓄積時間を遡った時刻tb1を算出し、蓄積開始時刻とする。
また、枠PS52の露光タイミングを算出する場合、枠PS52の位置における蓄積終了時刻である時刻t5から蓄積時間を遡った時刻t3を算出し、蓄積開始時刻とする。
さらにまた、枠PS53の露光タイミングを算出する場合、枠PS53の位置における蓄積終了時刻である時刻tb4から蓄積時間を遡った時刻tb3を算出し、蓄積開始時刻とする。
【0099】
(変形例2)
移動する主要被写体がカメラシステム1に近づく場面を連写する場合、ボディ側制御部230が、複数のコマにおけるデフォーカス量の演算結果に基づいてフォーカスレンズ361の位置を予測するようにしてもよい。
図11は、連写時に行われるAF動作を説明するタイミングチャートである。
図6のタイミングチャートと比べると、フォーカスレンズの位置が相違する他は、
図6と同様である。ボディ側制御部230は、コマ毎に信号処理部270によって算出される焦点検出演算結果に基づき、コマ毎に交換レンズ3へフォーカス駆動を指示する。
【0100】
ボディ側制御部230は、前コマの撮像時に取得された焦点検出用画素信号に基づいて算出されたデフォーカス量が、n-1コマ、nコマ、n+1コマと増加している場合、例えば、過去の複数コマ分のデフォーカス量の増加の割合に基づき、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を予測する。フォーカスレンズ361aの目標位置をn+1コマ目の撮像時に取得された焦点検出用画素信号に基づいて算出する場合、通常の場合においては目標位置をQ1にするところ、変形例2においてはデフォーカス量の増加の割合を加味して目標位置をQ2とする。このように構成することにより、速く移動する主要被写体を連写する場合に、主要被写体に対してピントを合わせ続けることができる。なお、移動する主要被写体がカメラシステム1から遠ざかる場面を連写する場合も、上記と同様にボディ側制御部230が、複数のコマにおけるデフォーカス量の演算結果に基づいてフォーカスレンズ361の位置を予測するようにしてもよい。
【0101】
変形例2のように、デフォーカス量の変化を予測しながらフォーカスレンズ361aの移動量を算出する場合、蓄積期間中におけるフォーカスレンズ361aの平均位置が正しくないと、ピントを合わせ続けることが難しい。しかしながら、ボディ側制御部230は、上記実施の形態により算出した露光タイミングと、レンズ側制御部330から送信されたフォーカスレンズ361aの位置情報とに基づいて平均位置を算出するので、蓄積期間中におけるフォーカスレンズ361aの平均位置を正しく求めることができるため、デフォーカス量の変化を予測しながらフォーカスレンズ361aの移動量を算出する場合にも好適である。
【0102】
変形例2によれば、以下の作用効果が得られる。すなわち、複数の演算結果に基づいてフォーカスレンズの位置を予測するので、例えば、速く移動する主要被写体を連写する場合において主要被写体に対してピントを合わせ続けることができる。
【0103】
(変形例3)
上述した実施の形態では、撮像素子260の電荷蓄積中のフォーカスレンズ361aの位置情報が取得できる場合を例に説明した。電荷蓄積中のフォーカスレンズ361aの位置情報が取得できない場合は、電荷蓄積前に取得された直近の位置情報、または、電荷蓄積後に取得された直近の位置情報を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を算出してもよい。
あるいは、電荷蓄積前後にそれぞれ取得された直近の位置情報の加重平均をとり、加重平均された位置情報を起点として、合焦位置までのフォーカスレンズ361aの移動量を算出してもよい。
【0104】
(変形例4)
上述した実施の形態では、フォーカスレンズ361aの移動中に焦点検出用画素信号が取得される(電荷蓄積される)例を説明したが、電荷蓄積時はフォーカシングレンズ361aを移動させずに停止させておいてもよい。
【0105】
本発明は上述した内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1…カメラシステム、2…カメラボディ、3…交換レンズ、230…ボディ側制御部、235…記憶部、240…ボディ側通信部、255…シャッタ装置、255a…先幕、255b…後幕、260…撮像素子、265…センサ駆動部、270…信号処理部、330…レンズ側制御部、340…レンズ側通信部、350…レンズ側記憶部、360…撮像光学系、370…レンズ駆動部、P…フォーカスエリア、