(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100099
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ロボット教示システム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003839
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金井 嘉毅
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707JU08
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS05
3C707KS17
3C707KS20
3C707KS30
3C707KT03
3C707KT06
3C707LS05
3C707LS14
(57)【要約】
【課題】教示に用いるエンドエフェクタとロボットに装着されるエンドエフェクタとの間の機差や構造上の差異が存在する場合でも、教示された所定の作業が精度良く再現されるロボット教示システムを提供する。
【解決手段】第1エンドエフェクタおよび第2エンドエフェクタに対する位置姿勢が一意に定まるような被把持構造を有する位置姿勢固定具と、教示動作中の第1エンドエフェクタの位置姿勢情報を表す第1教示データを、第2エンドエフェクタの位置姿勢情報を表す第2教示データに変換する教示データ変換部と、を備え、教示データ変換部は、位置姿勢固定具を把持した時の第1エンドエフェクタと位置姿勢固定具との間の相対的な位置姿勢を表す第1相対位置姿勢と、位置姿勢固定具を把持した時の第2エンドエフェクタと位置姿勢固定具との間の相対的な位置姿勢を表す第2相対位置姿勢と、を用いて第1教示データを第2教示データに変換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持構造を有し、教示に用いられる第1エンドエフェクタと、
前記把持構造を有し、ロボットに装着される第2エンドエフェクタと、
を備えるロボット教示システムにおいて、
前記第1エンドエフェクタおよび前記第2エンドエフェクタの前記把持構造により把持されることで、前記第1エンドエフェクタおよび前記第2エンドエフェクタに対する位置姿勢が一意に定まるような被把持構造を有する位置姿勢固定具と、
教示動作中の前記第1エンドエフェクタの位置姿勢情報を表す第1教示データを、前記第2エンドエフェクタの位置姿勢情報を表す第2教示データに変換する教示データ変換部と、
前記第2教示データに基づいて前記ロボットを動作させるロボット制御部と、を備え、
前記教示データ変換部は、
前記位置姿勢固定具を把持した時の前記第1エンドエフェクタと前記位置姿勢固定具との間の相対的な位置姿勢を表す第1相対位置姿勢と、
前記位置姿勢固定具を把持した時の前記第2エンドエフェクタと前記位置姿勢固定具との間の相対的な位置姿勢を表す第2相対位置姿勢と、
を用いて前記第1教示データを前記第2教示データに変換する
ことを特徴とするロボット教示システム。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット教示システムであって、
前記第1エンドエフェクタの位置姿勢と、前記第1エンドエフェクタに把持された前記位置姿勢固定具の位置姿勢とを計測する第1計測部と、
前記第2エンドエフェクタの位置姿勢と、前記第2エンドエフェクタに把持された前記位置姿勢固定具の位置姿勢とを計測する第2計測部と、
前記第1エンドエフェクタの位置姿勢と前記第1エンドエフェクタに把持された前記位置姿勢固定具の位置姿勢とに基づいて前記第1相対位置姿勢を算出する第1相対位置姿勢算出部と、
前記第2エンドエフェクタの位置姿勢と前記第2エンドエフェクタに把持された前記位置姿勢固定具の位置姿勢とに基づいて前記第2相対位置姿勢を算出する第2相対位置姿勢算出部と、
を備えることを特徴とするロボット教示システム。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット教示システムであって、
前記第1エンドエフェクタ、前記第2エンドエフェクタ及び前記位置姿勢固定具のそれぞれは、被計測物を有し、
前記第1計測部および前記第2計測部は、前記被計測物を計測することで前記第1エンドエフェクタ、前記第2エンドエフェクタ及び前記位置姿勢固定具のそれぞれの位置姿勢を計測する
ことを特徴とするロボット教示システム。
【請求項4】
請求項1に記載のロボット教示システムであって、
前記第1相対位置姿勢が記憶される第1記憶部を備え、
前記第1エンドエフェクタは、前記第1エンドエフェクタの識別子である第1識別子を有し、
前記第1記憶部は、前記第1相対位置姿勢を前記第1識別子と紐づけて記憶し、
前記第1教示データは、教示に用いた前記第1エンドエフェクタの位置姿勢情報と、教示に用いた前記第1エンドエフェクタの前記第1識別子とを含み、
前記教示データ変換部は、前記第1教示データに含まれる前記第1識別子に対応する前記第1相対位置姿勢に基づいて前記第1教示データを前記第2教示データに変換する
ことを特徴とするロボット教示システム。
【請求項5】
請求項1に記載のロボット教示システムであって、
前記第2相対位置姿勢が記憶される第2記憶部を備え、
前記第2エンドエフェクタは、前記第2エンドエフェクタの識別子である第2識別子を有し、
前記第2記憶部は、前記第2相対位置姿勢を前記第2識別子と紐づけて記憶し、
前記教示データ変換部は、前記ロボットに装着される前記第2エンドエフェクタの前記第2識別子に対応する前記第2相対位置姿勢に基づいて前記第1教示データを前記第2教示データに変換する
ことを特徴とするロボット教示システム。
【請求項6】
請求項1に記載のロボット教示システムであって、
教示用ロボットと、
前記教示用ロボットを操作する操作部と、を備え、
前記第1エンドエフェクタは、前記教示用ロボットに装着される
ことを特徴とするロボット教示システム。
【請求項7】
請求項1に記載のロボット教示システムであって、
前記教示データ変換部は、前記第1相対位置姿勢を用いて、前記第1教示データを前記位置姿勢固定具の位置姿勢を表す第3教示データに変換し、前記第2相対位置姿勢を用いて、前記第3教示データを前記第2教示データに変換する
ことを特徴とするロボット教示システム。
【請求項8】
請求項1に記載のロボット教示システムであって、
前記ロボット制御部が前記第2教示データに基づいて前記ロボットを制御したときの前記第2エンドエフェクタの位置姿勢を実動作データとして計測する第3計測部をさらに有し、
前記ロボット制御部は、前記第2教示データと前記実動作データが一致するように、前記第2教示データを補正する
ことを特徴とするロボット教示システム。
【請求項9】
請求項1に記載のロボット教示システムであって、
前記第1エンドエフェクタおよび前記第2エンドエフェクタのそれぞれは、前記把持構造として、位置姿勢が計測されるベース部材と、前記ベース部材に取り付けられ、前記位置姿勢固定具および作業対象物を挟持する一対の把持部材と、を有し、
前記一対の把持部材は、前記位置姿勢固定具および前記作業対象物と接触する接触面と、前記接触面に設けられた嵌合部と、を有し、
前記位置姿勢固定具は、前記被把持構造の少なくとも一部として、前記一対の把持部材の前記嵌合部と嵌合する被嵌合部を有することを特徴とするロボット教示システム。
【請求項10】
請求項9に記載のロボット教示システムであって、
前記第1エンドエフェクタの前記ベース部材は、
教示者により操作される操作部と、
前記操作部と前記把持部材が連動するように、前記操作部に加えられた操作動力を伝達し、前記把持部材を動作させる動力伝達部と、
を有することを特徴とするロボット教示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに所定の作業を教示するためのロボット教示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットに所定の作業を教示するロボット教示システムとして、教示者が教示用デバイスを持ち、実演した作業をロボットに再現させるようなシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、教示者が教示用デバイスを持って所定の作業を実演し、そのデバイスの軌道をセンサで取得した後、センサ値に基づいてロボットの動作プログラムを自動で生成するロボット教示システムが開示されている。また、特許文献1の教示用デバイスには様々な道具(「エンドエフェクタ」に対応)が装着可能であり、様々な作業の教示に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示されるロボット教示システムでは、教示用デバイスに装着されたエンドエフェクタとロボットに装着されたエンドエフェクタとの間に生じる機差や構造上の差異により、教示データに位置または姿勢の誤差が発生し、教示された作業の再現精度が低下するという課題があった。
【0006】
本発明では、上記のような課題に鑑み、教示に用いるエンドエフェクタとロボットに装着されるエンドエフェクタとの間の機差や構造上の差異が存在する場合でも、教示された所定の作業が精度良く再現されるロボット教示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるロボット教示システムは、把持構造を有し、教示に用いられる第1エンドエフェクタと、前記把持構造を有し、ロボットに装着される第2エンドエフェクタと、を備えるロボット教示システムにおいて、前記第1エンドエフェクタおよび前記第2エンドエフェクタの前記把持構造により把持されることで、前記第1エンドエフェクタおよび前記第2エンドエフェクタに対する位置姿勢が一意に定まるような被把持構造を有する位置姿勢固定具と、教示動作中の前記第1エンドエフェクタの位置姿勢情報を表す第1教示データを、前記第2エンドエフェクタの位置姿勢情報を表す第2教示データに変換する教示データ変換部と、前記第2教示データに基づいて前記ロボットを動作させるロボット制御部と、を備え、前記教示データ変換部は、前記位置姿勢固定具を把持した時の前記第1エンドエフェクタと前記位置姿勢固定具との間の相対的な位置姿勢を表す第1相対位置姿勢と、前記位置姿勢固定具を把持した時の前記第2エンドエフェクタと前記位置姿勢固定具との間の相対的な位置姿勢を表す第2相対位置姿勢と、を用いて前記第1教示データを前記第2教示データに変換する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、教示に用いるエンドエフェクタとロボットに装着されるエンドエフェクタとの間の機差や構造上の差異が存在する場合でも、教示された所定の作業が精度良く再現されるロボット教示システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施例におけるロボット教示システムの動作を説明する図である。
【
図2A】第1の実施例における第1エンドエフェクタおよび位置姿勢固定具の詳細な構成を示す図である。
【
図2B】第1の実施例における第1相対位置姿勢算出処理を説明する図である。
【
図3A】第1の実施例における第2エンドエフェクタおよび位置姿勢固定具の詳細な構成を示す図である。
【
図3B】第1の実施例における第2相対位置姿勢算出処理を説明する図である。
【
図4】第1の実施例における教示データ変換部の動作を説明する図である。
【
図5A】第1の実施例における第1エンドエフェクタ利用教示処理を説明する図である。
【
図5B】第1の実施例に係る第1座標変換部における座標変換のイメージを作業空間上に示した図である。
【
図5C】第1の実施例に係る第2座標変換部における座標変換およびロボット動作処理のイメージを作業空間上に示した図である。
【
図6】第1の実施例におけるロボット制御部を説明する図である。
【
図7A】第2の実施例における教示データ変換部の構成および動作を説明する図である。
【
図7B】第2の実施例における教示データ変換部の他の構成の一例を示す図である。
【
図7C】第2の実施例における教示データ変換部の他の構成の一例を示す図である。
【
図8】第3の実施例における第1エンドエフェクタを説明する図である。
【
図9】第4の実施例における第1エンドエフェクタ利用教示処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本実施形態について説明する。なお、図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0011】
また、以下では当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能である。
【実施例0012】
図1は、第1の実施例におけるロボット教示システムの動作を説明する図である。本ロボット教示システム1では、第2エンドエフェクタ12が装着された任意のロボット53に対して教示を行うような状況を想定しており、教示者23が実際のロボット53および第2エンドエフェクタ12ではなく第1エンドエフェクタ11を用いて所定の作業を実演した時の第1エンドエフェクタ11の位置および姿勢を、第2エンドエフェクタ12が装着されたロボット53に再現させることによって教示を行う。以下では、「位置および姿勢」を「位置姿勢」と略記する。
【0013】
このような教示において、第1エンドエフェクタ11と第2エンドエフェクタ12との機差や構造上の差異(以下「機差や構造上の差異」を「機差等」と略記する。)により、第2エンドエフェクタ12が第1エンドエフェクタ11の位置姿勢を完全にトレースするだけでは、所定の作業を高精度に再現できない可能性がある。
【0014】
そこで、本発明による技術は、第1エンドエフェクタ11と第2エンドエフェクタ12との機差等を、第1エンドエフェクタ11および第2エンドエフェクタ12の両方で把持可能な共通の位置姿勢固定具13を用いて校正する。
【0015】
図1に示すように、本ロボット教示システム1には大きく5つの処理があり、第1エンドエフェクタ利用教示処理2、第1相対位置姿勢算出処理3、第2相対位置姿勢算出処理4、ロボット動作処理5、教示データ変換処理がある。
【0016】
第1エンドエフェクタ利用教示処理2は、教示者23が第1エンドエフェクタ11を持ち、作業対象物24の把持を含む所定の作業を実演する時の第1エンドエフェクタ11の位置姿勢情報を計測部22(例えば赤外カメラ)によって計測し、第1エンドエフェクタ利用教示部21により教示動作中の第1エンドエフェクタ11の位置姿勢情報を表す第1教示データ210を生成する処理である。
【0017】
第1相対位置姿勢算出処理3は、第1エンドエフェクタ11によって位置姿勢固定具13を把持した時の、第1エンドエフェクタ11と位置姿勢固定具13とのそれぞれの位置姿勢を第1計測部として機能する計測部32(例えば赤外カメラ)によって計測し、第1相対位置姿勢算出部31により第1エンドエフェクタ11と位置姿勢固定具13との間の相対的な位置姿勢を表す第1相対位置姿勢310を算出する処理である。なお、計測部32は、第1エンドエフェクタ11と位置姿勢固定具13とのそれぞれの位置姿勢を計測する代わりに、設計パラメータ等を用いて第1エンドエフェクタ11と位置姿勢固定具13とのそれぞれの位置姿勢を算出してもよい。
【0018】
第2相対位置姿勢算出処理4は、第2エンドエフェクタ12によって位置姿勢固定具13を把持した時の、第2エンドエフェクタ12と位置姿勢固定具13とのそれぞれの位置姿勢を第2計測部として機能する計測部42(例えば赤外カメラ)によって計測し、第2相対位置姿勢算出部41により第2エンドエフェクタ12と位置姿勢固定具13との間の相対的な位置姿勢を表す第2相対位置姿勢410を算出する処理である。なお、計測部42は、第2エンドエフェクタ12と位置姿勢固定具13とのそれぞれの位置姿勢を計測する代わりに、設計パラメータ等を用いて第2エンドエフェクタ12と位置姿勢固定具13とのそれぞれの位置姿勢を算出してもよい。
【0019】
なお、本ロボット教示システム1において、上記の処理2、3、4を実行する順番は問わない。
【0020】
教示データ変換処理は、教示データ変換部6が、第1相対位置姿勢310と第2相対位置姿勢410と用いて、第1教示データ210を第2教示データ510に変換する処理である。
【0021】
ロボット動作処理5は、ロボット制御部51が第2教示データ510に基づいて、ロボット53を制御して動作させる処理である。例えば、ロボット制御部51は、後述するように、教示データ変換部6により生成された第2教示データ510に含まれる第2エンドエフェクタ12の位置姿勢情報と、実際の第2エンドエフェクタ12の位置姿勢とが一致するようにロボット53を制御し、作業対象物54の把持を含む所定の作業をロボット53に再現させる。
【0022】
図2Aは、第1の実施例における第1エンドエフェクタおよび位置姿勢固定具の詳細な構成を示す図である。
【0023】
第1エンドエフェクタ11は、把持構造として、位置姿勢が計測されるベース部材113と、ベース部材113に取り付けられ、位置姿勢固定具13および作業対象物を挟持する一対の把持部材111および112と、を有する。また、第1エンドエフェクタ11の把持部材111および112は、それぞれ接触面1111(把持部材112については図示しない)と、嵌合部1112、1122と、を備える。
【0024】
第1の実施例における第1エンドエフェクタ11は、第2エンドエフェクタ12を模擬して作られたツールであり、ロボットに装着せずに、作業者が保持して扱う。そこで、第1エンドエフェクタ11のベース部材113には、作業者が保持する用のハンドル部材114が取り付けられる。ハンドル部材114は、ベース部材113に対して取り外しが可能な図示しない機構を有しており、教示者の作業のしやすさに応じて任意の形状とすることができる。また、第1の実施例では、アクチュエータやバッテリなどの駆動源を内蔵せず、把持部材111、112をベース部材113にねじ止めなどすることによって構成の組み立て変更がなされ、把持状態が実現されるものとする。
【0025】
ベース部材113には、被計測物116が固定される。被計測物116が計測部22または計測部32に計測されることで、第1エンドエフェクタ11の位置姿勢が計測される。本実施例では、被計測物116として、赤外光を反射する反射球116a~116dが取り付けられたマーカプレートを用いる例について説明する。
【0026】
ただし、第1エンドエフェクタ利用教示処理2において、例えば第1エンドエフェクタ11を対象装置の内部に侵入させるような作業を教示する場合、オクルージョン(手前にある物体で背後にある物体が隠れて見えないようになる状態)により計測部22によって被計測物116を正常に計測できない可能性がある。
【0027】
そこで、オクルージョンを防いで計測部22が被計測物116を良好に計測できるように、被計測物116とベース部材113との間に被計測物固定部材115を設ける。被計測物固定部材115は、オクルージョンを防げるように工夫して設計される。例えば、被計測物固定部材115は、Z型形状等とする。
【0028】
位置姿勢固定具13は、被把持部材131と固定具被計測物133とを有する。本実施例では、被計測物133として、赤外光を反射する反射球133a~133dが取り付けられたマーカプレートを用いる例について説明する。位置姿勢固定具13は、単体の独立した部材であっても良いし、作業対象物の一部として突出している部材であっても良い。
【0029】
被把持部材131は、把持部材111の嵌合部1112、および把持部材112の嵌合部1122と嵌合する被嵌合部132(嵌合部1112に対応する被嵌合部は図示しない)を有する。
【0030】
図2Bは、第1の実施例における第1相対位置姿勢算出処理を説明する図である。第1相対位置姿勢算出処理3では、計測カメラである計測部32を、計測部支柱321により作業台35全体を俯瞰できる位置に設置し、被計測物116および133からの反射光を光学的に検知することにより、作業台35に固定された作業台座標系37Σwを基準とした被計測物116および133の位置姿勢を取得する。
【0031】
本実施例における被計測物116および133の計測手段は、光学式モーションキャプチャシステムを想定している。計測カメラである計測部32が赤外光を照射し、反射球116a~116dおよび133a~133dからの反射赤外光と、各反射球の配置パターンを用いて、被計測物116および133の位置姿勢を計算する。
【0032】
第1エンドエフェクタ11の位置姿勢は、被計測物116に固定された第1エンドエフェクタ座標系117Σ1で表される。
【0033】
位置姿勢固定具13の位置姿勢は、固定具被計測物133に固定された固定具座標系134Σtで表される。
【0034】
計測部32により、作業台座標系37Σwを基準とした第1エンドエフェクタ座標系117Σ1の位置姿勢を表す同次変換行列wT1と、作業台座標系37Σwを基準とした固定具座標系134Σtの位置姿勢を表す同次変換行列wTtを取得し、上記2つの同次変換行列から、第1相対位置姿勢310として同次変換行列1Ttを、式:1Tt=(wT1)-1・wTtで算出する。なお、本実施例では、作業台35の一角を作業台座標系37Σwとしたが、作業台座標系37Σwの取り方は任意である。
【0035】
第1相対位置姿勢算出処理3における第1エンドエフェクタ11は、作業者33に支持されていても良いし、単体で独立して置かれていても良い。
【0036】
なお、本実施例では、第1相対位置姿勢算出処理3により第1相対位置姿勢310を算出したが、第1相対位置姿勢310は、設計データを元にあらかじめ与えられた数値であっても良い。
【0037】
図3Aは、第1の実施例における第2エンドエフェクタおよび位置姿勢固定具の詳細な構成を示す図である。
【0038】
第2エンドエフェクタ12は、把持構造として、位置姿勢が計測されるベース部材123と、ベース部材123に取り付けられ、位置姿勢固定具13および作業対象物を挟持する一対の把持部材121および122と、を有する。また、第2エンドエフェクタ12の把持部材121および122は、それぞれ接触面1211(把持部材122については図示しない)と、嵌合部1212、1222と、を備える。
【0039】
把持部材121、122は、それぞれ相対する開閉方向120に直動可能である。
【0040】
第2エンドエフェクタ12は、把持部材121および122によって作業対象物を挟み込むことにより把持動作を実現し、ベース部材123が任意のロボットに固定される。
【0041】
第2エンドエフェクタ12は、ロボットまたは外部の制御器からの信号によって駆動する電動または流体圧作動のアクチュエータと、アクチュエータの動力を把持部材121および/または122に伝達する動力伝達機構を内蔵する。
【0042】
図3Aに示す被把持部材131は、
図2Aに示す被把持部材131と同一であり、被嵌合部132(嵌合部1212に対応する被嵌合部は図示しない)は、把持部材121の嵌合部1212、および把持部材122の嵌合部1222と嵌合する。
【0043】
第1エンドエフェクタ11の嵌合部1112および1122と、第2エンドエフェクタ12の嵌合部1212および1222は、同一の位置姿勢固定具13の被嵌合部132と嵌合するため、同一形状、同一寸法である必要がある。一方で、嵌合部以外の形状(例えば、把持部材111、112の長さ、大きさ、ベース部材113の長さ、大きさ)は異なっていても良い。
【0044】
位置姿勢固定具13は、第1相対位置姿勢算出処理3において、嵌合部1112および1122と被嵌合部132とが嵌合するように把持部材111および112に挟まれることにより、第1エンドエフェクタ11に対する位置姿勢が幾何学的に拘束されて一意に定まる。
【0045】
また、位置姿勢固定具13は、第2相対位置姿勢算出処理4において、嵌合部1212および1222と被嵌合部132とが嵌合するように把持部材121および122に挟まれることにより、第2エンドエフェクタ12に対する位置姿勢が幾何学的に拘束されて一意に定まる。
【0046】
図3Bは、第1の実施例における第2相対位置姿勢算出処理を説明する図である。第2相対位置姿勢算出処理4では、計測カメラである計測部42を、計測部支柱421により作業台45全体を俯瞰できる位置に設置し、被計測物126および133からの反射光を光学的に検知することにより、作業台45に固定された作業台座標系47Σwを基準とした被計測物126および133の位置姿勢を取得する。
【0047】
被計測物126の計測手段は、前述の被計測物116および133と同様であり、被計測物126上に備えた反射球(符号については図示しない)を用いて、位置姿勢を取得する。
【0048】
本実施例における第2エンドエフェクタ12の位置姿勢は、被計測物126に固定された第2エンドエフェクタ座標系127Σ2で判断する。
【0049】
計測部42により、作業台座標系47Σwを基準とした第2エンドエフェクタ座標系127Σ2の位置姿勢を表す同次変換行列wT2と、作業台座標系47Σwを基準とした固定具座標系134Σtの位置姿勢を表す同次変換行列wTtを取得し、上記2つの同次変換行列から、第2相対位置姿勢410として、同次変換行列2Ttを、式:2Tt=(wT2)-1・wTtで算出する。なお、本実施例では、作業台45の一角を作業台座標系47Σwとしたが、作業台座標系47Σwの取り方は任意である。
【0050】
第2相対位置姿勢算出処理4における第2エンドエフェクタ12は、
図3Bのようにロボット43に支持されていても良いし、ロボットから独立して単体で置かれていても良い。
【0051】
なお、本実施例では、第2相対位置姿勢算出処理4により第2相対位置姿勢410を算出したが、第2相対位置姿勢410は、設計データを元にあらかじめ与えられた数値であっても良い。
【0052】
第2相対位置姿勢算出処理4における第2エンドエフェクタ12の位置姿勢は、前述したように、被計測物固定部材125に固定された被計測物126の位置姿勢として計測部42により計測される。ただし、第2エンドエフェクタ12の位置姿勢は、被計測物126の位置姿勢を用いずに、ロボット43の設計パラメータと関節角度情報とを用いた運動学計算の解として取得することもできる。この場合、教示の精度向上のためには、作業台座標系47Σwから見たロボット43に固定された図示しない座標系Σrの位置姿勢が既知である必要がある。
【0053】
上記計測部32および42では、第1相対位置姿勢310と第2相対位置姿勢410の算出において、ある任意の瞬間、ある任意の条件下で計測された1組の位置姿勢情報のみを用いて算出しても良いし、少なくとも2組以上の位置姿勢情報を計測して各組毎に第1相対位置姿勢310と第2相対位置姿勢410とを算出し、第1相対位置姿勢310と第2相対位置姿勢410とでそれぞれ平均を取っても良い。計測部32および42の出力にノイズが含まれる場合、複数点の平均を取る方がより正確な計測結果が得られる。
【0054】
図4は、第1の実施例における教示データ変換部の動作を説明する図である。
図5Aは、第1の実施例における第1エンドエフェクタ利用教示処理を説明する図である。具体的には、
図5Aは、第1エンドエフェクタ利用教示処理2において、教示者23が第1エンドエフェクタ11を用いて、作業対象物24の把持状態を含む作業を教示する様子を示している。また、
図5Aでは、作業の一例として、作業台25上の作業環境構造物26の内部に作業対象物24を入れるような作業を例示している。
【0055】
図5Aの例では、教示者23が持つ第1エンドエフェクタ11に固定された被計測物116を計測部22で一定周期時間ごとに計測し、第1エンドエフェクタ利用教示部21は、被計測物116に固定された第1エンドエフェクタ座標系117Σ1の位置姿勢と計測時刻とを第1教示データ210として生成する。なお、被計測物116に固定された第1エンドエフェクタ座標系117Σ1の位置姿勢は、作業台25に固定された作業台座標系27Σwを基準とした位置姿勢であり、同次変換行列wT1で表される。
【0056】
計測部22に対して、第1エンドエフェクタ11および作業対象物24が作業環境構造物26の影に隠れてしまうこと(オクルージョン)が想定される場合でも、前述したように、被計測物116が計測部22の測定範囲内に収まるように被計測物固定部材115を設計することで、計測部22が被計測物116を計測することができる。
【0057】
教示データ変換部6は、
図4に示すように、第1エンドエフェクタ利用教示部21により生成された第1エンドエフェクタ11の位置姿勢を表す第1教示データ210を、第1相対位置姿勢算出部31により算出された第1相対位置姿勢310と、第2相対位置姿勢算出部41により算出された第2相対位置姿勢410とを用いて、第2エンドエフェクタ12の位置姿勢である第2教示データ510に変換して、ロボット制御部51に送る。
【0058】
例えば、教示データ変換部6は、第1座標変換部61と第2座標変換部62とを有する。第1座標変換部61は、第1相対位置姿勢310を表す同次変換行列1Ttと、式:wTt=wT1・1Ttとを用いて、第1教示データ210として生成された計測時刻毎の同次変換行列wT1を、固定具座標系134Σtの位置姿勢を表す同次変換行列wTt(第3教示データ610)に変換する。
【0059】
そして、第2座標変換部62は、第2相対位置姿勢410を表す同次変換行列2Ttと、式:wT2=wTt・(2Tt)-1とを用いて、第3教示データ610として変換された同次変換行列wTtを、第2エンドエフェクタ12の位置姿勢を表す同次変換行列wT2(第2教示データ510)に変換する。
【0060】
図5Bは、第1の実施例に係る第1座標変換部61における座標変換のイメージを作業空間上に示した図である。
図5Bに示すように、第1教示データ210は作業台座標系27Σwから見て複数の教示点(例えば、異なる時刻t1からt7までの7点)の軌跡で表現される。
【0061】
前述したように、作業台座標系27Σwから見た第1教示データ210の各教示点(
図5Bでは、t1~t7の各教示点)の位置姿勢を表す同次変換行列wT1に対して、第1相対位置姿勢算出部31であらかじめ算出した第1相対位置姿勢310の同次変換行列1Ttを乗じることで、第1教示データ210の全教示点が、作業台座標系27Σwから見た固定具座標系134Σtの位置姿勢を表す同次変換行列wTt(第3教示データ610)に変換される。
【0062】
図5Cは、第1の実施例に係る第2座標変換部における座標変換およびロボット動作処理のイメージを作業空間上に示した図である。第1エンドエフェクタ利用教示処理2と同様、作業台55上の作業環境構造物56の内部に作業対象物54を入れるような作業を例示している。
【0063】
前述したように、作業台座標系57Σwから見た第3教示データ610の各教示点(
図5Cでは、t1~t7の各教示点)の位置姿勢を表す同次変換行列wTtに対し、第2相対位置姿勢算出部41であらかじめ算出した第2相対位置姿勢410の同次変換行列2Ttの逆行列を乗じることで、第3教示データ610の全教示点が、作業台座標系57Σwから見た第2エンドエフェクタ12の位置姿勢を表す同次変換行列wT2(第2教示データ510)に変換される。
【0064】
図6は、第1の実施例におけるロボット制御部を説明する図である。ロボット動作処理5では、ロボット制御部51が第2教示データ510に基づいてロボット53を動作させる。具体的には、ロボット制御部51は、第2教示データ510に含まれる第2エンドエフェクタ12の位置姿勢と、ロボット53に装着された第2エンドエフェクタ12の位置姿勢とが一致するようにロボット53を制御することにより、第1エンドエフェクタ11を用いて行われた作業対象物54の把持を含む所定の作業をロボット53に再現させる。
【0065】
ロボット制御部51は、例えば、教示データ補正部511と、逆運動学計算部512と、ロボット動作指令部513とを備える。
【0066】
教示データ補正部511では、作業台座標系57Σwを基準とした第2エンドエフェクタ12の位置姿勢情報である第2教示データ510を、ロボット53に固定された図示しない座標系Σrを基準とした第2エンドエフェクタ12の位置姿勢情報に変換する。
【0067】
逆運動学計算部512では、教示データ補正部511による変換後の第2教示データ510およびロボット53の設計パラメータを用いて、第2教示データ510を再現するようなロボット53の関節の角度を逆運動学の解として算出する。
【0068】
ロボット動作指令部513では、逆運動学計算部512の結果をもとに、動作指令514をロボット53に送信する。逆運動学計算部512の解が得られなかった場合は、実行不可としてエラーコードを出力する。
【0069】
第1の実施例におけるロボット動作処理5では、ロボット制御部51が第2教示データ510に基づいてロボット53を制御したときの第2エンドエフェクタ12の位置姿勢を実動作データ520として計測部52(第3計測部)により計測して、第2教示データ510と実動作データ520が一致するように、第2教示データ510を補正する。例えば、教示データ補正部511は、第2教示データ510における第2エンドエフェクタ12の位置姿勢と、実動作データ520における第2エンドエフェクタ12の位置姿勢とを比較して、位置姿勢のずれを検出し、検出した位置姿勢のずれを補正するためのオフセットを算出する。そして、ロボット53に固定された図示しない座標系Σrを基準とした第2エンドエフェクタ12の位置姿勢(変換後の第2教示データ510)にオフセットを加えることで、第2教示データ510と実動作データ520が一致するように、第2教示データ510を補正する。
【0070】
なお、計測部52を用いた補正をせずに、ロボット53の設計パラメータと関節角度情報を用いた運動学計算の解を真値として第2教示データ510を補正しても良い。この場合、教示された所定の作業の精度向上のためには、作業台座標系57Σwから見たロボット53に固定された図示しない座標系Σrの位置姿勢が既知であることと、ロボット53の設計パラメータと関節角度情報が高精度である必要がある。
【0071】
また、本実施例では、計測部22、32、42および52は、それぞれ別のものとして記載しているが、同一のものを用いても良い。
【0072】
なお、ロボット動作処理5におけるロボット53は、第2相対位置姿勢算出処理4におけるロボット43と同一のロボットであっても良いし、別のロボットであっても良い。
【0073】
もし仮に、ロボット制御部51が、第1エンドエフェクタ座標系117Σ1の位置姿勢を表す第1教示データ210に従ってロボット53を制御した場合、ロボット制御部51は、
図3Bに示す第2エンドエフェクタ座標系127Σ2が、
図2Bに示す第1エンドエフェクタ座標系117Σ1の位置姿勢をトレースするようにロボット53を制御する。このような場合において、例えば、ベース部材113(第1エンドエフェクタ座標系117Σ1)に対する把持部材111および112の相対的な位置姿勢が、ベース部材123(第2エンドエフェクタ座標系127Σ2)に対する把持部材121および122の相対的な位置姿勢と異なる場合、すなわち、第1エンドエフェクタ11と第2エンドエフェクタ12との間で機差等がある場合、第2エンドエフェクタ座標系127Σ2が第1エンドエフェクタ座標系117Σ1の位置姿勢を正確にトレースしたとしても、第2エンドエフェクタ12の把持部材121および122は第1エンドエフェクタ11の把持部材111および112の位置姿勢を正確にはトレースできない。
【0074】
本実施例に係る第1相対位置姿勢算出処理3では、位置姿勢固定具13と把持部材111および112との相対的な位置姿勢が一意に定まるので、把持構造の正確な位置姿勢(ツールセンターポイント)が実質的に固定具座標系134Σtから定まる。そのため、本実施例では、第1エンドエフェクタ座標系117Σ1と、固定具座標系134Σtとの間の相対的な位置姿勢を第1相対位置姿勢310として算出する。
【0075】
また、本実施例に係る第2相対位置姿勢算出処理4では、同様に、位置姿勢固定具13と把持部材121および122との相対的な位置姿勢が一意に定まるので、把持構造の正確な位置姿勢(ツールセンターポイント)が実質的に固定具座標系134Σtから定まる。そのため、本実施例では、第2エンドエフェクタ座標系127Σ2と、固定具座標系134Σtとの間の相対的な位置姿勢を第2相対位置姿勢410として算出する。
【0076】
そして、第1相対位置姿勢310および第2相対位置姿勢410を用いて、第1教示データ210を第2教示データ510に変換することで、第1エンドエフェクタ11と第2エンドエフェクタ12の機差等が存在する場合でも、教示された所定の作業が精度良く再現される。
【0077】
上記の例では、被計測物116、126および133の位置姿勢を、上述した光学式モーションキャプチャシステムによって計測する例を示したが、これに代えて、把持された作業対象物の動きをホール素子等を用いて磁気式に検知するモーションキャプチャシステムを採用することもできる。あるいは、被計測物を用いず、作業対象物や教示者23の動作をカメラで撮影し、その映像を解析するシステムを採用することもできる。
【0078】
また、第1エンドエフェクタ座標系117Σ1と設計データとから把持部材111および112の位置姿勢(ツールセンターポイント)を算出することも可能であるが、被計測物固定部材115、ベース部材113、把持部材111、112などの寸法誤差、組み立て誤差が含まれるため、把持部材111および112の位置姿勢(ツールセンターポイント)を高精度に算出することが困難な場合もある。このような場合でも、本実施例によれば、実際の計測に基づいて、把持部材111および112の位置姿勢が位置姿勢固定具13の位置姿勢から定まるので、上記のような誤差の影響を受けにくい。
【0079】
また、ロボットに装着されている第2エンドエフェクタを取り外しそのまま教示に用いることも考えられるが、大きさや重さなどの理由によりロボットに装着されている第2エンドエフェクタを教示者が容易に扱うことができないケースもある。このようなケースでは、第2エンドエフェクタに対して機差等がある第1エンドエフェクタを用いざるを得ない。本発明によれば、第1エンドエフェクタと第2エンドエフェクタとの間に機差等が存在していても問題がないため、第2エンドエフェクタの大きさや重さによらず教示が可能である。したがって、本発明のロボット教示システムはより汎用的に使用することができる。
本発明における第2の実施例によるロボット教示システム1の構成を説明する。本実施例では、第1の実施例と異なる点を中心に説明し、説明を省略している構成については第1の実施例と同様である。
第1エンドエフェクタ11aおよび11b、ならびに第2エンドエフェクタ12aおよび12bのすべては、実施例1と同様に、位置姿勢固定具13の被嵌合部132に嵌合する嵌合部が設けられた把持部材を有する。ただし、寸法、駆動方式は限定しない。
教示データ変換部6は、第1座標変換部61と第2座標変換部62とのほかに、第1相対位置姿勢記憶部63と、第2相対位置姿勢記憶部64と、教示データ記憶部65とをさらに有する。
第1相対位置姿勢記憶部63は、第1エンドエフェクタ11aを用いた第1相対位置姿勢算出処理3により生成された第1エンドエフェクタ11aの位置姿勢情報と、第1エンドエフェクタ11aに関する情報であることを識別するための識別子(第1識別子)とを紐づけて第1相対位置姿勢310aとして記憶するとともに、第1エンドエフェクタ11bを用いた第1相対位置姿勢算出処理3により生成された第1エンドエフェクタ11bの位置姿勢情報と、第1エンドエフェクタ11bに関する情報であることを識別するための識別子(第1識別子)とを紐づけて第1相対位置姿勢310bとして記憶する。
第2相対位置姿勢記憶部64は、第2エンドエフェクタ12aを用いた第2相対位置姿勢算出処理4により生成された第2エンドエフェクタ12aの位置姿勢情報と、第2エンドエフェクタ12aに関する情報であることを識別するための識別子(第2識別子)とを紐づけて第2相対位置姿勢410aとして記憶するとともに、第2エンドエフェクタ12bを用いた第2相対位置姿勢算出処理4により生成された第2エンドエフェクタ12bの位置姿勢情報と、第2エンドエフェクタ12bに関する情報であることを識別するための識別子(第2識別子)とを紐づけて第2相対位置姿勢410bとして記憶する。
第1エンドエフェクタ利用教示部21aは、第1エンドエフェクタ11aを用いた第1エンドエフェクタ利用教示処理2により、教示動作中の第1エンドエフェクタ11aの位置姿勢情報と、第1エンドエフェクタ11aに関する情報であることを識別するための識別子とを含む第1教示データ210aを生成する。
第1座標変換部61は、第1教示データ210aが入力されたとき、第1教示データ210aに含まれる識別子を用いて、その識別子に対応する第1相対位置姿勢310aを第1相対位置姿勢記憶部63より参照し、第3教示データ610aを生成して、教示データ記憶部65に格納する。
同様に、第1エンドエフェクタ利用教示部21b(図示しない)は、第1エンドエフェクタ11bを用いた第1エンドエフェクタ利用教示処理2により、第1教示データ210bを生成する。そして、第1座標変換部61は、第1教示データ210bが入力されたとき、第1教示データ210bに含まれる識別子を用いて、その識別子に対応する第1相対位置姿勢310bを第1相対位置姿勢記憶部63より参照し、第3教示データ610bを生成して、教示データ記憶部65に格納する。
第2座標変換部62は、ロボット制御部51bより、どの第2エンドエフェクタを制御するかの情報(例えば、第2エンドエフェクタ12bの識別子)と、どの教示データを再現するかの情報(例えば、第3教示データ610aを再現する)とを含むロボット制御条件データ515bを受け取り、第2相対位置姿勢記憶部64より該当する識別子に対応する第2相対位置姿勢410bと、教示データ記憶部65より該当する第3教示データ610aをそれぞれ参照して、第2教示データ510bを生成する。
本実施例によれば、異なる第1エンドエフェクタ11を用いて生成された複数の第1教示データ210の中から任意の第1教示データ210を選択してロボットに再現させる場合においても、教示された所定の作業が精度良く再現される。