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特開2024-100159計測システム、計測装置、計測方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100159
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】計測システム、計測装置、計測方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G01B11/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003943
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鎰谷 賢治
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065CC14
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065RR06
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】ヒビ割れなど線状の欠陥の幅を実際の被写体に計測作業者が実際に近接して計測する場合と同等の方法と精度で計測できる技術を提供すること。
【解決手段】本発明は、撮像装置が被写体を撮像して生成した画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データ取得部が取得した画像データを、前記被写体が等倍で表示されるサイズに変倍する変倍部と、前記変倍部が変倍した前記画像データを表示する画像表示部と、前記被写体のサイズを計測するための物差し画像102を等倍で表示する物差し表示部と、前記物差し画像を用いた前記被写体のサイズの計測を受け付ける操作受付部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置が被写体を撮像して生成した画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、前記被写体が等倍で表示されるサイズに変倍する変倍部と、
前記変倍部が変倍した前記画像データを表示する画像表示部と、
前記被写体のサイズを計測するための物差し画像を等倍で表示する物差し表示部と、
前記物差し画像を用いた前記被写体のサイズの計測を受け付ける操作受付部と、
を有する計測システム。
【請求項2】
前記物差し画像は、等間隔の目盛りを有し、
前記操作受付部は、前記被写体の端から端までに存在する前記目盛りの数に基づいて入力された、前記被写体のサイズを受け付けることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記物差し画像は、太さが異なる複数の直線と前記太さを表す数値を有し、
前記操作受付部は、前記被写体のサイズに最も近い前記太さの前記直線に対応する前記数値の入力を、前記被写体のサイズとして受け付けることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
前記物差し表示部は、前記被写体に最も近い前記直線に対応する前記数値を、前記被写体のサイズとして取得することを特徴とする請求項3に記載の計測システム。
【請求項5】
前記物差し画像が有する前記複数の直線は、右から左、又は、左から右に、前記太さの昇順に配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の計測システム。
【請求項6】
前記操作受付部が、前記物差し画像が有する前記複数の直線をスライドさせる操作を受け付けた場合、
前記物差し表示部は、前記物差し画像の一方の端部から他方の端部までにある前記複数の直線の太さを、スライド方向に応じて変更することを特徴とする請求項5に記載の計測システム。
【請求項7】
前記操作受付部は、前記物差し画像の位置と角度の変更を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項8】
前記画像データにおける前記物差し画像の位置情報、前記被写体のサイズ、及び前記画像データを対応付けて保存する計測部、を有することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項9】
前記被写体は、構造物の表面に生じた線状の欠陥であることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項10】
前記線状の欠陥は、構造物の表面に生じたヒビであり、前記ヒビの幅が前記被写体のサイズであることを特徴とする請求項9に記載の計測システム。
【請求項11】
撮像装置が被写体を撮像して生成した画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、前記被写体が等倍で表示されるサイズに変倍する変倍部と、
前記被写体のサイズを計測するための物差し画像を等倍で表示する物差し表示部と、
前記物差し画像を用いた前記被写体のサイズの計測を受け付ける操作受付部と、
を有する計測装置。
【請求項12】
情報処理装置が行う計測方法であって、
撮像装置が被写体を撮像して生成した画像データを取得する処理と、
取得された画像データを、前記被写体が等倍で表示されるサイズに変倍する処理と、
変倍された前記画像データを表示する処理と、
前記被写体のサイズを計測するための物差し画像を等倍で表示する処理と、
前記物差し画像を用いた前記被写体のサイズの計測を受け付ける処理と、
を有する計測方法。
【請求項13】
情報処理装置を、
撮像装置が被写体を撮像して生成した画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、前記被写体が等倍で表示されるサイズに変倍する変倍部と、
前記変倍部が変倍した前記画像データを表示する画像表示部と、
前記被写体のサイズを計測するための物差し画像を等倍で表示する物差し表示部と、
前記物差し画像を用いた前記被写体のサイズの計測を受け付ける操作受付部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測システム、計測装置、計測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋、トンネル、建築物、道路などの構造物の表面に生じるヒビなどの線状の欠陥の幅を計測する技術が知られている。欠陥の幅やその進行速度により、ヒビの補修や当該構造物の建て替え等の逼迫性が推定される。
【0003】
ここで、上記の構造物の表面に生じるヒビなどの線状の欠陥をデジタルカメラで撮像して得た画像データを用いて検査する装置として、例えば特許文献1や特許文献2などが提案されている。
【0004】
しかし、上記特許文献1,2の方法は被写体のサイズを計測する方法については開示していない。
【0005】
また、印刷、電子写真、インクジェットなど出力画像の幅を計測する手段は例えば、特許文献3などで提案されている。特許文献3には、計測用に予め定められたチャートをチャート上の照度が一様かつ毎回ほぼ一定になるよう制御された照明下で計測する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、トンネルなど照明条件や撮像条件を十分に制御できない環境下で撮像された画像には、制御できないノイズやボケ、照明ムラなど計測の障害となる妨害が重畳されるため、上記の特許文献3の印刷出力画像の幅を計測する方法では、被写体のサイズ、例えばヒビなどの線状の欠陥(画像データではオブジェクトともいう)の幅を正確に計測することは困難である。
【0007】
更に、特許文献3の方法では、一定の長さを持ち屈曲していない印刷の出力画像の直線部分を計測対象として想定したものであるが、構造物におけるヒビなどの線状のオブジェクトは短い不均一な間隔かつ不均一な角度で屈曲を繰り返しているため、特許文献3の方法は、構造物の表面に生じる幅の計測に適用できない。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、ヒビ割れなど被写体のサイズを実際の被写体に計測作業者が実際に近接して計測する場合と同等の方法と精度で計測できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、撮像装置が被写体を撮像して生成した画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データ取得部が取得した画像データを、前記被写体が等倍で表示されるサイズに変倍する変倍部と、前記変倍部が変倍した前記画像データを表示する画像表示部と、前記被写体のサイズを計測するための物差し画像を等倍で表示する物差し表示部と、前記物差し画像を用いた前記被写体のサイズの計測を受け付ける操作受付部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
ヒビ割れなど被写体のサイズを実際の被写体に計測作業者が実際に近接して計測する場合と同等の方法と精度で計測できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態におけるヒビの幅の計測方法の概略を説明する図である。
図2】計測システムの構成例を示す図である。
図3】外部記憶媒体を介して画像データを取得する本実施形態の他の形態に係る情報処理装置の外観図の一例である。
図4】情報処理装置の一例のハードウェア構成を示す図である。
図5】デジタルカメラ、サーバ装置及びPCの一例の機能構成を示すブロック図である。
図6】PCが表示する画像データの一例を示す図である。
図7】PCが表示する、ヒビの画像データと物差し画像の一例を示す図である。
図8】画像データにおいて位置と角度が変更された物差し画像の一例を示す図である。
図9】計測作業者が計測システムを使用してヒビの幅を計測する処理を説明するシーケンス図の一例である。
図10】画像データに重畳して表示された第2物差し画像の一例を示す図である。
図11】画像データに重畳して表示された第2物差し画像の一例を示す図である。
図12】スライド操作により変更された1つの物差し画像内に表示される複数の幅イメージの一例を示す図である。
図13】画像データにおいて位置と角度が変更された第2物差し画像の一例を示す図である。
図14】実施例2においてデジタルカメラ、及びPCの一例の機能構成を示す図である。
図15】実施例2において計測作業者が計測システムを使用してヒビの幅を計測する処理を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、計測システムと計測システムが行う計測方法について図面を参照しながら説明する。
【実施例0013】
<計測方法の概略>
現状では橋、トンネル、建築物、道路などの構造物の表面に生じたヒビの幅を撮像された画像データから計測するための国内標準や国際標準、又は実用的に広く用いられている方法は存在しない。ヒビの幅の計測値としては、計測作業者が現地でクラックスケールと呼ばれるヒビ幅計測に特化した物差しをヒビに当てて、物差しから実際のヒビの幅と最も近い幅を特定する方法が一般的に行われている。
【0014】
ここで、トンネルなどの非常に重要かつ大規模な社会インフラは、補修などにも多額の費用を要するため、ヒビ割れなどの変状の大きさそのものだけでなく、変状が進行性であるのかそうでないのかを管理部署が見極めて適切なタイミングで補修を行う必要がある。そのためにはヒビの幅として取得された計測データは、計測作業者が現地で実際の変状に近接して計測する従来方法の計測値とほぼ同等とみなせる方法で取得され、かつ、従来方法で計測する際の精度とほぼ同等とみなせる精度を有していなければ意味のある比較検討を行うことができない。このため、従来の技術では、変状の進行度合いを正しく判断することができなくなってしまうというおそれがあった。
【0015】
そこで、本実施形態では、計測作業者が、ヒビを含む被写体の等倍の画像をPC等で表示させて、ソフトウェアで表示したクラックスケール(後述する物差し画像)を用いて、ひび等の幅を計測する。
【0016】
図1は、本実施形態におけるヒビの幅の計測方法の概略を説明する図である。
(1) 計測作業者がデジタルカメラを操作して、又は、移動体に搭載されたデジタルカメラが自動的に(あるいは遠隔操作で)、ヒビ101を撮像する。例えば、デジタルカメラはヒビ101の画像データをネットワーク上の情報処理装置に送信する。情報処理装置は、計測作業者が操作するPCなどの端末装置にヒビ101を含む画像を被写体と等倍のサイズで表示する画面を提供する(図1(a))。この画面には物差し画像102が表示される。
【0017】
(2) 次に、計測作業者は、マウスなどのポインティングデバイスを操作して、画面上に表示された物差し画像102をヒビ101の近くに移動させる。物差し画像102は、情報処理装置が端末装置に表示させた表示部品である。
【0018】
(3) 計測作業者は、物差し画像102が有する目盛りがヒビ101の幅と平行になるように物差し画像102の角度を調整する。そして、計測作業者は、ヒビ101の端から端までの目盛りの数(小数点を含んでよい)を数えて、ヒビ101の幅を計測する。物差し画像102の目盛りは、実物と等倍のサイズで表示されている。したがって、ヒビ101の端から端までの目盛りの数は、実際のヒビ101の幅を表す。
【0019】
このような計測方法により、デジタルカメラが撮像した画像に被写体の一部として写っているヒビ割れなど線状のオブジェクトの幅を、実際の被写体に計測作業者が実際に近接して計測する場合と同等の方法と精度で計測することができる。
【0020】
<用語について>
被写体とは、デジタルカメラで写し取られる像をいう。本実施形態では、被写体は、例えば構造物の表面、及び、表面の線状の欠陥(例えばヒビ)である。
【0021】
等倍とは、縮小及び拡大をしない、もとの大きさのことをいう。本実施形態では、実空間内の(実際の)ヒビに対し等倍のサイズで画像データのヒビが表示される
物差し画像とは、物の長さを測るために目盛りがついた直線状の画像をいう。物差し画像は、実際の物差しを模倣した形状を有することが好ましい。
【0022】
線状の欠陥とは、線状の形状を有する欠けて足りない部分をいう。線状とは、線のような細長い形であればよく、数学上の線(太さがゼロ)は含まない。本実施形態では、線状の欠陥の一例として、ヒビを例に説明する。ヒビは亀裂、クラック、われ目、裂け目、破目、裂け目等と呼ばれてもよい。
【0023】
<構成例>
図2は、本実施形態の計測システム100の構成例を示す。図2では、情報処理装置1が計測を行う。デジタルカメラ5は、定期検査、建築中の検査、老朽検査、災害後の被害状況確認などの様々な検査(状況確認)の際に、トンネル検査車、橋梁点検車、路面点検車、ヘリ、無人ロボット、ドローンなどに搭載されて、あるいは検査担当者(人)によって、写真を撮像する撮像装置である。撮像される写真の被写体は、コンクリート(アスファルト)などで構成されるトンネル、橋、道路、建物などの構造物の壁面や天井や地面である。デジタルカメラ5が構造物を撮像して生成した画像データから、情報処理装置1が、被写体の表面における、ヒビなどの異常を検出する。
【0024】
ここで、本実施形態の計測方法で利用する画像データとなる被写体を撮像するデジタルカメラ5は、一般的なデジタルカメラよりも焦点深度を深く、ピントが合う範囲を広くした、EDoF(extended (enhanced)depth of field)カメラ(被写界深度拡大カメラ)であってもよい。デジタルカメラ5は、モバイル端末3に搭載されていてもよい。
【0025】
図2の例では画像データを撮像するデジタルカメラ5と、PC(パーソナルコンピュータ)4又はタブレット端末やスマートフォン等のモバイル端末3が有線又は無線で直接接続されている。したがって、デジタルカメラ5、モバイル端末3又はPC4のいずれか1つ以上が画像データを情報処理装置1に送信できる。
【0026】
あるいは、サーバ装置6は、撮像された構造物の表面のヒビが写っている画像データをデジタルカメラ5から直接受信してもよい。直接受信とは、デジタルカメラ5とサーバ装置6が有線又は無線で直接接続されていてもよいし、サーバ装置6が記憶媒体に保存された画像データを読み取ってもよい。
【0027】
サーバ装置6、PC4又はモバイル端末3はいずれもコンピュータであり、サーバ装置6、PC4又はモバイル端末3のいずれもが情報処理装置1として、本実施形態の計測方法を実行することができる。
【0028】
また、PC4やモバイル端末3上は計測作業者が操作する端末装置となり得る。この場合、PC4とモバイル端末3は、ユーザからのヒビの計測に関する指示の送信と結果の受信を行い、実際の計測はネットワーク2(WEBインターフェース)を介したサーバ装置6上が実行する。
【0029】
更に、本実施形態の計測方法を実行する情報処理装置1は、画像データを取得可能であれば、ネットワークや配線を介して画像データと接続されていなくてもよい。
【0030】
図3は、外部記憶媒体を介して画像データを取得する本実施形態の他の形態に係る情報処理装置1を示す。図3に示すように、デジタルカメラ5によって撮像された画像データが格納された外部記憶媒体であるCD-ROM201やUSBメモリ202がPC7に装着される。PC7が外部記憶媒体から画像データを読み取り、PC7が本実施形態の計測方法を実行する。したがって、PC7も情報処理装置1に相当する。情報処理装置1は計測装置の一例である。
【0031】
また、計測方法を実行させるための計測プログラムが、CD-ROM201やUSBメモリ202へ記憶された状態で頒布(配布、販売)されてもよい。この場合、図3に示すCD-ROM201やUSBメモリ202などの外部記憶媒体は、計測方法をコンピュータに実行させるための計測プログラムを記憶した、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体として機能する。
【0032】
なお、本実施形態の計測プログラムを、モバイル端末3又はPC4が配布用のサーバからインターネット(ネットワーク)を介してダウンロードすることで、計測プログラムが頒布されてもよい。
【0033】
<ハードウェア構成例>
図4を参照して、本実施形態に係る情報処理装置1(モバイル端末3、PC4、PC7、サーバ装置6)のハードウェア構成例について説明する。図4は、本実施形態に係る情報処理装置1の一例のハードウェア構成を示す図である。
【0034】
図4に示されているように、情報処理装置1はコンピュータ500によって構築されており、CPU501、ROM502、RAM503、HD(Hard Disk)504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレイ506、外部機器接続I/F(Interface)508、ネットワークI/F509、バスライン510、キーボード511、ポインティングデバイス512、光学ドライブ514、メディアI/F516を備えている。
【0035】
これらのうち、CPU501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。HD504は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御にしたがってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F509は、ネットワーク2を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン510は、図4に示されているCPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0036】
また、キーボード511は、文字、数値、又は各種指示などの入力に使用される複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。光学ドライブ514は、着脱可能な記憶媒体の一例としての光記憶媒体513に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、光記憶媒体513は、CD,DVD、Blu-Ray(登録商標)等でよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0037】
<機能について>
次に、図5を参照して、本実施形態に係る情報処理装置1等の機能構成について説明する。図5は、本実施形態に係るデジタルカメラ5、サーバ装置6及びPC4の一例の機能構成を示すブロック図である。なお、図5では、図2に基づいて、サーバ・クライアントシステムの形態である計測システム100を例にして機能を説明する。スタンドアロン型の計測システム100については後述する。また、図5では、PC4を計測作業者が操作する端末装置として説明するが、端末装置はモバイル端末3でもよいし、その他の任意のコンピュータでもよい。
【0038】
<<デジタルカメラ>>
デジタルカメラ5は、撮像部11と画像データ送信部12とを有している。撮像部11は、被写体からの光線をレンズなどの光学系によってCCDやCMOSなどの固体撮像素子に結像させ、その像の光による明暗を電荷の量に光電変換する。撮像部11は、画素ごとに光電変換された電圧値を順次読み出して一枚の画像データを生成する。
【0039】
画像データ送信部12は、生成された画像データを情報処理装置1に送信する。図2において説明したように、画像データを、モバイル端末3又はPC4が情報処理装置1に送信してもよいし、デジタルカメラ5が直接、情報処理装置1に送信してもよい。デジタルカメラ5には情報処理装置1のURL等の送信先が設定されている。画像データの送信は、計測作業者が操作することで行ってもよいし、自動的に行われてもよい。また、画像データの送信は1つの画像データずつ行われてもよいし、複数枚がまとめて送信されてもよい。
【0040】
また、デジタルカメラ5は、情報処理装置1においてテナントと紐付けられているとよい。テナントとは、サービスの提供者からサービスを受けることを契約したユーザのグループ(企業や自治体、これらの一部の組織等)や個人である。本実施形態では、一例として、テナントに所属するユーザ(計測作業者)が、PC4でヒビの幅を計測するサービスを受けられる。
【0041】
<<サーバ装置>>
サーバ装置6は、画像データ取得部21、変倍部22、計測部23、及び、サーバ機能部24を有する。これら各機能部は、情報処理装置1にインストールされた1以上のプログラムに含まれる命令を図4に示したCPU501が実行することで実現される機能又は手段である。
【0042】
画像データ取得部21は、デジタルカメラ5から画像データを取得する。画像データ取得部21は、画像データを受信してもよいし、記憶媒体から読み取ってもよい。
【0043】
変倍部22は、PC4が画像データとして表示するヒビが実際のヒビと同じサイズ(等倍)で表示されるように、画像データの倍率を決定し、この倍率で画像データを変倍する。詳細は後述する。
【0044】
計測部23は、PC4が送信する、ヒビの幅と物差し画像102の位置情報を画像データに対応付けてHD504等に保存する。
【0045】
サーバ機能部24は、HTTPs等の通信プロトコルでPC4と通信を行うWebサーバの機能と、PC4が表示する画面情報を生成する機能を有している。画面情報は、HTML、XML、スクリプト言語(例えばJavaScript(登録商標))、及びCSS(Cascading Style Sheet)等で記述されたプログラムであり、主にHTMLによりWebページの構造が特定され、スクリプト言語によりWebページの動作が規定され、CSSによりWebページのスタイルが特定される。なお、PC4がネイティブアプリを実行する場合、画面の構成はネイティブアプリが有しているので、画面情報はネイティブアプリが表示する内容でよい。
【0046】
サーバ機能部24とPC4はWebアプリを実行してもよい。Webアプリとは、Webブラウザ上で動作するスクリプト言語によるプログラムとWebサーバ側のプログラムが協調することによって動作するアプリケーションである。これに対し、PC4にインストールされなければ実行されないアプリケーションをネイティブアプリという。本実施形態に関しても、PC4で実行されるアプリケーションはネイティブアプリでもよい。
【0047】
<<PC>>
PC4は、画像データ受信部31、画像表示部32、物差し表示部33、及び操作受付部34を有している。これら各機能部は、PC4にインストールされた1以上のプログラムに含まれる命令を図4に示したCPU501が実行することで実現される機能又は手段である。上記のように、このプログラムはWebブラウザでもよいし、専用のソフトウェアでもよい。
【0048】
画像データ受信部31は、サーバ装置6に対し被写体の画像データを要求し、要求に対する応答として画像データを受信する。例えば、計測作業者がPC4にIDやパスワードを入力することでサーバ装置6にログインすると、テナントが特定される。サーバ装置6は、このテナントに紐付けられた画像データのリストをPC4に送信する。あるいは、計測作業者がログインすると、デジタルカメラ5が撮像し、まだ、ヒビの幅が計測されていない画像データ又はそのリストが、自動的にサーバ装置6からPC4に送信されてもよい。ヒビの幅が計測されていない画像データは、情報処理装置1において、画像データにヒビの幅と物差し画像102の位置情報が対応付けられていないものである。
【0049】
画像表示部32は、画像データ受信部31が受信した画像データをディスプレイ506に表示する。変倍部22による変倍により、画像データにおける被写体(ヒビの幅)が等倍で表示される。
【0050】
物差し表示部33は、実際の物差しのサイズと等倍の物差し画像102を画像データに重畳して表示する。詳細は後述する。物差し画像102は、ユーザがポインティングデバイスにより移動及び回転できる。操作受付部34は、PC4に対する計測作業者の各種の操作を受け付ける。
【0051】
<ヒビの一例>
図6は、PC4が表示する画像データの一例である。画像データにはヒビ101が写っている。計測作業者は物差し画像102を操作して、このヒビ101の任意の位置の幅を計測できる。
【0052】
<倍率の決定>
次に、ヒビ101をPC4が等倍で表示するために、変倍部22が決定する画像データの倍率について説明する。
【0053】
デジタルカメラ5が画像データを撮像した際のパラメータが以下であるとする。
デジタルカメラ5の光学系の倍率:A倍(Aはゼロより大きい実数)
イメージセンサーの撮像画素密度:D[画素数/mm]
したがって、撮像された画像データにおける像の解像度R(1画素当たりの長さ)は以下のようになる。
R[mm/画素] = 1/AD …… (1)
Rはイメージセンサーの1画素あたりに記録される被写体の実際の長さに相当し、撮像される画像データはこの解像度で実世界を撮像したものになる。
【0054】
PC4は、被写体を撮像した画像データをディスプレイ506などに表示する。計測作業者は表示された画像を観察しながら計測対象であるヒビ割れなど線状のオブジェクトの幅の計測を行う。この際、ディスプレイ506上には撮像された被写体と同じサイズで被写体が表示されることが好ましい。これにより、例えば実際の長さが1[cm]であった被写体は計測作業者が計測作業を行うディスプレイ506上でも1[cm]になる。
【0055】
このため、計測作業者が使用するディスプレイ506の表示画素サイズd[mm/画素]が必要になる。計測作業者が使用するディスプレイ506の表示画素サイズdは、ディスプレイ506の画面サイズx[mm]とその画面で表示可能な最大画素数n[画素]から以下のように算出される。
d = x / n ……(2)
式(1)と(2)により、Rとdの比が求められる。この比で、撮像時の画像データを変倍すれば、ディスプレイ506に表示される画像データの大きさが等倍になる。変倍部22は、解像度R[mm/画素]で撮像された画像データを、計測作業者が使用するディスプレイ506上では以下のMで示される倍率で変倍する。
M = R / d = n / ADx ……(3)
このように式(3)で示す倍率Mで変倍部22が画像データを変倍(例えば拡大)することで、計測作業者が使用するディスプレイ506上には撮像された被写体と同じサイズ(等倍)で被写体が表示されることになる。
【0056】
<計測作業者によるヒビの幅の計測>
次に、図7を参照して、計測作業者によるディスプレイ506に表示されたヒビ101の幅の計測方法を説明する。図7は、PC4が表示する、ヒビ101の画像データと物差し画像102の一例を示す。変倍部22が変倍した画像データに重畳させて、物差し表示部33が物差し画像102を表示させる。
【0057】
物差し画像102が有する例えばP[mm]間隔の目盛り111がディスプレイ506上でもP[mm]間隔として表示されるように、物差し表示部33が目盛り111の間隔Tを式(4)で変換する。物差し表示部33は、物差し画像102を等倍で表示できる。
T= P/d ……(4)
なお、HTML等で物差し画像102を情報処理装置1が用意する場合、目盛り111の間隔の変換を情報処理装置1が行ってもよい。
【0058】
以上の構成により、デジタルカメラが撮像した画像に被写体の一部として写っているヒビ割れなど線状のオブジェクトの幅を、実際の被写体に計測作業者が実際に近接して計測する場合と同等の方法と精度で計測することができる。
【0059】
また、図8に示すように、計測作業者はポインティングデバイスなどを使ってポインタ115を操作することで、物差し画像102が重畳される位置を変更することができる。図8は、画像データにおいて位置と角度が変更された物差し画像102を示す。
【0060】
本実施形態においては、ポインティングデバイスを制御するために使用するマウスのクリックやキーボードの特定のキーに物差し画像102の回転が関連付けられており、計測作業者が物差し画像102を回転することができる。例えば、マウスの左右クリックあるいは特定のキーを押下によって物差し画像102が角度にして1度回転するなど、マウスイベントやキー入力イベントに物差し画像102の回転が関連付けられている。
【0061】
あるいは、物差し表示部33が物差し画像102に回転用のマークを表示させ、計測作業者がマークをポインティングデバイスで回転操作することで、物差し画像102の角度が調整されてもよい。
【0062】
このような構成にすることによって計測作業者がディスプレイ506に重畳される物差し画像102を移動したり回転したりすることが可能となり、物差し画像102と計測対象であるヒビ101との相対位置や角度を自由に変更することが可能になり計測時の負担が低減される。
【0063】
<動作又は処理について>
図9は、計測作業者が計測システム100を使用してヒビ101の幅を計測する処理を説明するシーケンス図である。
【0064】
S1:計測作業者はデジタルカメラ5に倍率Aを設定して、構造物の表面のヒビ101をデジタルカメラ5で撮像する。
【0065】
S2:これにより、撮像部11が画像データを生成する。なお、倍率Aは固定でもよい。固定の場合、倍率Aは情報処理装置1において既知であるとする。
【0066】
S3:デジタルカメラ5の画像データ送信部12は、画像データ、倍率A及び撮像画素密度Dを情報処理装置1に送信する。撮像画素密度Dは固定なので情報処理装置1に予め設定されていてもよい。
【0067】
S4:ヒビ101の幅を計測する場合、計測作業者はPC4を情報処理装置1に接続させ、ログインした後、画像データを要求する操作を行う。操作受付部34が操作を受け付ける。
【0068】
S5:PC4の画像データ受信部31は、ディスプレイ506の画面サイズxと最大画素数nを指定して、画像データを情報処理装置1に要求する。画面サイズxと最大画素数nはPC4のOS等から取得してもよいし、計測作業者がPC4に入力してもよい。また、画像データは計測作業者がリストから選択したものでもよいし、ヒビ101が計測されていない画像データが自動で要求されてもよい。
【0069】
S6:情報処理装置1のサーバ機能部24は画像データの要求に対し、式(3)を使用して倍率Mを決定し、画像データを倍率Mで変倍する。
【0070】
S7:サーバ機能部24は、この画像データに移動可能な物差し画像102を重畳したWebアプリの画面を生成し、画面情報をPC4に送信する。PC4の画像データ受信部31は画像データに物差し画像102が重畳されたWebアプリの画面を受信し、画像データ表示部が画像データを、物差し表示部33が物差し画像102をそれぞれ表示する。物差し表示部33は物差し画像102の目盛り111の間隔を、式(4)を使用して実際の物差しの間隔に対し等倍に変換する。この処理をサーバ機能部24が行ってもよい。
【0071】
S8:計測作業者は画像データのヒビ101に対し、物差し画像102を移動させたり回転させたりして、ヒビ101の幅の端から端までの目盛り111の数(小数点を含んでよい)に基づいて計測する。計測作業者は目盛り111で読み取ったヒビ101の幅をPC4に入力する。操作受付部34はヒビ101の幅と、物差し画像102の位置を受け付ける。物差し画像102の位置とは、物差し画像102の中心の座標と水平に対する角度である。こうすることで、後に計測作業者がどの位置のヒビ101の幅を計測したかを確認できる。
【0072】
S9:PC4の画像データ受信部31はヒビ101の幅と物差し画像102の位置情報を情報処理装置1に送信する。情報処理装置1は、画像データ、ヒビ101の幅及び物差し画像102の位置情報を対応付けて保存しておく。
【0073】
<物差し画像の別の例>
図8の物差し画像102は等間隔(例えば1[m])の目盛り111を有する通常の物差しを、ソフトウェアが生成する表示部品としたものであるが、物差し画像102が太さの異なる複数の直線を有していてもよい。このような複数の幅イメージ112をクラックスケールという場合がある。図10図11を参照して説明する。
【0074】
図10図11は、画像データに重畳して表示された第2物差し画像103を示す。図10の第2物差し画像103には、予め定められたそれぞれ異なる太さを持つ複数の幅イメージ112が描画されている。幅イメージ112はそれぞれ直線であり、各直線の太さ(幅)が右から左に昇順に、少しずつ太くなっている。また、各幅イメージ112にはその太さを示す数値113が対応付けて表示されている。
【0075】
図11図10と同様に、それぞれ異なる太さを持つ複数の幅イメージ112が描画された第2物差し画像103である。図10との違いは、図10では幅イメージ112の太さが左から右に昇順に太くなっていたが、図11では右から左に昇順に太くなっていることである。計測作業者は図10の第2物差し画像103と図11の第2物差し画像103から、自分が使いやすい第2物差し画像103を選択できる。
【0076】
図10図11では、幅イメージ112の太さが0.1[mm]ずつ異なっているが、0.01[mm]ずつ異なってもよい。計測作業者が、隣接する幅イメージ112の太さをどのくらい変えるかを設定できてよい。計測作業者は、第2物差し画像103を構成する幅イメージ112の中から計測対象であるヒビ101の幅と最も近い太さを持つ幅イメージ112を選定することによってヒビ101の幅を計測する。計測作業者はヒビ101の幅と最も近い太さを持つ幅イメージ112に対応づけられている数値113をPC4に入力する。
【0077】
また、第2物差し画像103における幅イメージ112はそれぞれの太さの昇順又は降順に配置されることが望ましい。このような構成にすることによって、計測作業者は物差しを構成する幅イメージ112の隣接するどちらかの方向に逐次視線を移動するだけで計測対象である線状のオブジェクトとの比較が可能となり計測時の負担が低減される。
【0078】
また、第2物差し画像103では、計測作業者が数値113を読み取ってヒビ101の幅をPC4に入力しなくてもよい。物差し表示部33は、計測作業者が計測ボタンを押下したタイミングで、第2物差し画像103とヒビ101との距離が最も近い幅イメージ112を特定し、該幅イメージ112の太さをヒビ101の幅として第2物差し画像103から取得できる。こうすることで、計測作業者がヒビ101の幅を入力する必要がなく、誤入力を抑制できる。なお、距離が計測されるヒビ101の位置とは、第2物差し画像103の上辺と交差するか、又は、上辺と最も近いヒビ101の位置である。
【0079】
また、図10では、幅イメージ112の太さは、0.2[mm]から1.5[mm]であるが、図12に示すように、計測作業者は幅イメージ112をスライドさせて、幅イメージ112の太さを変更することができる。図12は、スライド操作により変更された1つの第2物差し画像102内に表示される複数の幅イメージを示す。
【0080】
計測作業者は、ポインティングデバイスを複数の幅イメージ112に対し直角に交わる方向にドラッグする。ドラッグとは、開始点にマウスポインタを位置し、マウスの左ボタンを押しながら、マウスを動かし終了地点でボタンを離す操作である。タッチパネルの場合は、スワイプという。
【0081】
物差し表示部33は、第2物差し画像103の一方の端部から他方の端部までにある複数の幅イメージ112の太さを、スライド方向に応じて変更する。図12(a)に示すように、計測作業者が例えばポインティングデバイスで右から左に幅イメージ112をスライドさせる。図12(b)に示すように、より太い幅イメージ112が第2物差し画像103に表示される。計測作業者が例えばポインティングデバイスで左から右に幅イメージ112をスライドさせると図12(c)に示すように、より細い幅イメージ112が第2物差し画像103に表示される。こうすることで第2物差し画像103は、一定の長さの第2物差し画像103内で狭いヒビ101から太いヒビ101まで対応できる。
【0082】
あるいは、物差し表示部33は、幅イメージ112の太さを自動的に変更してもよい。物差し表示部33は、第2物差し画像103から所定距離内のヒビを画像処理で検出する。第2物差し画像103から所定距離内のヒビは、例えば第2物差し画像103の上辺と交差する部分である。画像処理としてはハフ変換、パターンマッチング、ディープラーニングを利用した物体検出などが知られている。物差し表示部33は、検出したヒビの外縁をエッジ処理で特定し、エッジ間の距離を検出する。物差し表示部33は、この距離を丸めた太さの幅イメージ112と、前後の太さの複数の幅イメージ112を第2物差し画像103に配置する。
【0083】
このような第2物差し画像103を用いることにより、計測対象である線状のオブジェクトとの比較が容易になり、計測作業者が線状のオブジェクトの幅を計測する際の負担が軽減される。
【0084】
図13は、画像データにおいて位置と角度が変更された第2物差し画像103を示す。第2物差し画像103においても、計測作業者は第2物差し画像103が重畳される位置と角度を変更することができる。角度の変更方法は図8と同様でよい。
【0085】
<主な効果>
本実施例の計測システム100は、撮像した画像データを等倍表示し、ソフトウェアで表示した物差し画像を用いて、ヒビ割れ等の幅を計測することで、過去の計測データと整合した計測を行うことができる。したがって、管理部署はどのようにヒビ割れが変化したのか等、経時変化を把握することが可能となる。
【実施例0086】
実施例1では、クライアント・サーバシステムの計測システム100について説明したが、同様の計測方法を単体の情報処理装置1が実施できる。本実施例では、単体(スタンドアロン型)で幅計測を実施する情報処理装置1について説明する。なお、本実施例では単体の情報処理装置1をPC4として説明する。また、本実施例においては、上記の実施例にて説明した図4のハードウェア構成図を援用して説明する。
【0087】
<機能について>
図14は、本実施形態に係るデジタルカメラ5、及びPC4の一例の機能構成を示す図である。なお、図14の説明において、図5において同一の符号を付した構成要素は同様の機能を果たすので、主に本実施例の主要な構成要素についてのみ説明する場合がある。
まず、デジタルカメラ5の機能については図5と同様でよい。
【0088】
PC4は、画像データ取得部21、変倍部22、計測部23、画像表示部32、物差し表示部33、及び操作受付部34を有する。これら各機能部は、PC4にインストールされた1以上のプログラムに含まれる命令を図4に示したCPU501が実行することで実現される機能又は手段である。
【0089】
すなわち、本実施例では、図5で端末装置としてのPC4が有していた機能とサーバ装置6が有していた機能をPC4が有する。また、サーバ装置6が有していた機能のうち、通信やWebアプリに関する機能は不要になっている。PC4が有する画像データ取得部21、変倍部22、計測部23、画像表示部32、物差し表示部33、及び操作受付部34の機能は図5と同様でよい。
【0090】
<動作又は処理について>
図15は、計測作業者が計測システム100を使用してヒビ101の幅を計測する処理を説明するシーケンス図である。
【0091】
S21:計測作業者は倍率Aを設定して、構造物の表面のヒビ101をデジタルカメラ5で撮像する。
【0092】
S22:これにより、撮像部11が画像データを生成する。なお、倍率Aは固定でもよい。固定の場合、倍率Aは情報処理装置1において既知であるとする。
【0093】
S23:デジタルカメラ5の画像データ送信部12は、画像データ、倍率A及び撮像画素密度DをPC4に送信する。送信するのでなく、計測作業者が記憶媒体をデジタルカメラ5から取り出してPC4に装着してもよい。
【0094】
S24:ヒビ101の幅を計測する場合、計測作業者はPC4に対し画像データを指定し、表示させる操作を行う。画像データは計測作業者がリストから選択したものでもよいし、ヒビ101が計測されていない画像データをPC4が自動で表示してもよい。操作受付部34が操作を受け付ける。
【0095】
S25:PC4ではディスプレイ506の画面サイズxと最大画素数nが既知である。画面サイズxと最大画素数nはPC4のOS等から取得してもよいし、計測作業者がPC4に入力してもよい。PC4の変倍部22は、式(3)を使用して倍率Mを決定し、画像データを倍率Mで変倍する。
【0096】
S26:PC4の画像表示部32は、画像データを表示し、物差し表示部33が物差し画像をそれぞれ表示する。物差し表示部33は、式(4)を使用して、物差し画像102の目盛り111の間隔を実際の物差しの間隔に対し等倍に変換する。
【0097】
S27:計測作業者は画像データのヒビ101に対し、物差し画像102を移動させたり回転させたりして、ヒビ101の幅の端から端までの目盛り111の数(小数点を含んでよい)に基づいて計測する。計測作業者は目盛り111で読み取ったヒビ101の幅をPC4に入力する。操作受付部34はヒビ101の幅と、物差し画像102の位置を受け付ける。物差し画像102の位置とは、中心の座標と水平に対する角度である。こうすることで、後に計測作業者がどの位置のヒビ101の幅を計測したかを確認できる。
【0098】
S28:PC4の計測部23は、画像データ、ヒビ101の幅及び物差し画像102の位置情報を対応付けて保存しておく。
【0099】
<主な効果>
本実施例によれば、実施例1と同様の効果に加え、PC4がサーバ装置6と通信できない場合でも、ヒビ101の幅を計測できる。
【0100】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0101】
例えば、本実施形態では、ヒビ101の幅の計測について説明したが、ヒビ101の幅にかぎらず、撮像された被写体のサイズを計測作業者が計測する作業に好適に適用できる。
【0102】
また、ヒビ101の幅は線状の欠陥の一例であり、画像データにおける線状のオブジェクトの幅を計測作業者が好適に計測できる。線上のオブジェクトとしては、電柱、ポール、電線、斜線区分線等、様々なものがある。
【0103】
また、デジタルカメラ5が被写体を撮像して生成した画像データを、直接、サーバ装置6が受信し、等倍に表示するだけでなく、画像データが印刷された用紙がスキャンされてもよい。サーバ装置6は用紙がスキャンされた画像データと読み取り解像度(dpi)をスキャナなどから受信する。解像度(dpi)の逆数が解像度Rに対応するので、サーバ装置6は式(3)で倍率Mを算出できる。
【0104】
また、図5などの構成例は、デジタルカメラ5、サーバ装置6、及びPC4による処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。デジタルカメラ5、サーバ装置6、及びPC4の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0105】
また、実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、サーバ装置6は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。
【0106】
更に、サーバ装置6は、本実施形態で開示された処理ステップ、例えば図9等を様々な組み合わせで共有するように構成できる。例えば、所定のユニットによって実行されるプロセスは、サーバ装置6が有する複数の情報処理装置によって実行され得る。また、サーバ装置6の機能は、1つの情報処理装置にまとめられていても良いし、複数の情報処理装置に分けられていても良い。
【0107】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0108】
<請求項に関する付記>
[請求項1]
撮像装置が被写体を撮像して生成した画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、前記被写体が等倍で表示されるサイズに変倍する変倍部と、
前記変倍部が変倍した前記画像データを表示する画像表示部と、
前記被写体のサイズを計測するための物差し画像を等倍で表示する物差し表示部と、
前記物差し画像を用いた前記被写体のサイズの計測を受け付ける操作受付部と、
を有する計測システム。
[請求項2]
前記物差し画像は、等間隔の目盛りを有し、
前記操作受付部は、前記被写体の端から端までに存在する前記目盛りの数に基づいて入力された、前記被写体のサイズを受け付けることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
[請求項3]
前記物差し画像は、太さが異なる複数の直線と前記太さを表す数値を有し、
前記操作受付部は、前記被写体のサイズに最も近い前記太さの前記直線に対応する前記数値の入力を、前記被写体のサイズとして受け付けることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
[請求項4]
前記物差し表示部は、前記被写体に最も近い前記直線に対応する前記数値を、前記被写体のサイズとして取得することを特徴とする請求項3に記載の計測システム。
[請求項5]
前記物差し画像が有する前記複数の直線は、右から左、又は、左から右に、前記太さの昇順に配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の計測システム。
[請求項6]
前記操作受付部が、前記物差し画像が有する前記複数の直線をスライドさせる操作を受け付けた場合、
前記物差し表示部は、前記物差し画像の一方の端部から他方の端部までにある前記複数の直線の太さを、スライド方向に応じて変更することを特徴とする請求項5に記載の計測システム。
[請求項7]
前記操作受付部は、前記物差し画像の位置と角度の変更を受け付けることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の計測システム。
[請求項8]
前記画像データにおける前記物差し画像の位置情報、前記被写体のサイズ、及び前記画像データを対応付けて保存する計測部、を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の計測システム。
[請求項9]
前記被写体は、構造物の表面に生じた線状の欠陥であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の計測システム。
[請求項10]
前記線状の欠陥は、構造物の表面に生じたヒビであり、前記ヒビの幅が前記被写体のサイズであることを特徴とする請求項9に記載の計測システム。
【符号の説明】
【0109】
1 情報処理装置
2 ネットワーク
3 モバイル端末
4,7 パーソナルコンピュータ(PC)
6 サーバ装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特開2007-212309号公報
【特許文献2】特開2009-133085号公報
【特許文献3】特開2002-008046号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15