(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100230
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】検査システム及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004069
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DH14
4M106DH44
4M106DH45
4M106DH46
4M106DJ02
(57)【要約】
【課題】好適に温度制御を行いながら基板を検査する検査システム及び温度制御方法を提供する。
【解決手段】温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムであって、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、前記基板保持部の温度を検出し、前記基板保持部の温度を調整する保持部温度調整機構と、前記検出部の温度を検出し、前記検出部の温度を調整する検出部温度調整機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構の行う温度制御を調整しながら、前記基板の検査を行う、検査システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムであって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、
前記基板保持部の温度を検出し、前記基板保持部の温度を調整する保持部温度調整機構と、
前記検出部の温度を検出し、前記検出部の温度を調整する検出部温度調整機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構の行う温度制御を調整しながら、前記基板の検査を行う、
検査システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、及び、前記検出部温度調整機構における熱流を取得し、統合的に解析することで、
前記基板の温度を調整しながら、前記基板の検査を行う、
請求項1の検査システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、及び、前記検出部温度調整機構における熱流を取得し、統合的に解析することで、
前記基板と前記検出部の温度差を調整しながら、前記基板の検査を行う、
請求項1の検査システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、前記検出部温度調整機構における熱流、前記基板保持部の温度、及び、前記検出部の温度に基づいて、前記基板の温度を推定する、
請求項1の検査システム。
【請求項5】
前記制御部は、
推定した前記基板の温度が所定の検査温度に近づくように、前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構を制御する、
請求項4の検査システム。
【請求項6】
前記制御部は、
推定した前記基板の温度と前記検出部の温度との差が所定の閾値以内となるように、前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構を制御する、
請求項4または請求項5の検査システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、前記検出部温度調整機構における熱流、前記基板保持部の温度、及び、前記検出部の温度に基づいて、保持部目標温度及び検出部目標温度を算出し、
前記保持部温度調整機構は、前記基板保持部の温度を前記保持部目標温度に制御し、
前記検出部温度調整機構は、前記検出部の温度を前記検出部目標温度に制御する、
請求項1の検査システム。
【請求項8】
前記検出部は、
複数の電気的特性を検出する検出手段を有する、
請求項1の検査システム。
【請求項9】
前記基板は、
前記電極部と、前記電極部と接続された電子デバイスと、を有し、
前記検出部は、
前記検査電力が供給された前記電子デバイスの電気的特性を検出する、
請求項1の検査システム。
【請求項10】
基板を保持する基板保持部と、前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、前記基板保持部の温度を検出し、前記基板保持部の温度を調整する保持部温度調整機構と、前記検出部の温度を検出し、前記検出部の温度を調整する検出部温度調整機構と、を備え、温度制御を行いながら、前記基板を検査する検査システムの温度制御方法であって、
前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構の行う温度制御を調整しながら、前記基板の検査を行う、
温度制御方法。
【請求項11】
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、及び、前記検出部温度調整機構における熱流を取得し、統合的に解析することで、前記基板の温度を調整しながら、前記基板の検査を行う、
請求項10に記載の温度制御方法。
【請求項12】
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、及び、前記検出部温度調整機構における熱流を取得し、統合的に解析することで、前記基板と前記検出部の温度差を調整しながら、前記基板の検査を行う、
請求項10に記載の温度制御方法。
【請求項13】
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、前記検出部温度調整機構における熱流、前記基板保持部の温度、及び、前記検出部の温度に基づいて、前記基板の温度を推定する、
請求項10に記載の温度制御方法。
【請求項14】
推定した前記基板の温度が所定の検査温度に近づくように、前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構を制御する、
請求項13に記載の温度制御方法。
【請求項15】
推定した前記基板の温度と前記検出部の温度との差が所定の閾値以内となるように、前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構を制御する、
請求項13または請求項14に記載の温度制御方法。
【請求項16】
前記検査電力が供給される際に出力される前記検査電力による熱流、前記保持部温度調整機構における熱流、前記検出部温度調整機構における熱流、前記基板保持部の温度、及び、前記検出部の温度に基づいて、保持部目標温度及び検出部目標温度を算出する工程と、
前記保持部温度調整機構を制御して、前記基板保持部の温度を前記保持部目標温度に制御する工程と、
前記検出部温度調整機構を制御して、前記検出部の温度を前記検出部目標温度に制御する工程と、を含む、
請求項13に記載の温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システム及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パワートランジスタのオン期間におけるソースおよびドレイン端子の端子間電圧を検出し、パワートランジスタのジャンクション温度を高精度に推定することが可能な電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、好適に温度制御を行いながら基板を検査する検査システム及び温度制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムであって、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、前記基板保持部の温度を検出し、前記基板保持部の温度を調整する保持部温度調整機構と、前記検出部の温度を検出し、前記検出部の温度を調整する検出部温度調整機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記保持部温度調整機構及び前記検出部温度調整機構の行う温度制御を調整しながら、前記基板の検査を行う、検査システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、好適に温度制御を行いながら基板を検査する検査システム及び温度制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】電子デバイスの付近を拡大した検査システムの拡大図の一例。
【
図6】オブザーバによる状態推定を説明するブロック図の一例。
【
図7】状態フィードバックを説明するブロック図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
本実施形態に係る検査システムの一例である検査システム1について、
図1を用いて説明する。
図1は、検査システム1の斜視図の一例である。
図2は、検査システム1の構成図の一例である。なお、
図2において、部分的に断面図として、検査システム1に内蔵される構成要素を概略的に示す。
【0010】
半導体製造プロセスでは、半導体ウエハ等の基板W上に所定の回路パターンを持つ多数の電子デバイスD(後述する
図3参照。Dieともいう。)が形成される。形成された電子デバイスDは、電気的特性等の検査が行われ、良品と不良品とに選別される。電子デバイスDの検査は、例えば、各電子デバイスDが分割される前の基板Wの状態で、検査システム1を用いて行われる。
【0011】
検査システム1は、温度制御を行いながら、基板Wに形成された複数の電子デバイスD(後述する
図3参照)の電気的特性を検査する。即ち、検査システム1は、電子デバイスDが所定の検査温度以上の状態で、電子デバイスDに検査電力を供給し、その際の電気的特性等の検査が行われる。
【0012】
検査システム1は、収容室2と、ローダ3と、テスター4と、を備える。
【0013】
収容室2は、内部が空洞の筐体11を有する。収容室2は、筐体11の内部に、基板Wが載置されるステージ(「チャック」とも称する。)10を有する。ステージ10は、ステージ10に対する基板Wの相対位置がずれないように、基板Wを吸着保持する吸着保持部(図示せず)を有する。また、収容室2は、筐体11の内部に、ステージ10を水平方向及び上下方向に移動させる移動機構(図示せず)が設けられている。この移動機構により、後述するプローブカード12と基板Wの相対位置を調整して基板Wの表面の所望の電極部E(後述する
図3参照)をプローブカード12のプローブ12aと接触させることができる。
【0014】
収容室2は、筐体11の内部に、プローブカード12を有する。プローブカード12は、ステージ10の上方で、ステージ10に対向するように配置される。プローブカード12は、基板Wの各電子デバイスDの電極部Eに対応して設けられた電極パッド又は半田バンプに対応して配置された複数の針状のプローブ12aを備える。プローブカード12は、インターフェース13を介してテスター4へ接続される。各プローブ12aは、電気特性の検査時に、基板Wの各電子デバイスDの電極部Eに接触し、テスター4からの電力をインターフェース13を介して電子デバイスDへ供給し、且つ、電子デバイスDからの信号をインターフェース13を介してテスター4へ伝達する。
【0015】
ローダ3は、基板Wが収容された搬送容器であるFOUP(Front Opening Unify Pod)が配置されている。また、ローダ3は、基板Wを搬送する搬送機構(図示せず)を有する。搬送機構は、FOUPに収容されている基板Wを取り出して収容室2のステージ10へ搬送する。また、搬送機構は、電子デバイスDの電気的特性の検査が終了した基板Wをステージ10から受け取り、FOUPへ収容する。
【0016】
テスター4は、電子デバイスDが搭載されるマザーボードの回路構成の一部を再現するテストボード(図示しない)を有する。また、テスター4のテストボードは、電子デバイスDからの信号に基づいて電子デバイスDの良否を判断するテスターコンピュータ15に接続される。テスター4ではテストボードを取り替えることにより、複数種のマザーボードの回路構成を再現することができる。また、プローブカード12のプローブ12aは複数設けられており、電子デバイスDの複数の電極部Eにそれぞれ接触される。また、テスター4は、電子デバイスDの電気的特性を検出する検出手段を複数有している。これにより、テスター4は、電子デバイスDの複数の電気的特性を検出する。
【0017】
また、検査システム1は、ユーザ向けに情報を表示したりユーザが指示を入力したりするためのユーザインターフェース部16を備える。ユーザインターフェース部16は、例えば、タッチパネルやキーボード等の入力部と液晶ディスプレイ等の表示部とからなる。
【0018】
このように、検査システム1は、基板Wを保持する基板保持部として、ステージ10を備える。また、検査システム1は、基板Wに設けられた電子デバイスDの電極部Eに検査電力を供給することで電子デバイスDの電気的特性を検出する検出部として、プローブ12aを有するプローブカード12、インターフェース13及びテスター4を備える。
【0019】
さらに、ローダ3は、温度制御ユニット14を有する。温度制御ユニット14は、電源25と、チラー26と、電源55と、制御部90と、を有する。
【0020】
ステージ10には、ステージ10を加熱するヒータ20が設けられている。電源25は、ステージ10に設けられたヒータ20に電力を供給する。また、ステージ10の内部には、伝熱媒体(不凍液等)が通流する冷媒流路10aが形成されている。チラー26は、冷媒流路10aに温度調整された伝熱媒体を循環させる。このように、検査システム1は、基板保持部の温度を調整する保持部温度調整機構として、ヒータ20、電源25、冷媒流路10a及びチラー26を備える。なお、保持部温度調整機構の構成は、これに限られるものではない。
【0021】
また、保持部温度調整機構は、基板保持部の温度を検出する温度検出部30を備える。温度検出部30は、ステージ10に設けられ、ステージ10の温度Tchuckを検出する。温度検出部30で検出されたステージ10の温度Tchuckは、制御部90に入力される。なお、温度検出部30は図示では単一であるものとして説明したが、これに限られるものではなく、電力が供給され発熱する電子デバイスDに対して複数の温度検出部30をステージ10に設けることが好ましい。また、電力が供給され発熱する電子デバイスDを切り替える際、温度Tchuckを検出する温度検出部30も切り替えることが好ましい。また、複数の温度検出部30を含んだモデルに基づいて温度Tchuckを検出することが好ましい。
【0022】
また、テスター4には、プローブカード12の温度を調節する温度調節機構50が設けられている。温度調節機構50は、プローブカード12を加熱するヒータ(図示せず)、プローブカード12を空冷する冷却ファン(図示せず)等を有していてもよい。電源55は、テスター4に設けられた温度調節機構50に電力を供給する。このように、検査システム1は、検出部の温度を調整する検出部温度調整機構として、温度調節機構50を備える。なお、検出部温度調整機構の構成は、これに限られるものではない。検出部温度調整機構は、液冷により検出部の温度を調整する構成を含んでいてもよい。
【0023】
また、検出部温度調整機構は、検出部の温度を検出する温度検出部60を備える。温度検出部60は、プローブカード12に設けられ、プローブカード12の温度Tprobを検出する。温度検出部60で検出されたプローブカード12の温度Tprobは、制御部90に入力される。なお、温度検出部60は、プローブカード12に設けられるものとして説明したが、これに限られるものではなく、プローブの温度を代表できる温度が検出可能な温度検出部であってもよい。例えば、温度検出部60は、プローブ12aの温度を検出する温度検出部であってもよい。なお、温度検出部60は図示では単一であるものとして説明したが、これに限られるものではなく、電力が供給され発熱する電子デバイスDに対して複数の温度検出部60をプローブカード12に設けることが好ましい。また、電力が供給され発熱する電子デバイスDを切り替える際、温度Tprobを検出する温度検出部60も切り替えることが好ましい。また、複数の温度検出部60を含んだモデルに基づいて温度Tprobを検出することが好ましい。
【0024】
また、テスター4には、テスター4からインターフェース13及びプローブカード12を介して電子デバイスDへ供給される検査電力(電流及び電圧)を検出する電力検出部41を有する。電力検出部41で検出された検査電力は、制御部90に入力される。
【0025】
制御部90は、保持部温度制御部91と、検出部温度制御部92と、解析部93と、を有する。制御部90は、電子デバイスDのジャンクション温度Tj(基板Wの温度)が検査温度となるように、保持部温度調整機構及び検出部温度調整機構を制御する。また、制御部90は、基板Wとプローブカード12との温度差が所定の閾値以内となるように、保持部温度調整機構及び検出部温度調整機構を制御する。
【0026】
保持部温度制御部91は、温度検出部30で検出した基板保持部の温度Tchuckが目標温度となるように保持部温度調整機構を制御する。なお、温度検出部30は図示では単一であるものとして説明したが、これに限られるものではなく、電力が供給され発熱する電子デバイスDに対して複数の温度検出部30をステージ10に設けることが好ましい。また、電力が供給され発熱する電子デバイスDを切り替える際、温度Tchuckを検出する温度検出部30も切り替えることが好ましい。また、複数の温度検出部30を含んだモデルに基づいて温度Tchuckを検出することが好ましい。即ち、保持部温度制御部91は、電源25を制御することにより、ヒータ20の発熱量を制御して、ステージ10の温度Tchuckを制御する。また、保持部温度制御部91は、チラー26を制御することにより、チラー26が冷媒流路10aに供給する伝熱媒体の温度を制御して、ステージ10の温度Tchuckを制御してもよい。
【0027】
検出部温度制御部92は、温度検出部60で検出した温度Tprobが目標温度となるように検出部温度調整機構を制御する。即ち、検出部温度制御部92は、電源55を制御することにより、温度調節機構50を制御して、プローブカード12の温度Tprobを制御する。なお、温度検出部60は図示では単一であるものとして説明したが、これに限られるものではなく、電力が供給され発熱する電子デバイスDに対して複数の温度検出部60をプローブカード12に設けることが好ましい。また、電力が供給され発熱する電子デバイスDを切り替える際、温度Tprobを検出する温度検出部60も切り替えることが好ましい。また、複数の温度検出部60を含んだモデルに基づいて温度Tprobを検出することが好ましい。
【0028】
解析部93は、後述する
図5に示す熱流モデルに基づいて、電子デバイスDのジャンクション温度Tj(基板Wの温度)を推定する。そして、制御部90は、温度Tchuckの目標温度(保持部目標温度)になるようにChuck Heat Flux(
図5を用いて後述する熱流Ic参照。)及び温度Tprobの目標温度(検出部目標温度)になるようにProbe Heat Flux(
図5を用いて後述する熱流Ip参照。)を調整する。保持部温度制御部91は、解析部93によって算出された保持部目標温度に基づいて、保持部温度調整機構を制御する。また、検出部温度制御部92は、解析部93によって算出された検出部目標温度に基づいて、検出部温度調整機構を制御する。ここで、解析部93で算出される保持部目標温度及び検出部目標温度は多数の解がある。また、実際は電子デバイスDからプローブカード12にも40%程度の熱が逃げる。電子デバイスDからプローブカード12への吸熱量は、プローブカード12と基板Wの熱膨張差とトレードオフの関係になる。電子デバイスDからプローブカード12への吸熱量は、プローブ12がボンディングパット(電極部E)に範囲に入る吸熱量をして算出される。
【0029】
次に、上述の検査システム1において検査される基板Wについて
図3を用いて説明する。
図3は、基板Wの構成を概略的に示す平面図である。
【0030】
基板Wには、略円板状のシリコン基板にエッチング処理や配線処理を施すことにより、
図3に示すように、複数の電子デバイスDが互いに所定の間隔をおいて、表面に形成されている。電子デバイスDすなわち基板Wの表面には、電極部Eが形成されており、該電極部Eは当該電子デバイスDの内部の回路素子に電気的に接続されている。電極部Eへ電圧を印加することにより、各電子デバイスDの内部の回路素子へ電流を流すことができる。
【0031】
図4は、電子デバイスDの付近を拡大した検査システム1の拡大図の一例である。
【0032】
電子デバイスDの電気的特性等の検査が行われる際、基板Wは、ステージ10に保持されている。即ち、電子デバイスDは、ステージ10と熱的に接続されている。また、電子デバイスDの電気的特性等の検査が行われる際、プローブ12aは、電子デバイスDの電極部Eと当接されている。即ち、電子デバイスDは、プローブ12aを介してプローブカード12と熱的に接続されている。また、プローブカード12は、インターフェース13と当接しており、インターフェース13は、テスター4と当接している。即ち、プローブカード12は、インターフェース13を介してテスター4と熱的に接続されており、テスター4はプローブカード12を介して電子デバイスDと熱的に接続されている。
【0033】
また、ステージ10の温度Tchuckは、温度検出部30によって検出される。また、プローブカード12の温度Tprobは、温度検出部60によって検出される。
【0034】
ここで、電子デバイスDに形成されるPN結合(例えばトランジスタ等)に電流を流すことにより、発生した起電力と温度との相関関係から、電子デバイスDのジャンクション温度Tjを検出することができる。しかしながら、例えばロジックIC等の電子デバイスDの検査が行われる際、クロックが発生している条件下では、ノイズ等の影響によって好適にジャンクション温度Tjを検出することができない場合がある。
【0035】
また、電子デバイスDの検査が行われる際、ステージ10と基板W(電子デバイスD)との間の熱抵抗によって、ステージ10の温度Tchuckと電子デバイスDのジャンクション温度Tjとの間に温度差が発生する。このため、ステージ10の温度Tchuckが検査温度となるように温度制御して電子デバイスDの検査を行う場合、電子デバイスDのジャンクション温度Tjは検査温度よりも高くなるおそれがある。即ち、検査温度よりも高い温度で電子デバイスDの検査を行うこととなり、電子デバイスDの歩留まりが低下するおそれがある。
【0036】
また、ステージ10の温度Tchuckが検査温度となるように温度制御して電子デバイスDの検査を行う場合、電子デバイスDから検出部への熱流は外乱となる。
【0037】
また、基板Wは、例えば主にシリコンで形成される。プローブカード12は、例えば主にガラスエポキシで形成される。基板Wとプローブカード12の温度差によって、熱膨張差が生じ、プローブ12aが電極部Eから外れるおそれがある。
【0038】
次に、本実施形態に係る検査システム1における温度制御について説明する。
図5は、熱流モデルを示す図の一例である。
【0039】
図5において、電子デバイスDの熱流Id、電子デバイスDの熱抵抗Rd、電子デバイスDの熱容量Cd、電子デバイスDのジャンクション温度Tj、を示す。また、プローブカード12の熱流Ip、プローブカード12の熱抵抗Rp、プローブカード12の熱容量Cp、プローブカード12の温度(プローブカード温度)Tprob、プローブカード12から電子デバイスDへの熱流Idp、プローブカード12から電子デバイスDへの熱抵抗Rdpを示す。また、ステージ10の熱流Ic、ステージ10の熱抵抗Rc、ステージ10の熱容量Cc、ステージ10の温度(チャック温度)Tchuck、ステージ10から電子デバイスDへの熱流Idc、ステージ10から電子デバイスDへの熱抵抗Rdc、を示す。なお、
図5においては温度Tchuckを検出する温度検出部30(
図2,4参照)が単一であるものとして説明したが、複数の温度検出部30を配置して切り替える或いは複数の温度検出部30を含んだモデルに基づいて温度Tchuckを検出することにより、更に性能向上する。
【0040】
ここで、各種熱抵抗及び各種熱容量は、基板保持部、基板W、検出部の構成等によって、予め決定される値(取得可能な値)である。
【0041】
電子デバイスDの熱流Idは、電力検出部41で検出された検査電力による熱流に対応する。ステージ10の熱流Icは、保持部温度調整機構における熱流に対応する。プローブカード12の熱流Ipは、検出部温度調整機構における熱流に対応する。即ち、熱流Id,Ic,Ipは、制御部90が検出可能な値である。
【0042】
また、ステージ10の温度(チャック温度)Tchuckは、温度検出部30で検出される温度に対応する。プローブカード12の温度(プローブカード温度)Tprobは、温度検出部60で検出される温度に対応する。即ち、温度Tchuck、Tprob、制御部90が検出可能な値である。
【0043】
一方、電子デバイスDのジャンクション温度Tjは、制御部90が直接計測できない温度である。
【0044】
図5に示す熱流モデルにおいて、ジャンクション温度Tjの微分値(Tjドット)、プローブカード12の温度Tprobの微分値(Tprobドット)、ステージ10の温度Tchuckの微分値(Tchuckドット)は、以下の式で表すことができる。
【0045】
【0046】
ここで、X1=Tj、X2=Tchuck、X3=Tprob、U1=id、U2=ic、U3=ipとすると、以下の式で表すことができる。
【0047】
【0048】
即ち、上述の式は、dx/dt=Ax(t)+Bu(t)、及び、y(t)=Cx(t)で表される。
【0049】
図6は、オブザーバによる状態推定を説明するブロック図の一例である。ブロック
図600は、制御対象物610及びオブザーバ620を含む。制御対象物610は、上述の式に対応する。ここで、x(t)は、計測できない値とする。オブザーバ620を用いることにより、x(t)の推定値(
図6において、オブザーバ620の推定値にはハット「^」を付す。)を算出することができる。
【0050】
即ち、解析部93は、
図5に示す熱流モデルにおいて、
図6に示すオブザーバ620を用いることにより、直接計測できない電子デバイスDのジャンクション温度Tjを推定することができる。
【0051】
図7は、状態フィードバックを説明するブロック図の一例である。ブロック
図700は、積分型コントローラ710、演算子720、制御対象物730、演算子740、演算子750を含む。なお、
図7に示す制御対象物730は、図示を省略しているが、
図6に示すブロック
図600と同様にオブザーバを含む。オブザーバで推定されたx(t)の推定値が積分型コントローラ710及び演算子740に入力される。
【0052】
積分型コントローラ710は、オブザーバで推定されたx(t)の推定値を状態フィードバックする。
【0053】
ここで、オブザーバで推定されたX1の推定値(X1ハット)をY1とする。即ち、Y1は、オブザーバで推定されたジャンクション温度Tjである。オブザーバで推定されたX1の推定値(X1ハット)とX3との差をY2とする。即ち、Y2は、オブザーバで推定されたジャンクション温度Tjと温度Tprobとの差であり、基板W(電子デバイスD)とプローブカード12との温度差の推定値である。これらは、以下の式で表すことができる。
【0054】
【0055】
演算子740は、上述の式によってYmの推定値(Ymハット)を演算子750にフィードバックする。
【0056】
これにより、ジャンクション温度Tj及びジャンクション温度Tjと温度Tprobとの差について、フィードバックする。
【0057】
なお、積分型コントローラ710は、Y2がY1よりも高速になるように構成されることが好ましい。
【0058】
以上の様に、制御部90は、保持部温度調整機構及び検出部温度調整機構の行う温度制御を調整しながら、基板Wの検査を行う。
【0059】
具体的には、制御部90は、検査電力が供給される際に出力される検査電力による熱流(Id)、保持部温度調整機構における熱流(Ic)、及び、検出部温度調整機構における熱流(Ip)を取得し、統合的に解析することで、基板Wの温度(ジャンクション温度Tj)を調整しながら、基板Wの検査を行うことができる。これにより、電子デバイスDの検査を行う場合、電子デバイスDを検査温度とすることができ、好適に検査を行うことができる。また、電子デバイスDの歩留まりが低下することを防止することができる。
【0060】
また、制御部90は、検査電力が供給される際に出力される検査電力による熱流(Id)、保持部温度調整機構における熱流(Ic)、及び、検出部温度調整機構における熱流(Ip)を取得し、統合的に解析することで、基板Wの温度(ジャンクション温度Tj)と検出部の温度(温度Tprob)との温度差を調整しながら、基板Wの検査を行うことができる。これにより、基板Wとプローブカード12との熱膨張差を抑制し、プローブ12aが電極部Eから外れることを防止する。また、プローブ12aと電極部Eとの擦れを最小に抑制することができる。
【0061】
また、制御部90の解析部93は、検査電力による熱流(Id)、保持部温度調整機構における熱流(Ic)、検出部温度調整機構における熱流(Ip)、基板保持部の温度(Tchuck)、及び検出部の温度(Tprob)に基づいて、電子デバイスDのジャンクション温度Tjを推定することができる。これにより、電子デバイスにジャンクション温度Tjを検出するためのみに用いられる電極部Eを設ける構成と比較して、電子デバイスDのパッケージコストを低減することができる。また、プローブカード12に設けるプローブ12aの数を削減することができる。
【0062】
なお、検査電力による熱流(Id)は、例えば電力検出部41で検出される検査電力によって求められる。保持部温度調整機構における熱流(Ic)は、例えば電源25の投入電力によって求められる。検出部温度調整機構における熱流(Ip)は、例えば電源55の投入電力によって求められる。
【0063】
そして、制御部90は、ジャンクション温度Tjが検査温度となるように、保持部温度調整機構及び検出部温度調整機構を制御する。これにより、電子デバイスDの検査を行う場合、電子デバイスDのジャンクション温度Tjを検査温度とすることができ、好適に検査を行うことができる。また、電子デバイスDの歩留まりが低下することを防止することができる。
【0064】
併せて、制御部90は、基板Wとプローブカード12の温度差を所定の閾値以内とするように保持部温度調整機構及び検出部温度調整機構を制御する。これにより、熱膨張差を抑制し、プローブ12aが電極部Eから外れることを防止する。また、プローブ12aと電極部Eとの擦れを抑制することができる。
【0065】
また、制御部90の解析部93は、検査電力による熱流(Id)、保持部温度調整機構における熱流(Ic)、検出部温度調整機構における熱流(Ip)、基板保持部の温度(Tchuck)、及び検出部の温度(Tprob)に基づいて、保持部目標温度及び検出部目標温度を算出する。
【0066】
保持部温度制御部91は、基板保持部の温度を保持部目標温度に制御する。換言すれば、保持部温度制御部91は、温度検出部30で検出した温度Tchuckが保持部目標温度に近づくように、ヒータ20の電源25及び/又はチラー26を制御する。また、検出部温度制御部92は、検出部の温度を検出部目標温度に制御する。換言すれば、検出部温度制御部92は、温度検出部60で検出した温度Tprobが検出部目標温度に近づくように、温度調節機構50の電源55を制御する。
【0067】
ここで、保持部目標温度及び検出部目標温度は、推定したジャンクション温度Tjが検査温度に近づくように設定される。これにより、電子デバイスDの検査を行う場合、電子デバイスDのジャンクション温度Tjを検査温度とすることができ、好適に検査を行うことができる。また、電子デバイスDの歩留まりが低下することを防止することができる。
【0068】
また、保持部目標温度及び検出部目標温度は、推定したジャンクション温度Tjとプローブカード12の温度Tprobとの差が閾値以下となるように設定される。これにより、熱膨張差を抑制し、プローブ12aが電極部Eから外れることを防止する。また、プローブ12aと電極部Eとの擦れを抑制することができる。
【0069】
以上、検査システム1について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0070】
W 基板
D 電子デバイス
E 電極部
1 検査システム
2 収容室
3 ローダ
4 テスター
10 ステージ
10a 冷媒流路
12 プローブカード
12a プローブ
13 インターフェース
14 温度制御ユニット
20 ヒータ
25 電源
26 チラー
30 温度検出部
41 電力検出部
50 温度調節機構
55 電源
90 制御部
91 保持部温度制御部
92 検出部温度制御部
93 解析部
60 温度検出部