(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100396
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】シート状放熱部材
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240719BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240719BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240719BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240719BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240719BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08L83/04
C08L83/05
C08K3/08
C08K3/013
C09K5/14 E
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004371
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】廣中 裕也
【テーマコード(参考)】
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP033
4J002CP042
4J002CP141
4J002DA076
4J002DA077
4J002DA097
4J002DE107
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD023
4J002FD142
4J002GQ00
5F136BC07
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA13
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA53
5F136FA55
5F136FA62
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】150℃程度での加熱圧縮でも、良好な熱伝導性を発揮し、放熱性能に優れるシート状放熱部材を提供すること。
【解決手段】発熱性電子部品と放熱部品との間に配置されるシート状放熱部材であって、前記シート状放熱部材は、(A)融点が110℃以下であるシリコーンレジン 100質量部、(B)銀粉末 500~1,850質量部、および(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.0~20質量部を含む熱軟化性熱伝導性組成物を含有し、前記(B)成分の銀粉末は、平均粒径が0.5~10μmであり、前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末を30~60体積%含み、前記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることを特徴とするシート状放熱部材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱性電子部品と放熱部品との間に配置されるシート状放熱部材であって、
前記シート状部材は、室温では非流動性であり、かつ前記発熱性電子部品動作時の該発熱性電子部品からの発熱により流動化する、または前記発熱性電子部品配置時に積極的にかける熱により流動化することによって、前記発熱性電子部品と前記放熱部品との境界に実質的に空隙なく充填され、
前記シート状放熱部材は、
(A)融点が40~110℃であるシリコーンレジン 100質量部、
(B)銀粉末 500~1,850質量部、および
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.0~20質量部
を含む熱軟化性熱伝導性組成物を含有し、
前記(A)成分は、R1SiO3/2単位(式中、R1は炭素原子数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)、およびR2
2SiO2/2単位(式中、R2は、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)を含み、
前記(B)成分の銀粉末は、平均粒径が0.5~10μmであり、前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末を30~60体積%含み、
前記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることを特徴とするシート状放熱部材。
【請求項2】
前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末以外に補助無機充填材を更に含み、前記補助無機充填材が、アルミニウム粉末、銅粉末、金粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び二酸化ケイ素粉末からなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載のシート状放熱部材。
【請求項3】
前記熱軟化性熱伝導性組成物は、さらに、(D)可塑剤として、炭素数6~20のアリール基を1分子中に1個以上有する直鎖状オルガノポリシロキサンを含むことを特徴とする請求項1記載のシート状放熱部材。
【請求項4】
前記熱軟化性熱伝導性組成物が、ヒドロシリル化反応を促進する金属触媒を含有しないことを特徴とする請求項1記載のシート状放熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、半導体素子などの発熱部品から生じる熱を冷却するために、ヒートシンクなどの放熱部品(冷却部品)を設置する。この放熱部品への熱の伝達を効率よくするため、発熱部品と放熱部品との間に放熱部材を挟んで用いる。この放熱部材には、熱伝導性シートや熱伝導性グリース、硬化型熱伝導性グリースなどの種類があり、用途に応じて使い分けている。
【0003】
通常、熱伝導グリースよりも熱伝導シートの方が、放熱装置を組み立てる際の作業性に優れている。しかし、熱伝導シートは厚さを薄くすることが難しく、また、電子部品やヒートシンク表面の微細な凹凸に追従できない。そのため、接触熱抵抗が大きくなり、効率よく熱を伝導することができないという問題がある。
【0004】
そこで、加熱により軟らかくなる熱伝導シートが提案されている。金属インジウム等の低融点金属を用いた熱伝導シートは、加熱により金属が溶融することで、極めて熱抵抗が小さくなる(特許文献1)。しかし、金属の融液は粘度が低いため、融点を超える温度に再加熱した場合に金属が流出してしまうおそれがある。
【0005】
また、加熱しても粘性を保つことが可能なシリコーン系のフェイズチェンジシートは、加熱によりシリコーンが軟らかくなり、熱抵抗が低くなる。しかし、シリコーンなどの樹脂系の熱伝導シートは金属インジウム等に比べて、熱伝導率が劣る(特許文献2)。
【0006】
樹脂系の放熱材料を高熱伝導化するために、銀フィラーが注目されている。銀は、単体の熱伝導率が非常に高く、かつ加熱時にフィラー同士が部分的に焼結して効率的に熱伝導路を形成し得る。そのため、銀フィラーを添加した放熱材料は、熱性能の大幅な改善が見込める。しかし、銀フィラーの焼結温度は、200℃以上と高いため、組付け工程にこのような高温での圧着工程を取り入れるのは難しい。
【0007】
銀フィラーを低温で焼結する技術として、ナノサイズの銀(ナノ銀)を使うことが提案されている(特許文献3)。しかし、ナノ銀は非常に高価であり、また組成物中に均一に分散させることが難しいため、ナノ銀を配合した組成物を安定的に量産し、製品化するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-169582号公報
【特許文献2】特開2019-182980号公報
【特許文献3】特開2017-95642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、150℃程度での加熱圧縮でも、良好な熱伝導性を発揮し、放熱性能に優れるシート状放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、発熱性電子部品と放熱部品との間に配置されるシート状放熱部材であって、
前記シート状部材は、室温では非流動性であり、かつ前記発熱性電子部品動作時の該発熱性電子部品からの発熱により流動化する、または前記発熱性電子部品配置時に積極的にかける熱により流動化することによって、前記発熱性電子部品と前記放熱部品との境界に実質的に空隙なく充填され、
前記シート状放熱部材は、
(A)融点が40~110℃であるシリコーンレジン 100質量部、
(B)銀粉末 500~1,850質量部、および
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.0~20質量部
を含む熱軟化性熱伝導性組成物を含有し、
前記(A)成分は、R1SiO3/2単位(式中、R1は炭素原子数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)、およびR2
2SiO2/2単位(式中、R2は、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)を含み、
前記(B)成分の銀粉末は、平均粒径が0.5~10μmであり、前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末を30~60体積%含み、
前記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることを特徴とするシート状放熱部材を提供する。
【0011】
本発明のシート状放熱部材は、取り扱い性が良好であり、放熱部品に対して容易に実装できる。また、熱圧着により、シートが軟化し、放熱部材の形状・凹凸に追従し、薄肉化することで、接触熱抵抗やシート自体の熱抵抗を低減することができる。さらに、150℃程度の加熱圧縮でも、シートが高熱伝導化し、シートの熱抵抗を低減することができる。
【0012】
よって、本発明のシート状放熱部材は、発熱性電子部品(発熱性素子)と放熱部品との間に介在して発熱性電子部品から発生する熱を放熱部品に伝える熱伝導部材として非常に有効である。
【0013】
前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末以外に補助無機充填材を更に含み、前記補助無機充填材が、アルミニウム粉末、銅粉末、金粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末および二酸化ケイ素粉末からなる群より選ばれるものであることが好ましい。
【0014】
銀粉末以外の補助無機充填材を更に含むことにより、より優れた熱伝導性を示すことができる。
【0015】
前記熱軟化性熱伝導性組成物は、さらに、(D)可塑剤として、炭素数6~20のアリール基を1分子中に1個以上有する直鎖状オルガノポリシロキサンを含むことができる。
【0016】
可塑剤をさらに含むことにより、シート状放熱部材の取り扱い性を更に改善できるとともに、熱圧着後の厚さを更に小さくすることができる。
【0017】
前記熱軟化性熱伝導性組成物が、ヒドロシリル化反応を促進する金属触媒を含有しないことが好ましい。
【0018】
ヒドロシリル化反応を促進する金属触媒を含有しないことにより、ヒドロシリル化反応で(C)成分のヒドロシリル基が消費されるのを抑えることができ、その結果、より確実に所望の熱伝導性を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のシート状放熱部材であれば、150℃程度での加熱圧縮でも、良好な熱伝導性を発揮し、放熱性能に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のシート状放熱部材の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述のように、150℃程度での加熱圧縮でも、良好な熱伝導性を発揮し、放熱性能に優れるシート状放熱部材の開発が求められていた。
【0022】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、熱軟化性のシリコーンレジンおよび銀粉末に、銀粉末の焼結を促進する成分としてオルガノハイドロジェンポリシロキサンを配合し、銀粉末の平均粒径および含有量、並びにオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量を特定の範囲内とすることで、150℃程度での加熱圧縮でも熱抵抗が低減できるシート状放熱部材を与えることを見出し、本発明を成すに至った。
【0023】
即ち、本発明は、発熱性電子部品と放熱部品との間に配置されるシート状放熱部材であって、
前記シート状部材は、室温では非流動性であり、かつ前記発熱性電子部品動作時の該発熱性電子部品からの発熱により流動化する、または前記発熱性電子部品配置時に積極的にかける熱により流動化することによって、前記発熱性電子部品と前記放熱部品との境界に実質的に空隙なく充填され、
前記シート状放熱部材は、
(A)融点が40~110℃であるシリコーンレジン 100質量部、
(B)銀粉末 500~1,850質量部、および
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.0~20質量部
を含む熱軟化性熱伝導性組成物を含有し、
前記(A)成分は、R1SiO3/2単位(式中、R1は炭素原子数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)、およびR2
2SiO2/2単位(式中、R2は、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)を含み、
前記(B)成分の銀粉末は、平均粒径が0.5~10μmであり、前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末を30~60体積%含み、
前記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることを特徴とするシート状放熱部材である。
【0024】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
図1に一例を概略的に示すように、本発明のシート状放熱部材1は、発熱性電子部品2と放熱部品3との間に配置されるシート状放熱部材である。発熱性電子部品2は、動作することによって室温より高い温度に到達し得る電子部品である。このシート状部材は、室温では非流動性であり、かつ発熱性電子部品2動作時の該発熱性電子部品2からの発熱により流動化する、または発熱性電子部品2配置時に積極的にかける熱により流動化することによって、発熱性電子部品2と放熱部品3との境界に実質的に空隙なく充填されるものである。本明細書において、実質的に空隙なく充填されるとは、顕微鏡で観察する場合、ボイドや未充填部分が認識できない状態を意味する。
【0026】
また、本発明のシート状放熱部材は、熱軟化性熱伝導性組成物を含み、該熱軟化性熱伝導性組成物は、下記(A)~(C)成分を含むことを特徴とする。
(A)融点が40~110℃であるシリコーンレジン 100質量部、
(B)銀粉末 500~1,850質量部、および
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.0~20質量部
【0027】
本発明のシート状放熱部材1は、発熱性電子部品2と放熱部品3の密着性がよく、かつ実質的な厚さが薄くなるので熱抵抗を著しく低減させることができる。
【0028】
より詳細には、本発明のシート状放熱部材1は、取り扱い性が良好であり、放熱部品3に対して容易に実装できる。また、熱圧着により、シートが軟化し、放熱部品3の形状・凹凸に追従し、薄肉化することで、接触熱抵抗やシート自体の熱抵抗を低減することができる。さらに、150℃程度の加熱圧縮でも、シートが高熱伝導化し、シートの熱抵抗を低減することができる。
【0029】
以下、各成分について詳細を説明する。
【0030】
(A)シリコーンレジン
(A)成分は、融点が40~110℃であるシリコーンレジンであり、本発明のシート状放熱部材のマトリックスを形成する。(A)成分としては、本発明の放熱部材が、実質的に室温(例えば、25℃)では固体(非流動性)であるが、発熱性電子部品の発熱による最高到達温度以下であって、具体的には40~110℃、特に60~100℃程度の温度範囲においては、熱軟化、低粘度化もしくは融解して流動化する、または発熱性電子部品配置時に積極的にかける熱(具体的には例えば40~110℃程度、特に60~100℃程度の温度範囲)により熱軟化、低粘度化もしくは融解して流動化するシリコーン樹脂である。(A)成分は、本発明のシート状放熱部材が熱軟化を起こす因子であり、該シート状放熱部材に熱伝導性を付与する充填材である銀粉末に加工性や作業性をあたえるバインダとしての役割も果たす。
【0031】
なお、本発明において「室温」とは、10℃以上40℃未満の範囲のことを指すものとする。
【0032】
ここで、熱軟化、低粘度化または融解する温度は、放熱部材としての温度であり、シリコーンレジン自体の融点は40~110℃であり、50~90℃であることが好ましい。シリコーンレジン自体の融点が40℃以上であれば、シート状放熱部材に粘着性がでるのを抑え、優れた取り扱い性を維持できる。また、シリコーンレジン自体の融点が110℃以下であれば、シート状放熱部材の熱軟化と同時に銀の焼結が進行するのを十分に防ぐことができ、シート状放熱部材を150℃程度の加熱圧縮でも十分に薄くすることができる。
なお、本発明におけるシリコーンレジンの融点は、JIS K0064:1992記載の目視による方法で測定した値であり、明確な融点を示さないシリコーンレジンの場合は、その溶融範囲を融点に代えて扱うものとする。
【0033】
(A)成分は、R1SiO3/2単位(以下、T単位と称する)、およびR2
2SiO2/2単位(以下、D単位と称する)を含むことを特徴とする。(A)成分は、これらT単位およびD単位のほかに、SiO4/2単位(以下、Q単位と称する)やR2
3SiO1/2単位(以下、M単位と称する)を有していてもよい。
【0034】
ここで、R1は、炭素原子数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。R1の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert―ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。中でも、好ましくはメチル基、フェニル基であることが難燃性の点から望ましい。
【0035】
ここで、R2は、上記R1のアルキル基とアリール基に加え、炭素数2~10のアルケニル基から選ばれる基である。R2の具体例としては、R1の具体例に加え、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキシニル基、オクテニル基等のアルケニル基等が挙げられる中でも、好ましくはビニル基、アリル基であることが難燃性の点から望ましい。
【0036】
(A)成分のシリコーンレジンについて更に具体的に説明する。本発明で使用するシリコーンレジンは、室温で非流動性であるためにT単位およびD単位を含む必要がある。該シリコーンレジンの代表的な例としては、T単位とD単位、及びM単位の組み合わせで構成されるシリコーンレジンが挙げられる。
【0037】
T単位を導入することで、靭性を高め、室温で固形時の脆さを改善して取扱い時の破損等を防止することができる。また、D単位を導入することで、室温での靭性を向上することができる。例えば、好ましいシリコーンレジンの構造として、M単位/T単位/D単位の組み合わせからなるシリコーンレジンが挙げられる。また、M単位/T単位/D単位の組み合わせからなるシリコーンレジンでは、T単位とD単位との比率は、10:90~90:10であることが好ましく、特に20:80~80:20とすることが好ましい。
【0038】
(A)成分の具体例としては、下記のような2官能性構造単位(D単位)および3官能性構造単位(T単位)を特定組成で有するシリコーンレジンを挙げることができる。なお、以下に挙げるシロキサン単位の結合順序は、ブロックであってもランダムであってもよい。
DmTφ
pDVi
n
(ここで、Dはジメチルシロキシ単位(即ち、(CH3)2SiO2/2)、Tφはフェニルシロキシ単位(即ち、(C6H5)SiO3/2)、DViはメチルビニルシロキシ単位(即ち、(CH3)(CH2=CH)SiO2/2)を表わし、(m+n)/p(モル比)=0.25~4.0、(m+n)/m(モル比)=1.0~4.0である)
【0039】
また、例えば、1官能性構造単位(M単位)、2官能性構造単位(D単位)および3官能性構造単位(T単位)を特定組成で有するシリコーン樹脂を挙げることができる。
MLDmTφ
pDVi
n
(ここで、Mはトリメチルシロキシ単位(即ち、(CH3)3SiO1/2)を表わし、D、TφおよびDViは上記のとおりであり、(m+n)/p(モル比)=0.25~4.0、(m+n)/m(モル比)=1.0~4.0、L/(m+n)(モル比)=0.001~0.1である)
【0040】
M単位、D単位、T単位、及びQ単位の比の測定方法
本発明において、三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジンの単官能性のR1
3SiO1/2単位(M単位)、2官能性のR2
2SiO2/2単位(D単位)、3官能性のR1SiO3/2単位(T単位)、及び4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の比は、29Si-NMRから求めた値である。
【0041】
29Si-NMRのサンプルの調製方法は特に制限されないが、例えば、オルガノポリシロキサンレジン1質量部を重クロロホルム3質量部に溶解させることで測定することができる。また、前記シリコーンレジンの平均重合度、即ち、M単位、D単位、T単位、及びQ単位の合計量は30~300であることが好ましく、より好ましくは50~150である。
【0042】
なお、本発明において、平均重合度は、トルエンを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(数平均分子量)として求めた値である。
【0043】
(B)銀粉末
(B)成分は、熱伝導性充填材となる銀粉末である。銀粉末の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば電解法、熱処理法、アトマイズ法、還元法等が挙げられる。また、その形状は、フレーク状、球状、粒状、不定形状、針状等、特に限定されるものではない。
【0044】
(B)成分の銀粉末は、平均粒径0.5~10μmである。銀粉末は、好ましくは1~8μm、更に好ましくは2~6μmを有するのがよい。該熱伝導性充填材は、銀粉末1種単独で用いてもよいし、銀粉末と銀粉末以外の充填材とを組み合わせた複数種を併用してもよい。銀粉末以外の充填材については後述する。また、平均粒径の異なる粒子を2種以上用いてもよい。なお、上記平均粒径は、レーザー光回折による粒度分布測定における累積体積平均径D50(又はメジアン径)等として求めた値である。具体的には、マイクロトラック・ベル(株)製の粒子径分布測定装置MT3000IIにより測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)の値である。
【0045】
(B)成分は、公知である種々の表面処理が施されてもよい。具体的には、例えば、シラン系、チタネート系などのカップリング剤処理およびプラズマ処理等が挙げられる。
【0046】
(B)成分の配合量は、前記(A)成分100質量部に対して、500~1,850質量部であり、好ましくは、800~1,700質量部であり、さらに好ましくは、1,000~1,500質量部である。(B)成分の配合量が多すぎるとシートが脆くなり、作業性が低下する。一方、配合量が少なすぎると、所望の熱伝導性を得ることができない。
【0047】
(B)成分である銀粉末の熱軟化性熱伝導性組成物に占める割合は、30~60体積%である。上記同様に、(B)成分の割合が多すぎるとシートが脆くなり、作業性が低下する。一方、割合が少なすぎると、所望の熱伝導性を得ることができない。
【0048】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(B)成分と反応し、銀粉末の焼結を促進するための、焼結促進剤として作用する。従って、通常の付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物における架橋剤とは異なる目的で配合する。
【0049】
(C)成分は、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む。好ましくは、1分子中に1個以上の炭素数6~10のアリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(C)成分として具体的には、下記式で表されるものが挙げられる。
[R4
rHSiO(3-r)/2]v[R3
sSiO(4-s)/2]w[R4
tSiO(4-t)/2]x
【0050】
ここで、R3は炭素数6~10のアリール基であり、具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、好ましくはフェニル基である。
【0051】
ここで、R4は、炭素原子数1~10のアルキル基であり、具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert―ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基等が挙げられる。中でも、好ましくはメチル基、エチル基であることが望ましい。
【0052】
rは、0~2であり、s及びtは、それぞれ2または3である。
【0053】
さらに、vは、0以上の正数であり、好ましくは0.05~0.5であり、より好ましくは0.1~0.4である。wは、0以上の正数であり、好ましくは0.05~0.5であり、より好ましくは0.1~0.4である。特に、vとwがこれらの範囲内であれば、(A)成分との優れた相溶性を示し、(B)成分との反応が十分に進み、シート状放熱部材の取り扱い性および熱伝導性を更に向上させることができる。また、xは0以上の正数であり、好ましくは0~0.8である。ただし、前記v、w、及びxはv+w+x=1を満たすものとする。
【0054】
(C)成分のヒドロシリル基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。(C)成分の分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状のいずれであってもよい。また、(C)成分の平均重合度は4~200であることが好ましく、4~120であることがより好ましく、4~60であることがさらに好ましい。
【0055】
(C)成分としては、1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを単独で使用してもよいし、2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用してもよい。
【0056】
(C)成分の具体例としては、下記構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
【0057】
[(CH3)2HSiO1/2]0.75[(C6H5)SiO3/2]0.25
[(CH3)HSiO2/2]0.6[(C6H5)2SiO2/2]0.2[(CH3)2SiO1/2]0.2
【0058】
(C)成分の配合量は、前記(A)成分100質量部に対して、1.0~20質量部であり、好ましくは、2~15質量部であり、さらに好ましくは、3~10質量部である。(C)成分の配合量が多すぎると、シートを40℃で保管中に、経時でシート内の銀粉末が凝集し、シートが硬くなってしまい、熱圧着してもシートが軟化しにくくなってしまう。また、(C)成分の配合量が少なすぎると、銀粉末の焼結促進効果が十分に得られず、所望の熱伝導性を得ることができない。
【0059】
(C)成分は銀粉末の焼結促進効果を得るための成分であり、ヒドロシリル化反応で(C)成分のヒドロシリル基の消費を抑えることができれば、所望の熱伝導性を確実に得ることができる。したがって、ヒドロシリル化反応を促進する金属触媒は含有しないことが好ましい。
【0060】
(D)可塑剤
シートの取り扱い性改善および熱圧着後の厚さを薄くする目的で、可塑剤となる(D)成分を上記熱軟化性熱伝導性組成物に混合してもよい。可塑剤は、(A)成分との相溶性から、1分子中に1個以上の炭素数6~10のアリール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0061】
(D)成分として具体的には、下記式で表されるものが挙げられる。
【化1】
【0062】
ここで、R5は、炭素数6~10のアリール基、または炭素数7~10のアラルキル基であり、具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基などのアラルキル基等が挙げられる。中でも、フェニル基であることが好ましい。
【0063】
また、R6は、炭素数1~10、好ましくは1~6のアルキル基、または、炭素数2~10、好ましくは2~4のアルケニル基から選ばれる1価炭化水素基である。たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキシニル基、オクテニル基等のアルケニル基等が挙げられる。中でも、メチル基、ビニル基が好ましい。
【0064】
a及びbで括られたシロキサン単位の結合は、ブロックであってもランダムであってもよい。また、それぞれのシロキサン単位の比率は、0<a≦1.0、0≦b≦0.8であり、ただし、a+b=1を満たす範囲である。
【0065】
(D)成分としては、1種の可塑剤を単独で使用してもよいし、2種以上の可塑剤を併用してもよい。
【0066】
(D)成分の性状としては、例えば、オイル状およびガム状のオルガノポリシロキサン(シリコーンオイルおよびシリコーン生ゴム)が挙げられる。
【0067】
(D)成分の具体例としては、下記構造のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【化2】
【0068】
(D)成分を、本発明のシート状放熱部材を構成する熱軟化性熱伝導性組成物に添加する場合、その添加量は、(A)成分のシリコーンレジン100質量部に対して、好ましくは1~100質量部、特に好ましくは2~20質量部である。該添加量がこの範囲内にあると、得られる組成物の取扱い性が改善されやすく、また、熱圧着後の厚みも薄くなりやすく、熱抵抗を低減することができる。
【0069】
(E)銀粉末以外の補助無機充填材
シートの取り扱い性改善、熱伝導性をさらに向上する目的で、銀粉末以外の熱伝導性粉末となる成分(E)である補助無機充填材を上記熱軟化性熱伝導性組成物に混合してもよい。
【0070】
(E)成分としては、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、金粉末等の金属粉末;酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、二酸化ケイ素粉末等の無機粉末などが挙げられる。
【0071】
(E)成分が前記熱軟化性熱伝導性組成物中に充填された(B)成分の隙間に入り込むことで、該組成物における熱伝導性粉末((B)成分)全体の充填性が向上する。また、該組成物の安定性が向上し、熱軟化時のオイル分離を防ぐことができ、取り扱い性が向上する。
【0072】
(E)成分の平均粒径は、0.5~10μmで、好ましくは1~8μm、更に好ましくは2~6μmを有するのがよい。該平均粒径が0.5μm以上であれば、(B)成分のかさ密度を抑えることができ、前記熱軟化性熱伝導性組成物中に(B)成分を高充填するのが容易となる。該平均粒径が10μm以下であれば、(E)成分よりも(B)成分の方が熱伝導率に与える影響が大きくなり、(B)成分の焼結による高熱伝導化の寄与が大きくなり、シート状放熱部材の熱伝導率を高めることができる。
【0073】
(E)成分である該補助無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0074】
(E)成分の配合量は、前記(A)成分100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、より好ましくは1~70質量部であり、さらに好ましくは、1~50質量部である。(E)成分の配合量が1~100質量部であれば、シート状放熱部材の脆化を防ぎ、十分な作業性を示すことができる。
(E)成分を配合する場合、前記(B)成分と(E)成分との合計量が熱軟化性熱伝導性組成物に占める割合は、30~60体積%であることが好ましい。
【0075】
製造方法
本発明のシート状放熱部材に用いられる熱軟化性熱伝導性組成物は、上記の各成分をニーダー、ゲートミキサー、プラネタリーミキサーなどのゴム練機を用いて配合および混練することによって、容易に製造できる。
【0076】
本発明のシート状放熱部材は、熱軟化性熱伝導性組成物をシート状に成形することにより製造することができる。ここで、シート状とは、フィルム状、テープ状を包含する意味で用いられる。シート状に成形する方法としては、例えば、上記混練り後の組成物を押し出し成型、カレンダー成型、ロール成型、プレス成型等の方法で成形する方法、溶剤に溶解させた該組成物を塗工する方法等が挙げられる。なお、このようにして製造されるシート状放熱部材の厚さは、好ましくは20~200μm、より好ましくは20~100μm、特に好ましくは30~80μmである。該厚さがこの範囲内にあると、取扱い性および放熱性能を良好に維持しやすい。
【実施例0077】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
下記実施例および比較例に用いられた熱伝導性接着層を構成する(A)~(E)成分は以下のとおりである。なお、以下においてMはトリメチルシロキシ単位(即ち、(CH3)3SiO1/2)、Dはジメチルシロキシ単位(即ち、(CH3)2SiO2/2)、Dφはジフェニルシロキシ単位(即ち、(C6H5)2SiO2/2)、DViはメチルビニルシロキシ単位(即ち、(CH3)(CH2=CH)SiO2/2)、Tφはフェニルシロキシ単位(即ち、(C6H5)SiO3/2)を指すものとする。
【0079】
(A)成分:
(A―1)下記式で表され、融点が50~70℃であるシリコーンレジン(平均重合度:100)
D25Tφ
55DVi
20
(A―2)下記式で表され、融点が80~100℃であるシリコーンレジン(平均重合度:100)
M15D12(Dφ)22Tφ
51
(A―3)下記式で表され、融点が120~140℃であるシリコーンレジン(平均重合度:116)(比較用)
M16D5(Dφ)31Tφ
64
(A―4)下記式で表され、融点が27~32℃であるアクリル変性シリコーン(商品名:KP-561、信越化学工業社製)(比較用)
【0080】
(B)成分:
(B-1)体積平均粒径:3μmを有するフレーク状銀フィラー
(B-2)体積平均粒径:4μmを有する球状銀フィラー
(B-3)体積平均粒径:20μmを有する球状銀フィラー (比較用)
【0081】
(C)成分:
(C-1)下記式で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(平均重合度:10)
【化3】
(C-2)下記式で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(平均重合度:32)
【化4】
【0082】
(D)成分:下記式で表され、可塑剤となるオルガノポリシロキサン
【化5】
【0083】
(E)成分: 体積平均粒径:2μmである球状アルミニウムフィラー
【0084】
上記(A)、(B)、(D)、及び(E)成分を、下記表1及び表2に記載のいずれかの配合量にてプラネタリーミキサーに仕込み、60分間混合した。次いで、キシレンの溶剤を塗工条件に合わせて適切な量を添加し、(C)成分を下記表1及び表2に記載のいずれかの配合量にて添加し、均一に混合することで、均一な熱軟化性熱伝導性組成物の塗工液を得た。乾燥後のシート状放熱部材の厚さが200μmになるように、前記塗工液を基材であるセパレートフィルムに塗工し、次いで塗膜の乾燥を行い、各シート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を作製した。作製したシート状放熱部材上に、別のセパレートフィルムを配置し、シート状放熱部材を2枚のセパレートフィルムの間に挟み込むようにした。
【0085】
[評価方法]
(1)取り扱い性:放熱部品(アルミヒートシンク)に対して、各例のシート状放熱部材を貼り付けた際に、所望の密着性が得られるかを評価した。
【0086】
具体的には、片面のセパレーターフィルムを剥がし、アルミヒートシンクに貼り付けた後に、もう片側のセパレーターフィルムを剥がす際に、シート状放熱部材がヒートシンクからずれずに固定されるか否かで評価をした。ずれずに固定できていたものを○、ずれが生じたものを×として、表中に記載した。なお、取り扱い性×の評価のものについては、以下の評価を行わなかった。
【0087】
(2)熱伝導率:両面のセパレーターフィルムを剥がしたシート状放熱部材をアルミプレートに挟み込み、均一に圧着後、乾燥機を用いて150℃/20psi×1hrの条件で加熱硬化させ、レーザーフラッシュ法で熱拡散率を測定した。熱拡散率と密度、比熱の関係から実効の熱伝導率を下記式により算出した。
熱伝導率(W/m・K)=熱拡散率(mm2/s)×密度(g/cm3)×比熱(J/g・K)
【0088】
(3)熱抵抗:レーザーフラッシュ法で求めた熱伝導率とサンプルの厚さから、実効の熱抵抗を下記式により算出した。
熱抵抗(mm2・K/W)=厚さ(μm)÷熱伝導率(W/m・K)
【0089】
(4)保管性:両面にセパレーターフィルムがついた状態のシート状放熱部材を40℃の乾燥機に2週間静置した後、乾燥機から取り出し、25℃まで放冷した。そのあと、前記で放冷したシートの熱伝導率を測定した。保管試験前(40℃の乾燥機に入れる前)の熱伝導率に対し、保管試験後の熱伝導率が80%以上のものを〇、80%未満のものを×として、表中に記載した。
【0090】
以下、実施例および比較例と、各例で用いた熱軟化性熱伝導性組成物との対応関係をまとめる。下記組成物(ア)~(ヒ)は、表1および表2に記載した配合で得た熱軟化性熱伝導性組成物である。
【0091】
(実施例1)
組成物(ア)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、実施例1のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。
【0092】
(実施例2)
組成物(イ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、実施例2のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。
【0093】
(実施例3)
組成物(ウ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、実施例3のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。
【0094】
(実施例4)
組成物(エ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、実施例4のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。
【0095】
(実施例5)
組成物(オ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、実施例5のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。
【0096】
(実施例6)
組成物(ナ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、実施例6のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。
【0097】
(比較例1)
組成物(カ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、比較例1のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。得られたシートの熱伝導率は低く、熱抵抗は高かった。
【0098】
(比較例2)
組成物(キ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、比較例2のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。初期の熱伝導率は25W/mkと高かったが、保管後は5W/mkであり、経時で熱伝導率の大きな低下が確認された。
【0099】
(比較例3)
組成物(ク)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、比較例3のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。比較例3のシートは粘着性が高く、片面のセパレーターフィルムを剥がすことができなかった。
【0100】
(比較例4)
組成物(ケ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、比較例4のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。比較例4のシートは密着性がなく、ヒートシンクにシートを貼り付けることができなかった。
【0101】
(比較例5)
組成物(コ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、比較例5のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。比較例5のシートは、(B)成分である銀粉末の充填率が低く、十分な熱伝導性が得られなかった。
【0102】
(比較例6)
組成物(ハ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、比較例6のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。比較例6のシートは、密着性がなく、ヒートシンクにシートを貼り付けることができなかった。
【0103】
(比較例7)
組成物(ヒ)を用いてセパレーターフィルムにコーティングを行い、比較例7のシート状放熱部材(熱軟化性熱伝導性シート)を得た。シートの密着性が弱く、ヒートシンクにシートを固定することができなかった。
【0104】
【0105】
【0106】
以上の結果から、本発明の実施例である実施例1~6の各シート状放熱部材は、何れも取り扱い性が良好であり、放熱部材に対して容易に実装できたことが分かる。また、実施例1~6の各シート状放熱部材は、150℃程度での加熱圧縮により軟化し、放熱部材の形状・凹凸に追従し、薄肉化することで、シート自体の熱抵抗を低減することができた。さらに、熱圧着により、シートが高熱伝導化し、シートの熱抵抗を低減することができた。
【0107】
一方で、比較例1~7のシート状放熱部材は、取り扱い性や保存性が悪かったり、熱抵抗が大きかったりと、問題があったことがわかる。
【0108】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]発熱性電子部品と放熱部品との間に配置されるシート状放熱部材であって、前記シート状部材は、室温では非流動性であり、かつ前記発熱性電子部品動作時の該発熱性電子部品からの発熱により流動化する、または前記発熱性電子部品配置時に積極的にかける熱により流動化することによって、前記発熱性電子部品と前記放熱部品との境界に実質的に空隙なく充填され、前記シート状放熱部材は、(A)融点が40~110℃であるシリコーンレジン 100質量部、(B)銀粉末 500~1,850質量部、および(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.0~20質量部を含む熱軟化性熱伝導性組成物を含有し、前記(A)成分は、R1SiO3/2単位(式中、R1は炭素原子数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)、およびR2
2SiO2/2単位(式中、R2は、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基から選ばれる基である。)を含み、前記(B)成分の銀粉末は、平均粒径が0.5~10μmであり、前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末を30~60体積%含み、前記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることを特徴とするシート状放熱部材。
[2]前記熱軟化性熱伝導性組成物は、前記(B)成分の銀粉末以外に補助無機充填材を更に含み、前記補助無機充填材が、アルミニウム粉末、銅粉末、金粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び二酸化ケイ素粉末からなる群より選ばれるものであることを特徴とする[1]記載のシート状放熱部材。
[3]前記熱軟化性熱伝導性組成物は、さらに、(D)可塑剤として、炭素数6~20のアリール基を1分子中に1個以上有する直鎖状オルガノポリシロキサンを含むことを特徴とする[1]または[2]記載のシート状放熱部材。
[4]前記熱軟化性熱伝導性組成物が、ヒドロシリル化反応を促進する金属触媒を含有しないことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載のシート状放熱部材。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。