(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100437
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】自動分析装置、及び異常診断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240719BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004434
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高麗 友輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幸太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 睦三
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕人
(72)【発明者】
【氏名】綱島 健太
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CF01
2G058CF11
2G058CF16
2G058FA01
2G058GB10
2G058GD05
2G058GD06
2G058GE08
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】駆動回路と超音波素子との電気インピーダンスを整合させる整合回路の異常診断を行うことができる。
【解決手段】自動分析装置は、反応容器300内の反応液500に超音波を照射して、反応液500を攪拌する自動分析装置であって、反応液500に超音波を照射する圧電素子25と、圧電素子25を駆動させる電気エネルギーを供給する電源部22と、圧電素子25と電源部22とのインピーダンスを整合する整合回路23と、整合回路23の入力側の電圧又は電流と、整合回路23の出力側の電圧又は電流とを測定し、入力側の電圧又は電流と出力側の電圧又は電流とに基づいて整合回路23の異常を診断する診断回路27と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内の検体及び試薬に超音波を照射して、前記検体及び前記試薬を攪拌する自動分析装置であって、
前記検体及び前記試薬に超音波を照射する超音波素子と、
前記超音波素子を駆動させる電気エネルギーを供給する駆動回路と、
前記超音波素子と前記駆動回路とのインピーダンスを整合する整合回路と、
前記整合回路の入力側の電圧又は電流と、前記整合回路の出力側の電圧又は電流とを測定し、前記入力側の電圧又は電流と前記出力側の電圧又は電流とに基づいて前記整合回路の異常を診断する診断回路と、を備える
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記診断回路は、
前記整合回路の出力側に前記超音波素子を接続しない状態で、前記整合回路の入力側の電圧又は電流と、前記整合回路の出力側の電圧又は電流とを測定し、前記超音波素子を接続しない状態で測定した前記整合回路の入力側の電圧又は電流と前記整合回路の出力側の電圧又は電流とに基づいて前記整合回路及び前記駆動回路の異常を診断し、
前記整合回路の出力側に前記超音波素子を接続した状態で、前記整合回路の出力側の電圧又は電流を測定し、前記超音波素子を接続した状態で測定した前記整合回路の出力側の電圧又は電流に基づいて前記超音波素子の異常を診断する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記診断回路は、
前記整合回路の出力側に前記超音波素子を接続した状態で、前記整合回路の出力側の電圧及び電流を測定し、測定した電圧と電流との位相差を算出して、前記位相差の大きさに基づいて前記超音波素子の異常を診断する
ことを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記診断回路は、
前記整合回路の出力側に前記超音波素子を接続した状態で、前記整合回路の出力側の電圧及び電流を測定し、測定した電圧と電流とから算出される電力に基づいて前記超音波素子の異常を診断する
ことを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記整合回路の出力側に接続可能なダミー負荷と、
前記整合回路の出力側に接続する負荷を選択する選択回路と、をさらに備え、
前記診断回路は、
前記整合回路の出力側に前記超音波素子及び前記ダミー負荷を接続しない状態で、前記整合回路の入力側の電圧又は電流と、前記整合回路の出力側の電圧又は電流とを測定し、前記整合回路の出力側に前記超音波素子及び前記ダミー負荷を接続しない状態で測定した前記整合回路の入力側の電圧又は電流と前記整合回路の出力側の電圧又は電流とに基づいて前記駆動回路の異常を診断し、
前記整合回路の出力側に前記ダミー負荷を接続した状態で、前記整合回路の出力側の電圧又は電流を測定し、前記整合回路の出力側に前記ダミー負荷を接続した状態で測定した前記整合回路の出力側の電圧又は電流に基づいて前記整合回路の異常を診断し、
前記整合回路の出力側に前記超音波素子を接続した状態で、前記整合回路の出力側の電圧又は電流を測定し、前記整合回路の出力側に前記超音波素子を接続した状態で測定した前記整合回路の出力側の電圧又は電流に基づいて前記超音波素子の異常を診断する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記ダミー負荷の電気インピーダンスは、実部と虚部とを有する
ことを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記ダミー負荷は、電気インピーダンスが調整可能である
ことを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記診断回路は、前記整合回路の入力側の電圧又は電流と第1閾値と比較し、前記整合回路の出力側の電圧又は電流と第2閾値と比較して、前記整合回路の異常を診断する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記整合回路の入力側の電圧又は電流の測定値及び前記整合回路の出力側の電圧又は電流の測定値は、実効値を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記反応容器の高さ方向に沿って前記超音波素子に設けられた複数の電極と、
前記複数の電極の中から前記駆動回路に接続する電極を選択する選択回路と、をさらに備え、
前記診断回路は、さらに前記選択回路の出力側の電圧又は電流を測定し、前記選択回路の出力側の電圧又は電流に基づいて、前記選択回路の異常を診断する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項11】
反応容器内の検体及び試薬に超音波を照射する超音波素子と前記超音波素子を駆動させる電気エネルギーを供給する駆動回路とのインピーダンスを整合する整合回路の異常診断方法であって、
前記整合回路の入力側の電圧又は電流を測定すること、
前記整合回路の出力側の電圧又は電流を測定すること、及び
前記入力側の前記電圧又は電流の測定値と前記出力側の前記電圧又は前記電流の測定値とに基づいて前記整合回路の異常を診断すること、を有する
ことを特徴とする異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置及び異常診断方法に関し、特に、反応容器内の検体及び試薬に超音波を照射して、検体及び試薬を攪拌する自動分析装置及び異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置では、検体及び試薬を攪拌するために、攪拌棒を検体及び試薬が注入された反応容器内に挿入し、攪拌棒を回転又は往復する方式が用いられている。このような自動分析装置では、攪拌棒に付着した検体又は試薬が、次の分析結果に影響を与えるキャリーオーバーと言われる現象が起こり得るため、攪拌棒を洗浄する機構が必要であった。
【0003】
この問題を解決するため、特許文献1及び特許文献2には、超音波を反応容器内の検体及び試薬に照射して攪拌する自動分析装置が開示されている。特許文献1及び特許文献2の技術では、攪拌棒などを媒介せずに、超音波によって検体及び試薬を攪拌する方式のため、攪拌棒を洗浄する攪拌機構を用意する必要がない。そのため、攪拌棒を用いることに起因するキャリーオーバー及び当該機構で使用される洗浄水の持ち込みを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-013149号公報
【特許文献2】特開2001-188070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波による攪拌機構では、反応容器内の液量によって超音波を照射する高さ位置が変化する。そのため、超音波を照射する高さを選択するためにアレイ型の超音波素子を用いることがある。アレイ型の超音波素子の面積は、駆動回路と超音波素子との電気インピーダンスとを整合させるために制約があり、超音波を照射する高さ位置の分解能が制約を受けるという課題がある。
【0006】
そこで、駆動回路と超音波素子との電気インピーダンスの不整合を改善するために、整合回路を用いて電力伝送率を制御する方法が選択されることが考えられる。このとき、整合回路の異常診断を行うことが、装置の安定動作の課題となる。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、駆動回路と超音波素子との電気インピーダンスを整合させる整合回路の異常診断を行うことが可能な自動分析装置及び異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、本発明の自動分析装置は、反応容器内の検体及び試薬に超音波を照射して、検体及び試薬を攪拌する自動分析装置であって、検体及び試薬に超音波を照射する超音波素子と、超音波素子を駆動させる電気エネルギーを供給する駆動回路と、超音波素子と駆動回路とのインピーダンスを整合する整合回路と、整合回路の入力側の電圧又は電流と、整合回路の出力側の電圧又は電流とを測定し、入力側の電圧又は電流と出力側の電圧又は電流とに基づいて整合回路の異常を診断する診断回路と、を備える。
【0009】
また、本発明の異常診断方法は、反応容器内の検体及び試薬に超音波を照射する超音波素子と、超音波素子を駆動させる電気エネルギーを供給する駆動回路とのインピーダンスを整合する整合回路の異常診断方法であって、整合回路の入力側の電圧又は電流を測定すること、整合回路の出力側の電圧又は電流を測定すること、及び入力側の電圧又は電流の測定値と出力側の電圧又は電流の測定値とに基づいて整合回路の異常を診断すること、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動回路と超音波素子との電気インピーダンスを整合させる整合回路の異常診断を行うことができ、装置の安定動作を実現することができる。
なお、上記した課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の自動分析装置100の全体構成を示した概略図である。
【
図2】実施例1の攪拌部14の詳細を示した図である。
【
図3】実施例1に診断回路27のハードウェアブロック図である。
【
図4】実施例1の診断回路27による測定結果と異常個所との関係を示した図である。
【
図5】実施例1の診断回路27による異常診断のフローチャートである。
【
図6】実施例1の開放端の状態での整合回路23の入力電圧及び出力電圧の測定結果を示す図である。
【
図7】実施例1の開放端の状態での整合回路23の入力電圧及び出力電圧の測定結果を示す図である。
【
図8】実施例1の動作時の状態での整合回路23の入力電圧及び入力電流、並びに出力電圧及び出力電流の測定結果を示す図である。
【
図9】実施例1の動作時の状態での整合回路23の出力電圧及び出力電流の測定結果を示す図である。
【
図10】実施例2の攪拌部14の詳細を示した図である。
【
図11】実施例2の診断回路27による測定結果と異常個所との関係を示した図である。
【
図12】実施例2の診断回路27による異常診断のフローチャートである。
【
図13】実施例2のダミー負荷の状態での整合回路23の入力電圧及び入力電流、並びに出力電圧及び出力電流の測定結果を示す図である。
【
図14】実施例3の攪拌部14の詳細を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0013】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0014】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0015】
実施例において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0016】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【実施例0017】
まず、実施例1の自動分析装置を説明する。
【0018】
(自動分析装置100)
図1は、実施例1の自動分析装置100の全体構成を示した概略図である。
図1に示すように、自動分析装置100は、検体架設部11と、試薬設置部12と、反応部13と、攪拌部14と、測定部15と、洗浄部16と、検体分注機構17と、試薬分注機構18と、を備える。各部11~18の動作は、図示しない制御部により制御される。
【0019】
検体架設部11に架設された被測定検体200は、検体分注機構17により分析に必要な量だけ分取され、検体吐出位置P1にて反応容器300に吐出される。試薬設置部12の試薬は、試薬分注機構18により分析に必要な量だけ分取され、試薬吐出位置P2にて被測定検体200が格納された反応容器300に吐出される。被測定検体200及び試薬が吐出された反応容器300は、攪拌位置P3に移動される。この攪拌位置P3にて、反応容器300内の被測定検体200及び試薬は、攪拌部14の圧電素子25(
図2参照)から照射される超音波により攪拌される。攪拌部14により充分に攪拌された被測定検体200は、測定部15において成分分析が実施される。成分分析の終了後、反応容器300は、洗浄部16により洗浄され、再び他の分析に用いられる。
【0020】
(攪拌部14)
図2は、実施例1の攪拌部14の詳細を示した図である。
図2に示すように、攪拌部14は、攪拌制御部21と、電源部22と、整合回路23と、電極セレクタ24と、圧電素子25と、複数の電極26と、診断回路27と、を備える。
【0021】
(攪拌制御部21)
攪拌制御部21は、攪拌部14の各部を制御する。例えば、攪拌制御部21は、反応容器300内の反応液500(被測定検体200及び試薬)の液量に応じて、電圧を印加する1又は複数の電極26を選択し、選択した電極26をオンするように電極セレクタ24に指示する。また、攪拌制御部21は、電源部22、整合回路23、及び圧電素子25の故障診断のために、電極セレクタ24の各スイッチのオン及びオフを制御する。
【0022】
(電源部22)
電源部22は、圧電素子25を駆動させる電気エネルギーを供給する駆動回路である。電源部22は、攪拌制御部21から入力される信号に従って、電極26に印加する電圧を生成し、整合回路23及び電極セレクタ24を介して電極26に電圧を印加して、圧電素子25を振動させる。当該信号は、反応容器300内の反応液500の液量、及び反応液500を攪拌するタイミングに基づいて生成される。
【0023】
(整合回路23)
整合回路23は、電源部22と圧電素子25との電気インピーダンスを整合する。整合回路23は、フェライトに信号線を巻いて、1次と2次との巻き数比で電気インピーダンスを整合させるトランス型、直列のコイルと並列のコンデンサとを含む低域通過フィルタ型、直列のコンデンサと並列のコイルとを含む高域通過フィルタ型などが選択できる。これらを単体または多段に設置することで、電源部22と圧電素子25との電気インピーダンスを整合させることができる。
【0024】
(電極26、電極セレクタ24)
圧電素子25には、反応容器300の高さ方向に沿って複数の電極26が取り付けられている。電極セレクタ24は、圧電素子25に設けられた複数の電極26の中から1又は複数の電極26を選択する選択回路であって、電源部22と選択した電極26とを電気的に接続する。
【0025】
(圧電素子25)
圧電素子25は、反応容器300内の反応液500に超音波を照射する超音波素子である。圧電素子25は、電源部22から電圧が印加されると、振動し、超音波を出力する。出力された超音波は、反応容器300内の反応液500に照射され、反応液500を攪拌する。圧電素子25は、超音波伝搬媒体400が満たされた恒温槽13aの内壁に沿って、反応容器300の側面に対向するように設けられる。超音波伝搬媒体400は、例えば、37°に温度制御された恒温水である。
【0026】
(診断回路27)
診断回路27は、整合回路23の入力側の電圧又は電流と、整合回路23の出力側の電圧又は電流とを測定し、電源部22、整合回路23、及び圧電素子25の異常を診断する。具体的には、診断回路27は、電極セレクタ24が負荷に接続されていない開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧又は電流を測定し、電源部22の異常を診断する。また、診断回路27は、開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧又は電流、及び整合回路23の出力側の電圧又は電流を測定し、整合回路23の異常を診断する。また、診断回路27は、開放端の状態及び電極セレクタ24が負荷(圧電素子25)に接続された動作時の状態で、整合回路23の出力側の電圧又は電流を測定することによって、圧電素子25の異常を診断する。
【0027】
診断回路27は、整合回路23の入力側の電圧だけを測定してもよいし、電流だけを測定してもよいし、電圧及び電流の両方を測定してもよい。また、診断回路27は、整合回路23の出力側の電圧だけを測定してもよいし、電流だけを測定してもよいし、電圧及び電流の両方を測定してもよい。
【0028】
診断回路27は、記録部28aを有する検出部28と、分析部29と、を有する。検出部28は、整合回路23の入力側の電圧又は電流と、整合回路23の出力側の電圧又は電流とを測定する。検出部28によって測定された測定値は、記録部28aに記憶される。また、検出部28は、測定値を分析部29に送信する。
【0029】
分析部29は、検出部28から受信した測定値を分析して、電源部22、整合回路23及び圧電素子25の異常の有無を判定する。
【0030】
ここで、
図3を参照して、診断回路27のハードウェア構成を説明する。診断回路27は、
図3に示すように、プロセッサ31と、主記憶部32と、補助記憶部33と、入出力I/F34と、を有する。プロセッサ31は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などである。I/Fは、インターフェースの略である。主記憶部32は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などである。補助記憶部33は、ROM(Read Only Memory)などであって、例えば攪拌部14内の異常個所を特定する異常診断プログラムを記憶する。入出力I/F34は、整合回路23の入力側及び出力側の電圧又は電流を入力するためのインターフェース、及び攪拌制御部21と通信するためのインターフェースである。
【0031】
図4は、実施例1の診断回路27による測定結果と異常個所との関係を示した図である。次に、
図4を参照して、診断回路27による測定結果と異常個所との関係を説明する。整合回路23の入力側の電圧又は電流と、整合回路23の出力側の電圧又は電流とを測定する状態は、2種類あり、整合回路23の出力側に負荷を接続しない開放端の状態と、負荷(圧電素子25)を接続する動作時の状態と、がある。検出部28が測定する電圧及び電流は、整合回路23の入力側及び出力側を対象とする。
【0032】
(1)診断回路27は、開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がOK且つ整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がOKの場合、電源部22、整合回路23、及び圧電素子25のいずれも異常なしと判定する。
(2)診断回路27は、開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がNGの場合、電源部22の異常と判定する。
(3)診断回路27は、開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がOK且つ整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がNGの場合、整合回路23の異常と判定する。
【0033】
(4)診断回路27は、動作時の状態で、整合回路23の出力側の電圧(又は電流)の測定値がOKの場合、電源部22、整合回路23、及び圧電素子25のいずれも異常なしと判定する。
(5)診断回路27は、動作時の状態で、整合回路23の出力側の電圧(又は電流)の測定値がNGの場合、圧電素子25の異常と判定する。
【0034】
(異常診断のフローチャート)
図5は、実施例1の異常診断のフローチャートである。次に、
図5を参照して、実施例1の異常診断方法を説明する。
図5のフローチャートの各ステップは、例えば、診断回路27のプロセッサ31が異常診断プログラムを読み出して実行することによって、処理される。
【0035】
S501では、診断回路27は、整合回路23の出力側に負荷を接続しない開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧を測定する。
【0036】
S502では、診断回路27は、整合回路23の入力側の電圧の測定値を正常値と比較する。電圧の測定値が正常値と比較して正常な場合はS503へ進み、異常な場合はS511へ進む。
【0037】
S511では、診断回路27は、攪拌制御部21に電源部22の異常を通知する。そして、攪拌制御部21は、電源部22の異常が通知されると、表示部などに電源部22の異常を表示し、電源部22の交換を促す。
【0038】
S503では、診断回路27は、整合回路23の出力側に負荷を接続しない開放端の状態で、整合回路23の出力側の電圧を測定する。
【0039】
S504では、診断回路27は、整合回路23の出力側の電圧の測定値を正常値と比較する。電圧の測定値が正常値と比較して正常な場合はS505へ進み、異常な場合はS512へ進む。
【0040】
S512では、診断回路27は、攪拌制御部21に整合回路23の異常を通知する。そして、攪拌制御部21は、整合回路23の異常が通知されると、表示部などに整合回路23の異常を表示し、整合回路23の交換を促す。
【0041】
S505では、圧電素子25を電源部22に接続した状態(動作時の状態)で、診断回路27は、整合回路23の入力側及び出力側の電圧及び電流を測定する。S505では、整合回路23の入力側及び出力側の電圧及び電流を測定したが、整合回路23の入力側又は出力側の何れか一方の電圧又は電流の何れか一方を測定してもよいし、整合回路23の入力側及び出力側の電圧又は電流の何れか一方を測定してもよいし、整合回路23の入力側又は出力側の何れか一方の電圧及び電流を測定してもよい。
【0042】
S506では、診断回路27は、整合回路23の入力側及び出力側の電圧及び電流の測定値を正常値と比較する。整合回路23の入力側及び出力側の電圧及び電流の測定値が正常値と比較していずれも正常な場合は本フローチャートを終了し、異常な場合はS513へ進む。
【0043】
S513では、診断回路27は、攪拌制御部21に圧電素子25の異常を通知する。そして、攪拌制御部21は、圧電素子25の異常が通知されると、表示部などに圧電素子25の異常を表示し、圧電素子25の交換を促す。
【0044】
S502の判定では、
図6に示す電圧の時間波形のように、整合回路23の入力側の電圧(
図6の入力電圧)が正常状態であると判定する閾値(
図6の入力電圧の閾値)より高い場合(
図6の例では、所定時間内で閾値より一時的に電圧が高くなる場合)は、正常状態であると判定される。一方で、
図7に示す電圧の時間波形のように、整合回路23の入力側の電圧(
図7の入力電圧)が閾値(
図7の入力電圧の閾値)よりも低い場合(
図6の例では、所定時間内で閾値より常に電圧が低くなる場合)は、電源部22の異常状態であると判定する。
【0045】
S504の判定では、
図6に示す電圧の時間波形のように、整合回路23の出力側の電圧(
図6の出力電圧)が正常状態であると判定する閾値(
図6の出力電圧の閾値)より高い場合は、正常状態であると判定される。一方で、
図7に示す電圧の時間波形のように、整合回路23の出力側の電圧(
図7の出力電圧)が閾値(
図7の出力電圧の閾値)よりも低い場合は、整合回路23の異常状態であると判定する。
【0046】
ここでは、整合回路23の入力側及び出力側の電圧と閾値とを比較する例について説明したが、閾値以外の判定基準を用いてもよい。例えば、整合回路23の入力電圧に対する出力電圧の増幅率を基準とすることも可能である。所定の増幅率(例えば2倍)を設定し、
図6に示すように、出力電圧が入力電圧の適正増幅率の範囲(例えば2倍±10%)に収まっていれば、整合回路23が正常状態であると判定する。
【0047】
また、2つの判定基準を用いてもよい。例えば、
図7に示すように、増幅した出力電圧が適正増幅率の範囲に収まっていても、当該出力電圧が閾値(
図7の出力電圧の閾値)を満たさない場合があるので、閾値と増幅率とを組み合わせて使用する。これにより、ロバストな異常診断が可能となる。
【0048】
S506の判定では、
図8に示すように、整合回路23の入力側及び出力側の電圧及び電流の閾値判定より、圧電素子25の状態を判定する。
【0049】
なお、電圧と電流との位相差(位相のずれ)を判定基準にしてもよいし、閾値と位相差との組み合わせを判定基準にしてもよい。例えば、電圧と電流との位相差が一定範囲内であれば正常状態であると判定し、一定範囲外であれば異常状態であると判定してもよい。
【0050】
また、電圧と電流との位相差を得ることにより、電力の算出が可能となり、算出した電力を用いて電力伝送状態を定量的に判定することが可能となる。
【0051】
また、電圧又は電流の実効値を上記した閾値と比較してもよい。実効値を用いた場合、突発的なノイズに対しての閾値判定がより信頼性の高い結果となる。
【0052】
図9は、S506の判定において異常状態であると判定される測定結果である。
図9に示すように、整合回路23の出力電圧が閾値(出力電圧の閾値)を満たさず、電圧と電流との位相差も180°あることから、電力が伝送していない異常状態であると判定することができる。
【0053】
(実施例1の効果)
以上より、実施例1では、電源部22及び圧電素子25の異常診断だけでなく、電源部22と圧電素子25とのインピーダンスを整合する整合回路23の異常診断を行うことが可能となる。これにより、自動分析装置100の安定動作を実現することができる。
【0054】
また、
図2の構成では、電源部22から圧電素子25への電力伝送を効率的に制御する整合回路23を備えており、反応液500の液量および粘性の変化に起因する電気インピーダンスの変化による回路系への影響を、整合回路23を可変型にすることで調整することができる。これにより、回路系の負担を低減することができる。さらに、圧電素子25による超音波の照射の高さ位置の分解能の改善効果を得ることが可能となる。
(1)診断回路27は、開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がOK且つ整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がOKの場合、電源部22、整合回路23、及び圧電素子25のいずれも異常なしと判定する。
(2)診断回路27は、開放端の状態で、整合回路23の入力側の電圧(又は電流)の測定値がNGの場合、電源部22の異常と判定する。
(3)診断回路27は、ダミー負荷の状態で、整合回路23の入力側の電圧及び電流の測定値がOK且つ整合回路23の入力側の電圧及び電流の測定値がNGの場合、整合回路23の異常と判定する。
S1203では、診断回路27は、整合回路23の出力側にダミー負荷30を接続したダミー負荷の状態で、整合回路23の入力側及び出力側の電圧及び電流を測定する。ここでは、ダミー負荷の状態で、整合回路23の入力側及び出力側の電圧及び電流を測定したが、整合回路23の入力側又は出力側の何れか一方の電圧及び電流を測定してもよいし、整合回路23の入力側又は出力側の何れか一方の電圧又は電流の何れか一方を測定してもよい。
以上より、実施例2では、電源部22及び圧電素子25の異常診断だけでなく、電源部22から圧電素子25への電力伝達を制御する整合回路23の異常診断及び定量評価を行うことが可能となる。