IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製粉株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100501
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】フライベーカリー食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 10/00 20060101AFI20240719BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20240719BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A21D10/00
A21D13/60
A21D2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004538
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】市川 昂典
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DB35
4B032DK11
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DP23
4B032DP47
(57)【要約】
【課題】マカロンのようにサクサクとした食感で歯切れがよい外相を有し、外相とは異なる食感の内相を有する、少なくとも二相を有するフライベーカリー食品を得ること。
【解決手段】下記条件(1)~(5)を満たす外生地用ミックス粉と、外生地用ミックス粉とは異なる内生地用ミックス粉とを含む、フライベーカリー食品用ミックス粉キットにより課題が解決される。
(1)ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを含む澱粉質原料と、融点15℃以上の油脂と、糖類と、を含む。
(2)ハイアミロース澱粉粉由来のアミロース量が、澱粉質原料の全量に対して5~26質量%である。
(3)α化澱粉の量が、澱粉質原料の全量に対して7~37質量%である。
(4)融点15℃以上の油脂の量が、澱粉質原料100質量部に対して8~33質量部である。
(5)糖類の量が、澱粉質原料100質量部に対して10~35質量部である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(1)~(5)を満たす外生地用ミックス粉と、外生地用ミックス粉とは異なる内生地用ミックス粉とを含む、フライベーカリー食品用ミックス粉キット。
(1)ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを含む澱粉質原料と、融点15℃以上の油脂と、糖類と、を含む。
(2)ハイアミロース澱粉由来のアミロース量が、澱粉質原料の全量に対して5~26質量%である。
(3)α化澱粉の量が、澱粉質原料の全量に対して7~37質量%である。
(4)融点15℃以上の油脂の量が、澱粉質原料100質量部に対して8~33質量部である。
(5)糖類の量が、澱粉質原料100質量部に対して10~35質量部である。
【請求項2】
内生地用ミックス粉が、下記条件(i)を満たす、請求項1記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
(i)α化澱粉と、タンパク質素材と、甘味性糖質とを含む。
【請求項3】
内生地用ミックス粉が、下記条件(ii)、(iii)をさらに満たす、請求項2記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
(ii)α化澱粉の含有量が、α化澱粉とタンパク質素材と甘味性糖質との合計に対して5~19質量%である。
(iii)タンパク質素材と甘味性糖質との質量比が、タンパク質素材の質量を1とした時に甘味性糖質の質量が1.1~8である。
【請求項4】
内生地の甘味性糖質が、スクロース、マルトデキストリン、還元水あめからなる群から選択される1以上である、請求項2に記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
【請求項5】
前記外生地用ミックス粉における糖類が非還元糖である、請求項1に記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キットを使用するフライベーカリー食品の製造方法であって、
外生地用ミックス粉と液体原料とを混合して外生地を調製する工程と、
内生地用ミックス粉と液体原料とを混合して内生地を調製する工程と、
内生地を外生地により包被する工程と、
内生地を外生地で包被した複層生地を油ちょうする工程と、
を含む、前記フライベーカリー食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフライベーカリー食品の食感を改良するためのフライベーカリー食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーキドーナツは、穀粉、糖類、油脂、ベーキングパウダー等を混合したケーキドーナツ生地(流動性ないしは可塑性のある生地)をフライして得られる菓子である。各種の原料配合を調節することにより、ふわふわとした食感、もっちりとした食感、さっくりとした食感など、多様な食感のケーキドーナツを得ることができる。このようなケーキドーナツは人気のあるベーカリー食品の一つであり、専門店を始め、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど多様な店舗で販売されている。
マカロンは、メレンゲに糖、アーモンドプードル等を混ぜ合わせたマカロン生地を焼成して得られる菓子であり、食用色素等によりポップでカラフルに発色した外観を有し、外相(特に表面部分)は硬くサクッとした食感、内相はネチッとした食感をしている。一般に、マカロン生地を得るために用いる原料の概ね二分の一量がグラニュー糖や粉糖等の糖類であり、概ね四分の一量がメレンゲ用の卵白であり、概ね四分の一量がアーモンドプードルであり、このような原料構成がマカロン特有の食感をもたらす要因である。一部で、アーモンドプードルを、粉末ピーナツ等の油糧種子粉砕物や小麦粉等の穀粉に代替することも行われている。
ドーナツに前述のようなマカロンの特徴を取り入れようとして、卵白が配合された上掛けを用いる試みがあるが(例えば、特許文献1)、マカロンのような外観及び食感を有するケーキドーナツを得るには至っていないのが現状である。また、ケーキドーナツ生地に糖類を多く使用すると、ケーキドーナツ生地の保形性が悪くなり、フライ中に型崩れが起こりやすく、外観並びに食感共に不適なケーキドーナツになりがちであり、更には、ケーキドーナツ表面の揚げ色が濃くなるために食用色素等によるカラフルな色彩の発色が損なわれることになる。しかし、保形性と揚げ色を良好に保つために糖類の量を減らすと、サクッとした外相とネチッとした内相の食感が得られ難くなる問題がある。
一方、白い外観のベーカリー食品(白いパンや白いたい焼きなど)を得るためにマルチトールやトレハロース、馬鈴薯澱粉を使用することが知られている(特許文献2、特許文献3)。しかしながら、フライ加熱はオーブン加熱や型焼き加熱よりも熱伝導が高いために揚げ色が着く恐れがあり、原料に澱粉を多く使用するためにモッチリとした食感になりやすく、マカロンに特有な外観及び食感を得ることは困難である。
特許文献4には、穀粉原料と所定合計量の酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉とを含むドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地が開示されており、パリパリした食感のドーナツを製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-121209号公報
【特許文献2】特開2011-24544号公報
【特許文献3】特開2013-212104号公報
【特許文献4】特開2020-171237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第一の目的は、マカロンのようにサクサクとした食感で歯切れがよい外相と、外相とは異なる内相との、食感の異なる少なくとも二相を有するフライベーカリー食品を得ることである。本発明の第二の目的は、食用色素等による発色を担保するため、外皮の揚げ色がつき難いフライベーカリー食品を得ることである。本発明の第三の目的は、マカロンのように、サクサクとした食感で歯切れがよい外相と、ネチッとした食感のある内相とを有するフライベーカリー食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを澱粉質原料の一部として加え、さらに特定量の油脂と糖類とを添加したミックス粉から外相用の生地を製造することにより、サクサクとした食感で歯切れがよい外相と、外相用生地とは異なる内相用生地から製造した内相との、食感の異なる少なくとも二相を有するフライベーカリー食品が得られることを見いだし本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下を提供する。
〔1〕下記条件(1)~(5)を満たす外生地用ミックス粉と、外生地用ミックス粉とは異なる内生地用ミックス粉とを含む、フライベーカリー食品用ミックス粉キット。
(1)ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを含む澱粉質原料と、融点15℃以上の油脂と、糖類と、を含む。
(2)ハイアミロース澱粉由来のアミロース量が、澱粉質原料の全量に対して5~26質量%である。
(3)α化澱粉の量が、澱粉質原料の全量に対して7~37質量%である。
(4)融点15℃以上の油脂の量が、澱粉質原料100質量部に対して8~33質量部である。
(5)糖類の量が、澱粉質原料100質量部に対して10~35質量部である。
〔2〕内生地用ミックス粉が、下記条件(i)を満たす、〔1〕記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
(i)α化澱粉と、タンパク質素材と、甘味性糖質とを含む。
〔3〕内生地用ミックス粉が、下記条件(ii)、(iii)をさらに満たす、〔2〕記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
(ii)α化澱粉の含有量が、α化澱粉とタンパク質素材と甘味性糖質との合計に対して5~19質量%である。
(iii)タンパク質素材と甘味性糖質との質量比が、タンパク質素材の質量を1とした時に甘味性糖質の質量が1.1~8である。
〔4〕内生地の甘味性糖質が、スクロース、マルトデキストリン、還元水あめからなる群から選択される1以上である、〔2〕に記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
〔5〕前記外生地用ミックス粉における糖類が非還元糖である、〔1〕に記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キット。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のフライベーカリー食品用ミックス粉キットを使用するフライベーカリー食品の製造方法であって、
外生地用ミックス粉と液体原料とを混合して外生地を調製する工程と、
内生地用ミックス粉と液体原料とを混合して内生地を調製する工程と、
内生地を外生地により包被する工程と、
内生地を外生地で包被した複層生地を油ちょうする工程と、
を含む、前記フライベーカリー食品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、油ちょうされた外生地由来の外相(特に表面部分)がサクサクとした食感で歯切れがよく、一方内相は異なる食感を有する、少なくとも二相のフライベーカリー食品、好ましくはケーキドーナツ、を得ることができる。また、本発明によれば、油ちょうしたフライベーカリー食品の外皮に揚げ色がつき難いため、食用色素による発色を良好にすることができ、マカロンのようにバラエティーに富んだ色彩のフライベーカリー食品を製造することができる。
また本発明の第二の態様によれば、サクサクとした食感で歯切れがよい外相と、ネチッとした食感を有する内相とを有するフライベーカリー食品、特にケーキドーナツ、を得ることができ、マカロンのような表層と内層との食感差を楽しむことができるフライベーカリー食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第一の態様は、下記条件(1)~(5)を満たす外生地用ミックス粉と、外生地用ミックス粉とは異なる内生地用ミックス粉とを含む、フライベーカリー食品用ミックス粉キット、である。
(1)ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを含む澱粉質原料と、融点15℃以上の油脂と、糖類と、を含む。
(2)ハイアミロース澱粉由来のアミロース量が、澱粉質原料の全量に対して5~26質量%である。
(3)α化澱粉の量が、澱粉質原料の全量に対して7~37質量%である。
(4)融点15℃以上の油脂の量が、澱粉質原料100質量部に対して8~33質量部である。
(5)糖類の量が、澱粉質原料100質量部に対して10~35質量部である。
【0008】
<1>フライベーカリー食品用ミックス粉キット
本発明において「フライベーカリー食品」とは、ミックス粉を利用して製造され、油ちょう(フライ)調理される、ベーカリー食品であり、好ましくは揚げパン及びドーナツが挙げられ、より好ましくはチュロス、ケーキドーナツなどのドーナツ類が挙げられ、さらに好ましくはケーキドーナツが挙げられる。
本発明のフライベーカリー食品用ミックス粉キットは少なくとも外生地用のミックス粉と、外生地用ミックス粉とは異なる内生地用のミックス粉とを含む。ミックス粉キットに含まれる公知の他の材料が含まれていてもよい。
本発明のミックス粉キットで製造できるフライベーカリー食品は外相と内相の少なくとも2相からなっている。外相により内相が完全に被包されていてもよい。
外生地とは、外相あるいは表層を形成するための生地を意味する。また、内生地とは、内相あるいは内層を形成するための生地を意味する。外生地用ミックス粉と内生地用ミックス粉とは異なる組成を有する。よって、外生地に由来する外相はサクサクとした食感で歯切れがよく、内生地はまた異なる食感を有しており、両者のコントラストを楽しむことができる。
【0009】
<1-1>外生地用のミックス粉
本発明の外生地用のミックス粉は、以下の特徴を有する。
(1)ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを含む澱粉質原料と、融点15℃以上の油脂と、糖類と、を含む。
(2)ハイアミロース澱粉由来のアミロースの量が、澱粉質原料の全量に対して5~26質量%である。
(3)α化澱粉の量が、澱粉質原料の全量に対して7~37質量%である。
(4)融点15℃以上の油脂の量が、澱粉質原料100質量部に対して8~33質量部である。
(5)糖類の量が、澱粉質原料100質量部に対して10~35質量部である。
【0010】
(1-1-1)外生地:澱粉質原料
本発明における外生地用ミックス粉に含まれる澱粉質原料は澱粉類及び/又は穀粉類からなる。
本明細書において「澱粉類」とは、穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのハイアミロース種、ワキシー種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらのハイアミロース種澱粉、ワキシー種澱粉)、及び、前記澱粉をエーテル化、エステル化、アセチル化、酸化処理、架橋、熱処理、酵素処理等並びにそれらを組合せて処理を行った変性澱粉などをいう。
「穀粉類」とは、普通小麦、デュラム小麦、米、ライ麦、大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などをいう。
【0011】
本発明の外生地用ミックス粉に含まれる澱粉質原料はハイアミロース澱粉(後述)及びα化澱粉(後述)を含む。本発明の外生地用ミックス粉に含まれる澱粉質原料におけるハイアミロース澱粉及びα化澱粉以外の残余澱粉質原料について、本発明の第一の目的(外相がサクサクとした食感で歯切れがよいフライベーカリー食品を得ること)に照らせば、外生地用ミックス粉の澱粉質原料に各種の穀粉類が含まれていてもよいが、本発明の第二の目的(外皮の揚げ色がつき難いフライベーカリー食品を得ること)に照らせば、小麦粉等の穀粉類を用いると揚げ色がつきやすくなるため、前記残余澱粉質原料は澱粉類(ただし、ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを除く)を多く含むことが好ましく、残余澱粉質原料は澱粉類(ただし、ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを除く)を90質量%以上含むことがより好ましく、澱粉類(ただし、ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを除く)からなることが更に好ましい。
また、フライベーカリー食品の外皮をサクサクとした食感にする観点から、外相が骨格形成により多孔質性にならないようにするために、外生地用ミックス粉には出来うる限りグルテン形成能を有する穀粉(例えば、小麦粉、デュラム小麦粉、ライ麦粉、ライ小麦粉)を含まないことが望ましい。
【0012】
(1-1-2)外生地:ハイアミロース澱粉
本発明における外生地用ミックス粉の澱粉質原料はハイアミロース澱粉を含有する。
ハイアミロース澱粉とは、ウルチ澱粉よりアミロース含有量が高い澱粉のことである。ハイアミロース澱粉のアミロース含有量は由来作物やその作物の栽培環境により多様であり、例えば、ハイアミロースコーン澱粉であればそのアミロース含有量は50~90質量%であり、ハイアミロース馬鈴薯澱粉であれば40~90質量%であり、ハイアミロース小麦澱粉であれば35~90質量%であり、ハイアミロース甘藷澱粉であれば45~65質量%である。本発明の外生地用ミックス粉に用いるハイアミロース澱粉は特に制限されるものではないが、フライベーカリー食品の外相に適度な硬さを付与してサクサクとした食感を発現させる観点から、アミロース含有量が高いハイアミロース澱粉であることが好ましい。そのようなハイアミロース澱粉としては、ハイアミロースコーン澱粉、ハイアミロース馬鈴薯澱粉、ハイアミロース小麦澱粉が挙げられ、最も好ましくはハイアミロースコーン澱粉である。また、ハイアミロース澱粉におけるアミロース含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは65質量%以上であり、より更に好ましくは70質量%以上である。このようなハイアミロース澱粉は、α化、エーテル化、エステル化、架橋等の変性処理されたものであってもよい。
【0013】
本発明の外生地用ミックス粉におけるハイアミロース澱粉の含有量は、ミックス粉中の澱粉質原料の全量に対するハイアミロース澱粉由来のアミロース量(複数のハイアミロース澱粉が含まれる場合には各ハイアミロース澱粉由来のアミロースの合計量)が5~26質量%となるような量とする。つまり、ハイアミロース澱粉由来のアミロース量は、澱粉質原料の全量に対して5~26質量%で含まれる。この範囲において、フライベーカリー食品の外相にサクサクとした食感と歯切れの良さを付与することができる。澱粉質原料の全量に対するハイアミロース澱粉由来のアミロース量は、好ましくは6~25質量%であり、より好ましくは8~24質量%であり、さらに好ましくは9~23質量%である。
上記アミロース量とするためには、本発明の外生地用ミックス粉におけるハイアミロース澱粉の含有量は例えば澱粉質原料の全量に対して7~37質量%であり、好ましくは9~33質量%であり、更に好ましくは12~30質量%であり、より好ましくは15~25質量%である。しかしながら、上述したとおりハイアミロース澱粉の種類によりアミロース含有量が変動するので、澱粉質原料に対するハイアミロース澱粉由来のアミロース量が上述した範囲を満たすことが前提である。なお、このようなハイアミロース澱粉がα化処理されたα化ハイアミロース澱粉である場合、当該α化ハイアミロース澱粉の含有量は、ハイアミロース澱粉と、後述するα化澱粉との双方の含有量に算入する。
【0014】
(1-1-3)外生地:α化澱粉
本発明における外生地用ミックス粉の澱粉質原料はα化澱粉を含有する。
α化澱粉とは、澱粉を水と加熱することにより、澱粉分子が規則性を失い、糊状(α状)になった澱粉のことである。このようなα化澱粉は、加水した澱粉を、ドラムドライヤー等で加熱α化した後に公知の方法で乾燥及び粉砕して得るか、エクストルーダによりα化処理した後に公知の方法で乾燥及び粉砕して得るか、或いは、その他の公知の方法で得ることができる。α化澱粉の原料となる澱粉としては、食用の澱粉であれば何れも好適に使用することができ、小麦澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、えんどう豆澱粉、蕨澱粉、葛澱粉及びそれらのハイアミロース澱粉ないしはワキシー澱粉等の生澱粉、並びに生澱粉をエーテル化、アセチル化、架橋等の化学変性させた加工澱粉を例示できる。
【0015】
本発明の外生地用ミックス粉におけるα化澱粉の含有量は、澱粉質原料の全量に対して7~37質量%であり、好ましくは9~33質量%であり、更に好ましくは12~30質量%であり、より好ましくは15~25質量%である。この範囲であれば、フライベーカリー食品の外相にサクサクとした食感と歯切れの良さを付与することができる。なお、このようなα化澱粉がハイアミロース澱粉をα化処理したα化ハイアミロース澱粉である場合、当該α化ハイアミロース澱粉の含有量は、α化澱粉と、前述のハイアミロース澱粉との双方の含有量に算入する。
【0016】
(1-1-4)外生地:油脂
本発明の外生地用ミックス粉は、融点15℃以上の油脂を含有する。そのような油脂としては、ショートニング等の硬化油脂、ラードやヘット、パーム核油、ココナッツオイル、カカオオイル、ヤシ油等の食用固形油脂、マーガリン、バター等の油脂加工食品等を挙げられる。ただし、油脂加工食品を用いる場合は、油脂以外の成分の質量を差し引いた質量を油脂の含有量として算入する。このような油脂は、生地の火通りを向上させ、フライベーカリー食品の外皮の食感にサクサク感を付与するものであり、融点の高い油脂である方が効果を得られやすい。それゆえ、前記油脂の融点は、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは25℃以上であり、更に好ましくは30℃以上であり、より更に好ましくは40℃以上である。
【0017】
本発明の外生地用ミックス粉における融点15℃以上の油脂の含有量は、澱粉質原料100質量部に対して8~33質量部である。好ましくは12~29質量部であり、より好ましくは16~25質量部であり、更に好ましくは19~21質量部である。この範囲内であれば、油ちょうされた外生地由来の表層がサクサクとした食感で歯切れがよくなる。
【0018】
(1-1-5)外生地:糖類
本発明の外生地用ミックス粉は、糖類を含有する。そのような糖類としては特に制限はなく、トレハロース、スクロース(ショ糖とも称され、形態や副成分によりグラニュー糖、砂糖、三温糖、黒糖等と表示されることがある)、ラクトース、マルトース、イソマルトース、キシロース、ブドウ糖、果糖等が挙げられる。
本発明の外生地用ミックス粉における糖類の含有量は、澱粉質原料100質量部に対して10~35質量部である。好ましくは13~30質量部であり、より好ましくは16~25質量部であり、更に好ましくは18~22質量部である。この範囲内であれば、外観が整い、油ちょうされた外生地由来の表層がサクサクとした食感で歯切れがよくなる。糖類の量が少なくなると、外皮の硬さが弱くなり、内部からの蒸気圧により割れが生じやすくなる。糖類の量が多くなると、外皮が硬くなりすぎ、歯切れが悪くなる。
【0019】
(1-1-6)外生地:非還元糖類
本発明の外生地用ミックス粉における糖類は、非還元糖類である。
非還元糖類とは、塩基性溶液中でアルデヒド基又はケトン基を形成しない糖のことである。このような非還元糖は、メイラード反応の基質にならないため、フライベーカリー食品においては揚げ色がつき難くなるという特性を有している(本発明の第二の目的)。このような非還元糖としては、トレハロース、スクロースが挙げられ、好ましくはトレハロースである。外生地用ミックス粉に非還元糖を用いることによりフライベーカリー食品に揚げ色がつき難くなるため、各種の食用色素でカラフルに発色した外観のフライベーカリー食品を得ることができる。
【0020】
(1-1-7)外生地:その他成分
本発明の外生地用ミックス粉は、前記澱粉質原料(ハイアミロース澱粉とα化澱粉とを含む)、油脂及び糖類を含み、さらに目的に応じてその他の成分を含むことができる。ここで一般にプレミックス粉は、その使用用途に応じて、前記成分以外に、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料などの副原料を混合したものをいう。そのような副原料としては、求めるフライベーカリー食品の種別に応じ、本発明の効果を損なわない範囲において、小麦ふすま、米ぬか等の糠類;イーストフード;セルロース、難消化性澱粉等の水不溶性食物繊維;ポリデキストロース、大麦βグルカン、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;デキストリン、サイクロデキストリン等の澱粉分解物及びその誘導体;ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、イヌリン等の増粘多糖類;メチルセルロース類等のセルロース誘導体;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の乳化剤;食塩等の無機塩類;ベーキングパウダー等の膨張剤;保存料;香料;色素;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等、通常フライベーカリー食品の製造に用いられる副原料であれば何れも使用することができる。
【0021】
<1-2>内生地用のミックス粉
本発明の内生地用のミックス粉は上述の外生地用ミックス粉とは異なる組成を有する。好ましくは内生地用のミックス粉には、α化ハイアミロース澱粉あるいはハイアミロース澱粉を含まない。
好ましくは、内生地用ミックス粉は、下記条件(i)を満たす。
(i)α化澱粉と、タンパク質素材と、甘味性糖質とを含む。
【0022】
(1-2-1)内生地:α化澱粉
本発明の内生地用ミックス粉に含まれるα化澱粉の澱粉類の原材料に指定はないが、本発明の食感に適している点から、馬鈴薯澱粉由来、タピオカ澱粉由来、ワキシーコーン澱粉由来のα化澱粉を使用することがより好ましい。α化ハイアミロース澱粉は含まないことが好ましい(α化ハイアミロース澱粉が含まれる場合には、α化ハイアミロース澱粉由来のアミロース量が澱粉質原料の全量に対して5質量%未満であることが好ましく、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい)。
本発明の内生地用ミックスにおけるα澱粉の含有量は、α化澱粉とタンパク質素材と糖類の合計に対して、好ましくは5~19質量%であり、より好ましくは8~17質量%であり、更に好ましくは10~15質量%であり、更により好ましくは12~13質量%である。この範囲内であれば、油ちょうされた内生地由来のネチッとした食感が感じられる。
【0023】
(1-2-2)内生地:タンパク質素材
本発明の内生地用ミックス粉のタンパク質素材は、内生地の骨格を形成し、気泡を抱えた多孔質性の内相を形成して保形する役割を果たすものであり、卵白、小麦グルテン、乳タンパク、大豆タンパク、エンドウ豆タンパク等を挙げることができる。食感および保形性の観点から、液卵白、もしくは乾燥卵白粉末であることがより好ましい。本発明の内生地ミックスにおけるタンパク質素材の含有量は、好ましくはα化澱粉とタンパク質素材と甘味性糖質との合計100質量部に対して10~40質量部であり、より好ましくは15~35質量部であり、更に好ましくは18~30質量部である。
本発明の内生地用ミックスにおけるタンパク質素材と甘味性糖質との質量比については以下に論じる。
【0024】
(1-2-3)内生地:甘味性糖質
本発明における甘味性糖質とは、糖質のうちで甘味性を示すものであれば特に限定されない。そのような甘味性糖質としては、ブドウ糖、果糖等の単糖;ラクトース、スクロース、マルトース、ラクツロース、トレハロース、イソマルツロース、イソマルトース、パラチノース等の二糖;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳糖果糖オリゴ糖等の単糖が複数個グリコシド結合したオリゴ糖;デキストリン(DE値10以下)、マルトデキストリン(DE値20以下);水あめ(DE値:20以上)等の澱粉分解物;ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、還元イソマルツロース、還元水あめ等の単糖、二糖、オリゴ糖、澱粉分化物を還元して得られる糖アルコールなどが挙げられる。甘味性の観点から、より好ましくはグルコース、フルクトース、スクロース、ラクツロース、水あめ、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元水あめからなる群からなる選択される1以上であり、更に好ましくはスクロース、マルトデキストリン、還元水あめからなる群から選択される1以上である。
【0025】
本発明の内生地ミックスにおける甘味性糖質の含有量は、フライベーカリー食品の内相にネチッとした食感をもたらす観点から、α化澱粉とタンパク質素材と甘味性糖質との合計100質量部に対して好ましくは48~79質量部であり、より好ましくは55~75質量部であり、更に好ましくは60~70質量部である。
【0026】
本発明の内生地用ミックスにおけるタンパク質素材と甘味性糖質において、タンパク質素材と甘味性糖質との質量比が、タンパク質素材を1とした時に、好ましくは1:1.1~8であり、より好ましくは1:2~6、更に好ましくは1:2.5~5、更により好ましくは1:3~4である。この範囲内であれば、油ちょうされた内生地由来のネチッとした食感が感じられる。
【0027】
(1-2-4)内生地:その他成分
本発明の内生地用ミックス粉は、前記(成分を含むことが好ましい。ここで一般にプレミックス粉は、その使用用途に応じて、前記成分以外に、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料などの副原料を混合したものをいう。そのような副原料としては、求めるフライベーカリー食品の種別に応じ、本発明の効果を損なわない範囲において、前記した澱粉質原料、小麦ふすま、米ぬか等の糠類;イーストフード;セルロース、難消化性澱粉等の水不溶性食物繊維;ポリデキストロース、大麦βグルカン、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;サイクロデキストリン等のデキストリン以外の澱粉分解物及びその誘導体;ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、イヌリン等の増粘多糖類;メチルセルロース類等のセルロース誘導体;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、オリーブ油、ダイズ油等の固形状あるいは液状の油脂;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の乳化剤;食塩等の無機塩類;ベーキングパウダー等の膨張剤;保存料;香料;色素;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等、通常フライベーカリー食品の製造に用いられる副原料であれば何れも使用することができる。
【0028】
(2)フライベーカリー食品の製造方法
本発明の外生地の調整方法は、前記の通り特定原材料を使用する以外は、一般的なフライベーカリー用生地の調整方法でよい。内生地の調整方法も前記の通り特定原材料を使用する以外は、一般的なフライベーカリー用生地の調整方法でよい。
例えば、粉体原料をミキサーに収容し、水を加えてミキシングすることで生地を得ることができる。ただし、α化ハイアミロース澱粉を含むα化澱粉は吸水性が高いため、穀粉及び/又は澱粉と置換する場合、加水量が同じであれば生地の硬さに差が生じることになる(α化澱粉を含む生地の方が硬めになる)。生地の硬さは、その後の工程の作業性に影響するため、加水量により生地の硬さを調節することが一般的である。なお、加水量の調節は、生地の硬さの違いによる作業性の影響を極力回避するためであり、食感への影響ははほとんどない。
内生地を外生地により被覆する工程は手成型、機械成型、注入等の公知の方法により被覆することができる。機械成型時に使用する機械としては、例えば火星人CN511(レオン自動機株式会社製)、包あん成形機ロボセブンAR-880(株式会社コバート製)などが挙げられる。均一に生地を被覆できる点から、機械成型が好ましい。
油ちょうする工程は、内生地を外生地で包被した複層生地を、例えば、160~220℃に予熱したフライ油に投入し、1~10分間フライすることにより行われる。
【実施例0029】
<製造例1 α化澱粉の製造>
ハイアミロースコーン澱粉(アミロース含量70質量%)またはタピオカ澱粉を用い、下記手順によりα化ハイアミロースコーン澱粉(アミロース含量70質量%)またはα化タピオカ澱粉を製造した。
(1) 150質量部の水に100質量部の澱粉を投入してスラリーを調製した。
(2) このスラリーをドラムドライヤーに供し、ドラムを回転させながら150℃で加熱して薄膜状の乾燥α化澱粉を得た。
(3) この薄膜状乾燥α化澱粉をピンミルに供し、各粉末状の乾燥α化澱粉を得た。
【0030】
<製造例2 フライベーカリー食品の製造>
(1) 外生地の調製:配合表1に記載のミックス粉用資材をミキサーボールに投入して混合してミックス粉を調製し、ここにクチナシ赤色素と冷水を投入してビーターを使用して低速1分間、中速2分間ミキシングして外生地を得た。捏ね上げ温度は18℃であった。
(2) 内生地の調製:配合表2に記載のミックス粉用資材をミキサーボールに投入して混合してミックスを調製し、ここに冷水並びにクチナシ赤色素を入れてビーターを使用して低速1分、中速2分ミキシングをして生地を得た。捏ね上げ温度は18℃であった。
(3) 外生地及び内生地を包餡機CN500(レオン自動機社製)の外生地用ないしは内生地用ホッパーに投入し、10分間のフロアタイムの後、外生地で内生地を包被し、厚さ10mm直径5.5mmになるように展圧し、急速冷凍(-30℃で15分間)して冷凍生地を得た。運転条件はCN500設定表に記載の通りである。
(4) 冷凍状態のまま冷凍生地をフライオイルに投入し、190℃で潜行4分30秒フライした。(※生地の冷凍は任意)
【0031】
配合表1 外生地
【0032】
配合表2 内生地
【0033】
CN500設定表
【0034】
<評価例 官能評価>
製造したフライベーカリー食品を10名の熟練パネラーにより下記評価表に従って官能評価を行い、平均点を求めた。
【0035】
評価基準表1

【0036】
<試験例1 外生地:穀粉類の検討>
外生地用ミックス粉の澱粉として表1-1~1-4に記載の澱粉を用いた以外は製造例2に従ってフライベーカリー食品を製造し、評価例1に従って評価した。結果を表1-1~1-4に記載する。
外生地にハイアミロースコーン澱粉が少ない試験番号1、6では、外相のサクサク感がさほど感じられず、歯切れが悪くなり、不適であった。ハイアミロースコーン澱粉が多い試験番号5、10、19では、外相の、特に外皮が硬くひきのある食感になり、不適であった。
α化澱粉が少ない試験番号1,11では、外生地のつながりが脆弱になるためか、外相に割れが生じて内生地が露出し、外相の食感もやや硬めになり、不適であった。α化澱粉が多い試験番号5、14、18では、もち感が出て歯切れが悪くなり不適であった。実施例2~4、7~9では、何れも外層の食感及び外観共に良好であり、ハイアミロースコーン澱粉を20質量部含み、α化澱粉を20質量部含む実施例3、8において特に優れていた。
【0037】
表1-1
【0038】
表1-2
【0039】
表1-3
【0040】
表1-4
【0041】
<試験例2 外生地:油脂の影響>
外生地用ミックス粉として表2に記載の油脂を用いた以外は製造例2に従ってフライベーカリー食品を製造し、評価例1に従って評価した。加水量は生地性に合わせて調節した。
硬化パーム油が5質量部の試験番号20では外相の歯切れがやや悪くなり、35質量部の試験番号23では外相がやや硬くなり、不適であった。硬化パーム油が10~30の試験番号3,21~22では何れも外層の食感が良好であり、特に20質量部の試験番号3が優れていた。20質量部のパーム油及びパーム核油を用いた試験番号24,25では、外相の食感が硬化パーム油ほどではないが十分に良好であった。融点が15℃未満の菜種油及び大豆油を用いた試験番号26,27では、歯切れがやや悪く、不適であった。
【0042】
表2

各油脂の融点
硬化パーム油:58℃
パーム油:36℃
パーム核油:28℃
菜種油:-8℃
大豆油:-6℃
【0043】
<試験例3 外生地:糖類の検討>
外生地用ミックス粉として表3に記載の甘味性糖質を用いた以外は製造例2に従ってフライベーカリー食品を製造し、評価例1に従って評価した。加水量は生地性に合わせて調節した。
試験番号28では、甘味性糖質の量が少ないため、歯切れがやや悪く、内部からの蒸気圧に耐えられなくなって割れが生じ、不適であった。甘味性糖質の量が多い試験番号31では、外相がやや硬くなり、不適であった。トレハロースの量が10~35質量部の試験番号3,29~30であれば良好な食感及び外観のフライベーカリー食品が得られ、特に試験番号3で優れていた。
非還元糖であるグラニュー糖(ショ糖)を用いた試験番号32は、同量のトレハロース(非還元糖)を用いた試験番号3ほどではないが揚げ色が少なく外相と内相の食感が十分であり、非常に良好なものであった。還元糖であるマルトースを用いた試験番号33では、還元糖に由来する揚げ色があったものの、優れた外相と内相の食感を有するフライベーカリー製品であり、多様な色彩のあるフラーベーカリー食品の一色として用いることができることから、不適とまでは言えなかった。
【0044】
表3
【0045】
<試験4 内生地:α化澱粉の検討>
内生地用ミックス粉として表4記載のα化澱粉、乾燥卵白、グラニュー糖を用いた以外は製造例2に従ってフライベーカリー食品を製造し、評価例1に従って評価した。なお、乾燥卵白粉とグラニュー糖との比が1:3になるように調節した。
α化澱粉が4質量部の試験番号34では、内相が硬くなるためにネチッとした食感があまり感じられず、また、内相の内部に空洞ができてしまい、不適であった。α化澱粉が20質量部の試験番号37では、ソフトな食感となり、ネチッとした食感がやや弱く、不適であった。α化澱粉が6~18質量部の試験番号3,35~36では何れも内相にネチッとした食感があり、特に試験番号3において優れていた。
【0046】
表4
【0047】
<試験5 内生地:タンパク質素材と甘味性糖質の検討>
内生地用ミックス粉において表5に記載の乾燥卵白と甘味性糖質を用いた以外は製造例2に従ってフライベーカリー食品を製造し、評価例1に従って評価した。
乾燥卵白粉とグラニュー糖との質量比が1:10の試験番号38では、内相がソフトな食感でネチッとした食感がやや劣り、不適であった。乾燥卵白粉の割合が高くなるにしたがって内相のネチッとした食感が良好になり、試験番号3において最も良好であった。更にその割合が高くなると内相がドライで硬さを感じられる傾向になり、試験番号41ではネチッとした食感よりもドライで硬い食感が強くなり、不適であった。
グラニュー糖に代えて同量の還元粉末水あめとデキストリンを用いた試験番号42、43では、グラニュー糖の試験番号3ほどではないがネチッとした食感があり、十分に良好なものであった。
【0048】
表5