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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100503
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】土壌解凍方法及び土壌解凍装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
E02D3/115
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004544
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 学
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 史
(72)【発明者】
【氏名】相馬 啓
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】福岡 美則
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA14
(57)【要約】
【課題】土壌の解凍にあたって、環境負荷を抑制しつつ解凍に要する時間を短縮する。
【解決手段】一実施形態に係る土壌解凍方法は、土壌凍結管の熱媒体流路に空気を供給して予備加熱を行うステップと、予備加熱を行うステップを実行した後、熱媒体流路に温水を供給して加熱を行うステップと、を備える。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌凍結管の熱媒体流路に空気を供給して予備加熱を行うステップと、
前記予備加熱を行うステップを実行した後、前記熱媒体流路に温水を供給して加熱を行うステップと、
を備える
土壌解凍方法。
【請求項2】
前記予備加熱を行うステップから前記加熱を行うステップへの切り替えの可否を判定するステップ、
を備える
請求項1に記載の土壌解凍方法。
【請求項3】
前記判定するステップでは、前記熱媒体流路を通過した後の前記空気の温度に基づいて前記切り替えの可否を判断する、
請求項2に記載の土壌解凍方法。
【請求項4】
前記判定するステップでは、前記空気の供給時間に基づいて前記切り替えの可否を判断する、
請求項2に記載の土壌解凍方法。
【請求項5】
前記加熱を行うステップでは、外気を熱源とするヒートポンプ装置によって加熱された温水を前記熱媒体流路に供給して加熱を行う、
請求項1又は2に記載の土壌解凍方法。
【請求項6】
前記予備加熱を行うステップでは、前記温水で加熱された前記空気を前記熱媒体流路に供給して前記予備加熱を行う、
請求項5に記載の土壌解凍方法。
【請求項7】
前記ヒートポンプ装置は、地下に設置されている、
請求項5に記載の土壌解凍方法。
【請求項8】
土壌凍結管の熱媒体流路に空気を供給するための空気供給ラインと、
前記熱媒体流路に温水を供給するための温水供給ラインと、
前記熱媒体流路に接続される配管を前記空気供給ラインから前記温水供給ラインに切り替えるための流路切替装置と、
を備える
土壌解凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、土壌解凍方法及び土壌解凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば土木工事を行うにあたって、土壌を凍結させて工事を工法が知られている。このような工法では、例えば土壌を凍結させるために土壌に埋設された複数の凍結管に冷媒を供給することで、土壌を凍結させるようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-363987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凍結させた土壌を解凍すると土壌の収縮により地盤が沈下する場合がある。このような地盤沈下のおそれがある場合、地盤に充填材等を注入することで地盤沈下を防止できる。
地盤沈下を防止するための充填材の注入に際し、地盤を解凍する必要があるが、地盤の解凍には時間がかかることから、従来は温媒体を循環させることで解凍時間の短縮化を図っている。ここで、環境に与える影響を考慮すると、温媒体に自然冷媒を用いることが望ましい。
そこで、凍結管に例えば温水を供給することで地盤を解凍することが考えられる。しかし、凍結管の熱容量などを考慮せずに温水を供給すると、凍結管の冷媒流路内で温水が冷やされて凍結し、冷媒流路を閉塞させるおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、土壌の解凍にあたって、環境負荷を抑制しつつ解凍に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る土壌解凍方法は、
土壌凍結管の熱媒体流路に空気を供給して予備加熱を行うステップと、
前記予備加熱を行うステップを実行した後、前記熱媒体流路に温水を供給して加熱を行うステップと、
を備える。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る土壌解凍装置は、
土壌凍結管に空気を供給するための空気供給ラインと、
前記土壌凍結管に温水を供給するための温水供給ラインと、
前記土壌凍結管に接続される配管を前記空気供給ラインから前記温水供給ラインに切り替えるための流路切替装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、土壌の解凍にあたって、環境負荷を抑制しつつ解凍に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置の全体構成を示す図である。
図1B】幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置の全体構成を示す図である。
図2A】凍結管の断面の一例を示す図である。
図2B】凍結管の断面の他の一例を示す図である。
図3A】熱媒体流路へ空気圧縮機からの空気を供給する場合について説明するための図である。
図3B】熱媒体流路へ貯湯タンクからの温水を供給する場合について説明するための図である。
図4】幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置を用いた土壌の解凍の手順について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1Aは、幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置の全体構成を示す図である。
図1Bは、幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置の全体構成を示す図である。幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1の説明に先立ち、幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置5について説明する。
幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置5は、土壌3を凍結するための装置であり、図1Aに示すように、一次冷媒循環系統501を有する冷凍機503と、一次冷媒循環系統501と熱交換器505を介して接続される二次冷媒循環系統51とを備えている。
【0012】
幾つかの実施形態に係る二次冷媒循環系統51は、二次冷媒循環系統51の冷媒循環路に、熱交換器505からの冷媒を受け入れることができるレシーバタンク507と、レシーバタンク504内の冷媒を二次冷媒循環系統51で循環させるためのポンプ509と、土壌3を凍結させるために土壌3に埋設された複数の土壌凍結管53(以下、単に凍結管53とも称する)と、複数の凍結管53に液相の冷媒を分配するための送りヘッダ54と、複数の凍結管53から気相の冷媒を集めるための戻りヘッダ55とを備えている。
幾つかの実施形態に係る二次冷媒循環系統51では、冷媒(二次冷媒)は、例えばCO冷媒である。
幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置5では、複数の凍結管53に冷媒を供給することで、凍結管53が埋設されている土壌3を凍結させることができる。
【0013】
なお、幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置5は、レシーバタンク504と送りヘッダ54とを接続する冷媒供給配管56を介して、レシーバタンク504内の冷媒が冷媒供給配管56に設けられたポンプ509によって送りヘッダ54に供給されるように構成されている。
幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置5は、戻りヘッダ55とレシーバタンク504とを接続する冷媒戻り配管57を介して、戻りヘッダ55内の気相の冷媒がレシーバタンク504に戻るように構成されている。
幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置5では、冷媒供給配管56の途中には結合及び分離可能なフランジ56a、56bが設けられ、冷媒戻り配管57の途中には結合及び分離可能なフランジ57a、57bが設けられている。
【0014】
図2Aは、凍結管53の断面の一例を示す図である。
図2Bは、凍結管53の断面の他の一例を示す図である。
幾つかの実施形態に係る土壌凍結装置5では、凍結管53は、外筒531と、外筒531内に設けられた熱媒体流路532を形成する冷媒用配管533とを備えている。図2A及び図2Bに示す凍結管53では、外筒531と冷媒用配管533との間の空間534は例えば水で満たされている。
図2A及び図2Bに示す凍結管53では、送りヘッダ54を介して供給された二次冷媒は、熱媒体流路532を経由して戻りヘッダ55に戻る際に、冷媒用配管533の外部の水から熱を奪う。これにより、冷媒用配管533の外部の水は凍結し、外筒531を介して凍結管53の周囲の土壌3から熱を奪ことで凍結管53の周囲の土壌3を凍結させる。
【0015】
なお、冷媒用配管533は、例えば図2Aに示すように、複数の熱媒体流路532が内部に形成された扁平形状を有する部材533Aであってもよい。また、冷媒用配管533は、例えば図2Bに示すように、熱媒体流路532を形成する単管533Bであってもよい。
【0016】
(土壌解凍装置1)
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、土壌凍結装置5によって凍結された土壌を解凍するための装置である。幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、後で詳述するように、凍結管53の熱媒体流路532に空気を供給するための空気供給ライン11と、熱媒体流路532に温水を供給するための温水供給ライン21と、熱媒体流路532に接続される配管を空気供給ライン11から温水供給ライン21に切り替えるための流路切替装置33と、を備える。
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、熱媒体流路532に供給する温水を生成するためのヒートポンプ装置41と、ヒートポンプ装置41で生成された温水を貯留するための貯湯タンク43とを備えている。
ヒートポンプ装置41は、外気を熱源として水を加熱することで温水を生成可能な装置である。ヒートポンプ装置41は、貯湯タンク43からの温水、又は不図示の給水を加熱して生成した温水を貯湯タンク43に供給するように構成されている。
【0017】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、熱媒体流路532に供給する空気を生成するための空気圧縮機61と、空気圧縮機61で圧縮された圧縮空気を除湿するための除湿器63とを備えている。
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、除湿器63で除湿された後の圧縮空気を加熱するための熱交換器65を備えている。
【0018】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1では、温水供給ライン21には、貯湯タンク43からの温水を熱媒体流路532に供給するためのポンプ23と、ポンプ23の下流で温水供給ライン21の流路を開閉する温水供給弁25とを有する。温水供給ライン21の下流端は、土壌凍結装置5の送りヘッダ54に接続される冷媒供給配管56のフランジ56bと接続される接続部21aである。温水供給弁25は、熱媒体流路532に接続される配管を後述するように空気供給ライン11から温水供給ライン21に切り替えるための流路切替装置33である。
【0019】
温水供給ライン21には、ポンプ23と温水供給弁25との間の温水配管211から分岐していて、熱交換器65に温水を供給するための温水分岐配管213が接続されている。温水分岐配管213の下流端は熱交換器65に接続されている。温水分岐配管213には、熱交換器供給弁215が設けられている。
温水分岐配管213から熱交換器65に供給された温水は、熱交換器戻り配管73を介して、後述する温水戻り配管71に流入するようになっている。
【0020】
空気供給ライン11は、除湿器63と熱交換器65とを接続する圧縮空気配管111と、熱交換器65と温水供給ライン21とを接続する加熱空気配管113とを含む。
加熱空気配管113の下流端は、温水供給弁25と接続部21aとの間の温水配管217に接続されている。なお、後述するように、加熱空気配管113の下流端との接続位置から接続部21aまでの温水配管217には、貯湯タンク43からの温水と、空気圧縮機61からの空気とが流通可能である。そこで、加熱空気配管113の下流端との接続位置から接続部21aまでの温水配管217のことを温媒体配管218とも称する。温媒体配管218は、温水供給ライン21の配管であるとともに空気供給ライン11の配管でもある。温媒体配管218は、冷媒供給配管56及び送りヘッダ54を介して熱媒体流路532に接続される配管である。
なお、加熱空気配管113には、温水配管217からの温水の流入を防止するための不図示の逆止弁又は開閉弁が設けられている。
【0021】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、凍結管53の熱媒体流路532に供給された後の空気を土壌凍結装置5の外部に排出するためのパージ配管75を備える。パージ配管75の上流端は、戻りヘッダ55の不図示のノズルに接続され、下流端は、土壌凍結装置5の外部に開放されている。パージ配管75には、パージ弁77が設けられている。
【0022】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、凍結管53の熱媒体流路532に供給された後の温水(水)を貯湯タンク43に戻すための温水戻り配管71を備える。温水戻り配管71の上流端は、土壌凍結装置5の戻りヘッダ55に接続される冷媒戻り配管57のフランジ57bと接続される接続部71aである。温水戻り配管71の下流端は、貯湯タンク43に接続されている。
【0023】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、土壌解凍装置1の各部を制御するための制御装置90を備えている。
幾つかの実施形態に係る制御装置90は、各種演算処理を実行する不図示のプロセッサと、プロセッサによって処理される各種データを非一時的または一時的に記憶する不図示のメモリとを備える。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、これら以外の各種演算装置、又はこれらの組み合わせなどによって実現される。メモリは、ROM、RAM、フラッシュメモリ、またはこれらの組み合わせなどによって実現される。
【0024】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、貯湯タンク43に貯留された温水の温度を検出するための貯湯温度センサ91と、パージ配管75を流通する空気の温度を検出するための空気温度センサ93と、温媒体配管218を流通する温媒体である温水又は空気の温度を検出するための供給温度センサ92と、温水戻り配管71を流通する温水(水)の温度を検出するための戻り湯温度センサ95とを備えている。
【0025】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1は、例えば凍結管53以外の各構成要素が地下空間3a内に配置されていてもよい。
【0026】
凍結させた土壌3を解凍すると土壌3の収縮により地盤が沈下する場合がある。このような地盤沈下のおそれがある場合、地盤に充填材等を注入することで地盤沈下を防止できる。
地盤沈下を防止するための充填材の注入に際し、土壌3を解凍する必要があるが、地盤の解凍には時間がかかることから、従来は温媒体を循環させることで解凍時間の短縮化を図っている。ここで、環境に与える影響を考慮すると、温媒体に自然冷媒を用いることが望ましい。
そこで、凍結管53に例えば温水を供給することで土壌3を解凍することが考えられる。しかし、凍結管53の熱容量などを考慮せずに温水を供給すると、凍結管53の熱媒体流路532内で温水が冷やされて凍結し、熱媒体流路532を閉塞させるおそれがある。
【0027】
そこで、幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1では、土壌3の解凍に際し、熱媒体流路532への温水の供給に先立って、熱媒体流路532へ空気を供給し、その後に熱媒体流路532へ温水を供給しても熱媒体流路532内で温水が凍結しない状態まで熱媒体流路532を空気で加熱するようにしている。そして、熱媒体流路532へ温水を供給しても熱媒体流路532内で温水が凍結しない状態まで熱媒体流路532を空気で加熱した後、熱媒体流路532へ温水を供給することで、土壌3を解凍するようにしている。以下、幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1を用いた土壌3の解凍の手順について説明する。
【0028】
図3Aは、熱媒体流路532へ空気圧縮機61からの空気を供給する場合について説明するための図である。
図3Bは、熱媒体流路532へ貯湯タンク43からの温水を供給する場合について説明するための図である。
図4は、幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1を用いた土壌3の解凍の手順について説明するためのフローチャートである。以下の説明では、幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1の各部の制御を制御装置90が実施するものとして説明するが、以下で説明する土壌解凍装置1の各部の制御の一部又は全部を作業員が実施してもよい。
【0029】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍方法は、凍結管53の熱媒体流路532に空気を供給して予備加熱を行うステップS20と、予備加熱を行うステップS20を実行した後、熱媒体流路532に温水を供給して加熱を行うステップS40と、を備える。幾つかの実施形態に係る土壌解凍方法は、予備加熱を行うステップS20から加熱を行うステップS40への切り替えの可否を判定するステップS30と、土壌3の解凍が完了したか否かを判定するステップS50と、土壌3の解凍を終了するステップS60とを備える。
また、幾つかの実施形態に係る土壌解凍方法は、土壌3の解凍に先立って温水を準備するステップS10を備える。
【0030】
幾つかの実施形態に係る土壌解凍方法では、まず、幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1を土壌凍結装置5に接続する作業が行われる。この作業では、作業員は、図1Aに示した、冷媒供給配管56の途中に設けられたフランジ56aとフランジ56bとを分離し、冷媒戻り配管57の途中に設けられたフランジ57aとフランジ57bとを分離する。これにより、二次冷媒循環系統51から、冷凍機503、レシーバタンク507、及びポンプ509が分離される。そして作業員は、図1Bに示すように、土壌解凍装置1の温水供給ライン21の接続部21aを土壌凍結装置5の冷媒供給配管56のフランジ56bと接続し、土壌解凍装置1の温水戻り配管71の接続部71aを土壌凍結装置5の冷媒戻り配管57のフランジ57bと接続する。
また作業員は、戻りヘッダ55の不図示のノズルにパージ弁77、及び空気温度センサ93が設けられたパージ配管75を接続する。
【0031】
次いで、作業員が土壌3の解凍を開始するための不図示の操作ボタンを操作すると制御装置90のプロセッサは図4のフローチャートに示す処理を実行するためのプログラムをメモリから読み込んで実行する。
【0032】
(ステップS10)
ステップS10において制御装置90は、ヒートポンプ装置41の運転を開始する制御信号をヒートポンプ装置41に送信する。これにより、ヒートポンプ装置41は、貯湯タンク43内の水を加熱して予め設定された貯湯設定温度まで加熱し、その後、貯湯温度センサ91で検出される貯湯タンク43内の温水の温度が貯湯設定温度を保つように運転される。
ステップS10において、貯湯温度センサ91で検出される貯湯タンク43内の温水の温度が貯湯設定温度に到達したと判断すると、ステップS20へ進む。
【0033】
(ステップS20)
ステップS20において制御装置90は、凍結管53の熱媒体流路532に空気を供給して予備加熱を行うように各部を制御する。
すなわち、制御装置90は、ポンプ23の運転を開始し、温水供給弁25を閉じ、熱交換器供給弁215を開くように制御信号を出力する。これにより、ポンプ23が運転を開始し、温水供給弁25が閉じられ、熱交換器供給弁215が開かれる。その結果、図3Aに示すように、貯湯タンク43内の温水がポンプ23で圧送されて温水分岐配管213の流れ込み、熱交換器供給弁215を介して熱交換器65に流入する。熱交換器65に流入した温水は、後述するように熱交換器65で空気圧縮機61からの圧縮空気と熱交換されて温度が低下する。圧縮空気と熱交換された後の温水は、熱交換器戻り配管73、及び温水戻り配管71を介して貯湯タンク43に戻る。
【0034】
またステップS20では、制御装置90は、パージ弁77を開くようにパージ弁77に制御信号を出力する。これによりパージ弁77が開かれる。
さらに制御装置90は、空気圧縮機61及び除湿器63の運転を開始するよう空気圧縮機61及び除湿器63に制御信号を出力する。これにより、空気圧縮機61及び除湿器63の運転が開始される。その結果、空気圧縮機61で圧縮されて除湿器63で除湿された圧縮空気は、熱交換器65において温水と熱交換して加熱される。熱交換器65で加熱された加熱空気は、加熱空気配管113、温媒体配管218、土壌凍結装置5の冷媒供給配管56、及び送りヘッダ54を介して各凍結管53の熱媒体流路532に供給される。
各凍結管53の熱媒体流路532に供給された空気は、熱媒体流路532の周囲に熱を放出して外筒531と冷媒用配管533との間の空間534内で凍結している水を加熱する。その後、各凍結管53の熱媒体流路532に供給された空気は、戻りヘッダ55に送られ、パージ配管75から土壌凍結装置5の外部に排出される。
【0035】
(ステップS30)
ステップS30において制御装置90は、予備加熱を行うステップS20から加熱を行うステップS40への切り替えの可否を判定する。具体的には制御装置90は、供給温度センサ92で検出した加熱空気の温度T1と、空気温度センサ93で検出したパージ配管75を流通する空気の温度T2との温度差(T1-T2)が予め設定された規定温度差△Ta以下であるか否かを判断する。
なお、規定温度差△Taは、温度差(T1-T2)が規定温度差△Ta以下であれば熱媒体流路532へ温水を供給しても熱媒体流路532内で温水が凍結しないとされる温度差であり、例えば熱媒体流路532に供給する加熱空気の温度や流量等、加熱空気によって加える熱量に関する情報と、凍結管の熱容量に関する情報等に基づいて推定された温度差である。なお、規定温度差△Taは、熱媒体流路532へ温水を供給しても熱媒体流路532内で温水が凍結しないことを予め実験等で確認することで得られた温度差であってもよい。
ステップS30において制御装置90は、温度差(T1-T2)が予め設定された規定温度差△Ta以下となるまで待機し、温度差(T1-T2)が予め設定された規定温度差△Ta以下となったと判断するとステップS40へ進む。
【0036】
なお、ステップS30では、空気温度センサ93に代えて、熱媒体流路532の出口における空気又は温水(水)の温度を検出するための温度センサ97で検出した空気の温度に基づいて、予備加熱を行うステップS20から加熱を行うステップS40への切り替えの可否を判定するようにしてもよい。すなわち制御装置90は、供給温度センサ92で検出した加熱空気の温度T1と、温度センサ97で検出した熱媒体流路532を流通した後の空気の温度T2’との温度差(T1-T2’)が予め設定された規定温度差△Ta’以下であるか否かを判断するようにしてもよい。
なお、規定温度差△Ta’は、温度差(T1-T2’)が規定温度差△Ta’以下であれば熱媒体流路532へ温水を供給しても熱媒体流路532内で温水が凍結しないとされる温度差であり、例えば上述した規定温度差△Taと同様にして得られた温度差であってもよい。
【0037】
(ステップS40)
ステップS40において制御装置90は、熱媒体流路532に温水を供給して加熱を行うように各部を制御する。
すなわち、制御装置90は、空気圧縮機61及び除湿器63の運転を停止するよう空気圧縮機61及び除湿器63に制御信号を出力する。これにより、空気圧縮機61及び除湿器63の運転が停止される。その結果、熱媒体流路532への加熱空気の供給が停止される。
また、制御装置90は、パージ弁77を閉じるようにパージ弁77に制御信号を出力する。これによりパージ弁77が閉じられる。
次いで制御装置90は、温水供給弁25を開き、熱交換器供給弁215を閉じるように制御信号を出力する。これにより、温水供給弁25が開かれ、熱交換器供給弁215が閉じられる。その結果、図3Bに示すように、貯湯タンク43内の温水がポンプ23で圧送されて温水配管211、温水供給弁25、温水配管217(温媒体配管218)、土壌凍結装置5の冷媒供給配管56、及び送りヘッダ54を介して各凍結管53の熱媒体流路532に供給される。
このように、温水供給弁25は、熱媒体流路532に接続される配管を空気供給ライン11から温水供給ライン21に切り替えるための流路切替装置33である。
【0038】
各凍結管53の熱媒体流路532に供給された温水は、熱媒体流路532の周囲に熱を放出して外筒531と冷媒用配管533との間の空間534内の水を加熱する。その後、各凍結管53の熱媒体流路532に供給された温水は、戻りヘッダ55に送られ、冷媒戻り配管57、及び土壌解凍装置1の温水戻り配管71を介して貯湯タンク43に戻る。
【0039】
(ステップS50)
ステップS50において制御装置90は、土壌3の解凍が完了したか否かを判定する。具体的には制御装置90は、戻り湯温度センサ95で検出した温水戻り配管71を流通する温水(水)の温度(戻り湯温度)T3が予め設定された規定温度Th以上であるか否かを判断する。
なお、規定温度Thは、戻り湯温度T3が規定温度Th以上であれば土壌3の解凍が完了していると判断できる温度であり、予め実験等で確認された温度である。
【0040】
ステップS50において制御装置90は、戻り湯温度T3が予め設定された規定温度Th以上となるまで待機し、戻り湯温度T3が予め設定された規定温度Th以上となったと判断するとステップS60へ進む。
【0041】
(ステップS60)
ステップS60において制御装置90は、土壌3の解凍を終了するように各部を制御する。
すなわち、制御装置90は、ポンプ23の運転を停止し、温水供給弁25を閉じるように制御信号を出力する。これにより、ポンプ23が運転を停止し、温水供給弁25が閉じられる。その結果、熱媒体流路532への温水の供給が停止される。
また、制御装置90は、ヒートポンプ装置41の運転を停止する制御信号をヒートポンプ装置41に送信する。これにより、ヒートポンプ装置41は運転を停止する。
【0042】
(幾つかの実施形態に係る土壌解凍方法及び土壌解凍装置1についてのまとめ)
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る土壌解凍方法は、土壌凍結管53の熱媒体流路532に空気を供給して予備加熱を行うステップS20と、予備加熱を行うステップS20を実行した後、熱媒体流路52に温水を供給して加熱を行うステップS40と、を備える。
【0043】
上記(1)の方法によれば、空気で予備加熱を行うことで、その後に熱媒体流路532に温水を供給しても熱媒体流路532内で水が凍結する可能性を低減できる。これにより、環境への負荷を抑制しつつ土壌3の解凍に要する時間を短縮できる。
【0044】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、予備加熱を行うステップS20から加熱を行うステップS40への切り替えの可否を判定するステップS30を備えるとよい。
【0045】
上記(2)の方法によれば、加熱を行うステップS40へ切り替えてもよいと判断された後に加熱を行うステップS40を実施することで、熱媒体流路532内で水が凍結する可能性を一層低減できる。
【0046】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の方法において、判定するステップS30では、熱媒体流路532を通過した後の空気の温度、すなわち空気温度センサ93で検出したパージ配管75を流通する空気の温度T2、又は、温度センサ97で検出した熱媒体流路532を流通した後の空気の温度T2’に基づいて切り替えの可否を判断するとよい。
【0047】
上記(3)の方法によれば、加熱を行うステップS40への切り替えの判断の精度が向上するので、熱媒体流路532内で水が凍結する可能性を一層低減できる。
【0048】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)の方法において、判定するステップS30では、空気の供給時間tに基づいて切り替えの可否を判断するようにしてもよい。すなわち、判定するステップS30において、空気温度センサ93で検出したパージ配管75を流通する空気の温度T2、又は、温度センサ97で検出した熱媒体流路532を流通した後の空気の温度T2’に基づく切り替えの可否の判断に代えて、熱媒体流路532へ空気を供給する供給時間tに基づいて切り替えの可否を判断するようにしてもよい。
【0049】
温水の供給を開始しても熱媒体流路532内で水が凍結するおそれがなくなるまでの空気の供給時間は、例えば供給する空気の温度や流量等、加える熱量に関する情報と、凍結管の熱容量に関する情報等に基づいて推定できる。よって、上記(4)の方法によれば、予備加熱を行うステップS20において例えば上記のようにして推定した空気の供給時間tが経過するまで空気を供給した後に加熱を行うステップS40に切り替えることで、熱媒体流路532内で水が凍結する可能性を低減できる。
【0050】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの方法において、加熱を行うステップS40では、外気を熱源とするヒートポンプ装置41によって加熱された温水を熱媒体流路532に供給して加熱を行うとよい。
【0051】
上記(5)の方法によれば、土壌3の解凍に要するエネルギーコストを低減できる。
【0052】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の方法において、予備加熱を行うステップS20では、温水で加熱された空気を熱媒体流路532に供給して予備加熱を行うとよい。
【0053】
上記(6)の方法によれば、予備加熱に用いる空気を低いエネルギーコストで加熱できるので、土壌3の解凍に要するエネルギーコストを抑制しつつ、土壌3の解凍に要する時間を短縮できる。
【0054】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)の方法において、ヒートポンプ装置41は、地下に設置されているとよい。
【0055】
上記(7)の方法によれば、ヒートポンプ装置41を地下に設置することで、地熱の影響を受けた外気を熱源として温水が得られる。これにより、例えば冬季のように、地上の外気に気温よりも地下の外気の気温の方が高い場合には、低いエネルギーコストで温水を得られる。
【0056】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係る土壌解凍装置1は、土壌凍結管53の熱媒体流路532に空気を供給するための空気供給ライン11と、熱媒体流路532に温水を供給するための温水供給ライン21と、熱媒体流路532に接続される配管を空気供給ライン11から温水供給ライン21に切り替えるための流路切替装置33と、を備える。
【0057】
上記(8)の構成によれば、熱媒体流路に温水を供給するのに先立って熱媒体流路に空気を供給することで、供給した空気で予備加熱を行えば、その後、熱媒体流路に温水を供給しても熱媒体流路内で水が凍結する可能性を低減できる。これにより、環境への負荷を抑制しつつ土壌の解凍に要する時間を短縮できる。
【0058】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1において、ヒートポンプ装置41に代えて貯湯タンク43内の温水を加熱するためのヒータを設け、このヒータで貯湯タンク43内の温水を加熱するようにしてもよい。
【0059】
上述した幾つかの実施形態に係る土壌解凍装置1では、除湿器63で除湿された後の圧縮空気を熱交換器65で加熱するようにしているが、除湿器63で除湿された後の圧縮空気の温度が比較的高ければ、熱交換器65による加熱は省略してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 土壌解凍装置
3 土壌
5 土壌凍結装置
11 空気供給ライン
21 温水供給ライン
23 ポンプ
25 温水供給弁
33 流路切替装置
41 ヒートポンプ装置
43 貯湯タンク
53 土壌凍結管(凍結管)
54 送りヘッダ
55 戻りヘッダ
61 空気圧縮機
63 除湿器
65 熱交換器
77 パージ弁
215 熱交換器供給弁
532 熱媒体流路
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4