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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100511
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】検査システム及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240719BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20240719BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240719BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/28 H
G01R31/26 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004559
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
(72)【発明者】
【氏名】阿川 裕晃
【テーマコード(参考)】
2G003
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AB16
2G003AC03
2G003AD06
2G003AH08
2G132AA00
2G132AB14
2G132AD18
2G132AF20
2G132AL21
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD23
4M106DH14
4M106DH44
4M106DH45
4M106DH46
(57)【要約】
【課題】好適に温度制御を行いながら基板を検査する検査システム及び温度制御方法を提供する。
【解決手段】温度調節機構によって温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムであって、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、制御部と、を備え、前記検出部は、前記基板に設けられた接合部の接合部温度を推定する温度推定部を有し、前記制御部は、前記基板に前記検査電力を供給する工程と、前記検査電力の供給を停止した後、前記接合部温度に関する情報を取得する工程と、前記接合部温度に関する情報に基づいて、前記基板保持部のオフセット温度を決定する工程と、前記オフセット温度でオフセットされた制御温度に基づいて、前記基板保持部の温度を調整する工程と、前記基板保持部の温度が調整された後、前記基板に前記検査電力を供給して、前記基板を検査する工程と、を含む、検査システム。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節機構によって温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムであって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、
制御部と、を備え、
前記検出部は、
前記基板に設けられた接合部の接合部温度を推定する温度推定部を有し、
前記制御部は、
前記基板に前記検査電力を供給する工程と、
前記検査電力の供給を停止した後、前記接合部温度に関する情報を取得する工程と、
前記接合部温度に関する情報に基づいて、前記基板保持部のオフセット温度を決定する工程と、
前記オフセット温度でオフセットされた制御温度に基づいて、前記基板保持部の温度を調整する工程と、
前記基板保持部の温度が調整された後、前記基板に前記検査電力を供給して、前記基板を検査する工程と、を含む、
検査システム。
【請求項2】
前記接合部温度に関する情報を取得する工程は、
前記接合部温度と前記基板の検査温度との差である前記接合部温度のオフセット温度の推移を取得する、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記基板保持部のオフセット温度を決定する工程は、
前記接合部温度のオフセット温度の推移に基づいて、前記検査電力の供給を停止した時の前記接合部温度のオフセット温度を推定し、
推定された前記検査電力の供給を停止した時の前記接合部温度のオフセット温度に基づいて、前記基板保持部のオフセット温度を決定する、
請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記温度調節機構は、
前記基板保持部の温度を検出し、前記基板保持部の温度を調整する、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項5】
前記検出部は、
複数の電気的特性を検出する検出手段を有する、
請求項1の検査システム。
【請求項6】
前記基板は、
前記電極部と、前記電極部と接続された電子デバイスと、を有し、
前記検出部は、
前記検査電力が供給された前記電子デバイスの電気的特性を検出する、
請求項1の検査システム。
【請求項7】
温度調節機構によって温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムであって、
前記基板を保持する基板保持部と、前記基板に設けられた接合部の接合部温度を推定する温度推定部を有し、前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、を備え、温度調節機構によって温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムの温度制御方法であって、
前記基板に前記検査電力を供給する工程と、
前記検査電力の供給を停止した後、前記接合部温度に関する情報を取得する工程と、
前記接合部温度に関する情報に基づいて、前記基板保持部のオフセット温度を決定する工程と、
前記オフセット温度でオフセットされた制御温度に基づいて、前記基板保持部の温度を調整する工程と、
前記基板保持部の温度が調整された後、前記基板に前記検査電力を供給して、前記基板を検査する工程と、を含む、
温度制御方法。
【請求項8】
前記接合部温度に関する情報を取得する工程は、
前記接合部温度と前記基板の検査温度との差である前記接合部温度のオフセット温度の推移を取得する、
請求項7に記載の温度制御方法。
【請求項9】
前記基板保持部のオフセット温度を決定する工程は、
前記接合部温度のオフセット温度の推移に基づいて、前記検査電力の供給を停止した時の前記接合部温度のオフセット温度を推定し、
推定された前記検査電力の供給を停止した時の前記接合部温度のオフセット温度に基づいて、前記基板保持部のオフセット温度を決定する、
請求項8に記載の温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システム及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パワートランジスタのオン期間におけるソースおよびドレイン端子の端子間電圧を検出し、パワートランジスタのジャンクション温度を高精度に推定することが可能な電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-122107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、好適に温度制御を行いながら基板を検査する検査システム及び温度制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、温度調節機構によって温度制御を行いながら、基板を検査する検査システムであって、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板の電極部に検査電力を供給する検出部と、制御部と、を備え、前記検出部は、前記基板に設けられた接合部の接合部温度を推定する温度推定部を有し、前記制御部は、前記基板に前記検査電力を供給する工程と、前記検査電力の供給を停止した後、前記接合部温度に関する情報を取得する工程と、前記接合部温度に関する情報に基づいて、前記基板保持部のオフセット温度を決定する工程と、前記オフセット温度でオフセットされた制御温度に基づいて、前記基板保持部の温度を調整する工程と、前記基板保持部の温度が調整された後、前記基板に前記検査電力を供給して、前記基板を検査する工程と、を含む、検査システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、好適に温度制御を行いながら基板を検査する検査システム及び温度制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】検査システムの斜視図の一例。
図2】検査システムの構成図の一例。
図3】基板の構成を概略的に示す平面図の一例。
図4】検査システムにおける温度制御を説明するフローチャートの一例。
図5】検査電力及び電子デバイスのオフセット温度の時間推移を示すグラフの一例。
図6】電子デバイスの検査が終了する前後における検査電力及び電子デバイスのオフセット温度の時間推移を示すグラフの一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
本実施形態に係る検査システムの一例である検査システム1について、図1を用いて説明する。図1は、検査システム1の斜視図の一例である。図2は、検査システム1の構成図の一例である。なお、図2において、部分的に断面図として、検査システム1に内蔵される構成要素を概略的に示す。
【0010】
半導体製造プロセスでは、半導体ウエハ等の基板W上に所定の回路パターンを持つ多数の電子デバイスD(後述する図3参照)が形成される。形成された電子デバイスDは、電気的特性等の検査が行われ、良品と不良品とに選別される。電子デバイスDの検査は、例えば、各電子デバイスDが分割される前の基板Wの状態で、検査システム1を用いて行われる。
【0011】
検査システム1は、温度制御を行いながら、基板Wに形成された複数の電子デバイスD(後述する図3参照)の電気的特性を検査する。即ち、検査システム1は、電子デバイスDが所定の検査温度以上の状態で、電子デバイスDに検査電力を供給し、その際の電気的特性等の検査が行われる。
【0012】
検査システム1は、収容室2と、ローダ3と、テスター4と、を備える。
【0013】
収容室2は、内部が空洞の筐体11を有する。収容室2は、筐体11の内部に、基板Wが載置されるステージ(「チャック」とも称する。)10を有する。ステージ10は、ステージ10に対する基板Wの相対位置がずれないように、基板Wを吸着保持する吸着保持部(図示せず)を有する。また、収容室2は、筐体11の内部に、ステージ10を水平方向及び上下方向に移動させる移動機構(図示せず)が設けられている。この移動機構により、後述するプローブカード12と基板Wの相対位置を調整して基板Wの表面の所望の電極部E(後述する図3参照)をプローブカード12のプローブ12aと接触させることができる。
【0014】
収容室2は、筐体11の内部に、プローブカード12を有する。プローブカード12は、ステージ10の上方で、ステージ10に対向するように配置される。プローブカード12は、基板Wの各電子デバイスDの電極部Eに対応して設けられた電極パッド又は半田バンプに対応して配置された複数の針状のプローブ12aを備える。プローブカード12は、インターフェース13を介してテスター4へ接続される。各プローブ12aは、電気特性の検査時に、基板Wの各電子デバイスDの電極部Eに接触し、テスター4からの電力をインターフェース13を介して電子デバイスDへ供給し、且つ、電子デバイスDからの信号をインターフェース13を介してテスター4へ伝達する。
【0015】
ローダ3は、基板Wが収容された搬送容器であるFOUP(Front Opening Unify Pod)が配置されている。また、ローダ3は、基板Wを搬送する搬送機構(図示せず)を有する。搬送機構は、FOUPに収容されている基板Wを取り出して収容室2のステージ10へ搬送する。また、搬送機構は、電子デバイスDの電気的特性の検査が終了した基板Wをステージ10から受け取り、FOUPへ収容する。
【0016】
テスター4は、電子デバイスDが搭載されるマザーボードの回路構成の一部を再現するテストボード(図示しない)を有する。また、テスター4のテストボードは、電子デバイスDからの信号に基づいて電子デバイスDの良否を判断するテスターコンピュータ15に接続される。テスター4ではテストボードを取り替えることにより、複数種のマザーボードの回路構成を再現することができる。また、プローブカード12のプローブ12aは複数設けられており、電子デバイスDの複数の電極部Eにそれぞれ接触される。また、テスター4は、電子デバイスDの電気的特性を検出する検出手段を複数有している。これにより、テスター4は、電子デバイスDの複数の電気的特性を検出する。
【0017】
また、検査システム1は、ユーザ向けに情報を表示したりユーザが指示を入力したりするためのユーザインターフェース部16を備える。ユーザインターフェース部16は、例えば、タッチパネルやキーボード等の入力部と液晶ディスプレイ等の表示部とからなる。
【0018】
このように、検査システム1は、基板Wを保持する基板保持部として、ステージ10を備える。また、検査システム1は、基板Wに設けられた電子デバイスDの電極部Eに検査電力を供給することで電子デバイスDの電気的特性を検出する検出部として、プローブ12aを有するプローブカード12、インターフェース13及びテスター4を備える。
【0019】
さらに、ローダ3は、温度制御ユニット14を有する。温度制御ユニット14は、電源25と、チラー26と、制御部90と、を有する。
【0020】
ステージ10には、ステージ10を加熱するヒータ20が設けられている。電源25は、ステージ10に設けられたヒータ20に電力を供給する。また、ステージ10の内部には、伝熱媒体(不凍液等)が通流する冷媒流路10aが形成されている。チラー26は、冷媒流路10aに温度調整された伝熱媒体を循環させる。このように、検査システム1は、基板保持部の温度を調整する温度調整機構として、ヒータ20、電源25、冷媒流路10a及びチラー26を備える。なお、温度調整機構の構成は、これに限られるものではない。
【0021】
また、温度調整機構は、基板保持部の温度を検出する温度検出部30を備える。温度検出部30は、ステージ10に設けられ、ステージ10の温度Tstageを検出する。温度検出部30で検出されたステージ10の温度Tstageは、制御部90に入力される。
【0022】
また、テスター4は、テスター4からインターフェース13及びプローブカード12を介して電子デバイスDへ供給される検査電力(電流及び電圧)を検出する電力検出部41を有する。電力検出部41で検出された検査電力は、制御部90に入力される。
【0023】
また、テスター4は、電子デバイスDに形成されるPN結合(接合部、例えばトランジスタ等)に電流を流すことにより、発生した起電力と温度との相関関係から、電子デバイスDの接合部の温度であるジャンクション温度(接合部温度)Tjを検出する温度推定部42を有する。温度推定部42で検出されたジャンクション温度Tjは、制御部90に入力される。
【0024】
制御部90は、保持部温度制御部91と、オフセット温度決定部92と、を有する。制御部90は、電子デバイスDのジャンクション温度Tj(基板Wの温度)が検査温度となるように、温度調整機構を制御する。
【0025】
保持部温度制御部91は、温度検出部30で検出した基板保持部の温度Tstageが制御温度またはオフセットされた制御温度となるように温度調整機構を制御する。即ち、保持部温度制御部91は、電源25を制御することにより、ヒータ20の発熱量を制御して、ステージ10の温度Tstageを制御する。また、保持部温度制御部91は、チラー26を制御することにより、チラー26が冷媒流路10aに供給する伝熱媒体の温度を制御して、ステージ10の温度Tstageを制御してもよい。
【0026】
オフセット温度決定部92は、テストパターン及び/又は検査電力に応じた制御温度のオフセット温度を決定する。これにより、検査時において、保持部温度制御部91は、温度検出部30で検出した基板保持部の温度Tstageがオフセットされた制御温度となるように温度調整機構を制御する。
【0027】
また、オフセット温度決定部92は、電子デバイスDに供給される検査電力を取得する。例えば、オフセット温度決定部92は、電力検出部41で検出された検査電力が入力されることにより、電子デバイスDに供給される検査電力を取得する。また、オフセット温度決定部92は、テスターコンピュータ15から電子デバイスDのテストパターンに記録された検査電力が入力されることにより、電子デバイスDに供給される検査電力を取得してもよい。
【0028】
次に、上述の検査システム1において検査される基板Wについて図3を用いて説明する。図3は、基板Wの構成を概略的に示す平面図である。
【0029】
基板Wには、略円板状のシリコン基板にエッチング処理や配線処理を施すことにより、図3に示すように、複数の電子デバイスDが互いに所定の間隔をおいて、表面に形成されている。電子デバイスDすなわち基板Wの表面には、電極部Eが形成されており、該電極部Eは当該電子デバイスDの内部の回路素子に電気的に接続されている。電極部Eへ電圧を印加することにより、各電子デバイスDの内部の回路素子へ電流を流すことができる。
【0030】
ここで、ジャンクション温度Tjを検出する温度推定部42は、例えばロジックIC等の電子デバイスDの検査が行われる際、クロックが発生している条件下では、ノイズ等の影響によって好適にジャンクション温度Tjを検出することができない場合がある。
【0031】
また、電子デバイスDの検査が行われる際、ステージ10と基板W(電子デバイスD)との間の熱抵抗によって、ステージ10の温度Tstageと電子デバイスDのジャンクション温度Tjとの間に温度差が発生する。このため、ステージ10の温度Tstageが検査温度となるように温度制御して電子デバイスDの検査を行う場合、電子デバイスDのジャンクション温度Tjは検査温度よりも高くなるおそれがある。即ち、検査温度よりも高い温度で電子デバイスDの検査を行うこととなり、電子デバイスDの歩留まりが低下するおそれがある。
【0032】
次に、本実施形態に係る検査システム1における温度制御について、図4から図6を用いて説明する。図4は、検査システム1における温度制御を説明するフローチャートの一例である。
【0033】
まず、オフセット温度決定工程について、ステップS101からステップS107を用いて説明する。オフセット温度決定工程では、基板保持部の制御温度のオフセット温度を決定する。
【0034】
ステップS101において、保持部温度制御部91は、初期値の制御温度で基板保持部の温度Tstageを制御する。即ち、保持部温度制御部91は温度検出部30で検出した基板保持部の温度Tstageが制御温度に近づくように温度調整機構を制御する。なお、初期値の制御温度は、例えば検査温度としてもよい。
【0035】
ステップS102において、保持部温度制御部91は、温度検出部30で検出した基板保持部の温度Tstageが初期値の制御温度を含む所定の制御温度範囲内であるか否かを判定する。温度Tstageが制御温度範囲内でない場合(S102・NO)、ステップS102の処理を繰り返す。温度Tstageが制御温度範囲内である場合(S102・YES)、制御部90の処理はステップS103に進む。以降の処理(ステップS103~S104)において、保持部温度制御部91は、温度Tstageが所定の制御温度範囲内を維持するように温度調整機構を制御する。
【0036】
ステップS103において、テスター4は、テストパターンに基づいて電子デバイスDの電極部Eに検査電力を供給し、電子デバイスDの電気的特性等の検査を行う。
【0037】
図5は、検査電力及び電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetの時間推移を示すグラフの一例である。図5において、上段のグラフは、電子デバイスDに供給する検査電力のテストパターンの一例を示す。縦軸は電子デバイスDに供給する検査電力を示す。横軸は時間を示す。下段のグラフは、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetの一例を示すグラフを示す。縦軸は電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetを示す。横軸は時間を示す。ここで、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetは、検査温度に対する電子デバイスDのジャンクション温度Tjのオフセット温度である。即ち、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetは、電子デバイスDのジャンクション温度Tjから検査温度を減算した温度である。
【0038】
テストパターンは、検査電力が異なる複数の検査を含む。図5に示す例において、テストパターンは、検査電力P1で検査する第1の検査、検査電力P2で検査する第2の検査、検査電力P3で検査する第3の検査、・・・、検査電力Piで検査する第iの検査(iは任意の整数)、を含む。
【0039】
電子デバイスDに検査電力を供給することにより、電子デバイスDが発熱し、電子デバイスDの温度が上昇する。即ち、電子デバイスDのジャンクション温度Tjが上昇し、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetも上昇する。また、検査を終了して検査電力の供給を停止することにより、電子デバイスDの温度が下降する。即ち、電子デバイスDのジャンクション温度Tjが下降し、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetも下降する。
【0040】
ここで、電子デバイスDの検査において、温度推定部42による電子デバイスDのジャンクション温度Tjの検出ができない。このため、図5において、ジャンクション温度Tjの検出ができない区間における電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetは、破線で図示する。
【0041】
このステップS103では、テスター4は、テストパターンに基づいて電子デバイスDに検査電力P1を供給し、電子デバイスDの電気的特性等の検査を行う。なお、オフセット温度決定部92は、ステップS103に示す電子デバイスDの検査において電子デバイスDに供給された検査電力P1を取得する。電子デバイスDの電気的特性等の検査が終了すると、テスター4は、検査電力P1の供給を停止する。
【0042】
ステップS104において、オフセット温度決定部92は、遅れ時間tdelay後のジャンクション温度Tjに関する情報を取得する。具体的には、オフセット温度決定部92は、遅れ時間tdelay後における、温度推定部42からジャンクション温度Tjの推移を検出(取得)する。これにより、オフセット温度決定部92は、遅れ時間tdelay後における、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetの推移を検出(取得)する。
【0043】
図6は、電子デバイスDの検査が終了する前後における検査電力及び電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetの時間推移を示すグラフの一例である。図6において、縦軸は、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffset及び電子デバイスDに供給する検査電力を示す。横軸は時間を示す。また、図6において、検出された範囲(遅れ時間tdelay後)における電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetは実線で示す。また、検出していない範囲(遅れ時間tdelay前)における電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetは二点鎖線で示す。電子デバイスDに供給する検査電力は、破線で示す。
【0044】
検査電力の供給を停止してから遅れ時間tdelayが経過した後に、オフセット温度決定部92は、温度推定部42によって電子デバイスDのジャンクション温度Tjの推移を検出する。そして、オフセット温度決定部92は、ジャンクション温度Tjと検査温度との差から電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetの推移を検出する。これにより、図6に示すように、電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetが温度減少する推移を検出する。
【0045】
ステップS105において、オフセット温度決定部92は、検査時におけるピーク温度TEMPpeakを算出する。ここで、ピーク温度TEMPpeakは、検査時における電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetである。換言すれば、ピーク温度TEMPpeakは、検査時における検査温度に対する電子デバイスDのジャンクション温度Tjの上昇温度である。即ち、ピーク温度TEMPpeakは、検査時における電子デバイスDのジャンクション温度Tjから検査温度を減算した温度である。
【0046】
ここでは、検査電力の供給を停止した時点でのオフセット温度Tjoffsetをピーク温度TEMPpeakとして算出する。検査電力の供給を停止してから電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetが減少するシステムは、1次遅れ系で表されるものとする。オフセット温度決定部92は、ステップS104で検出した電子デバイスDのオフセット温度Tjoffsetの推移から、最小二乗法等によって時定数Tを算出する。
【0047】
そして、オフセット温度決定部92は、遅れ時間tdelayと、算出した時定数Tと、観測した遅れ時間時の温度TEMPobに基づいて、以下の式によりピーク温度TEMPpeakを算出する。
【0048】
TEMPpeak=TEMPob・exp(tdelay/T)
【0049】
このステップS105では、検査電力P1(図5参照)で電子デバイスDの検査した場合におけるピーク温度TEMPpeak1(図5参照)を算出する。
【0050】
ステップS106において、オフセット温度決定部92は、ピーク温度TEMPpeakを記憶部(図示せず)に格納する。
【0051】
このステップS106では、オフセット温度決定部92は、ピーク温度TEMPpeak1を検査電力P1(図5参照)で電子デバイスDの検査する場合における基板保持部のオフセット温度として決定し、検査電力P1とピーク温度TEMPpeak1(基板保持部のオフセット温度)とを対応付けして記憶部に格納する。
【0052】
ステップS107において、制御部90は、全てのテストパターンが終了したか否かを判定する。全てのテストパターンが終了していない場合S107・NO)、制御部90は、ステップS102に戻り、ステップS102からステップS106の処理を繰り返す。これにより、検査電力P2で検査する第2の検査以降についても同様に、検査電力とピーク温度TEMPpeak(基板保持部のオフセット温度)とを対応付けして記憶部に格納する。
【0053】
全てのテストパターンが終了した場合(S107・YES)、制御部90は、オフセット温度決定工程(ステップS101からステップS107)を終了する。
【0054】
なお、検査電力とピーク温度TEMPpeak(基板保持部のオフセット温度)とは、テーブルとして記憶部に記憶されていてもよい。また、オフセット温度決定部92は、テーブルに記憶された情報から、検査電力とピーク温度TEMPpeak(基板保持部のオフセット温度)との関係を示す関数を生成し、生成した関数が記憶部に記憶されていてもよい。
【0055】
次に、検査工程について、ステップS108からステップS111を用いて説明する。検査工程では、オフセット温度決定工程で決定されたオフセット温度で基板保持部の制御温度をオフセットして電子デバイスDの検査を行う。
【0056】
ステップS108において、保持部温度制御部91は、オフセットされた制御温度で基板保持部の温度Tstageを制御する。即ち、保持部温度制御部91は温度検出部30で検出した基板保持部の温度Tstageがオフセットされた制御温度に近づくように温度調整機構を制御する。
【0057】
例えば、テスター4が制御部90に指令する構成を例に説明する。テスター4は、テストパターンに従って次に実行される検査の検査電力に対応する基板保持部のオフセット温度(ステップS106で格納したピーク温度TEMPpeak)を制御部90に送信する。制御部90は、初期値の制御温度から基板保持部のオフセット温度を減算した温度で温度調整機構を制御する。
【0058】
なお、テスター4は、テストパターンに従って次に実行される検査の検査電力を制御部90に送信する構成であってもよい。この場合、制御部90は、検査電力に対応する基板保持部のオフセット温度(ステップS106で格納したピーク温度TEMPpeak)を決定し、初期値の制御温度からオフセット温度を減算した温度で温度調整機構を制御する。
【0059】
また、電力検出部41で検出された検査電力を制御部90に送信する構成であってもよい。この場合、制御部90は、検査電力に対応する基板保持部のオフセット温度(ステップS106で格納したピーク温度TEMPpeak)を決定し、初期値の制御温度からオフセット温度を減算した温度で温度調整機構を制御する。
【0060】
ステップS109において、保持部温度制御部91は、温度検出部30で検出した基板保持部の温度Tstageがオフセットされた制御温度を含む所定の制御温度範囲内であるか否かを判定する。温度Tstageが制御温度範囲内でない場合(S109・NO)、ステップS109の処理を繰り返す。温度Tstageが制御温度範囲内である場合(S109・YES)、制御部90の処理はステップS110に進む。以降の処理(ステップS110)において、保持部温度制御部91は、温度Tstageが所定の制御温度範囲内を維持するように温度調整機構を制御する。以降の処理(ステップS109)において、保持部温度制御部91は、温度Tstageが所定の制御温度範囲内を維持するように温度調整機構を制御する。
【0061】
ステップS110において、テスター4は、テストパターンに基づいて電子デバイスDに検査電力を供給し、電子デバイスDの電気的特性等の検査を行う。
【0062】
ここで、ステップS110に示す検査において、基板保持部の温度Tstageがオフセットされることにより、検査時における電子デバイスDの温度を検査温度に近づけることができる。
【0063】
ステップS111において、制御部90は、全てのテストパターンが終了したか否かを判定する。全てのテストパターンが終了していない場合S111・NO)、制御部90は、ステップS108に戻り、ステップS108からステップS110の処理を繰り返す。全てのテストパターンが終了した場合(S111・YES)、制御部90は、検査工程(ステップS108からステップS111)を終了する。
【0064】
以上の様に、制御部90は、検査後の電子デバイスDの温度変化に基づいて、検査時のピーク温度TEMPpeakを推定することができる。これにより、検査時のジャンクション温度Tjを推定することができる。
【0065】
また、制御部90は、オフセット温度決定工程において、検査時のピーク温度TEMPpeakを推定し、基板保持部のオフセット温度として格納する。そして、制御部90は、検査工程において、オフセット温度でオフセットした制御温度で基板保持部の温度を制御する。これにより、電子デバイスDの検査を行う場合、電子デバイスDを検査温度とすることができ、好適に検査を行うことができる。また、電子デバイスDの歩留まりが低下することを防止することができる。
【0066】
また、電子デバイスにジャンクション温度Tjを検出するためのみに用いられる電極部Eを設ける構成と比較して、電子デバイスDのパッケージコストを低減することができる。また、プローブカード12に設けるプローブ12aの数を削減することができる。
【0067】
以上、検査システム1について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0068】
W 基板
D 電子デバイス
E 電極部
1 検査システム
2 収容室
3 ローダ
4 テスター
10 ステージ
10a 冷媒流路
12 プローブカード
12a プローブ
13 インターフェース
14 温度制御ユニット
20 ヒータ
25 電源
26 チラー
30 温度検出部
41 電力検出部
42 温度推定部
50 温度調節機構
55 電源
90 制御部
91 保持部温度制御部
92 オフセット温度決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6