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特開2024-100577ダイシング溝の検査方法及びダイシング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100577
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ダイシング溝の検査方法及びダイシング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004679
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】田母神 崇
(72)【発明者】
【氏名】金城 裕介
(72)【発明者】
【氏名】對馬 健夫
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA48
5F063DE13
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE33
(57)【要約】
【課題】 溝の内部の測定を行うことにより、ウェハの加工精度を高めることを可能にするダイシング溝の検査方法及びダイシング方法を提供する。
【解決手段】 ダイシング溝の検査方法は、観察部(MS)を搭載するダイシング装置を用いてウェハのテストカットを行って検査用の溝を形成するステップであって、観察部により検査用の溝の内部の測定が可能な測定限界深さ以下の深さを有する検査用の溝をウェハに形成するステップと、観察部を用いてテストカットによりウェハに形成した検査用の溝の内部の測定を行うステップとを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察部を搭載するダイシング装置を用いてウェハのテストカットを行って検査用の溝を形成するステップであって、前記観察部により前記検査用の溝の内部の測定が可能な測定限界深さ以下の深さを有する前記検査用の溝を前記ウェハに形成するステップと、
前記観察部を用いて前記テストカットにより前記ウェハに形成した前記検査用の溝の内部の測定を行うステップと、
を含むダイシング溝の検査方法。
【請求項2】
前記テストカットにより形成する前記検査用の溝の深さは、前記観察部についてあらかじめ求めたアスペクト比であって、前記ウェハの表面における溝の幅に対する前記測定限界深さの比であるアスペクト比に応じて決定される、請求項1に記載のダイシング溝の検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイシング溝の検査方法により、前記検査用の溝の内部の測定を行った結果に基づいて前記ダイシング装置の調整作業を行い、前記ウェハの本加工により、前記検査用の溝と重なる前記ウェハの位置にダイシング溝を形成する、ダイシング方法。
【請求項4】
前記本加工により形成する溝の深さは、前記検査用の溝の深さよりも深い、請求項3に記載のダイシング方法。
【請求項5】
前記本加工において、第1の溝と、前記第1の溝よりも幅が狭くかつ深い第2の溝とを前記ウェハに順次形成する場合、
前記検査用の溝は、前記第1の溝と同じ幅を有し、前記第1の溝の幅に応じて、前記測定限界深さ以下の深さを有する第1の検査用の溝と、前記第2の溝と同じ幅を有し、前記第1の検査用の溝よりも深い第2の検査用の溝とを含み、
前記ウェハの本加工により形成する前記第1の溝は、前記第1の検査用の溝に重ねて形成され、
前記第1の溝の深さは、前記第2の検査用の溝よりも深い、請求項3に記載のダイシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイシング溝の検査方法及びダイシング方法に係り、半導体装置又は電子部品が形成されたウェハを個々のチップに分割する際のカーフ(溝)を検査するための技術等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置又は電子部品のデバイスパターンが形成されたウェハを個々のチップに分割するダイシング装置(以下、ダイサともいう。)は、スピンドルによって高速に回転されるブレードと、ウェハを吸着保持するウェハテーブルと、ウェハテーブルとブレードとの相対的位置を変化させるXYZθ駆動部とを備えている。このダイサでは、各駆動部によりブレードとウェハとを相対的に移動させながら、ブレードによってウェハを切り込むことによりウェハのダイシング加工(切削加工)を行う。
【0003】
ウェハのダイシング加工を行う際には、切削ラインの品質及びダイシング溝の位置精度を確認するため、加工領域を測定し、測定結果に基づいて加工領域の検査(カーフチェック)が行われる(例えば、特許文献1から4参照)。ダイサで加工した後の溝の検査手法としては、画像データ(例えば、濃淡画像)から欠陥を検出する方法が一般的となっている。この濃淡画像からの欠陥の検出では、欠陥と欠陥周辺部とのコントラストが重要である。
【0004】
溝を3次元測定する場合、光学顕微鏡に替わり、レーザ顕微鏡又は干渉顕微鏡等を用いて、溝を3次元的に観察する方法が考えられる。ここで、測定対象は10μm~300μm程度の微小な形状であるため、顕微鏡により観察・撮像された画像、あるいは集光したレーザ光を用いて3次元測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-129822号公報
【特許文献2】特開2015-085397号公報
【特許文献3】特開2015-099026号公報
【特許文献4】特開2022-037488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図14に示すように、ウェハWに形成された溝gの測定を行う場合、溝gの測定の可否は、溝gの開口部の幅Wgに対する切込深さDgの比Dg/Wg(以下、アスペクト比という。)の影響を受ける。溝gの開口部の幅Wgに対して切込深さDgが深い場合(高アスペクト比の場合)、溝gの内部の測定ができない場合がある。
【0007】
例えば、ブレードダイシングでの加工方法の1つであるステップカットでは、ウェハWの表面側を加工するハーフカットと、ハーフカットにより形成された溝g1の内部を加工し、溝g2によりチップを分断する役割を担うフルカットの2工程でウェハを加工する。ここで、ハーフカットにより形成された溝g1の内部の溝g2の加工結果の検査を行う場合、測定対象はハーフカットにより生成された溝g1の内部にあるため、対物レンズで集光した照明・レーザ光は開口部の幅が狭い場合、内部の観察範囲に制限が入ることになる。これにより3次元測定適用範囲は制限を受ける。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、溝の内部の測定及び検査を行うことにより、ウェハの加工精度を高めることを可能にするダイシング溝の検査方法及びダイシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るダイシング溝の検査方法は、観察部を搭載するダイシング装置を用いてウェハのテストカットを行って検査用の溝を形成するステップであって、観察部により検査用の溝の内部の測定が可能な測定限界深さ以下の深さを有する検査用の溝をウェハに形成するステップと、観察部を用いてテストカットによりウェハに形成した検査用の溝の内部の測定を行うステップとを含む。
【0010】
本発明の第2の態様に係るダイシング溝の検査方法は、第1の態様において、テストカットにより形成する検査用の溝の深さは、観察部についてあらかじめ求めたアスペクト比であって、ウェハの表面における溝の幅に対する測定限界深さの比であるアスペクト比に応じて決定される。
【0011】
本発明の第3の態様に係るダイシング方法は、第1又は第2の態様に係るダイシング溝の検査方法により、検査用の溝の内部の測定を行った結果に基づいてダイシング装置の調整作業を行い、ウェハの本加工により、検査用の溝と重なるウェハの位置にダイシング溝を形成する。
【0012】
本発明の第4の態様に係るダイシング方法は、第3の態様において、本加工により形成する溝の深さは、検査用の溝の深さよりも深くする。
【0013】
本発明の第5の態様に係るダイシング方法は、第3の態様において、本加工において、第1の溝と、第1の溝よりも幅が狭くかつ深い第2の溝とをウェハに順次形成する場合、検査用の溝は、第1の溝と同じ幅を有し、第1の溝の幅に応じて、測定限界深さ以下の深さを有する第1の検査用の溝と、第2の溝と同じ幅を有し、第1の検査用の溝よりも深い第2の検査用の溝とを含み、ウェハの本加工により形成する第1の溝は、第1の検査用の溝に重ねて形成され、第1の溝の深さは、第2の検査用の溝よりも深くする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、観察部の測定限界深さよりも浅い検査用の溝をテストカットにより形成することができるので、検査用の溝の内部の測定結果を容易に取得することができる。これにより、本加工を精度よく行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、ブレードの刃厚とウェハに形成された溝の内部の測定限界の深さ特性を示すグラフである。
図2図2は、ブレードの刃厚とウェハに形成された溝の内部の測定限界の調査結果を示す図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係るダイシング装置(ブレードダイサ)を示す斜視図である。
図4図4は、観察部の概要を示す断面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係るダイシング装置の制御系を示すブロック図である。
図6図6は、ステップカットによる溝の検査結果の出力例を示す図である。
図7図7は、実施例1に係るダイシング方法を示す断面図である。
図8図8は、実施例2に係るダイシング方法を示す断面図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態に係るダイシング装置(レーザダイサ)を示すブロック図である。
図10図10は、実施例3に係るダイシング方法を示す断面図である。
図11図11は、実施例4に係るダイシング方法を示す断面図である。
図12図12は、実施例5に係るダイシング方法を示す断面図である。
図13図13は、実施例6に係るダイシング方法を示す断面図である。
図14図14は、ウェハへの溝の形成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従ってダイシング溝の検査方法及びダイシング方法の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、ブレードの刃厚とウェハに形成された溝の内部の測定限界の深さ特性を示すグラフであり、図2は、ブレードの刃厚とウェハに形成された溝の内部の測定限界の調査結果を示す図である。
【0018】
表面の反射率が高いミラーウェハに、刃厚が異なるブレードを用いて幅及び深さが異なる溝を形成し、観察部による溝の内部(傾斜部及び底面部)を測定可能(又は観察可能)な深さの最大値の調査を実施した。なお、図1では、観察部により溝の内部を測定可能な深さの最大値を測定限界深さと記載する。図1に係る溝の測定には、観察部として白色干渉顕微鏡(株式会社東京精密製の「Opt-scope」(登録商標))を使用した。図1に係る溝の測定に使用した対物レンズの開口率(Numerical Aperture)はNA=0.55であり、倍率は50倍である。
【0019】
図2に示すように、ブレード刃厚と測定限界深さとの関係は、下記の通りであった。
【0020】
D1:ブレード刃厚15.8μm、深さ36μm
D2:ブレード刃厚33.8μm、深さ97μm
D3:ブレード刃厚58.1μm、深さ149μm
D4:ブレード刃厚78.3μm、深さ190μm
図1のグラフG1は、図2のデータD1~D4をプロットしたものである。また、図1のグラフG2は、ブレード刃厚に対する測定限界深さの比(アスペクト比)を示している。
【0021】
グラフG1に示すように、ブレード刃厚が厚い、すなわち、溝の幅が広いほど、測定可能な測定限界深さは深くなっている。そして、グラフG2に示すように、ブレード刃厚、すなわち、ウェハWの表面における溝の幅に対する測定限界深さの比であるアスペクト比は2以上(図1の破線より上)となっている。すなわち、上記の例では、測定限界深さはブレード刃厚の約2倍であり、溝の深さがブレード刃厚の2倍以下であれば、溝の内部の測定が可能であることがわかる。
【0022】
この場合、例えば、刃厚30μmのブレードでハーフカットを行い、ハーフカットにより形成された溝の内部にフルカットを行う場合において、ハーフカットの溝の加工深さの設定値が60μmを超える場合には、フルカットの溝を認識することができない場合がある。
【0023】
そこで、本実施形態では、観察部、例えば、白色干渉顕微鏡を用いて測定可能な深さの検査用の溝、すなわち、測定限界深さよりも浅い溝をテストカット(モックアップ加工)によりウェハに形成する。ここで、検査用の溝の深さは、上記のアスペクト比に基づいて決定される。そして、テストカットにより実際にウェハに形成した溝について、溝の形成結果(例えば、幅及び位置並びにチッピングの発生状況等)を検査する。
【0024】
その後、本来の加工深さでウェハを加工することにより(以下、本加工という。)、テストカットにより形成した溝を除去しつつ、ウェハの加工を行う。これにより、幅に対して深い溝を形成する場合、すなわち、高アスペクト比の場合であっても、ウェハの加工に先立って溝の形成結果を正確に測定することができる。これにより、本来の加工深さでの加工に溝の形成結果をフィードバックすることができ、ウェハの加工品質を高めることができる。
【0025】
なお、図1及び図2の測定結果では、ブレード刃厚に対する測定限界深さの比であるアスペクト比は2以上であったが、これは一例であって、アスペクト比は溝の観察に使用する対物レンズの仕様(例えば、NA又は倍率等)又は溝を観察するときの照明の光量(例えば、最大光量)等のファクターにより異なり得る。本実施形態は、溝の測定に使用する干渉光学系及び照明光学系等について、アスペクト比をあらかじめ実験により求めておくことにより、上記の白色干渉顕微鏡以外の測定装置を用いる場合にも適用することが可能である。
【0026】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るダイシング装置(ブレードダイサ)を示す斜視図である。以下では、テーブルCTがXY方向に平行でZ方向に垂直な3次元直交座標系を用いて説明する。
【0027】
図3に示すように、本実施形態に係るダイシング装置10は、ウェハWのダイシング加工を行う切削部12(第1切削部12-1及び第2切削部12-2)と、テーブルCTとを有する。なお、以下の説明において、2つの切削部12-1及び12-2に共通する構成については、枝番を省略して説明する。
【0028】
テーブルCTは、XY平面に平行な保持面を有する。テーブルCTは、図示しない真空源(真空発生器。例えば、エジェクタ、ポンプ等)により、この保持面にウェハWを吸着保持する。ウェハWは、表面に粘着剤の粘着層が形成されたダイシングテープ(図示せず)を介してフレーム(図示せず)に貼着され、テーブルCTに吸着保持される。なお、ダイシングテープが貼着されたフレームは、テーブルCTに配設されたフレーム保持手段(図示せず)に保持される。なお、フレームを用いない搬送形態であってもよい。
【0029】
テーブルCTは、不図示のθテーブルに取り付けられており、θテーブルは、モータ等を含む回転駆動部によりθ方向(Z軸を中心とする回転軸周り)に回転可能となっている。θテーブルは、不図示のXテーブルに載置されている。Xテーブルは、例えば、モータ及びボールねじ等を含むX駆動部によりX方向に移動可能となっている。
【0030】
第1切削部12-1及び第2切削部12-2は、それぞれZ1テーブル及びZ2テーブルに取り付けられている。Z1テーブル及びZ2テーブルは、モータ及びボールねじ等を含むZ駆動部によりそれぞれ、Z1及びZ2方向に移動可能である。Z1テーブル及びZ2テーブルには、それぞれY1テーブル及びY2テーブルが取り付けられている。Y1テーブル及びY2テーブルは、モータ及びボールねじ等を含むY駆動部によりそれぞれ、Y1及びY2方向に移動可能である。第1切削部12-1及び第2切削部12-2は、加工部の一例である。
【0031】
なお、本実施形態では、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部としてモータ及びボールねじ等を含む構成を用いたが、本発明はこれに限定されない。X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部としては、例えば、ガイド軸とスライダーとの間に気体軸受を設けるエアガイド機構、又はラックアンドピニオン機構等の往復直線運動のための機構を用いることが可能である。
【0032】
図3に示すように、第1切削部12-1は、第1スピンドル14-1及び第1ブレード16-1を含んでいる。第2切削部12-2は、第2スピンドル14-2及び第2ブレード16-2を含んでいる。この例ではテーブルCTが1つの場合を例示しているが複数のテーブルCTがある構成でもよい。
【0033】
第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、例えば、円盤状の切削刃である。第1ブレード16-1は、ウェハWの表面の層(以下、上層と称する場合もある)、例えば、デバイス層を除去するためのブレード、例えば、表面用ブレードである。第2ブレード16-2は、ウェハWの上層よりも下に位置する層(以下、下層と称する場合もある)、例えば、シリコン層を切断(分割)するためのブレード、例えば、シリコン用ブレードである。図3に示す例では、第1ブレード16-1の厚さは、第2ブレード16-2の厚さよりも厚い。第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2としては、例えば、ダイヤモンド砥粒又はCBN(Cubic Boron Nitride)砥粒をニッケルで電着した電着ブレード、あるいは樹脂で結合したレジンブレード等を用いることが可能である。第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、加工対象のウェハWの種類及びサイズ並びに加工内容等に応じて交換可能である。
【0034】
第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、それぞれ第1スピンドル14-1及び第2スピンドル14-2の先端に取り付けられる。第1スピンドル14-1及び第2スピンドル14-2は、それぞれ第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2を高速回転させるための高周波モータを含んでいる。
【0035】
前述した構成により、第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、それぞれY方向においてY1方向及びY2方向にインデックス送りされるとともに、Z方向においてZ1方向及びZ2方向に切り込み送りされる。また、テーブルCTは、θ方向に回転されるとともにX方向に切削送りされる。
【0036】
観察部MSは、第2切削部12-2の側面に取り付けられており、第2切削部12-2と一体的に移動可能である。観察部MSは、テーブルCTに吸着保持されたウェハWの表面の画像を撮影(観察)する。観察部MSは、例えば、白色干渉顕微鏡を含む。
【0037】
図3に示すように、観察部MSは、光源部200、干渉レンズ202、顕微鏡204及びカメラ206を有する。
【0038】
光源部200は、制御装置100の制御の下、平行光束の白色光(可干渉性の少ない低コヒーレント光)を出射する。この光源部200は、例えば、発光ダイオード、半導体レーザ、ハロゲンランプ、及び高輝度放電ランプなどの白色光を出射可能な光源と、この光源から出射された白色光を平行光束に変換するコレクタレンズとを含む。なお、上記の例では、白色光を用いたが、白色光以外の照明光(例えば、単色の照明光(高コヒーレント光)、緑単色光等)を用いてもよい。
【0039】
図4に示すように、干渉レンズ202は、ビームスプリッタ220、参照面222及び対物レンズ224を含む。なお、図4では、ミラウ型の干渉光学系の例について説明したが、これに限定されない。例えば、マイケルソン型又はリニック型等のほかの干渉光学系を観察部MS(例えば、干渉レンズ202)に採用することも可能である。
【0040】
図4に示すように、ウェハWの表面からZ方向上方側に沿ってビームスプリッタ220及び対物レンズ224が順に配置され、また、ビームスプリッタ220に対して対向する位置(ビームスプリッタ220と対物レンズ224との間の位置)に参照面222が配置されている。
【0041】
対物レンズ224は、集光作用を有しており、光源部200から入射した白色光L1を、ビームスプリッタ220を通してウェハWに集光させる。
【0042】
ビームスプリッタ220は、対物レンズ224から入射する白色光L1の一部を参照光L2bとして分割し、残りの測定光L2aを透過してウェハWに出射し且つ参照光L2bを参照面222に向けて反射する。ビームスプリッタ220を透過した測定光L1aは、ウェハWに照射された後、ウェハWにより反射されてビームスプリッタ220に戻る。
【0043】
参照面222は、例えば、反射ミラーが用いられ、ビームスプリッタ220から入射した参照光L2bをビームスプリッタ220に向けて反射する。この参照面222は、位置調整機構(例えば、ボールねじ機構、アクチュエータ等)によってX方向の位置を手動で調整可能である。これにより、ビームスプリッタ220と参照面222との間の参照光L2bの光路長(参照光路長)を調整することができる。この参照光路長は、ビームスプリッタ220とウェハWとの間の測定光L1の光路長(測定光路長)と一致(略一致を含む)するように調整される。
【0044】
ウェハWから戻る測定光L2aと参照面222から戻る参照光L2bとはビームスプリッタ220で合波されて、合波光L3として対物レンズ224に到達する。
【0045】
合波光L3は、対物レンズ224を透過した後、顕微鏡204によりカメラ206の撮影面に結像される。具体的には、合波光L3は、対物レンズ224の焦点面上における点を、カメラ206の撮影面上の像点として結像する。
【0046】
カメラ206は、CCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮影素子を備える。カメラ206は、撮影面に結像された合波光L3を撮影し、この撮影により得られた合波光L3の撮影信号を信号処理して撮影画像を出力する。観察部MSは、カメラ206によりウェハWを撮影することにより、溝Gの内部の測定を行う。
【0047】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るダイシング装置の制御系を示すブロック図である。
【0048】
図5に示すように、ダイシング装置10の制御系は、制御装置100、入力部102、表示部104、第1切削部12-1、第2切削部12-2、第1駆動部50-1、第2駆動部50-2、テーブル駆動部54、及びテーブルCTを含んでいる。
【0049】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージデバイス(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)を有する。制御装置100は、ダイシング装置10の各部を制御する。なお、制御装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ又はマイクロコンピュータである。
【0050】
入力部102は、ユーザからの操作入力を受け付けるための操作部(例えば、キーボード、若しくはポインティングデバイス等)を含んでいる。
【0051】
表示部104は、ダイシング装置10の操作のためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。表示部104は、例えば、液晶ディスプレイを含む。
【0052】
第1駆動部50-1及び第2駆動部50-2は、第1切削部12-1及び第2切削部12-2をそれぞれYZ方向に沿って移動させるための動力源(例えば、リニアモータ又はモータ駆動機構等)を含んでいる。第1駆動部50-1及び第2駆動部50-2を移動させるための機構としては、例えば、ボールねじ又はラックアンドピニオン機構等の往復直線運動が可能な機構を用いることが可能である。
【0053】
観察部MSは、第2切削部12-2と一体的に移動可能となっており、第2駆動部50-2により走査方向であるZ方向に移動可能となっている。なお、観察部MSは、第2切削部12-2と独立に移動可能となっていてもよい。
【0054】
テーブル駆動部54は、テーブルCTを移動させるためのX駆動部及び回転駆動部を含んでいる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1切削部12-1及び第2切削部12-2をYZ方向に移動させ、テーブルCTをXθ方向に移動させるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、テーブルCTをYZ方向に移動可能としてもよい。すなわち、第1切削部12-1及び第2切削部12-2とテーブルCTとをXYZθ方向に相対的に移動可能な構成であればよい。
【0056】
また、テーブルCTは1つに限らず複数設けてもよい。ダイシング装置10がテーブルCTを複数備える場合、観察部MSを独立駆動可能として、一方のテーブルCTにおいて観察部MSにより測定を行っている間に、他のテーブルCTにおいてダイシング加工を並行して実施可能としてもよい。白色干渉顕微鏡等の観察部MSによる測定には、スキャンのための時間を要するが、複数のテーブルCTにおいて、加工と測定とを並行実施可能とすることにより、作業時間の短縮を実現することができる。
【0057】
上記のように、本実施形態では、白色干渉顕微鏡を用いて測定可能な深さの溝、すなわち、測定限界深さよりも浅い溝をテストカットによりウェハに形成し、溝の形成結果(例えば、幅及び位置並びにチッピングの発生状況等)を検査する。その後、本来の加工深さでウェハを本加工することにより、テストカットにより形成した溝を除去しつつ、ウェハの加工を行う。
【0058】
まず、ステップカットを行う例について説明する。ダイシング装置10を用いてステップカットを行う場合、刃厚が異なる2枚のブレードを用いる。本実施形態では、第1ブレード16-1として刃厚が第2ブレード16-2よりも厚いものを用いる。
【0059】
図6は、ステップカットによる溝の検査結果の出力例を示す図である。図6のVI-Aは、第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2を用いてそれぞれ形成された溝G1及びG2の内部形状(断面形状)の測定結果の出力例を示している。図6のVI-Aでは、ウェハWの表面の深さの座標がZ=0である。溝の形成方向と直交する方向(幅方向)がY方向であり、Y=0がカメラ206の中心位置である。一方、図6のVI-Bは、図6のVI-Aの溝G1及びG2の内部形状の数値の出力例を示している。
【0060】
図6において、[1-1]及び[2-1]のWminはそれぞれ溝G1及び溝G2の幅であり、第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2の刃厚にそれぞれ相当する。
【0061】
[1-2]及び[2-2]のDYはそれぞれカメラ206の中心(Y=0)に対する溝G1及び溝G2の中心線のずれ量(Y方向に沿うずれ量)であり、カメラ206の中心に対する第1スピンドル14-1(SP1)及び第2スピンドル14-2(SP2)のずれ量にそれぞれ相当する。
【0062】
[1-3]及び[2-3]のCut In Depthはそれぞれ溝G1及び溝G2の深さである。DZは、それぞれ[1-3]及び[2-3]のCut In Depthの設定値に対する溝G1及び溝G2の深さの測定値のずれ量(Z方向に沿うずれ量)である。本実施形態では、第1スピンドル14-1(SP1)と第2スピンドル14-2(SP2)の切り込み量がそれぞれの目標値になるようにDZ補正量を求める。図6に示す例では、SP1の切り込み量の目標値は一例で51μmであり、SP2の切り込み量の目標値は一例で140μmである。
【0063】
図6のVI-BのSP1-2 offsetは、溝G1と溝G2の中心線のずれ量(Y方向に沿うずれ量)であり、第1スピンドル14-1(SP1)と第2スピンドル14-2(SP2)のずれ量に相当する。
【0064】
ステップカットの結果を測定する場合には、溝G1の内部に形成された溝G2の形成結果を測定する。このため、溝G1の深さは、あらかじめ実験により求めた観察部MSのアスペクト比により決定される。具体的には、溝G1の深さは、溝G1の幅、すなわち、第1ブレード16-1の刃厚の2倍以下となるように設定される。
【0065】
そして、ステップカットのテストカットにより形成された溝G1及びG2の測定結果に基づき、第1スピンドル14-1(SP1)と第2スピンドル14-2(SP2)のYZ方向の位置及び移動量等の切削部の調整作業を行う。そして、上記の調整作業の後、本来の加工深さでウェハの加工を行う。
【0066】
切削部の調整作業としては、例えば、下記に列挙する作業のうちの少なくとも1つの作業を行う。
(1)SP1-2 offsetがゼロになるように、第2スピンドル14-2(SP2)のY方向位置を調整する。
(2)チッピングの発生状況に応じて、第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2の交換をユーザに促す表示等を行う。
(3)第2スピンドル14-2(SP2)のDYがゼロになるように、第2スピンドル14-2(SP2)のY方向位置を調整する。
(4)第2スピンドル14-2(SP2)のDZがゼロになるように、第2スピンドル14-2(SP2)のZ方向移動量を調整する。
【0067】
上記のように、テストカットの結果に基づく調整作業を行うことにより、ウェハWの本加工を精度よく行うことが可能になる。
【0068】
なお、第2スピンドル14-2(SP2)に加えて、第1スピンドル14-1(SP1)のY方向位置とZ方向移動量を調整することも可能である。
【0069】
第1スピンドル14-1(SP1)のY方向位置とZ方向移動量の調整としては、例えば、下記に列挙する作業のうちの少なくとも1つの作業を行う。
(5)カメラ206の中心に対する溝G1及び溝G2の中心線のずれ量DYが双方とも0μmになるように、第1スピンドル14-1(SP1)と第2スピンドル14-2(SP2)のY方向位置を調整する。
(6)第1スピンドル14-1(SP1)のDYがゼロになるように、第1スピンドル14-1(SP1)のY方向位置を調整する。
(7)第1スピンドル14-1(SP1)のDZがゼロになるように、第1スピンドル14-1(SP1)のZ方向移動量を調整する。
【0070】
上記のように、テストカットの結果に基づいて、第1切削部12-1及び第2切削部12-2の調整作業を行うことにより、ウェハWの本加工を精度よく行うことが可能になる。
【0071】
[実施例1]
実施例1(図7)は、ブレードダイシングプロセスによりステップカットを行う例を示している。図7のVIIは、ステップカットによりウェハWが分割された状態、すなわち、ウェハWの本加工の完了時の状態を示している。
【0072】
本実施例では、上記の通り、観察部MSのアスペクト比に応じた深さでテストカットを行った後に、本来の加工深さでウェハの加工を行う。
【0073】
まず、図7のVII-Aに示すように、ウェハWのテストカット(モックアップ加工)を行う。テストカットでは、まず、第1ブレード16-1を用いてウェハWに溝G1m(第1の検査用の溝)を形成する。次に、第1ブレード16-1よりも刃厚が薄い第2ブレード16-2を用いて溝G1mの内部に、溝G1mよりも深い溝G2m(第2の検査用の溝)を形成する。ここで、テストカットの溝G1mの深さW1mは観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さよりも浅く設定される。これにより、溝G1mの内部に形成された溝G2mを測定可能となる。
【0074】
次に、溝G2mの認識結果を含む溝G1mの内部の測定結果に基づいて切削部の調整作業を行う。そして、切削部の調整作業の後、図7のVII-B及びVII-Cに示すように、本来の加工深さでのステップカット(本加工)を順次実施し、ダイシング溝(第1の溝G1及び第2の溝G2)を形成する。
【0075】
ここで、ステップカットの本加工において、太い溝G1を形成する際には、溝G1の深さW1は、溝G2mよりも深く設定する。これにより、本加工の溝G1により、テストカットで形成された溝G1m及びG2mが除去(リセット)されるので、溝G2の切削時に溝G2mに第2ブレード16-2が接触することに起因する偏摩耗を防止することができる。
【0076】
また、上記のように、テストカットと本加工の位置が重なるため、第1スピンドル14-1及び第2スピンドル14-2の駆動軸の余計な動作を抑止することができる。これにより、本加工を精度よく行うことができる。
【0077】
[実施例2]
実施例2(図8)は、ブレードダイシングプロセス(シングルブレード)によりウェハWの加工を行う例を示している。図8のVIIIは、シングルブレードによりウェハWに本加工の溝G1が形成された状態、すなわち、ウェハWの本加工の完了時の状態を示している。
【0078】
まず、図8のVIII-Aに示すように、ウェハWのテストカット(モックアップ加工)を行う。テストカットでは、第1ブレード16-1を用いてウェハWに溝G1mを形成する。ここで、テストカットの溝G1mの深さW1mは観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さよりも浅く設定される。これにより、溝G1mの内部を測定可能となる。
【0079】
次に、溝G1mの内部の測定結果に基づいて切削部の調整作業を行う。そして、切削部の調整作業の後、図8のVIII-Bに示すように、ウェハWの本加工を実施する。ここで、本加工で形成する溝G1の深さW1は、溝G1mの深さW1mよりも深く設定する。これにより、本加工の溝G1により、テストカットで形成された溝G1mが除去(リセット)される。上記は第1ブレード16-1(SP1)によるシングルブレードの例を示しているが、第2ブレード16-2(SP2)のみで加工するケースにも本実施形態に係る検査方法を適用することができる。さらに、第1ブレード16-1(SP1)と第2ブレード16-2(SP2)によりそれぞれ個別のY位置を加工する場合(ミーティング切削方式)にも同様に本実施形態に係る検査方法を適用することができる。
【0080】
また、図8のVIII-Cに示すように、本加工により、ウェハWを完全に分割してもよい。
【0081】
実施例2においても、観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さに応じてテストカットを行うことにより、ウェハWの本加工を精度よく行うことが可能になる。
【0082】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るダイシング装置(レーザダイサ)を示すブロック図である。以下では、テーブルCTがXY方向に平行でZ方向に垂直な3次元直交座標系を用いて説明する。
【0083】
ダイシング装置10Aは、レーザグルービングによりウェハWを加工する装置である。図9に示すように、ダイシング装置10Aは、ウェハWを移動させるテーブルCTと、ウェハWにレーザ光を照射するレーザ照射装置300と、観察部MSと、ダイシング装置10Aの各部を制御する制御部350とを備える。観察部MSは、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0084】
テーブルCTは、レーザ照射装置300に対してXYZθ方向に移動可能に構成され、ウェハWを吸着保持する。ウェハWは、その表面(デバイスが形成された側の面)が図中上向きになるようにテーブルCTに載置される。なお、テーブルCTとレーザ照射装置300とは、XYZθ方向に相対的に移動可能であればよく、相対移動機構(例えば、モータ及びボールねじ等を含む往復直線運動が可能な機構又はモータを含む回転駆動機構)により、テーブルCTとレーザ照射装置300のうちの少なくとも一方を他方に対してXYZθ方向に移動可能な構成であればよい。
【0085】
レーザ照射装置300は、ウェハWに対向する位置に配置されており、ウェハWに溝(G1、G2)を形成するための加工用レーザ光L1をウェハWに対して照射する。すなわち、レーザ照射装置300は、加工部の一例である。
【0086】
制御部350は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ストレージデバイス、入出力回路部等からなり、ダイシング装置10Aの各部の動作や加工に必要なデータの記憶等を行う。
【0087】
ダイシング装置10Aはこの他に、図示しないウェハ吸着手段、ウェハ搬送手段、操作盤、モニタ及び表示灯等から構成されている。
【0088】
操作盤には、ダイシング装置10Aの各部の動作を操作するスイッチ類や表示装置が取り付けられている。テレビモニタは、図示しないCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮像したウェハ画像の表示、又はプログラム内容や各種メッセージ等を表示する。表示灯は、ダイシング装置10Aの加工中、加工終了又は非常停止等の稼働状況を表示する。
【0089】
次に、レーザ照射装置300の詳細構成について説明する。図9に示すように、レーザ照射装置300は、レーザ光源302と、照明光学系304と、集光レンズ308とを備える。
【0090】
レーザ光源302は、ウェハWの表面に溝(G1、G2)を形成するための加工用レーザ光(以下、レーザ光ともいう。)L1を出射する。
【0091】
加工用レーザ光L1の第1光路上には、レーザ光源302側から順に、照明光学系304と集光レンズ308が配置される。
【0092】
レーザ光源302から出射された加工用レーザ光L1は、照明光学系304を通過した後、集光レンズ308によりウェハWの表面に集光される。この加工用レーザ光L1により、ウェハWのレーザアブレーション加工が行われる。加工用レーザ光L1の集光点のZ方向位置は、図示しないアクチュエータにより集光レンズ308をZ方向に微小移動させることにより調節される場合もある。
【0093】
制御部350は、図示しないアクチュエータにより集光レンズ308とウェハWの表面との距離を所定の関係に保つ(距離が一定となる)ことが可能となっている。
【0094】
本実施形態においても、観察部MSによる溝の検出結果に基づいて、レーザ照射装置300(加工部)の調整作業を行う。具体的には、調整作業は、集光レンズ308の開口数又は倍率の調整、加工用レーザ光L1のスポット径の調整を含む。
【0095】
なお、照明光学系304は、ウェハWの表面において、レーザ光L1のスポットを、一方の径が他方の径よりも長いオーバル形状(例えば、楕円又は長円等)又は長方形に成形可能としてもよい。このようなスポット形状は、例えば、照明光学系304にオーバル形状のレンズ又はシリンドリカルレンズ等を含めることにより形成することができる。図示しないレンズ駆動機構を用いて、照明光学系304をZ軸周りに回転させると、レーザ光L1のスポットのY方向の幅が変化する。これにより、図3に示すブレードダイサと同様、レーザダイサ(アブレーションダイサ)でもステップカットを行うことができる。したがって、レーザダイサでも、実施例1及び2に記載の加工を行うことができる。
【0096】
[実施例3]
実施例3(図10)は、レーザグルービングプロセスによりウェハWの加工を行う例を示している。図10のXは、レーザグルービングプロセスによりウェハWに溝G1が形成された状態、すなわち、ウェハWの本加工の完了時の状態を示している。
【0097】
まず、図10のX-Aに示すように、ウェハWのテストカット(モックアップ加工)を行う。テストカットでは、レーザグルービングによりウェハWに溝G1mを形成する。ここで、テストカットの溝G1mの深さW1mは観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さよりも浅く設定される。これにより、溝G1mの内部を測定可能となる。
【0098】
次に、溝G1mの内部の測定結果に基づいてレーザ照射装置300の調整作業を行う。そして、レーザ照射装置300の調整作業の後、図10のX-Bに示すように、ウェハWの本加工を実施する。ここで、本加工で形成する溝G1の深さW1は、溝G1mの深さW1mよりも深く設定する。これにより、本加工の溝G1により、テストカットで形成された溝G1mが除去(リセット)される。
【0099】
実施例3においても、観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さに応じてテストカットを行うことにより、ウェハWの本加工を精度よく行うことが可能になる。
【0100】
[実施例4]
実施例4(図11)は、レーザグルービングプロセスによりウェハWの加工を行う例を示している。図11のXIは、レーザグルービングプロセスによりウェハWに溝G1が分割された状態、すなわち、ウェハWの本加工の完了時の状態を示している。
【0101】
まず、図11のXI-Aに示すように、ウェハWのテストカット(モックアップ加工)を行う。テストカットでは、レーザグルービングによりウェハWに溝G1mを形成する。ここで、テストカットの溝G1mの深さW1mは観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さよりも浅く設定される。これにより、溝G1mの内部を測定可能となる。
【0102】
次に、溝G1mの内部の測定結果に基づいてレーザ照射装置300の調整作業を行う。そして、レーザ照射装置300の調整作業の後、図11のXI-Bに示すように、ウェハWの本加工を実施する。本加工により、ウェハWが完全に分割される。
【0103】
実施例4においても、観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さに応じてテストカットを行うことにより、ウェハWの本加工を精度よく行うことが可能になる。
【0104】
上記の実施形態では、ブレードダイサ又はレーザダイサによりウェハWの加工を行う場合について説明したが、ブレードダイサ及びレーザダイサを兼ね備えた装置を用いて、ブレードダイシングとレーザグルービングとを組み合わせてステップカットを行う場合にも本発明を適用可能である。
【0105】
[実施例5]
実施例5(図12)は、ブレードダイシングとレーザグルービングとを組み合わせてステップカットを行う例を示している。図12のXIIは、ステップカットによりウェハWが分割された状態、すなわち、ウェハWの本加工の完了時の状態を示している。
【0106】
まず、図12のXII-Aに示すように、ウェハWのテストカット(モックアップ加工)を行う。テストカットでは、まず、レーザグルービングによりウェハWに溝G1mを形成する。次に、溝G1mよりも刃厚が薄いブレードを用いて溝G1mの内部に、溝G1mよりも深い溝G2mを形成する。ここで、テストカットの溝G1mの深さW1mは観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さよりも浅く設定される。これにより、溝G1mの内部に形成された溝G2mを測定可能となる。
【0107】
次に、溝G2mの認識結果を含む溝G1mの内部の測定結果に基づいてレーザ照射装置300の調整作業を行う。そして、レーザ照射装置300の調整作業の後、図12のXII-B及びXII-Cに示すように、本来の加工深さでのステップカット(本加工)を順次実施する。
【0108】
ここで、ステップカットの本加工において、太い溝G1を形成する際には、溝G1の深さW1は、溝G2mよりも深く設定する。これにより、本加工の溝G1により、テストカットで形成された溝G1m及びG2mが除去(リセット)されるので、溝G2の切削時に溝G2mにブレードが接触することに起因する偏摩耗を防止することができる。
【0109】
[実施例6]
実施例6(図13)は、ブレードダイシングとレーザグルービングとを組み合わせてステップカットを行う別の例を示している。図13のXIIIは、ステップカットによりウェハWが分割された状態、すなわち、ウェハWの本加工の完了時の状態を示している。
【0110】
まず、図13のXIII-Aに示すように、ウェハWのテストカット(モックアップ加工)を行う。テストカットでは、まず、ブレードを用いてウェハWに溝G1mを形成する。次に、レーザグルービングにより溝G1mの内部に、溝G1mよりも幅が狭くかつ深い溝G2mを形成する。ここで、テストカットの溝G1mの深さW1mは観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さよりも浅く設定される。これにより、溝G1mの内部に形成された溝G2mを測定可能となる。
【0111】
次に、溝G2mの認識結果を含む溝G1mの内部の測定結果に基づいてレーザ照射装置300の調整作業を行う。そして、レーザ照射装置300の調整作業の後、図13のXIII-B及びXIII-Cに示すように、本来の加工深さでのステップカット(本加工)を順次実施する。
【0112】
ここで、ステップカットの本加工において、太い溝G1を形成する際には、溝G1の深さW1は、溝G2mよりも深く設定する。これにより、本加工の溝G1により、テストカットで形成された溝G1m及びG2mが除去(リセット)される。
【0113】
実施例5及び6においても、観察部MSのアスペクト比に応じた測定限界深さに応じてテストカットを行うことにより、ウェハWの本加工を精度よく行うことが可能になる。
【0114】
なお、上記の実施形態では、観察部MSとして白色干渉顕微鏡を含む例を挙げたが、観察部MSはこれに限定されない。観察部MSは、例えば、形状検出に用いられる形状検出顕微鏡を兼ねるものとしてもよい。観察部MSは、例えば、形状検出に用いられる形状検出顕微鏡を兼ねるものとしてもよいし、アライメント用観察部と白色干渉顕微鏡とを別ユニットとして搭載し、個別に駆動してもよい。
【符号の説明】
【0115】
10…ダイシング装置(ブレードダイサ)、12-1…第1切削部、12-2…第2切削部、14-1…第1スピンドル、14-2…第2スピンドル、16-1…第1ブレード、16-2…第2ブレード、CT…テーブル、50-1…第1駆動部、50-2…第2駆動部、MS…観察部、54…テーブル駆動部、100…制御装置、102…入力部、104…表示部、106…制御基板、10A…ダイシング装置(レーザダイサ)、300…レーザ照射装置、302…レーザ光源、304…照明光学系、308…集光レンズ、350…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14