(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100608
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】温度制御方法、半導体装置の製造方法、温度制御システム、基板処理装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240719BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20240719BHJP
G01K 3/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01L21/31 E
C23C16/52
G01K3/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004719
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 堅斗
(72)【発明者】
【氏名】山口 英人
(72)【発明者】
【氏名】重松 聖也
【テーマコード(参考)】
2F056
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2F056EM05
4K030GA06
4K030HA13
4K030KA39
4K030KA41
4K030LA12
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA20
5F045AD01
5F045AE01
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EK06
5F045EK22
5F045GB05
5F045GB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処理空間内の温度制御方法で、温度センサの運動に伴う温度揺らぎの温度制御への影響を抑制することができる温度制御方法、温度制御システム、基板処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、基板(ウェハ)1を保持する保持具(ボート31)と共に回転可能に設けられる温度センサ(基板熱電対)211の温度検出値を移動平均処理することにより算出される移動平均値を用いて、基板の温度を制御する。移動平均値算出は、ステップ毎に移動平均パラメータにより決定され、ボート回転速度に応じて、移動平均パラメータを設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持具と共に回転可能に設けられる温度センサの温度検出値を移動平均処理することにより算出される移動平均値を用いて、前記基板の温度を制御する温度制御方法。
【請求項2】
更に、複数のステップを含むプロセスレシピを実行可能に構成され、
前記移動平均値は、前記ステップ毎に移動平均パラメータにより決定される
請求項1に記載の温度制御方法。
【請求項3】
前記ステップ毎に任意に設定されるボート回転速度に応じて、前記移動平均パラメータを設定することが可能に構成されている
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項4】
予め取得しておいたボート回転速度を含む回転速度情報に応じて、移動平均パラメータを設定することが可能に構成されている
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項5】
加熱部の制御パラメータを移動平均パラメータに対応して設定する
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項6】
前記移動平均パラメータが設定されたステップでは、温度検出値の移動平均値を用い、前記移動平均パラメータが設定されていないステップでは、温度検出値を用いて、制御演算を行うように構成されている
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項7】
前記保持具が回転するステップでは、温度検出値の移動平均値を用い、前記保持具が回転しないステップでは、温度検出値を用いて、制御演算を行うように構成されている
請求項6に記載の温度制御方法。
【請求項8】
前記温度センサの測温部が、前記基板の周縁より内側に配置されている
請求項1に記載の温度制御方法。
【請求項9】
前記保持具が、前記基板を保持する保持部材を有し、
前記温度センサの測温部が、前記保持部材の近傍に配置されている
請求項1に記載の温度制御方法。
【請求項10】
更に、複数の温度制御領域が設けられ、前記温度制御領域毎に移動平均パラメータが設定可能に構成されている
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項11】
更に、複数の温度帯領域が設けられ、前記温度帯領域毎に移動平均パラメータが設定可能に構成されている
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項12】
温度検出値の変動による温度制御への影響を滑らかにするように構成される
請求項1に記載の温度制御方法。
【請求項13】
前記温度センサにより検出される温度検出値は、前記基板を処理するステップで設定される処理温度と同じになるように構成されている
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項14】
前記温度センサにより検出される温度検出値は、反応管内に前記基板が配置されていない状態で保持される待機温度と同じか、または、より低くなるように構成されている
請求項13記載の温度制御方法。
【請求項15】
請求項1に記載の温度制御方法により基板の温度を制御して処理温度にする工程と、前記処理温度を維持しつつ、前記基板を処理する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【請求項16】
基板を保持する保持具と共に回転可能に設けられる温度センサと、
前記温度センサの温度検出値を移動平均処理することにより移動平均値を算出する移動平均処理部と、
前記温度検出値の移動平均値を用いて前記基板の温度を制御することが可能なように構成される制御部と、
を備えた温度制御システム。
【請求項17】
基板を保持する保持具と共に回転可能に設けられる温度センサと、
前記温度センサの温度検出値を移動平均処理することにより移動平均値を算出する移動平均処理部と、
前記温度検出値の移動平均値を用いて前記基板の温度を制御することが可能なように構成される制御部と、
を備えた温度制御システムを有する基板処理装置。
【請求項18】
基板を支持する保持具と共に回転可能に設けられる温度センサを備えた基板処理装置で実行されるプログラムであって、
前記温度センサの温度検出値を移動平均処理することにより移動平均値を算出する手順と、
算出した移動平均値を用いて前記基板の温度を制御する手順と、
を前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度制御方法、半導体装置の製造方法、温度制御システム、基板処理装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ(以後、基板ともいう)上に所定の処理が行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ボート(以後、保持具ともいう)と共に移動する温度センサにより検出される温度を用いて、処理室の温度を制御する技術が記載されている。但し、基板処理時、この温度センサにより検出される温度を用いて温度制御すると、処理空間内の温度揺らぎを検出してしまい、温度制御に影響が生じてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、処理空間内の温度揺らぎの温度制御への影響を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板を保持する保持具と共に回転可能に設けられる温度センサの温度検出値を移動平均処理することにより算出される移動平均値を用いて、前記基板の温度を制御する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、処理空間内の温度揺らぎの温度制御への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の正面断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の概略図である。
【
図3】
図3(A)は、本開示の一実施形態に係る基板処理装置における基板収納時の状態を示す上面図、
図3(B)は、本開示の一実施形態に係る基板処理装置における基板収納時の状態を示す上面図である。
図3(C)は、本開示の一実施形態に係る基板処理装置における基板収納時の状態を示す側面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る基板処理装置におけるコントローラのハードウェア構成を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における温度コントローラのハードウェア構成を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における温度コントローラの制御ブロック図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理装置で行われる温度制御を説明するための図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における移動平均テーブルの一例を示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理装置で行われる温度制御シーケンスを示すフローチャートである。
【
図10】
図10(A)は、本開示の一実施形態に係る基板処理装置で行われる基板処理シーケンスを説明するための図であり、
図10(B)は、本開示の一実施形態に係る基板処理装置で行われる基板処理シーケンスを説明するための図であり、処理シーケンスの各ステップにおける温度を示すグラフである。
【
図11】本開示の一実施形態に係る基板処理装置におけるボートTCの温度検出値の移動平均値の変化を示すグラフである。
【
図12】本開示の一実施形態に係る基板処理装置においてボートTCの温度検出値の移動平均値を用いて温度制御を行った場合のボートTCの温度検出値及びヒータ出力の変化を示すグラフである。
【
図13】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における複数の移動平均テーブルの一例を示す図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における複数の温度制御テーブルの一例を示す図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における温度帯毎の温度制御テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本開示の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間において、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、各要素が最初に登場した図面において当該要素の説明を行い、以降の図面では特に必要がない限りその説明を省略する。
【0010】
図1に示すように、基板処理装置10は、支持された縦形の反応管としてのプロセスチューブ11を備えており、プロセスチューブ11は互いに同心円に配置された外管としてのアウタチューブ12と内管としてのインナチューブ13とから構成されている。アウタチューブ12は石英(SiO
2)が使用されて、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に一体成形されている。インナチューブ13は上下両端が開口した円筒形状に形成されている。インナチューブ13の筒中空部は、保持具としてのボート31が搬入される処理室14を形成しており、インナチューブ13の下端側(開口空間)はボート31を出し入れするための炉口部(炉口空間)15を構成している。後述するように、ボート31は複数枚の基板(以後、ウエハともいう。)1を長く整列した状態で保持するように構成されている。したがって、インナチューブ13の内径は取り扱う基板1の最大外径(例えば、直径300mm)よりも大きくなるように設定されている。
【0011】
アウタチューブ12とインナチューブ13との間の下端部は、略円筒形状に構築された炉口フランジ部としてのマニホールド16によって気密封止されている。アウタチューブ12及びインナチューブ13の交換等のために、マニホールド16はアウタチューブ12及びインナチューブ13にそれぞれ着脱自在に取り付けられている。マニホールド16が基板処理装置10の筐体2に支持されることによって、プロセスチューブ11は垂直に据え付けられた状態になっている。以後、図ではプロセスチューブ11としてインナチューブ13を省略する場合もある。
【0012】
アウタチューブ12とインナチューブ13との隙間によって排気路17が、横断面形状が一定幅の円形リング形状に構成されている。
図1に示されているように、マニホールド16の側壁の上部には排気管18の一端が接続されており、排気管18は排気路17の最下端部に通じた状態になっている。排気管18の他端には圧力コントローラ21によって制御される排気装置19が接続されており、排気管18の途中には圧力センサ20が接続されている。圧力コントローラ21は圧力センサ20からの測定結果に基づいて排気装置19をフィードバック制御するように構成されている。
【0013】
マニホールド16には下端開口を閉塞する蓋体としてのシールキャップ25が垂直方向下側から接するようになっている。蓋体25はマニホールド16の外径と略等しい円盤形状に構築されており、筐体2の移載室3に設備されたボートカバー37に保護されたボートエレベータ26によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ26はモータ駆動の送りねじ軸装置及びベローズ等によって構成されており、ボートエレベータ26のモータ27は駆動コントローラ28によって制御されるように構成されている。蓋体25の中心線上には回転軸30が配置されて回転自在に支持されており、回転軸30は駆動コントローラ28によって制御されるモータ29により回転駆動されるように構成されている。回転軸30の上端にはボート31が垂直に支持されている。本実施形態では、回転軸30とモータ29により回転機構を構成する。
【0014】
マニホールド16の下方(本実施形態では、蓋体25)にはガス導入管22がインナチューブ13の炉口部15に通じるように配設されており、ガス導入管22には原料ガス供給装置、反応ガス供給装置及び不活性ガス供給装置(以下、ガス供給装置という。)23が接続されている。ガス供給装置23はガス流量コントローラ24によって制御されるように構成されている。ガス導入管22から炉口部15に導入されたガスは、インナチューブ13の処理室14内を流通して排気路17を通って排気管18によって排気される。
【0015】
ボート31は上下で一対の端板32,33と、これらの間に垂直に架設された三本の保持部材としての支柱(柱)34とを備えており、三本の支柱34には多数の保持溝35が長手方向に等間隔に刻まれている。三本の支柱34において同一の段に刻まれた保持溝35同士は、互いに対向して開口するようになっている。ボート31は三本の支柱34の同一段の保持溝35間に基板1を挿入されることにより、複数枚の基板1を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するようになっている。また、三本の支柱34の同一段の保持溝39間に断熱板120を挿入されることにより、複数枚の断熱板120を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するようになっている。
【0016】
つまり、ボート31は、複数枚の基板1が保持される端板32から端板38間の基板処理領域と、複数枚の断熱板120が保持される端板38から端板33間の断熱板領域とを区別するように構成され、基板処理領域の下方に断熱板領域が配置されるよう構成されている。端板38と端板33の間に保持される断熱板120により断熱部36が構成される。
【0017】
回転軸30はボート31を蓋体25の上面から持ち上げた状態に支持するように構成されている。断熱部36は、炉口部15に設けられ、炉口部15を断熱するよう構成されている。また、蓋体25の下にはボート31を回転するモータ29があり、そのモータ29は中空モータ構造となっており、回転軸30がモータ29を貫通している。
【0018】
プロセスチューブ11の外側には、加熱部としてのヒータユニット40が同心円に配置されて、筐体2に支持された状態で設置されている。ヒータユニット40の近傍には、第1温度センサとしてのヒータ熱電対65が設けられ、温度コントローラ64は第1温度センサ65からの測定結果に基づいてヒータユニット40をフィードバック制御するように構成されている。これにより、ヒータユニット40は、ボート31に保持される基板処理領域内の基板1を加熱するよう構成される。なお、第1温度センサ65に関しての詳細は後述する。また、ヒータユニット40はケース41を備えている。ケース41はステンレス鋼(SUS)が使用されて上端閉塞で下端開口の筒形状、好ましくは円筒形状に形成されている。ケース41の内径及び全長はアウタチューブ12の外径及び全長よりも大きく設定されている。
【0019】
ケース41内には断熱構造体42が設置されている。断熱構造体42は、外側に配置された側壁外層(以後、外層ともいう。)と、内側に配置された側壁内層(以後、内層ともいう。)とを備え、筒形状好ましくは円筒形状に形成されており、その円筒体の側壁部43が複数層構造に形成されている。
【0020】
そして、冷却エア90は、内層内に設けられたガス供給流路を流れ、該ガス供給流路108を含む供給経路を介して空間75に供給されるように構成されている。
【0021】
図1に示されているように、断熱構造体42の側壁部43の上端側には天井部としての天井壁部80が空間75を閉じるように被せられている。天井壁部80には空間75の雰囲気を排気する排気経路の一部としての排気孔81が環状に形成されており、排気孔81の上流側端である下端は内側空間75に通じている。排気孔81の下流側端は排気ダクト82に接続されている。そして、空間75に吹き出した冷却エア90は排気孔81及び排気ダクト82によって排気されるように構成されている。
【0022】
図2(
図2中では、処理基板は「1」と表記し、図示を省略)に示すように、ヒータユニット40は縦方向に複数ゾーンに分割制御可能(
図2では5ゾーン分割)なように、ゾーン毎にヒータが設けられているため、複数のヒータが積み重なって構成されている。そして、それぞれのゾーン毎にヒータの温度を測定するヒータ熱電対65(第1温度センサ)が設置されている。
【0023】
アウタチューブ12の内側には、チューブ内部の温度を測定する炉内熱電対(第3温度センサ)66が設置されている。この炉内熱電対66は1つの石英管の中にゾーン数に応じた数の熱電対が収められている構造となっている。そしてその測温点はゾーンに対向した位置に設けられている。
【0024】
基板の温度を測定する基板熱電対(第2温度センサ)211は、ボート31が回転し基板1が回転する時に、基板1と共に回転するように構成されている。基板熱電対211は、基板温度を測定する測温部211bと、測温部を構成する素線を包含するケーブル211cを含む構成となっている。基板温度については後述する。
【0025】
基板熱電対211は、本開示の技術における「保持具と共に回転可能に設けられる温度センサ」の一例である。なお、温度センサは、温度を電気信号として測定できるものであれば良く、熱電対に限らず、測温抵抗体などの他のセンサでも良い。
【0026】
また、ヒータ熱電対65及び炉内熱電対66についても、熱電対の代わりに、温度を電気信号として測定できるものであれば、測温抵抗体などの他のセンサとしても良い。
【0027】
図3(A)~(C)に示すように、第2温度センサとしての基板熱電対211の測温部211bは、基板1の周縁(周端より内側)に配置されている。また、
図3(A)では、基板熱電対211の測温部211bは、支柱34の近傍に配置されている。ここで「支柱34の近傍」とは、支柱34により基板1を保持した状態で、支柱34と基板1の中心との間の中間位置よりも支柱34に近い位置に配置されていることを意味する。なお、
図3(B)に示すように、基板熱電対211が支柱34内に包含されている態様としてもよい。このように、
図3(A)、(B)によれば、基板熱電対211(測温部211b)が基板1を処理する空間に配置されている構成となっているので、第1温度センサ65や第3温度センサよりも基板1に近い空間の温度を測定することができるため、より基板1の温度を正確に測定することができる。なお、ここでは、測温部211bの配置を明確にするために省略されているが、測温部211bを処理空間から隔離するために保護管が設けられる。保護管は例えば石製製である。
【0028】
図2に戻り、回転軸30にはケーブル211cを通す孔が貫通しており、ハーメチックシールなどを使って真空シールをしつつ、ケーブル211cを処理室14の外側(例えば、回転軸30の下部)の送信機221まで引き出せる構造となっている。ケーブル211cは、シールキャップ25の下の送信機221に接続されている。
【0029】
送信機221は回転軸30に固定されており、回転軸30と共に動く構造になっている。送信機221はケーブル211cを介して入力された基板熱電対211からの電気信号(電圧)をデジタル変換し、電波に乗せて無線伝送で送信する。
【0030】
蓋体25の下のエリアに固定された受信機222があり、送信機221が出した信号を受信し、受信したデジタル信号をシリアル通信出力する端子(出力端子)222a、又は受信したデジタル信号をアナログ信号に変換し出力する端子(出力端子)222bがある。このデジタル信号又はアナログ信号の出力信号端子と温度表示器(不図示)又は温度コントローラ64との間をケーブル223で接続し、温度データを温度コントローラ64に入力する。
【0031】
図4に示すように、制御部としての制御用コンピュータであるコントローラ200は、CPU(Central Processing Unit)201及びメモリ202などを含むコンピュータ本体203と、通信部としての通信IF(Inter face)204と、記憶部としての記憶装置205と、操作部としての表示・入力装置206とを有する。つまり、コントローラ200は一般的なコンピュータとしての構成部分を含んでいる。
【0032】
CPU201は、操作部の中枢を構成し、記憶装置205に記憶された制御プログラムを実行し、表示・入力装置206からの指示に従って、記憶装置205に記録されているレシピ(例えば、プロセス用レシピ)を実行する。また、一時記憶部としてのメモリ202は、CPU201のワークエリアとして機能する。
【0033】
通信部204は、圧力コントローラ21、ガス流量コントローラ24、駆動コントローラ28、温度コントローラ64(これらをまとめてサブコントローラということもある。)と電気的に接続されている。コントローラ200は、この通信部204を介してサブコントローラと各部品の動作に関するデータをやり取りすることができる。
【0034】
記憶装置205は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置205内には、基板処理装置10の動作を制御する制御プログラム、後述する処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に記録され、格納されている。プロセスレシピは、後述する処理における各手順をコントローラ200に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピ及び制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。
【0035】
コントローラ200は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD(Compact Disk)等の光ディスク、MO(Magnetic Optical Disk)等の光磁気ディスク、USB(Universal Sirial Bus)メモリ等の半導体メモリ)に記録され、格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置205や外部記憶装置は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置205単体のみを含む場合、外部記憶装置単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
図5に示すように、温度コントローラ64は、制御部64aと、通信インターフェース(IF)64bと、熱電対入力部64cと、制御出力部64dとを有する。
【0037】
制御部64aは、CPU及びメモリ等を含む一般的なコンピュータとしてのハードウェア構成を有し、制御プログラムを実行することによって、通信IF64b及び熱電対入力部64cにより取得した情報を用いて、後述する温度制御アルゴリズムに従った制御演算を実行し、制御出力部64dへ演算結果を出力する。
【0038】
通信IF64bは、上位コントローラであるコントローラ200等と接続するための有線IFと、ボート31に固定された送信機221と接続するための無線IFである受信機222とを有する。
【0039】
通信IF64bは、コントローラ200から目標温度及び制御パラメータ等の情報を受信したり、制御演算結果や温度情報を送信したりする。また、通信IF64bは、ボートエレベータ26の駆動コントローラ28から、ボート位置情報を受信する。また、通信IF64bは、送信機221及び受信機222を介して基板熱電対211の温度を受信する。
【0040】
熱電対入力部64cは、ヒータ熱電対65及び炉内熱電対66から温度に相当する電気信号を入力しデジタル信号に変換して、制御部64aへ出力する。
【0041】
制御出力部64dは、制御部64aから受信した演算結果に基づいて、ヒータユニット40の温度制御を行うためのヒータ制御信号を出力する。
【0042】
以後の説明では、ヒータ熱電対65をヒータTCと呼称する。また、基板熱電対211をボートTCと呼称する。また、炉内熱電対66を炉内TCと呼称する。
【0043】
次に、
図7を用いて、本実施形態における温度コントローラ64の制御ブロック図の一例について説明する。
【0044】
図7中の、「目標温度」は、温度コントローラ64が内包する通信IF64bを介してコントローラ200から得た目標温度のうち、ヒータユニット40の分割された複数のゾーンのうちの制御すべきゾーンに対応する目標温度を示す。「目標温度」は第1の減算器のプラス側入力端に入力される。
【0045】
「ボートTC検知温度」は、制御すべきゾーンに対応する基板温度測定部211が測定する温度(基板近傍の温度)を示す。「ボートTC検知温度」を以後、基板温度と称する。基板温度は、移動平均処理部へ入力され、その後、移動平均処理部の出力が、第1の減算器のマイナス側入力端へ入力される。これによって、基板温度測定部211が測定する基板温度が、対応する目標温度へ制御されるようになっている。
【0046】
移動平均処理部は、予め移動平均区間の情報として離散化サンプル数、または、移動平均時間がパラメータとして設定され、そのパラメータに従って入力されたデータの平均値を出力する処理を実行する。
【0047】
移動平均処理部における計算例を
図7に示す。
図7では、設定パラメータとして移動平均区間を3R秒とした例である。温度データは、例えばここではR秒ごとに離散化されているため、3サンプル分に相当する。「測定温度」は入力されている「基板温度」を示し、「制御温度」は、「移動平均処理部」の出力を示している。
【0048】
図7に示すように、例えば、「制御温度」の「現在」の値であるT0℃は、「測定温度」の「現在」と「1回前」と「2回前」に格納された値の平均値を出力している。そして、「制御温度」の値が更新されるたびに、ここではR秒が経過するたびに、「測定温度」を計算して出力するようになっている。他方、「測定温度」は、現在の測定温度がまず「現在」に格納され、R秒毎に、「現在」から「1回前」へ、「1回前」から「2回前」へ、「2回前」から「3回前」へ、と時間の経過とともに格納場所が移動するように構成されている。
【0049】
移動平均パラメータとして設定する「移動平均区間」は、ボート31の回転速度に合わせて、一回転の時間を基本値として調整することが望ましい。移動平均処理部は、「移動平均区間」を任意に設定することができるように構成されている。「移動平均区間」は、「目標温度」と同様に、コントローラ200にレシピ、もしくはレシピに付随するテーブルとして記録される。温度コントローラ64は、内包する通信IF64bを介してコントローラ200から「移動平均区間」の情報を得ることができるように構成されている。
【0050】
ヒータユニット40が5分割されている場合に、コントローラ200において記録されている移動平均区間のテーブルの例を
図8に示す。
図8に示すように、例えば、移動平均区間のテーブルでは、ゾーン毎に、移動平均区間の情報が管理される。
【0051】
次に、移動平均処理部の動作の一例について説明する。移動平均処理部の動作の一例を示すフローチャートを
図9に示す。
【0052】
ステップS200は、制御部64aが処理を開始するときの開始位置を示す。処理は、通常、一定時間の間隔で繰り返し開始される。
【0053】
ステップS202は、前回の一連の処理を終えてから、現在まで、移動平均区間の設定があったかどうかを判定して分岐する。
【0054】
ステップS204は、ステップS202が真の場合に実行され、レジスタSetに移動平均区間の情報を書きこむ処理である。レジスタSetは、コントローラ200から入力して設定された移動平均区間の情報を記憶するものであり、例えばここでは、設定された移動平均区間に対応するサンプル数を示す。
【0055】
ステップS206、ステップS208は、レジスタSetとレジスタActを比較判定して分岐する。それぞれ、ステップS206はSet>Actの大小判定を行い、ステップS208はSet<Actの大小判定をする。これらのステップの組合せにより、Set>Actの場合はステップS210へ、Set<Actの場合はステップS212へ、Set=Actの場合はステップS214へ、分岐するように構成されている。ここで、レジスタActは、現在処理中の移動平均区間の情報を記憶するものであり、例えばここでは、実際に処理している移動平均区間に対応するサンプル数を示す。
【0056】
ステップS210は、レジスタActを1だけ増やす。ステップS212は、レジスタActを1だけ減らす。ステップS214は、レジスタActが示す移動平均区間の情報に従って入力データの平均値を算出し出力する。この処理には、
図7で説明したような、測定温度データの格納場所を移動する処理を含む。ステップS216は、処理の終了位置を示す。
【0057】
これらのステップに従って処理することにより、レジスタSetとレジスタActの値に違いがあった場合、Set>Actの場合はステップS206及びステップS210を経て、Set<Actの場合はステップS206、ステップS208、及び、ステップS212を経て、一連の処理を繰り返すことによって、時間の経過とともにActはSetへ少しずつ近づき、やがて一致するように構成されている。そして、Setに新たな変更がない限り、ステップS202、ステップS206、ステップS208、ステップS214の処理順で、Setに一致したActの値に従って、平均値を出力するように構成されている。
【0058】
また、新たな移動平均区間の設定があり、ステップS202、ステップS204の順で、Setに新たな変更があったとしても、直ちに新たな移動平均区間の設定に従った計算をすることはなく、少しずつSetに近づいていくActの値に従って、平均値を出力するように構成されている。
【0059】
このような処理とすることにより、移動平均区間の設定変更があっても、その設定を少しずつ反映する様になっているため、移動平均処理部の出力においてジャンプ(すなわち、短時間に連続性なく変化すること)が発生しないように構成することができる。
【0060】
設定変更した移動平均区間を直ちに平均値計算へ反映することによる移動平均処理部の出力のジャンプは、温度制御が不安定になる原因になる場合があるので、それを防止することができる。
【0061】
図6に戻り、第1の減算器は、目標温度と移動平均処理部の出力との偏差を計算して、PID演算部1へ出力する。
【0062】
PID演算部1は、第1の減算器からの偏差が入力され、公知のPID演算を実施する。PID演算結果は、第2の減算器のプラス側入力端に入力される。
【0063】
「ヒータTC検知温度」は、制御すべきゾーンに対応するヒータ熱電対65が測定するヒータ温度を示す。ヒータ温度は、第2の減算器のマイナス側入力端に入力される。
【0064】
第2の減算器は、PID演算部1の演算結果とヒータの温度との偏差を計算して、PID演算部2へ出力する。
【0065】
PID演算部2は、第2の減算器からの偏差を入力され、公知のPID演算を実施する。PID演算部2で使用されるPIDパラメータはPID演算部1で使用されるものとは異なる別のものが使用される。PID演算結果は、「操作量」として出力される。
【0066】
なお、PID演算部1及びPID演算部2においてPID演算を行う際のPIDパラメータは、調整可能であることが望ましい。PIDパラメータは、本開示の技術における「加熱部の制御パラメータ」の一例である。PID演算部1及びPID演算部2は、PIDパラメータを任意に設定することができるように構成されている。PIDパラメータは、「目標温度」と同様に、コントローラ200にレシピ、もしくはレシピに付随するテーブルとして記録される。温度コントローラ64は、内包する通信IF64bを介してコントローラ200からPIDパラメータの情報を得ることができるように構成されている。
【0067】
「操作量」は、制御すべきゾーンに対応する制御演算結果として、制御出力部64d(
図5)へ出力される値を示している。この値は、制御出力部64d(
図5)を介してヒータユニット40の制御すべきゾーンを加熱する信号へと変換され、出力されるように構成されている。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態の温度コントローラ64は、いわゆるカスケード制御と呼ばれる制御アルゴリズムに従った制御演算を実行し、基板温度測定部211が測定する基板温度が対応する目標温度へ一致するように、制御されるように構成されている。
【0069】
また、温度コントローラ64は、移動平均処理部の出力が、第1の減算器のマイナス側入力端へ入力されることにより、例え、ヒータユニット40の水平方向の断面に温度分布が存在し、円周方向に生じる温度の起伏をボートTCが検知して温度揺らぎが発生しても、移動平均処理部が温度揺らぎを平滑化し、その揺らぎを抑制して出力するため、ヒータ出力が不安定にならず、安定的に制御することができる。
【0070】
なお、移動平均処理部の動作については、上記態様に限らず、その他の高度な制御アルゴリズムによって制御される等、種々変更可能である。
【0071】
次に、
図10を用いて、基板処理装置で行われる基板処理シーケンスの一例について説明する。
図10(A)は基板処理シーケンスを示すフローチャートである。
図10(B)は処理シーケンスの各ステップS101~S104における炉内温度を示すグラフである。
【0072】
ステップS101(待機ステップ)は、炉(処理室14)内の温度を待機温度T0に安定される処理である。ステップS101では基板1はまだ炉内に投入されていない。
【0073】
ステップS102(ボートロードステップ)は、ボート31に保持された基板1を炉内へ投入する処理である。ボート31及び基板1の温度はこの時点で炉内温度T0より低いため、かつ、基板1を炉内へ投入した結果、炉外の雰囲気(室温)が炉内に導入されるため、炉内の温度は一時的にT0より低くなる。その後、温度コントローラ64による制御により炉内の温度は若干の時間を経て再びT0に安定する。本図では処理基板を炉内へ投入した後、及び、次のステップS103の目標温度をステップS101と等しく図示されているが、ステップS103の要求条件に対応して投入後の目標温度が異なる場合もある。
【0074】
ステップS103(処理ステップ)は、基板1に所定の処理を施すために炉内の温度を目標温度T0で維持して安定させる処理である。
【0075】
ステップS104(ボートアンロードステップ)は、処理が施された基板1をボート31と共に炉内から引き出す処理である。
【0076】
処理を施すべき未処理の基板1が残っている場合には、処理済基板1をボート31から退避させ、代わりに未処理基板1と入れ替えられ、これらステップS101~S104の一連の処理が繰り返される。
【0077】
これらのステップは、目標温度に対し、炉内温度が予め定められた微小温度範囲にあり、かつ、予め定められた時間以上その状態が続くといった安定状態を得た後に実施するように構成されている。
【0078】
<効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0079】
上記で説明の通り、本実施形態の基板処理装置10は、基板1を保持するボート31に、ボート31と共に回転可能に設けられる基板熱電対211等の温度センサの温度検出値を移動平均処理することにより算出される移動平均値を用いて、基板1の温度を制御する。
【0080】
ヒータユニット40の水平方向の断面には温度分布が存在するため、そして、円周方向に生じる温度の起伏をボートTCが検知するため、ボートTCによる検知温度は温度揺らぎが発生する。
【0081】
移動平均値を用いずに基板1の温度を制御した場合、温度揺らぎのためにうまく温度制御できない場合があった。すなわち、従来の制御では、検知温度をそのまま制御温度として温度制御を行うため、ボートTCの検知温度が温度揺らぎによって不安定となると、ヒータ出力も不安定となる場合があった。
【0082】
これに対して、本実施形態の基板処理装置10では、移動平均値を用いて基板1の温度を制御しているため、ヒータ出力を安定させることができる。
【0083】
図11は、ボートTCの温度検出値の移動平均値の変化を示すグラフであり、グラフの横軸は時間[分(min)]、縦軸は温度[℃]を示している。
図11に示すように、ボートTCの温度検出値の移動平均値は、振動が抑制され、滑らかな特性を有している。
【0084】
図12は、ボートTCの温度検出値の移動平均値を用いて温度制御を行った場合のボートTCの温度検出値及びヒータ出力の変化を示すグラフであり、グラフの横軸は時間[分(min)]、縦軸は温度[℃]及びヒータ出力[%]を示している。なお、ヒータ出力[%]は、ヒータの最大出力に対する現在のヒータ出力の割合を示す。
図12に示すように、移動平均値を用いて温度制御を行うことにより、ヒータ出力が安定していることが分かる。
【0085】
本実施形態の基板処理装置10においては、更に、複数のステップを含むプロセスレシピを実行可能に構成され、移動平均値は、ステップ毎に移動平均パラメータにより決定されるように構成してもよい。
【0086】
本態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本態様においては、さらに、プロセスレシピのステップ毎に移動平均値を任意に設定できるので、温度検出値の移動平均処理を用いる場合と温度検出値をそのまま使用する場合を組み合わせて高精度な温度制御が可能となる。
【0087】
また、基板処理装置10においては、制御温度帯が高くなる程、また、回転速度が遅くなる程、ボートTCの温度検出値の振動幅が大きくなる傾向がある。
【0088】
そのため、ステップ毎に任意に設定されるボート31の回転速度に応じて、移動平均パラメータを設定することが可能に構成してもよいし、予め取得しておいたボート31の回転速度を含む回転速度情報に応じて、移動平均パラメータを設定することが可能に構成してもよい。
【0089】
回転速度又は回転速度情報に応じて移動平均パラメータを設定する場合には、例えば、
図13に示すように、回転速度又は回転速度情報毎に異なる移動平均パラメータが設定された複数のテーブルを用意し、回転速度又は回転速度情報に応じて、参照するテーブルを切り替えるようにすればよい。通常のプロセスでは、回転速度は0.5以上3.0以下であるため、移動平均パラメータとしては、20以上120以下が好ましい。回転速度が大きすぎると、基板1がズレ等を生じる恐れがあり、現状は、回転速度は3.0rpmが限界になっており、回転速度が0.5より小さくなると、回転のメリットである基板1に供給される処理ガス等が、基板1の面愛に均等に渡らなくなる恐れがある。
【0090】
これらの態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、これら態様においては、さらに、ボート31の回転速度に応じて移動平均パラメータを設定することができるため、的確な移動平均処理を行うことができる。従って、回転に伴う揺らぎが生じても、高精度な温度制御が可能である。
【0091】
また、ヒータユニット40の制御パラメータ(例えば、PIDパラメータ)を移動平均パラメータに対応して設定するように構成してもよい。移動平均パラメータに応じて制御パラメータを設定する場合には、例えば、
図14に示すように、移動平均パラメータ毎に異なる制御パラメータが設定された複数のテーブルを用意し、移動平均パラメータに応じて、参照するテーブルを切り替えるようにすればよい。
【0092】
本態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本態様においては、さらに、制御パラメータと移動平均パラメータを関連付けることにより、より高精度な温度制御が可能となる。
【0093】
また、移動平均パラメータが設定されたステップでは、温度検出値の移動平均値を用い、移動平均パラメータが設定されていないステップでは、温度検出値を用いて、制御演算を行うように構成してもよい。この場合、ボート31が回転するステップでは、温度検出値の移動平均値を用い、ボート31が回転しないステップでは、温度検出値を用いて、制御演算を行うように構成してもよい。
【0094】
これらの態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、これら態様においては、さらに、ボート31が回転すると共に温度センサが回転して揺らぎが生じても、温度検出値の移動平均処理をおこなうため、温度揺らぎが抑制される。
【0095】
また、温度センサの測温部(上記の実施形態では基板熱電対211の測温部211b)を、基板1の周縁より内側に配置してもよい。また、ボート31が、基板1を保持する保持部材(上記の実施形態では支柱34)を有し、温度センサの測温部を、保持部材の近傍に配置してもよい。
【0096】
これらの態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、これら態様においては、さらに、温度センサが基板1を処理する空間に配置されているので、基板1の温度を正確に測定することができる。
【0097】
また、更に、複数の温度制御領域が設けられ、温度制御領域毎に移動平均パラメータ及び制御パラメータが設定可能に構成してもよいし、更に、複数の温度帯領域が設けられ、温度帯領域毎に移動平均パラメータ及び制御パラメータが設定可能に構成してもよい。
【0098】
温度制御領域又は温度帯領域に応じて移動平均パラメータ及び制御パラメータを設定する場合には、例えば、
図15に示すように、温度制御領域又は温度帯領域毎に異なる移動平均パラメータ及び制御パラメータが設定された複数のテーブルを用意し、温度制御領域又は温度帯領域に応じて、参照するテーブルを切り替えるようにすればよい。このような態様としても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0099】
また、温度検出値の変動による温度制御への影響を滑らかにするように構成してもよい。本態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本態様においては、さらに、温度検出値に変動が生じても、移動平均処理によりその変動を少しずつ反映するため、移動平均処理部の出力のジャンプの発生をなくし、安定した温度制御が可能となる。
【0100】
また、温度センサにより検出される温度検出値は、基板1を処理するステップで設定される処理温度と同じになるように構成してもよい。この場合、温度センサにより検出される温度検出値は、プロセスチューブ11内に基板1が配置されていない状態で保持される待機温度と同じか、または、より低くなるように構成してもよい。
【0101】
なお、本明細書における処理温度とは、基板1の温度または処理室14内の温度のことを意味する。
【0102】
このように、基板1が配置されていない状態で保持される待機温度と同じか、更により低いような低温領域におけるプロセスにおいても、高精度な温度制御が可能である。
【0103】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。また、明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0104】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて所定の処理する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、一度に1枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0106】
また、本開示の実施形態における基板処理装置は、半導体を製造する半導体製造装置だけではなく、LCD(Liquid Crystal Display)装置の様なガラス基板を処理する装置でも適用可能である。また、基板に対する処理は、例えば、CVD、PVD、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理等を含む。また、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置等の各種基板処理装置にも適用可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0107】
1 基板(ウエハ)
31 ボート(保持具)
64 温度コントローラ
211 基板熱電対(温度センサ)