(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100705
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】塊茎処理装置
(51)【国際特許分類】
A01B 39/18 20060101AFI20240719BHJP
A01M 21/02 20060101ALI20240719BHJP
A01B 33/08 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A01B39/18 Z
A01M21/02
A01B33/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218799
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023004601
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業のうち農林水産研究の推進(委託プロジェクト研究)(有機農業推進のための深水管理による省力的な雑草抑制技術の開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】国立 卓生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】浅見 秀則
(72)【発明者】
【氏名】小林 英和
(72)【発明者】
【氏名】橘 雅明
【テーマコード(参考)】
2B033
2B034
2B121
【Fターム(参考)】
2B033AA04
2B033AB01
2B033AB11
2B033EA08
2B033EA12
2B033EA13
2B033ED05
2B033ED06
2B033ED10
2B034AA07
2B034BA07
2B034BB01
2B034BC06
2B034HA16
2B034HA24
2B034HB02
2B034HB14
2B034HB17
2B034HB27
2B034HB46
2B034HB50
2B121AA19
2B121BB21
2B121BB32
2B121BB35
(57)【要約】
【課題】水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎からの発芽を防止することができる塊茎処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明の塊茎処理装置は、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎Aを処理し、土とともに前記塊茎Aをすくい上げる掘り取り部10と、前記掘り取り部10ですくい上げた前記塊茎Aを前記土と粗分離するコンベア部20と、前記コンベア部20から搬送される前記塊茎Aを圧壊するローラ部30とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎を処理する塊茎処理装置であって、
土とともに前記塊茎をすくい上げる掘り取り部と、
前記掘り取り部ですくい上げた前記塊茎を前記土と粗分離するコンベア部と、
前記コンベア部から搬送される前記塊茎を圧壊するローラ部と
を有する
ことを特徴とする塊茎処理装置。
【請求項2】
前記土を撹拌するロータリの後方に取り付けられ、前記ロータリによって代掻きを行う際に用いられ、
前記掘り取り部では、前記ロータリによって撹拌された泥をすくい上げ、
前記コンベア部では、前記塊茎より大きく前記泥ととともにすくい上げられる石を前記ローラ部に搬送されないように傾斜によって落下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項3】
前記コンベア部を、前記掘り取り部側を低く、前記ローラ部側を高くして傾斜させる
ことを特徴とする請求項2に記載の塊茎処理装置。
【請求項4】
前記コンベア部の上方に回転体部を有し、
前記コンベア部に前記土とともにすくい上げられる稲株などの有機残渣物を、前記回転体部によって前記ローラ部に搬送されないように棒によりはね飛ばす
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項5】
前記ローラ部を、
進行方向となる前方に配置する第1ローラと、
前記第1ローラより後方に配置する第2ローラとで構成し、
前記第2ローラを前記第1ローラより大径とし、
前記第2ローラを、前記進行方向となるように回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項6】
前記ローラ部の外周面に、前記塊茎よりも小さな孔を有する網材を設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項7】
前記コンベア部の載置面に、前記塊茎よりも小さな孔を有するメッシュベルトを用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項8】
前記コンベア部の載置面に、前記塊茎よりも小さな孔を有する小孔形成材を用い、前記小孔形成材上部の幅方向に複数の搬送バーを設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項9】
前記コンベア部の下方にそりを設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項10】
前記掘り取り部、前記コンベア部、及び前記ローラ部を支える走行用車輪を取り外し可能に設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項11】
前記掘り取り部の下方に掘り取り部用そりを設け、
前記掘り取り部の前端を、前記掘り取り部用そりの底面よりも高い位置とする
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【請求項12】
前記掘り取り部には、長孔形成材を用い、
前記掘り取り部用そりには、進行方向を長手方向とするスリットを形成する
ことを特徴とする請求項11に記載の塊茎処理装置。
【請求項13】
前記掘り取り部の上方に掘り取り部用ロータリを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の塊茎処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎を処理する塊茎処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を掲げ、有機農業の拡大が急務となってい
る。有機農業の拡大において、除草作業の省力化は大きな課題であり、水稲作では一年生
雑草を対象にした機械除草技術の開発が進められているものの、塊茎を形成する水田多年
生雑草への対応は困難で、効率的な防除技術は確立されていない。
特許文献1や特許文献2は機械除草機を提案しており、水稲の条間をロータなどで除草し、株間をツースなどによって除草し、また、条間について土中数センチに雑草を埋没させ、株間については稲を傷つけないように田面の表層を撹拌して発芽から生育初期の雑草を浮かせて除去するものがある。
また、畑用の雑草処理装置としては、ロータリで土ごと掘り上げ、ふるいによって分離するもの(特許文献3)や、ロータリと同時に火炎により焼却するもの(特許文献4)が提案されている。
また、雑草種子の発芽を抑制する方法としては、有機栽培では深水管理によって土壌表面に還元層を作る方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-59286号公報
【特許文献1】特開2020-39291号公報
【特許文献1】実用新案登録第3211869号公報
【特許文献1】特許第3504083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水田用の既存技術については、土中に埋没している多年生雑草への効果が低い。また、条間の多年生雑草の塊茎を埋没させても、再び出芽することがある。
畑用の既存技術については、湛水状態では利用困難である。また、落水時に使用した場合、特許文献3については、水田土壌は粘土質であることが多く、ふるい分けができない。
特許文献4については、火炎に要する燃料コストが多大となる。
また、深水管理についても、土壌の深い部分にある塊茎から出芽する多年生雑草には効果がない。
【0005】
本発明は、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎からの発芽を防止することができる塊茎処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の塊茎処理装置は、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎Aを処理する塊茎処理装置であって、土とともに前記塊茎Aをすくい上げる掘り取り部10と、前記掘り取り部10ですくい上げた前記塊茎Aを前記土と粗分離するコンベア部20と、前記コンベア部20から搬送される前記塊茎Aを圧壊するローラ部30とを有することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記土を撹拌するロータリ2の後方に取り付けられ、前記ロータリ2によって代掻きを行う際に用いられ、前記掘り取り部10では、前記ロータリ2によって撹拌された泥をすくい上げ、前記コンベア部20では、前記塊茎Aより大きく前記泥ととともにすくい上げられる石Bを前記ローラ部30に搬送されないように傾斜によって落下させることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の塊茎処理装置において、前記コンベア部20を、前記掘り取り部10側を低く、前記ローラ部30側を高くして傾斜させることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記コンベア部20の上方に回転体部50を有し、前記コンベア部20に前記土とともにすくい上げられる稲株などの有機残渣物Cを、前記回転体部50によって前記ローラ部30に搬送されないように棒52によりはね飛ばすことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記ローラ部30を、進行方向となる前方に配置する第1ローラ31と、前記第1ローラ31より後方に配置する第2ローラ32とで構成し、前記第2ローラ32を前記第1ローラ31より大径とし、前記第2ローラ32を、前記進行方向となるように回転させることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記ローラ部30の外周面に、前記塊茎Aよりも小さな孔を有する網材33を設けることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記コンベア部20の載置面に、前記塊茎Aよりも小さな孔を有するメッシュベルト21を用いることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記コンベア部20の載置面に、前記塊茎Aよりも小さな孔を有する小孔形成材22を用い、前記小孔形成材22上部の幅方向に複数の搬送バー23を設けることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記コンベア部20の下方にそり40を設けることを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記掘り取り部10、前記コンベア部20、及び前記ローラ部30を支える走行用車輪60を取り外し可能に設けることを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記掘り取り部10の下方に掘り取り部用そり11を設け、前記掘り取り部10の前端10aを、前記掘り取り部用そり11の底面よりも高い位置とすることを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項11に記載の塊茎処理装置において、前記掘り取り部10には、長孔形成材を用い、前記掘り取り部用そり11には、進行方向を長手方向とするスリットを形成することを特徴とする。
請求項13記載の本発明は、請求項1に記載の塊茎処理装置において、前記掘り取り部10の上方に掘り取り部用ロータリ13を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塊茎処理装置によれば、コンベア部によってある程度の土を除去することで、ローラ部で塊茎を効率よく押しつぶすことができ、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎からの発芽を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による塊茎処理装置の構成図
【
図6】
図2(c)、
図2(d)に示すコンベア部における小孔形成材及び搬送バーの最適な構成を示す説明図
【
図7】本発明の他の実施例による掘り取り部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による塊茎処理装置は、土とともに塊茎をすくい上げる掘り取り部と、掘り取り部ですくい上げた塊茎を土と粗分離するコンベア部と、コンベア部から搬送される塊茎を圧壊するローラ部とを有するものである。本実施の形態によれば、コンベア部によってある程度の土を除去することで、ローラ部で塊茎を効率よく押しつぶすことができ、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎からの発芽を防止することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、土を撹拌するロータリの後方に取り付けられ、ロータリによって代掻きを行う際に用いられ、掘り取り部では、ロータリによって撹拌された泥をすくい上げ、コンベア部では、塊茎より大きく泥ととともにすくい上げられる石をローラ部に搬送されないように傾斜によって落下させるものである。本実施の形態によれば、塊茎より大きく泥ととともにすくい上げられる石を傾斜によってコンベア部から落下させることで、塊茎より大きな石によってローラ部の回転が妨げられたり、塊茎の圧壊への支障を防止できる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による塊茎処理装置において、コンベア部を、掘り取り部側を低く、ローラ部側を高くして傾斜させるものである。本実施の形態によれば、塊茎より大きな石がローラ部に搬送されることを防止できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、コンベア部の上方に回転体部を有し、コンベア部に土とともにすくい上げられる稲株などの有機残渣物を、回転体部によってローラ部に搬送されないように棒によりはね飛ばすものである。本実施の形態によれば、稲株などの有機残渣物によってローラ部の回転が妨げられたり、塊茎の圧壊への支障を防止できる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、ローラ部を、進行方向となる前方に配置する第1ローラと、第1ローラより後方に配置する第2ローラとで構成し、第2ローラを第1ローラより大径とし、第2ローラを、進行方向となるように回転させるものである。本実施の形態によれば、進行方向に対して逆回転となる第1ローラを小径とすることで、走行に対する抵抗を軽減できる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、ローラ部の外周面に、塊茎よりも小さな孔を有する網材を設けるものである。本実施の形態によれば、塊茎とともに搬送される土の排出を促し、土による塊茎の圧壊への支障を防止できる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、コンベア部の載置面に、塊茎よりも小さな孔を有するメッシュベルトを用いるものである。本実施の形態によれば、塊茎の保持機能を高めて塊茎をローラ部に搬送できるとともに、塊茎よりも大きな石をコンベア部から落下させることができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、コンベア部の載置面に、塊茎よりも小さな孔を有する小孔形成材を用い、小孔形成材上部の幅方向に複数の搬送バーを設けるものである。本実施の形態によれば、搬送バーによって塊茎の保持機能を高めて塊茎をローラ部に搬送できるとともに、塊茎よりも大きな石をコンベア部から落下させることができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、コンベア部の下方にそりを設けるものである。本実施の形態によれば、そりによってコンベア部を支えることができ、コンベアの重量によるローラ部の回転負荷を低減でき、ローラ部での土の表面の均平化を行うことができる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、掘り取り部、コンベア部、及びローラ部を支える走行用車輪を取り外し可能に設けるものである。本実施の形態によれば、走行用車輪を取り付けることで、圃場間移動を容易に行える。
【0019】
本発明の第11の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、掘り取り部の下方に掘り取り部用そりを設け、掘り取り部の前端を、掘り取り部用そりの底面よりも高い位置とするものである。本実施の形態によれば、掘り取り部が硬盤層に刺さり込むことを防止できるとともに、硬盤層付近の硬い土塊をコンベア部に導くことを防止できる。
【0020】
本発明の第12の実施の形態は、第11の実施の形態による塊茎処理装置において、掘り取り部には、長孔形成材を用い、掘り取り部用そりには、進行方向を長手方向とするスリットを形成するものである。本実施の形態によれば、長孔形成材によって掘り取り部から泥水を落下させ、スリットによって掘り取り部用そりの底面と硬盤層との間で塊茎を圧壊できる効果を期待できる。
【0021】
本発明の第13の実施の形態は、第1の実施の形態による塊茎処理装置において、掘り取り部の上方に掘り取り部用ロータリを有するものである。本実施の形態によれば、掘り取り部用ロータリによって、泥状の土をコンベア部に送ることができるとともに、大きな土塊を砕くことができる。
【実施例0022】
以下本発明の一実施例による塊茎処理装置について説明する。
図1は本実施例による塊茎処理装置の構成図である。
本実施例による塊茎処理装置は、土とともに塊茎をすくい上げる掘り取り部10と、掘り取り部10ですくい上げた塊茎を土と粗分離するコンベア部20と、コンベア部20から搬送される塊茎を圧壊するローラ部30と、コンベア部20の下方に設けるそり40とを有し、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎を処理する。
本実施例による塊茎処理装置は、更に、コンベア部20の上方に回転体部50を有していることが好ましい。
多年草雑草の塊茎は、例えば、オモダカ塊茎やクログワイ塊茎である。
本実施例による塊茎処理装置は、好ましくは、トラクタ1に取り付けられて土を撹拌するロータリ2の後方に取り付けられて用いられる。
また、本実施例による塊茎処理装置は、ロータリ2によって代掻きを行う際に、代掻き作業とともに用いられることが好ましい。
代掻き作業とともに用いられる場合には、掘り取り部10では、ロータリ2によって撹拌された泥をすくい上げ、コンベア部20では、塊茎より大きく泥ととともにすくい上げられる石をローラ部30に搬送されないように傾斜によって落下させる。
コンベア部20は、掘り取り部10側を低く、ローラ部30側を高くして傾斜させている。
このように、コンベア部20によってある程度の土を除去することで、ローラ部30で塊茎を効率よく押しつぶすことができ、水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎からの発芽を防止することができる。
また、塊茎より大きく泥ととともにすくい上げられる石を傾斜によってコンベア部20から落下させることで、塊茎より大きな石によってローラ部30の回転が妨げられたり、塊茎の圧壊への支障を防止できる。
また、コンベア部20は、掘り取り部10側を低く、ローラ部30側を高くして傾斜させることで、塊茎より大きな石がローラ部30に搬送されることを有効に防止できる。
【0023】
図2は同塊茎処理装置のコンベア部を示す構成図である。
図2(a)はコンベア部の第1実施例の平面図、
図2(b)はコンベア部の第1実施例の側面図である。
コンベア部20の第1実施例では、コンベア部20の載置面に、塊茎Aよりも小さな孔を有するメッシュベルト21を用いている。
メッシュベルト21を用いることで、土又は泥と塊茎Aを粗分離し、塊茎Aの保持機能を高めて塊茎Aをローラ部30に搬送できるとともに、塊茎Aよりも大きな石Bをコンベア部20から落下させることができる。
【0024】
図2(c)はコンベア部の第2実施例の平面図、
図2(d)はコンベア部の第2実施例の側面図である。
コンベア部20の第2実施例では、コンベア部20の載置面に、塊茎Aよりも小さな孔を有する小孔形成材22を用いるとともに、小孔形成材22上部の幅方向に複数の搬送バー23を設けている。
小孔形成材22を用いるとともに複数の搬送バー23を設けることで、土又は泥と塊茎Aを粗分離し、搬送バー23によって塊茎Aの保持機能を更に高めて塊茎Aをローラ部30に搬送できるとともに、塊茎Aよりも大きな石Bをコンベア部20から落下させることができる。
なお、
図2に示すように、コンベア部20の載置面に、小孔形成材22を用いることでコンベア部20の軽量化も図ることができる。
【0025】
図3は同塊茎処理装置のローラ部を示す構成図である。
図3(a)はローラ部の平面図、
図3(b)はローラ部の側面図、
図3(c)はローラ部の要部斜視図、
図3(d)は
図3(c)の更に要部拡大図である。
ローラ部30は、進行方向となる前方に配置する第1ローラ31と、第1ローラ31より後方に配置する第2ローラ32とで構成する。水田の土中に埋没している多年草雑草の塊茎Aは、第1ローラ31と第2ローラ32との間で押しつぶされる。
第2ローラ32は、第1ローラ31より大径とし、第2ローラ32は、進行方向となるように回転させる。このように、進行方向に対して逆回転となる第1ローラ31を小径とすることで、第1ローラ31の回転による走行に対する抵抗を軽減できる。
第1ローラ31及び第2ローラ32の外周面には、塊茎Aよりも小さな孔を有する網材33を設けている。網材33を設けることで、塊茎Aとともに搬送される土の排出を促し、土による塊茎Aの圧壊への支障を防止できる。
【0026】
図4は同塊茎処理装置の回転体部を示す構成図である。
図4(a)は回転体部の平面図、
図4(b)は回転体部の側面図である。
回転体部50は、回転軸51に径方向に複数の棒52が放射状に取り付けられており、コンベア部20のローラ部30側の上方に配置している。このように、回転体部50を有することで、コンベア部20に土とともにすくい上げられる稲株などの有機残渣物Cを、回転体部50の棒52によってローラ部30に搬送されないように棒52によりはね飛ばすことができる。従って、稲株などの有機残渣物Cによってローラ部30の回転が妨げられたり、塊茎Aの圧壊への支障を防止できる。
なお、コンベア部20の下流側端部は、第1ローラ31の軸心よりも後方で第2ローラ32の軸心よりも前方に位置する。
【0027】
図5は同塊茎処理装置の使用状態を示す構成図であり、
図5(a)は代掻き作業とともに塊茎の処理を行っている状態を示し、
図5(b)は同塊茎処理装置の圃場間移動時の状態を示している。
図5(a)に示すように、水田の土は、耕うん後の柔らかい作土層Xの下に硬い硬盤層Yがある。代掻き時は、通常、トラクタ1は硬盤層Yの上を走行し、ロータリ2は作土層Xを撹拌する。コンベア部20の下方にそり40を設けることで、そり40によってコンベア部20を支えることができ、コンベア部20の重量によるローラ部30の回転負荷を低減でき、ローラ部30での作土層Xの表面の均平化を行うことができる。
なお、そり40では、コンベア部20だけではなく、ローラ部30や回転体部50の重量の一部も支えることができる。
図5(b)に示すように、掘り取り部10、コンベア部20、及びローラ部30を支える走行用車輪60を取り外し可能に設けることができる。走行用車輪60を取り付けることで、同塊茎処理装置の圃場間移動を容易に行える。
なお、本実施例では、塊茎処理装置をロータリ2の後方に取り付けて用いる場合を説明したが、塊茎処理装置をトラクタ1に直接取り付けて用いることができる。また、トラクタ1に取り付けることなく、塊茎処理装置をクローラなどによって自走させてもよい。
【0028】
図6は
図2(c)、
図2(d)に示すコンベア部における小孔形成材及び搬送バーの最適な構成を示す説明図である。
図6(a)はオモダカの塊茎の短辺長さを示す実測値データ、
図6(b)はオモダカの塊茎の長辺長さを示す実測値データ、
図6(c)は小孔形成材の要部拡大図、
図6(d)は搬送バーを示す要部側面図、
図6(e)はコンベア部における塊茎の搬送状態を示す側面図である。
【0029】
図6(a)に示すオモダカの塊茎の短辺長さから、
図6(c)に示すように、コンベア部20における小孔形成材22の孔径は1mm~5mmの範囲が好ましく、3mm程度以下とすることが更に好ましい。なお、小孔形成材22には、パンチングメタルや網を用いることができ、小孔は必ずしも円形である必要はなく、矩形や多角形であってもよい。
同様に、
図6(a)に示すオモダカの塊茎の短辺長さから、
図6(d)に示すように、コンベア部20における搬送バー23の高さは10mm以上とすることが好ましく、10mm~25mmの範囲、更には10mm~20mmの範囲とすることが好ましい。
【0030】
なお、
図6では、オモダカの塊茎の実測値データをもとに設計しているが、クログワイの塊茎は、オモダカの塊茎よりも大きさのバラつきが少なく、オモダカの大きさの範囲内となるため、上記の設計によりクログワイの塊茎にも適用することができる。
また、
図6(a)及び
図6(b)に示すオモダカの塊茎の長さから、第1ローラ31の直径は50mm以上であることが好ましく、50mm~200mmの範囲が適している。
【0031】
図7は本発明の他の実施例による掘り取り部を示す斜視図であり、
図7(a)は掘り取り部の要部斜視図、
図7(b)は掘り取り部の全体を示す斜視図である。
【0032】
図7(a)に示すように、本実施例による掘り取り部10は、掘り取り部10の下方に掘り取り部用そり11を設けている。掘り取り部用そり11は、そり前端部11aとそり底面部11bとから形成している。そり前端部11aの後端は、そり底面部11bに連続するとともに、そり前端部11aの前端は、そり底面部11bよりも高い位置としている。そして、そり前端部11aの前端は、掘り取り部10の前端10aに接続している。
従って、掘り取り部10の前端10aは、そり底面部11bの底面よりも高い位置となる。
【0033】
このように、掘り取り部10の前端10aを、掘り取り部用そり11の底面よりも高い位置とすることで、掘り取り部10が硬盤層Y(
図5(a)参照)に刺さり込むことを防止できるとともに、硬盤層Y付近の硬い土塊をコンベア部20に導くことを防止できる。
また、掘り取り部10の前端10aを、掘り取り部用そり11の底面よりも高い位置とすることで、掘り取り部10では、耕深よりも浅い部分の土をすくい上げることになり、コンベア部20での運土量bを減らすことができる。
掘り取り部10には、長孔形成材を用いている。すなわち、掘り取り部10には、走行方向を長手方向とする長孔を形成している。従って、長孔形成材によって掘り取り部10から泥水を落下させることができ、コンベア部20での運土量bを減らすことができる。なお、長孔形成材には、長孔パンチングメタルやスリット形成材を用いることができる。
また、掘り取り部10の前端10aは、塊茎の回収漏れを防ぐためには
図7に示すような直刃とすることが好ましい。
掘り取り部用そり11には、進行方向を長手方向とするスリットを形成している。従って、スリットによって掘り取り部用そり11の底面と硬盤層Yとの間で塊茎を圧壊できる効果を期待できる。なお、掘り取り部用そり11は、
図4に示すそり40と一体のものであってもよく、またそり40であってもよい。
【0034】
また、
図7(b)に示すように、掘り取り部10の上方に掘り取り部用ロータリ13を有することが好ましい。掘り取り部用ロータリ13を備えることで、泥状の土をコンベア部20に送ることができるとともに、大きな土塊を砕くことができる。