(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100706
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ラミネート処理システム
(51)【国際特許分類】
B29C 63/02 20060101AFI20240719BHJP
B65H 41/00 20060101ALI20240719BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20240719BHJP
B65H 5/36 20060101ALI20240719BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240719BHJP
B65H 29/68 20060101ALI20240719BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240719BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B29C63/02
B65H41/00 B
B65H37/04 Z
B65H5/36
B65H5/06 M
B65H29/68
G03G15/00 431
B65H7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219554
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023003721
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】西東洋輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅野翔
(72)【発明者】
【氏名】緑川瑠樹
(72)【発明者】
【氏名】高井直樹
(72)【発明者】
【氏名】下舘一輝
【テーマコード(参考)】
2H072
3F048
3F049
3F053
3F101
3F108
4F211
【Fターム(参考)】
2H072AA16
2H072AA22
2H072AB09
2H072AB20
2H072AB27
2H072CA01
2H072CB08
2H072GA00
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2H072JA02
2H072JA04
3F048AB01
3F048AB06
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3F048BB03
3F048BB05
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3F049LB01
3F049LB08
3F053GA05
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3F053LB01
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4F211AA10
4F211AD06
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4F211AR06
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4F211AR08
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4F211SC07
4F211SD01
4F211SD11
4F211SJ11
4F211SP05
(57)【要約】
【課題】シート剥離装置とラミネート定着装置の間の搬送速度差を吸収することで、シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのシワ、又はスキューの発生を防止する。
【解決手段】本発明のラミネート処理システムは、2枚重ねシートの2枚のシートを剥離し、シート状媒体を挟み込むシート剥離装置と、シート剥離装置とは別筐体であり、シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを加熱及び加圧可能なラミネート定着装置と、シート剥離装置から、その2枚重ねシートをラミネート定着装置に搬送する搬送部と、を備え、搬送部は、その2枚重ねシートを、ラミネート定着装置の入口へ案内する搬送路と、搬送路の搬送方向下流からラミネート定着装置の入口に亘って設けられ、かつ着脱可能なガイド部材とを有する。
ガイド部材は、シート剥離装置とラミネート定着装置の搬送速度差によって生じるシート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみを保持する空間を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートにシート状媒体を挟み込み、熱と圧力を加えて前記2枚重ねシートを接着するラミネート処理システムであって、
2枚重ねシートの2枚のシートを剥離し、シート状媒体を挟み込むシート剥離装置と、
前記シート剥離装置とは別筐体であり、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを加熱及び加圧可能なラミネート定着装置と、
前記シート剥離装置から、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを前記ラミネート定着装置に搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送部は、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを、前記ラミネート定着装置の入口へ案内する搬送路と、前記搬送路の搬送方向下流から前記ラミネート定着装置の入口に亘って設けられ、かつ着脱可能なガイド部材とを有し、
前記ガイド部材は、前記シート剥離装置と前記ラミネート定着装置の搬送速度差によって生じる前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみを保持する空間を形成することを特徴とする、ラミネート処理システム。
【請求項2】
2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートにシート状媒体を挟み込み、熱と圧力を加えて前記2枚重ねシートを接着するラミネート処理システムであって、
2枚重ねシートの2枚のシートを剥離し、シート状媒体を挟み込むシート剥離装置と、
前記シート剥離装置とは別筐体であり、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを加熱及び加圧可能なラミネート定着装置と、
前記シート剥離装置から、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを前記ラミネート定着装置に搬送する搬送部と、
前記シート剥離装置と前記ラミネート定着装置の搬送速度差によって生じる前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみ量を検出するたわみ検出手段と、を備え、
前記搬送部は、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを、前記ラミネート定着装置の入口へ案内する搬送路と、前記搬送路の搬送方向下流から前記ラミネート定着装置の入口に亘って設けられ、かつ移動可能なガイド部材とを有し、
検出したたわみ量に応じて、前記ガイド部材を移動し、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみを保持する空間を形成することを特徴とする、ラミネート処理システム。
【請求項3】
検出したたわみ量に応じて、前記シート剥離装置から前記ラミネート定着装置への搬送速度を調整することを特徴とする、請求項2に記載のラミネート処理システム。
【請求項4】
前記シート剥離装置から前記ラミネート定着装置への搬送速度を減速、又は一時停止することを特徴とする、請求項2に記載のラミネート処理システム。
【請求項5】
前記ラミネート定着装置の設定情報を記憶し、前記設定情報に応じて前記ラミネート定着装置の制御を行う制御部を備え、前記設定情報に応じて前記ガイド部材を移動することを特徴とする、請求項2に記載のラミネート処理システム。
【請求項6】
ユーザに情報を表示する表示手段を備え、
前記たわみ検出手段で検出したたわみ量を、前記表示手段に表示することを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一項に記載のラミネート処理システム。
【請求項7】
外部機器と接続可能な外部接続手段を備え、
前記たわみ検出手段で検出したたわみ量を、前記外部接続手段で接続した前記外部機器に表示可能とすることを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一項に記載のラミネート処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のシートが重ねられ、一辺が接合(接続)された2枚重ねシート(ラミネートシート又はラミネートフィルム)内に、中紙類(用紙、写真など)を挿入し、熱と圧力を加えて2枚重ねシートを接着するラミネート処理という技術が知られている。
【0003】
このラミネート処理は、ユーザが手作業で2枚重ねシートを剥離し、中紙類を正確な位置に挟み込んだ後、ラミネータを使って定着処理を行う必要があるため、手間を要する作業であった。
【0004】
これに対し、特許文献1は、回転部材に2枚重ねシートを巻き付け、幾何学的な関係から内周側シートと外周側シートの間に巻き付け周長差を生じさせることで、2枚重ねシートの2枚のシートを剥離するシート剥離装置を開示している。また、上記シート剥離装置と、2枚重ねシートを加熱及び加圧可能な熱加圧部材(ラミネート定着装置)を備えるラミネート処理装置を開示している。
【0005】
上記ラミネート処理装置は、ラミネート処理の一連の動作を自動化でき、利便性を向上できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シート剥離装置とラミネート定着装置の間の搬送速度差を吸収することで、シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのシワ、又はスキューの発生を防止できるラミネート処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートにシート状媒体を挟み込み、熱と圧力を加えて前記2枚重ねシートを接着するラミネート処理システムであって、2枚重ねシートの2枚のシートを剥離し、シート状媒体を挟み込むシート剥離装置と、前記シート剥離装置とは別筐体であり、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを加熱及び加圧可能なラミネート定着装置と、前記シート剥離装置から、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを前記ラミネート定着装置に搬送する搬送部と、を備え、前記搬送部は、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを、前記ラミネート定着装置の入口へ案内する搬送路と、前記搬送路の搬送方向下流から前記ラミネート定着装置の入口に亘って設けられ、かつ着脱可能なガイド部材とを有し、前記ガイド部材は、前記シート剥離装置と前記ラミネート定着装置の搬送速度差によって生じる前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみを保持する空間を形成することを特徴とする、ラミネート処理システムによって解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のラミネート処理システムは、ガイド部材が、2枚重ねシートのたわみを保持する空間を形成するため、シート剥離装置とラミネート定着装置の間の搬送速度差を吸収でき、2枚重ねシートのシワ、又はスキューの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るラミネート処理システムの全体構成図である。
【
図2】
図1のラミネート処理システムが備える搬送部の構成図である。
【
図3】本実施形態の搬送部における、シートの搬送状態を示す模式図である。
【
図4】本実施形態の搬送部における、シートの搬送状態を示す模式図(その2)である。
【
図6】ガイド部材の変形例を示す構成図であって、(a)は折り曲げ角度を変更したものであり、(b)は湾曲形状としたものである。
【
図7】
図6のガイド部材を用いた、シートの搬送状態を示す模式図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るラミネート処理システムの主要部分を示す部分構成図である。
【
図9】ガイド部材の移動機構の一例を示す構成図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るラミネート処理システムの全体外観図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るラミネート処理システムのブロック図である。
【
図12】シート剥離装置の搬送速度の制御手順を示すフローチャートである。
【
図13】シート剥離装置の搬送を一時停止/停止解除する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0011】
特許文献1に開示されているラミネート処理装置は、シート剥離装置の搬送方向下流に熱加圧部材(定着装置)が水平に配置されているため、横幅(フットプリント)が大きいという問題があった(特許文献1の
図26参照)。
【0012】
そのため、本発明者らは、占有面積を小さくし、かつ、既存のラミネータを有効活用する目的で、ラミネータ(ラミネート定着装置)をシート剥離装置の上に搭載し、それらの間で2枚重ねシートを搬送する搬送路を設ける構成を検討している。
【0013】
この構成の場合、既存のラミネータを用いることで、一連のラミネート処理を低コストで自動化することができる。
【0014】
ところで、ラミネータは、ラミネート機器として既に様々なメーカから市販されている。それらのサイズは多種多様であり、ラミネート処理能力(搬送速度など)も様々なものがある。そのため、シート剥離装置とラミネータを連結しても、それぞれの搬送速度に差がある場合、搬送されるラミネートシートにシワ、又はスキュー(斜め搬送)が生じ、適切に熱定着できないおそれがあった。
【0015】
この場合、別のラミネータを用いるか、ラミネータの仕様に応じて搬送路を調整(再設計)する必要があり、利便性を損なうという問題があった。
【0016】
以下の実施形態では、シート剥離装置とラミネート定着装置の間の搬送速度差を吸収することで、シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのシワ、又はスキューの発生を防止できるラミネート処理システムについて説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るラミネート処理システムの全体構成図である。ラミネート処理システム200は、2枚重ねシート(以下、シートSという)の給送、剥離、中紙Pの挿入、及び熱加圧によるラミネート処理までの一連の動作を1台で実施できる構成である。この一連の動作を、人手を要さずに自動で実施でき、従来技術よりも利便性を向上できる。
【0018】
ここで、シートSとは、2枚のシートが重ねられ、その一部(又は一辺)が接合された2枚重ねシートである。2枚重ねシートとしては、例えば、片側を透明ポリエステルシートなどの透過性シートとし、反対側を透明又は不透明シートとして、それらの一辺で接合したものがある。また、2枚重ねシートには、ラミネートフィルムも含まれる。
【0019】
中紙Pは、それら2枚重ねシートに挿入されるシート状媒体の一例である。シート状媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙など)、トレーシングペーパ、OHPシートなどが含まれる。
【0020】
図1に示すように、ラミネート処理システム200は、シートSの2枚のシートを剥離し、中紙Pを挟み込むシート剥離装置100と、シート剥離装置100とは別筐体であり、中紙Pを挟持したシートS(以下、シートSpという)を加熱及び加圧可能なラミネート定着装置20と、を備える。また、シート剥離装置100から、シートSpをラミネート定着装置20に搬送する搬送部30を備える。
【0021】
本実施形態のラミネート処理システム200は、シート剥離装置100の上方にラミネート定着装置20が設けられている。また、シート剥離装置100の搬送方向下流に配置された搬送部30は、シートSpを180°反転させてラミネート定着装置20へ搬送する搬送路32を有する。したがって、ラミネート定着装置20の搬送方向Cは、シート剥離装置100の搬送方向Aに対し、反対方向である。
【0022】
続いて、本実施形態のラミネート処理システム200による、シートSの給送、剥離、中紙Pの挿入、及び熱加圧によるラミネート処理までの一連の動作を説明する。
【0023】
ここで、本出願人は、シートSを剥離する技術(回転部材に2枚重ねシート(シートS)を巻き付け、幾何学的な関係から内周側シートと外周側シートの間に巻き付け周長差を生じさせることで、2枚重ねシートの2枚のシートを剥離する)について、特許文献1として出願済みである。以下では、本発明に必要な構成及び動作について説明する。
【0024】
(シート剥離装置)
シート剥離装置100は、シートSを積載するシートトレイ102と、シートトレイ102からシートSを給送するピックアップローラ105と、入口ローラ対108とを備える。またシート剥離装置100は、中紙Pを積載する給紙トレイ103と、給紙トレイ103から中紙Pを給送するピックアップローラ106とを備える。
【0025】
さらにシート剥離装置100は、ピックアップローラ105及びピックアップローラ106の下流に、入口ローラ対108と、回転部材としての巻付けローラ109と、従動ローラ110とからなるローラ対と、出口ローラ対113などを備える。
【0026】
本実施形態のシート剥離装置100は、
図1に示すように、シートSと中紙Pを別々のトレイに積載する。ここで、シートSは、シートトレイ102上にシートSの2枚のシートが接合された一部がそのシートSにおけるピックアップローラ105の給送方向(搬送方向)の下流側に位置するように積載する。
【0027】
シート剥離装置100は、シートSをピックアップローラ105にてピックし、巻付けローラ109と従動ローラ110とからなるローラ対によって矢印Aの方向へ搬送し、出口ローラ対113に送る。
【0028】
次に、出口ローラ対113と巻付けローラ109は回転方向を反転し、シートSを矢印Bの方向へ搬送する。矢印B方向へ搬送されたシートSは巻付けローラ109に巻き付けられる。シートSを巻付けローラ109に1周以上巻き付けると、シートSの搬送方向先端(シートの接合されていない側)は、巻付けローラ109に対し固定される。
【0029】
さらにシートを巻付けローラ109に巻き付けると、シートの2枚のシートである内周側にあるシートと外周側にあるシートに周長差(巻き付け量の差)が生じ、出口ローラ対113と巻付けローラ109の間で、シートSが剥離し始める。
【0030】
そして、出口ローラ対113と巻付けローラ109の間に、内周側シートの弛みが集まることで、内周側シートと外周側シートの間に隙間(空間)を生じさせることができる。
【0031】
この後、シート剥離装置100は、シートSに生じた隙間に対し、両側から剥離爪(不図示)を挿入し、更に搬送を続けることで、シートSを大きく開口させる。
【0032】
次いで、シート剥離装置100は、入口ローラ対108を回転し、シートトレイ102から搬送された中紙Pを出口ローラ対113に向けて搬送方向A方向に向けて搬送する。そして、中紙Pは、シートSに接合部に突き当たるように挿入される。そして、シート剥離装置100は、出口ローラ対113を時計回りに回転してシートSと中紙Pを合流させ、開口したシートS内に中紙Pを挿入する。
【0033】
中紙Pが挿入されたシートS(シートSp)は、シート剥離装置100の排出口115から搬送部30内の搬送路32を通過して、ラミネート定着装置20へ搬送される。
【0034】
なお、シート剥離装置100の一連の動作(シートSの剥離から中紙Pの挿入までの動作)についての詳細な説明は、特許文献1(段落[0035]~[0056]など)を参照されたい。
【0035】
(ラミネート定着装置)
ラミネート定着装置20は、ラミネート(熱定着)するシートの入口であるシート挿入口21と、加熱手段を有する熱加圧ローラ対22などを備える。熱加圧ローラ対22によって、シートSpは加熱及び加圧される。
【0036】
2枚重ねシートがラミネートフィルムである場合、フィルムの内側に塗布された糊剤(材質はEVA)が融点に達して溶融し、互いに接着される。このようにしてラミネート処理されたシートSpは、排出ローラを介して、ラミネート定着装置20から排出される。
【0037】
ラミネート定着装置20は、シート剥離装置100とは別筐体であり、市販の(既存の)いわゆるラミネート機器を用いることができる。また、ラミネート機器は、様々なメーカから市販されており、サイズ及び/又はラミネート(定着)処理速度も様々なものがある。処理速度に関しては、例えば、1分あたり1枚~3枚のものが主流である。
【0038】
(搬送部)
図2は、
図1のラミネート処理システムが備える搬送部の構成図である。なお、
図2において、
図1と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0039】
搬送部30は、シート剥離装置100から搬送されたシートSpを、ラミネート定着装置20の入口へ案内する搬送路32と、搬送路32の搬送方向下流からラミネート定着装置20の入口に亘って設けられ、かつ着脱可能なガイド部材34とを有する。
【0040】
このガイド部材34は、シート剥離装置100とラミネート定着装置20の搬送速度差によって生じるシートSpのたわみを保持する空間Esを形成することを特徴とする。
【0041】
シート剥離装置100からラミネート定着装置20に搬送されるシートSpは、
図3に示すように、ある程度のたわみを形成するが、ガイド部材34に案内されることで熱加圧ローラ対22のニップ部へ突き当てることができる。
【0042】
例えば、シート剥離装置100によるシートSpの搬送速度よりも、ラミネート定着装置20の搬送速度が遅い場合、シートSpにシワやスキューが発生し、熱加圧ローラ対22のニップ部に突き当てられないおそれがある。
【0043】
これに対し、本実施形態では、
図4に示すように、ガイド部材34が形成する空間Esによって、シートSpにたわみを形成(たわみ生成を許容)でき、熱加圧ローラ対22のニップ部に突き当てることができる。
【0044】
一方、ラミネート定着装置20とシート剥離装置100の搬送速度差が小さいと、シートSp’に生じるたわみも小さくなるが(Spのたわみ量>Sp’のたわみ量)、この場合も問題なく熱加圧ローラ対22のニップ部に突き当てることができる。
【0045】
このように、本実施形態では、ガイド部材34によって、シート剥離装置100とラミネート定着装置20の間の搬送速度差を吸収することで、シートSpのシワ、又はスキューの発生を防止できる。また、
図4に示すように、ある程度たわみが変動しても、熱加圧ローラ対22にシートSpを安定して搬送できる。
【0046】
ところで、記録媒体の搬送において、記録媒体の「たわみ」を利用する構成は、例えば特許文献2にも開示されている。具体的に、記録媒体を間欠送りしながらインクジェット方式で印刷を行うプリント部と、その印刷済み部分を加熱によりラミネート処理するラミネート部を備えたラミネート装置において、ラミネート部へ記録媒体を送り込む際に記録媒体のたわみを形成している。
【0047】
上記構成は、記録媒体にたわみを形成する点で本発明の実施形態と似ている。しかし、特許文献2は、プリント後のラミネート部へ記録媒体を送り込む際、記録媒体の送り動作を縁切りするためのものであり、本発明のように、シート剥離装置とラミネート定着装置の間の搬送速度差を吸収する構成とはなっていない。
【0048】
このように、本発明では、別筐体の(既存の)ラミネート定着装置(ラミネート機器)を用いることができる点に留意されたい。
【0049】
続いて、有利な構成について説明する。
【0050】
ガイド部材34は、アタッチメント方式として、搬送速度差毎に異なる形状のものを用意しておき、搬送速度差に応じてガイド部材34を交換してもよい。ガイド部材34を付け替えることで、ラミネート定着装置20(すなわち、市販(既存)のラミネート機器)の様々な搬送速度に対応できる。
【0051】
図5は、ガイド部材の一例を示す構成図である。ガイド部材34Aは、平板を所定の角度αで折り曲げた形状であり、一方の端部に位置決め用の突起34aが設けられ、反対側の端部に固定用のネジ穴部34bが設けられている。これら突起34a及びネジ穴部34bを用いて、搬送部30の筐体に取り付けることができる(
図2参照)。
【0052】
図6は、ガイド部材の変形例を示す構成図である。ガイド部材は、(a)折り曲げ角度αを変更したガイド部材34B、34Cや、(b)湾曲形状としたガイド部材34D、34Eなどの形状をとることができる。
【0053】
ガイド部材34B、又はガイド部材34Dは、シートSpのたわみを保持する空間を大きくできる。シート剥離装置100の搬送速度よりも、ラミネート定着装置20の搬送速度が遅い場合、シートSpに生じるたわみは大きくなるが、
図7(a)に示すように、シートSpをガイド部材34B(又は34D)に沿って、熱加圧ローラ対22のニップ部に案内できる。
【0054】
一方、ガイド部材34C、又はガイド部材34Eは、シートSpのたわみを保持する空間を小さくできる。ラミネート定着装置20とシート剥離装置100の搬送速度差が小さいと、シートSp’に生じるたわみは小さくなるが、
図7(b)に示すように、シートSpをガイド部材34C(又は34E)に沿って、熱加圧ローラ対22のニップ部に案内できる。
【0055】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係るラミネート処理システムの主要部分を示す部分構成図である。なお、
図8において、
図2と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0056】
ラミネート処理システム200aは、搬送部30にシートSpに生じるたわみ量を検出するたわみセンサ36を備え、検出したたわみ量に応じてガイド部材34を移動し、シートSpのたわみを保持する空間を形成する。なお、たわみセンサ36は、たわみ検出手段の一例である。
【0057】
図9は、ガイド部材の移動機構の一例を示す構成図である。ガイド部材34は、回転軸38周りに回転可能に取り付けられ、ばね部材40によって反時計回りに付勢されている。その一方で、ガイド部材34は偏心カム42によって、時計回りに付勢される。このように、偏心カム42を回動することで、シートSpのたわみを保持する空間Esを、所望の大きさに形成できる。
【0058】
このように、第2実施形態に係るラミネート処理システム200aは、検出したたわみ量に応じてガイド部材34を移動するので、たわみを保持する空間Esをより適切に形成できる。
【0059】
有利な構成として、ラミネート処理システム200aは、検出したたわみ量に応じて、シート剥離装置100からラミネート定着装置20への搬送速度を調整できる。これは、検出したたわみ量が大きく、シートSpのたわみを保持する空間Esが形成できない場合、又は、ガイド部材34を移動する構成を設けない(又はできない)場合にも有効である。
【0060】
図10は、本発明の第2実施形態に係るラミネート処理システムの全体外観図である。なお、
図10において、
図1と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0061】
ラミネート処理システム200aの外装部には、装置本体の情報表示や、装置本体への処理命令を入力するための命令入力手段である表示パネル10(いわゆるオペレーションパネル)が設置されている。この表示パネル10は、ユーザに情報を表示する表示手段の一例である。
【0062】
図11は、本発明の第2実施形態に係るラミネート処理システムのブロック図である。ラミネート処理システム200aの制御部50は、CPU51と、ROM52と、RAM53と、NVRAM(不揮発性メモリ)54と、ASIC55と、を有する。
【0063】
また、制御部50は、ネットワークI/F56と、I/O57と、を有する。制御部50は、これらの構成部により、ラミネート処理システム全体の動作を制御する。
【0064】
CPU51は、メモリ(ROM52など)に記憶されたプログラムに従って、システム全体の動作を制御する。RAM53は、制御部50の記憶領域であり、I/O57を介してたわみセンサ36で検出したたわみ量などを記憶する。
【0065】
ネットワークI/F56は、通信ネットワークを介して情報処理装置などの外部機器(例えば、PC(パーソナルコンピュータ)12)と情報を送受信する。なお、ネットワークI/F56は、外部機器と接続可能な外部接続手段の一例である。
【0066】
ラミネート処理システム200aの制御部50は、ラミネート定着装置20の設定情報を記憶し、その設定情報に応じてラミネート定着装置20の制御を行う。また、設定情報に応じてガイド部材34を移動することができる。つまり、ガイド部材34に当接する偏心カム42を回転させる偏心モータ42aの駆動を制御することができるようになっている。
【0067】
また、ラミネート処理システム200aの制御部50は、表示パネル10にたわみセンサ36で検出したたわみ量を表示できる。これにより、ユーザは、適切なガイド部材34を選択したり、シート剥離装置100の搬送速度を微調整したりできる。
【0068】
さらに、ラミネート処理システム200aの制御部50は、ネットワークI/F56を介して外部機器(例えば、PC12)と接続でき、たわみセンサ36で検出したたわみ量を外部機器のディスプレイなどに表示できる。
【0069】
これらにより、ユーザは、適切なガイド部材34を選択したり、シート剥離装置100の搬送速度を微調整したりできる。
【0070】
図12は、シート剥離装置の搬送速度の制御手順を示すフローチャートである。まず、ステップS11において、ラミネート処理システム200aは、たわみセンサ36でたわみ量を検出すると、ステップS12において、検出したたわみ量が判定基準以上であるか否かを判定する。たわみ量が判定基準以上である場合(YESの場合)、ステップS13に移行する。
【0071】
ステップS13において、現在のカウンタ値を参照し、カウンタ値が一定回数(RA)以下であるか否かを判定する。ここでカウンタ値とは、搬送速度の減速を実施した回数である。カウンタ値が一定回数(RA)以下である場合(YESの場合)、ステップS14に移行する。
【0072】
ステップS14において、ラミネート処理システム200aは、シート剥離装置100の搬送速度を減速する。次いで、ステップS15において、現在のカウンタ値を1アップする。そして、再度ステップS11に戻り、たわみ量を検出する。
【0073】
一方、先のステップS12において、たわみ量が判定基準未満である場合(NOの場合)、ステップS16に移行し、現在のカウンタ値をクリア(ゼロ)にする。続いて、ステップS17において、シート剥離装置100の搬送速度を元の設定値に戻し、処理を終了する。
【0074】
また、先のステップS13において、カウンタ値が一定回数(RA)よりも大きい場合(NOの場合)も、処理を終了する。これは、シート剥離装置100の搬送速度を下げすぎないためである。
【0075】
このように、本実施形態のラミネート処理システム200aは、たわみ量に基づいて、シート剥離装置100の搬送速度を変更することができる。
【0076】
また、シート剥離装置100の搬送速度を減速する代わりに(又は、加えて)、シート剥離装置100からの搬送を一時的に停止させてもよい。
【0077】
図13は、シート剥離装置の搬送を一時停止/停止解除する手順を示すフローチャートである。まず、ステップS21において、ラミネート処理システム200aは、たわみセンサ36でたわみ量を検出すると、ステップS22において、検出したたわみ量が判定基準以上であるか否かを判定する。たわみ量が判定基準以上である場合(YESの場合)、ステップS23に移行する。
【0078】
ステップS23において、現在の一時停止累積時間を参照し、その値が一定時間(TB)以下であるか否かを判定する。ここで一時停止累積時間とは、シート剥離装置100が搬送を停止した時間である。その値が一定時間(TB)以下である場合(YESの場合)、ステップS24に移行する。
【0079】
ステップS24において、ラミネート処理システム200aは、シート剥離装置100の搬送を一時停止する。次いで、ステップS25において、現在の一時停止累積時間に一時停止した時間を追加する。そして、再度ステップS21に戻り、たわみ量を検出する。
【0080】
一方、先のステップS22において、たわみ量が判定基準未満である場合(NOの場合)、ステップS26に移行し、現在の一時停止累積時間をクリア(ゼロ)にする。同様に、ステップS23においても、現在の一時停止累積時間が一定時間(TB)よりも大きい場合(NOの場合)、ステップS26に移行し、現在の一時停止累積時間をクリア(ゼロ)にする。
【0081】
続いて、ステップS27において、シート剥離装置100の一時停止を解除し(搬送を開始し)、処理を終了する。
【0082】
このように、本実施形態のラミネート処理システム200aは、たわみ量に基づいて、シート剥離装置100の搬送を一時的に停止できる。
【0083】
また、
図10、11の処理を組み合わせ、シート剥離装置100からラミネート定着装置20への搬送速度を減速、又は一時停止することも可能である。
【0084】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明した。この実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して使用できる。例えば、第1、第2実施形態を組み合わせてもよい。
【0085】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(態様1)
2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートにシート状媒体を挟み込み、熱と圧力を加えて前記2枚重ねシートを接着するラミネート処理システムであって、
2枚重ねシートの2枚のシートを剥離し、シート状媒体を挟み込むシート剥離装置と、
前記シート剥離装置とは別筐体であり、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを加熱及び加圧可能なラミネート定着装置と、
前記シート剥離装置から、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを前記ラミネート定着装置に搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送部は、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを、前記ラミネート定着装置の入口へ案内する搬送路と、前記搬送路の搬送方向下流から前記ラミネート定着装置の入口に亘って設けられ、かつ着脱可能なガイド部材とを有し、
前記ガイド部材は、前記シート剥離装置と前記ラミネート定着装置の搬送速度差によって生じる前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみを保持する空間を形成することを特徴とする、ラミネート処理システム。
(態様2)
2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートにシート状媒体を挟み込み、熱と圧力を加えて前記2枚重ねシートを接着するラミネート処理システムであって、
2枚重ねシートの2枚のシートを剥離し、シート状媒体を挟み込むシート剥離装置と、
前記シート剥離装置とは別筐体であり、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを加熱及び加圧可能なラミネート定着装置と、
前記シート剥離装置から、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを前記ラミネート定着装置に搬送する搬送部と、
前記シート剥離装置と前記ラミネート定着装置の搬送速度差によって生じる前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみ量を検出するたわみ検出手段と、を備え、
前記搬送部は、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートを、前記ラミネート定着装置の入口へ案内する搬送路と、前記搬送路の搬送方向下流から前記ラミネート定着装置の入口に亘って設けられ、かつ移動可能なガイド部材とを有し、
検出したたわみ量に応じて、前記ガイド部材を移動し、前記シート状媒体を挟持した2枚重ねシートのたわみを保持する空間を形成することを特徴とする、ラミネート処理システム。
(態様3)
検出したたわみ量に応じて、前記シート剥離装置から前記ラミネート定着装置への搬送速度を調整することを特徴とする、態様2に記載のラミネート処理システム。
(態様4)
前記シート剥離装置から前記ラミネート定着装置への搬送速度を減速、又は一時停止することを特徴とする、態様2又は3に記載のラミネート処理システム。
(態様5)
前記ラミネート定着装置の設定情報を記憶し、前記設定情報に応じて前記ラミネート定着装置の制御を行う制御部を備え、前記設定情報に応じて前記ガイド部材を移動することを特徴とする、態様2乃至4のいずれか一項に記載のラミネート処理システム。
(態様6)
ユーザに情報を表示する表示手段を備え、
前記たわみ検出手段で検出したたわみ量を、前記表示手段に表示することを特徴とする、態様2乃至5のいずれか一項に記載のラミネート処理システム。
(態様7)
外部機器と接続可能な外部接続手段を備え、
前記たわみ検出手段で検出したたわみ量を、前記外部接続手段で接続した前記外部機器に表示可能とすることを特徴とする、態様2乃至6のいずれか一項に記載のラミネート処理システム。
【符号の説明】
【0086】
10 表示パネル
12 PC(パーソナルコンピュータ)
20 ラミネート定着装置
21 シート挿入口
22 熱加圧ローラ対
30 搬送部
32 搬送路
34、34A、34B、34C、34D、34E ガイド部材
34a 位置決め用突起
34b ネジ穴部
36 たわみセンサ
38 回転軸
40 ばね部材
42 偏心カム
42a 偏心モータ
50 制御部
51 CPU
52 ROM
53 RAM
55 ASIC
56 ネットワークI/F
57 I/O
100 シート剥離装置
102 シートトレイ
103 給紙トレイ
105、106 ピックアップローラ
108 入口ローラ対
109 巻付けローラ
110 従動ローラ
113 出口ローラ対
115 排出口
200、200a ラミネート処理システム
Es (たわみを保持する)空間
P 中紙
S シート
Sp、Sp’ 中紙Pを挟持したシートS
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2020-121868号公報
【特許文献2】特開2001-328168号公報