(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100728
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付光学フィルムおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240719BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240719BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240719BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/14
C09J175/04
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002696
(22)【出願日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2023004048
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西上 由紀
(72)【発明者】
【氏名】佐▲瀬▼ 光敬
(72)【発明者】
【氏名】久保 昂大
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大一
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA01
4J004CA07
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004DA01
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4J004EA06
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4J040HD13
4J040HD17
4J040HD33
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4J040HD39
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA32
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
4J040PB19
(57)【要約】
【課題】優れた耐熱耐久性および易リワーク性を示す粘着剤を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル系樹脂(A)と、架橋剤(B)と、シラン化合物(C)とを含有し、(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)由来の構成単位と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位と、カルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位とを含み、シラン化合物(C)は、式(i)で表される化合物を含む、粘着剤組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂(A)と、架橋剤(B)と、シラン化合物(C)とを含有し、
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)由来の構成単位と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位と、カルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位とを含み、
前記シラン化合物(C)は、下記式(i):
【化1】
[式(i)中、
A
1は、炭素数1~5のアルキル基を表し、
A
2及びA
3は、互いに独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基を表し、
Lは、炭素数8~20のアルキレン基を表すか、または前記アルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、-NH-および-O-からなる群より選択される基で置換された基を表し、
Xは、エポキシ基または脂環式エポキシ基を表す]
で表される化合物を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して前記シラン化合物(C)を0.01質量部以上2.0質量部以下含有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100質量部に対して、前記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)由来の構成単位を1質量部以上15質量部以下、および前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位を0.3質量部以上5.5質量部以下含有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位に対する前記カルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位の質量比(c)/(b)が0.06以上1.0以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)のホモポリマーのガラス転移温度が80℃以上である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)はメチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が100万以上320万以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記式(i)において、Lは、炭素数8~12のアルキレン基を表すか、または前記アルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、-NH-および-O-からなる群より選択される基で置換された基を表す、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記架橋剤(B)は芳香族系イソシアネート化合物を含み、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して前記架橋剤(B)を0.2質量部以上5.0質量部以下含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層。
【請求項11】
光学フィルムと、前記光学フィルム上に積層された請求項10に記載の粘着剤層とを含む、粘着剤層付光学フィルム。
【請求項12】
前記光学フィルムは偏光子を含む、請求項11に記載の粘着剤層付光学フィルム。
【請求項13】
請求項12に記載の粘着剤層付光学フィルムを含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関し、さらには粘着剤組成物を含む粘着剤層、および粘着剤層付光学フィルムにも関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置等の画像表示装置に用いられる偏光板等の光学フィルムは、粘着剤層を介して他の部材(例えば液晶表示装置における液晶セル等の画像表示素子)に貼合して用いられることが多い。光学フィルムを粘着剤層を介して他の部材に貼合した後、何らかの不具合が認められた場合には、当該他の部材を再利用するために、貼合した粘着剤層付光学フィルムを粘着剤層ごと剥離し、新しい光学フィルムを貼り直すというリワーク作業が必要になることがある。
【0003】
特許文献1には、耐久性とリワーク性とが両立される粘着剤組成物として、(メタ)アクリル系樹脂と特定のシラン化合物とを含む粘着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車載用途等の光学フィルムに用いられる粘着剤には、より過酷な環境での耐熱耐久性の向上と共に優れた易リワーク性が要求されている。易リワーク性とは、リワーク作業において光学フィルムを粘着剤層ごと剥離除去する際の剥離性を意味しており、粘着剤層付光学フィルムを他の部材から容易に剥離することができ、剥離後の他の部材の表面に再び同じ又は別の粘着剤層付光学フィルムを容易に貼り直すことができれば、易リワークに優れるとされる。しかしながら、粘着剤において耐熱耐久性と共に易リワーク性とをいずれも向上させることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、優れた耐熱耐久性および易リワーク性を示す粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付光学フィルムおよび表示装置を提供する。
[1] (メタ)アクリル系樹脂(A)と、架橋剤(B)と、シラン化合物(C)とを含有し、
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)由来の構成単位と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位と、カルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位とを含み、
前記シラン化合物(C)は、下記式(i):
【化1】
[式(i)中、
A
1は、炭素数1~5のアルキル基を表し、
A
2及びA
3は、互いに独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基を表し、
Lは、炭素数8~20のアルキレン基を表すか、または前記アルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、-NH-および-O-からなる群より選択される基で置換された基を表し、
Xは、エポキシ基または脂環式エポキシ基を表す]
で表される化合物を含む、粘着剤組成物。
[2] 前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して前記シラン化合物(C)を0.01質量部以上2.0質量部以下含有する、[1]に記載の粘着剤組成物。
[3] 前記(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100質量部に対して、前記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)由来の構成単位を1質量部以上15質量部以下、および前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位を0.3質量部以上5.5質量部以下含有する、[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
[4] 前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位に対する前記カルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位の質量比(c)/(b)が0.06以上1.0以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[5] 前記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)のホモポリマーのガラス転移温度が80℃以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6] 前記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)はメチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[7] 前記(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が100万以上320万以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[8] 前記式(i)において、Lは、炭素数8~12のアルキレン基を表すか、または前記アルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、-NH-および-O-からなる群より選択される基で置換された基を表す、[1]~[7]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[9] 前記架橋剤(B)は芳香族系イソシアネート化合物を含み、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して前記架橋剤(B)を0.2質量部以上5.0質量部以下含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層。
[11] 光学フィルムと、前記光学フィルム上に積層された[10]に記載の粘着剤層とを含む、粘着剤層付光学フィルム。
[12] 前記光学フィルムは偏光子を含む、[11]に記載の粘着剤層付光学フィルム。
[13] [11]または[12]に記載の粘着剤層付光学フィルムを含む表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた耐熱耐久性および易リワーク性を示す粘着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る粘着剤層付光学フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る粘着剤層付光学フィルムの他の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明に係る表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0011】
<粘着剤組成物>
(1)(メタ)アクリル系樹脂(A)
本発明に係る粘着剤組成物が含む(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以上であるアルキルメタクリレート(a)[以下、アルキルメタクリレート(a)ともいう]由来の構成単位と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位と、カルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位とを含む。なお本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルのいずれでもよいことを意味する。(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートのいずれでもよいことを意味する。
【0012】
アルキルメタクリレート(a)は、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が30℃以上であるアルキルメタクリレートである。アルキルメタクリレートのホモポリマーのTgは、例えばPOLYMER HANDBOOK(Wiley-Interscience)などの文献値を採用することができる。アルキルメタクリレート(a)のホモポリマーのTgは、耐熱耐久性の観点から好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。アルキルメタクリレート(a)のホモポリマーのTgの上限は特に限定されないが、通常250℃以下である。
【0013】
アルキルメタクリレート(a)の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec‐ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、3,3-ジメチルブチルメタクリレート、3,3-ジメチル-2-ブチルメタクリレート等の炭素数が1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、n-ステアリルメタクリレート等が挙げられる。アルキルメタクリレート(a)は、脂環式構造を有するアルキルメタクリレート(シクロアルキルメタクリレート)であってもよい。脂環式構造は、炭素数が通常5以上、好ましくは5~7程度のシクロパラフィン構造であることができる。脂環式構造を有するアルキルメタクリレートの具体例は、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート等が挙げられる。アルキルメタクリレート(a)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキルメタクリレート(a)としては、炭素数が1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、又は脂環式構造を有するアルキルメタクリレートが好ましく、特に、メチルメタアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。
【0014】
アルキルメタクリレート(a)由来の構成単位の含有量は、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100質量部に対して1質量部以上15質量部以下、より好ましくは3質量部以上13質量部以下、さらに好ましくは4質量部以上12質量部以下、特に好ましくは5質量部以上11質量部以下である。上記範囲内であると、粘着剤の凝集性を向上させることにより機械強度が向上し、かつ粘着剤の柔軟性や粘着性を確保できるため、耐熱耐久性に有利である。
【0015】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)は、分子鎖中に1以上のヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレートであることができる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)の具体例としては、下記式(1):
【化2】
[式(1)中、
nは1~5の整数を示し、
A
1は水素原子またはアルキル基を示し、
X
1は置換基を有していてもよいメチレン基を示す。
nが2以上のとき、前記X
1は同一であってよく、または異なっていてもよい]
で表される化合物が挙げられる。
【0016】
式(1)において、A1を構成し得るアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。中でも好ましくはメチル基である。
【0017】
式(1)において、X1を構成し得るメチレン基が有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1~10のアルキル基、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基等)、アリール基(フェニル基、アルキルフェニル基(トリル基、キシリル基等))、アラルキル基(ベンジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基)、ポリオキシアルキレン基(例えば、ジオキシエチレン基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基等の炭素数5~10シクロアルキルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1~4アルキルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基等)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基等)、アシル基(例えば、アセチル基等)、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が好ましく、特にアルキル基(例えばメチル基、エチル基等)が好ましい。
【0018】
式(1)において、nは例えば1~4の整数であってよく、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2である。
nが2以上の場合、X1は同一であってもよく、異なっていてもよい。すなわち、nが2以上の場合、X1は無置換のメチレン基から構成されていてもよく、無置換のメチレン基と置換基を有するメチレン基から構成されていてもよく、置換基を有するメチレン基から構成されていてもよい。また、式(1)において、置換基を2つ以上有するときは、置換基は同じであっても、異なっていてもよい。
【0019】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)の具体例としては、1-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等の1-ヒドロキシC1~C8アルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の2-ヒドロキシC2~C9アルキル(メタ)アクリレート;3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート等の3-ヒドロキシC3~C10アルキル(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の4-ヒドロキシC4~C11アルキル(メタ)アクリレート;2-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のnが2であるヒドロキシ含有(メタ)アクリレート;3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等のnが3であるヒドロキシ含有(メタ)アクリレートが好ましい。特に、nが2であるヒドロキシ含有(メタ)アクリレートが好ましく、これらの中でも2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートは、均一な架橋構造の形成に有利であり、耐熱耐久性を向上させることができる。
【0020】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位の含有量は、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100質量部に対して0.3質量部以上5.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上4.0質量部以下、さらに好ましくは0.4質量部以上3.0質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以上2.5質量部以下である。
【0021】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100質量部に対してアルキルメタクリレート(a)由来の構成単位を1質量部以上15質量部以下、およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位を0.3質量部以上5.5質量部以下含有する(メタ)アクリル系樹脂である。
【0022】
カルボキシ基含有モノマー(c)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばカルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。中でもアクリル酸が好ましい。アクリル酸はヒドロキシ基含有(メタ)クリレート(b)と架橋剤との反応を促進し、均一な架橋構造の形成に有利であり、耐熱耐久性を向上させることができる。カルボキシ基含有モノマー(c)は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
カルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100質量部に対して0.01質量部以上5.5質量部以下であってよく、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは0.05質量部以上3質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上2質量部以下である。
【0024】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位に対するカルボキシ基含有モノマー(c)由来の構成単位の質量比(c)/(b)[以下、質量比(c)/(b)ともいう]は、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは0.06以上1.0以下であり、より好ましくは0.06以上0.9以下、さらに好ましくは0.08以上0.8以下、特に好ましくは0.1以上0.7以下である。
【0025】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、さらに、アルキルアクリレート由来の構成単位、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が30℃未満のアルキルメタクリレート由来の構成単位、置換基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位、(メタ)アクリルアミド系単量体に由来する構成単位、スチレン系単量体に由来する構成単位、ビニル系単量体に由来する構成単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位等を含んでいてもよい。
【0026】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ホモポリマーのTgが0℃未満のアルキルアクリレートを含んでいることが好ましい。ホモポリマーのTgが0℃未満のアルキルアクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート、n-及びi-プロピルアクリレート、n-及びi-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-及びi-へキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-及びi-オクチルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、n-及びi-ノニルアクリレート、n-及びi-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレートなどのアルキル基の炭素数が2~12程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキルアクリレートなどが挙げられる。ホモポリマーのTgが0℃未満のアルキルアクリレートは、脂環式構造を有するアルキルアクリレート(シクロアルキルアクリレート)であってもよいが、光学フィルムに対する追従性(又は柔軟性や粘着性)などの観点から、炭素数が2~10のアルキルアクリレート、好ましくは炭素数が3~8のアルキルアクリレート、さらに好ましくは炭素数が4~6のアルキルアクリレートが好ましい。これらのアルキルアクリレートを用いると、追従性を高くでき、例えば耐剥がれ性などに有利である。これらのアルキルアクリレートは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ホモポリマーのTgが0℃以上のアルキルアクリレートを含んでいることが好ましい。ホモポリマーのTgが0℃以上のアルキルアクリレートとしてはメチルアクリレート、ステアリルアクリレート、t-ブチルアクリレートなどが挙げられる。ホモポリマーのTgが0℃以上のアルキルアクリレートとしては、脂環式構造を有するアルキルアクリレート(シクロアルキルアクリレート)であってもよい。これらのアルキルアクリレートは、1種のみを用いてもよいが、2種以上を組み合せて用いてもよい。脂環式構造は、炭素数が通常5以上、好ましくは5~7程度のシクロパラフィン構造であることができる。脂環式構造を有するホモポリマーのTgが0℃以上のアルキルアクリレートの具体例は、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、シクロドデシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルα-エトキシアクリレート等を含む。
【0028】
ホモポリマーのTgが30℃未満のアルキルメタクリレートとしては、例えば、n-ブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-及びi-へキシルメタクリレート、n-ヘプチルメタクリレート、n-及びi-オクチルメタクリレート、2-エチルへキシルメタクリレート、n-及びi-ノニルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が4~12程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキルメタクリレートなどが挙げられる。これらのアルキルメタクリレートは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
置換基含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基に置換基が導入された(アルキル基の水素原子が置換基により置換された)アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。該置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)等であってもよい。置換基含有アルキルアクリレートとしては、例えば、アルコキシアルキルアクリレート(例えば2-メトキシエチルアクリレート、エトキシメチルアクリレートなど)、アリールオキシアルキルアクリレート(例えばフェノキシエチルアクリレートなど)、アリールオキシポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールモノアクリレートなどが挙げられる。これらのアルキルアクリレートは単独又は2種以上組み合わせて使用できる。アリール基やアリールオキシ基などの芳香環を含有するアルキルアクリレートを含むことで、耐久試験時の偏光板の白抜けを改善することができる。またアリールオキシポリアルキレングリコールモノアクリレート及びポリアルキレングリコールモノアクリレートのアルキレン基は、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基などのC1-C6アルキレン基(好ましくはエチレン基等)などであってもよく、オキシアルキレン基の繰り返し単位は、粘着剤組成物から形成される粘着層の耐久性の観点から、例えば2~7、好ましくは2~5(特に2)であってもよい。具体的には、例えばフェノキシジエチレングリコールアクリレートなどのフェノキシジ乃至ヘプタC1-C3アルキレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレートなどのジ乃至ヘプタC1-C3アルキレングリコールモノアクリレートなどが挙げられる。
【0030】
ヒドロキシ基以外の極性官能基を有する単量体としては、置換若しくは無置換アミノ基、エポキシ基等の複素環基などの置換基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,5-ジヒドロフラン等の複素環基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の置換若しくは無置換アミノ基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、粘着剤層に積層可能なセパレートフィルムの剥離性の低下を防止する観点から、アミノ基を有する単量体由来の構成単位を実質的に含まないことが好ましい。なお、実質的に含まないとは、(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100質量部に対して、1.0質量部未満であることをいう。
【0031】
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(5-ヒドロキシペンチル)(メタ)アクリルアミド、N-(6-ヒドロキシヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N-〔2-(2-オキソ-1-イミダゾリジニル)エチル〕(メタ)アクリルアミド、2-(メタ)アクリロイルアミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、N-(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-メチルエトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド〔別名:N-(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド〕、N-(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチルエトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-エトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-プロポキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-〔2-(1-メチルエトキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド、N-〔2-(1-メチルプロポキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド、N-〔2-(2-メチルプロポキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド〔別名:N-(2-イソブトキシエチル)アクリルアミド〕、N-(2-ブトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-〔2-(1,1-ジメチルエトキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構成単位は、1種のみを用いてもよいが、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0032】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン;アセチルスチレン;メトキシスチレン;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0033】
ビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール等の含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン単量体等が挙げられる。
【0034】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体等が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは100万以上320万以下であり、より好ましくは110万~310万であり、より好ましくは120万~300万であり、特に好ましくは130万~290万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5以上10以下、好ましくは2以上5以下、より好ましくは2.5以上4以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより分析でき、標準ポリスチレン換算の値である。
【0036】
(メタ)アクリル系樹脂(A)はガラス転移温度(Tg)が、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは-45℃以上-10℃以下、より好ましくは-40℃以上-15℃以下、さらに好ましくは-38℃以上-20℃以下である。
【0037】
(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種類以上を組み合わせる場合はそれらの混合物)は、それを酢酸エチルに溶かして濃度20質量%に調整した溶液が、25℃において20Pa・s以下、さらには0.1Pa・s以上7Pa・s以下の粘度を示すことが好ましい。粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定できる。
【0038】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、公知の方法によって製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造においては通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造に用いられる全ての単量体の合計100質量部に対して、0.001~5質量部程度使用される。また、(メタ)アクリル系樹脂(A)は、例えば紫外線等の活性エネルギー線によって重合を進行させる方法により製造してもよい。
【0039】
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤として、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等を挙げることができる。熱重合開始剤として、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)のようなアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドのような有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素のような無機過酸化物等を挙げることができる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤等も、重合開始剤として使用しうる。
【0040】
(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造方法としては、上に示した方法の中でも溶液重合法が好ましい。溶液重合法の一例は、単量体および有機溶媒を混合し、窒素雰囲気下、熱重合開始剤を添加して、40~90℃程度、好ましくは60~80℃程度にて3~10時間程度攪拌することである。反応を制御するために、単量体や熱重合開始剤を重合中に連続的または間歇的に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;プロピルアルコール、イソプロピルアルコールのような脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等を用いることができる。
【0041】
(2)架橋剤(B)
粘着剤組成物は、架橋剤(B)をさらに含有する。架橋剤(B)は、(メタ)アクリル系樹脂(A)中の特に極性官能基含有単量体に由来する構造単位と反応し、(メタ)アクリル系樹脂(A)を架橋させる化合物であることができる。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物等が例示される。これらのうち、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物およびアジリジン系化合物は、(メタ)アクリル樹脂中の極性官能基と反応しうる官能基を分子内に少なくとも2個有する。架橋剤(B)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
イソシアネート系化合物としては、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物が好ましく、例えば、脂肪族イソシアネート系化合物(例えばヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族イソシアネート系化合物(例えばイソホロンジイソシアネート)、芳香族イソシアネート系化合物(例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等)等が挙げられる。また、架橋剤(B)は、イソシアネート化合物の多価アルコール化合物による付加体(アダクト体)(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン等による付加体)、イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート化合物等の誘導体であってもよい。架橋剤(B)は単独または二種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、代表的には芳香族イソシアネート系化合物(例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート)、脂肪族イソシアネート系化合物(例えばヘキサメチレンジイソシアネート)またはこれらの多価アルコール化合物(グリセロール、トリメチロールプロパン)による付加体が挙げられる。架橋剤(B)が、芳香族イソシアネート系化合物および/またはこれらの多価アルコール化合物による付加体を含む場合、易リワーク性および耐熱耐久性を向上し易い傾向にある。
【0043】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である。具体的な化合物としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。2種以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
【0044】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子とからなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物である。具体的な化合物として、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン-トリス-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリス-β-アジリジニルプロピオネート等が挙げられる。
【0045】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウム等の多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物等が挙げられる。
【0046】
中でも好ましくはイソシアネート系化合物であり、より好ましくは芳香族イソシアネート系化合物、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等およびその多価アルコール化合物(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン等)による付加体(アダクト体)である。
【0047】
架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100質量部に対し、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは0.2質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上2.0質量部以下である。
【0048】
(3)シラン化合物(C)
シラン化合物(C)は、下記式(i):
【化3】
[式(i)中、
A
1は、炭素数1~5のアルキル基を表し、
A
2及びA
3は、互いに独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基を表し、
Lは、炭素数8~20のアルキレン基を表すか、または前記アルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、-NH-および-O-からなる群より選択される基で置換された基を表し、
Xは、エポキシ基または脂環式エポキシ基を表す]
で表されるシラン化合物を含む。シラン化合物(C)を含有することにより、初期粘着力および経時粘着力を低減し、かつ、高温環境下では金属、透明電極、ガラス基板等への良好な密着性を示すことにより、易リワーク性および耐熱耐久性の両立が可能となる。
【0049】
式(i)中、A1、A2及びA3を構成し得る炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-及びi-プロピル基、n-、i-及びt-ブチル基、n-、i-及びt-ペンチル基等のペンチル基が挙げられる。
【0050】
式(i)中、A2及びA3を構成し得る炭素数1~5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-、i-及びt-ペンチルオキシ基等の各種ペンチルオキシ基が挙げられる。
【0051】
式(i)中、Lを構成し得る炭素数8~20のアルキレン基としては、式:-(CH2)n-(式中、nは8~20の整数を表す)で表される基が例示される。
【0052】
Lが、炭素数8~20のアルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、-NH-、および-O-からなる群より選択される基で置換された基である場合において、1つのメチレン基のみが-NH-または-O-によって置換されていてもよいし、2以上のメチレン基がそれぞれ-NH-または-O-によって置換されていてもよい。2以上のメチレン基が置換される場合、典型的には、置換した2以上の-NH-および/または-O-は、炭素数2以上のアルキレン基で結合されている。
【0053】
式(i)中、Xを構成し得るエポキシ基は、下記式:
【化4】
で表される基であることができる。
【0054】
式(i)中、Xを構成し得る脂環式エポキシ基としては、下記式:
【化5】
(式中、nは1~5の整数を表す。)
で表される構造から1つの水素原子が取り除かれた1価の基が例示される。
【0055】
中でも、シラン化合物(C)は、高温環境下での密着性を向上させる観点より、A
1がメチル基またはエチル基であり、A
2およびA
3が互いに独立してメトキシ基またはエトキシ基であり、Xがエポキシ基であることが好ましく、式(C-1):
【化6】
で示されるシラン化合物(C-1)を含むか、またはこれよりなることがさらに好ましい。上記式(C-1)中、mは6~18の整数を表す。
【0056】
シラン化合物(C-1)の具体例を挙げれば、例えば、
6-グリシドキシヘキシルトリメトキシシラン、
7-グリシドキシへプチルトリメトキシシラン、
8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、
9-グリシドキシノニルトリメトキシシラン、
10-グリシドキシデシルトリメトキシシラン、
11-グリシドキシウンデシルトリメトキシシラン、
12-グリシドキシドデシルトリメトキシシラン、
13-グリシドキシトリデシルトリメトキシシラン、
14-グリシドキシテトラデシルトリメトキシシラン、
15-グリシドキシペンタデシルトリメトキシシラン、
16-グリシドキシヘキサデシルトリメトキシシラン、
17-グリシドキシヘプタデシルトリメトキシシラン、
18-グリシドキシオクタデシルトリメトキシシラン
である。シラン化合物(C-1)の多くは液体である。シラン化合物(C-1)は市販のものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0057】
粘着剤組成物におけるシラン化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100質量部に対して、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは0.01質量部以上2.0質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.8質量部以下である。上限値以下であると、粘着剤層からのシラン化合物(C)のブリードアウトの抑制に有利であり、下限値以上であると、粘着剤層と、金属層やガラス基板等との密着性(又は接着性)を向上しやすく、耐剥がれ性などの向上に有利である。
【0058】
(4)イオン性化合物
粘着剤組成物は、イオン性化合物をさらに含有することができる。イオン性化合物は、粘着剤層に帯電防止性を付与するための帯電防止剤として機能することができる。イオン性化合物は、無機カチオンまたは有機カチオンと、無機アニオンまたは有機アニオンとを有する化合物である。
【0059】
無機カチオンとしては、例えば、リチウムカチオン〔Li+〕、ナトリウムカチオン〔Na+〕、カリウムカチオン〔K+〕のようなアルカリ金属イオンや、ベリリウムカチオン〔Be2+〕、マグネシウムカチオン〔Mg2+〕、カルシウムカチオン〔Ca2+〕のようなアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
【0060】
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0061】
上記したカチオン成分のうち、有機カチオン成分は、粘着剤組成物との相溶性に優れることから好ましく用いられる。有機カチオン成分の中でも特に、ピリジニウムカチオンおよびイミダゾリウムカチオンは、粘着剤層の上に設けられる剥離フィルムを剥がすときに帯電しにくいという観点から好ましく用いられる。
【0062】
無機アニオンとしては、例えば、クロライドアニオン〔Cl-〕、ブロマイドアニオン〔Br-〕、ヨーダイドアニオン〔I-〕、テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4
-〕、ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔Al2Cl7
-〕、テトラフルオロボレートアニオン〔BF4
-〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6
-〕、パークロレートアニオン〔ClO4
-〕、ナイトレートアニオン〔NO3
-〕、ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6
-〕、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6
-〕、ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6
-〕、ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6
-〕、ジシアナミドアニオン〔(CN)2N-〕等が挙げられる。
【0063】
有機アニオンとしては、例えば、アセテートアニオン〔CH3COO-〕、トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、メタンスルホネートアニオン〔CH3SO3
-〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3
-〕、p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CH3C6H4SO3
-〕、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO2)2N-〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)2N-〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO2)3C-〕、ジメチルホスフィネートアニオン〔(CH3)2POO-〕、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)n
-〕(nは1~3程度)、チオシアンアニオン〔SCN-〕、パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C4F9SO3
-〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C2F5SO2)2N-〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔C3F7COO-〕、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕、パーフルオロプロパン-1,3-ジスルホネートアニオン〔-O3S(CF2)3SO3
-〕、カーボネートアニオン〔CO3
2-〕等が挙げられる。
【0064】
上記したアニオン成分の中でも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから好ましく用いられる。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン等が挙げられる。
【0065】
イオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分の組み合わせから適宜選択することができる。有機カチオンを有するイオン性化合物の例を有機カチオンの構造ごとに分類して掲げると、次のようなものが挙げられる。
【0066】
ピリジニウム塩:
N-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-4-メチルルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ドデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-テトラデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキサデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ドデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-テトラデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ベンジル-2-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ベンジル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0067】
イミダゾリウム塩:
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム p-トルエンスルホネート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド。
【0068】
ピロリジニウム塩:
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0069】
4級アンモニウム塩:
テトラブチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート、
トリブチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
メチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0070】
また、無機カチオンを有するイオン性化合物の例を挙げると、次のようなものがある。
【0071】
リチウム ブロマイド、
リチウム ヨーダイド、
リチウム テトラフルオロボレート、
リチウム ヘキサフルオロホスフェート、
リチウム チオシアネート、
リチウム パークロレート、
リチウム トリフルオロメタンスルホネート、
リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
リチウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
リチウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、
リチウム p-トルエンスルホネート、
ナトリウム ヘキサフルオロホスフェート、
ナトリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
ナトリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
ナトリウム p-トルエンスルホネート、
カリウム ヘキサフルオロホスフェート、
カリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
カリウム p-トルエンスルホネート。
【0072】
イオン性化合物は、室温において固体であることが好ましい。常温で液体であるイオン性化合物を用いる場合に比べ、帯電防止性能を長期間保持することができる。このような帯電防止性の長期安定性という観点からすると、イオン性化合物は、25℃以上の融点を有することが好ましい。一方で、その融点があまり高すぎると、(メタ)アクリル系樹脂(A)との相溶性が悪くなるため、融点は好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは50℃未満である。
【0073】
粘着剤組成物におけるイオン性化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100質量部に対して、通常0.2質量部以上10質量部以下であり、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは0.3質量部以上9質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上8質量部以下である。上記範囲であると、イオン性化合物が粘着剤中で凝集し難く、耐熱耐久性を向上できる。
【0074】
(5)その他の成分
粘着剤組成物は、溶剤、架橋触媒、紫外線吸収剤、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、光散乱性微粒子、防錆剤、剥離剤、(メタ)アクリル系樹脂(A)以外の樹脂等の添加剤を含有することができる。そのほか、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。架橋触媒としては、例えばヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂及びメラミン樹脂等のアミン系化合物などが挙げられる。
【0075】
粘着剤組成物が、架橋剤(B)とともに架橋触媒を含有する場合、粘着剤層を短時間の熟成で調製することができる。また、架橋触媒を含有させると、粘着剤層とこれに隣接する部材との界面での浮きや剥れ、粘着剤層の発泡をより効果的に抑制でき、また易リワーク性も一層良好になることがある。架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂およびメラミン樹脂等のアミン系化合物を挙げることができる。粘着剤組成物に架橋触媒としてアミン系化合物を配合する場合、架橋剤(B)としてはイソシアネート系化合物が好適である。
【0076】
粘着剤組成物は、上記成分を混合することにより調製することができる。粘着剤組成物は、ゲル分率が例えば50%以上98%以下であってよく、好ましくは60%以上95%以下である。ゲル分率は後述の実施例の欄における測定方法に従って測定することができる。
【0077】
粘着剤組成物は、耐熱耐久性試験において、例えば浮き、剥れ、割れ、発泡等の外観変化が少し認められるか、または全く認められないものであってよく、好ましくは全く認められないものである。また、粘着剤組成物は優れた易リワーク性を有することができる。耐熱耐久性試験および易リワーク性の評価は後述の実施例の欄において説明する方法に従って行うことができる。
【0078】
<粘着剤層>
本発明の粘着剤層は、上述の本発明に係る粘着剤組成物を含むものであり、典型的には本発明に係る粘着剤組成物からなる。粘着剤層は、上記粘着剤組成物を構成する各成分を溶剤に溶解または分散して溶剤含有の粘着剤組成物とし、次いで、基材フィルム上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。粘着剤層は、易リワーク性および耐熱耐久性に優れている。
【0079】
基材フィルムは、プラスチックフィルムであるのが一般的であり、その典型的な例として離型処理が施された剥離フィルム(セパレーター)を挙げることができる。剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等の各種樹脂からなるフィルムの粘着剤層が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであることができる。また、光学部材の表面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、必要に応じて粘着剤層の外面に剥離フィルムを積層して粘着剤層付光学部材としてもよい。粘着剤層を光学部材の表面に設ける際には、必要に応じて光学部材の貼合面および/または粘着剤層の貼合面に表面活性化処理、例えばプラズマ処理、コロナ処理等を施してもよい。
【0080】
粘着剤層の厚みは、例えば10μm以上50μm以下であってよく、易リワーク性および耐熱耐久性の観点から好ましくは15μm以上40μm以下、より好ましくは18μm以上35μm以下である。
【0081】
粘着剤層は、初期の密着力が例えば5.0N/25mm以下であってよく、好ましくは4.0N/25mm以下、より好ましくは3.0N/25mm以下であり、通常0.5N/25mm以上である。初期の密着力は後述の実施例の欄において説明する方法に従って測定することができる。
【0082】
粘着剤層は、貼合経時の密着力が易リワーク性の観点から好ましくは9.9N/25mm以下であり、より好ましくは7.0N/25mm以下、さらに好ましくは5.0N/25mm以下であり、通常0.5N/25mm以上である。貼合経時の密着力は後述の実施例の欄において説明する方法に従って測定することができる。
【0083】
粘着剤層は、初期密着力と貼合経時密着力の差が易リワーク性の観点から好ましくは3.9N/25mm以下であり、より好ましくは3.0N/25mm以下、さらに好ましくは2.0N/25mm以下である。
【0084】
<粘着剤層付光学フィルム>
本発明に係る粘着剤層付光学フィルムは、例えば光学フィルムと、その上に積層された上述の粘着剤層とを含むことができる。
【0085】
光学フィルムとしては、偏光子;偏光子等の表面を保護するために設けられる保護フィルム;偏光子の片面または両面に保護フィルムが積層された偏光板;位相差フィルム;;位相差フィルム以外の光学補償フィルム;表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム;光拡散フィルム;ハードコートフィルム等を挙げることができる。粘着剤層付光学フィルムは、1種または2種以上の光学フィルムを含むことができ、同種のものを2以上含んでいてもよい。2以上の光学フィルムを含む場合、2以上の光学フィルムを積層するために、後述の貼合層を用いてもよく、この場合、貼合層も光学フィルムの一部となり得る。光学フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上300μm以下とすることができる。本明細書において、偏光子の片面または両面に保護フィルムが積層された偏光板は直線偏光板ともいう。
【0086】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素が配向しているものや、液晶化合物と二色性色素とが配向したもの等を挙げることができる。
【0087】
保護フィルムとしては、特に限定されないが、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。このようなフィルムを構成する熱可塑性樹脂として、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)等のポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースおよびセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニル等のビニルアルコール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;これらの混合物、共重合物等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル系」とは、「アクリル系およびメタクリル系の少なくとも1種」を意味する。これらの樹脂は、滑剤、可塑剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、微粒子等の光拡散剤等の添加剤を1種または2種以上含有していてもよい。
【0088】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0089】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0090】
セルロース系樹脂は、セルロースの部分または完全エステル化物であり、例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステル等が挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が好ましく用いられる。
【0091】
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する、上記セルロース系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸またはその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸またはその誘導体としてはジカルボン酸またはその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしてはジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0092】
ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。
【0093】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
【0094】
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルを主たるモノマーとする重合体であることができ、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、より好ましくはメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体であり、第三の単官能モノマーをさらに共重合させてもよい。
【0095】
第三の単官能モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのようなアクリル酸エステル類;2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(1-ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチルのようなヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類;クロロスチレン、ブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α-メチルスチレンのような置換スチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、無水シトラコン酸のような不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドのような不飽和イミド類等を挙げることができる。第三の単官能モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
(メタ)アクリル系樹脂には、多官能モノマーをさらに共重合させてもよい。多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなエチレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような2価アルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、またはこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような多価アルコールをアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物等にグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンのような芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
【0097】
(メタ)アクリル系樹脂は、さらに共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。また(メタ)アクリル系樹脂は、グルタルイミド誘導体、グルタル酸無水物誘導体またはラクトン環構造のいずれかの構造を有してもよい。
【0098】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは90~160℃、より好ましくは110~160℃、さらに好ましくは120~150℃である。
【0099】
(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。
【0100】
(メタ)アクリル樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性等の観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。アクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。この弾性重合体の例として、アクリル酸アルキルを主成分とし、これに共重合可能な他のビニルモノマーおよび架橋性モノマーを共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル等、アルキル基の炭素数が1~8程度のものが挙げられ、特に炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸が好ましく用いられる。このアクリル酸アルキルに共重合可能な他のビニルモノマーとしては、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メチルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。架橋性モノマーとしては、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0101】
ゴム粒子を含まないアクリル樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含むアクリル樹脂からなるフィルムとの積層物を保護フィルムとすることもできる。
【0102】
位相差フィルムは、光学異方性を示す光学フィルムであり、上記保護フィルムに用いることができる樹脂のほか、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニル系樹脂等からなる樹脂フィルムを1.01~6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムであることができる。中でも、ポリカーボネート系樹脂フィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルム、(メタ)アクリル系樹脂フィルムまたはセルロース系樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸した延伸フィルムが好ましい。また本明細書においては、ゼロレタデーションフィルムも位相差フィルムに含まれる(ただし、保護フィルムとして用いることもできる。)。そのほか、一軸性位相差フィルム、広視野角位相差フィルム、低光弾性率位相差フィルム等と称されるフィルムも位相差フィルムとして適用可能である。
【0103】
位相差フィルムは、基材上に重合性液晶化合物が配向した状態で重合した重合体からなる光学異方性層を有するフィルムであってもよい。基材は、上記保護フィルムに用いる熱可塑性樹脂フィルムであってよい。
【0104】
位相差フィルムは、例えば逆波長分散性の1/4波長位相差層、ポジティブCプレート、正波長分散性の1/2波長位相差層、正波長分散性の1/4波長位相差層等であることができる。位相差フィルムは、2以上の位相差層から構成されてもよく、例えば逆波長分散性の1/4波長位相差層とポジティブCプレートを組み合わせた構成、および、正波長分散性の1/2波長位相差層と正波長分散性の1/4波長位相差層を組み合わせた構成等を有していてもよい。
【0105】
位相差フィルムや保護フィルムは、JIS Z 0208に規定されるカップ法により、40℃の温度および90%の相対湿度で測定される透湿度が500g/(m2・24hr)以下であってよい。
【0106】
表面保護フィルムは、被保護体である光学フィルム等の表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるフィルムであり、例えば、液晶表示装置用の光学フィルムである偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、光拡散シート、反射シート等の各種光学フィルムは通常、その表面(片面に粘着剤層を有する場合は、その粘着剤層と反対側の面)に表面保護フィルムを貼合した状態で流通している。表面保護フィルムは、上記光学フィルムを液晶セル等に貼合した後、剥離除去されるのが通例である。
【0107】
表面保護フィルムの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレンのようなフッ素化ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体のようなポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6のようなポリアミド;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンのようなビニル重合体;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハンのようなセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル系樹脂;その他、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0108】
貼合層は、粘着剤層であってもよいし、接着剤層であってもよい。貼合層が粘着剤層である場合、貼合層には、上述の粘着剤層以外の粘着剤層を用いることができる。貼合層が粘着剤層である場合、粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
【0109】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上をモノマーとする重合体または共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0110】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0111】
貼合層が粘着剤層である場合、貼合層の厚みは、1μm以上200μm以下が好ましく、2μm以上100μm以下がより好ましく、2μm以上80μm以下がさらに好ましく、3μm以上50μm以下が特に好ましい。
【0112】
貼合層が接着剤層である場合、接着剤は、任意の適切な接着剤を用いることができる。接着剤は、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤などを用いることができる。
【0113】
接着剤の塗布時の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。例えば、硬化後または加熱(乾燥)後に、所望の厚みを有する接着剤層が得られるように設定する。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm以上7μm以下であり、より好ましくは0.01μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上2μm以下であり、最も好ましくは0.01μm以上1μm以下である。
【0114】
水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等を挙げることができる。
【0115】
上記活性エネルギー線硬化性接着剤とは、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含有する接着剤であり、好ましくは紫外線硬化性接着剤である。
【0116】
上記硬化性化合物は、カチオン重合性の硬化性化合物やラジカル重合性の硬化性化合物であることができる。カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物(分子内に1個または2個以上のエポキシ基を有する化合物)や、オキセタン系化合物(分子内に1個または2個以上のオキセタン環を有する化合物)、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個または2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)や、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。カチオン重合性の硬化性化合物とラジカル重合性の硬化性化合物とを併用してもよい。活性エネルギー線硬化性接着剤は通常、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤の少なくとも一方をさらに含む。
【0117】
接着性を高めるために、貼合層および光学フィルムの少なくともいずれか一方の貼合面に表面活性化処理を施してもよい。表面活性化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、放電処理(グロー放電処理等)、オゾン処理、UVオゾン処理、電離活性線処理(紫外線処理、電子線処理等)のような乾式処理等を挙げることができる。これらの表面活性化処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。中でもコロナ処理が好ましい。コロナ処理は、例えば1kJ/m2以上50kJ/m2以下の出力で行うことができる。コロナ処理を行う時間は、例えば1秒間以上1分以下であってよい。
【0118】
本実施形態に係る粘着剤層付光学フィルムにおいて、その粘着剤層表面には、上述の剥離フィルムを貼着し、使用時まで仮着保護しておくことが好ましい。剥離フィルムが貼着された本実施形態に係る粘着剤層付光学フィルムは、剥離フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに樹脂フィルムを積層する方法、樹脂フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤面に剥離フィルムを貼り合わせる方法によって製造できる。
【0119】
粘着剤層付光学フィルムは、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置や液晶表示装置等の表示装置に用いることができ、この表示装置の画像表示素子の視認側に貼合して用いることができる。
【0120】
粘着剤層付光学フィルムは、光学フィルムと、光学フィルム上に積層された粘着剤層とを含むものであれば、その積層構造は特に限定されない。
【0121】
図1に示す粘着剤層付光学フィルム10は、直線偏光板11と、粘着剤層12とを含む。直線偏光板11は、第1保護フィルム13、接着剤層14、偏光子15、接着剤層16、第2保護フィルム17をこの順に含む。粘着剤層12は、液晶表示装置の画像表示素子である液晶セルに貼合するために用いられることができる。粘着剤層12の直線偏光板11とは反対側の面には、図示しないセパレータ(剥離フィルム)が設けられていてもよい。
【0122】
図2に示す粘着剤層付光学フィルム20は、粘着剤層21、位相差フィルム22、貼合層23、直線偏光板24をこの順に含む。直線偏光板24は、第1保護フィルム25、接着剤層26、偏光子27、接着剤層28、第2保護フィルム29をこの順に含む。粘着剤層21は、液晶表示装置の画像表示素子である液晶セルに貼合するために用いられることができる。粘着剤層21の位相差フィルム22とは反対側の面には、図示しないセパレータ(剥離フィルム)が設けられていてもよい。
【0123】
図1および
図2に示す粘着剤層付光学フィルム10および20は一例にすぎず、上記以外の積層構造を有するものであってもよい。例えば保護フィルムはハードコートフィルムや防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム等のさらなる層を有していてもよい。
【0124】
<表示装置>
本発明に係る表示装置は、上述の粘着剤層付光学フィルムを含む。上記した粘着剤層付光学フィルムは、有機EL表示装置、液晶表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、電子放出表示装置等の表示装置に好適に用いることができる。
【0125】
図3に示す表示装置30は、
図1に示す粘着剤層付光学フィルム10と、液晶表示素子31とを含む液晶表示装置である。粘着剤層付光学フィルム10は、粘着剤層12を介して、液晶表示素子31の視認側及び/又は背面側に配置することができる。
【実施例0126】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下、使用量ないし含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0127】
<製造例1:粘着剤層用(メタ)アクリル系樹脂の製造>
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル86.4部、ブチルアクリレート68.7部、メチルアクリレート20.0部、メチルメタクリレート10.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.0部、及びアクリル酸0.3部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を60℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.15部を酢酸エチル13.7部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤の添加後4時間この濃度で保持した。最後に酢酸エチルを加えて(メタ)アクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように調節し、(メタ)アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液を調製した。
【0128】
得られた(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を測定した。
Tgは、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)「EXSTAR DSC6000」を用い、窒素雰囲気下、測定温度範囲-80~50℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0129】
得られた(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。
Mw及びMnは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel guardcolumnHHR-H(S)」を1本、「TSKgel GMHHR-H」を2本の計3本を直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
用いたモノマー混合物のモノマー組成、並びに得られた(メタ)アクリル系樹脂のTg、Mw及び分子量分布(Mw/Mn)を表1にまとめた。
<製造例2~8>
モノマー組成を表1の通りにした以外は、製造例1と同様に(メタ)アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液を調整した。
【表1】
【0130】
表1の「モノマー組成」の欄にある略称は、次のモノマーを意味する。
BA :ブチルアクリレート(ホモポリマーTg:-54℃)
OA :オクチルメタクリレート(ホモポリマーTg:-65℃)
MA :メチルアクリレート(ホモポリマーTg:10℃)
MMA :メチルメタクリレート(ホモポリマーTg:105℃)
IBMA:イソボロニルメタクリレート(ホモポリマーTg:110℃)
TBMA:tert-ブチルメタクリレート(ホモポリマーTg:118℃)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート(ホモポリマーTg:83℃)
HEA :2-ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AA :アクリル酸
【0131】
<実施例1~9、比較例1、2>
(1)粘着剤組成物の調製
上記製造例で得られた(メタ)アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液(樹脂濃度:20%)に、該溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤、シラン化合物及びイオン性化合物を表2に示す量(質量部)混合し、さらに固形分濃度が14質量%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物の溶液を調製した。表2において、(メタ)アクリル系樹脂、架橋剤、シラン化合物及び帯電防止剤の配合量(質量部)は固形分換算量である。
【0132】
【0133】
表2において略称で示される各配合成分の詳細は次のとおりである。
[架橋剤]
B:D-103(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液:固形分濃度75質量%、三井化学(株)製)
[シラン化合物]
C-1:8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン「KBM-4803」、信越化学工業(株)製
C-2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-403」、信越化学工業(株)製
[イオン性化合物]
D:メチルトリブチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
【0134】
(2)粘着剤層の作製
上記(1)で調製した各粘着剤組成物を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔三菱ケミカル(株)製の「ダイアホイルMRV38(V04)」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層(粘着剤シート)を作製した。
【0135】
(3)粘着剤層のゲル分率の測定
(2)で作製した粘着剤層(粘着剤シート)を23℃60%で7日間保管した。保管後の粘着剤層(粘着剤シート)について、ゲル分率〔23℃におけるゲル分率(G23)〕を測定した。ゲル分率は、以下の〔a〕~〔d〕に従って測定した。結果を表3に示す。
〔a〕約8cm×約8cmの面積の粘着剤層と、約10cm×約10cmのSUS304からなる金属メッシュ(その質量をWmとする)とを貼合する。
〔b〕上記〔a〕で得られた貼合物を秤量して、その質量をWsとし、次に粘着剤層を包み込むように4回折りたたんでホッチキス(ステープラー)で留めた後に秤量して、その質量をWbとする。
〔c〕上記〔b〕でホッチキス留めしたメッシュをガラス容器に入れ、酢酸エチル60mLを加えて浸漬した後、このガラス容器を室温で3日間保管する。
〔d〕ガラス容器からメッシュを取り出し、120℃で4時間乾燥した後に秤量して、その質量をWaとし、下記式:
ゲル分率(質量%)=〔{Wa-(Wb-Ws)-Wm}/(Ws-Wm)〕×100に基づいてゲル分率を計算する。
【0136】
(4)偏光板の作製
一軸延伸ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された厚み12μmの偏光子の両面にケン化処理を施したトリアセチルセルロース樹脂からなる厚み40μmの保護フィルムを、水系接着剤を介して貼合することにより偏光板を作製した。
【0137】
(5)粘着剤層付偏光板の作製
上記(4)で作製した偏光板の一方の保護フィルムの外面に、上記(2)で作製した粘着剤層におけるセパレートフィルムとは反対側の面(粘着剤層面)をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度60%の条件で7日間養生して、粘着剤層付偏光板を得た。
【0138】
(6)積層光学フィルムにおける密着性(易リワーク性)の評価
偏光子の吸収軸が長辺となるように、上記(5)で得られた粘着剤付偏光板をサイズ150mm×25mmに裁断した。裁断した粘着剤付偏光板からセパレートフィルムを剥がし、露出した粘着剤層を、縦160mm、横50mm、厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板〔コーニング社製の「Eagle XG」〕の中央部に貼り合わせ、次いで得られたガラス基板が貼り付けられた試験片(ガラス基板が貼り付けられた粘着剤付偏光板)を、オートクレーブ中、温度50℃、圧力5kgf/cm2(490.3kPa)で、20分間加圧して、これをサンプルとした。その後、温度23℃、相対湿度55%の環境下に30分間保管した。
次いで、ガラス基板と粘着剤層との間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製の商品名「AGS-50NX」〕のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854-2:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く120mmの長さにわたる平均剥離力を求めて、これを温度23℃における初期密着力とした。
上記サンプルを温度23℃、相対湿度55%の環境下で4週間保管したこと以外は上記と同様にして密着力を測定し、これを貼合経時密着力とした。結果を表3に示す。
貼合経時密着力が9.9N/25mm以下、初期密着力と貼合経時密着力との差が3.9N/25mm以下である場合、易リワーク性は良好である。
【0139】
(7)積層光学フィルムの耐熱耐久性評価
上記(5)で作製した粘着剤層付偏光板からセパレートフィルムを剥がした後、その粘着剤層面を無アルカリガラス基板〔コーニング社製の「Eagle XG」〕の両面にクロスニコルになるように貼着した。得られたガラス基板が貼り付けられた試験片(ガラス基板が貼り付けられた粘着剤層付偏光板)を、オートクレーブ中、温度50℃、圧力5kg/cm2(490.3kPa)で、20分間加圧し、評価用サンプルを作製した。このサンプルを用いて次の耐熱耐久性試験を実施した。
〔耐熱耐久性試験〕
作製したサンプルを温度110℃の乾燥条件下で750時間保持した。
【0140】
各試験後のサンプルについて、粘着剤層とガラス基板との界面での浮き及び剥がれの有無、並びに粘着剤層の発泡の有無を目視観察し、下記の評価基準に従って耐熱耐久性を評価した。結果を表3に示す。
A:浮き、剥れ、割れ、発泡等の外観変化が少し認められる。
B:浮き、剥れ、割れ、発泡等の外観変化が大きく認められる。
C:浮き、剥れ、割れ、発泡等の外観変化が非常に大きく認められる。
【表3】
10,20 粘着剤層付光学フィルム、11,24 直線偏光板、12 粘着剤層、13,25 第1保護フィルム、14,16,26,28 接着剤層、15,27 偏光子、17,29 第2保護フィルム、21 粘着剤層、22 位相差フィルム、23 貼合層、30 表示装置、31 液晶表示素子。