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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100769
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ポンプ装置及び電動機
(51)【国際特許分類】
   F04C 28/28 20060101AFI20240719BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20240719BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240719BHJP
   F04C 14/28 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F04C28/28 A
H02K11/21
H02K7/14 B
F04C14/28 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070582
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2020084470の分割
【原出願日】2020-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝英
(72)【発明者】
【氏名】西村 和馬
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝志
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 裕太
(57)【要約】
【課題】ポンプ装置の異常を検出するための振動センサをその検出精度を低下させることなく簡単に設置可能としたポンプ装置及び電動機を提供すること。
【解決手段】ポンプ10と;前記ポンプ10と駆動軸21で接続された電動機11と;前記電動機11の反負荷側の端部に前記駆動軸21の軸線方向に沿って固定されたインバータケース32と;前記インバータケース32内に固定された、前記電動機11の可変速制御を行うインバータ基板31と;前記インバータ基板31上に実装された振動センサ37と;を含むポンプ装置1を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと;
前記ポンプと駆動軸で接続された電動機と;
前記電動機の反負荷側の端部に前記駆動軸の軸線方向に沿って固定されたインバータケースと;
前記インバータケース内にその一面が前記電動機の反負荷側の端部に対向するように固定された、前記電動機の可変速制御を行うインバータ基板と;
前記インバータ基板の前記電動機の反負荷側の端部に対向する面上に実装され、前記ポンプ及び前記電動機の少なくとも一方で発生した振動を検出する振動センサと;を備え、
前記インバータ基板は前記インバータケース内面に複数のネジを用いて固定されており、前記振動センサは、前記複数のネジのいずれかに隣接する位置に実装されている、
ポンプ装置。
【請求項2】
ポンプと;
前記ポンプと駆動軸で接続された電動機と;
前記電動機の反負荷側の端部に前記駆動軸の軸線方向に沿って固定されたインバータケースと;
前記インバータケース内にその一面が前記電動機の反負荷側の端部に対向するように固定された、前記電動機の可変速制御を行うインバータ基板と;
前記インバータ基板の前記電動機の反負荷側の端部に対向する面上に実装され、前記ポンプ及び前記電動機の少なくとも一方で発生した振動を検出する振動センサと;を備え、
前記インバータ基板には、1乃至複数のパワーモジュールが実装されており、前記振動センサは、前記1乃至複数のパワーモジュールに隣接する位置に実装されている、
ポンプ装置。
【請求項3】
前記インバータケース内の前記インバータ基板は、前記インバータケース内の少なくとも一部に充填された樹脂により固定されている、
請求項1又は請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記インバータ基板は、前記電動機の前記ポンプに接続された前記駆動軸に対して垂直に前記インバータケース内に固定されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記振動センサの出力値に基づいて前記ポンプ装置の状態を監視する監視装置を更に備え、
前記監視装置は、前記電動機に関する電動機情報と、前記ポンプに関するポンプ情報とを記憶する記憶部を備え、前記記憶部に記憶された各情報と前記振動センサの出力値に基づいて、前記ポンプ装置の状態を監視する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記監視装置は、前記インバータ基板による前記電動機の駆動状態を取得する駆動状態取得部を更に備え、前記記憶部に記憶された各情報と前記振動センサの出力値と前記駆動状態取得部で取得した前記電動機の駆動状態情報とに基づいて、前記ポンプ装置の状態を監視する、
請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記監視装置は、前記駆動状態取得部で取得した前記電動機の駆動状態が、定常状態である場合に、前記ポンプ装置の状態の監視を行う、
請求項6に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記監視装置は、前記インバータ基板に設けられる、
請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項9】
ポンプを駆動するための電動機であって、
前記ポンプの回転軸に接続された駆動軸と;
前記駆動軸を駆動させる電動機本体と;
前記電動機本体の反負荷側の端部に前記駆動軸の軸線方向に沿って固定されたインバータケースと;
前記インバータケース内にその一面が前記電動機本体の反負荷側の端部に対向するように固定された、前記電動機本体の可変速制御を行うインバータ基板と;
前記インバータ基板の前記電動機本体の反負荷側の端部に対向する面上に実装され、前記ポンプ及び前記電動機の少なくとも一方で発生した振動を検出する振動センサと;を備え、
前記インバータ基板は前記インバータケース内面に複数のネジを用いて固定されており、前記振動センサは、前記複数のネジのいずれかに隣接する位置に実装されている、
電動機。
【請求項10】
ポンプを駆動するための電動機であって、
前記ポンプの回転軸に接続された駆動軸と;
前記駆動軸を駆動させる電動機本体と;
前記電動機本体の反負荷側の端部に前記駆動軸の軸線方向に沿って固定されたインバータケースと;
前記インバータケース内にその一面が前記電動機本体の反負荷側の端部に対向するように固定された、前記電動機本体の可変速制御を行うインバータ基板と;
前記インバータ基板の前記電動機本体の反負荷側の端部に対向する面上に実装され、前記ポンプ及び前記電動機の少なくとも一方で発生した振動を検出する振動センサと;を備え、
前記インバータ基板には、1乃至複数のパワーモジュールが実装されており、前記振動センサは、前記1乃至複数のパワーモジュールに隣接する位置に実装されている、
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置とポンプ装置に用いられる電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビル等の建物に設置され、各給水端へ水を供給する装置として、ポンプ装置を含む給水装置が知られている。このような給水装置に用いられるポンプ装置は、その動力源として電動機が一般に採用されている。加えて、このようなポンプ装置に用いられる電動機としては、その回転速度を可変するためにインバータが設けられているものが知られている。
【0003】
また、ポンプ装置は、その使用によって種々の動作異常を生じることがある。そのため、ポンプ装置の外側の所定位置にこのような動作異常を検出するための振動センサ(加速度ピックアップ)が配設されたものがある(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-010415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような振動センサを用いれば、ポンプ装置の動作異常に起因する振動を検出することが可能である。しかし、特許文献1のもののように振動センサをポンプ装置の外側に取り付けた場合、その取り付け方によって検知できる振動値が変化するため、動作異常に起因する振動を正確に且つ安定して検知することが難しい。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑み、ポンプ装置の異常を検出するための振動センサを、正確且つ安定した検出精度で簡単に設置可能としたポンプ装置及び電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係るポンプ装置1は、例えば図1乃至図3に示すように、ポンプ10と;前記ポンプ10と駆動軸21で接続された電動機11と;前記電動機11の反負荷側の端部に前記駆動軸21の軸線方向に沿って固定されたインバータケース32と;前記インバータケース32内に固定された、前記電動機11の可変速制御を行うインバータ基板31と;前記インバータ基板31上に実装された振動センサ37と;を含むものである。
【0008】
このように構成すると、ポンプ装置1に生じる振動を検知する振動センサ37がインバータ基板31上に実装されているため、ポンプ装置1に生じた振動を正確且つ安定して検知することができるようになる。また、この振動センサ37を設置するためにポンプ装置1に対して別途の取付作業等を必要とせず、振動センサ37のための配線を別途準備する必要もない。
【0009】
本発明の第2の態様に係るポンプ装置1は、例えば図3に示すように、上記本発明の第1の態様に係るポンプ装置1において、前記インバータ基板31は前記インバータケース32内面に複数のネジ40を用いて固定されており、前記振動センサ37は、前記複数のネジ40のいずれかに隣接する位置に実装されている。
【0010】
このように構成すると、インバータケース32に対する固定位置に隣接して振動センサ37を配置することができるため、振動センサ37において、インバータ基板31に実装された部品の影響で生じる電動機11に伝達された振動とは異なる振動を検知することがなくなり、検出精度が向上する。
【0011】
本発明の第3の態様に係るポンプ装置1は、上記本発明の第1の態様に係るポンプ装置1において、前記インバータ基板31には、1乃至複数のパワーモジュール41が実装されており、前記振動センサ37は、前記1乃至複数のパワーモジュール41がインバータ基板31に半田接続される場所に隣接する位置に実装されている。
【0012】
このように構成すると、振動センサ37がインバータ基板31に対して強固に半田固定されたパワーモジュール41に隣接配置することで、インバータ基板31に生じる電動機11に伝達された振動とは異なる振動を検知することがなくなり、検出精度が向上する。
【0013】
本発明の第4の態様に係るポンプ装置1は、例えば図4に示すように、上記本発明の第1乃至3の態様に係るポンプ装置1において、前記インバータケース32内の前記インバータ基板31は、前記インバータケース32内の少なくとも一部に充填された樹脂42により固定されている。
【0014】
このように構成すると、樹脂42によってインバータ基板31がインバータケース32に対して固定されるため、インバータ基板31が単独で振動することがなくなり、振動センサ37の検出精度が向上する。
【0015】
本発明の第5の態様に係るポンプ装置1は、例えば図2及び図3に示すように、上記本発明の第1乃至4の態様に係るポンプ装置1において、前記インバータ基板31は、前記電動機11の前記ポンプ10に接続された前記駆動軸21に対して垂直に前記インバータケース32内に固定されている。
【0016】
このように構成すると、ポンプ装置1において多く発生する駆動軸21に対して垂直な方向の振動に対して振動センサ37の検出精度が特に向上する。
【0017】
本発明の第6の態様に係るポンプ装置1は、例えば図5に示すように、上記本発明の第1乃至5の態様に係るポンプ装置1において、前記振動センサ37の出力値に基づいて前記ポンプ装置1の状態を監視する監視装置50を更に備え、前記監視装置50は、前記電動機11に関する電動機情報と、前記ポンプ10に関するポンプ情報とを記憶する記憶部53を備え、前記記憶部53に記憶された各情報と前記振動センサ37の出力値に基づいて、前記ポンプ装置1の状態を監視する。
【0018】
このように構成すると、監視装置50により、ポンプ装置1に異常あるいは異常の兆候が発生しているか否かを高精度に特定することができるようになる。
【0019】
本発明の第7の態様に係るポンプ装置1は、例えば図5に示すように、上記本発明の第6の態様に係るポンプ装置1において、前記監視装置50は、前記インバータ基板31による前記電動機11の駆動状態を取得する駆動状態取得部55を更に含み、前記記憶部53に記憶された各情報と前記振動センサ37の出力値と前記駆動状態取得部55で取得した前記電動機11の駆動状態情報とに基づいて、前記ポンプ装置1の状態を監視する。
【0020】
このように構成すると、駆動状態を参酌しつつ振動センサ37による検出及びポンプ装置1の監視を実行することができるため、振動センサ37において高い精度で検出された信号に基づいてポンプ装置1の監視を実現することができる。
【0021】
本発明の第8の態様に係るポンプ装置1は、例えば図5に示すように、上記本発明の第7の態様に係るポンプ装置1において、前記監視装置50は、前記駆動状態取得部55で取得した前記電動機11の駆動状態が、定常状態である場合に、前記ポンプ装置1の状態の監視を行う。
【0022】
このように構成すると、ポンプ装置1が定常状態の場合にその状態の監視を行うことで、当該監視に用いられる振動センサ37の出力値に、ポンプ装置1の加速あるいは減速時に生じ得る過渡的な振動が含まれることがなくなる。したがって、ポンプ装置1の監視をより精度よく実現することができる。
【0023】
本発明の第9の態様に係るポンプ装置1は、例えば図5に示すように、上記本発明の第6乃至8の態様に係るポンプ装置1において、前記監視装置50は、前記インバータ基板31に設けられる。
【0024】
このように構成すると、監視装置50がインバータ基板31に設けられることで、ポンプ装置1の監視機能がインバータ基板31上の回路構成のみで実質的に完結できる。
【0025】
本発明の第10の態様に係る電動機11は、例えば図2又は図3に示すように、ポンプ10を駆動するための電動機11であって、前記ポンプ10の回転軸に接続された駆動軸21と;前記駆動軸21を駆動させる電動機本体22と;前記電動機本体22の反負荷側の端部に前記駆動軸21の軸線方向に沿って固定されたインバータケース32と;前記インバータケース32内に固定された、前記電動機本体22の可変速制御を行うインバータ基板31と;前記インバータ基板31上に実装された振動センサ37と;を含むものである。
【0026】
このように構成すると、ポンプ10あるいは電動機11に生じる振動を検知する振動センサ37がインバータ基板31上に実装されているため、ポンプ10あるいは電動機11に生じた振動を正確且つ安定して検知することができるようになる。また、この振動センサ37を設置するために特別な加工等を必要とせず、また振動センサ37のための配線を別途準備する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0027】
上記構成を備えることにより、本発明のポンプ装置及び電動機は、ポンプ装置の異常を検出するための振動センサを、正確且つ安定した検出精度で簡単に設置可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施の形態に係るポンプ装置を示す概略図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る電動機の分解斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る電動機を模式的に示した概略断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る電動機を模式的に示した他の概略断面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るポンプ装置の部分的な機能ブロック図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る振動センサの周波数分析結果の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る振動センサの周波数分析結果の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態に係るポンプ装置1を示す概略図である。本実施の形態に係るポンプ装置1は、図1に示すように、ポンプ10と、インバータ内蔵型電動機11とを含むものである。そして、このポンプ装置1は、例えば建物等に水を供給するための給水装置の一部として用いることができる。
【0031】
ポンプ10は、図1に示すように、例えば周知の横軸単段ポンプとすることができ、建物等に水を供給するためのものである。そしてこのポンプ10は、内部のインペラを回転させるための回転軸を備えており、この回転軸がカップリング12を介して電動機11の後述する駆動軸21に連結されている。なお、本実施の形態においては、ポンプの形式として横軸単段ポンプを例示しているが、これに限らず、例えば縦軸多段ポンプや水中ポンプ等を採用することもできる。また、図1に示すポンプ装置1はポンプ10と電動機11をカップリング12で接続しているが、電動機11の駆動軸21がポンプ10の回転軸と共通の一本の軸で構成されているポンプ装置とすることもできる。
【0032】
図2は、本発明の一実施の形態に係る電動機の分解斜視図である。また、図3は、本発明の一実施の形態に係る電動機を模式的に示した概略断面図である。本実施の形態に係る電動機11は、図2及び図3に示すように、インバータ内蔵型のモータであって、駆動軸21と、駆動軸21を駆動させる電動機本体22と、電動機本体22の反負荷側の端部に設けられたインバータ部23とを含むものである。なお、本実施の形態に係る電動機11においては、ポンプ1が設けられている側を負荷側、この負荷側の反対側を反負荷側と呼んでいる。
【0033】
駆動軸21は、電動機本体22及びインバータ部23の中心部を貫通するように延びており、その負荷側の端部が、カップリング12を介してポンプ10の回転軸に連結されている。また、駆動軸21の反負荷側の端部には、電動機11を冷却するための冷却ファン24が取り付けられている。この冷却ファン24は、インバータ部23に固定されたファンカバー25によりその一部が覆われている。
【0034】
電動機本体22は、駆動軸21に固定されたロータ26と、ロータ26の周囲に配置されたステータ27と、ロータ26及びステータ27を収容するモータケース28と、を主に含むものである。モータケース28に固定された2つの軸受29、30により、駆動軸21がモータケース28に対して回転可能に支持されている。
【0035】
インバータ部23は、インバータ基板31と、このインバータ基板31を収容するインバータケース32とを主に含む。このうち、インバータケース32は、略円盤状のインバータヒートシンク32Aと、インバータヒートシンク32Aの外縁部から負荷側に立設するように固定された略筒状のインバータカバー32Bとから構成されている。インバータヒートシンク32Aに固定されたインバータカバー32Bは、その負荷側の端面がモータケース28の反負荷側の端面に一体的に固定されており、インバータヒートシンク32Aの中心部には、駆動軸21の反負荷側の端部を連通させる筒状壁33が取り付けられている。また、インバータヒートシンク32Aの反負荷側には、上述した冷却ファン24が配置され、且つファンカバー25が固定されている。さらに、冷却ファン24により効率的に電動機11を冷却するために、インバータヒートシンク32Aの表面に加えて、インバータカバー32Bとモータケース28の表面の各所にフィン34が設けられ、結果として、インバータケース32及びモータケース28は全体がヒートシンクとして機能する。なお、図2では、インバータカバー32Bとインバータヒートシンク32Aが分離した構造を例示しているが、インバータカバー32Bとインバータヒートシンク32Aとが一体となった構造であってもよい。
【0036】
インバータ基板31は、種々の電子部品が実装され且つ電気回路が形成された回路基板であって、電動機11を可変速制御するためのものである。ここで、インバータ基板31に実装される電子部品としては、1乃至複数のコンデンサ35や1乃至複数のトランス36、及び後述する振動センサ37等を例示することができる。なお、図3においては、例示した電子部品以外のものをまとめて電子部品38として示し、その詳細な形状等については図示を省略している。
【0037】
また、インバータ基板31は、適所にネジ穴39が設けられている。そして、ネジ40をこのネジ穴39に挿通してインバータヒートシンク32Aに螺合することで、インバータ基板31はインバータヒートシンク32Aに固定されている。本実施の形態のインバータ基板31は、図3に示すように、インバータヒートシンク32Aの内壁面に固定されている。そして、本実施の形態においては、インバータ基板31とインバータヒートシンク32Aの間の空間に、インバータ基板31への電力の供給を制御するためのパワーモジュール41が配置されている。
【0038】
ところで、このような構成を備えるポンプ装置1においては、異常が生じた際、通常とは異なる振動が発生することが知られている。本実施の形態に係るポンプ装置1のような給水装置に用いられるポンプ装置において発生する異常としては、キャビテーション、あるいはポンプ又は電動機の軸受の故障等を挙げることができる。本実施の形態のポンプ装置1において、例えば電動機11の一方の軸受29が故障した場合、この軸受29の故障に起因して駆動軸21が安定して回転できなくなり、結果としてモータケース28及びモータケース28に固定されたインバータケース32に大きな振動が伝達されることになる。同様に、本実施の形態のポンプ装置1のポンプ10において、例えばキャビテーションが発生した場合には、キャビテーションによって生じた振動が先ずポンプ10のインペラあるいはケーシングに伝わり、その後ポンプ10の回転軸、カップリング12、及び駆動軸21と伝達されて、モータケース28及びモータケース28に固定されたインバータケース32を含む電動機11全体に振動が伝達される。
【0039】
本発明者らはこのような異常に起因する振動の伝達経路に着目し、本願発明に至っている。つまり、例示のいずれの異常の場合にも、異常によって生じる振動が電動機11部分にまで伝達されていることから、電動機11に伝達される振動を正確に検出することができれば、ポンプ装置1に発生する異常を精度よく検出できることに想到し、本願発明に至っている。具体的には、本実施の形態に係る電動機11のインバータ基板31に振動センサ37を実装するという構成を採用している。
【0040】
インバータ基板31に実装された振動センサ37は、ポンプ装置1に発生する異常に起因して生じる振動を検出するためのものであって、3次元の振動を検出可能なセンサを採用することができる。3次元方向の各振動を検出するための振動センサとしては、例えば周知の3軸加速度センサ等を採用することができる。そして、カップリング12を介して電動機11に伝達されたポンプ10に生じた異常(例えば、キャビテーションの発生や、ポンプ10の軸受の故障)に伴う振動、あるいは電動機11自体に発生した異常(例えば、軸受29、30の故障)に伴う振動は、電動機11のモータケース28、モータケース28に固定されたインバータカバー32Bあるいは筒状壁33、インバータヒートシンク32A、そしてインバータヒートシンク32Aにネジ40で固定されたインバータ基板31の順で伝達されることで、このインバータ基板31に実装された振動センサ37で検出される。そして、ここで検出された振動を参酌して、ポンプ装置1の異常の有無を判断あるいは推定する。
【0041】
ここで、本発明の振動センサ37が、ネジ40及び/又はパワーモジュール41に隣接する位置に位置決めされることは、特に留意すべき事項である。このような位置に振動センサ37を配置すると、ネジ40はまさにインバータケース32に固定されたものであり、またパワーモジュール41(IGBT、パワーMOSFET等)は、一般的にヒートシンク32Aにねじ固定され、基板に対しては強固に半田固定される部材であることから、振動センサ37がインバータ基板31に伝達された振動を検出する際、検出結果にインバータ基板31に実装されたコンデンサ35等に起因するインバータ基板31自体の振動が混入し難くなる。なお、ここでいう「隣接」とは、振動センサ37とネジ40あるいはパワーモジュール41との間の他の電子部品が介在することなく、且つ近接した位置に配されていることを指している。したがって、本実施の形態においては、図2及び図3に示すように、振動センサ37はネジ40にのみ隣接配置されている。しかし、本発明はこれに限定されず、パワーモジュール41に隣接配置していても、ネジ40及びパワーモジュール41の両方に隣接配置していてもよい。
【0042】
図4は、本発明の一実施の形態に係る電動機を模式的に示した他の概略断面図である。上述したように、振動センサ37の検出結果に他の振動、具体的には上述したインバータ基板31自体の振動を混入させないことが検出結果の精度を担保する上で重要である。そこで、振動センサ37の検出結果にノイズとなり得る他の振動を混入させないための他の方法として、図4に示すように、インバータケース32内の反負荷側の一部に樹脂(モールド樹脂)42を充填してインバータ基板31をインバータケース32にモールド固定してもよい。このようにインバータ基板31全体を樹脂モールドすることで、インバータ基板31がそれ単体で振動することがないようにできる。この場合には、上述したノイズの混入が抑えられることに加え、振動センサ37の実装位置が制約されなくなるため、インバータ基板31のレイアウトの自由度が向上する。
【0043】
また、本実施の形態に示すように、インバータ基板31を駆動軸21に対して垂直となるようにインバータケース32に固定することは、インバータ基板31に実装されている振動センサ37の検出精度を維持する観点において好ましい。ポンプ装置1に生じる振動は、一般に、駆動軸21の延在方向ではなく駆動軸21の回転方向(駆動軸21に対して垂直な方向)に生じる傾向がある。他方、インバータ基板31に生じるたわみによる振動は、駆動軸21の延在方向(軸方向)に発生し易い傾向がある。したがって、本発明のインバータ基板31の固定方法によれば、インバータ基板31自体の振動の駆動軸21の回転方向の振動成分への影響が少なくなり、精度よくポンプ装置1に生じる振動を検出できる。
【0044】
以上説明した通り、本実施の形態に係るポンプ装置1及び電動機11においては、ポンプ装置1の異常を検出するための振動センサ37をインバータ基板31に実装する形で採用したことにより、振動センサ37のポンプ装置1毎の取付作業の必要がなく、ポンプ装置1に生じる振動を安定して高精度に検出することが可能となっている。また、振動センサ37をインバータ基板31に実装することで、例えば振動センサ37をポンプ10や電動機11の外壁、あるいは各軸受部分等に取り付けた場合に必要であった、専用の信号線が不要となり、簡易な構成でポンプ装置1の振動を検出できるようになる。
【0045】
ところで、上述した構成によれば、振動センサ37により精度よくポンプ装置1に生じた振動を検出することが可能であるが、その検出結果の具体的な利用方法によっては、ポンプ装置1の異常を精度よく検出することはできない。特に異常が実際に発生した場合に加えて、異常の兆候を検出しようとした場合には、その利用方法は特に重要である。そこで、本発明においては、振動センサ37で検出した検出結果を用いて異常あるいは異常の兆候(以下、これらをまとめて単に「異常」という。)の有無を監視することが可能な、ポンプ装置及び電動機を提供することを他の目的として含むものとする。以下には、当該他の目的を達成するための構成について説明する。
【0046】
図5は、本発明の一実施の形態に係るポンプ装置の部分的な機能ブロック図である。本実施の形態に係るポンプ装置1においては、インバータ基板31に、上述した振動センサ37等に加えて、さらに監視装置50を含んでいる。
【0047】
監視装置50は、ポンプ装置1に異常があるかどうかを監視するための装置である。この監視装置50は、少なくとも、検出結果取得部51と、計算部52と、記憶部53と、インタフェース54と、を含むものである。これらの各構成要素は、監視装置50内の内部バスを介して相互に通信可能となっている。
【0048】
検出結果取得部51は、振動センサ37に接続されており、振動センサ37の検出結果を取得し、後述する計算部52あるいは記憶部53に検出結果のデータを転送するものである。
【0049】
計算部52は、主にマイコン等の演算装置で構成され、検出結果取得部51で取得した検出結果のデータに対して周波数分析を行うものである。またこの計算部52は、必要に応じて周波数分析の結果に基づいてポンプ装置1に異常があるかどうかを判断してもよい。周波数分析の手法としては周知の方法を採用することができる。例示すれば、上記検出結果の生データを高速フーリエ変換(FFT)した結果に含まれる周波数の分布等を観測することで、振動の要因等を特定し、異常の有無を判断することができる。
【0050】
記憶部53は、揮発性又は不揮発性メモリといった周知の記憶媒体で構成されたものであり、計算部52を動作させるためのプログラムや計算部52での計算に必要な各種情報が格納可能なものである。また、この記憶部53には、電動機11に関連する電動機情報(例えば極数、軸受玉数、冷却ファン24の羽根枚数等)と、ポンプ10に関連するポンプ情報(例えばインペラの羽根枚数、軸受玉数等)とが記憶されている。これらの情報は、計算部52においてポンプ装置1の異常を判断する際に用いられる。
【0051】
インタフェース54は、監視装置50に対する情報等の入出力を行うためのものである。このインタフェース54としては種々の構成が採用できるが、本実施の形態においては、赤外線通信やBluetooth(登録商標)、NFCに代表される近距離無線通信を利用した通信手段を少なくとも備えており、外部装置、例えばスマートフォン、タブレット端末、モバイルPC等の携帯通信端末13との間の双方向通信を実現しているものが採用されている。これにより、例えば計算部52で計算された周波数分析結果や異常の有無の判断結果を携帯通信端末13に送信したり、携帯通信端末13からの各種要求を受信したりすることができる。なお、インタフェース54としては上述のような構成に限定されず、例えばキーボードやポインティングデバイス等の入力インタフェースと、モニタやスピーカ等の出力インタフェースとを組み合わせたものを採用することもできる。また、外部装置についても、上述した携帯通信端末13に限定されず、例えばネットワーク回線等に接続された管理サーバであってもよい。
【0052】
本実施の形態に係る監視装置50においては、上述した構成に加えて、更に電動機11の駆動状態を取得するための駆動状態取得部55を含む。この駆動状態取得部55は、図5に示すように、インバータ基板31に形成されたインバータ回路やインバータ基板31上に実装されたコンデンサ35等からなるインバータ装置31Aの制御信号を取得することで、電動機11の運転周波数を含む駆動状態を特定するものである。そして、監視装置50は、計算部52における周波数分析に際し、この駆動状態取得部55で取得された電動機11の駆動状態情報を用いることで、電動機1の運転周波数を踏まえた周波数分析を行うことができ、高い分析精度を実現しているものである。
【0053】
上述した構成により、監視装置50は、ポンプ装置1の監視を行うことができる。この監視装置50による監視の具体的な方法の一例を説示すると、先ず事前にポンプ装置1に異常が発生してないときの振動センサ37の検出結果を複数回取得しておく。そして、計算部52において、当該検出結果と記憶部52に記憶された電動機情報及びポンプ情報とに基づいて、周波数分析を実行し、ポンプ装置1に異常が発生していないときの種々のタイミングにおける分析結果を(例えば周知の機械学習手法を用いて)学習・記憶する。その上で、ポンプ装置1を通常動作させ、振動センサ37の検出結果を逐次取得し、計算部52において同様に周波数分析を行う。そして、周波数分析の結果を予め記憶しておいたポンプ装置1に異常が発生していないときの分析結果と比較してその変化を特定することで、異常の発生の有無を特定する。
【0054】
図6は、本発明の一実施の形態に係る振動センサの周波数分析結果の一例を示す図である。図6中、符号D1で示す分析結果のグラフは、予め記憶部53に記憶された、ポンプ装置1に異常が発生していない場合における任意のタイミングでの分析結果であり、符号D2で示す分析結果のグラフは、ポンプ装置1に異常が発生している場合における同タイミングでの分析結果である。図6の例においては、両分析結果D1、D2のグラフの各周波数における振動(振幅)のレベルの分布が、相対的に横方向にシフトしていることが理解できる。計算部52では、このような分析結果の変化を特定することで、ポンプ装置1に異常が発生したことを特定することができる。
【0055】
また、図7は、本発明の一実施の形態に係る振動センサの周波数分析結果の他の例を示す図である。図7中、符号D3で示す分析結果のグラフは、予め記憶部53に記憶された、ポンプ装置1に異常が発生していない場合における(図6に示すタイミングとは異なる)任意のタイミングでの分析結果であり、符号D4で示す分析結果のグラフは、ポンプ装置1に異常が発生している場合における同タイミングでの分析結果である。図7の例においては、特定の周波数において分析結果D3よりも分析結果D4の方が振動のレベルが大きくなっていることが理解できる。計算部52では、このような分析結果の変化をも特定することで、ポンプ装置1に異常が発生したことを特定することができる。そして、計算部52における特定結果あるいは図6又は図7に示す分析結果を、インタフェース54を用いて携帯通信端末13に送信することで、ポンプ装置1を管理するユーザ等に異常の発生を報知することが可能となる。
【0056】
振動センサ37の検出結果に基づいた異常の特定方法としては、上述した方法に限定されない。例えば、単に振動センサ37で検出した振動のレベルが、ポンプ情報及びモータ情報等に基づいて予め設定した閾値以上に大きくなった場合に、異常が発生したと特定することもできる。前記の振動のレベルとは、測定した振動データを周波数解析した結果のオーバーオール値(OA値)でもよいし、予め設定していた周波数の振動レベルでもよい。また、上述した方法によって異常を特定することに加えて、振動センサの周波数分析結果、インバータの運転周波数、記憶部53に記憶されたポンプ情報及びモータ情報等を参酌することで、異常が発生した場所を特定あるいは推定することもできる。
【0057】
ところで、本実施の形態に係る振動センサ37は、上述した通り精度よくポンプ装置1に生じた振動を検出することが可能であるが、その検出結果が常に異常の監視に好適なものとは限らない。詳しく言えば、電動機11の加速あるいは減速時においては、ポンプ装置1に過渡的な振動が発生しやすく、また加速及び減速時は電動機11の回転周波数が変動していることから、この時の振動センサ37の検出結果は異常の発生の有無を判断する際のデータとしてはあまり適切ではない。そこで、本実施の形態における監視装置50は、更に、駆動状態取得部55で取得した駆動状態から、電動機11が加速・減速状態であるのか、あるいは定常状態であるのかを特定し、電動機11が定常状態である場合にのみ振動センサ37による振動検出を行うようにする。このように振動検出タイミングを制御することにより、監視装置50は、常に精度の高い異常の監視を実現できるようになる。
【0058】
また、本実施の形態のように、監視装置50をインバータ基板31に設けると、インバータ基板31上で一連の監視プロセスの全てを実現することが可能となり、単独で異常の監視機能を実現した電動機を提供することができる。特に、インバータ基板31が可変速制御のみならず振動を用いた異常検知機能をも備えることで、異常を検知するための手段をポンプ装置1とは別に準備した場合にはその実行が困難であった、電動機11が特定の駆動状態である場合のみ異常検知を行うといった制御を簡単に実現することができる点において特に有利である。ただし、監視装置50は必ずしもインバータ基板31に設ける必要はなく、インバータケース32内の所定の位置に配設されていてもよいし、あるいは、監視装置50の主たる機能は携帯通信端末13に搭載し、インバータ基板31には振動センサ37の検出結果や電動機11の駆動状態等を送信するための通信機能のみを設けるようにしてもよい。
【0059】
以上説明した通り、上述した監視装置50をポンプ装置1の電動機11等に採用すれば、振動センサ37の検出結果を利用したポンプ装置1の異常の監視を実現することができる。
【0060】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 ポンプ装置
10 ポンプ
11 インバータ内蔵型電動機
12 カップリング
13 携帯通信端末
21 駆動軸
22 電動機本体
23 インバータ部
24 冷却ファン
25 ファンカバー
26 ロータ
27 ステータ
28 モータケース
29、30 軸受
31 インバータ基板
31A インバータ装置
32 インバータケース
32A インバータヒートシンク
32B インバータカバー
33 筒状壁
34 フィン
35 コンデンサ
36 電源トランス
37 振動センサ
38 電子部品
39 ネジ穴
40 ネジ
41 パワーモジュール
42 樹脂
50 監視装置
51 検出結果取得部
52 計算部
53 記憶部
54 インタフェース
55 駆動状態取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7