(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101106
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】可動装置、光走査システム、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置及び移動体、可動装置の製造方法。
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240722BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240722BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240722BHJP
G02B 7/198 20210101ALI20240722BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20240722BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240722BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240722BHJP
B81C 3/00 20060101ALI20240722BHJP
B81B 7/02 20060101ALI20240722BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240722BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240722BHJP
G02B 5/08 20060101ALN20240722BHJP
【FI】
G02B26/10 101
G02B26/10 C
G02B27/02 Z
G02B27/01
G02B7/198
B41J2/47 101P
G01S7/481 A
B81B3/00
B81C3/00
B81B7/02
B60K35/00 A
H04N5/64 511A
H04N5/64 501D
H04N5/64 521Z
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004840
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】新川 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 大生
【テーマコード(参考)】
2C362
2H042
2H043
2H045
2H199
3C081
3D344
5J084
【Fターム(参考)】
2C362BA17
2C362BA83
2H042DA02
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2H045BA24
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3C081AA13
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5J084EA22
(57)【要約】
【課題】
可動部の振れ角をより大きくすることが可能な可動装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、第1の可動部と、前記第1の可動部を回動させる駆動部と、前記第1の可動部に対向する第2の可動部と、前記第1の可動部と前記第2の可動部とを接続する接続部と、を有し、前記接続部は、前記第1の可動部から前記第2の可動部の方向に延伸する第1柱部と、前記第2の可動部から前記第1の可動部の方向に延伸する第2柱部と、を含むことを特徴とする可動装置である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の可動部と、
前記第1の可動部を回動させる駆動部と、
前記第1の可動部に対向する第2の可動部と、
前記第1の可動部と前記第2の可動部とを接続する接続部と、を有し、
前記接続部は、
前記第1の可動部から前記第2の可動部の方向に延伸する第1柱部と、
前記第2の可動部から前記第1の可動部の方向に延伸する第2柱部と、を含む
ことを特徴とする可動装置。
【請求項2】
前記第1柱部と前記第2柱部とが、
接着剤によって接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項3】
前記第1柱部の前記第2の可動部と対向する面と、前記第2柱部の前記第1の可動部と対向する面と、が接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項4】
前記第1柱部と前記第2柱部の対向する面の形状は異なること
を特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項5】
前記第1柱部と前記第2柱部の対向する面の面積は異なること
を特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項6】
前記第2の可動部は、前記第2柱部の周囲に凸部を備え、
前記第2柱部の延伸する方向における前記凸部の厚さは、前記第2柱部の厚さ以下である、こと
を特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項7】
前記凸部と前記第2柱部は、連結している
ことを特徴とする請求項4に記載の可動装置。
【請求項8】
前記可動部と前記駆動部と前記反射部と
平面視においていずれかが重なっている
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項9】
前記可動部に光学素子が設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項10】
前記駆動部を支持する支持部を有し、
前記第2の可動部は、前記第1の可動部に対し前記支持部よりも突出している
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項11】
第1のウエハに反射部、第1柱部および凸部を形成する工程と、
第2のウエハに駆動部、可動部、および第2柱部を形成する工程と、
前記第1柱部と前記第2柱部とを接合する工程とを含む
ことを特徴とする可動装置の製造方法。
【請求項12】
前記接続部が複数から構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項13】
前記駆動部がミアンダ構造である
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項14】
前記駆動部は、前記可動部を第1軸周りに回動させる第1の駆動部と、
前記第1軸と交差する第2軸周りに回動させる第2の駆動部と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項15】
請求項1に記載の可動装置を有する光走査システムを有する投影装置。
【請求項16】
請求項1に記載の可動装置を備えるヘッドマウントディスプレイ。
【請求項17】
請求項1に記載の可動装置を備えるヘッドアップディスプレイ。
【請求項18】
請求項1に記載の可動装置を備えるレーザヘッドランプ。
【請求項19】
請求項1に記載の可動装置を備える物体認識装置。
【請求項20】
請求項16に記載のヘッドアップディスプレイ、請求項18に記載のレーザヘッドランプ、及び請求項19に記載の物体認識装置の少なくとも1つを有する移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動装置、光走査システム、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置及び移動体、可動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、二軸光偏向器において、ミラー駆動部は、第1のウエハを加工して形成され、ミラー部は第2のウエハを加工して形成され、ミラー部に設けられた支柱部と、ミラー駆動部の裏面のミラー支持台とが接合されていることを特徴とする二軸光偏向器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動部の振れ角をより大きくすることが可能な可動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる可動装置は、第1の可動部と、前記第1の可動部を回動させる駆動部と、前記第1の可動部に対向する第2の可動部と、前記第1の可動部と前記第2の可動部とを接続する接続部と、を有し、前記接続部は、前記第1の可動部から前記第2の可動部の方向に延伸する第1柱部と、前記第2の可動部から前記第1の可動部の方向に延伸する第2柱部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
可動部の振れ角をより大きくすることが可能な可動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の前提となる可動装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図9】本実施例の効果を示すシミュレーション結果である。
【
図10】本実施形態の製造方法を説明する図である。
【
図17】第6の変形例およびその類型を示す図である。
【
図18】(a)本実施形態の断面図(b)第7の変形例の断面図(c)第8の変形例の断面図である。
【
図20】第10の変形例の(a)平面図(b)断面図である。
【
図24】光走査システムの一例のハードウェア構成図である。
【
図26】光走査システムにかかる処理の一例のフローチャートである。
【
図27】ヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図28】ヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図である。
【
図29】光書込装置を搭載した画像形成装置の一例の概略図である。
【
図31】ライダ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図33】レーザヘッドランプの構成の一例を説明する概略図である。
【
図34】ヘッドマウントディスプレイの構成の一例を示す概略斜視図である。
【
図35】ヘッドマウントディスプレイの構成の一部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<可動装置の構成>
【0010】
図1は本発明の前提となる可動装置の構成の一例を示す平面図である。
図1に示すように、可動装置13は、入射した光を反射するミラー部101と、ミラー部に接続され、ミラー部をY軸に平行な第1軸周りに駆動する第1駆動部材110a、第2駆動部材110bと、ミラー部及び第1駆動部材110aを支持する第1支持部120と、第1支持部に接続され、ミラー部及び第1支持部をX軸に平行な第2軸周りに駆動する第3駆動部130a、第4駆動部130bと、第3及び第4駆動部を支持する第2支持部140と、第1駆動部~第4駆動部及び制御装置に電気的に接続される電極接続部150と、を有する。
【0011】
可動装置13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理等により成形し、成形した基板上に反射面14や第1及び第2の駆動部112a、112b、第3駆動部131a~131f、及び第4駆動部132a~132f、電極接続部150等を形成することで、各構成部が一体的に形成されている。なお、上記の各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
【0012】
図2は
図1に示した可動装置の断面図である。SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる第1のシリコン支持層161の上に酸化シリコン層162が設けられ、その酸化シリコン層の上にさらに単結晶シリコンからなる第2のシリコン層が設けられている基板である。以降、第1のシリコン層をシリコン支持層161、第2のシリコン層をシリコン活性層163とする。
【0013】
シリコン活性層163は、X軸方向又はY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163のみで構成された駆動部は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。
【0014】
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば可動装置13の形成に用いられる駆動部はSOI基板に限られない。
【0015】
ミラー部101は、例えば、円形状のミラー基体102と、ミラー基体の+Z側の面上に形成された反射面14とから構成される。ミラー基体102は、例えば、シリコン活性層163から構成される。反射面14は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成される。また、ミラー部101は、ミラー基体102の-Z側の面にミラー部補強用のリブ(凸部)が形成されていてもよい。リブは、例えば、シリコン支持層161及び酸化シリコン層162から構成され、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制することができる。
【0016】
第1駆動部材110a、第2駆動部材110bは、ミラー基体102に一端が接続し、他端は支持部120に接続されている。第1駆動部材110aは、トーションバー111aと第1駆動部112aと第1駆動部の支持体から構成される。ミラー部101を可動可能に支持する2つのトーションバー111a、111bが、第1軸方向にそれぞれ延びており、第1駆動部112aの支持体及び第2駆動部112bの支持体に接続しており、駆動部の支持体は支持部120に接続している。
【0017】
図2に示されるように、トーションバー111a、111bはシリコン活性層163から構成される。また、第1駆動部112a、第2駆動部112bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)又は白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
【0018】
図1に戻り、第1支持部120は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、ミラー部101を囲うように形成された矩形形状の支持体である。
【0019】
第3駆動部130a、第4駆動部130bは、例えば、折り返すように連結された複数の第3駆動部131a~131f、第4駆動部132a~132fから構成されており、第3駆動部130a、第4駆動部130bの一端は第1支持部120の外周部に接続され、他端は第2支持部140の内周部に接続されている。このとき、第3駆動部130aの支持体と第1支持部120の接続箇所及び第4駆動部130bの支持体と第1支持部120の接続箇所、さらに第3駆動部130aの支持体と第2支持部140の接続箇所及び第4駆動部130bの支持体と第2支持部140の接続箇所は、反射面14の中心に対して点対称となっている。
【0020】
複数の梁部が折り返すように接続されたミアンダ構造で、各々の梁部の+Z側の面の上に、梁部ごとに、交互に圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bが設けられている。圧電駆動部郡A113aのみを駆動、又は圧電駆動部郡B113bのみを駆動とすることで、負電圧を使わずともミラーの振れ角を+側、あるいは-側と制御することが可能である。また、圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bに逆位相の電圧を与え、印加する信号の電圧や時間領域での切り替えを行う際、圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bとで信号の切り替えに時間差を与え、発生する機械的な振動が圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bとで逆相するようにして打ち消すことも可能である。これにより、高速な描画や複雑な駆動波形への応答が可能になる。
【0021】
図2に示されるように、第3駆動部130a、第4駆動部130bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)又は白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
【0022】
図1に戻り、第2支持部140は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、ミラー部101、第1駆動部材110a、第2駆動部材110b、第1支持部120及び第3駆動部130a、第4駆動部130bを囲うように形成された矩形の支持体である。
【0023】
電極接続部150は、例えば、第2支持部140の+Z側の面上に形成され、第1駆動部112a、第2駆動部112b、第3駆動131a~131f、第4駆動132a~132fの各上部電極203及び各下部電極201,及び制御装置11にアルミニウム(Al)等の電極配線を介して電気的に接続されている。なお、上部電極203又は下部電極201は、それぞれが電極接続部と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層163の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば-Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面及び他面の双方に設けても良い。
【0025】
また、ミラー部を第1軸周り又は第2軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。例えば、トーションバー111a、111bや第1駆動部112a、第2駆動部112bが曲率を有した形状を有していてもよい。
【0026】
さらに、第1駆動部材110a、第2駆動部材110bの上部電極203の+Z側の面上、第1支持部の+Z側の面上、第3駆動部130a、第4駆動部130bの上部電極203の+Z側の面上、第2支持部の+Z側の面上の少なくともいずれかに酸化シリコン膜からなる絶縁層が形成されていてもよい。このとき、絶縁層の上に電極配線を設け、また、上部電極203又は下部電極201と電極配線とが接続される接続スポットのみ、開口部として部分的に絶縁層を除去又は絶縁層を形成しないことにより、第1駆動部材110a、第2駆動部材110b、第3駆動部130a、第4駆動部130b及び電極配線の設計自由度を上げ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。また、酸化シリコン膜は、反射防止材としていの機能も備える。
【0027】
[制御装置の制御の詳細]
次に、可動装置の第1~4駆動部を駆動させる制御装置の制御の詳細について説明する。
【0028】
第1駆動部材110a、第2駆動部材110b、第3駆動部130a、第4駆動部130bが備える圧電部202は、分極方向に正又は負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば、伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第1駆動部材110a,第2駆動部材110b、第3駆動部130a、第4駆動部130bは、上記の逆圧電効果を利用してミラー部101を可動させる。
【0029】
このとき、ミラー部101の反射面14がXY平面に対して+Z方向又は-Z方向へ傾いた時のXY平面と反射面14により成す角度を、振れ角とよぶ。この時、+Z方向を正の振れ角、-Z方向を負の振れ角とする。
【0030】
まず、第1駆動部を駆動させる制御装置の制御について説明する。第1駆動部材110a、第2駆動部材110bでは、第1駆動部112a、第2駆動部112bが有する圧電部202に、上部電極203及び下部電極201を介して駆動電圧が並列に印加されると、それぞれの圧電部202が変形する。この圧電部202の変形による作用により、第1駆動部112a、第2駆動部112bが屈曲変形する。その結果、2つのトーションバー(梁部)111a、111bのねじれを介してミラー部101に第1軸周りの駆動力が作用し、ミラー部101が第1軸周りに可動する。第1駆動部材110a、第2に駆動部110bに印加される駆動電圧は、制御装置11によって制御される。
【0031】
そこで、制御装置11によって、第1駆動部材110a、第2駆動部材110bが有する第1駆動部112a、第2駆動部112bに所定の正弦波形の駆動電圧を並行して印加することで、ミラー部101を、第1軸周りに所定の正弦波形の駆動電圧の周期で可動させることができる。
【0032】
特に、例えば、正弦波形電圧の周波数がトーションバー111a、111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合、トーションバー111a、111bのねじれによる機械的共振が生じることを利用して、ミラー部101を約20kHzで共振振動させることができる。
【0033】
図3は第1の比較例を示す平面図である。ミラー部101に対して第1~第4の駆動部の位置が異なる。駆動部材(110a~110d)には、駆動部、トーションバーおよび支持部120に接続する支持体などを含む。
【0034】
図4は第1の比較例の直線A-A’の断面図である。反射面14はミラー基体102の表面に形成され、駆動部112d、112bによって回動する。ミラー基体102はリブ141によって機械的な強度を上げている。リブ141はシリコン支持層161によって形成されている。
【0035】
図1は、ラスタ走査に適した2次元に光偏向可能な可動装置である。一方で、
図3に示す可動装置は、4つの駆動部を有することで、ベクタースキャンやリサージュスキャンに適した2次元に光偏向可能な可動装置である。ラスタ走査は、
図5に示すように、画面に画像などを一様に表現する場合に適している。ベクタースキャンは、
図6に示すように、効率的に短時間の走査で図形などを示すことが可能である。特に、
図6に示す始点終点4から一筆書きで図形などを表示する場合は、非常に効率がよい。
【0036】
また、材質や製造工程や電気的な接続や制御方法は
図1と同様の構成で実施可能であるが、実施形態例に限定されない。駆動部の駆動方式は圧電駆動に限定されない。静電駆動、電磁駆動、熱電駆動であってもよい。各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。
図4はいずれも
図2で示す断面図のように、可動部と駆動部は同じ基板で形成されている。例えばSOI基板のシリコン活性層である。
【0037】
図7は本実施形態の可動装置を示す図である。中央部に可動部台座3があり、トーションバー111aによって支持されている。トーションバー111aと駆動部112aを含む駆動部材110aは支持部120に固定されている。可動部台座3は駆動部材(110a~110d)によって、4か所から支持されている。それぞれの駆動部材は駆動部を有しており、駆動部は可動部台座3を2次元の+の振れ角、-の振れ角に回動する。可動部台座の奥にはミラー部101が接続されており、可動部台座3を介してミラー部101を2次元に回動させることができる。なお、可動部台座3は第1の可動部の一例であり、ミラー部101は第2の可動部の一例である。
【0038】
図8は本実施形態の
図7のA-A’断面図である。可動部台座3と支持層124と接合部121とピラー122とミラー基体102を備えている。
図8の紙面上方向は、
図7における+Z方向に対応する。
【0039】
支持部120は、例えば、SOI基板によって形成され、シリコン支持層163と、酸化シリコン層162と、シリコン活性層161で構成されている。
可動部台座3は、例えば、SOI基板によって形成され、シリコン活性層128と酸化シリコン層126で構成されている。これらの層は、支持部120を構成するSOI基板と同一のSOI基板(第1のSOI基板)によって形成され、それぞれシリコン活性層163及び酸化シリコン層162と同一の層で構成される。可動部台座3には支持層124が形成されている。支持層124も、第1のSOI基板によって形成されており、シリコン支持層161の層で構成される。支持層124は選択性のドライエッチングによって任意形状に一体的に形成され、平面状の可動部台座3から下方に突き出している。支持部120と支持層124とは同じシリコン支持層からなり同じエッチングのプロセスで加工されているため、その厚さはほぼ同等の厚さになっている。支持層124は強固に可動部台座3と接続している。支持層124は連結部が有する第1柱部の一例である。
【0040】
ミラー部101は、例えば、SOI基板によって形成され、反射面106と、シリコン活性層303と、酸化シリコン層302で構成される。なお、ミラー部101は、第1のSOI基板とは異なるSOI基板(第2のSOI基板)によって形成される。第2のSOI基板も同様に、シリコン活性層303、酸化シリコン層302、シリコン支持層301で構成される。第2のSOI基板で、ミラー部101が形成されており、ピラー122およびリブ141はシリコン支持層301から構成されている。ミラー基体102はシリコン活性層303によって構成され、その下面に反射面(裏面)106が構成されている。支持層124は第1のピラーの一例である。ピラー122は第2のピラーの一例である。また、ピラー122は、接続部が有する第2柱部の一例である。
【0041】
リブ141、ピラー122、ミラー基体102は同一のSOI基板から半導体プロセスによって加工され、一体的に成形されている。
【0042】
ピラー122およびリブ141はSOI基板の同一のシリコン支持層によって形成され、つまりは同一共有結合の結晶によってピラー122とリブ141とは連結している。厚さが数十ミクロンの薄いシリコン活性層のミラー基体102に対し、シリコン支持層は厚さ数100ミクロンあり、ミラー基体102の骨格となっている。
【0043】
図8ではピラー122とリブ141とは、離れているが、連続的に形成してもよい。連続して形成することで、ピラー122の強度を補強し、かつ、ミラー基体102の変形を抑制することが可能となる。リブ141とピラー122が一体となってミラー基体102の構造を強化することが可能となる。特に、ミラー基体102の応力が集中する連結部(支持層124)との接合部の近傍にも、リブ141を配置し、ピラー122と強固に接合することで、効率的に強度を高めている。
【0044】
第2のSOI基板でリブ141を形成することで、ミラー部101の強度を高めることができる。そのため、シリコン活性層303の薄い層で、ミラーの大部分を占めるミラー基体102を構成することができ、軽量化が図れている。リブ機能による機械強度の維持により、ミラーを軽量化でき、慣性モーメントを低減、高速化および高画角化の効果がある。これにより同じ駆動力に対しても大きな画角が得られる。
【0045】
リブ141は、ミラー基体102の周辺に形成されている。リブ141は第2のSOI基板のシリコン支持層301によって構成されている。このリブ141の高さは、先のピラー122の高さ同じである。これは半導体プロセスによって、同じエッチングプロセスに加工されていることに起因する。
【0046】
ピラー122と支持層124は、可動部台座3とミラー部101を連結する連結部の一例であり、ピラー122と支持層124の対向する面が接合している。これにより、支持層124の厚さ以上に接近することはない。リブ141も同様に、支持層124の厚さ分、第1のSOI基板からは距離が離れている。この支持層124とピラー122が接合されることによって、適切な距離リブが141にも適切な距離が形成できる。このため、ミラー部101が回動した際にも、リブ141が、第1のSOI基板に形成される駆動部112b、112dやトーションバー111d、111bと接触することがない。これによりミラー部101の振れ角をより大きくすることが実現できる。
【0047】
シリコン支持層301でリブ(周辺部)141を形成することで、薄いシリコン活性層303であるミラー基体102をリブで補強することで、ミラー部101全体的の重さを軽くできる。ミラー部101の全体の慣性モーメントを低減する効果があり、高速化・高画角化の効果がある。また、大きな画角が得やすくなる。
【0048】
支持層124の下面(-Z方向を法線とする面)は、ピラー122との接合を強固にする接合部121を有している。接合部121は接着性樹脂から構成され、ピラー122と支持層と接合している。支持層124の下面およびピラー122の上面(+Z方向を法線とする面)は接合面の一例である。支持層124の直径に対し接着性樹脂121の直径は小さくなるように構成している。支持層124の側面に接着性樹脂が存在すると、対称性の良い回動ができなくなる。このため、接着性樹脂が支持層の側面に流れ出ないように製造上工夫している。
【0049】
従来例では、第1のSOI基板のみでピラー部を形成している。この場合、シリコン支持層の厚さには限界がある。また、このピラーを形成するドライエッチングに関してもレジストの選択比からも、ピラーの高さには限界があった。
【0050】
本実施形態では、第1のSOI基板からなる支持層124のシリコン支持層と、第2のSOI基板のシリコン支持層であるピラー122を接合している。これにより、支持層124とピラー122の厚さが同じである場合は、連結部が何れか一方のみで構成されている場合に比べて2倍のシリコン支持層の厚さ、ピラー122および支持層124の高さを実現できる。ミラー部101とトーションバー111b、111dや駆動部112b、112dとの距離を大きくとることができている。これにより、ミラー部101を大きく揺動しても駆動部などとの接触がなくなる。そのため大きな画角を得ることができ、駆動部などとの接触による破損等を抑制することができる。
【0051】
また、ミラー部101を有する部材と、駆動部を有する部材を分け、厚さ方向に接合することで、ミラー部101とトーションバー111b、111dや駆動部112b、112dが厚さ方向に重なっていてもよいこととなる。ミラー部と駆動部などを積層することで、それぞれの構成要素のスペースを確保できる。ミラー部を駆動部と重ねるように、最大限に大きく配置することが可能となる。ミラー部が大きいことにより走査するビームなどの走査範囲を拡張することが可能となる。
【0052】
円筒状のピラー122の直径211は、可動部台座3の直径212よりも小さく構成される。支持層124の直径210は可動部台座3の直径212よりも小さい。これにより、可動部台座3は大きな直径を有していることにより可動部の大きなトルクを確保することができる。またトーションバー111b、111dも太く構成でき、機械強度も維持できる。同時にピラー122が細いことで慣性モーメント低減の低減を実現できている。これにより振り幅が大きい可動装置を実現できる。
【0053】
接合部121には接着性樹脂が備わっており、接合部121を接着性樹脂と呼ぶことがある。本実施形態ではピラー122は円柱状であり、支持層124も円柱状である。本実施形態では、ピラー122と支持層124はほぼ同軸に実装されている。
【0054】
支持層124の下面は弾性体である接着性樹脂121によって、ピラー122に固定されている。
【0055】
支持層124とピラー122との相対的な位置関係は、ミラー部101を実装する際のダイボンダーの性能でほぼ決められている。これはダイボンダーに備わっている焦点深度の深い実体顕微鏡の回折限界に依存している。
【0056】
ピラー122の下面である接合面には、実装する前に、接着性樹脂を塗布する。接合面全面に均等に接着性樹脂を塗布するために、転写方法を採用した。適切な粘性に制御した接着性樹脂の溜まりに、スタンプを押すように、ピラーの接合面を接触させて、表面張力を利用して、接合面の全面に接着性樹脂を転写する。
【0057】
接合面への転写量は粘性などで制御する。その接着性樹脂の厚さは1ミクロンメートル以上あればよく、100ミクロンメートル以下が望ましい。この転写量によって、接合の
強度に影響を与えるため、適切な量によって接合強度が増す。
【0058】
ピラー122の接合面(下面)に接着性樹脂を転写した状態で、ミラー部101を支持層124の接合面にダイボンダーで実装する。接着性樹脂の上部からピラー122を介して押圧することで、接着性樹脂121を変形させる。この変形によって、ピラー122と支持層124との距離、つまりは接着性樹脂の厚さが決定される。
【0059】
また、この接着性樹脂の変形によって、接着性樹脂121がピラー122の直径よりも大きくなる。この制御は接着性樹脂の粘性やダイボンダーでの押圧の圧力制御によってなされ、最適な条件を設定している。
【0060】
接着性樹脂121の直径は、支持層124の直径210を超えていない。この直径210よりも小さくなるように変形量を設定している。また、ピラー122よりも接着性樹脂121の直径は大きい。これにより、安定したミラー部101の回動を実現できる。この大小関係を実現するために、支持層124の直径210とピラー122の直径211とを最適な大きさに設計している。少なくとも、支持層124の直径210とピラー122の直径211との間に適切な差を作り、その差によって生じるスペースが、接着性樹脂が変形して広がるスペースとして機能することが重要である。
【0061】
本実施形態で採用している接着性樹脂は熱硬化型の接着剤であり、押圧した状態でひたーによる昇温によって仮硬化する。その後、ベーク炉によって本硬化することで、所望の粘性を有した接着性樹脂が挟まれた接合面を得ることができる。
【0062】
支持層124とピラー122との間に挟まれる接着性樹脂121の厚さは、10ナノメートル以上が望ましい。接着性樹脂は弾性体であり、外部からの衝撃を吸収し、界面の剥離などを起こさないが、10ナノメートル以下では、この衝撃を吸収するだけの弾性変形を起こすことができなくなる。
【0063】
支持層124とピラー122との間に挟まれる接着性樹脂121の厚さは、100ミクロンメートル以下が望ましい。これ以上厚くなると、駆動部からの動力を適切に伝達できなくなり、高周波の細動現象が起きてしまう要因となる。
【0064】
支持層124の下面は接着性樹脂121によってピラー122およびミラー基体102と接合されている。接着性樹脂121は、熱硬化性の樹脂が望ましく、エポキシやシリコン樹脂などの一般的な接着剤でよい。接着性樹脂121の引張弾性率は、20N/mm^2以下とすることが望ましい。これにより外部からの振動などの衝撃を吸収し、界面での剥離を抑制し、接合部の長期的な安定性を図れる。
【0065】
接着性樹脂の引張弾性率は、0.001N/mm^2以上とすることが望ましい。これによって、駆動部からの動力をミラーで伝達することが可能となる。ただし、本実施形態で用いる接着性樹脂の厚さなどによって影響するため、この限りではない。
【0066】
接着性樹脂121は接合方法の一例である。接合方法は、例えば、Ti/Ni/Auなどの積層構造を用いて、AuとAuの金属接合を利用することで、さらなる強固な接合方法を採用してもよい。また、ウエハ接合の場合、金属拡散接合、共晶接合、接着剤接合、陽極酸化接合、ガラスフリット接合によるいずれかが望ましい。またSiとSiなどの接合などもでもよい。
【0067】
駆動部の形状は、アクチュエータにより反射面を回動させる構成であれば、これに限られない。支持部120には駆動部以外にも、例えば変位の検出部や、ヒーター、電気配線等を有していてもよい。
【0068】
印可電圧の信号波形は実施形態例に限られず、Sin波や矩形波、鋸波のような周期的な波形であってもよいし、より複雑な周期波形であってもよい。DC駆動であってもよい。また、構造固有の共振周波数に駆動波形の周波数を近づけ、リサージュスキャンしてもよい。
【0069】
駆動部の形状は、アクチュエータにより反射面を揺動させる構成であれば、これに限られない。支持部には駆動部以外にも、例えば変位の検出部や、ヒーター、電気配線等を有していてもよい。
【0070】
駆動部は、圧電駆動、静電駆動、電磁駆動、熱電駆動などがあるが、低電圧化・集積化の観点で相性のよい圧電駆動が望ましい。ウエハ接合の場合、金属拡散接合、共晶接合、接着剤接合、陽極酸化接合、ガラスフリット接合によるいずれかが望ましい。接着剤接合の場合、熱硬化性樹脂による接着が望ましい。
【0071】
図9は、
図8に示す本実施形態の効果について説明する図である。比較例は
図3および
図4に示す形態で、可動部と支持部が同じ基板で形成された可動装置である。平面視において、本実施形態と同じ可動装置サイズ、同じミラー径の反射部を非共振駆動で揺動した際のミラー振れ角を比較した。本実施形態では、振れ角の向上が実現できている。
【0072】
図10は、本実施形態の製造方法を示している。一般的な半導体プロセスを採用し、フォトリソグラフィー工程やエッチング処理等により一体的に成形できる。以下は、それぞれのプロセスについて順を追って説明する。
【0073】
図10(a)では、第1のSOI基板の加工を示している。シリコン活性層163において、駆動部112b、112dやトーションバー111b、111dが形成される。支持部120および支持層124は同じシリコン支持層161から形成されている。支持層124は可動部台座3(酸化シリコン層126(162))と強固な界面によって連結されている。また、支持層124の高さは、エッチング加工する前の第1のSOI基板によって決定している。エッチング深さなどの制御が難しい加工に影響されることなく、SOI基板を切り出して研磨する工程で高さを決定することができ、高い精度で支持層の高さを設計できる。支持層124の高さは、可動部の慣性モーメントおよび可動部のふり幅に大きく影響するため、高い精度が有していることが望まれ、これが実現できることで設計通りの安定した回動が可能となる。
【0074】
また、ミラー部のふり幅を拡大するために、支持層124をできるだけ長くする製造方法としては、できるだけ厚いシリコン支持層161を有したウエハを使うことも考えられるが、高い選択性を有したドライエッチング加工を用いても、細い支持層124を加工するには、数100ミクロンメートル程度が限界であり、これ以上長い支持層124を形成することは難しい。本実施形態では、少なくともピラー122と支持層124を重ねることで2倍の高さを実現できる。
【0075】
図10(b)では、第2のSOI基板での加工を示している。ミラー基体102を形成し、同じエッチング加工により、リブ141およびピラー122を同時に形成することができる。同時に加工することで、リブ141とピラー122を同じシリコン支持層301から形成することができ、界面のないリブ141とピラー122の一体成形ができる。機械強度の強いリブ141とピラー122が可能であり、ミラー部101の軽量にすることができる。慣性モーメントを低減でき、安定した可動部の回動が実現できる。
【0076】
図10(c)は、第1のSOI基板から形成された可動部台座3などと、第2のSOI基板で形成されたミラー基体102との接合する工程を示している。接合する際には、ミラー基体102のダイボンダーでピッキングして、適切な位置へ搬送する。接着性樹脂を適量だけ、ピラー122の先端部分に転写する。転写する際には、適量になるように面積を適切に加工した転写用の治具を作成した。ピラー122に接着性樹脂121をつけた状態で、ミラー基体102を支持層124の中央に配置する。ダイボンダーにより適切な押圧を与え、接着剤が適切に変形するように設計している。接着剤には適切な粘性があり、この状態でミラー基体102を仮に保持できている。ベーク炉で熱をかけて、接着剤を熱硬化させる。
【0077】
図11は、第1の変形例である。
図8に示す実施形態に対し、ピラー122の直径を大きく設計している。対向する支持層124の面とピラー122の面との面積の相違を実現しており、接着性樹脂のはみ出しによる不具合を抑制できる。接着性樹脂121と支持層124はほぼ同等の面積になっている。
【0078】
図12は第2の変形例を示し、ピラー122およびリブ141の関係性を示す斜視図である。ミラー部101の中央付近に支持層124および接合部121があり、接合部121はピラー122と接合している。ピラー122およびリブ141は第2のSOI基板のシリコン支持層301によって構成され、ピラー122とリブ141は連結している。連結しているため、同じシリコン結晶によって界面がない状態で繋がっており、非常に強固な機械強度を有している。リブ141をミラー基体102の周辺に形成している。リブ141によりミラー基体102は軽量であるが強固な反射面(裏面)106を形成することが可能となる。軽量であるため慣性モーメントを小さくできる。
【0079】
図13には第3の変形例とその類型を示す。
図13(a)は第1のSOI基板で形成されたミラー部101と第2のSOI基板で形成された可動部台座ミラー部材に着目した断面図である。
図13(b)は可動部台座の支持層124の断面図(B-B’)であり、様々な類型を示している。断面図には、理解しやすいように断面よりも上部にあるピラー122の形状も同じ図面上に表示している。可動部台座の支持層124とピラー122の断面形状を同一図面上に示している。
【0080】
接合部121は円や矩形等、形状や詳細は実施形態例に限定されないが、多角形にすることで、接着剤の塗布面積を増やし、接着強度を強め、大きな画角を得ることができる。また、可動部台座の支持層124とピラー122の断面形状は相似であってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
図14は第4の変形例である。中央部にミラー部101があり、トーションバー111aによって支持されている。トーションバー111aと駆動部112aを含む駆動部材110aは支持部120に固定されている。可動部台座3は駆動部材(110a~110d)によって、4か所から支持されている。それぞれの4つの部材は平面視においてミラー部101を中心にした点対称を有している。それぞれの部材は駆動部を有しており、駆動部はミラー部101を2次元の+の振れ角、-の振れ角に揺動する。
【0082】
本変形例では、反射面14と電極150の面が同一面となる。これにより、裏面から電極を取るための3次元的な実装手法を採用する必要がなくなる。同一面であるために、一般的なワイヤーボンディング方法などによる電気的な実装が可能となる。低コストの実装が可能となる。
【0083】
図15は、第4の変形例の断面図である。
図8に示した実施形態とは異なり、可動部台座3の表面に反射面14を形成している。また、ミラー部101にも同様に反射面(裏面)106を形成している。これにより、可動装置の両面で光を偏向することが可能になる。
【0084】
駆動部により可動部台座3を回動すると、可動部台座上表面の反射面14および反射面(裏面)106の両方が同じ位相で揺動する。そのため、2つのレーザ光をそれぞれの反射面(14および106)に照射し、光学系路を設計することで、一つの可動装置で画角を大きくすることが可能になる。
【0085】
図16は、第5の変形例を示す断面図である。可動部台座3には、2つの支持層124a、124bが形成されている。この2つの支持層124a、124bが、ピラー122と接合している。
【0086】
図17には、第5の変形例のC-C’断面の例を示す。
図17(a)は、支持層124aと支持層124bの2つの支持層が並列して配置している。図面には分かりやすいように、断面の上部に位置する支持層124a、124bとその下に位置する接合部123およびピラー122を同じ断面図に描いている。また、支持層124aと支持層124bとの間にも、第3のピラー122が並列している形態である。中央にあるピラー122は位置合わせなどの機能を有している。
【0087】
図17(b)は、第5の変形例の類型であり、同心円状に配置した2本のピラーを配置した例を示している。円柱状の第1のピラー122および支持層124a、その外側に第2のピラー122を示している。2本のピラーは、2本を並列にしてもよいし、円筒状の第2のピラー内部に、円柱の第1のピラーを並べてもよい。その間には接着性樹脂121が存在し、それぞれを強固に固定している。
【0088】
このように複数の面で接合することで接合強度が増し、大きな画角を得ることが可能になる。本変形例では2つの支持層またはピラーでの例を示したが、支持層・ピラーの数や形状は実施形態の形状に限定されない。複数本の支持層またはピラーで連結部を構成することで強度が向上する。
【0089】
図18は、支持部120の構成を変えた変形例を示す断面図である。
図18(a)は、
図8の本実施形態と同じであり、第2のSOI基板で形成される支持部120はシリコン支持層301によって形成されている。
図18(b)は第7の変形例である。支持部120にのみ、Si基板を接合し、シリコン層304を支持部120に加えている。
図18(c)は第8の変形例である。支持部120にのみ、アルミやセラミックなどの材料で加工された、支持部(セラミックまたはアルミなど)306を接着層305によって接合している。支持部120を硬度の高い材料で構成することで、可動装置全体の強度を向上することができる。
【0090】
図19は第9の変形例である。リブ161の厚さに比べピラー122の厚さの方が厚い例である。リブ161とピラー122の厚さは、同一でなくともよい。本変形例のように、駆動部などとの接触による破損等を防止する観点から、リブ161の厚さが、ピラー122の厚さ以下であることが好ましい。
【0091】
図20は、第10の変形例である。
図20(a)は平面図、
図20(b)には断面図が示される。第1のSOI基板によって、ミアンダ構造と可動枠と共振駆動用の梁構造を有している。駆動部112a、112bと反射面(裏面)106とが平面視において重なっている。ピラー122と支持層124とを接合することで、高さ方向にスペースが形成されているため、駆動部とミラーとの重ね合わせが可能となっている。可動部と前記駆動部と前記反射部と平面視においていずれかが重なっている。ここで平面視とは、
図20(a)における紙面上方である。重ね合わせることで、駆動部の面積およびミラーの面積を2倍に拡大することが可能となる。これによって、大型のミラー、大型の駆動部が実現できる。大きな駆動部は大きなトルクを出すことが可能であり、大きなふり幅を可能とする。また、大きなミラーは、大きなふり幅を可能とする。
【0092】
図21は、第11の変形例を示す平面図である。
図21は支持部に複数の梁部が折り返すように接続されたミアンダ構造を有する可動装置である。
【0093】
支持部や駆動部の形状や詳細は実施形態例に限定されないが、駆動部の支持体をミアンダ構造とすることで、第1のSOI基板である駆動部周辺の大きさや重さが増えることによる構造非線形性の増加を抑えることができ、大きなふり幅、大きな画角を得ることができる。また、各々の梁部の+Z側の面の上に、梁部ごとに、交互に圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bが設けられた場合、Aのみを駆動、またはBのみを駆動とすることで、負電圧を使わずともミラーの振れ角を+側、あるいは-側と制御することが可能である。さらに、前記圧電駆動体Aと前記圧電駆動体Bに逆位相の電圧を与え、印可する信号の電圧や時間領域での切り替えを行う際、前記圧電駆動体Aと前記圧電駆動体Bとで信号の切り替えに時間差を与え、発生する機械的な振動がAとBとで逆相するようにして振動のリンギングを打ち消すことも可能である。
【0094】
リンキングのような高周波の細動は、接合面などの悪影響を及ぼす可能性があり、このリンキングを抑制することで剥離を抑制できる。
【0095】
図22は、第12の変形例を示す平面図である。第1のSOI基板に、駆動部とトーションバーを有する駆動部材(110a~110d)を設けている。駆動部材には開口部777が形成されており、トーションバー111aは2本から構成されている。また、駆動部112aは開口部777が中央付近まで伸びている。このように駆動部材110aに開口部777を有することで、トーションバーの弾性が増し、可動部の振れ角を増大することが可能となる。また、同じ、第1のSOI基板に回折素子等の光学機能素子108が設けられている可動装置である。光学機能素子108は、本実施形態のミラー部に入れ替える形で、他の要素は本実施形態と同じであってよい。光学機能素子の詳細は本実施形態に限定されない。光学機能素子はミラーなどの反射機能だけに留まらず、波長分散を起こすような機能やレンズのような集光機能を有していてもよい。光学機能素子は反射部の一例である。
【0096】
以下、本発明の可動装置を応用した実施形態について詳細に説明する。
【0097】
[光走査システム]
まず、本実施形態の可動装置を適用した光走査システムについて、
図23~
図26に基づいて詳細に説明する。
【0098】
図23は、光走査システムの一例の概略図が示されている。
図23に示すように、光走査システム10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を可動装置13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。
【0099】
光走査システム10は、制御装置11、光源装置12、反射面14を有する可動装置13により構成される。
【0100】
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。可動装置13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
【0101】
制御装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12及び可動装置13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12及び可動装置13に駆動信号を出力する。
【0102】
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向又は2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。
【0103】
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御装置11の制御によって、可動装置13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光をある1軸周りに偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。なお、
図22では、一例としてラスタ走査により画像を投影する際の概略図を示しているが、本実施形態の可動装置によれば、リサージュスキャン、又はベクトルスキャンによって画像を投影することもできる。本実施形態の可動装置の詳細及び制御装置による制御の詳細については後述する。
【0104】
次に、光走査システム10一例のハードウェア構成について
図23を用いて説明する。
図23に示すように、光走査システム10は、制御装置11、光源装置12及び可動装置13を備え、それぞれが電気的に接続されている。このうち、制御装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26を備えている。
【0105】
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0106】
RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0107】
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0108】
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25及び可動装置ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
【0109】
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続又は通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
【0110】
光源装置トライバは、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信
号を出力する電気回路である。
【0111】
可動装置ドライバ26は、入力された制御信号に従って可動装置13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0112】
制御装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0113】
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
【0114】
制御装置11は、CPU20の命令及び
図24に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
【0115】
次に、光走査システム10の制御装置11の機能構成について
図25を用いて説明する。
図25は、光走査システムの制御装置の一例の機能ブロック図である。
【0116】
図25に示すように、制御装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
【0117】
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。駆動信号出力部31は、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12又は可動装置13に駆動信号を出力する。
【0118】
駆動信号は、光源装置12又は可動装置13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミング及び照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、可動装置13においては、可動装置13の有する反射面14を可動させるタイミング及び可動範囲を制御する駆動電圧である。
【0119】
次に、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について
図26を用いて説明する。
図26は、光走査システムにかかる処理の一例のフローチャートである。
【0120】
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。
【0121】
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。
【0122】
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12及び可動装置13に出力する。
【0123】
ステップ14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12及び可動装置13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
【0124】
なお、上記光走査システム10では、1つの制御装置11が光源装置12及び可動装置13を制御する装置及び機能を有しているが、光源装置用の制御装置及び可動装置用の制御装置と、別体に設けてもよい。
【0125】
また、上記光走査システム10では、一つの制御装置11に光源装置12及び可動装置13の制御部30の機能及び駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した可動装置13と制御装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
【0126】
[画像投影装置]
次に、本実施形態の可動装置を適用した画像投影装置について、
図27及び
図28を用いて詳細に説明する。
【0127】
図27は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態にかかる概略図である。また、
図28はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
【0128】
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
【0129】
図27に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0130】
図28に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R、501G、501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメータレンズ502、503、504と、2つのダイクロイックミラー505、506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する可動装置13にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R、501G、501B、コリメータレンズ502、503、504、ダイクロイックミラー505、506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
【0131】
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0132】
レーザ光源501R、501G、501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ502、503、504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505、506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する可動装置13によって二次元走査される。可動装置13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0133】
可動装置13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0134】
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した可動装置13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、又は眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0135】
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0136】
なお、ヘッドアップディスプレイ装置500は、特許請求の範囲に記載の「ヘッドアップディスプレイ」の一例である。また自動車400は、特許請求の範囲に記載の「車両」の一例である。
【0137】
[光書込装置]
次に、本実施形態の可動装置13を適用した光書込装置について
図29及び
図30を用いて詳細に説明する。
【0138】
図28は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、
図29は、光書込装置の一例の概略図である。
【0139】
図29に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本又は複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
【0140】
図30に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメータレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する可動装置13により1軸方向又は2軸方向に偏向される。そして、可動装置13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射ミラー部(可動部)602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。また、光源装置12及び反射面14を有する可動装置13は、制御装置11の制御に基づき駆動する。
【0141】
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0142】
上記光書込装置に適用される反射面14を有した可動装置13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。また、可動装置13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また可動装置13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
【0143】
[物体認識装置]
次に、上記本実施形態の可動装置を適用した物体認識装置について、
図31及び
図32を用いて詳細に説明する。
【0144】
図31は、物体認識装置の一例であるライダ(LiDAR;Laser Imaging Detection and Ranging)装置を搭載した自動車の概略図である。ライダ装置を自動車の前照灯を搭載する灯部ユニットに搭載した自動車の概略図である。また、
図31はライダ装置の一例の概略図である。
【0145】
物体認識装置は、対象方向の物体を認識する装置であり、例えばライダ装置である。
【0146】
図31に示すように、ライダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702を認識する。
【0147】
図32に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する可動装置13で1軸もしくは2軸方向に走査される。そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12及び可動装置13は、制御装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。すなわち、反射光は入射光検出受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
【0148】
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、又は受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
【0149】
反射面14を有する可動装置13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。このようなライダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。
【0150】
上記物体認識装置では、一例としてのライダ装置700の説明をしたが、物体認識装置は、反射面14を有した可動装置13を制御装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702を認識する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0151】
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
【0152】
[レーザヘッドランプ]
次に、上記本実施形態の可動装置を自動車のヘッドライトに適用したレーザヘッドランプ50について、
図33を用いて説明する。
図33は、レーザヘッドランプ50の構成の一例を説明する概略図である。
【0153】
レーザヘッドランプ50は、制御装置11と、光源装置12bと、反射面14を有する可動装置13と、ミラー51と、透明板52とを有する。
【0154】
光源装置12bは、青色のレーザ光を発する光源である。光源装置12bから発せられた光は、可動装置13に入射し、反射面14にて反射される。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面をXY方向に可動し、光源装置12bからの青色のレーザ光をXY方向に二次元走査する。
【0155】
可動装置13による走査光は、ミラー51で反射され、透明板52に入射する。透明板52は、表面又は裏面を黄色の蛍光体により被覆されている。ミラー51からの青色のレーザ光は、透明板52における黄色の蛍光体の被覆を通過する際に、ヘッドライトの色として法定される範囲の白色に変化する。これにより自動車の前方は、透明板52からの白色光で照明される。
【0156】
可動装置13による走査光は、透明板52の蛍光体を通過する際に所定の散乱をする。これにより自動車前方の照明対象における眩しさは緩和される。
【0157】
可動装置13を自動車のヘッドライトに適用する場合、光源装置12b及び蛍光体の色は、それぞれ青及び黄色に限定されない。例えば、光源装置12bを近紫外線とし、透明板52を、光の三原色の青色、緑色及び赤色の各蛍光体を均一に混ぜたもので被覆してもよい。この場合でも、透明板52を通過する光を白色に変換でき、自動車の前方を白色光で照明することができる。
【0158】
[ヘッドマウントディスプレイ]
次に、上記本実施形態の可動装置を適用したヘッドマウントディスプレイ60について、
図34~35を用いて説明する。ここでヘッドマウントディスプレイ60は、人間の頭部に装着可能な頭部装着型ディスプレイで、例えば、眼鏡に類する形状とすることができる。ヘッドマウントディスプレイを、以降ではHMDと省略して示す。
【0159】
図34は、HMD60の外観を例示する斜視図である。
図34において、HMD60は、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント60a、及びテンプル60bにより構成されている。フロント60aは、例えば、導光板61により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル60bに内蔵することができる。
【0160】
図35は、HMD60の構成を部分的に例示する図である。なお、
図35では、左眼用の構成を例示しているが、HMD60は右眼用としても同様の構成を有している。
【0161】
HMD60は、制御装置11と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面14を有する可動装置13と、導光板61と、ハーフミラー62とを有している。
【0162】
光源ユニット530は、上述したように、レーザ光源501R、501G、及び501Bと、コリメータレンズ502、503、及び504と、ダイクロイックミラー505、及び506とを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、レーザ光源501R、501G、及び501Bからの三色のレーザ光は、ダイクロイックミラー505及び506で合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。
【0163】
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置13に入射する。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面14をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われ、走査光によりカラー画像が形成される。
【0164】
可動装置13による走査光は、導光板61に入射する。導光板61は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー62に導光する。導光板61は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
【0165】
ハーフミラー62は、導光板61からの光をHMD60の背面側に反射し、HMD60の装着者63の眼の方向に出射する。ハーフミラー62は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー62での反射により、装着者63の網膜に結像する。あるいは、ハーフミラー62での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者63の網膜に結像する。またハーフミラー62での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者63は、XY方向に走査される光で形成される画像を、観察することができる。
【0166】
62はハーフミラーであるため、装着者63には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して観察される。ハーフミラー62に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを観察できる構成としてもよい。
【0167】
以上説明したように、本発明の様態の一例は以下の通りである。
【0168】
<1>
本実施形態にかかる可動装置は、第1の可動部と、前記第1の可動部を回動させる駆動部と、
前記第1の可動部に対向する第2の可動部と、前記第1の可動部と前記第2の可動部とを接続する接続部と、を有し、前記接続部は、前記第1の可動部から前記第2の可動部の方向に延伸する第1柱部と、前記第2の可動部から前記第1の可動部の方向に延伸する第2柱部と、を含むことを特徴とする。これにより可動部のふり幅を増大することが可能となる。
【0169】
<2>
本実施形態にかかる可動装置は、前記第1柱部と前記第2柱部とが、接着剤によって接合されていることを特徴とする<1>に記載の可動装置である。これにより、設計通りに接続部の強度が増し、製造の公差を減少させて、公差を低減した分ふり幅を増大できる。ふり幅を増大させると同時に、安定した回動が可能な可動装置を提供できる。
【0170】
<3>
本実施形態にかかる可動装置は、前記第1柱部の前記第2の可動部と対向する面と、前記第2柱部の前記第1の可動部と対向する面と、が接合されていることを特徴とする<1>~<2>に記載の可動装置である。これにより接合部の長さを2倍に長くすることでき、可動部のふり幅を増大することが可能となる。
【0171】
<4>
本実施形態にかかる可動装置は、前記第1柱部の接合面と、前記第2柱部の接合面との形状が異なることを特徴とする<1>~<3>に記載の可動装置である。これにより、接着剤が接合部の側面に流れ出ることを抑制でき、接着剤の重心回動中心と一致し、回動の安定化をさらに向上でき、振れ幅を安定して増大させることができる。
【0172】
<5>
本実施形態にかかる可動装置は、前記第1柱部と前記第2柱部の対向する面の面積は異なることを特徴とする<1>~<4>に記載の可動装置である。これにより、面積の大きい方に、接着剤のはみ出した部分形成することが可能となる。側面に流れ出す場合に比べ、接合部の重心のバランスがよく、可動部の安定した回動が可能となる。
【0173】
<6>
本実施形態にかかる可動装置は、前記第2の可動部は、前記第2柱部の周囲にリブを備え、前記第2柱部の延伸する方向における前記リブの厚さは、前記第2柱部の厚さ以下である、ことを特徴とする<1>~<5>に記載の可動装置である。これにより、リブが駆動部などと衝突する可能性を低減した状態で、ふり幅を増大できる。
【0174】
<7>
本実施形態にかかる可動装置は、前記リブと前記第2柱部は、連結している<1>~<6>に記載の可動装置である。これにより、反射部にリブと第2柱部を一体的に形成できるため、反射部を同強度において軽量な薄い面で形成できる。軽量な反射部は、同じ電力に対して、ふり幅が大きくなるので、ふり幅の大きい可動装置を提供できる。
【0175】
<8>
本実施形態にかかる可動装置は、前記可動部と前記駆動部と前記反射部と平面視においていずれかが重なっていることを特徴とする<1>~<7>に記載の可動装置である。これにより、同じ可動装置の大きさで、反射部と駆動部との両方の面積を2重に得ることができるので、反射部の形状を大きく形成できる。面積の大きな反射部は大きなふり幅と同等の光学的なメリットを得られる。
【0176】
<9>
本実施形態にかかる可動装置は、前記可動部に光学素子が設けられたことを特徴とする<1>~<8>に記載の可動装置である。これにより、反射部と可動部と2面に光学素子を得ることが可能となる。光学素子として反射面を有したミラーとすることで、対向する2面に反射部を得ることができ、光学系の自由度が向上する。レーザ光を両面から当てることで、レーザ光を走査させる画角の拡大が実現できる。
【0177】
<10>
本実施形態にかかる可動装置は、前記駆動部を支持する支持部を有し、前記第2の可動部は、前記第1の可動部に対し前記支持部よりも突出していることを特徴とする<1>~<9>に記載の可動装置である。これにより、ふり幅を増大することができる。
【0178】
<11>
本実施形態にかかる可動装置の製造方法は、第1のウエハに反射部、第1柱部およびリブを形成する工程と、第2のウエハに駆動部、可動部、および第2柱部を形成する工程と、前記第1柱部と前記第2柱部とを接合する工程とを含むことを特徴とする可動装置の製造方法である。これにより、リブと第2柱部とを同時に加工することで強固な連結を実現ができる。可動部と第1のピラーを同時に加工することで強固な第1のピラーが実現できる。
【0179】
<12>
本実施形態にかかる可動装置は、前記接続部が複数から構成されることを特徴とする<1>~<10>に記載の可動装置である。これにより、さらに、接続部が強固となり、ふり幅の大きい可動装置を提供できる。
【0180】
<13>
本実施形態にかかる可動装置は、前記駆動部がミアンダ構造であることを特徴とする<1>~<10>および<12>に記載の可動装置である。これにより、さらに、ふり幅の大きい可動装置を提供できる。
【0181】
<14>
本実施形態にかかる可動装置は、前記駆動部は、前記可動部を第1軸周りに回動させる第1の駆動部と、前記第1軸と交差する第2軸周りに回動させる第2の駆動部と、を含む
ことを特徴とする<1>~<10>および<12>~<13>に記載の可動装置である。これにより、反射部を2次元に振ることができる可動装置を提供できる。
【符号の説明】
【0182】
1 第1の回転軸
2 第2の回転軸
3 可動部台座(第1の可動部の一例)
10 光走査システム
13 可動装置
14 ミラー(反射面)
101 ミラー部(第2の可動部の一例)
102 ミラー基体
103 トーションバー
104 駆動部
105 支持部
106 反射面(裏面)
108 光学機能素子
110a 第1駆動部材(駆動部とトーションバー)
110b 第2駆動部材(駆動部とトーションバー)
110c 第3駆動部材(駆動部とトーションバー)
110d 第4駆動部材(駆動部とトーションバー)
121 接合部(接着性樹脂)
122 ピラー(接続部が有する第2柱部の一例)
124 支持層(接続部が有する第1柱部の一例)
126 可動部台座(酸化シリコン層)
128 可動部台座(シリコン活性層)
141 ミラー基体のリブ(凸部)
161 シリコン支持層(第1の基板)
162 酸化シリコン層(第1の基板)
163 シリコン活性層(第1の基板)
212 可動部台座の直径
213 ピラー(支持層)の直径
301 シリコン支持層(第2の基板)
302 酸化シリコン層(第2の基板)
303 シリコン活性層(第2の基板)
305 接着層
306 セラミックまたはアルミ