(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101170
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】抗菌ペプチドの製造方法、抗菌ペプチド組成物、飼料組成物及びその製造方法、抗菌ペプチド組成物の製造装置並びに飼料組成物の製造装置
(51)【国際特許分類】
C07K 14/435 20060101AFI20240722BHJP
A23K 20/147 20160101ALI20240722BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20240722BHJP
【FI】
C07K14/435
A23K20/147 ZNA
A23K10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004955
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 敦允
(72)【発明者】
【氏名】天竺桂 弘子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 卓磨
【テーマコード(参考)】
2B150
4H045
【Fターム(参考)】
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA06
2B150AA07
2B150AA08
2B150AB02
2B150AB03
2B150CD34
2B150DC23
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA51
4H045DA83
4H045EA06
4H045EA07
4H045FA71
(57)【要約】
【課題】抗菌ペプチドの新規な製造方法及び当該製造方法により得られる抗菌ペプチド組成物を提供すること。
【解決手段】本開示は、昆虫に熱傷を与える工程を含む、抗菌ペプチドの製造方法に関する。本開示はまた、セクロピンとディフェンシンとを含有する昆虫体液を含み、前記セクロピン含有量が、前記昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、1.9~2.5質量%であり、前記ディフェンシン含有量が、前記昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、0.5~2.0質量%である、抗菌ペプチド組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫に熱傷を与える工程を含む、抗菌ペプチドの製造方法。
【請求項2】
前記昆虫がアメリカミズアブである、請求項1に記載の抗菌ペプチドの製造方法。
【請求項3】
前記熱傷を与える工程が、60~800℃に加熱した物体を、前記昆虫に5秒以下接触させることにより行われる、請求項1又は2に記載の抗菌ペプチドの製造方法。
【請求項4】
セクロピンとディフェンシンとを含有する昆虫体液を含み、
前記セクロピン含有量が、前記昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、1.9~2.5質量%であり、
前記ディフェンシン含有量が、前記昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、0.5~2.0質量%である、抗菌ペプチド組成物。
【請求項5】
アタシン及びディプテリシンからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項4に記載の抗菌ペプチド組成物。
【請求項6】
昆虫に熱傷を与えることによって得られる、請求項4又は5に記載の抗菌ペプチド組成物。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の抗菌ペプチド組成物を含む、飼料組成物。
【請求項8】
飼料又は飼料原料と、請求項1又は2に記載の抗菌ペプチドの製造方法によって得られる抗菌ペプチドと、を混合する工程を含む、飼料組成物の製造方法。
【請求項9】
昆虫に熱傷を与える加熱部を含む、抗菌ペプチド組成物の製造装置。
【請求項10】
熱傷を与えた昆虫又はその処理物と、飼料又は飼料原料とを混合する混合部を含む、飼料組成物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗菌ペプチドの製造方法に関する。本開示はまた、抗菌ペプチド組成物、飼料組成物及びその製造方法、抗菌ペプチド組成物の製造装置並びに飼料組成物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業、水産業等において用いられる飼料には、飼料変換効率(FCR)向上等の観点から、抗生物質を添加することがある。しかし、抗生物質は、耐性菌発生の原因になり得るため、抗生物質に代わる代替手段として、抗菌活性を有するタンパク質又は抗菌活性を有するペプチドを飼料に配合する技術手段が提案されている。
【0003】
抗菌活性を有するペプチドを得る方法として、例えば、昆虫から取得する方法が挙げられる(特許文献1及び非特許文献1~2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Developmental and Comparative Immunology 52 (2015) 98-106
【非特許文献2】Entomological Research 47 (2017) 115-124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昆虫を用いて抗菌ペプチドを効率よく製造する方法については十分な検討がなされているとはいえない。
【0007】
本開示は、抗菌ペプチドの新規な製造方法、当該製造方法により得られる抗菌ペプチド組成物及び当該抗菌ペプチド組成物を含む飼料組成物を提供することを目的とする。本開示はまた、上記抗菌ペプチドを含む飼料組成物の製造方法を提供することも目的とする。本開示はまた、上記抗菌ペプチドを含む抗菌ペプチド組成物の製造装置及び上記飼料組成物の製造装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]
昆虫に熱傷を与える工程を含む、抗菌ペプチドの製造方法。
[2]
前記昆虫がアメリカミズアブである、[1]に記載の抗菌ペプチドの製造方法。
[3]
前記熱傷を与える工程が、60~800℃に加熱した物体を、前記昆虫に5秒以下接触させることにより行われる、[1]又は[2]に記載の抗菌ペプチドの製造方法。
[4]
セクロピンとディフェンシンとを含有する昆虫体液を含み、前記セクロピン含有量が、前記昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、1.9~2.5質量%であり、前記ディフェンシン含有量が、前記昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、0.5~2.0質量%である、抗菌ペプチド組成物。
[5]
アタシン及びディプテリシンからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、[4]に記載の抗菌ペプチド組成物。
[6]
昆虫に熱傷を与えることによって得られる、[4]又は[5]に記載の抗菌ペプチド組成物。
[7]
[4]~[6]のいずれかに記載の抗菌ペプチド組成物を含む、飼料組成物。
[8]
飼料又は飼料原料と、[1]~[3]のいずれかの抗菌ペプチドの製造方法によって得られる抗菌ペプチドと、を混合する工程を含む、飼料組成物の製造方法。
[9]
昆虫に熱傷を与える加熱部を含む、抗菌ペプチド組成物の製造装置。
[10]
熱傷を与えた昆虫又はその処理物と、飼料又は飼料原料とを混合する混合部を含む、飼料組成物の製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、抗菌ペプチドの新規な製造方法、当該製造方法により得られる抗菌ペプチド組成物及び当該抗菌ペプチド組成物を含む飼料組成物を提供することができる。本開示によれば、上記抗菌ペプチドを含む飼料組成物の製造方法を提供することができる。本開示によれば、上記抗菌ペプチドを含む抗菌ペプチド組成物の製造装置及び上記飼料組成物の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】キイロショウジョウバエのディフェンシン(RefSeqID:NM_078948.3)と、NM_078948.3に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブ(Hermetiaillucens)のディフェンシンと推定される転写物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列を示す図である。
【
図2】キイロショウジョウバエのセクロピンA1(RefSeqID:NM_079849.4)と、NM_079849.4に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのセクロピンA1と推定される転写物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列を示す図である。
【
図3】キイロショウジョウバエのセクロピンA2(RefSeqID:NM_079850.4)と、NM_079850.4に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのセクロピンA2と推定される転写物の、オープンリーディング領域に該当するアミノ酸配列を示す図である。
【
図4】キイロショウジョウバエのセクロピンC(RefSeqID:NM_079852.3)と、NM_079852.3に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのセクロピンCと推定される転写物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列を示す図である。
【
図5】キイロショウジョウバエのアタシンA(RefSeqID:NM_079021.5)と、NM_079021.5に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのアタシンAと推定される転写物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列を示す図である。
【
図6】キイロショウジョウバエのディプテリシンB(RefSeqID:NM_079063.4)と、NM_079063.4に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのディプテリシンBと推定される転写物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列を示す図である。
【
図7】DLP1、DLP2、DLP3及びDLP4の配列及びqRT-PCR用プライマー作製位置を示す図である。
【
図8】CLP1、CLP2、及びCLP3の配列及びqRT-PCR用プライマー作製位置を示す図である。
【
図9】DLP4のmRNAの相対発現量結果を示すグラフであり、(A)は熱傷により刺激を与えた場合の結果、(B)は針刺しにより刺激を与えた場合の結果、(C)は菌注射により刺激を与えた場合の結果を示す。
【
図10】CLPのmRNAの相対発現量結果を示すグラフであり、(A)は熱傷により刺激を与えた場合の結果、(B)は針刺しにより刺激を与えた場合の結果、(C)は菌注射により刺激を与えた場合の結果を示す。
【
図11】刺激ごとの体液抗菌活性の比較結果を示すグラフであり、(A)は熱傷により刺激を与えた場合の結果、(B)は針刺しにより刺激を与えた場合の結果、(C)は菌注射により刺激を与えた場合の結果を示す。
【
図12】(A)は刺激後のアメリカミズアブ幼虫における体液中のペプチドの電気泳動画像を示す写真であり、(B)は
図12(A)中の矢印で示される目的物の画像解析結果を示す図であり、(C)は(B)の拡大図を示す。
【
図13】刺激後のアメリカミズアブ幼虫体液に含まれていたDLP4ペプチド断片の分析結果を示す図である。
【
図14】刺激後のアメリカミズアブ幼虫体液に含まれていたCLPペプチド断片の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0012】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。数値範囲「A~B」という表記においては、両端の数値A及びBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
【0013】
<抗菌ペプチドの製造方法>
本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法は、昆虫に熱傷を与える工程(熱傷工程)を含む。熱傷工程を含むことによって、昆虫の免疫機構を介した抗菌ペプチド生合成を促進することができる。
【0014】
本明細書において、「抗菌」とは、細菌の増殖を抑制することを意味する。抗菌活性は、例えば、シグモイド関数によるフィッティングを行い、増殖速度が最大になる時間(菌の増殖が最も活発な時間)を記録することによって評価することができる。M.luteus等の細菌は増殖する際、誘導期から対数増殖期を経て増殖停止する。対数増殖期に向かう際に、波長600nmにおける吸光度(OD600)が立ち上がる。この際、増殖曲線が対数期に達するまでの時間を、式(1)に示す、時間tに対するシグモイド関数S(t)の一次微分から求めることによって、抗菌活性を評価することができる。なお、シグモイド関数によるフィッティングは、Yury V. Bukhman et al. Bioenerg. Res. (2015) 8:1022-1030に記載の方法を参考にして変更を加えて適用することもできる。
S(t)=Atanh{α(t-β)}+B ・・・(1)
式(1)中、A,B,α,及びβは定数を示す。
B-A:誘導期(lag phase)におけるOD値
B+A:静止期(stationary phase)におけるOD値
a:対数期(log phase)における傾きに影響する項
b:対数期(log phase)に達するまでの時間に影響する項
OD値とは、波長600nmにおける吸光度である。
【0015】
本明細書において、「抗菌ペプチド」とは、抗菌活性を有するペプチドを意味する。昆虫は、病原微生物に対する免疫機構(液性免疫応答)を備えており、この防御系を活性化することで病原微生物から身を守っている。このような昆虫の液性免疫応答機構の二次反応における産物の一つとして、抗菌ペプチドが知られている。抗菌ペプチドは、アミノ酸がペプチド結合したものであり、細菌の侵入に対して脂肪体及び/又は血球で発現誘導されて体液中に分泌される。多くの抗菌ペプチドは、耐熱性で、幅広い抗菌スペクトルを持つことを特徴とする。
【0016】
抗菌ペプチドによる抗菌作用として、例えば、細胞質膜を標的にした次のような作用機序が提唱されている。グラム陰性菌ではリポ多糖を含む外膜、グラム陽性菌ではタイコ酸を含むペプチドグリカン層が、それぞれ負電荷を有するため、カチオン性である抗菌ペプチドはそこで集まる。次に、細菌の細胞膜であるリン脂質二重層表面の負電荷と静電相互作用し、結合する。抗菌ペプチドが細胞膜を貫通し、孔を空けて内容物であるイオンが流出する。膜電位が消失して恒常性を維持できずに細菌は死に至る。抗菌ペプチドは、構造的特徴を元に、いくつかのグループに分類できることが知られている。
【0017】
抗菌ペプチドは、例えば、セクロピンタイプ、高システイン含有タイプ、高グリシン含有タイプ、及び高プロリン含有タイプからなる群より選択される少なくとも1種の抗菌ペプチドであってよい。ここで、抗菌活性を熱傷により向上させる観点から、セクロピンタイプの抗菌ペプチド、高システイン含有タイプの抗菌ペプチド、又は高グリシンタイプの抗菌ペプチドであってよい。
【0018】
セクロピンタイプの抗菌ペプチドは、2個のαヘリックス構造を有する。セクロピンタイプの抗菌ペプチドのN末端側は、両親媒性であり、かつ、強塩基性である。セクロピンタイプの抗菌ペプチドのC末端側は疎水性に富んでいる。双翅目セクロピンの場合、QSEAのアミノ酸配列がシグナルペプチドの末端配列となり、ここで切断されてmaturepeptideとなる。mature peptideとなったセクロピンタイプの抗菌ペプチドの分子量は、3.0~5.8kDaである。当該分子量は、セクロピンタイプの抗菌ペプチドを構成するアミノ酸残基の分子量の合計値である。セクロピンタイプの抗菌ペプチドは、C末端グリシン残基を有していてよく、当該C末端グリシン残基は、翻訳語修飾(例えば、酵素によるアミド化)を受けていてよい。C末端グリシン残基のアミド化は、ペプチダーゼによる分解の抑制、及び、αヘリックスとの水素結合の促進に寄与し得る。セクロピンタイプの抗菌ペプチドとしては、例えば、セクロピン、エンボシン、ザルコトキシンI、及びアンドロピンが挙げられる。セクロピンタイプの抗菌ペプチドは、セクロピンを含むことが好ましい。セクロピンは、A、B、C、D及びEの5つのサブタイプに分けられる。
【0019】
高システイン含有タイプの抗菌ペプチドは、システイン残基を少なくとも6個持つ。mature peptideとなった高システインタイプの抗菌ペプチドの分子量は、1.9~7.6kDaである。当該分子量は、高システイン含有タイプの抗菌ペプチドを構成するアミノ酸残基の分子量の合計値である。高システインタイプの抗菌ペプチドとしては、例えば、ディフェンシン、ザーペシン、ロイヤリシン、ヘリオミシン、ドロソマイシン、サナチン、及びスカラベシンが挙げられる。高システインタイプの抗菌ペプチドは、次のようなシステイン安定化αβモチーフと呼ばれる構造モチーフを持つ。即ち、N末端から順にループ、αヘリックス及び2つのβシート構造をとる。加えて、2つのジスルフィド結合がC末端のβシートとαヘリックスとを接続し、3番目のジスルフィド結合がN末端のループを2番目のシートに接続する。これがプロテアーゼ及び熱に対する安定性を高めていると考えられる。高システインタイプの抗菌ペプチドはディフェンシンを含むことが好ましい。
【0020】
高グリシン含有タイプの抗菌ペプチドは、グリシン残基の含有率が高いこと、及び、システイン残基を含まないことを特徴とする。mature peptideとなった高グリシン含有タイプの抗菌ペプチドの分子量は、6.4~40.0kDaである。当該分子量は、高グリシン含有タイプの抗菌ペプチドを構成するアミノ酸残基の分子量の合計値である。高グリシン含有タイプの抗菌ペプチドは、アタシンと、アタシン以外とに分類される。アタシンとしては、アタシン、酸性アタシン、塩基性アタシン、及びザルコトキシンII、IIIが挙げられる。アタシン以外の高グリシン含有タイプの抗菌ペプチドとしては、ディプテリシン、コレオプテリシン、及び、ヒメノプタエシンが挙げられる。アタシンは、グリシンに富むドメインであるG1、G2と呼ばれる少なくとも2つのC末端Gドメインを有する。一方、ディプテリシンのC末端部分は、グリシンに富むG2ドメインで構成されている。ディプテリシンのN末端には、短いプロリンに富むドメインであるPドメインがある。高グリシン含有タイプの抗菌ペプチドは、アタシン及びディプテリシンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0021】
高プロリン含有タイプの抗菌ペプチドの多くは、プロリン残基の含有率が高く、システイン残基を含まないことを特徴とする。maturepeptideとなった高プロリン含有タイプの抗菌ペプチドの分子量は、1.3~5.0kDaである。当該分子量は、高プロリン含有タイプの抗菌ペプチドを構成するアミノ酸残基の分子量の合計値である。高プロリン含有タイプの抗菌ペプチドとしては、アピダエシン、アバエシン、ドロソシン、メチニコウィン、レボシン、及び、メタルニコウィンが挙げられる。
【0022】
上記以外の抗菌ペプチドとしては、セラトトキシン、及びモリシンが挙げられる。
【0023】
昆虫は、昆虫綱(Insecta)に属する生物である。熱傷を与える昆虫は、幼虫、前蛹、蛹、又は若虫であってよい。幼虫とは、昆虫が完全変態する過程における、孵化後、かつ、前蛹になる前のものをいう。前蛹とは、昆虫が完全変態する過程において、成虫に移る途中で、摂食停止から脱皮までのものをいう。蛹とは、昆虫が完全変態する過程において、成虫に移る途中で、摂食の停止及び脱皮後に静止しているものをいう。若虫とは、不完全変態昆虫の孵化後、かつ成虫になる前のものをいう。昆虫の性別は特に制限されず、雌であってもよく、雄であってもよい。
【0024】
昆虫の体重は、昆虫の種類等に応じて、適宜設定することができる。例えば、昆虫の体重は、1匹あたり、100mg以上、150mg以上、200mg以上、250mg以上、又は300mg以上であってよく、400mg以下であってもよい。
【0025】
昆虫は、双翅目(ハエ目)(Diptera)、蜻蛉目(Odonata)、網翅目(Dictyoptera)、直翅目(Orthoptera)、半翅目(カメムシ目)(Hemiptera)、脈翅目(Neuroptera)、膜翅目(ハチ目)(Diptera)、鞘翅目(コウチュウ目)(Coleoptera)、又は鱗翅目(Lepidoptera)に属する昆虫であってよい。
【0026】
双翅目は、ハエカ科(Anisopodidae)、ハルカ科(Cramptonomyiidae)、エゾカ科(Pachyneuridae)、クチキカ科(Axymyiidae)、モリカ科(Hyperoscelidae)、タケカ科(Mycetophilidae)、ホソタケカ科(Bolitophilidae)、ヒゲブトタケカ科(Ceroplatidae)、オオタケカ科(Sciophilidae)、ヒゲナガタケカ科(Macroceridae)、タマカ科(Cecidomyiidae)、クロカ科(Sciaridae)、フルカ科(Bibionidae)、ヒゲナガフルカ科(Hesperinidae)、ゴミカ科(Scatopsidae)、チョウカ科(Psycodidae)、ニセヒメカガンボ科(Tanyderidae)、コシボソカガンボ科(Ptychopteridae)、カガンボダマシ科(Tricocheridae)、シリブトカガンボ科(Cylindrotomatidae)、カガンボ科(Tipulidae)、ヒメカガンボ科(Limnobiidae)、カ科(Culicidae)、ホソカ科(Dixidae)、ケヨソイカ科(Chaoboridae)、ユスリカ科(Chironomidae)、ユスリハエカ科(Thaumaleidae)、ヌカカ科(Ceratopogonidae)、ブユ科(Simuliidae)、アミカ科(Blepharoceridae)、ミズアブ科(Stratiomyiidae)、クサアブ科(Coenomyiidae)、ナガレシギアブ科(Athericidae)、シギアブ科(Rhagionidae)、ツルギアブ科(Therevidae)、マドアブ科(Scenopinidae)、ムシヒキアブ科(Asilidae)、キアブ科(Xylophagidae)、キアブモドキ科(Solvidae)、アブ科(Tabanidae)、ツリアブ科(Bombyliidae)、コガシラアブ科(Acroceridae)、ツリアブモドキ科(Nemestrinidae)、オドリバエ科(Empididae)、アシナガバエ科(Dolichopodidae)、ヤリバエ科(Lonchopteridae)、ヒラタアシバエ科(Platypezidae)、ノミバエ科(Phoridae)、アタマバエ科(Pipunculidae)、アブバエ科(Syrphidae)、ナガズヤセバエ科(Neriidae)、マルズヤセバエ科(Micropezidae)、フトモモホソバエ科(Megamerinidae)、メバエ科(Conopidae)、デガシラバエ科(Pyrgotidae)、ハネオレバエ科(Psilidae)、ヤチバエ科(Sciomyzidae)、ハマベバエ科(Coelopidae)、ヒロクチバエ科(Platystomatidae)、ベッコウバエ科(Dromyzidae)、ツヤホソバエ科(Sepsidae)、ミバエ科(Tephritidae)、アブラコバエ科(Chamaemyiidae)、シマバエ科(Lauxaniidae)、クロツヤバエ科(Lonchaeidae)、チーズバエ科(Piophilidae)、ハモグリバエ科(Agromyzidae)、トゲハネバエ科(Heleomyzidae)、ヒゲブトコバエ科(Cryptochaetidae)、ショウジョウバエ科( Drosophilidae)、ミギワバエ科(Ephydridae)、ホソショウジョウバエ科(Diastatidae)、ヒメコバエ科(Opomyzidae)、キモグリバエ科(Chloropidae)、クチキバエ科(Clusiidae)、フンバエ科(Scatophagidae)、ハナバエ科(Anthomyiidae)、イエバエ科(Muscidae)、ヤドリバエ科(Tachinidae)、ヒラタヤドリバエ科(Phasiidae)、クロバエ科(Calliphoridae)、ニクバエ科(Sarcophagidae)、シラミバエ科(Hippoboscidae)、コウモリバエ科(Streblidae)、クモバエ科(Nycteribiidae)等に分類される。
【0027】
双翅目に属する昆虫は、短角亜目(ハエ亜目)(Brachycera)に属する昆虫であってよい。双翅目に属する昆虫は、ミズアブ科(Stratiomyidae)、ニクバエ科(Sarcophagidae)、イエバエ科(Muscidae)に属する昆虫であってよい。ハエ目に属する昆虫としては、例えば、ミズアブ科に属するアメリカミズアブ、ニクバエ科に属するセンチニクバエ、イエバエ科に属するイエバエが挙げられる。
【0028】
蜻蛉目は、カワトンボ科(Calopterygidae)、ミナミカワトンボ科(Euphaeidae)、イトトンボ科(Coenagrionidae)、ヤマイトトンボ科(Megapodagrionidae)、アオイトトンボ科(Lestidae)、モノサシトンボ科(Platycnemididae)、サナエトンボ科(Gomphidae)、ムカシトンボ科(Epiophlebiidae)、ムカシヤンマ科(Petaluridae)、オニヤンマ科(Cordulegasteridae)、ヤンマ科(Aeschnidae)、エゾトンボ科(Corduliidae)、ヤマトンボ科(Macromiidae)、トンボ科(Libellulidae)等に分類される。
【0029】
網翅目は、網翅目カマキリ亜目(Mantodea)、網翅目ゴキブリ亜目(Blattodea)等に分類される。網翅目カマキリ亜目は、カマキリ科(Mantidae)、ヒメカマキリ科(Acromantidae)等に分類される。網翅目ゴキブリ亜目は、ゴキブリ科(Blattidae)、マダラゴキブリ科(Epilampridae)、オガサワラゴキブリ科(Pycnoscelidae)、チャバネゴキブリ科(Blattellidae)、オオゴキブリ科(Panesthiidae)等に分類される。
【0030】
直翅目は、カマドウマ科(Rhaphidophoridae)、コロギス科(Gryllacridae)、キリギリス科)(Tettigoniidae)、コオロギ科(Gryllidae)、アリツカコオロギ科(Myrmechophilidae)、ノミバッタ科(Tridactylidae)、ケラ科(Gryllotalpidae)、ヒシバッタ科(Tetrigidae)、バッタ科(Locustidae)等に分類される。
【0031】
半翅目は、半翅目カメムシ亜目(Heteroptera)、半翅目同翅亜目(Homoptera)等に分類される。
【0032】
半翅目カメムシ亜目は、ツチカメムシ科(Cydnidae)、マルカメムシ科(Plataspidae)、カメムシ科(Pentatomidae)、ツノカメムシ科(Acanthosomidae)、クヌギカメムシ科(Urostylidae)、ヘリカメムシ科(Coreidae)、ナガカメムシ科(Lygaeidae)、オオホシカメムシ科(Largidae)、ホシカメムシ科(Pyrrhocoridae)、イトカメムシ科(Berytidae)、ヒラタカメムシ科(Aradidae)、マキバサシガメ科(Nabidae)、サシガメ科(Reduviidae)、コバンムシ科(Naucoridae)、タガメ科(Belostomatidae)、タイコウチ科(Nepidae)、クビナガカメムシ科(Enicocephalidae)、グンバイムシ科(Tingidae)、ハナカメムシ科(Anthocoridae)、トコジラミ科(Cimicidae)、メクラカメムシ科(Miridae)、アメンボ科(Gerridae)、イトアメンボ科(Hydrometridae)、カタビロアメンボ科(Veliidae)、ケシミズカメムシ科(Hebridae)、ミズカメムシ科(Mesoveliidae)、ムクゲカメムシ科(Dipsocoridae)、ミズギワカメムシ科(Saldidae)、メミズムシ科(Octheridae)、ナベブタムシ科(Aphelocheiridae)、マツモムシ科(Notonectidae)、マルミズムシ科(Pleidae)、タマミズムシ科(Helotrephidae)、ミズムシ科(Corixidae)等に分類される。
【0033】
半翅目同翅亜目は、セミ科(Cicadidae)、ツノゼミ科(Membracidae)、アワフキムシ科(Cercopidae)、コガシラアワフキ科(Tomaspididae)、トゲアワフキ科(Machaerotidae)、ミミズク科(Ledridae)、オオヨコバイ科(Tettigellidae)、カンムリヨコバイ科(Evacanthidae)、ホソサジヨコバイ科(Nirvanidae/Paraboloponidae)、クロヒラタヨコバイ科(Penthimiidae)、アオズキンヨコバイ科(Jassidae)、ヒロズヨコバイ科(Macropsidae)、シダヨコバイ科(Agalliidae)、ブチミャクヨコバイ科(Drabescidae)、ズキンヨコバイ科(Idioceridae)、ホシヨコバイ科(Xestocephalidae)、ヒメヨコバイ科(Cicadellidae)、ヒラタヨコバイ科(Aphrodidae)、フクロクヨコバイ科(Hecalidae)、フトヨコバイ科(Errhomenellidae)、ヨコバイ科(Deltocephalidae)、アリヅカウンカ科(Tettigometridae)、シマウンカ科(Meenoplidae)、ビワハゴロモ科(Fulgolidae)、ハネナガウンカ科(Derbidae)、コガシラウンカ科(Achilidae)、ウンカ科(Delphacidae)、テングスケバ科(Dictyopharidae)、ヒシウンカ科(Cisiidae)、グンバイウンカ科(Tropiduchidae)、アオバハゴロモ科(Flatidae)、マルウンカ科(Issidae)、ハゴロモ科(Ricaniidae)、キジラミ科(Psyllidae) 、コナジラミ科(Aleyrodidae)、アブラムシ科(Aphididae)、ワタフキカイガラムシ科(Margarodidae)、フクロカイガラムシ科(Eriococcidae)、カタカイガラムシ科(Coccidae)、カブラカイガラムシ科(Beesoniidae)、マルカイガラムシ科( Diaspididae)等に分類される。
【0034】
脈翅目は、ラクダムシ科(Inocellidae)、センブリ科(Sialidae)、ヘビトンボ科(Corydalidae)、カマキリモドキ科(Mantispidae)、ツノトンボ科(Ascalaphidae)、ヒロバカゲロウ科(Osmylidae)、クサカゲロウ科(Chrysopidae)、アミメカゲロウ科(Hemerobiidae)、ウスバカゲロウ科(Myrmeleontidae)等に分類される。
【0035】
膜翅目は、ナギナタハバチ科(Xyelidae)、ヤドリキバチ科(Orussidae)、ヨフシハバチ科(Blasticotomidae)、キバチ科(Siricidae)、クビナガキバチ科(Cephidae)、ヒラタハバチ科(Pamph iliidae)、ハバチ科(Tenthredinidae)、マツハバチ科(Diprionidae)、ミフシハバチ科(Argidae)、コンボウハバチ科(Cimbicidae)、コマユバチ科(Blaconidae)、アブラバチ科(Aphidiidae)、ヒメバチ科(Ichneumonidae)、イチジクコバチ科(Agaonidae)、アシブトコバチ科(Chalcididae)、シリアゲコバチ科(Leucospidae)、アリヤドリコバチ科(Eucharitidae)、オナガコバチ科(Torymidae)、カタビロコバチ科(Eurytomidae)、コガネコバチ科(Pteromalidae)、トビコバチ科(Encyrtidae)、ホソナガコバチ科(Elasmidae)、ヒメコバチ科(Eulophidae)、タマゴヤドリコバチ科(Trichogrammatidae)、ホソバネヤドリコバチ科(Mymaridae)、シリボソクロバチ科(Proctotrupidae)、ヒゲナガクロバチ科(Ceraphronidae)、ハラビロヤドリバチ科(Platygasteridae)、クロタマゴバチ科(Scelionidae)、アリ科(Formicidae)、タマバチ科(Cynipidae)、カギバラバチ科(Trigonalidae)、カマバチ科(Dryinidae)、コツチバチ科(Tiphiidae)、コンボウヤセイバチ科(Gasteruptionidae)、アリバチ科(Mutillidae)、アリガタバチ科(Bethylidae)、セイボウ科(Chrycididae)、セイボウモドキ科(Cleptidae)、ベッコウバチ科(Pompilidae)、ツチバチ科(Scolidae)、スズメバチ科(Vespidae)、ジガバチ科(Sphecidae)、ヒメハナバチ科(Andrenidae)、ミツバチモドキ科(Colletidae)、ケアシハナバチ科(Melittidae)、ハキリバチ科(Megachilidae)、コハナバチ科(Halictidae)、コシブトハナバチ科(Anthophoridae)、ミツバチ科(Apidae)等に分類される。
【0036】
鞘翅目は、ナガヒラタムシ科(Cupedidae)、セスジムシ科(Rhysodidae)、ヒゲブトオサムシ科(Paussidae)、ハンミョウ科(Cicindelidae)、オサムシ科(Carabidae)、ヒョウタンゴミムシ科(Scaritidae)、ゴミムシ科(Harpalidae)、ホソクビボミムシ科(Brachinidae)、コガシラミズムシ科(Haliplidae)、コツブゲンゴロウ科(Noteridae)、ゲンゴロウ科(Dytiscidae)、ミズスマシ科(Cyrinidae)、ガムシ科(Hydrophilidae)、エンマムシモドキ科(Synteliidae)、エンマムシ科(Histeridae)、チビシデムシ科(Catopidae)、シデムシ科(Silphidae)、デオキノコムシ科(Scaphidiidae)、ハネカクシ科(Staphylinidae)、クワガタムシ科(Lucanidae)、クロツヤムシ科(Passalidae)、コブスジコガネ科(Trogidae)、センチコガネ科(Geotrupidae)、コガネムシ科( Scarabaeidae)、マルハナノミ科(Helodidae)、マルトゲムシ科(Byrrhidae)、ヒラタドロムシ科(Psephenidae)、ナガハナノミ科(Ptilodactylidae)、ドロムシ科(Dryopidae)、ヒメドロムシ科(Elmidae)、クシヒゲムシ科(Rhipiceridae)、タマムシ科(Buprestidae)、コメツキムシ科(Elateridae) 、コメツキダマシ科(Eucnemidae)、ホタルモドキ科(Drilidae)、ホタル科(Lapyridae) 、ジョウカイボン科(Cantharidae)、ベニボタル科(Lycidae)、ヒメトゲムシ科(Nosodendridae)、カツオブシムシ科(Dermestidae)、シバンムシ科(Anobiidae)、ヒョウホンムシ科(Ptinidae)、ナガシンクイムシ科(Bostrychidae)、ヒラタキクイムシ科(Lyctidae)、コクヌスト科(Trogositidae)、カッコウムシ科(Cleridae)、ジョウカイモドキ科(Melyridae)、ツツシンクイムシ科(Lymexylidae)、ケシキスイ科(Nitidulidae)、ネスイムシ科(Rhizophagidae)、ヒラタムシ科(Cucujidae)、ホソヒラタムシ科(Silvanidae)、オオキスイ科(Helotidae)、キスイムシ科(Cryptophagidae)、キスイモドキ科(Byturidae)、コメツキモドキ科(Languriidae)、オオキノコムシ科(Erotylidae)、テントウムシ科(Coccinellidae)、テントウダマシ科(Endomychidae)、コキノコムシ科(Mycetophagidae)、ホソカタムシ科(Colydiidae)、ゴミムシダマシ科(Tenebrionidae)、ハムシダマシ科(Lagriidae)、クチキムシ科(Alleculidae)、コフゴミムシダマシ科(Zopheridae)、ツヤキカワムシ科(Boridae)、クチキムシダマシ科(Elacatidae)、キカワムシ科(Pythidae)、アカハネムシ科(Pyrochroidae)、キノコムシダマシ科(Tetratomidae)、ナガクチキムシ科(Melandryidae)、ハナノミ科(Mordellidae)、オオハナノミ科(Rhipiphoridae)、クビナガムシ科(Cephaloidae)、ツチハンミョウ科(Cephaloidae)、カミキリモドキ科(Oedemeridae)、イッカクチュウ科(Anthicidae)、カミキリムシ科(Cerambycidae)、マメゾウムシ科(Bruchidae)、ハムシ科(Chrysomelidae)、ヒゲナガゾウムシ科(Anthribidae)、オトシブミ科(Attelabidae)、ミツギリゾウムシ科(Brenthidae)、ホソクチゾウムシ科(Curculionidae)、キクイムシ科(Scolytidae)、ナガキクイムシ科(Platypodidae)等に分類される。
【0037】
鞘翅目に属する昆虫は、ゴミムシダマシ科に属する甲虫であってよい。ゴミムシダマシ科に属する昆虫としてはチャイロコメノゴミムシダマシが挙げられる。鞘翅目に属する昆虫は、ゴミムシダマシ科に属する甲虫の幼虫であるミールワームであってよい。
【0038】
鱗翅目は、コバネガ科(Micropterygidae)、スイコバネ科(Eriocraniidae)、コウモリガ科(Hepialidae)、マガリガ科(Incurvariidae)、ヒゲナガガ科(Adelidae)、ムグリチビガ科(Stigmellidae)、ツヤコガ科(Heliozelidae)、ムモンムグリガ科(Tischeriidae)、ヒロズコガ科(Tineidae)、ミノガ科(Psychidae)、ツマオレガ科(Lyonetiidae)、クチブサガ科(Plutellidae)、スガ科(Hyponomeutidae)、キヌバコガ科(Seythiridae)、ササベリガ科(Epermeniidae)、クサムグリガ科(Elachistidae)、ホソガ科(Gracilariidae)、ツツミノガ科(Coleophoridae)、ハマキモドキガ科(Glyphipterygidae)、マイコガ科(Heliodinidae)、スカシバガ科(Aegeriidae)、トガリホソガ科(Cosmopterygidae)、キバガ科(Gelechiidae)、ヒロバキバガ科(Xyloryetidae)、ネマルハガ科(Blastobasidae)、マルハキバガ科(Oecophoridae)、ボクトウガ科(Cossidae)、シンクイガ科(Carposinidae)、ノコメハマキガ科(Eucosmidae)、ハマキガ科(Tortricidae)、ホソハマキガ科(Phaloniidae)、マドガ科(Thyrididae)、メイガ科(Pyralidae)、トリバガ科(Pterophoridae)、ニジュウシトリバガ科(Alucitidae)、マダラガ科(Zygaenidae)、セミヤドリガ科(Epipyropidae)、イラガ科(Heterogeneidae)、ツバメガ科(Uraniidae)、フタオガ科(Epiplemidae)、アゲハモドキガ科(Epicopeidae)、シャクガ科(Geometridae)、カギバガ科(Drepanidae)、トガリバガ科(Thyatiridae)、イカリモンガ科(Callidulidae)、カイコガ科(Bombycidae)、オビガ科(Eupterotidae)、カレハガ科(Lasiocampidae)、ドクガ科(Lymantriidae)、シャチホコガ科(Notodontidae)、ヤガ科(Noctuidae)、トラガ科(Agaristidae)、ヒトリガ科(Arctiidae)、ヒトリモドキガ科(Aganaidae)、コブガ科(Nolidae)、カノコガ科(Amatidae)、イボタガ科(Brahmaeidae)、ヤママユガ科(Saturniidae)、スズメガ科(Sphingidae)、セセリチョウ科(Hesperiidae)、ジャノメチョウ科(Satyridae)、タテハチョウ科(Nymphalidae)、マダラチョウ科(Danaidae)、テングチョウ科(Libytheidae)、シジミチョウ科(Lycaenidae)、シロチョウ科(Pieridae)、アゲハチョウ科(Papilionidae) 等に分類される。
【0039】
昆虫は、抗菌活性、入手が容易であること、工業的に好適な方法で製造しやすいこと、熱傷が与えやすいこと、家畜のタンパク質源としても利用し得ること等から、アメリカミズアブ、センチニクバエ、イエバエ、及びチャイロコメノゴミムシダマシ(例えば、チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫であるミールワーム)からなる群より選択される少なくとも1種であってよく、工業的な養殖が比較的容易であることから、アメリカミズアブ、イエバエ、及びミールワームからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アメリカミズアブであることがより好ましい。アメリカミズアブは、ミールワーム等と比べて発達サイクルが短く、工業的な量産に有利である。また、アメリカミズアブは、イエバエ等と比べて大きく成長しやすいことから、熱傷を与えやすいという利点を有する。
【0040】
昆虫に熱傷を与える方法は、昆虫の外皮表面近傍が損傷する条件で行われる。熱傷を与える条件は、熱傷を与えた時点又は熱傷を与えた直後に昆虫が死亡しない条件であることが好ましい。
【0041】
昆虫に熱傷を与える方法としては、例えば、昆虫の体表面に、熱源を接触させる方法が挙げられる。熱源は、例えば、加熱した物体であってよく、加熱した針、加熱した網状の金属又は加熱したローラー等であってよい。
【0042】
本実施形態に係る方法において、抗菌ペプチドは、熱傷を与えることによって昆虫の表皮組織が損傷し、損傷した自己組織から放出されたダメージ関連分子パターン(DAMPs)が、ペプチドグリカン認識タンパク質に認識され、Toll経路及び/又はImd経路を介して生成されると考えられる。但し、本実施形態に係る方法によって抗菌ペプチドが生成するメカニズムはこれに限定されない。
【0043】
昆虫の体表面に接触させる熱源の温度は、加熱した物体の温度は、表皮組織が熱傷により損傷を受ける温度であればよく、60℃以上であってよい。
【0044】
熱傷工程は、60~800℃に加熱した物体を昆虫に接触させることにより行われることが好ましい。
【0045】
昆虫と加熱した物体とが接触する時間は、当該物体の温度等に応じて適宜設定することができる。昆虫と加熱した物体とが接触する時間は、例えば、5秒以下、1秒以下又は0.5秒以下であってよい。
【0046】
熱傷工程は、60~800℃に加熱した物体を、昆虫に5秒以下接触させることにより行われることが好ましい。例えば、300℃以上(例えば、300~800℃)に加熱した物体を昆虫に接触させる場合、昆虫と加熱した物体とが接触する時間は、1秒以下であることが好ましい。
【0047】
加熱して昆虫と接触させる物体の材質は特に制限されないが、金属、セラミック、又はガラス等であってよい。加熱して昆虫と接触させる物体の熱伝導率は、1W(m・K)以上であってよい。
【0048】
熱傷は、昆虫の体表面の一部に与えられてよい。例えば、加熱した物体を昆虫の体表面の一部に接触させることによって、昆虫の体表面の一部に熱傷を与えることができる。熱傷は、昆虫の体表面の1箇所に与えてもよく、複数箇所(例えば、2箇所以上)に与えてもよい。熱傷を1箇所又は複数箇所に与える方法としては、例えば、加熱した針を昆虫の体表面と接触させる方法、加熱した網状の金属を昆虫の体表面に接触させる方法が挙げられる。
【0049】
熱傷を与える方法は、例えば、加熱した針を昆虫の体表面の一部に接触させる方法であってよい。具体的には、針の先端を熱して赤熱させ、赤熱後針の先端を火から離した後に、針を昆虫の体表面と接触させてよい。加熱した針と昆虫とを接触させる時間は、1秒内であってよい。昆虫と、加熱した針とを接触させる部分は1~5mm程度であってよい。
【0050】
熱傷を与える方法は、例えば、昆虫を輸送過程で、加熱した物体(例えば、加熱したローラー)が配置された加熱ゾーンを昆虫に通過させ、昆虫を輸送しながら、加熱ゾーン内で昆虫と加熱した物体とを接触させる方法であってもよい。
【0051】
本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法は、熱傷を与えた昆虫を保管する工程(保管工程)を含んでいてよい。保管工程は、抗菌ペプチドを誘導するために行われる。
【0052】
熱傷を与えた昆虫を保管する時間は、特に制限されないが、1時間以上、3時間以上、5時間以上、8時間以上、10時間以上、又は12時間以上であってよい。熱傷を与えた昆虫を保管する時間は、例えば、12~24時間であってよい。
【0053】
熱傷を与えた昆虫を保管する温度は、昆虫が生存可能な温度であってよく、昆虫の動きが活発になる温度であることが好ましい。熱傷を与えた昆虫の保管温度を昆虫の動きが活発になる温度とすることによって、昆虫体内での抗菌ペプチドの生合成をより効率的に誘導することができる。熱傷を与えた昆虫を保管する温度の下限は、10℃以上であってよく、昆虫の活動がより活発になることから、20℃以上、又は25℃以上であってよい。熱傷を与えた昆虫を保管する温度の上限は、昆虫体内のタンパク質の働きへの悪影響が抑制しやすくなることから、40℃以下であってよい。熱傷を与えた昆虫を保管する温度は、25~35℃であることが好ましい。熱傷を与えた昆虫は飼料とともに保管してよい。
【0054】
本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法は、熱傷工程の後に、熱傷を与えた昆虫体内の酵素を失活させる工程(酵素失活工程)を更に含んでいてもよい。酵素失活工程では、例えば、ペプチダーゼ等の酵素を失活させる。酵素を失活させる方法としては、例えば、熱傷を与えた昆虫を加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、例えば、50~60℃であってよい。
【0055】
本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法は、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を粉砕して、粉砕物を得る工程(粉砕工程)、熱傷を与えた昆虫又はその処理物から抗菌ペプチドを分離する工程(分離工程)、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を凍結させて、凍結物を得る工程(凍結工程)、熱傷を与えた昆虫又はその処理物(例えば、粉砕物)を乾燥させて、乾燥物を得る工程(乾燥工程)を更に含んでいてもよい。熱傷を与えた昆虫の処理物は、熱傷を与えた昆虫に対して、処理が施されたものをいう。ここでいう処理は、例えば、上述した粉砕工程、凍結工程、乾燥工程で行われる処理であってよく、後述する脱脂工程で行われる処理であってよい。本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法は、乾燥工程の前に昆虫と残渣とを分離する工程(篩分け工程)を更に含んでいてよく、乾燥工程の前に昆虫を洗浄する工程(洗浄工程)を更に含んでいてよく、乾燥工程の前に昆虫を殺処理する(殺処理)等を更に含んでいてもよい。篩分け工程における残渣は、例えば、昆虫用の飼料であってよい。殺処理する方法として、湯通しする方法等が挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法は、熱傷を与えた昆虫又はその処理物(粉砕物、又は乾燥物)から脂質を分離する工程(脱脂工程)を更に含んでいてもよい。本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法が脱脂工程を含む場合、脂質の酸化に起因する給餌効率の低下が抑制しやすくなる。
【0057】
本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法は、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を成形する工程(成形工程)を更に含んでいてもよい。成形工程では、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を例えばペレット状に成型してよい。
【0058】
熱傷を与えた昆虫そのもの及び熱傷を与えた昆虫の処理物は、抗菌ペプチド組成物として用いることができる。
【0059】
熱傷工程を含む方法によって得られる抗菌ペプチドを含む抗菌ペプチド組成物は、高い抗菌活性を有している。
【0060】
菌注射によって昆虫に刺激を与え、昆虫による抗菌ペプチド生成を促進する方法では、菌を注射した昆虫を家畜に対して経口投与しにくく、産業利用が難しかった。また、昆虫に対して針を刺すことによって昆虫による抗菌ペプチド生成を促進する方法では、工業的に実用化するのが困難であった。本実施形態に係る製造方法は、昆虫に熱傷を与える工程を含む方法によって昆虫による抗菌ペプチド生成を促進するため、菌注射及び針刺し等の方法によって昆虫に刺激を与える工程を含む方法と比べて、産業化がより容易であり、工業的な抗菌ペプチドの製造方法としてより好適である。
【0061】
本実施形態に係る抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド組成物は、飼料組成物、肥料、スキンケア製品、飲食品等の用途に用いることができる。
【0062】
<抗菌ペプチド組成物>
本実施形態に係る抗菌ペプチド組成物は、セクロピンとディフェンシンとを含む昆虫体液を含む。抗菌ペプチド組成物は、昆虫から液状成分として回収した昆虫体液を含む組成物であってよく、昆虫体液を含む昆虫自体であってもよい。昆虫体液は、昆虫の幼虫の体液であることが好ましい。
【0063】
昆虫から昆虫体液を回収する方法は、特に制限されない。昆虫から昆虫体液を回収する場合には、体液回収用溶液が用いられてよい。昆虫から昆虫体液を回収する方法の一例は、例えば、昆虫に体液回収用溶液を注入する工程と、昆虫から体液及び体液回収用溶液を含む混合物を回収する工程と、混合物から液状成分以外の成分(例えば、血球及び体組織)を除去する工程とを含む方法であってよい。
【0064】
抗菌ペプチド組成物が昆虫自体である場合、当該昆虫は、死んでいる昆虫であってもよく、生存している昆虫であってもよい。
【0065】
抗菌ペプチド組成物において、セクロピン含有量は、昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、1.9~2.5質量%である。セクロピン含有量の下限は、昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、1.9質量%以上であり、2.0質量%以上であってよい。セクロピン含有量の上限は、昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、2.5質量%以下であり、2.4質量%以下、2.3質量%以下、2.2質量%以下、2.1質量%以下、又は2.0質量%以下であってよい。
【0066】
抗菌ペプチド組成物において、ディフェンシン含有量は、昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、0.5~2.0質量%である。ディフェンシン含有量の下限は、昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、0.5質量%であり、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上又は1.1質量%以上であってよい。ディフェンシン含有量の上限は、昆虫体液中のタンパク質の総質量を基準として、2.0質量%以下であり、1.9質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、又は1.1質量%以下であってよい。
【0067】
セクロピン含有量及びディフェンシン含有量はゲル電気泳動により昆虫体液中のタンパク質を分離すること、分離したタンパク質を染色すること、及び染色されたタンパク質の画像データを解析することを含む方法によって算出することができる。
【0068】
セクロピン含有量及びディフェンシン含有量について、昆虫体液の電気泳度分析結果の一例である
図12(A)を用いてより具体的に説明する。
図12(A)の矢印で示されるバンド中の成分(以下「対象成分」)は、昆虫に刺激を与えることで増加し、かつ、分子量の異なる2つの成分から構成されている。昆虫に刺激を与えることで昆虫体液中のセクロピン及びディフェンシンそれぞれのmRNAの相対発現量が増加することが少なくともRT-qPCRにより確認できることから、測定対象の昆虫に刺激を与えることで増加する対象成分は、主としてセクロピン及びディフェンシンを含むものである。そして、非特許文献1によるとDLP4の分子量が4.3kDaで、非特許文献2によるとCLP1(~CLP2,~CLP3)の分子量が4.8kDaであることから、分子量の大きい方(4.8kDaに対応する成分)がセクロピンを主に含むタンパク質であり、分子量の小さい方(4.3kDaに対応する成分)がディフェンシンを主に含むタンパク質であるということができる。本明細書においては、
図12(A)において矢印で示されるバンド中の2つの成分のうち、4.3kDaに対応する成分の電気泳動画像の解析により算出される量を「ディフェンシン含有量」とし、4.8kDaに対応する成分(分子量の大きい方の成分)の電気泳動画像の解析により算出される量を「セクロピン含有量」とする。セクロピン含有量及びディフェンシン含有量の測定方法の詳細は後述する実施例のとおりである。
【0069】
抗菌ペプチド組成物は、アタシン及びディプテリシンからなる群より選択される少なくとも1種の抗菌ペプチドを更に含んでいてよい。抗菌ペプチド組成物が、当該抗菌ペプチドを含んでいることは、例えば、後述する実施例において示される網羅的遺伝子発現解析によって確認することができる。
【0070】
上述した抗菌ペプチド組成物は、例えば、上述した本実施形態に係る抗菌ペプチドの製造方法によって製造することができる。
【0071】
上述した抗菌ペプチド組成物は、飼料組成物等の用途に好適に使用することができる。
【0072】
<飼料組成物>
本実施形態に係る飼料組成物は、上記抗菌ペプチドの製造方法によって得られる抗菌ペプチド、又は、上記抗菌ペプチド組成物を含有する。当該飼料組成物は、上記抗菌ペプチドの製造方法によって得られる抗菌ペプチド、又は、上記抗菌ペプチド組成物を含有することの他は、公知の飼料に含まれる成分を含んでいてよい。
【0073】
飼料は「粗飼料」と「濃厚飼料」とに分類することができる。「粗飼料」は、繊維質を多く含むものである。粗飼料又は粗飼料原料としては、例えば、稲わら又は乾草(干し草)、サイレージ、稲WCS(Whole Crop Silage、稲発酵粗飼料。)が挙げられる。サイレージは、牧草や青刈りトウモロコシ等の水分含量の多い飼料原料を、サイロ等に詰め込んで発酵させ、貯蔵した得られる飼料である。稲WCSは、稲の穂と茎葉(けいよう)を丸ごと乳酸発酵させた飼料である。粗飼料は、反芻動物の牛や羊、ヤギ等の草類を主食とする家畜には欠かせない飼料である。
【0074】
「濃厚飼料」は、粗飼料に比べ繊維質が少なく、タンパク質、炭水化物等の栄養素を多く含むものである。濃厚飼料又は濃厚飼料原料としては、穀類、ぬか類、粕類、魚を乾燥させて粉末にした魚粉等を含む飼料が挙げられる。穀類としては、トウモロコシ、コウリャン(アフリカ原産のイネ科の穀物。ソルガムやもろこし等とも呼ばれる。)、大麦、コメ等が挙げられる。ぬか類としては、米ぬか、ふすま(小麦をひいて粉にした後に残る表皮のくず)等が挙げられる。粕類としては、大豆油粕やビール粕、ビートパルプ(ビート(テンサイともいう。砂糖の原料になるアカザ科の植物である。国内では北海道で生産される。)から砂糖を抽出した後の絞り粕)等が挙げられる。飼料は、投与対象の家畜の種類等に応じて、いくつもの濃厚飼料を混合した飼料である配合飼料であってもよい。一般的に、豚及び鶏は濃厚飼料だけで育てられる。
【0075】
本実施形態の飼料組成物の投与時期、投与形態及び投与対象等は、飼料用途に応じて、適宜設定することができる。
【0076】
飼料組成物の投与対象としては、例えば、ブロイラー、豚、採卵鶏等の畜産動物、魚、エビ等の水産動物、愛玩動物(例えば、哺乳類、爬虫類及び両生類)等が挙げられる。
【0077】
本実施形態に係る飼料組成物は、飼料又はその飼料原料と、本実施形態に係る抗菌ペプチド又は抗菌ペプチド組成物とを混合する工程(混合工程)を含む方法によって製造することができる。飼料原料は、飼料に通常用いられる原料である。飼料原料は、投与対象の種類等に応じて、適宜選択することができる。
【0078】
飼料組成物中の抗菌ペプチドの量は、飼料に対して、10質量ppm~10000質量ppmであってよい。
【0079】
<抗菌ペプチド組成物の製造装置>
本実施形態に係る抗菌ペプチド組成物の製造装置は、昆虫に熱傷を与える加熱部を含む。加熱部の構成は、昆虫に熱傷を与える方法に応じて適宜設計することができる。
【0080】
抗菌ペプチド組成物の製造装置は、昆虫、熱傷を与えた昆虫又は熱傷を与えた昆虫の処理物を輸送する輸送部、熱傷を与えた昆虫を保管する保管部、熱傷を与えた昆虫中の酵素を失活させる酵素失活部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を粉砕する粉砕部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物から抗菌ペプチドを分離する分離部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を凍結させる凍結部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を乾燥させる乾燥部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物から脂質を分離する脱脂処理部、及び、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を成形する成形部等からなる群より選択される少なくとも一種を更に含んでいてよい。保管部、酵素失活部、粉砕部、分離部、凍結部、乾燥部、脱脂処理部及び成形部における具体的態様は上述した態様を際限なく適用することができる。
【0081】
<飼料組成物の製造装置>
本実施形態に係る飼料組成物の製造装置は、熱傷を与えた昆虫又はその処理物と、飼料又は飼料原料とを混合する混合部を含む。飼料原料は、飼料に通常用いられる原料である。飼料又は飼料原料は、投与対象の種類等に応じて、適宜選択することができる。熱傷を与えた昆虫の処理物は、上述したとおりであってよい。
【0082】
飼料組成物の製造装置は、昆虫に熱傷を与える加熱部、昆虫、熱傷を与えた昆虫又は熱傷を与えた昆虫の処理物を輸送する輸送部、熱傷を与えた昆虫を保管する保管部、熱傷を与えた昆虫中の酵素を失活させる酵素失活部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を粉砕する粉砕部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物から抗菌ペプチドを分離する分離部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を凍結させる凍結部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を乾燥させる乾燥部、熱傷を与えた昆虫又はその処理物から脂質を分離する脱脂処理部、及び、熱傷を与えた昆虫又はその処理物を成形する成形部等からなる群より選択される少なくとも一種を更に含んでいてよい。保管部、酵素失活部、粉砕部、分離部、凍結部、乾燥部、脱脂処理部及び成形部における具体的態様は上述した態様を際限なく適用することができる。
【実施例0083】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0084】
[幼虫]
種:アメリカミズアブ(学名:Hermetia illucens)
野外にて産卵直前の雌個体を捕獲し、屋内で産卵させて卵を回収した。回収した卵を孵化させ、人工飼料を投与して27℃にて飼育した。
【0085】
[刺激]
刺激前に、アメリカミズアブの幼虫を水洗し、水分を除去した。ステンレス製の針の先端を火で加熱した。加熱した針の先端を幼虫の体表面に接触させ、熱傷を与えた。熱傷を与えた後、幼虫に人工飼料を給餌し、任意時間27℃にて保管した。
【0086】
アメリカミズアブの幼虫と、熱した針との接触時間は0.1~1秒程度であった。
【0087】
[脂肪体の回収及びTRIzol処理(トータルRNAを分離するための処理)]
抗菌ペプチド関連遺伝子の発現評価は、脂肪体を対象に実施した。次の手順で解剖し、脂肪体を回収した。回収した脂肪体を、TRIzol(Thermo FisherScientific社)にて処理することによってサンプルを調製した。
【0088】
ペトリディッシュ上に幼虫を移して解剖した。取り出した脂肪体を氷上の1.5mlチューブに集め、0.5mlのTRIzolを1.5mlチューブに入れた。1.5mlチューブを取り出し、ホモジナイザーで内容物が均一になるまで撹拌した。当該チューブ内を室温に移し、更にTRIzolを0.5ml入れてピペッティングで撹拌した。その後、当該チューブを5分間、室温でインキュベートした。インキュベート後のチューブを、遠心機で12,000g×5分間×4℃の条件で遠心した。遠心後、上澄みを別のチューブに移した。その後、TRIzol Reagentのプロトコールに従って、トータルRNAの分離を実施した。
【0089】
[網羅的遺伝子発現解析]
トータルRNAに対してライブラリを作成し、シーケンスデータ取得を実施した。得られた配列データに対し、HISAT2(http://daehwankimlab.github.io/hisat2/)を用いて、NCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に登録されている、H.illucensのリファンレンスゲノムに対するゲノムマッピングを行った。マッピング結果に対してStringTie(https://ccb.jhu.edu/software/stringtie/)を用いて、NCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に登録されているH.illucensのゲノム中の遺伝子領域の場所が記述されたファイルを参照することで、TPM(Transcripts per million)正規化された転写産物の発現量を取得した。また、取得した転写産物の発現量に対して、TCC-GUIを利用して発現変動遺伝子群(DEG)を検出した。この際、FalseDiscovery Rateは5%とした。得られた各発現変動遺伝子群(DEG)に対してBLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用い、e-valueが1e-10未満となる配列を対象として、キイロショウジョウバエ(Drosophilamelanogaster)の既知の遺伝子配列に対応づけた。
【0090】
図1は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のディフェンシン(RefSeqID:NM_078948.3)と、NM_078948.3に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブ(Hermetiaillucens)のディフェンシンと推定される転写産物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列である。この内、rna-XM_038065858.1は、NCBIデータベースに登録されているDLP4(ID:KF805350.1)と一致する。
【0091】
図2は、キイロショウジョウバエのセクロピンA1(RefSeqID:NM_079849.4)と、NM_079849.4に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのセクロピンA1と推定される転写産物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列である。
【0092】
図3は、キイロショウジョウバエのセクロピンA2(RefSeqID:NM_079850.4)と、NM_079850.4に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのセクロピンA2と推定される転写産物の、オープンリーディング領域に該当するアミノ酸配列である。この内、rna-XM_038063059.1は、NCBIデータベースに登録されているCLP2(ID:KF805345.1)と一致する。
【0093】
図4は、キイロショウジョウバエのセクロピンC(RefSeqID:NM_079852.3)と、NM_079852.3に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのセクロピンCと推定される転写産物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列である。この内、MSTRG.9069.3_1、MSTRG.9070.1、MSTRG.9070.3、MSTRG.9070.4、MSTRG.9070.5、rna-XM_038063058.1、rna-XM_038063062.1、rna-XM_038063067.1、rna-XM_038063070.1、rna-XM_038063072.1、及びrna-XM_038063075.1は、NCBIデータベースに登録されているCLP3(ID:KF805346.1)と一致する。
【0094】
図5は、キイロショウジョウバエのアタシンA(RefSeqID:NM_079021.5)と、NM_079021.5に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのアタシンAと推定される転写産物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列である。
【0095】
図6は、キイロショウジョウバエのディプテリシンB(RefSeqID:NM_079063.4)と、NM_079063.4に相同な、熱傷により誘導されたアメリカミズアブのディプテリシンBと推定される転写産物の、オープンリーディングフレーム領域に該当するアミノ酸配列である。
【0096】
表1~4は、キイロショウジョウバエの各配列に相同な、アメリカミズアブの抗菌ペプチドのTPM正規化された転写産物の発現量である。
図1~6及び表1~4に示す通り、熱傷により、ディフェンシン、セクロピンA1、セクロピンA2、セクロピンC、アタシンA及びディプテリシンBそれぞれに該当する抗菌ペプチドが誘導されていることがわかる。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
[RNAサンプルのDNase処理]
DNase I, Amplification Grade(ThermoFisher Scientific社)のプロトコールに従って、DNase処理を実施した。
【0102】
[cDNA合成]
Takara PrimeScriptTM 1st strand cDNA Synthesis Kitに従い、cDNA合成を実施した。
【0103】
[物質誘導]
定量PCR(RT-qPCR)
合成したcDNAに対して、RT-qPCRにより、目的遺伝子(mRNA)発現量の評価を実施した。RT-qPCRは、KAPA SYBR Fast qPCRKit(日本ジェネティクス社)を用いて、StepOnePlus Real-Time PCR System(ThermoFisher Scientific社)により行った。
【0104】
NCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に登録されているDLP4、CLP1,CLP2,CLP3の遺伝子配列は、
図7及び
図8に記載のとおりである。
図7の、KFから開始されるIDはNCBIデータベースより抽出したDLP4の配列を示し、DLP4_Cloningは、塩基配列を決定したDLP4の配列を示し、矢印はRT-qPCR用プライマーの配列部位を示す。
図8の、JXまたはKFから開始されるIDはNCBIデータベースより抽出したCLP1の配列を示し、CLP1_Cloningは、塩基配列を決定したCLP1の配列を示す。矢印はRT-qPCR用プライマーの配列部位を示す。
図7及び
図8に記載の配列は、遺伝子情報処理ソフトウェア“GENETYX”およびMegaにより整理したものである。
【0105】
内在性コントロールはリボソーマルRNA(rs18)を用い、その遺伝子配列とプライマー配列は次のとおりである。
内在性コントロールの遺伝子配列:
CTTTCGTGAAGTAAAAAGACGTCAAAATGTCGTTGGTGATCCCAGACAAGTTTCAACACATTCTCCGTATCATGGGTACGAATATCGATGGTAAACGCAAGGTGCCAATCGCCATGACAGCCATCAAGGGTGTCGGTCGCCGCTACGCCAACATCGTCCTCAAGAAGGCTGATGTCGACTTGACCAAGCGCGCTGGAGAGTGCACCGAGGAGGAGGTCGAGAAAATCGTCACAATCATCCTGAACCCACGTCAGTACAAGATCCCCAACTGGTTCTTGAACAGACAAAAGGACATCATCGATGGCAAGTACACACAGCTCACCTCATCCAACTTGGACTCAAAGCTCCGTGAGGATTTGGAACGATTGAAGAAGATCCGCGCCCACAGGGGTATGCGCCACTACTGGGGTCTCCGTGTCCGTGGTCAACACACGAAAACAACCGGCCGTCGTGGTCGCACTGTTGGTGTGTCCAAGAAGAAGTAAAATGCGTCCTTTGTCGAGCACAATGTCGCGTTGGTGGATTTATTAATTTTAATAAAATAAAGAGGAAAAGTGAAAAAAAAAAAA
プライマー配列:
フォワード>CGATGGCAAGTACACACAGC、
リバース>AATCCACCAACGCGACATTG
【0106】
図9は、DLP4発現量の評価結果を示す。
図9のとおり、RT-qPCRにより昆虫に熱傷を与えることによりDLP4が誘導されることが確認された。
【0107】
セクロピンについては、RT-qPCRにおいて、CLP1、CLP2及びCLP3それぞれに由来する単一のTm値を得ることができず、従って、
図10はCLP1,2,3の混合物発現量の評価結果であると推察される。
図10のとおり昆虫に熱傷を与えることによりセクロピンが誘導されることが確認された。
【0108】
[体液回収用溶液の準備]
体液を回収する際、酸素と接触することによる酸化反応を抑制するために、体液回収用溶液(バッファー)を準備した。
体液回収用溶液は、下記を混合することによって調製した。
・1×insect PBS:100ml
・グルタチオン:4mmol/l
【0109】
なお、PBSとは”Phosphate Buffered Saline”の略であり、リン酸緩衝食塩水のことである。1×insect PBSは、次のものを混合して調製した(調合量は一つの例)。
・KH2PO4:10mmol/l
・NaHPO4:10mmol/l
・NaCl:137mmol/l
・KCl:2.7mmol/l
・H2O:500ml
【0110】
[体液回収]
幼虫に注射針と1mlテルモシリンジを使い、0.1mlの体液回収用溶液を注入し、体液回収が容易になる処理を施した。幼虫にハサミを入れ、体液と回収溶液の混合物を、1頭あたり2滴、1.5mlチューブに回収した。回収する際は、酸化反応、メラニン化、タンパク質分解反応等の副反応を避けるため、1.5mlチューブは氷上に設置した。その後、14,000g-10分、4℃で遠心分離して、血球及び体組織と、液体成分とを分離した。上清を別の1.5mlチューブに移し、その後、60℃-30分で非働化処理を実施した。固体として浮遊した失活したタンパク質成分を、14,000g-10分、4℃で遠心分離して、上清を回収することで分離した。試験まで、-30℃で保管した。
【0111】
非働化処理は、血清の補体成分を失活させるために、つまり、今後取り扱う中で抗菌ペプチドを失活させるような副反応を起こさせなくするための処理である。
【0112】
[抗菌活性の評価]
実験条件
記録対象:シグモイド関数によるフィッティングを行い、増殖曲線が対数期に達するまでの時間。当該時間は、具体的には、増殖速度が最大となる点をフィッティング関数の一次微分から求めた。
培地:Triptic Soy Broth,100μm/well
菌種:M.luteus[4698],培地に対して1%添加
非動化:60℃-30分
試料:総タンパク質濃度=1mg/ml、クリーンベンチ(CB)内で0.2μmフィルタ滅菌,10μl/well
プレート:96well、丸底(FALCON)
測定条件:37℃振盪培養、30分ごとにOD600測定
【0113】
抗菌活性試験の対象として、グラム陽性菌であるMicrococcus luteus(ATCC(登録商標)4698TM)(以下、単に「M.luteus」という。)を試験に用いた。Triptic soy broth培地(Soybean-Casein Digest Medium)に、予め-80℃にて保存しておいた、Triptic soy broth培地:グリセロール=80vol%:20vol%にM.luteusを分散させた溶液(OD600=0.26)を1vol%添加し、良く撹拌した。撹拌後、96穴培養プレートに100μlずつ添加した。そこに、サンプル溶液を10μlずつ添加した。その後、マイクロプレートリーダー(SYNERGY H1、BioTek社)にて37℃にて振とう培養しながら、30分ごとに濁度(600nm)を測定し、抗菌活性を評価した。
【0114】
表5及び
図11は、増殖曲線が対数期に達するまでの時間の評価結果を示す。「熱傷」による刺激の試験結果は、N=5で実施した際の平均値である。「針刺し」による刺激の試験結果は、N=4で実施した際の平均値である。「M.luteus注射」による刺激の試験結果は、刺激後経過時間9,15,21及び24時間ではN=2で実施した際の平均値であり、刺激後経過時間18時間ではN=4で実施した際の平均値である。「刺激なし」による刺激の試験結果は、N=13で実施した際の平均値である。
【0115】
表5及び
図11のとおり、熱傷は、「針刺し」の刺激と比べて、増殖曲線が対数期に達するまでの時間が長かった。すなわち、熱傷による刺激を与えた場合、「針刺し」の刺激を与えた場合と比べて体液の抗菌活性がより高まることが示された。刺激後経過時間が9時間及び15時間である場合には、熱傷による刺激を与えた場合、「M.luteus注射」による刺激を与えた場合と比べて体液の抗菌活性がより高かった。「M.luteus注射」では、刺激後経過時間が18時間以上であると「熱傷」と比べて高い活性を示すが、幼虫体内にM.luteusが存在するため、動物に直接経口投与することはできない。表5中「-」は増殖曲線が対数期に達するまでの時間が42時間以上であったことを示す。
【0116】
【0117】
[試験用のサンプル調製]
抗菌活性試験の際に回収した体液に対し、総タンパク質量が30μg/9μlとなるように、超純水で希釈して、希釈液を調製した。希釈液は、200μlのPCRチューブ中に調製した。還元剤としてメルカプトエタノールを含む10×サンプルバッファーを希釈液に1μl加え、100℃で、3分間熱処理を実施して、試験用サンプルとした。
【0118】
[電気泳動]
次に示す条件で電気泳動を実施した。
図12に電気泳動の結果の一例を示す。
ゲル:Novex
TM 10-20% TricineGel (1.0mm×10well)(Thermo Fisher Scientific社)
バッファー:Tricin ×10SDS Running Buffer(Thermo Fisher Scientific社)
マーカー:Mark12
TM UnstainedStandard(Thermo Fisher Scientific社)
装置:Zoom Dual Power(Thermo FisherScientific社)
泳動条件:100V―130分
泳動量:サンプル10μl、マーカー18μl
染色:ATTO CBB染色液にて一晩染色後、超純水にて3時間以上脱水
【0119】
目的物(
図12(A)中の矢印で示すバンドに含まれる物質)は4~5kDa程度の分子量を示し、少なくとも2つの異なる分子量を持つ物質の混合物から構成される。これを別々に切り取り、リニアイオントラップ/電場型FT-MS/MSにて同定分析を実施した。分析結果を表6に示す。表6より、低分子量の目的物はディフェンシンを含み、高分子量の目的物はセクロピンを含む。
【0120】
【0121】
データベース登録のアミノ酸配列と、測定したアミノ酸配列断片を
図13及び
図14に示す。
図13及び
図14中の枠内は、分泌の過程でも切り離されず残っている配列(mature peptide)である。
【0122】
[カーブフィッティング]
電気泳動後のゲルを透明フィルムに封入後、Canon 9000F Mark IIを用いて、解像度600にて600dpiスキャンして画像データを取得した。画像データを、画像解析ソフトImageJを用いて二次元グラフ化し、WebPlotDigitizer(https://automeris.io/WebPlotDigitizer/)を用いて座標を付与した。画像処理した後、ガウス関数でカーブフィッティングを実施した。
【0123】
フィッティングした関数から面積を求め、全体の面積に対する割合を算出し、目的物の含有率とした。「熱傷」及び「針刺し」は、表5及び
図11に示す結果の内、増殖曲線が対数期に達するまでの時間が最も大きい刺激後経過時間である、15時間を選択した。
【0124】
「M.luteus注射」は、N=4の試験全てにおいて増殖曲線が対数期に達するまでの時間が42時間を超えた最小の刺激後経過時間である21時間を選択した。なお、「M.luteus注射」による刺激について、刺激後経過時間が18時間の場合、N=4の試験のうち、3回は増殖曲線が対数期に達するまでの時間が42時間を超えたが、1回は増殖曲線が対数期に達するまでの時間が32時間であった。
【0125】
結果を表7に示す。表7中のディフェンシン含有量及びセクロピン含有量は、体液全量を100%としたときの含有量(単位:質量%)である。電気泳動に用いるサンプル10μl中に、30μgのタンパク質が含まれている。この30μgのタンパク質は体液由来のものである。なお、体液中のタンパク質濃度は、Thermo Fisher Science社のNanoDropTM One/OneC超微量紫外可視分光光度計(製品番号(カタログ番号):ND-ONE-W)にて測定した。
【0126】
本開示によれば、抗菌ペプチドの新規な製造方法を提供することができる。当該製造方法によって得られる抗菌ペプチドを含む抗菌ペプチド組成物はより高い抗菌活性を有している。当該製造方法によって得られる抗菌ペプチドを含む抗菌ペプチド組成物は飼料組成物等の原料として利用可能である。