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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101249
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240722BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005127
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
【テーマコード(参考)】
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA21
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB12
5F057BC03
5F057BC10
5F057CA14
5F057DA11
5F057DA38
5F057EC15
5F057FA16
5F057FA28
5F057FA30
5F131AA02
5F131BA32
5F131CA12
5F131EC34
(57)【要約】
【課題】被加工物から保護テープを剥離する際のデバイス面への粘着剤残りおよび剥離応力によるウェーハ割れを抑制することができる被加工物の加工方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の加工方法は、紫外線が照射されることによって硬化する粘着剤を貼着面に有する保護テープを被加工物の表面に貼着する貼着ステップ1と、貼着ステップ1の後、保護テープを介して被加工物の表面側を保持し被加工物の裏面を研削する研削ステップ2と、研削ステップ2の後、被加工物に貼着された保護テープの表面を洗浄する洗浄ステップ3と、洗浄ステップ3の後、保護テープに紫外線を照射する紫外線照射ステップ4と、紫外線照射ステップ4の後、被加工物から保護テープを剥離する剥離ステップ5と、を含み、剥離ステップ5では、保護テープを剥離する際の荷重を測定しながら剥離を実施し、荷重が所定のしきい値以上である場合にエラーを報知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、
紫外線が照射されることによって硬化する粘着剤を貼着面に有する保護テープを該被加工物の表面に貼着する貼着ステップと、
該貼着ステップの後、該保護テープを介して該被加工物の表面側を保持し該被加工物の裏面を研削する研削ステップと、
該研削ステップの後、該被加工物に貼着された該保護テープの表面を洗浄する洗浄ステップと、
該洗浄ステップの後、該保護テープに紫外線を照射する紫外線照射ステップと、
該紫外線照射ステップの後、該被加工物から該保護テープを剥離する剥離ステップと、を含み、
該剥離ステップでは、
該保護テープを剥離する際の荷重を測定しながら剥離を実施し、
該荷重が所定のしきい値以上である場合にエラーを報知する
ことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
該剥離ステップでは、
一対のローラで該保護テープを両面から挟み込んだ状態で該一対のローラを互いに逆方向に回転させることによって該被加工物から該保護テープを剥離し、
該荷重を測定する代わりに該保護テープを剥離する際の該一対のローラにかかる回転トルクを測定しながら剥離を実施し、
該回転トルクが所定のしきい値以上である場合にエラーを報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスでは、半導体ウェーハの表面に形成されたデバイスを保護するためのBG(バックグラインド)テープを貼着した状態で、裏面(パターン面とは反対側の面)の研削を実施する。また、研削後には、環状のフレームが外周に装着されたDC(ダイシング)テープをウェーハの裏面に貼着するとともに、表面に貼着されたBGテープを剥離する。
【0003】
ところで、BGテープは紫外線照射により硬化する粘着剤を有するテープを使用することによって、剥離応力によるウェーハ割れや、デバイス面への粘着剤残りを抑制している。また、ウェーハの裏面を研削する研削装置では、研削中もチャックテーブルがウェーハを吸引し続けるため、研削中に発生した研削屑が、ウェーハとチャックテーブルとの間に侵入してBGテープ面に付着する。BGテープ面に付着した研削屑は、例えば、特許文献1に開示されるBGテープ面をスポンジ(発砲弾性樹脂)で洗浄する洗浄機構等によって除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-094785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにスポンジによる洗浄では、スポンジが劣化するとBGテープ面の洗浄効果が低下し、その結果、紫外線照射による粘着剤の硬化作用も低下する。また、紫外線照射のランプの劣化によっても、同様に粘着剤の硬化作用が低下する。スポンジの劣化や紫外線ランプの劣化によって、紫外線照射不良が発生すると、デバイス面への粘着剤残りが生じ、剥離応力によるウェーハ割れが発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物から保護テープを剥離する際のデバイス面への粘着剤残りおよび剥離応力によるウェーハ割れを抑制することができる被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、板状の被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、紫外線が照射されることによって硬化する粘着剤を貼着面に有する保護テープを該被加工物の表面に貼着する貼着ステップと、該貼着ステップの後、該保護テープを介して該被加工物の表面側を保持し該被加工物の裏面を研削する研削ステップと、該研削ステップの後、該被加工物に貼着された該保護テープの表面を洗浄する洗浄ステップと、該洗浄ステップの後、該保護テープに紫外線を照射する紫外線照射ステップと、該紫外線照射ステップの後、該被加工物から該保護テープを剥離する剥離ステップと、を含み、該剥離ステップでは、該保護テープを剥離する際の荷重を測定しながら剥離を実施し、該荷重が所定のしきい値以上である場合にエラーを報知することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の被加工物の加工方法において、該剥離ステップでは、一対のローラで該保護テープを両面から挟み込んだ状態で該一対のローラを互いに逆方向に回転させることによって該被加工物から該保護テープを剥離し、該荷重を測定する代わりに該保護テープを剥離する際の該一対のローラにかかる回転トルクを測定しながら剥離を実施し、該回転トルクが所定のしきい値以上である場合にエラーを報知してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、被加工物から保護テープを剥離する際のデバイス面への粘着剤残りおよび剥離応力によるウェーハ割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図2図2は、図1に示す貼着ステップの一状態を示す側面図である。
図3図3は、図1に示す研削ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図4図4は、図1に示す研削ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図5図5は、図1に示す洗浄ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図6図6は、図5に示す洗浄ステップの一状態を示す斜視図である。
図7図7は、図1に示す紫外線照射ステップの一状態を示す側面図である。
図8図8は、図1に示す剥離ステップの一状態を示す側面図である。
図9図9は、第1変形例における剥離ステップの一状態を示す側面図である。
図10図10は、第2変形例における剥離ステップの一状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る被加工物10の加工方法を図面に基づいて説明する。被加工物10の加工方法は、板状の被加工物10を加工するため方法である。図1は、実施形態に係る被加工物10の加工方法の流れを示すフローチャートである。実施形態の被加工物10の加工方法は、貼着ステップ1と、研削ステップ2と、洗浄ステップ3と、紫外線照射ステップ4と、剥離ステップ5と、を備える。
【0013】
(貼着ステップ1)
図2は、図1に示す貼着ステップ1の一状態を示す側面図である。貼着ステップ1は、紫外線73(図7参照)が照射されることによって硬化する粘着剤を粘着面21に有する保護テープ20を被加工物10の表面11に貼着するステップである。
【0014】
被加工物10は、例えば、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs)またはその他の半導体材料を基板とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。あるいは、被加工物10は、サファイア(Al)、ガラス、石英等の材料を基板とする円板状のウェーハである。ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、等を含む。
【0015】
被加工物10は、例えば、基板の表面11に格子状に設定される複数の分割予定ラインと、分割予定ラインによって区画された各領域に形成されるデバイスと、を有する。デバイスは、例えば、IC(Integrated Circuit)またはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、あるいはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。
【0016】
デバイスが形成された表面11と反対側に位置する裏面12は、後述の研削ステップ2において所定の仕上げ厚さまで研削される。被加工物10は、例えば、薄化された後、分割予定ラインに沿って分割されて、個々のデバイスチップに個片化される。なお、被加工物10は、円板状に限定されない。
【0017】
保護テープ20は、被加工物10のデバイスが形成された表面11側を保護するためのシートである。保護テープ20は、非粘着性および可撓性を有する樹脂の基材層と、粘着性および可撓性を有する樹脂の粘着層と、から構成される。粘着層に含まれる粘着剤は、紫外線73(図7参照)が照射されることによって硬化する紫外線硬化樹脂、例えば、ポリオレフィン等を含む。
【0018】
図2に示す貼着ステップ1では、ローラ30を使用して、保護テープ20を被加工物10の表面11に固定する。貼着ステップ1では、まず、被加工物10の表面11側が上面に向くように、保持テーブル31に被加工物10を載置する。保持テーブル31は、例えば、負圧により保持面を吸引する吸引保持機構や、静電吸着機構を有し、保持面(上面)に保持した被加工物10を固定可能である。貼着ステップ1では、次に、被加工物10の表面11全体を覆うより大判である保護テープ20の粘着面21を被加工物10の表面11に対向させて位置合わせする。
【0019】
貼着ステップ1では、次に、ローラ30を、保護テープ20の粘着面21と反対側の裏面22上で、被加工物10の一端部から他端部に向かって転動させる。ローラ30によって被加工物10の表面11に押圧された保護テープ20は、粘着剤を有する粘着面21側が被加工物10の表面11の凹凸に倣って密着するとともに、裏面22が平坦に形成される。貼着ステップ1で保護テープ20を被加工物10の表面11側に貼着した後は、保護テープ20を、適宜、被加工物10の外周縁に沿って切断しておく。
【0020】
(研削ステップ2)
図3および図4は、図1に示す研削ステップ2の一状態を一部断面で示す側面図である。研削ステップ2は、貼着ステップ1の後に実施される。研削ステップ2は、保護テープ20を介して被加工物10の表面11側を保持し被加工物10の裏面12を研削するステップである。
【0021】
実施形態の研削ステップ2では、研削装置40によって、被加工物10の裏面12を研削して所定の仕上げ厚さまで薄化する。研削装置40は、保持テーブル41と、研削ユニット42と、不図示の研削液供給ユニットと、を備える。
【0022】
保持テーブル41は、保護テープ20を介して被加工物10の表面11側を保持面に保持し、垂直な軸心回りに回動可能である。保持テーブル41は、例えば、負圧により保持面を吸引する吸引保持機構を有する。研削ユニット42は、回転軸部材であるスピンドル43と、スピンドル43の下端に取り付けられた研削ホイール44と、研削ホイール44の下面に装着される研削砥石45と、を含む。研削ホイール44は、保持テーブル41の軸心と平行な回転軸で回転可能である。
【0023】
研削ステップ2では、まず、保持テーブル41の保持面に、被加工物10の表面11側を、保護テープ20を介して吸引保持する。次に、保持テーブル41を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール44を軸心回りに回転させる。次に、不図示の研削液供給ユニットによって研削液を加工点に供給するとともに、研削ホイール44の研削砥石45を保持テーブル41に所定の送り速度で近付けることによって、図4に示すように、研削砥石45で被加工物10の裏面12側を研削して、所定の仕上げ厚さまで薄化する。
【0024】
この際、被加工物10の裏面12側が研削されると、研削屑が発生する。研削ステップ2を実施している間、保持テーブル41は、保持面で被加工物10を保持するための負圧を生成しており、保持面で被加工物10の表面11側を吸引している。すなわち、被加工物10の表面11側は、保護テープ20を介して保持テーブル41に吸引されている。この吸引により、研削屑が、被加工物10の外周縁側から、被加工物10の表面11側に貼着された保護テープ20と保持テーブル41の保持面との間に入り込み、保護テープ20に付着する場合がある。
【0025】
(洗浄ステップ3)
図5は、図1に示す洗浄ステップ3の一状態を一部断面で示す側面図である。図6は、図5に示す洗浄ステップ3の一状態を示す斜視図である。洗浄ステップ3は、研削ステップ2の後に実施される。洗浄ステップ3は、被加工物10に貼着された保護テープ20の表面を洗浄するステップである。
【0026】
すなわち、研削ステップ2において保護テープ20に付着した研削屑は、洗浄ステップ3において洗浄除去する。実施形態の洗浄ステップ3では、搬送ユニット50によって被加工物10を保持した状態で洗浄ユニット60によって、被加工物10に貼着された保護テープ20の表面(裏面22側)を洗浄する。
【0027】
搬送ユニット50は、研削ステップ2で裏面12を研削された被加工物10を、洗浄ユニット60の洗浄位置まで搬送する。搬送ユニット50は、不図示の駆動機構により移動可能な搬送アーム51と、搬送アーム51の先端に固定された円板状の保持部52と、を備える。保持部52は、例えば、負圧により下面側の吸着面53を吸引する吸引保持機構や、静電吸着機構を有し、吸着面53で被加工物10の研削面13を吸着して保持する。搬送ユニット50は、研削装置40の保持テーブル41上と洗浄ユニット60に対向する位置(図5および図6に示す位置)との間で被加工物10を搬送可能である。
【0028】
洗浄ユニット60は、研削面13が搬送ユニット50によって保持された被加工物10の表面11側に下方から対向する。洗浄ユニット60は、洗浄ユニット60は、実施形態において、被加工物10の下方側に対向するスポンジ(発砲弾性樹脂)を有する。スポンジは、被加工物10の表面11に貼着された保護テープ20を洗浄する機能を有する。洗浄ユニット60は、スポンジを保護テープ20に接触させ状態で保護テープ20に対して相対的に移動し、保護テープ20の表面を擦ることで研削屑を洗浄して除去する。スポンジは、図5および図6に示す一例では、垂直な軸心回りに回転可能な三枚羽のプロペラ状の形状を有するが、円板状でもよく、水平な軸心回り回転可能なスポンジローラ等であってもよい。また、水平方向に往復移動可能であってもよい。
【0029】
洗浄ステップ3では、まず、研削装置40の保持テーブル41上に搬送ユニット50の吸着面53を対向させ、保持テーブル41に保持された研削後の被加工物10の研削面13に吸着面53を接触させて、吸着保持する。次に、搬送ユニット50によって、被加工物10を、洗浄ユニット60に対向する位置まで搬送する。
【0030】
洗浄ステップ3では、次に、洗浄ユニット60のスポンジを被加工物10の表面11側に貼着された保護テープ20の表面(裏面12側)に接触させるとともに、スポンジを垂直な軸心回りに回転させることで、保護テープ20の裏面12側を洗浄する。これにより、スポンジが保護テープ20の裏面12を擦り取り、保護テープ20上に付着した研削屑が除去される。保護テープ20が洗浄された被加工物10は、搬送ユニット50によって、後述の図7に示す紫外線照射装置70へ搬送される。
【0031】
(紫外線照射ステップ4)
図7は、図1に示す紫外線照射ステップ4の一状態を示す側面図である。紫外線照射ステップ4は、洗浄ステップ3の後に実施される。紫外線照射ステップ4は、保護テープ20に紫外線73を照射するステップである。
【0032】
実施形態の紫外線照射ステップ4では、図7に示す紫外線照射装置70によって、保護テープ20に紫外線73を照射する。紫外線照射装置70は、保持テーブル71と、保持テーブル71に保持された被加工物10に向けて紫外線73を照射する光源72と、を備える。光源72は、図7に示す例では、保持テーブル71上方の中央に1つだけ配置されるが、複数配置されてもよい。また、保持テーブル71と光源72とが相対的に移動可能であってもよい。
【0033】
図7に示す紫外線照射ステップ4では、まず、被加工物10の保護テープ20が貼着された表面11側が上面に向くように、保持テーブル71に被加工物10を載置する。保持テーブル71は、例えば、負圧により保持面を吸引する吸引保持機構や、静電吸着機構を有し、保持面(上面)に被加工物10を保持する。次に、光源72から紫外線73を、保護テープ20に向けて所定時間照射する。保護テープ20は、粘着面21側の紫外線硬化樹脂を含む粘着剤が、紫外線73に照射されることにより硬化し、粘着力が低下する。
【0034】
(剥離ステップ5)
図8は、図1に示す剥離ステップ5の一状態を示す側面図である。剥離ステップ5は、紫外線照射ステップ4の後に実施される。剥離ステップ5は、被加工物10から保護テープ20を剥離するステップである。剥離ステップ5では、保護テープ20を剥離する際の荷重を測定しながら剥離を実施し、荷重が所定のしきい値以上である場合にエラーを報知する。
【0035】
図8に示す剥離ステップ5では、保護テープ20の端部を両面から挟持可能な剥離ユニット80を使用して、被加工物10から保護テープ20を剥離する。剥離ステップ5では、まず、被加工物10の保護テープ20が貼着された表面11側が上面に向くように、保持テーブル81に被加工物10を載置する。保持テーブル81は、例えば、負圧により保持面を吸引する吸引保持機構や、静電吸着機構を有し、保持面(上面)に保持した被加工物10を固定可能である。なお、保持テーブル81は、紫外線照射装置70の保持テーブル71と兼用であることが好ましい。
【0036】
剥離ステップ5では、次に、被加工物10に貼着された保護テープ20の端部に、不図示の剥離起点形成機構によって、剥離起点を形成する。剥離起点形成機構は、例えば、保護テープ20の外周縁に接触するスポンジ(発砲弾性樹脂)やシリコンゴム(弾性樹脂)等の剥離部材と、剥離部材を移動させる移動機構と、を有する。移動機構は、剥離部材を、被加工物10に貼着された保護テープ20の外周縁に接触した位置から、被加工物10の中心に向かって斜め上方へ移動させる。剥離部材が保護テープ20を被加工物10から捲り上げることで、保護テープ20の端部に剥離起点が形成される。
【0037】
剥離ステップ5では、次に、剥離起点となる保護テープ20の端部を、剥離ユニット80によって両面から挟持する。次に、剥離ユニット80を、剥離起点とは反対側かつ上方に向かって移動させ、保護テープ20を引っ張ることで、保持テーブル81に保持された被加工物10から保護テープ20を剥離させる。
【0038】
剥離ステップ5では、剥離ユニット80が保護テープ20を引っ張る際の荷重を測定しながら剥離を実施する。荷重の測定値は、例えば、不図示の制御装置に出力される。制御装置は、予め所定のしきい値を記憶し、測定した荷重が所定のしきい値以上である場合、不図示の報知装置にエラーを報知させる。報知装置は、例えば、音と光のうち少なくとも一方を発して、オペレータに報知する。
【0039】
紫外線照射ステップ4において、紫外線73が保護テープ20に十分に照射されず、保護テープ20の粘着面21の硬化が不足すると、十分に粘着力が下がらず、剥離ステップ5において剥離ユニット80に大きな荷重がかかる。剥離ステップ5では、しきい値以上の荷重がかかった場合、紫外線73の照射が不十分であったと判断することができる。この場合、例えば、剥離ステップ5を中断し、再び紫外線照射ステップ4を実施してもよい。
【0040】
〔第1変形例〕
図9は、第1変形例における剥離ステップ5の一状態を示す側面図である。第1変形例の剥離ステップ5では、被加工物10の裏面12側にダイシングテープ110を貼着し、フレーム100およびダイシングテープ110に固定した後の被加工物10から、保護テープ20を剥離する。
【0041】
フレーム100は、フレーム100は、金属または樹脂で形成され、被加工物10の外径より大きな開口を有する環状の板部材である。ダイシングテープ110は、フレーム100の開口より外径が大きなシート状であって、フレーム100の開口を覆うように、フレーム100の裏面側に貼着される。
【0042】
ダイシングテープ110は、例えば、伸縮性を有する合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ伸縮性および粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含んで構成されてもよく、あるいは、糊層を有さず、熱可塑性を有する樹脂から構成されてもよい。被加工物10は、フレーム100の開口の所定の位置に位置決めされ、研削面13側がダイシングテープ110に貼着することによって、フレーム100およびダイシングテープ110に固定される。
【0043】
ダイシングテープ110を被加工物10の研削面13に貼り付けるタイミングは、例えば、紫外線照射ステップ4の後であることが好ましい。第1変形例の剥離ステップ5では、保持テーブル81の保持面に、ダイシングテープ110を介して被加工物10の研削面13側を保持した後、クランプ部材82でフレーム100の外周縁を固定する。クランプ部材82は、保持テーブル81の周囲に複数配置され、フレーム100の外周縁を挟持可能である。第1変形例の剥離ステップ5のその後の手順は、図8に示す実施形態の剥離ステップ5の手順と同様である。
【0044】
〔第2変形例〕
図10は、第2変形例における剥離ステップ5の一状態を示す側面図である。第2変形例の剥離ステップ5では、図8に示す剥離ユニット80の代わりに、剥離ユニット90を使用して、被加工物10から保護テープ20を剥離する。
【0045】
剥離ユニット90は、一対のローラ92、93を含む。一対のローラ92、93は、被加工物10を保持する保持テーブル91の保持面に平行な軸心回りに回転可能である。また、一対のローラ92、93の軸心は、互いに平行である。一対のローラ92、93は、保護テープ20の厚さ分、離間して配置される。一対のローラ92、93は、その間に保護テープ20を両面から挟み込み、かつ互いに逆方向に回転することで、保護テープ20を回転に沿う方向に引き込む。
【0046】
第2変形例の剥離ステップ5では、図8に示す実施形態の剥離ステップ5と同様に、まず、被加工物10の保護テープ20が貼着された表面11側が上面に向くように、保持テーブル91に被加工物10を載置する。保持テーブル91は、例えば、負圧により保持面を吸引する吸引保持機構や、静電吸着機構を有し、保持面(上面)に保持した被加工物10を固定可能である。なお、保持テーブル91は、紫外線照射装置70の保持テーブル71と兼用であることが好ましい。剥離ステップ5では、次に、被加工物10に貼着された保護テープ20の端部に、不図示の剥離起点形成機構によって、剥離起点を形成する。
【0047】
第2変形例の剥離ステップ5では、次に、剥離起点となる保護テープ20の端部を、一対のローラ92、93の間に誘導し、両面から挟持させる。次に、一対のローラ92を図10に示す矢印の方向に回転させ、剥離起点とは反対側かつ上方に向かって保護テープ20を引き込むことで、保持テーブル91に保持された被加工物10から保護テープ20を剥離させる。
【0048】
第2変形例の剥離ステップ5では、剥離ユニット90の一対のローラ92、93にかかる回転トルクを測定しながら剥離を実施する。回転トルクの測定値は、例えば、不図示の制御装置に出力される。制御装置は、予め所定のしきい値を記憶し、測定した回転トルクが所定のしきい値以上である場合、不図示の報知装置にエラーを報知させる。なお、制御装置は、取得した回転トルクに基づいて、剥離ユニット90が保護テープ20を引っ張る荷重を算出し、荷重に関する所定のしきい値を予め記憶し、算出した荷重が所定のしきい値以上である場合、不図示の報知装置にエラーを報知させてもよい。
【0049】
以上説明したように、実施形態および各変形例の被加工物10の加工方法では、保護テープ20を剥離する際の荷重を監視することによって、保護テープ20の粘着面21が十分に硬化しているか否かを検知することができる。すなわち、紫外線照射ステップ4における粘着面21を硬化させるための紫外線73の照射が十分であったか否かを検知することができる。剥離時に紫外線照射不良を検知することで、所定のしきい値以上の荷重がかかった場合、剥離を中断して、再び紫外線73を照射する等の対策が可能である。したがって、被加工物10から保護テープ20を剥離する際のデバイス面(表面11)への粘着剤残りおよび剥離応力による割れを抑制することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 被加工物
11 表面
12 裏面
13 研削面
20 保護テープ
21 粘着面
22 裏面(表面)
30 ローラ
40 研削装置
50 搬送ユニット
60 洗浄ユニット
70 紫外線照射装置
73 紫外線
80、90 剥離ユニット
92、93 ローラ
図1
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