(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101316
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】被加工物の処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240722BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240722BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240722BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240722BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
H01L21/78 Q
H01L21/78 M
H01L21/68 N
H01L21/02 C
B24B7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005237
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 海音
(72)【発明者】
【氏名】飯島 啓介
【テーマコード(参考)】
3C043
5F057
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
5F057AA05
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5F131EC52
5F131EC53
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5F131EC74
5F131EC76
(57)【要約】
【課題】薄化した被加工物を破損することなく支持基板から剥離することができる被加工物の処理方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の処理方法は、被加工物の一方の面にワックスを介して支持基板を固定する支持基板固定ステップ1と、一方の面に支持基板が固定された被加工物の他方の面側を研削して所定の厚みまで薄化する研削ステップ2と、研削ステップ2により研削された被加工物の研削面に対して熱可塑性樹脂を含む保護シートを敷設する保護シート敷設ステップ3と、研削面に保護シートが敷設された状態で保護シートおよびワックスを加熱し、加熱された保護シートを被加工物に熱圧着する加熱ステップ4と、被加工物を支持基板から剥離する支持基板剥離ステップ5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の処理方法であって、
被加工物の一方の面にワックスを介して支持基板を固定する支持基板固定ステップと、
該一方の面に該支持基板が固定された該被加工物の他方の面側を研削して所定の厚みまで薄化する研削ステップと、
該研削ステップにより研削された該被加工物の研削面に対して熱可塑性樹脂を含む保護シートを敷設する保護シート敷設ステップと、
該研削面に該保護シートが敷設された状態で該保護シートおよび該ワックスを加熱し、加熱された該保護シートを該被加工物に熱圧着する加熱ステップと、
該被加工物を該支持基板から剥離する支持基板剥離ステップと、を備える
ことを特徴とする、被加工物の処理方法。
【請求項2】
該ワックスの溶融温度は、該保護シートが該被加工物に熱圧着される温度より低い
ことを特徴とする、請求項1に記載の被加工物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスでは、デバイスを所望の厚さにするために、半導体ウエーハの裏面を研削して薄化する工程が実施されている。近年では、半導体デバイスを搭載する装置の小型化により、デバイスチップを極力薄くすることが要求されているが、薄化した半導体ウエーハは取り扱いが困難になること等から、研削前に半導体ウエーハの表面側を支持基板に貼り付け、研削後にこの支持基板から半導体ウエーハを剥離する方法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、支持基板の貼り付け方法としては、加熱により溶融した固形ワックスを用いてワックス膜を作り、ワックス膜を介して半導体ウエーハと支持基板を固定する手法が一般的である。しかしながら、このような手法で固定した場合、半導体ウエーハを支持基板から剥離する際に、研削応力等による反りが解放され半導体ウエーハが割れてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、薄化した被加工物を破損することなく支持基板から剥離することができることができる被加工物の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の処理方法は、被加工物の一方の面にワックスを介して支持基板を固定する支持基板固定ステップと、該一方の面に該支持基板が固定された該被加工物の他方の面側を研削して所定の厚みまで薄化する研削ステップと、該研削ステップにより研削された該被加工物の研削面に対して熱可塑性樹脂を含む保護シートを敷設する保護シート敷設ステップと、該研削面に該保護シートが敷設された状態で該保護シートおよび該ワックスを加熱し、加熱された該保護シートを該被加工物に熱圧着する加熱ステップと、該被加工物を該支持基板から剥離する支持基板剥離ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の被加工物の処理方法において、該ワックスの溶融温度は、該保護シートが該被加工物に熱圧着される温度より低いことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、薄化した被加工物を破損することなく支持基板から剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る被加工物の処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、
図1に示す支持基板固定ステップの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す支持基板固定ステップの別の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す研削ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す研削ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す保護シート敷設ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す加熱ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す支持基板剥離ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図9】
図9は、第1適用形態における改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、第2適用形態における改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図11】
図11は、第2適用形態における分割ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図12】
図12は、第2適用形態における分割ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る被加工物10の処理方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る被加工物10の処理方法の流れを示すフローチャートである。被加工物10の処理方法は、被加工物10を支持基板30に固定した状態で研削を実施した後、被加工物10に保護シート50を敷設するとともに被加工物10から支持基板30を剥離する方法である。
図1に示すように、実施形態の被加工物10の処理方法は、支持基板固定ステップ1と、研削ステップ2と、保護シート敷設ステップ3と、加熱ステップ4と、支持基板剥離ステップ5と、を備える。
【0012】
(支持基板固定ステップ1)
図2は、
図1に示す支持基板固定ステップ1の一例を示す斜視図である。
図3は、
図1に示す支持基板固定ステップ1の別の一例を示す斜視図である。支持基板固定ステップ1は、被加工物10の一方の面11にワックス20を介して支持基板30を固定するステップである。
【0013】
被加工物10は、例えば、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、またはリチウムタンタレート(LiTa
3)等を基板とする円板状の半導体デバイスウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物10は、基板の表面(一方の面11)に格子状に設定される複数の分割予定ライン(
図9から
図12までの分割予定ライン15を参照)と、分割予定ラインによって区画された領域に形成されたるデバイスと、を有する。
【0014】
デバイスは、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。被加工物10は、分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割されて、チップに製造される。チップは、基板の一部分と、基板上のデバイスと、を含む。チップの平面形状は、例えば、正方形状または長方形状である。なお、被加工物10は、本発明では円板状に限定されず、樹脂パッケージ基板や金属基板等その他の板状であってもよい。
【0015】
ワックス20は、被加工物10の一方の面11と支持基板30とを固定させるための接合材であり、例えば、熱可塑性樹脂で形成される。ワックス20は、溶融開始温度が、約60℃程度であり、溶融温度が、後述の保護シート50が被加工物10に熱圧着される温度より低い。なお、本明細書において、熱圧着とは、例えば、保護シート50が溶融することなく軟化し、研削後の被加工物10研削面14(
図5参照)に対して押圧されることで、研削面14に接着されることをいう。
【0016】
支持基板30は、
図2に示す一例では、被加工物10と同径の円板状である。また、支持基板固定ステップ1では、
図3に示す別の一例のように、被加工物10より大径の円板状の支持基板30-1を用いてもよい。また、被加工物10を十分に覆う形状および大きさで形成される支持基板であってもよい。支持基板30の一方の面31と他方の面32とは、平行に形成されている。支持基板30は、被加工物10と同等もしくは被加工物10よりも脆くなく、なおかつ、被加工物10と同等もしくは被加工物10よりも割れにくい材料で形成されている。支持基板30としては、例えば、ガラス板や、シリコンウエーハ等が使用される。
【0017】
支持基板固定ステップ1では、例えば、まず、ワックス20を、被加工物10の一方の面11と支持基板30の一方の面31とのうち一方に塗布する。次いで、被加工物10の一方の面11と支持基板30の一方の面31とのうちワックス20を塗布した一方と、他方と貼り合わせる。例えば、液状にしたワックス20をスピンコートによって被加工物10の一方の面11に塗布した後、加熱された支持基板30の一方の面31に加圧することで固定する。
【0018】
あるいは、固形状のワックス20を、被加工物10の一方の面11と支持基板30の一方の面31との間に介在させた状態で加熱および加圧することでワックス20を溶融させて被加工物10の全面に広げるようにしてもよい。ワックス20が冷えて軟化点を下回ることにより硬化して、ワックス20を介して被加工物10を支持基板30に固定することができる。
【0019】
(研削ステップ2)
図4および
図5は、
図1に示す研削ステップ2の一状態を一部断面で示す側面図である。研削ステップ2は、一方の面11に支持基板30が固定された被加工物10の他方の面12側を研削して所定の厚み13まで薄化するステップである。実施形態の研削ステップ2では、
図4および
図5に示す研削装置40によって、被加工物10の他方の面12側を研削して所定の厚み13まで薄化する。
【0020】
図4および
図5に示すように、研削装置40は、保持テーブル41と、回転軸部材であるスピンドル42と、スピンドル42の下端に取り付けられた研削ホイール43と、研削ホイール43の下面に装着される研削砥石44と、不図示の研削液供給ユニットと、を備える。研削ホイール43は、保持テーブル41の軸心と平行な回転軸で回転する。
【0021】
研削ステップ2では、まず、保持テーブル41の保持面に、支持基板30の他方の面32側を吸引保持する。次に、保持テーブル41を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール43を軸心回りに回転させる。不図示の研削液供給ユニットによって研削液を加工点に供給するとともに、研削ホイール43の研削砥石44を保持テーブル41に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石44で被加工物10の他方の面12を研削し、
図5に示す所定の厚み13まで薄化する。
【0022】
(保護シート敷設ステップ3)
図6は、
図1に示す保護シート敷設ステップ3の一状態を一部断面で示す側面図である。保護シート敷設ステップ3は、研削ステップ2により研削された被加工物10の研削面14に対して熱可塑性樹脂を含む保護シート50を敷設するステップである。実施形態の保護シート敷設ステップ3では、
図6に示すローラ55によって、保護シート50を被加工物10の研削面14に圧着させる。
【0023】
保護シート50は、被加工物10の研削面14側を保護するためのシートである。保護シート50は、約80℃以上120℃以下程度の温度で熱圧着される、熱可塑性を有する樹脂で形成された樹脂シートである。保護シート50は、例えば、厚さが20μm以上80μm以下のポリオレフィン系シートまたはポリエチレン系シートの等を含み、実施形態では、厚さが80μmのシートである。保護シート50は、単層でもよいし積層されていてもよい。保護シート50は、例えば、糊層を有せず、非粘着性で伸縮性を有する基材層のみで構成される株式会社ディスコ製のGluFree(登録商標)シートである。
【0024】
保護シート敷設ステップ3では、まず、被加工物10の研削面14側が上面に向くように、支持基板30の他方の面32側を保持テーブル56の保持面上に載置する。保護シート敷設ステップ3では、次に、被加工物10の研削面14全体を覆うより大判である保護シート50の一方の面51側を被加工物10の研削面14に対向させて位置合わせする。
【0025】
保護シート敷設ステップ3では、次に、ローラ55を、保護シート50の一方の面51と反対側の他方の面52上で、被加工物10の一端部から他端部に向かって転動させる。これにより、保護シート50を被加工物10の研削面14に圧着させる。ローラ55は、例えば、熱源を有し、保護シート50を加熱可能であってもよい。保護シート50は、加熱されながらローラ55によって熱圧着されることで、軟化した状態で研削面14に押し広げられるので、後述の加熱ステップ4で、研削面14と保護シート50との間に気泡が入り込むことを抑制できる。
【0026】
(加熱ステップ4)
図7は、
図1に示す加熱ステップ4の一状態を一部断面で示す側面図である。加熱ステップ4は、研削面14に保護シート50が敷設された状態で保護シート50およびワックス20を加熱し、加熱された保護シート50を被加工物10に熱圧着するステップである。実施形態の加熱ステップ4では、
図7に示す加熱装置60によって、保護シート50およびワックス20を加熱する。
【0027】
加熱装置60は、熱源61を有し、保持面62(上面)を加熱可能なホットプレートである。なお、保護シート敷設ステップ3で用いる保持テーブル56が、熱源61による加熱を停止させている状態の加熱装置60であってもよい。加熱ステップ4では、支持基板30の他方の面32側を、加熱した加熱装置60の保持面62上に載置することで、支持基板30および被加工物10を介して、ワックス20および保護シート50を加熱する。
【0028】
この際、熱源61は、保護シート50が軟化点を超えかつ溶融点を下回る温度に加熱されるとともに、ワックス20が軟化点を超える温度に加熱されるよう、加熱温度が予め設定されている。具体的には、保護シート50およびワックス20は、約50℃以上200℃以下の温度で加熱される。具体的には、ワックス20の溶融開始温度が約60℃程度であり、保護シート50の圧着温度が約80℃以上120℃以下程度であるため、約80℃以上120℃以下の温度で加熱されることが好ましい。
【0029】
被加工物10の研削面14に敷設された保護シート50は、加熱されることで軟化して、一方の面51側が研削面14に密着する。また、ワックス20の溶融温度は、保護シート50が被加工物10に熱圧着される温度より低いため、保護シート50が被加工物10に熱圧着されるまで加熱されている状態では、被加工物10と支持基板30との間に介在するワックス20は溶融する。
【0030】
なお、加熱ステップ4では、ホットプレートで加熱する様態に限定されず、ワックス20と保護シート50とを同時に加熱できるものであればどのような様態でもよい。
【0031】
(支持基板剥離ステップ5)
図8は、
図1に示す支持基板剥離ステップ5の一状態を一部断面で示す側面図である。支持基板剥離ステップ5は、被加工物10を支持基板30から剥離するステップである。支持基板剥離ステップ5では、加熱ステップ4で被加工物10に熱圧着された保護シート50と被加工物10とを、加熱装置60の保持面62に載置された支持基板30に対して持ち上げることで被加工物10を支持基板30から剥離する。加熱ステップ4によりワックス20が十分加熱されて溶融しているため、被加工物10の支持基板30からの剥離は容易である。したがって、研削応力等による反りを解放させることなく、被加工物10をワックス20から剥離させることができる。
【0032】
被加工物10を支持基板30から剥離することで被加工物10とともに保護シート50を加熱装置60から搬出すると、保護シート50は、冷えて軟化点を下回ることで硬化し、被加工物10と一体化する。以上により、被加工物10をワックス20から剥離させるとともに、被加工物10を保護シート50に転写することができる。
【0033】
以上説明したように、実施形態に係る被加工物10の処理方法は、ワックス20により支持基板30に固定された被加工物10の裏面(他方の面12)を研削した後、研削面14に対して熱可塑性樹脂からなる保護シート50を敷設して加熱することで、ワックス20を剥離させるとともに研削面14に保護シート50を一体化させる。これにより、反りを解放させることなく被加工物10をワックス20から剥離させるとともに、被加工物10を保護シート50に転写することができるという効果を奏する。
【0034】
〔第1適用形態〕
次に、本発明の被加工物10の処理方法の第1適用形態について説明する。第1適用形態では、支持基板固定ステップ1の後、研削ステップ2の前に、被加工物10の内部に改質層16(
図9参照)を形成し(改質層形成ステップ)、研削ステップ2において改質層16を除去するとともに改質層16に沿って被加工物10を分割させてチップ化する。
【0035】
改質層16とは、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層16は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層16は、被加工物10の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0036】
(改質層形成ステップ)
図9は、第1適用形態における改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図9に示す改質層形成ステップでは、レーザー加工装置70によるステルスダイシングによって、被加工物10の内部に改質層16を形成する。レーザー加工装置70は、保持テーブル71と、レーザービーム照射ユニット72と、不図示の撮像ユニットと、保持テーブル71とレーザービーム照射ユニット72とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、を備える。
【0037】
図9に示す改質層形成ステップでは、まず、支持基板30の他方の面32側を保持テーブル71に吸引保持する。次に、不図示の移動ユニットによって保持テーブル71を所定の加工位置まで移動させる。次に、不図示の撮像ユニットで被加工物10を撮像することによって、分割予定ライン15を検出する。分割予定ライン15が検出されたら、被加工物10の分割予定ライン15と、レーザービーム照射ユニット72の照射部との位置合わせを行うアライメントを遂行する。
【0038】
改質層形成ステップでは、次に、レーザービーム73の集光点74を被加工物10の内部に位置付ける。この状態で、被加工物10の他方の面12側からレーザービーム73を照射しながら、集光点74を分割予定ライン15に沿って相対的に加工送り方向に移動させる。なお、レーザービーム73は、被加工物10に対して透過性を有する波長のレーザービームであり、例えば、赤外線(Infrared rays;IR)である。分割予定ライン15に沿ってレーザービーム73が照射されることにより、被加工物10の内部に分割予定ライン15に沿った改質層16が形成される。
【0039】
この際、改質層形成ステップでは、レーザービーム73の集光点74の高さを変更して複数回レーザービーム73を照射する、または、被加工物10の厚さ方向に離れた複数の集光点74を有するレーザービーム73を照射することで、被加工物10の厚さ方向に重なる複数の改質層16を形成してもよい。改質層16からは被加工物10の厚さ方向にクラック17が伸展し、改質層16とクラック17との連結によって、分割予定ライン15に沿った格子状の分割起点が形成される。
【0040】
(研削ステップ2)
第1適用形態において、改質層16を形成した被加工物10の他方の面12側を研削する手順は、実施形態の研削ステップ2と同様である。第1適用形態の研削ステップ2では、研削ホイール43(
図4および
図5参照)から作用する研削応力によって、改質層16を起点として亀裂が被加工物10の一方の面11および他方の面12に伸展し、改質層16を分割起点として分割予定ライン15に沿って分割されて、個々のデバイスチップに個片化する。
【0041】
〔第2適用形態〕
次に、本発明の被加工物10の処理方法の第2適用形態について説明する。第2適用形態では、研削ステップ2の後、保護シート敷設ステップ3の前に、被加工物10の内部に改質層16を形成し(改質層形成ステップ)、支持基板剥離ステップ5の後、エキスパンドにより改質層16に沿って被加工物10を分割させてチップ化する(分割ステップ)。
【0042】
(改質層形成ステップ)
図10は、第2適用形態における改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図10に示す改質層形成ステップでは、第1適用形態の改質層形成ステップと同様に、レーザー加工装置70によるステルスダイシングによって、被加工物10の内部に改質層16を形成する。第2適用形態の改質層形成ステップの手順は、第1適用形態の改質層形成ステップの手順における「被加工物10の他方の面12」を「被加工物10の研削面14」に置き換えればよい。
【0043】
(分割ステップ)
図11および
図12は、第2適用形態における分割ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。分割ステップは、改質層形成ステップで内部に改質層16が形成された被加工物10に対して、保護シート敷設ステップ3、加熱ステップ4、および支持基板剥離ステップ5を実施した後に実施される。分割ステップでは、改質層形成ステップで内部に改質層16が形成された被加工物10に対して外力を付与し、各々の分割予定ライン15に沿って分割させてチップ化する。
【0044】
図11および
図12に示すように、分割ステップでは、被加工物10の一方の面11側にエキスパンドテープ91を貼着して転写した後、拡張装置80がエキスパンドテープ91に放射方向に外力を与えることによって被加工物10を分割する。拡張装置80は、保持テーブル81と、クランプ部材82と、昇降ユニット83と、突き上げ部材84と、コロ部材85と、を備える。突き上げ部材84は、保持テーブル81の外周かつ同軸に設けられる円筒形状である。コロ部材85は、保持テーブル81の保持面と同一平面上または僅かに上方、かつ突き上げ部材84の上端に、回転自在に設けられる。
【0045】
分割ステップでは、まず、被加工物10の研削面14側に貼着された保護シート50(
図8参照)を剥離させるとともに、被加工物10の一方の面11および環状のフレーム90にエキスパンドテープ91を貼着する。フレーム90は、金属または樹脂で形成され、被加工物10の外径より大きな開口を有する環状の板状である。エキスパンドテープ91は、例えば、エキスパンド性を有する合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつエキスパンド性および粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含むシート状である。
【0046】
エキスパンドテープ91は、例えば、被加工物10の一方の面11および環状のフレーム90に貼着された後、フレーム90の開口を覆う形状および大きさに切断される。被加工物10は、フレーム90の開口の所定の位置に位置決めされて一方の面11側がエキスパンドテープ91に貼着することによって、フレーム90およびエキスパンドテープ91に固定される。
【0047】
図11に示すように、分割ステップでは、次に、エキスパンドテープ91を介して被加工物10の一方の面11側を保持テーブル81の保持面に載置し、フレーム90の外周部をクランプ部材82で固定する。この際、コロ部材85は、フレーム90の内縁と被加工物10の外縁との間のエキスパンドテープ91に当接する。
【0048】
図11に示すように、分割ステップでは、次に、昇降ユニット83によって、保持テーブル81および突き上げ部材84を一体的に上昇させる。この際、エキスパンドテープ91は、外周部がフレーム90を介してクランプ部材82で固定されているため、フレーム90の内縁と被加工物10の外縁との間の部分が面方向に拡張される。更に、突き上げ部材84の上端に設けられたコロ部材85がエキスパンドテープ91との摩擦を緩和する。
【0049】
分割ステップでは、エキスパンドテープ91の拡張の結果、エキスパンドテープ91に放射状に引張力が作用する。エキスパンドテープ91に放射状の引張力が作用すると、
図10および
図11に示すように、エキスパンドテープ91が貼着された被加工物10が、分割予定ライン15に沿った改質層16を破断起点にして分割されて、個々のデバイスチップ18に個片化する。
【0050】
被加工物10がデバイスチップ18に分割された後は、例えば、ピックアップ工程において、周知のピッカーでエキスパンドテープ91からデバイスチップ18がピックアップされる。なお、第2適用形態の分割ステップでは、デバイスチップ18が、裏面(研削面14)側が上を向いた状態で個片化されるため、例えば、次のピックアップ工程やダイボンディング工程において、デバイスチップ18の上下を反転させる必要がある。
【0051】
上記した第2適用形態では、エキスパンドテープ91として保護シート50と異なるテープを用いているが、保護シート50がエキスパンド性を有するものであれば、保護シート50をそのまま用いることもできる。この場合、分割ステップでは、デバイスチップ18が、表面(一方の面11)側が上を向いた状態で個片化されるため、例えば、次のピックアップ工程やダイボンディング工程において、デバイスチップ18の上下を反転させる必要がない。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、保護シート敷設ステップ3では、真空状態(低圧状態)を形成することにより研削面14に保護シート50を密着させ敷設させてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 被加工物
11、31、51 一方の面
12、32、52 他方の面
13 厚み
14 研削面
15 分割予定ライン
16 改質層
17 クラック
18 デバイスチップ
20 ワックス
30、30-1 支持基板
50 保護シート