(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101411
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】縮小装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/132 20140101AFI20240722BHJP
H04N 19/154 20140101ALI20240722BHJP
H04N 19/169 20140101ALI20240722BHJP
【FI】
H04N19/132
H04N19/154
H04N19/169 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005376
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159MA41
5C159TA52
5C159TA53
5C159TB15
5C159TC01
5C159TC12
5C159TC28
5C159TD06
5C159TD12
5C159TD16
(57)【要約】
【課題】アーティファクトを抑制するような画像縮小処理を行う。
【解決手段】縮小装置1は、原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数帯域分解部11と、画素位置毎に、周波数帯域成分の総計パワーに対する、所定の周波数帯域以上の高周波数帯域のパワーの割合である高周波数帯域パワー割合を算出する高周波数帯域割合算出部12と、高周波数帯域パワー割合が高いほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する量子化パラメータ推定部13と、量子化パラメータ推定値に応じて、周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する縮退処理部14と、縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部15と、縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成する解像度縮小部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、
前記原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数帯域分解部と、
画素位置毎に、前記周波数帯域成分の総計パワーに対する、所定の周波数帯域以上の高周波数帯域のパワーの割合である高周波数帯域パワー割合を算出する高周波数帯域割合算出部と、
前記高周波数帯域パワー割合が高いほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する量子化パラメータ推定部と、
前記量子化パラメータ推定値に応じて、前記周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する縮退処理部と、
前記縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、
前記縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成する解像度縮小部と、
を備える縮小装置。
【請求項2】
原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、
前記原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数帯域分解部と、
前記周波数帯域成分に基づいて、ピクチャ毎に、前記原画像の雑音レベルを算出する雑音レベル算出部と、
前記雑音レベルが大きいほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する量子化パラメータ推定部と、
前記量子化パラメータ推定値に応じて、前記周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する縮退処理部と、
前記縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、
前記縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成する解像度縮小部と、
を備える縮小装置。
【請求項3】
原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、
前記原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数帯域分解部と、
動きベクトルの推定対象となる対象ピクチャを第1ブロックに分割し、該対象ピクチャの前後ピクチャとの間で、第1ブロック毎に動きベクトルの推定を行う動きベクトル推定部と、
前記第1ブロック毎に、前記動きベクトルの大きさが大きいほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する量子化パラメータ推定部と、
前記量子化パラメータ推定値に応じて、前記周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する縮退処理部と、
前記縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、
前記縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成する解像度縮小部と、
を備える縮小装置。
【請求項4】
前記動きベクトル推定部は、複数の前記第1ブロックからなる第2ブロックごとに、前記動きベクトルの分散を求め、
前記量子化パラメータ推定部は、前記第2ブロック毎に、前記動きベクトルの分散が大きいほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する、請求項3に記載の縮小装置。
【請求項5】
前記縮退処理部は、
前記周波数帯域成分のうち、周波数帯域閾値を超える成分に対して第1の縮退を行い、
前記周波数帯域成分のうち、最低周波数帯域を超え前記周波数帯域閾値以下の成分であり、且つ前記量子化パラメータ推定値が閾値以上の要素に対して、前記第1の縮退よりも縮退率が低い第2の縮退を行う、請求項1から4のいずれか一項に記載の縮小装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1に記載の縮小装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮小装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、復号画像の超解像処理を行う際に復号画像自体が劣化している場合は、超解像パラメータによっては劣化成分自体が大きく強調されてしまう可能性があるため、所定の終了条件を満たすまで超解像処理と縮小復元処理を繰り返し行うことで、最適な超解像パラメータを得る技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、入力画像を一旦縮小して中間解像度に変換し、これに既存の符号化・復号を行った後で元の解像度に戻す方式において、符号化器に応じた符号量とその符号量に対する最適な解像度縮小率を予め蓄積しておき、最適な中間解像度を選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5262879号公報
【特許文献2】特開2000-134618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の画像縮小技術では、符号化難度を推定しながらブロック歪などのアーティファクトを抑制するような画像縮小処理を行わなかったため、画質破綻抑制の観点から最適な画像縮小処理を行っているとはいえなかった。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、繰り返し処理などを用いることなく、ブロック歪などのアーティファクトを抑制するような画像縮小処理を行うことが可能な縮小装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、一実施形態に係る縮小装置は、原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、前記原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数帯域分解部と、画素位置毎に、前記周波数帯域成分の総計パワーに対する、所定の周波数帯域以上の高周波数帯域のパワーの割合である高周波数帯域パワー割合を算出する高周波数帯域割合算出部と、前記高周波数帯域パワー割合が高いほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する量子化パラメータ推定部と、前記量子化パラメータ推定値に応じて、前記周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する縮退処理部と、前記縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、前記縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成する解像度縮小部と、を備える。
【0008】
また、一実施形態に係る縮小装置は、原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、前記原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数帯域分解部と、前記周波数帯域成分に基づいて、ピクチャ毎に、前記原画像の雑音レベルを算出する雑音レベル算出部と、前記雑音レベルが大きいほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する量子化パラメータ推定部と、前記量子化パラメータ推定値に応じて、前記周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する縮退処理部と、前記縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、前記縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成する解像度縮小部と、を備える。
【0009】
また、一実施形態に係る縮小装置は、原画像の縮小画像を生成する縮小装置であって、前記原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成する周波数帯域分解部と、動きベクトルの推定対象となる対象ピクチャを第1ブロックに分割し、該対象ピクチャの前後ピクチャとの間で、第1ブロック毎に動きベクトルの推定を行う動きベクトル推定部と、前記第1ブロック毎に、前記動きベクトルの大きさが大きいほど量子化パラメータ推定値を大きく設定する量子化パラメータ推定部と、前記量子化パラメータ推定値に応じて、前記周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する縮退処理部と、前記縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する周波数再構成部と、前記縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成する解像度縮小部と、を備える。
【0010】
さらに、一実施形態に係る縮小装置において、前記動きベクトル推定部は、複数の前記第1ブロックからなる第2ブロックごとに、前記動きベクトルの分散を求め、前記量子化パラメータ推定部は、前記第2ブロック毎に、前記動きベクトルの分散が大きいほど量子化パラメータ推定値を大きく設定してもよい。
【0011】
さらに、一実施形態に係る縮小装置において、前記縮退処理部は、前記周波数帯域成分のうち、周波数帯域閾値を超える成分に対して第1の縮退を行い、前記周波数帯域成分のうち、最低周波数帯域を超え前記周波数帯域閾値以下の成分であり、且つ前記量子化パラメータ推定値が閾値以上の要素に対して、前記第1の縮退よりも縮退率が低い第2の縮退を行ってもよい。
【0012】
また、一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、上記縮小装置として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、繰り返し処理などを用いることなく、ブロック歪などのアーティファクトを抑制するような画像縮小処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】8K解像度の原画像を空間方向に4階ウェーブレットパケット分解した様子を示す図である。
【
図4】第2の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】第3の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】第4の実施形態に係る縮小装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る縮小装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示す縮小装置1は、周波数帯域分解部11と、高周波帯域割合算出部12と、量子化パラメータ推定部13と、縮退処理部14と、周波数再構成部15と、解像度縮小部16と、を備える。
【0017】
縮小装置1は、原画像を入力し、原画像(入力画像)の解像度を縮小した縮小画像を生成して出力する。縮小装置1は、例えば8K解像度で撮影された原画像を4K解像度に縮小して放送する場合などに、画像符号化のプリ処理として用いることができる。
【0018】
周波数帯域分解部11は、原画像に対して、空間方向の周波数分解を行い、周波数帯域毎のパワー成分(以下、「周波数帯域成分」という。)を生成する。各成分はパワースペクトルを示す。そして、周波数帯域分解部11は、生成した周波数帯域成分を高周波帯域割合算出部12及び縮退処理部14に出力する。
【0019】
本実施形態では、周波数帯域分解部11は、周波数帯域分解としてウェーブレットパケット分解を行う。ウェーブレットパケット分解では、空間方向に均等に周波数分解を行う。すなわち、低周波帯域のみならず高周波帯域についても周波数分解を行う。なお、ウェーブレットフィルタ及び分解階層数は、ユーザが任意に設定可能である。
【0020】
図2は、8K解像度の原画像を空間方向に4階ウェーブレットパケット分解して、1K×0.5K毎の周波数帯域に分解した様子を示す図である。原画像の多重解像度分解を高精度に行うためには、線形位相性を有し、比較的タップ長が長く遮断特性が急峻なウェーブレットフィルタ(例えば、CDF(Cohen-Daubechies-Feauveau)9/7、Biorthogonal(6,8)など)を用いることが望ましい。また、各帯域間のパワーは、パーセバルの等式を満たすものとする。
【0021】
また、周波数帯域分解部11は、本実施形態では位相情報を保持しながら(すなわち、画像サイズの縮小を伴うデシメーション処理を伴わないで)、ウェーブレットパケット分解を用いて周波数帯域分解を行う。そのため、原画像のサイズが8K×4Kであった場合、各周波数帯域内の要素数は8K×4K個である。なお、
図2において、XXで示す周波数帯域は、それぞれLL,LH,HL,HHの4つの周波数帯域により構成される。
【0022】
高周波帯域割合算出部12は、縮小処理によって帯域が制限される周波数帯域の上限(以下、「周波数帯域閾値」と称する。)を{HL,VL}とし、画素位置(x,y)毎に、周波数帯域分解部11により生成された周波数帯域成分の総計パワーに対する、{HL,VL}以上の高周波数帯域のパワーの割合である高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)を算出する。そして、高周波帯域割合算出部12は、算出した高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)を量子化パラメータ推定部13に出力する。
【0023】
量子化パラメータ推定部13は、縮小画像を符号化するときの量子化パラメータ(QP;Quantization parameter)を推定する。量子化パラメータとは、H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)、H.266/VVC(Versatile Video Coding)などの符号化方式において、直交変換された信号を量子化する際の量子化ステップを制御するパラメータである。例えば、量子化パラメータの値は0~51であり、量子化パラメータが6増加する毎に、量子化ステップが2倍となる。量子化パラメータの詳細については、例えば下記の参考文献を参照されたい。
[参考文献]大久保榮監修、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」、株式会社インプレスジャパン、2013年10月21日
【0024】
量子化パラメータ推定部13は、画素位置毎に、高周波帯域割合算出部12により算出された高周波数帯域パワー割合Ph(x,y)が高いほど符号化難度が高いとして、量子化パラメータ推定値(以下、「QP推定値」と称する。)を大きく設定する。表1に、高周波数帯域割合Ph(x,y)に対するQP推定値の設定例を示す。
【0025】
【0026】
縮退処理部14は、量子化パラメータ推定部13から入力したQP推定値に応じて、周波数帯域分解部11から入力した周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成する。この縮退処理により周波数帯域が制限される。そして、縮退処理部14は、縮退周波数帯域成分を周波数再構成部15に出力する。
【0027】
図3は、縮退関数の基本形を示す図である。
図3を参照して、縮退処理部14による縮退処理の具体例について説明する。この例では、縮退処理部14は、縮退関数として小縮退関数及び大縮退関数の2種類の関数を用意する。小縮退関数を適用する要素位置においては、その要素の入力値xに対して出力値yをy=m
1xとして算出する。大縮退関数を適用する要素位置においては、その要素の入力値xに対して出力値yをy=m
2xとして算出する。縮退係数m
1,m
2は、0以上1以下の実数であり、m
1>m
2である。小縮退関数の縮退係数m
1は、例えば0.5(3dB減衰)とする。大縮退関数の縮退係数m
2は、例えば0.01(20dB減衰)とする。縮退係数m
1,m
2は、あらかじめ決められていてもよいし、ユーザにより設定可能であってもよい。
【0028】
例えば、縮退処理部14は、周波数帯域閾値{HL,VL}を超える周波数帯域では、大縮退関数を適用する。また、周波数帯域閾値{HL,VL}以下の周波数帯域では、QP推定値に応じて画素位置毎に小縮退関数と縮退関数適用無しの処理を切り替えて適用する。また、最低周波数帯域(LL1)内の要素には、縮退処理を行わない。すなわち、この例では、以下の(1)~(3)の基準で縮退を行う。第1の縮退よりも第2の縮退のほうが、縮退率が低い(縮退係数が大きい)。
(1)大縮退関数を適用した第1の縮退
周波数帯域閾値{HL,VL}を超える周波数帯域
(2)小縮退関数を適用した第2の縮退
最低周波数帯域(LL1)を超え周波数帯域閾値{HL,VL}以下の周波数帯域であり、且つQP推定値が閾値以上の要素
(3)縮退無し
上記(1),(2)以外の場合
【0029】
周波数再構成部15は、縮退処理部14により生成された縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成する。例えば、周波数帯域分解部11が4階ウェーブレットパケット分解を行っている場合は、その逆変換として4階ウェーブレットパケット再構成を行う。そして、周波数再構成部15は、生成した縮退画像を解像度縮小部16に出力する。
【0030】
解像度縮小部16は、周波数再構成部15により生成された縮退画像の解像度を縮小し、解像度{HS,VS}の縮小画像を生成する。解像度縮小部16は、例えば縮退画像を水平及び垂直方向に2:1の画素間引きを行うことで、8Kピクチャを4Kピクチャへ縮小する。なお、縮小率は、ユーザが任意に設定可能である。縮小率が整数分の1倍ではない場合には、Lanczos-4フィルタなどを用いた画素内挿を行い、それから画素間引きを行う。補間内挿フィルタの種類は、あらかじめ決められていてもよいし、ユーザにより設定可能であってもよい。そして、解像度縮小部16は、生成した縮小画像を縮小装置1の外部に出力する。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る縮小装置について説明する。
【0032】
図4は、第2の実施形態に係る縮小装置2の構成例を示すブロック図である。
図4に示す縮小装置2は、周波数帯域分解部11と、雑音レベル算出部17と、量子化パラメータ推定部13aと、縮退処理部14と、周波数再構成部15と、解像度縮小部16と、を備える。第2の実施形態に係る縮小装置2は、第1の実施形態に係る縮小装置1と比較して、高周波帯域割合算出部12に代えて雑音レベル算出部17を備え、量子化パラメータ推定部13に代えて量子化パラメータ推定部13aを備える点が相違する。その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0033】
周波数帯域分解部11は、生成した周波数帯域成分を雑音レベル算出部17及び縮退処理部14に出力する。
【0034】
雑音レベル算出部17は、周波数帯域分解部11から入力した周波数帯域成分に基づいて、ピクチャ毎に、原画像の雑音レベルを算出する。自然画像は空間低周波帯域にパワーが集中しており、高周波帯域成分はほぼ雑音成分のみとなることから、雑音レベル算出部17は、例えば斜め方向の最高周波数帯域HH
64(
図2参照)の成分は雑音成分とみなして、最高周波数帯域HH
64の非ゼロ成分の最大値、平均値、又は中央値を雑音レベルとして算出する。そして、雑音レベル算出部17は、算出した雑音レベルを量子化パラメータ推定部13aに出力する。
【0035】
量子化パラメータ推定部13aは、ピクチャ毎に、雑音レベル算出部17により算出された雑音レベルが大きいほど、符号化時に信号成分に割り当てられるビット数が少なくなり画質が低下するとして、QP推定値を大きく設定する。表2に、画素値が8ビットの場合の、雑音レベルに対するQP推定値の設定例を示す。
【0036】
【0037】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る縮小装置について説明する。
【0038】
図5は、第3の実施形態に係る縮小装置3の構成例を示すブロック図である。
図5に示す縮小装置3は、周波数帯域分解部11と、動きベクトル推定部18と、量子化パラメータ推定部13bと、縮退処理部14と、周波数再構成部15と、解像度縮小部16と、を備える。第3の実施形態に係る縮小装置3は、第2の実施形態に係る縮小装置2と比較して、雑音レベル算出部17に代えて動きベクトル推定部18を備え、量子化パラメータ推定部13aに代えて量子化パラメータ推定部13bを備える点が相違する。その他の構成については第2の実施形態と同一であるため、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0039】
動きベクトル推定部18は、動きベクトルの推定対象となる対象ピクチャを第1ブロックに分割し、該対象ピクチャの前後ピクチャとの間でブロックマッチング法などを用いて、第1ブロック毎に動きベクトルの推定を行う。前後ピクチャは、あらかじめ指定される。また、動きベクトル推定部18は、複数の第1ブロックからなる第2ブロックごとに、動きベクトルの分散を求める。そして、動きベクトル推定部18は、求めた動きベクトルの大きさ及び分散を量子化パラメータ推定部13bに出力する。
【0040】
なお、縮小装置3の後処理として、符号化装置にて符号化処理を行う場合には、符号化処理におけるRandom Access情報を取得し、該情報を基に、動きベクトル推定先の前後ピクチャを指定してもよい。さらに、符号化装置から、CU(Coding Unit)毎の予測結果の情報を取得し、該情報を基に、第1ブロックのサイズや、第1ブロックの動きベクトル推定情報を設定してもよい。
【0041】
量子化パラメータ推定部13bは、第1ブロック毎に、動きベクトル推定部18により導出された動きベクトルの大きさが大きいほど、符号化難度が高いとして、QP推定値を大きく設定する。また、量子化パラメータ推定部13bは、第2ブロック毎に、動きベクトル推定部18により導出された分散が大きいほど、符号化難度が高いとして、QP推定値を大きく設定する。
【0042】
量子化パラメータ推定部13bは、動きベクトルの大きさのみを用いて、動きベクトルの大きさが大きいほどQP推定値を大きく設定してもよい。量子化パラメータ推定部13bは、動きベクトルの大きさ及び分散を用いる場合には、動きベクトルの大きさに基づくQP推定値に対して、動きベクトルの分散に基づくQPオフセット値を加算してもよい。表3に、動きベクトルの大きさ及び分散に対するQP推定値の設定例を示す。
【0043】
【0044】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る縮小装置について説明する。
【0045】
図6は、第4の実施形態に係る縮小装置4の構成例を示すブロック図である。
図6に示す縮小装置4は、周波数帯域分解部11と、高周波帯域割合算出部12と、雑音レベル算出部17と、動きベクトル推定部18と、量子化パラメータ推定部13cと、縮退処理部14と、周波数再構成部15と、解像度縮小部16と、を備える。第4の実施形態に係る縮小装置4は、第1の実施形態に係る縮小装置1と比較して、雑音レベル算出部17及び動きベクトル推定部18を更に備え、量子化パラメータ推定部13aに代えて量子化パラメータ推定部13cを備える点が相違する。その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0046】
雑音レベル算出部17は、第2の実施形態で説明したように雑音レベルを算出し、量子化パラメータ推定部13cに出力する。動きベクトル推定部18は、第3の実施形態で説明したように動きベクトルの大きさ及び分散を求め、量子化パラメータ推定部13cに出力する。
【0047】
量子化パラメータ推定部13cは、上述した表1~3を組み合わせてQP推定値を設定する。例えば、ある画素位置において複数のQP推定値が得られた場合は、それらのうちの最大値又は中央値を採用するなどして処理を行う。
【0048】
以上説明したように、縮小装置1~4は、原画像を周波数帯域成分に分解し、符号化難度に対応するQP推定値に応じて縮退処理を行う。そのため、例えば8K解像度で撮影された原画像を4K解像度に縮小して放送する場合などに、縮小装置1~4により画像を縮小することで、符号化が困難な画像で発生しやすい符号化アーティファクトによる画質破綻を抑制すること可能となる。
【0049】
(変形例)
次に、変形例に係る縮小装置について説明する。
【0050】
第4の実施形態に係る縮小装置4は、高周波帯域割合算出部12、雑音レベル算出部17、及び動きベクトル推定部18のうち、いずれか2つのみを備えていてもよい。その場合には、量子化パラメータ推定部13cは、上述した表1~3のいずれか2つを組み合わせてQP推定値を設定する。
【0051】
縮小装置1~4の後処理として、符号化装置にて符号化処理を行う場合には、符号化装置から、CU毎のQP情報を取得し、その値をQP推定値としてもよい。さらにこのCU毎のQP情報から原画像情報を解析して表1~3を設定すれば、当該コーデックにおける準最適なQP推定値を得ることができる。
【0052】
(プログラム)
上述した縮小装置1~4として機能させるために、それぞれプログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0053】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースであり、例えばLAN(Local Area Network)インターフェースである。
【0054】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0055】
例えば、縮小装置1として機能させるためのプログラムは、原画像に対して周波数帯域分解を行い、周波数帯域成分を生成するステップと、画素位置毎に、周波数帯域成分の総計パワーに対する、所定の周波数帯域以上の高周波数帯域のパワーの割合である高周波数帯域パワー割合を算出するステップと、高周波数帯域パワー割合が高いほど量子化パラメータ推定値を大きく設定するステップと、量子化パラメータ推定値に応じて、周波数帯域成分を縮退した縮退周波数帯域成分を生成するステップと、縮退周波数帯域成分に対して、周波数再構成を行い、原画像と同じサイズの縮退画像を生成するステップと、縮退画像の解像度を縮小した縮小画像を生成するステップと、をコンピュータに実行させる。縮小装置2~4として機能させるためのプログラムも同様に、上述した縮小装置2~4で行う処理をコンピュータに実行させる。
【0056】
また、縮小装置1~4は、1つ又は複数の半導体チップにより構成されてもよく、該半導体チップは、縮小装置1~4の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを実行するCPUを搭載してもよい。
【0057】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,2,3,4 縮小装置
11 周波数帯域分解部
12 高周波帯域割合算出部
13,13a,13b,13c 量子化パラメータ推定部
14 縮退処理部
15 周波数再構成部
16 解像度縮小部
17 雑音レベル算出部
18 動きベクトル推定部