(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101463
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】極端紫外光生成用チャンバ装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240722BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005466
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】植田 篤
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197CA16
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AB10
4C092AB19
4C092AC09
4C092BD18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】隔壁の内周面は、隔壁内のガスの流れ方向におけるプラズマ生成領域より下流側の所定の位置より下流側において、所定の位置より上流側よりもスズが堆積し易いEUV光生成用チャンバ装置を提供する。
【解決手段】EUV光生成用チャンバ装置は、レーザ光が照射されるスズのドロップレットターゲットからプラズマが生成されるプラズマ生成領域を内部空間に含むチャンバと、チャンバに設けられ、水素を含むエッチングガスを内部空間に供給するガス供給口と、内部空間からチャンバの外部に延在し、プラズマ生成領域を囲い、内部空間側の開口がガスの流入口であり、チャンバの外部側の開口がガスの排気口である筒状の隔壁と、排気口からガスをチャンバの外部に排気する排気装置と、内部空間における隔壁の外側に配置され、プラズマ生成領域で生成される極端紫外光を集光する集光ミラーと、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が照射されるスズのドロップレットターゲットからプラズマが生成されるプラズマ生成領域を内部空間に含むチャンバと、
前記チャンバに設けられ、水素を含むエッチングガスを前記内部空間に供給するガス供給口と、
前記内部空間から前記チャンバの外部に延在し、前記プラズマ生成領域を囲い、前記内部空間側の開口がガスの流入口であり、前記チャンバの外部側の開口が前記ガスの排気口である筒状の隔壁と、
前記排気口から前記ガスを前記チャンバの外部に排気する排気装置と、
前記内部空間における前記隔壁の外側に配置され、前記プラズマ生成領域で生成される極端紫外光を集光する集光ミラーと、
を備え、
前記隔壁の内周面は、前記隔壁内の前記ガスの流れ方向における前記プラズマ生成領域より下流側の所定の位置より下流側において、前記所定の位置より上流側よりもスズが堆積し易い
極端紫外光生成用チャンバ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記隔壁は、前記プラズマ生成領域又はその周囲の様子を監視するための監視用開口を少なくとも1つ備える。
【請求項3】
請求項2に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置は、1つの前記監視用開口の前記流入口側の開口端と前記隔壁の長手方向で同じ位置である。
【請求項4】
請求項3に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より上流側の前記内周面のスズの平均堆積レートは3mm/年以下、前記所定の位置より下流側の前記内周面のスズの平均堆積レートは10mm/年以上である。
【請求項5】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より上流側の前記内周面を冷却する冷却機構を備える。
【請求項6】
請求項5に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記隔壁は、前記プラズマ生成領域又はその周囲の様子を監視するための監視用開口を少なくとも1つ備え、
前記所定の位置は、1つの前記監視用開口の前記流入口側の開口端と前記隔壁の長手方向で同じ位置である。
【請求項7】
請求項5に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記冷却機構は、前記所定の位置より上流側の前記内周面を28℃以下となるよう冷却する。
【請求項8】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より下流側の前記内周面を加熱する加熱機構を備える。
【請求項9】
請求項8に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記隔壁は、前記プラズマ生成領域又はその周囲の様子を監視するための監視用開口を少なくとも1つ備え、
前記所定の位置は、1つの前記監視用開口の前記流入口側の開口端と前記隔壁の長手方向で同じ位置である。
【請求項10】
請求項8に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記加熱機構は、前記所定の位置より下流側の前記内周面を40℃以上となるよう加熱する。
【請求項11】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より上流側の前記内周面を冷却する冷却機構と、前記所定の位置より下流側の前記内周面を加熱する加熱機構を備える。
【請求項12】
請求項11に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記隔壁は、前記プラズマ生成領域又はその周囲の様子を監視するための監視用開口を少なくとも1つ備え、
前記所定の位置は、1つの前記監視用開口の前記流入口側の開口端と前記隔壁の長手方向で同じ位置である。
【請求項13】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より下流側の前記内周面の材質は、前記所定の位置より上流側の前記内周面の材質よりも前記スズが堆積し易い材質である。
【請求項14】
請求項13に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より上流側の前記内周面の材質はTiO2、SiO2、ZrO2のうち少なくとも1つであり、前記所定の位置より下流側の前記内周面の材質はステンレス、アルミニウムのうち少なくとも1つである。
【請求項15】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より下流側の前記内周面の表面粗さが前記所定の位置より上流側の前記内周面の表面粗さよりも大きい。
【請求項16】
請求項15に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記所定の位置より上流側の前記内周面の表面粗さはRa1.6以下、前記所定の位置より下流側の前記内周面の表面粗さはRa25以上である。
【請求項17】
レーザ光が照射されるスズのドロップレットターゲットからプラズマが生成されるプラズマ生成領域を内部空間に含むチャンバと、
前記チャンバに設けられ、水素を含むエッチングガスを前記内部空間に供給するガス供給口と、
前記内部空間から前記チャンバの外部に延在し、前記プラズマ生成領域を囲い、前記内部空間側の開口がガスの流入口であり、前記チャンバの外部側の開口が前記ガスの排気口である筒状の隔壁と、
前記排気口から前記ガスを前記チャンバの外部に排気する排気装置と、
前記内部空間における前記隔壁の外側に配置され、前記プラズマ生成領域で生成される極端紫外光を集光する集光ミラーと、
を備え、
前記隔壁の内周面は、前記隔壁内の前記ガスの流れ方向における前記プラズマ生成領域より下流側の所定の位置より下流側において、前記所定の位置より上流側よりもスズが堆積し易い極端紫外光生成用チャンバ装置によって生成される前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
レーザ光が照射されるスズのドロップレットターゲットからプラズマが生成されるプラズマ生成領域を内部空間に含むチャンバと、
前記チャンバに設けられ、水素を含むエッチングガスを前記内部空間に供給するガス供給口と、
前記内部空間から前記チャンバの外部に延在し、前記プラズマ生成領域を囲い、前記内部空間側の開口がガスの流入口であり、前記チャンバの外部側の開口が前記ガスの排気口である筒状の隔壁と、
前記排気口から前記ガスを前記チャンバの外部に排気する排気装置と、
前記内部空間における前記隔壁の外側に配置され、前記プラズマ生成領域で生成される極端紫外光を集光する集光ミラーと、
を備え、
前記隔壁の内周面は、前記隔壁内の前記ガスの流れ方向における前記プラズマ生成領域より下流側の所定の位置より下流側において、前記所定の位置より上流側よりもスズが堆積し易い極端紫外光生成用チャンバ装置によって生成される前記極端紫外光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いて前記マスクを選定し、
前記選定した前記マスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成用チャンバ装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme UltraViolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2022/0146943号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2020/0241425号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様による極端紫外光生成用チャンバ装置は、レーザ光が照射されるスズのドロップレットターゲットからプラズマが生成されるプラズマ生成領域を内部空間に含むチャンバと、チャンバに設けられ、水素を含むエッチングガスを内部空間に供給するガス供給口と、内部空間からチャンバの外部に延在し、プラズマ生成領域を囲い、内部空間側の開口がガスの流入口であり、チャンバの外部側の開口がガスの排気口である筒状の隔壁と、排気口からガスをチャンバの外部に排気する排気装置と、内部空間における隔壁の外側に配置され、プラズマ生成領域で生成される極端紫外光を集光する集光ミラーと、を備え、隔壁の内周面は、隔壁内のガスの流れ方向におけるプラズマ生成領域より下流側の所定の位置より下流側において、所定の位置より上流側よりもスズが堆積し易くてもよい。
【0006】
また、本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、レーザ光が照射されるスズのドロップレットターゲットからプラズマが生成されるプラズマ生成領域を内部空間に含むチャンバと、チャンバに設けられ、水素を含むエッチングガスを内部空間に供給するガス供給口と、内部空間からチャンバの外部に延在し、プラズマ生成領域を囲い、内部空間側の開口がガスの流入口であり、チャンバの外部側の開口がガスの排気口である筒状の隔壁と、排気口からガスをチャンバの外部に排気する排気装置と、内部空間における隔壁の外側に配置され、プラズマ生成領域で生成される極端紫外光を集光する集光ミラーと、を備え、隔壁の内周面は、隔壁内のガスの流れ方向におけるプラズマ生成領域より下流側の所定の位置より下流側において、所定の位置より上流側よりもスズが堆積し易い極端紫外光生成用チャンバ装置によって生成される極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含んでもよい。
【0007】
また、本開示の他の一態様による電子デバイスの製造方法は、レーザ光が照射されるスズのドロップレットターゲットからプラズマが生成されるプラズマ生成領域を内部空間に含むチャンバと、チャンバに設けられ、水素を含むエッチングガスを内部空間に供給するガス供給口と、内部空間からチャンバの外部に延在し、プラズマ生成領域を囲い、内部空間側の開口がガスの流入口であり、チャンバの外部側の開口がガスの排気口である筒状の隔壁と、排気口からガスをチャンバの外部に排気する排気装置と、内部空間における隔壁の外側に配置され、プラズマ生成領域で生成される極端紫外光を集光する集光ミラーと、を備え、隔壁の内周面は、隔壁内のガスの流れ方向におけるプラズマ生成領域より下流側の所定の位置より下流側において、所定の位置より上流側よりもスズが堆積し易い極端紫外光生成用チャンバ装置によって生成される極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子デバイスの製造装置とは別の電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、比較例の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、比較例におけるドロップレットターゲットの軌道に垂直な断面における極端紫外光生成用チャンバ装置を示す模式図である。
【
図5】
図5は、比較例におけるドロップレットターゲットの軌道に沿った断面における極端紫外光生成用チャンバ装置を示す模式図である。
【
図6】
図6は、比較例における隔壁のプラズマ生成領域近傍の様子を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1における隔壁のプラズマ生成領域近傍の様子を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態2における隔壁のプラズマ生成領域近傍の様子を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態3における隔壁のプラズマ生成領域近傍の様子を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態4における隔壁のプラズマ生成領域近傍の様子を示す図である。
【
図11】
図11は、隔壁のプラズマ生成領域近傍にスズが堆積した結果形成される堆積パターンを概略的に示す図である。
【実施形態】
【0009】
1.概要
2.電子デバイスの製造装置の説明
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.実施形態1の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態2の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
7.実施形態4の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
8.実施形態5の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
8.1 構成
8.2 動作
8.3 作用・効果
9.まとめ
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.概要
本開示の実施形態は、極端紫外(EUV)と呼ばれる波長の光を生成する極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造装置に関するものである。なお、以下では、極端紫外光をEUV光という場合がある。
【0012】
2.電子デバイスの製造装置の説明
図1は、電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び露光装置200を含む。露光装置200は、反射光学系である複数のミラー211,212を含むマスク照射部210と、マスク照射部210の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー221,222を含むワークピース照射部220とを含む。マスク照射部210は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101によって、ミラー211,212を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部220は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光101を、ミラー221,222を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光101をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。
【0013】
図2は、
図1に示す電子デバイス製造装置とは別の電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図2に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び検査装置300を含む。検査装置300は、反射光学系である複数のミラー311,313,315を含む照明光学系310と、照明光学系310の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー321,323、及び検出器325を含む検出光学系320とを含む。照明光学系310は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101をミラー311,313,315で反射して、マスクステージ331に配置されているマスク333を照射する。マスク333は、パターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系320は、マスク333からのパターンを反映したEUV光101をミラー321,323で反射して検出器325の受光面に結像させる。EUV光101を受光した検出器325は、マスク333の画像を取得する。検出器325は、例えばTDI(Time Delay Integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク333の画像により、マスク333の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置200を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造することができる。
【0014】
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
比較例のEUV光生成装置100について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。また、以下では、
図1に示すように次工程装置としての露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100を用いて説明する。なお、
図2に示すように次工程装置としての検査装置300にEUV光101を出射するEUV光生成装置100についても、同様の作用・効果を得ることができる。
【0015】
図3は、本例のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3に示すように、EUV光生成装置100は、EUV光生成用チャンバ装置150、レーザ装置LD、及びレーザ光デリバリ光学系30を主な構成として含む。また、EUV光生成用チャンバ装置150は、チャンバ10及びプロセッサ120を主な構成として含む。
【0016】
チャンバ10は、密閉可能な容器である。チャンバ10はサブチャンバ11を含み、サブチャンバ11には、サブチャンバ11の壁を貫通するようにターゲット供給部40が取り付けられている。ターゲット供給部40は、タンク41、ノズル42、及び圧力調節器43を含み、ドロップレットターゲットDLをチャンバ10の内部空間に供給する。ドロップレットターゲットDLは、ドロップレットやターゲットと省略して呼ばれる場合がある。
【0017】
タンク41は、その内部にドロップレットターゲットDLとなるターゲット物質を貯蔵する。ターゲット物質は、スズを含む。タンク41の内部は、タンク41内の圧力を調節する圧力調節器43と連通している。タンク41には、ヒータ44及び温度センサ45が取り付けられている。ヒータ44は、ヒータ電源46から供給される電流により、タンク41を加熱する。この加熱により、タンク41内のターゲット物質は溶融する。温度センサ45は、タンク41を介してタンク41内のターゲット物質の温度を測定する。圧力調節器43、温度センサ45、及びヒータ電源46は、プロセッサ120に電気的に接続されている。
【0018】
ノズル42は、タンク41に取り付けられ、ターゲット物質を吐出する。ノズル42には、ピエゾ素子47が取り付けられている。ピエゾ素子47は、ピエゾ電源48に電気的に接続されており、ピエゾ電源48から印加される電圧で駆動される。ピエゾ電源48は、プロセッサ120に電気的に接続されている。ピエゾ素子47の動作により、ノズル42から吐出するターゲット物質はドロップレットターゲットDLにされる。
【0019】
チャンバ10は、ターゲット回収部14を含む。ターゲット回収部14は、チャンバ10に取り付けられる箱体であり、チャンバ10に設けられる開口14aを介してチャンバ10の内部空間に連通している。開口14aはノズル42の直下に設けられ、ターゲット回収部14は、開口14aを通過してターゲット回収部14に到達する不要なドロップレットターゲットDLを回収するドレインタンクである。
【0020】
チャンバ10には、外部から光を透過させるためのウィンドウ12が設けられ、ウィンドウ12をレーザ装置LDから出射されるパルス状のレーザ光90が透過する。
【0021】
また、チャンバ10の内部空間には、レーザ集光光学系13が配置されている。レーザ集光光学系13は、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを含む。レーザ光集光ミラー13Aは、ウィンドウ12を透過するレーザ光90を反射して集光する。高反射ミラー13Bは、レーザ光集光ミラー13Aが集光するレーザ光90を反射する。レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bの位置は、レーザ光マニュピレータ13Cにより、チャンバ10の内部空間でのレーザ光90の集光位置がプロセッサ120から指定された位置になるように調節される。当該集光位置はノズル42の直下に位置するように調節されており、レーザ光90が当該集光位置においてターゲット物質を照射すると、ターゲット物質からプラズマが生成されると共に、プラズマからEUV光101が放射される。プラズマが生成される領域をプラズマ生成領域ARと呼ぶことがある。プラズマ生成領域ARは、プラズマ点を中心に半径が例えば40mmの領域であり、チャンバ10の内部空間に位置する。
【0022】
チャンバ10の内部空間には、例えば、回転楕円面形状の反射面15aを含むEUV光集光ミラー15が配置される。EUV光集光ミラー15は、例えばシリコン層とモリブデン層とが交互に積層された多層膜を備え、当該多層膜によりEUV光101を反射する。EUV光集光ミラー15は、チャンバ10の内部空間におけるレーザ光90と重ならない位置に設けられている。反射面15aは、プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから放射されるEUV光101を反射する。反射面15aは、第1焦点及び第2焦点を含む。反射面15aは、例えば、第1焦点がプラズマ生成領域ARに位置し、第2焦点が中間集光点IFに位置するように配置されてもよい。
【0023】
EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間及び露光装置200の内部空間を連通させる接続部19を含む。接続部19には、アパーチャが形成された壁が配置されている。この壁は、アパーチャが第2焦点に位置するように配置されることが好ましい。接続部19はチャンバ10におけるEUV光101の出射口でもあり、EUV光101は接続部19から出射されて露光装置200に入射する。
【0024】
また、EUV光生成装置100は、圧力センサ26及びターゲットセンサとしての検出部27を含む。圧力センサ26及び検出部27は、チャンバ10に取り付けられ、プロセッサ120に電気的に接続されている。圧力センサ26は、チャンバ10の内部空間の圧力を計測し、この圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。
【0025】
検出部27は、例えば撮像機能を含み、プロセッサ120からの指示によってノズル42のノズル孔から吐出するドロップレットターゲットDLの存在、軌跡、位置、流速等を検出する。検出部27は、チャンバ10の内部に配置されてもよいし、チャンバ10の外部に配置されてチャンバ10の壁に設けられる不図示のウィンドウを介してドロップレットターゲットDLを検出してもよい。検出部27は、不図示の受光光学系と、例えばCCD(Charge-Coupled Device)又はフォトダイオード等の不図示の撮像部とを含む。受光光学系は、ドロップレットターゲットDLの検出精度を向上させるために、ドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲における像を撮像部の受光面に結像する。検出部27の視野内のコントラストを向上させるために配置される不図示の光源による光の集光領域をドロップレットターゲットDLが通過するときに、撮像部はドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲を通る光の変化を検出する。撮像部は、検出した光の変化を、ドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号に変換する。撮像部は、この電気信号をプロセッサ120に出力する。
【0026】
レーザ装置LDは、バースト動作する光源であるマスターオシレータを含む。マスターオシレータは、バーストオンでパルス状のレーザ光90を出射する。マスターオシレータは、例えば、ニオブ(Nb)やイッテルビウム(Yb)を添加したYAG結晶を励起する固体レーザ装置や、ヘリウムや窒素等が炭酸ガス中に混合される気体を放電によって励起することで、レーザ光90を出射するレーザ装置である。或いは、マスターオシレータは、量子カスケードレーザ装置でもよい。また、マスターオシレータは、Qスイッチ方式により、パルス状のレーザ光90を出射してもよい。また、マスターオシレータは、光スイッチや偏光子等を含んでもよい。レーザ装置LDは、マスターオシレータが出射したレーザ光90を増幅する増幅器を含んでもよい。なお、バースト動作とは、バーストオン時に連続するパルス状のレーザ光90を所定の繰り返し周波数で出射し、バーストオフ時にレーザ光90の出射を抑制する動作である。
【0027】
レーザ装置LDから出射するレーザ光90の進行方向は、レーザ光デリバリ光学系30によって調節される。レーザ光デリバリ光学系30は、レーザ光90の進行方向を調節する複数のミラー31,32を含む。ミラー31,32の少なくとも1つの位置は、不図示のアクチュエータで調節される。ミラー31,32の少なくとも1つの位置が調節されることで、レーザ光90がウィンドウ12から適切にチャンバ10の内部空間に伝搬し得る。
【0028】
本開示のプロセッサ120は、制御プログラムが記憶された記憶装置と、当該制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。プロセッサ120は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされ、EUV光生成装置100全体を制御する。プロセッサ120には、圧力センサ26で計測されたチャンバ10の内部空間の圧力に係る信号や、検出部27によって撮像されたドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号や、露光装置200からバースト動作を指示するバースト信号等が入力される。プロセッサ120は、上記各種信号を処理し、例えば、ドロップレットターゲットDLが吐出されるタイミング、ドロップレットターゲットDLの吐出方向等を制御してもよい。また、プロセッサ120は、レーザ装置LDの出射タイミング、レーザ光90の進行方向や集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて後述のように他の制御が追加されてもよい。
【0029】
図4は、比較例におけるドロップレットターゲットDLの軌道に垂直なチャンバ10の断面を含む模式図であり、
図5は、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿ったチャンバ10の断面を含む模式図である。
図4では、図示の簡略化のために、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを省略し、ウィンドウ12からプラズマ生成領域ARへのレーザ光90の進行経路を簡単に図示している。
【0030】
EUV光生成装置100は、プラズマ生成領域AR又はその近傍の様子を監視する複数のセンサ28a,28b,28cを備える。センサ28a,28b,28cは、例えば、ドロップレットターゲットDLの存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出するターゲットセンサを含んでもよく、EUV光101の発光点を検出するセンサを含んでもよい。センサ28a,28b,28cは、例えば、イメージセンサ又は光センサと、プラズマ生成領域AR又はその近傍の像をイメージセンサ又は光センサに結像する光学系と、を含む。また、特に図示しないが、プラズマ生成領域ARを可視光で照明する光源が配置されてもよい。なお、
図3では、センサ28a,28b,28cの図示を省略している。
【0031】
EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間からチャンバ10の外部空間に延在する筒状の隔壁18を含む。
図4及び
図5では、チャンバ10の内部空間のうちの隔壁18の外部の空間を第1空間10aとし、隔壁18の内部の空間を第2空間10bとして示している。なお、
図3では、隔壁18の図示を省略している。
【0032】
隔壁18は、例えば、ステンレス、金属モリブデン等で構成される。隔壁18の互いに向かい合う開口のうち、チャンバ10の内部空間に位置する開口はガス流入口181aであり、チャンバ10の外部に位置する開口はガス排気口181bである。ガス排気口181bは、排気ポンプを含む排気装置180に接続されている。
【0033】
隔壁18は、プラズマ生成領域ARを囲っている。つまり、プラズマ生成領域ARは、第2空間10bに位置する。プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから生成されるEUV光101は、第2空間10bからガス流入口181aを介して第1空間10aに配置されるEUV光集光ミラー15に入射する。EUV光集光ミラー15は、EUV光101をEUV光101の入射方向と異なる方向に位置する中間集光点IFに向かって反射する。
【0034】
また、隔壁18は、隔壁18の側面に形成されるレーザ光透過開口183、ドロップレット供給開口182a、ドロップレット排出開口182b、第1監視用開口188a、第2監視用開口188b、及び第3監視用開口188cを含む。レーザ光透過開口183は、チャンバ10の内部空間におけるプラズマ生成領域ARへのレーザ光90の光路上に設けられ、レーザ光90は、第1空間10aからレーザ光透過開口183を介してプラズマ生成領域ARに入射する。ドロップレット供給開口182a及びドロップレット排出開口182bは、ドロップレットターゲットDLの軌道上に設けられ、互いに向かい合う。ドロップレットターゲットDLは、ターゲット供給部40からドロップレット供給開口182aを介してプラズマ生成領域ARに供給される。ドロップレット排出開口182bは、ターゲット回収部14に繋がる開口14aに向かい合い、プラズマ生成領域ARを通過したドロップレットターゲットDLは、ドロップレット排出開口182bを介してターゲット回収部14内に侵入する。なお、本例では、ドロップレット供給開口182a及びドロップレット排出開口182bのそれぞれの面積は、互いに概ね同じであり、レーザ光透過開口183の面積よりも大きい。第1~第3監視用開口188a,188b,188cはプラズマ生成領域AR又はその近傍とセンサ28a,28b,28cとの間に設けられており、プラズマ生成領域AR又はその近傍からの光は、第1~第3監視用開口188a,188b,188cを介して、センサ28a,28b,28cに入射する。隔壁18は、チャンバ10の内部空間において、上記開口以外においてプラズマ生成領域ARを囲う。
【0035】
チャンバ10には、エッチングガス供給部16が接続されている。エッチングガス供給部16は、ガス供給口160を含む。エッチングガスには水素ガスが含まれ、本例のエッチングガスは、水素濃度が100%と見做せる水素ガスである。このため、エッチングガス供給部16は、水素タンク161とガス配管162とを更に含む。なお、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が3%程度のバランスガスでもよく、この場合、バランスガスには、例えば窒素(N2)ガスやアルゴン(Ar)ガスが含まれる。ガス配管162には、バルブである不図示の供給ガス流量調節部が設けられてもよい。エッチングガス供給部16は、プロセッサ120によって制御される。例えば、供給ガス流量調節部が設けられる場合には、プロセッサ120が供給ガス流量調節部を制御して、供給されるエッチングガスの流量が調整される。
【0036】
エッチングガス供給部16は、ガス配管162を介して水素タンク161内の水素ガスをガス供給口160からチャンバ10の内部空間における第1空間10aに供給する。エッチングガス供給部16から第1空間10aに供給されるエッチングガスの流量は、例えば、10l/min以上100l/min以下である。なお、エッチングガスの流量は、1分あたりに流れるエッチングガスの0℃、1気圧に換算した体積であるnlmで示される場合がある。ガス流入口181aの面積はレーザ光透過開口183、ドロップレット供給開口182a、ドロップレット排出開口182b、及び第1~第3監視用開口188a,188b,188cのそれぞれの面積よりも大きい。このため、第1空間10aに供給されたエッチングガスは、
図4及び
図5において矢印で示すように、主にガス流入口181aを通じて第2空間10bに流入する。ただし、エッチングガスは、レーザ光透過開口183、ドロップレット供給開口182a、ドロップレット排出開口182b、及び第1~第3監視用開口188a,188b,188cからも第2空間10bに流入してもよい。
【0037】
上記のようにターゲット物質はスズであるため、ターゲット物質がプラズマ生成領域ARにおいてレーザ光90を照射されてプラズマ化すると、スズの微粒子及びスズの荷電粒子が生じる。また、エッチングガス供給部16からチャンバ10の内部空間に供給されるエッチングガスに含まれる水素は、EUV光101のエネルギーにより水素ラジカルとなる。微粒子及び荷電粒子を構成するスズは、水素ラジカルと反応する。スズが水素ラジカルと反応すると、常温で気体のスタンナン(SnH4)が生成される。
【0038】
ターゲット物質がプラズマ生成領域ARでプラズマ化する際、排ガスとしての残留ガスが第2空間10bに生成される。残留ガスは、ターゲット物質のプラズマ化により生じたスズの微粒子及び荷電粒子と、それらがエッチングガスと反応したスタンナンと、未反応のエッチングガスとを含む。なお、荷電粒子の一部は第2空間10bで中性化するが、この中性化した荷電粒子も残留ガスに含まれる。ガス排気口181bは、第1空間10aから第2空間10bに流れたエッチングガスを残留ガスと共に、チャンバ10の外部に排気する。具体的には、ガス排気口181bは、排気装置180の吸引によってエッチングガス及び残留ガスを排気装置180に排気する。
【0039】
以下では、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿う方向をY方向、プラズマ生成領域ARから排気装置180に向かう方向でありY方向に直交する方向をX方向、Y方向及びX方向に直交する方向をZ方向として説明することがある。
【0040】
3.2 動作
次に、比較例のEUV光生成装置100の動作について説明する。
【0041】
EUV光生成装置100では、例えば、新規導入時やメンテナンス時等において、チャンバ10の内部空間の大気が排気される。その際、大気成分の排気のために、チャンバ10の内部空間のパージと排気とを繰り返してもよい。パージガスには、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが用いられることが好ましい。その後、チャンバ10の内部空間の圧力が所定の圧力以下になると、プロセッサ120は、エッチングガス供給部16のガス供給口160を通じて、チャンバ10の第1空間10aへのエッチングガスの導入を開始させる。このときプロセッサ120は、チャンバ10の内部空間の圧力が所定の圧力に維持されるように、供給ガス流量調節部や排気装置180を制御してもよい。その後、プロセッサ120は、エッチングガスの導入開始から所定時間が経過するまで待機する。
【0042】
また、プロセッサ120は、排気装置180によりチャンバ10の内部空間の気体をガス排気口181bから排気させ、圧力センサ26で計測されたチャンバ10の内部空間の圧力を示す信号に基づいてチャンバ10の内部空間の圧力を略一定に保つ。
【0043】
また、プロセッサ120は、タンク41内のターゲット物質を融点以上の所定温度に加熱及び維持するために、ヒータ電源46からヒータ44に電流を供給させ、ヒータ44を昇温させる。このとき、プロセッサ120は、温度センサ45からの出力に基づいて、ヒータ電源46からヒータ44へ供給される電流の値を調節し、ターゲット物質の温度を所定温度に制御する。なお、所定温度は、ターゲット物質がスズである場合、スズの融点231.93℃以上の温度であり、例えば240℃以上290℃以下である。こうしてドロップレットターゲットDLを吐出する準備が完了する。
【0044】
準備が完了すると、プロセッサ120は、ノズル42のノズル孔から溶融したターゲット物質が所定の流速で吐出するように、圧力調節器43によって、不図示のガス供給源から不活性ガスをタンク41内に供給し、タンク41内の圧力を調節する。この圧力下で、ターゲット物質は、ノズル42のノズル孔からチャンバ10の第1空間10aに吐出する。ノズル孔から吐出するターゲット物質は、ジェットの形態をとってもよい。このとき、プロセッサ120は、ドロップレットターゲットDLを生成するために、ピエゾ電源48からピエゾ素子47に所定波形の電圧を印加する。ピエゾ電源48は、電圧値の波形が例えば正弦波状、矩形波状、或いはのこぎり波状となるように、電圧を印加する。ピエゾ素子47の振動は、ノズル42を経由してノズル42のノズル孔から吐出するターゲット物質へと伝搬し得る。ターゲット物質は、この振動により所定周期で分断され、液滴のドロップレットターゲットDLとなる。ドロップレットターゲットDLの直径は、概ね10μm以上30μm以下である。
【0045】
ドロップレットターゲットDLは、吐出されると、ドロップレット供給開口182aを通過してプラズマ生成領域ARに進行する。検出部27は、チャンバ10の第2空間10bの所定位置を通過するドロップレットターゲットDLの通過タイミングを検出する。プロセッサ120は、ドロップレットターゲットDLにレーザ光90が照射されるように、検出部27からの信号に基づいて、レーザ装置LDからレーザ光90が出射するタイミングを制御するトリガ信号を出力する。プロセッサ120から出力されたトリガ信号は、レーザ装置LDに入力する。レーザ装置LDは、トリガ信号が入力されると、パルス状のレーザ光90を出射する。
【0046】
出射されたレーザ光90は、レーザ光デリバリ光学系30とウィンドウ12とを経由して、レーザ集光光学系13に入射する。レーザ光90は、レーザ集光光学系13からレーザ光透過開口183を通過してプラズマ生成領域ARに向かって進行する。そして、レーザ光90は、プラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射される。このとき、プロセッサ120は、レーザ光90がプラズマ生成領域ARに集光するように、レーザ集光光学系13のレーザ光マニュピレータ13Cを制御する。また、プロセッサ120は、レーザ光90がドロップレットターゲットDLに照射されるように、検出部27からの信号に基づいて、レーザ装置LDからレーザ光90を出射するタイミングを制御する。これにより、レーザ光集光ミラー13Aによって集光するレーザ光90は、プラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射される。当該照射によりプラズマが生成され、当該プラズマからEUV光101を含む光が放射される。
【0047】
プラズマ生成領域ARで発生したEUV光101を含む光のうち、EUV光101は、ガス流入口181aを通過してEUV光集光ミラー15に進行し、EUV光集光ミラー15によって中間集光点IFで集光された後、接続部19から露光装置200に入射する。
【0048】
上記のように、エッチングガス供給部16は、ガス供給口160を通じてチャンバ10の第1空間10aにエッチングガスを供給する。エッチングガスに含まれる水素は、EUV光101のエネルギーにより、水素ラジカルとなる。従って、スズが、EUV光集光ミラー15の反射面15a上や、隔壁18の内周面184上に堆積している場合、スズは水素ラジカルと反応してスタンナンとなり、反射面15a上や内周面184上から除去される。第1空間10aにおけるエッチングガスやスタンナンは、主にガス流入口181aから第2空間10bに流入する。排気装置180は、エッチングガスを第2空間10bにおける残留ガスと共に、ガス排気口181bを通じて吸引する。これにより、第2空間10bにおけるガスは、チャンバ10の外部に排気される。排気装置180に吸引されたガスは、無害化等の所定の排気処理が施される。
【0049】
3.3 課題
図6は、隔壁18のプラズマ生成領域AR近傍の様子を示す図である。
図6に示すように、隔壁18の内周面184にはスズSが堆積する場合がある。堆積するスズSは、主に残留ガス中のスタンナンが分解されて生成されるものであり、プラズマ生成領域ARの近傍で最も残留ガス中のスズの密度が高く、プラズマ生成領域ARから遠ざかるほど密度が低くなる。そのため、比較例のEUV光生成用チャンバ装置150では、隔壁18の内周面184へのスズSの堆積量は、プラズマ生成領域ARから残留ガスの流れ方向の下流側に行くに従って減少する。しかし、隔壁18の内周面184にスズSが付着する場合、上記の下流側に行くに従って減少せずに、下流側において上流側よりも多くのスズSが付着して欲しいとの要請がある。なお、このように隔壁18の内周面184に対するスズSの堆積のし易さを表す目安の一つとして堆積レートがある。スズSが堆積し易い内周面184では、それだけ内周面184に堆積する速度が速く、堆積レートが大きい。またスズSが堆積しづらい内周面184では、堆積レートが小さい。また、所定の領域における単位面積当たりの平均的な堆積レートを平均堆積レートという。
【0050】
そこで、以下の実施形態では、隔壁18の下流側において上流側よりも多くのスズSを付着し得るEUV光生成用チャンバ装置150が例示される。
【0051】
4.実施形態1の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0052】
4.1 構成
図7は、本実施形態における隔壁18のプラズマ生成領域AR近傍の様子を示す図である。
図7に示すように、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、加熱機構400を備える点において、比較例のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。加熱機構400は、第2空間10bでのガスの流れ方向における所定の位置Pより下流側において、隔壁18の内周面184を加熱する。なお、以下において下流側及び上流側とは、第2空間10bにおける隔壁18の長手方向に沿ったガスの流れの方向に基づく。所定の位置Pは、プラズマ生成領域ARよりも下流側であり、本実施形態では、所定の位置Pは、第1~第3監視用開口188a~188cにおける1つの第2監視用開口188bのうちガス流入口181a側の開口端と隔壁18の長手方向で同じ位置である。なお、所定の位置Pは、プラズマ生成領域ARよりも下流側であれば、第1監視用開口188a或いは第3監視用開口188cのうちガス流入口181a側の開口端と隔壁18の長手方向で同じ位置であってもよく、他の位置であってもよい。以下において、隔壁18の内周面184のうち、所定の位置Pより上流側を上流側内周面184aとし、所定の位置Pより下流側を下流側内周面184bとする。
【0053】
本実施形態の加熱機構400は、ヒータ401と、ヒータ電源402と、温度センサ403とを含む。ヒータ401は、電力が給電されることで加熱可能なヒータである。ヒータ401は、所定の位置Pより下流側において筒状の隔壁18の外周面の全周に接触して設けられている。ヒータ401は、隔壁18の壁内部に設けられてもよい。ヒータ401は、チャンバ10の外に設けられるヒータ電源402に電気的に接続され、ヒータ電源402から電力が給電される。温度センサ403は、プロセッサ120に電気的に接続され、ヒータ401の温度を検出し、その検出温度に係る信号をプロセッサ120に出力する。ヒータ電源402からヒータ401へ電力を給電する配線、及び温度センサ403からプロセッサ120へ信号を出力する配線は、それぞれ気密性の高い貫通シール404を介してチャンバ10を貫通している。ヒータ電源402は、プロセッサ120に電気的に接続され、プロセッサ120によりヒータ401へ給電する電力が制御される。プロセッサ120は、温度センサ403から入力された信号に基づいて、所定の位置Pより下流側の隔壁18が所定の温度を維持するようヒータ電源402からヒータ401への給電を制御する。加熱機構400が維持する隔壁18の温度は、EUV光生成用チャンバ装置150の稼働時において、例えば40℃以上60℃以下である。なお、
図7以降の一部の図において、プラズマ生成領域AR又はその近傍の様子を監視するためのセンサ28a,28b,28cの図示が省略されている。
【0054】
4.2 動作
比較例と同様にして、EUV光101の出射の際、生成されたスタンナンが分解されてスズSを生成する場合がある。本実施形態では、隔壁18における残留ガスの流路のうち所定の位置Pより下流側において、加熱機構400のヒータ401が隔壁18の温度を上げてスタンナンの分解を促進させ、下流側内周面184bにおけるスズSの堆積量を増加させ得る。
【0055】
4.3 作用・効果
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、下流側内周面184bを加熱する加熱機構400を備える。このため、加熱機構400が設けられない場合と比べて、上記のように下流側内周面184bにおけるスズSの堆積量を増加させ得る。従って、排気装置180へのスズSの流入量を抑制して排気装置180の寿命を延ばすことができ、排気装置180の交換といったメンテナンスのインターバルを延ばしてEUV光生成用チャンバ装置150の稼働効率を上げることができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、所定の位置Pは、第2監視用開口188bのうちガス流入口181a側の開口端と隔壁18の長手方向で同じ位置である。このため、当該位置よりも上流側に加熱機構400が設けられる場合と比べて、この開口端より上流側でスズSの堆積量が増加することを抑制でき、堆積したスズSにより、第2監視用開口188bを介してのプラズマ生成領域AR又はその近傍の様子の監視が阻害されることを抑制し得る。
【0057】
5.実施形態2の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態2のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0058】
5.1 構成
図8は、本実施形態における隔壁18のプラズマ生成領域AR近傍の様子を示す図である。
図8に示すように、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、所定の位置Pより上流側の内周面184を冷却する冷却機構500を備える点において、比較例のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。なお、本実施形態における所定の位置Pは、実施形態1と同様の位置である。
【0059】
本実施形態の冷却機構500は、冷却部501と、冷媒供給部502と、温度センサ503とを含む。冷却部501は、冷媒供給部502から供給される冷媒により冷却が可能な熱交換器である。冷却部501は、所定の位置Pより上流側において筒状の隔壁18の外周面の全周に接触して設けられている。冷却部501は、隔壁18の壁内部に設けられてもよい。冷却部501は、チャンバ10の外に設けられる冷媒供給部502との間で冷媒の供給と回収が可能に接続されている。温度センサ503は、プロセッサ120に電気的に接続されており、冷却部501の温度を検出し、その検出温度に係る信号をプロセッサ120に出力する。冷却部501と冷媒供給部502との間で冷媒を循環させる配管、及び温度センサ503からプロセッサ120へ信号を出力する配線は、それぞれ気密性の高い貫通シール404を介してチャンバ10を貫通している。冷媒供給部502は、冷却部501から回収した冷媒を冷却し、冷却した冷媒を冷却部501に供給する熱交換器である。冷媒供給部502は、プロセッサ120に電気的に接続される。プロセッサ120は、温度センサ503から入力される信号に基づいて、所定の位置Pより上流側の隔壁18が所定の温度を維持されるよう冷媒供給部502から冷却部501へ供給する冷媒の温度を制御する。冷却機構500が維持する隔壁18の温度は、EUV光生成用チャンバ装置150の稼働時において、例えば28℃以下である。
【0060】
5.2 動作
比較例と同様にして、EUV光101の出射の際、生成されたスタンナンが分解されてスズSを生成する場合がある。本実施形態では、隔壁18における所定の位置Pより上流側において、冷却機構500の冷却部501が隔壁18の温度を下げることで、スタンナンの分解が抑制され、上流側内周面184aにおけるスズSの堆積量を減少させ得る。
【0061】
5.3 作用・効果
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、上記のように、隔壁18のうち上流側内周面184aを冷却する冷却部501を含めた冷却機構500を備える。このため、冷却機構500が設けられない場合と比べて、上流側内周面184aにおいて、スズSの堆積量を減少させ得る。従って、堆積したスズSにより、プラズマ生成領域ARで生成されたEUV光101のEUV光集光ミラー15への入射が阻害されることを抑制し得る。このため、EUV光生成用チャンバ装置150からEUV光101を出射させる効率の低下を抑制し得る。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、所定の位置Pが第2監視用開口188bのうちガス流入口181a側の開口端に位置している。このため、所定の位置Pが第2監視用開口188bの当該開口端よりも上流側である場合と比べて、この開口端付近におけるスズSの堆積量を減少させ得、堆積したスズSにより、第2監視用開口188bを介してのプラズマ生成領域AR又はその近傍の様子の監視が阻害されることを抑制し得る。
【0063】
6.実施形態3の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態3のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0064】
6.1 構成
図9は、本実施形態における隔壁18のプラズマ生成領域AR近傍の様子を示す図である。
図9に示すように、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、実施形態2と同様にして所定の位置Pより上流側の隔壁18の内周面184を冷却する冷却機構500が設けられ、実施形態1と同様にして所定の位置Pより下流側の隔壁18の内周面184を加熱する加熱機構400が設けられる点において、比較例のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。なお、本実施形態における所定の位置Pは、実施形態1と同様の位置である。
【0065】
6.2 動作
比較例と同様にして、EUV光101の出射の際、生成されたスタンナンが分解されてスズSを生成する場合がある。本実施形態では、隔壁18における所定の位置Pより上流側においては、実施形態2と同様にして、冷却機構500の冷却部501が隔壁18の温度を下げることで、スタンナンの分解が抑制され、上流側内周面184aにおけるスズSの堆積量を減少させ得る。従って、比較例と比べて、所定の位置Pから下流側内周面184bに流れるガスにおけるスタンナンの密度が高くされ得る。所定の位置Pよりも下流側においては、実施形態1と同様にして、加熱機構400のヒータ401が隔壁18の温度を上げてスタンナンの分解を促進させ、下流側内周面184bにおけるスズSの堆積量を増加させ得る。このとき、所定の位置Pから下流側内周面184bに流れるガスにおけるスタンナンの密度が高い場合には、実施形態1よりも多くのスタンナンが分解され得、実施形態1よりも多くのスズSが堆積され得る。
【0066】
6.3 作用・効果
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、上記の冷却機構500及び加熱機構400を備える。このため、実施形態2と同様にして、冷却機構500が設けられない場合と比べて、上流側内周面184aにおけるスズSの堆積量を減少させ得る。従って、第2実施形態と同様にして、堆積したスズSにより、プラズマ生成領域ARで生成されたEUV光集光ミラー15への入射が阻害されることを抑制し得、EUV光生成用チャンバ装置150からEUV光101を出射させる効率の低下を抑制し得る。また、実施形態1と同様にして、加熱機構400が設けられない場合と比べて、下流側内周面184bにおけるスズSの堆積量を増加させ得る。このため、第2実施形態と比べて、排気装置180へのスズSの流入量を抑制して排気装置180の寿命を延ばすことができ、排気装置180の交換といったメンテナンスのインターバルを延ばしてEUV光生成用チャンバ装置150の稼働効率を上げることができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、所定の位置Pを流れるガスのスタンナンの密度が高くされ得、実施形態1と比べて、所定の位置Pより下流側におけるスズSの堆積量を増加させ得る。
【0068】
また、実施形態2と同様にして、所定の位置Pが第2監視用開口188bのうちガス流入口181a側の開口端に位置している。このため、所定の位置Pが第2監視用開口188bの当該開口端よりも上流側である場合と比べて、堆積したスズSにより、第2監視用開口188bを介してのプラズマ生成領域AR又はその近傍の様子の監視が阻害されることを抑制し得る。
【0069】
7.実施形態4の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態4のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0070】
7.1 構成
図10は、本実施形態における隔壁18のプラズマ生成領域AR近傍の様子を示す図である。
図10に示すように、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、下流側内周面184bの表面粗さが、上流側内周面184aの表面粗さよりも大きい点において、比較例のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。本実施形態では、上流側内周面184aの表面粗さは、例えばRa1.6以下であり、下流側内周面184bの表面粗さは、例えばRa25以上である。なお、本実施形態における所定の位置Pは、実施形態1と同様の位置である。
【0071】
7.2 動作
比較例と同様にして、EUV光101の出射の際、生成されたスタンナンが分解されてスズSを生成する場合がある。スタンナンから生成されたスズSが衝突した際の付着確率や、付着後のエッチングガスにより除去される確率は、隔壁18の内周面184の表面粗さにより異なり、この結果、堆積のし易さが異なる。表面粗さの大きい面においてスズSは堆積し易い傾向にある。従って、上流側内周面184aよりも下流側内周面184bにおいて、多くのスズSが堆積し得る。
【0072】
7.3 作用・効果
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、上流側内周面184aよりも下流側内周面184bにおいて、表面粗さが大きい。従って、上記のように上流側内周面184aよりも下流側内周面184bにおいて、多くのスズSを堆積させ得る。
【0073】
8.実施形態5の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態5のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0074】
8.1 構成
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150の見た目の構成は、比較例のEUV光生成用チャンバ装置150の見た目の構成と同様である。しかし、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、下流側内周面184bの材質が、上流側内周面184aの材質よりもスズSが堆積し易い材質である点において、比較例のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。上流側内周面184aの材質としては、例えばTiO2、SiO2、ZrO2の少なくとも1つを挙げることができ、下流側内周面184bの材質としては、例えばステンレス、アルミニウムの少なくとも1つを挙げることができる。なお、本実施形態における所定の位置Pは、実施形態1と同様の位置である。
【0075】
8.2 動作
比較例と同様にして、EUV光101の出射の際、生成されたスタンナンが分解されてスズSを生成する場合がある。スタンナンから生成されたスズSが衝突した際の付着確率や、付着後のエッチングガスにより除去される確率は、隔壁18の内周面184の材質により異なり、この結果、堆積のし易さが異なる。本実施形態では、この堆積のし易さの違いを利用して、下流側内周面184bの材質が、上流側内周面184aの材質よりもスズSが堆積し易い材質である。従って、上流側内周面184aよりも下流側内周面184bにおいて、多くのスズSが堆積し得る。
【0076】
8.3 作用・効果
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、隔壁18において下流側内周面184bの材質が、上流側内周面184aの材質よりもスズSが堆積し易い材質である。従って、上記のように上流側内周面184aよりも下流側内周面184bにおいて、多くのスズSを堆積させ得る。
【0077】
9.まとめ
図11は、隔壁18のプラズマ生成領域AR近傍にスズSが堆積した結果、各実施形態において共通して形成される堆積パターンを概略的に示す図である。
【0078】
図11に示すように、比較例と異なり各実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150では、隔壁18の下流側内周面184bにおいて上流側内周面184aよりもスズSが堆積し易い。従って、隔壁18の下流側において上流側よりも多くのスズSを堆積させ得る。つまり、スズSの平均堆積レートが所定の位置Pより上流側よりも下流側の方が高い。上流側内周面184aのスズSの平均堆積レートが例えば3mm/年以下、下流側内周面184bのスズSの平均堆積レートが例えば10mm/年以上であることが好ましい。これは上記実施形態でも同様である。
【0079】
以上本発明について、実施形態を例に説明したが、上記実施形態を適宜変更することができる。例えば、上流側内周面184aと下流側内周面184bとで表面粗さが異なる実施形態4の隔壁18に対し、実施形態2と同様の冷却機構500及び実施形態1と同様の加熱機構400の少なくとも一方を設けてもよい。また、上流側内周面184aと下流側内周面184bで材質が異なる実施形態5の隔壁18に対し、実施形態2と同様の冷却機構500及び実施形態1と同様の加熱機構400の少なくとも一方を設けてもよい。また、隔壁18には第1~第3監視用開口188a~188cが設けられなくてもよい。
【0080】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。