(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101550
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】前駆体圧力を制御するための弁パルシング
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000180
(22)【出願日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】63/480,204
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ジョセフ・ポール
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・オライリー
(72)【発明者】
【氏名】アシュウィン・アガサ・ブーチャクラヴァルティ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレルド・リー・ウィンクラー
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ニ
(72)【発明者】
【氏名】グンヤネシュ・トリヴェディ
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030KA41
(57)【要約】
【課題】前駆体圧力を制御するための弁パルシングを提供する。
【解決手段】弁パルシングを使用して、基材または他の処理の一部として前駆体圧力を制御するように構成された反応器システム。反応器システム内のコントローラは、圧力制御モジュールを実行して、反応チャンバと前駆体供給源容器の間に配置されたアキュムレータ内の圧力を感知する圧力センサからの圧力信号を処理する。アキュムレータの圧力設定値および感知された圧力フィードバックに基づいて、コントローラは、前駆体供給源容器からのガス(例えば、前駆体)でアキュムレータを充填することを制御するために使用される一つ以上の充填弁を動作させるための弁制御信号または弁パルス信号を生成する。充填弁は、高温用途での動作が完全に開いた状態または完全に閉じた状態になるように構成された高速ダイアフラム弁であってもよく、制御信号は、弁を急速にパルシングして開閉させ、アキュムレータ内の圧力を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器システム内の前駆体圧力を制御する方法であって、
前駆体を貯蔵するために、かつ基材処理中に前記前駆体を反応チャンバに放出するために適合されたアキュムレータのための圧力設定値をデータストレージ内に格納することと、
圧力センサを用いて、前記アキュムレータ内の圧力を感知し、それに応じて、前記圧力を示す信号を生成することと、
コントローラを用いて、前記圧力センサおよび前記圧力設定値からの前記信号を処理することと、
前記処理に基づいて、前駆体供給源容器に貯蔵された前記前駆体の容積からの前記前駆体で前記アキュムレータを充満させるように動作可能な充填弁のための制御信号を生成することと、を含み、
前記制御信号が、前記基材処理中に前記充填弁を閉位置と開位置の間で繰り返しパルシングさせる、方法。
【請求項2】
前記処理が、前記圧力設定値、ユーザー定義PIDパラメータ、および前記圧力センサからの前記信号を入力として受け止める、かつ出力を生成する、比例積分微分(PID)制御ループを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御信号の前記生成が、前記PID制御ループの前記出力に対してパルス密度変調(PDM)を行うことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アキュムレータが前記前駆体を前記反応チャンバに放出していて、それに応じて前記充填弁のための前記制御信号の前記生成を一時停止していることを判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記充填弁を通過する前記前駆体が100℃を超える温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記充填弁が、完全に開いた位置または完全に閉じた位置でのみ動作可能な高速弁である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高速弁がダイアフラム弁である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記制御信号が、前記充填弁に1~1000ミリ秒(ms)の範囲のパルス時間間隔を持たせる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記充填弁の前記制御信号を前記生成することと同時に、キャリアガス源から前記前駆体供給源容器までのキャリアガスの流れを制御するように動作可能な弁のための第二の制御信号を生成することをさらに含み、前記制御信号が、前記制御信号に応答して動作する前記充填弁のパターンと合致するパターンで、前記充填弁を閉位置と開位置の間で繰り返しパルスさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応器システム内の前駆体圧力を制御する方法であって、
前駆体を貯蔵するために、かつ前記前駆体を反応チャンバに放出するために適合されたアキュムレータのための圧力設定値をデータストレージ内に格納することと、
前記アキュムレータ内の圧力を感知することと、
PID制御ループを用いて、前記圧力設定値とともに前記アキュムレータ内の前記感知された圧力を処理することと、
前記処理に基づいて、前記アキュムレータを充満させるために充満期間にわたって充填弁をパルスすることであって、前記充填弁が前記前駆体の供給源容器と前記アキュムレータとの間に配置されている、パルスすることと、を含み、
前記充填弁が前記パルシング中に、完全に開いた位置と完全に閉じた位置の間で切り替えるように動作可能である、方法。
【請求項11】
前記充満期間が、前記前駆体を前記アキュムレータから反応チャンバに投与する間の期間と一致し、前記充填弁が前記投与中に閉じている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記パルシングが、前記PID制御ループの出力上でパルス密度変調(PDM)を行うことによって、前記充填弁のための制御信号を生成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記制御信号が、前記充填弁に1~1000ミリ秒(ms)の範囲のパルス時間間隔を持たせる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記充填弁が、100℃を超える流体温度に対して定格であり、前記充填弁が、完全に開いた位置または完全に閉じた位置でのみ動作可能な高速ダイアフラム弁である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
強化されたアキュムレータ圧力制御のために適合された反応器システムであって、
反応チャンバと、
前記反応チャンバに流体連結されたアキュムレータと、
前駆体を貯蔵する前駆体供給源容器であって、充填ラインを介して前記アキュムレータに流体連結されている、前駆体供給源容器と、
前記アキュムレータ内の圧力を感知するように、かつ前記圧力を示す信号を生成するように動作可能な圧力センサと、
コントローラであって、
前記圧力センサからの前記信号を、前記アキュムレータの圧力設定値とともに処理するように、
前記感知された圧力に従って制御信号を生成するように、
前記制御信号を送信するように、構成されたコントローラと、
前記充填ライン内に配置された充填弁であって、前記制御信号を前記コントローラから受信し、閉位置と開位置の間でパルスして、前記制御信号に基づいて前記アキュムレータを前記前駆体で充満させる、充填弁と、を備える反応器システム。
【請求項16】
前記圧力設定値と、PIDパラメータと、前記圧力センサによって感知された前記アキュムレータの前記圧力を示す信号とを受信するように、かつ前記圧力設定値と、PIDパラメータと、前記圧力センサによって感知された前記アキュムレータの前記圧力を示す前記信号とに基づいてPID制御ループを実行するように、かつ前記実行されたPID制御ループに従ってPID出力信号を生成するように、かつ前記PID出力信号に基づいて前記制御信号を生成するように構成されたプロセッサを前記コントローラが備える、請求項15に記載の反応器システム。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記PID出力信号を変調するように、かつ前記変調されたPID出力信号に従って前記制御信号を生成するようにさらに構成されている、請求項16に記載の反応器システム。
【請求項18】
前記充填弁が、100℃を超える温度で動作するために定格な高速ダイアフラムである、請求項15に記載の反応器システム。
【請求項19】
前記制御信号が、前記充填弁に1~1000ミリ秒(ms)の範囲のパルス時間間隔を持たせる、請求項15に記載の反応器システム。
【請求項20】
前記コントローラが、前記アキュムレータから前記反応チャンバへの前記前駆体の投与の間の期間中に前記制御信号を生成するように、かつ前記投与中に前記充填弁を閉じるように構成されている、請求項15に記載の反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、例えば気相反応器およびシステムを含む半導体ウエハの製造で使用される反応器システムに関する。より具体的に、本開示は、高温用途に特に適する基材またはウエハ処理中に一つ以上の反応チャンバまたは処理チャンバに前駆体を供給するために使用されるアキュムレータ内に改善された圧力制御を提供するための方法および方法を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着(CVD)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、原子層堆積(ALD)反応器などの気相反応器を、基材表面(例えば、半導体ウエハ)上の材料の堆積およびエッチングを含む様々な用途のために使用することができる。例えば、基材上に層を堆積および/またはエッチングして、半導体デバイス、フラットパネルディスプレイデバイス、光起電力デバイス、微小電気機械システム(MEMS)およびこれに類するものを形成するために、気相反応器を使用することができる。
【0003】
典型的な気相反応器システムは、反応チャンバを含む反応器と、反応チャンバに流体連結された一つ以上の前駆体ガス源および/または反応ガス源と、反応チャンバに流体連結された一つ以上のキャリアガス源および/またはパージガス源と、ガス(例えば、前駆体ガス/反応ガスおよび/またはキャリアガス/パージガス)を反応チャンバに送達するためのガス注入システムと、反応チャンバに流体連結された排気源とを含む。処理中、一つ以上の基材は、基材搬送装置(例えば、リンケージまたはロボットアーム)を使用して反応チャンバ内に配置される。反応チャンバ内に配置されると、基材は様々な前駆体および/または反応物ガスに曝露されうる。処理後、基材は、搬送装置を使用して反応チャンバから除去される。
【0004】
反応器システムの処理または動作中、反応チャンバ内の圧力を正確に制御することが重要である場合が多い。この目的のために、多くの反応器システムはアキュムレータを含み、これは、ガス供給源容器(例えば、前駆体容器)の下流に提供され、また反応チャンバにガスの用量を提供するために使用される。アキュムレータ内の圧力を正確に制御することによって、例えば基材処理の各パルス用量中に、反応チャンバに提供される前駆体の量または用量はまた、反応チャンバとアキュムレータの間の圧力差がアキュムレータから反応チャンバへの流れを駆動または制御するため、正確に測定可能かつ制御可能である。
【0005】
反応器システム動作中の熱ALDおよび他の処理において、前駆体用量は、パルス時間、流れ、およびアキュムレータ圧力の関数である。一部の用途において、前駆体用量を増加させることが望ましい場合があり、これはパルス時間、流れ、アキュムレータ圧力、または前駆体濃度を増加させることによってのみ行われることができる。しかしながら、スループットを維持または増加させることもまた望ましい。よって、パルス時間を増加させることは、スループットを減少させるため、望ましくない場合がある。液体前駆体または固体前駆体を使用する場合、不活性流れが増加することによって流れが増加するが、これは前駆体濃度を希釈して、所望の効果とは反対の効果をもたらす。アキュムレータ圧力を増加させるために、小さいアキュムレータを使用することができるが、これは流れの減少をもたらす。よって、これらのアプローチのいずれも、半導体業界で広く採用されていない。
【0006】
用量消費量を測定し、アキュムレータ圧力を制御するために、圧力コントローラの使用は単刀直入なアプローチであろうと思われるかもしれない。パルス間の一貫性はウエハ間の一貫性につながるため、一貫したアキュムレータ圧力が重要である。しかしながら、高温要件に起因して、こうした用途のための加熱式圧力コントローラは、既存の圧力コントローラ、および定量充填に部分的に開放されることができる関連する弁が、多くの熱ALDとアキュムレータおよび前駆体供給源容器に近接する他の反応器システムとおいて存在する用途を含む高温用途での使用には適していないため、利用可能ではない。
【0007】
圧力コントローラは、一貫したアキュムレータ圧力を提供して、反応チャンバ内の正確な用量測定でウエハ間の一貫性につながるパルス間の一貫性をより良く確実にするために、一部の用途において有用である。しかしながら、高温要件に起因して、圧力コントローラは現在、多くの反応器システムでの使用に利用可能ではない。よって、高温用途においてアキュムレータ圧力を制御する方法に対する需要が依然として存在する。
【0008】
この節に記載のすべての説明(問題および解決策の説明を含む)は、本開示の背景を提供する目的でのみこの開示に含まれていて、本発明がなされた時点で説明のいずれかまたはすべてが公知であったこと、もしくはそれらが先行技術を構成していることを認めたものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0009】
この「発明の概要」は、選択された概念を、単純化した形態で紹介するために提供されている。これらの概念は、以下の本開示の例示的な実施形態の「発明を実施するための形態」において、さらに詳細に説明される。この「発明の概要」は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを必ずしも意図していなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用することも意図していない。
【0010】
本開示の様々な実施形態は、弁パルシングを使用して、基材または他の処理の一部として前駆体圧力を制御するように構成された反応器システムを対象とする。特に、反応器システム内のコントローラは、圧力制御モジュールを実行して、反応チャンバと前駆体供給源容器の間に配置されたアキュムレータ内の圧力を感知するように動作する圧力センサからの圧力信号を処理する。それに応じて、かつアキュムレータの圧力設定値に基づいて、コントローラは、一つ以上の弁を動作させるための弁制御信号または弁パルス信号を生成し、これらは前駆体供給源容器からのガス(例えば、前駆体)でアキュムレータを充填することを制御するために使用される。これらの充填弁は、全開放および全閉鎖動作のために、高温用途(例えば、100℃~250℃などでの前駆体ガスまたは他の流体)で動作するために構成されている高速弁の形態(例えば、ダイアフラム弁)の形態を取ることが好ましく、制御信号は、弁を急速にパルス開閉させて、アキュムレータ内の圧力を、アキュムレータの圧力設定値の上下の圧力範囲に調整する(例えば、前記圧力センサから受信した情報に基づいて、経時的に開放と開閉(その逆も可)を切り替える)。
【0011】
ある配置において、反応器システム内の前駆体圧力を制御するための方法(および対応するシステム)が記載されている。方法は、前駆体を貯蔵するために、かつ基材処理中に前駆体を反応チャンバに放出するために適合されているアキュムレータ用の圧力設定値をメモリまたはデータストレージ内に格納することを含む。方法はまた、圧力センサを用いて、アキュムレータ内の圧力を感知することと、それに応じて、圧力を示す信号を生成することとを含む。さらに、方法は、コントローラを用いて、圧力センサおよび圧力設定値からの信号を処理することを含む。次に、処理に基づいて、方法は、前駆体供給源容器に貯蔵された前駆体の容積からの前駆体でアキュムレータを充満させるように動作可能な充填弁のための制御信号を生成することを含む。制御信号は、基材処理中に充填弁を閉位置と開位置の間で繰り返しパルシングさせる。
【0012】
方法の一部の実装において、処理は、圧力設定値、ユーザー定義PIDパラメータ、および圧力センサからの信号を入力として受け止める、かつ出力を生成する、比例積分微分(PID)制御ループを含む。次に、制御信号の生成は、PID制御ループの出力に対してパルス密度変調(PDM)を行うことを含んでもよい。アキュムレータが前駆体を反応チャンバに放出していて、それに応じて充填弁のための制御信号の生成を一時停止していることを判定する工程を含むことが本方法において有用である場合がある。
【0013】
一部の場合において、方法は高温用途にとって有用であり、充填弁を通過する前駆体は100℃を超える温度とすることができる。こうした高温用途において、充填弁は、多くのダイアフラム弁での場合など、完全に開いた位置または完全に閉じた位置でのみ動作可能な高速弁とすることができる。パルス幅は、制御信号が充填弁に1~10ミリ秒(ms)の範囲のパルス時間間隔を持たせるように構成された一部の実装を用いて方法を実施するために変化しうる。
【0014】
一部の場合において、アキュムレータ圧力を制御するように制御されるたった一つの充填弁が存在するが、充填弁のための制御信号を生成することと同時に、キャリアガス源から前駆体供給源容器までのキャリアガスの流れを制御するように動作可能な弁のための第二の制御信号を生成することを方法がさらに含むために前駆体が低い揮発性を有する場合に有用である場合がある。制御信号は、制御信号に応答して動作する充填弁のパターンと合致するパターンで、充填弁を閉位置と開位置の間で繰り返しパルスさせる。
【0015】
これらの実施形態および他の実施形態は、添付の図面を参照する特定の実施形態の以下の「発明を実施するための形態」から当業者に容易に明らかになることになり、本開示は開示されたいかなる特定の実施形態にも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の例示的な実施形態のより完全な理解は、以下の例示的な図に関連して考慮される場合、「発明を実施するための形態」および「特許請求の範囲」を参照することによって得ることができる。
【0017】
【
図1】
図1は、アキュムレータ圧力制御のための弁パルシングのために構成された反応器システムを図示する。
【
図2】
図2は、アキュムレータ圧力制御のための弁パルシングのために構成された追加の例示的な反応器システムを図示する。
【
図3】
図3は、アキュムレータ圧力制御を提供するために弁パルシングを使用した結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、弁パルシング圧力制御方法を実施するための制御フローチャートを図示する。
【
図5】
図5は、本開示による弁パルシングアキュムレータ圧力制御方法を図示する。
【0018】
当然のことながら、図内の要素は単純化および明瞭化のために図示されていて、必ずしも原寸に比例して描かれていない。例えば、図内の要素のうちの一部の寸法は、本開示の図示された実施形態の理解の向上を助けるために他の要素と相対的に誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に提供される例示的な実施形態の説明は、単に例示的なものであり、また図示の目的のみで提供することを意図していて、下記の説明は本開示の範囲または特許請求の範囲を限定することを意図していない。さらに、記載された特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態、または記載の特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態を除外することを意図していない。
【0020】
本明細書で使用する「基材」は、材料を堆積することができる表面を有する任意の材料を指すことができる。基材は、シリコン(例えば、単結晶シリコン)などのバルク材料を含むことができる、またはバルク材料を覆う一つ以上の層を含みうる。さらに、基材は、基材の層の少なくとも一部内、または基材の層の少なくとも一部上に形成される様々な形態を含みうる。
【0021】
さらに本開示において、変数の任意の二つの数字は、その変数の実行可能な範囲を構成することができ、示される任意の範囲は、端点を含んでもよく、または除外してもよい。加えて、示された変数の任意の値は(それらが「約」とともに示されているか否かにかかわらず)、正確な値またはおおよその値を指し、等価物を含んでもよく、また平均値、中央値、代表値、または大多数またはこれに類するものを指してもよい。さらに、本開示において、「含む」、「によって構成される」、および「有する」という用語は、一部の実施形態において、「典型的にまたは広く含む」、「含む」、「から本質的に成る」、または「から成る」を別々に指す。本開示において、任意の定義された意味は、一部の実施形態において、通常の意味および慣習的な意味を必ずしも除外しない。
【0022】
スループットを高めるために、より短いパルス時間を利用することができ、またより短いパルス時間は、アキュムレータ圧力を増加させることによって補われることができる。アキュムレータ圧力は、パージ工程中、他の前駆体のパルス工程中、および場合によっては、アキュムレータから反応チャンバへの投与中に、アキュムレータからの流れを介してアキュムレータを充満させることによって増加されてもよい。要するに、アキュムレータの一つ以上の充填弁は、弁パルスを使用して、弁を開閉間で迅速に(例えば、1~7ミリ秒(ms)以上の範囲のパルス間隔で)切り替えて、高温用途(すなわち、100℃超、例えば100~250℃の範囲の前駆体ガスなどの流体が関与する用途など)に適合し、高温用途で使用される高速弁での部分的な開放をシミュレートするために、動作または制御される。
【0023】
アキュムレータ圧力の増加を提供するために、新しい制御方法が、こうした制御方法を実施するように構成された反応器システムとともに記載されている。制御方法は、基材処理レシピでの所望の圧力設定値までアキュムレータを充満させるために、アキュムレータ充填弁(または弁)をパルスすることを含む。コントローラは、アキュムレータ圧力センサからの圧力情報を入力またはフィードバックとして受け取る圧力制御モジュール(例えば、比例積分微分(PID)制御ループまたはアルゴリズム)を実行し、またアキュムレータの圧力設定値および一つ以上のユーザー定義PIDパラメータ(これはパルス時間間隔を含んでもよく、またはこれは追加の制御パラメータとして提供されてもよい)を用いてアキュムレータ圧力を処理する。次に、パルス密度変調(PDM)を適用して、圧力制御モジュールは、充填弁を動作させるための弁制御信号またはパルス信号を生成するように動作する。これは、アナログ出力を弁パルス信号(これは一部の場合において、1~2ミリ秒と同じ速さでありうる)に変換して、所望の圧力設定値に到達するために、PDMの使用を伴う場合がある。一つの配置において、コントローラは、PID制御ループおよびPDMを非常に高いサイクル時間で実行して、非常に正確な方法でアキュムレータ圧力制御を提供することができるプログラム可能な論理コントローラ(PLC)の形態を取ってもよい。
【0024】
ここで図を参照すると、
図1は例示的な反応器システム100を図示する。反応器システム100は、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、原子層堆積(ALD)、クリーンプロセス、エッチングプロセスなどの様々な用途に使用されることができる。この目的のために、反応器システム100は、ガス形態の前駆体をアキュムレータ120に提供するために使用される前駆体供給源容器140(またはより単純には「容器」)を含む。弁116は、アキュムレータ120からの前駆体の用量またはパルスを制御するために、アキュムレータ120と反応チャンバ110の間に配置されている。
【0025】
反応器システム100は、アキュムレータ120および容器120(および相互接続構成要素)が一部の場合において、100℃を超える温度で、または最大約250℃までの125℃を超える温度で、前駆体ガスなどの流体の流れを包含および制御しうる、高温用途で利用されてもよい。これに関して、反応器システム100の弁は、完全に開いたまたは閉じた状態または位置で動作するように構成されたデジタル弁(ダイアフラム弁など)であってもよく、これらのより高い温度に耐えるように適合されている。好ましくは、弁はまた、本明細書に記載のパルス制御に適した高速弁であってもよい。
【0026】
圧力変換器またはこれに類するものでありうる圧力センサ130は、アキュムレータ120内の圧力を感知するために、かつ感知された圧力に基づいて、131に示す通り(有線または無線通信を介して)圧力信号または読取値(または圧力情報)をコントローラ160に送信するために提供されている。圧力センサ130は、弁134とアキュムレータ120の間に位置付けられた流れオリフィス136とともに、充填ライン121に連結された弁132および134を介して、示されている通り、アキュムレータ120と流体連通している。弁132および/または弁134は、アキュムレータ120の充満中に開放されている。
【0027】
反応器システム100は、容器140内の低揮発性前駆体との使用によく適している。これらの場合、キャリアガスは、容器140からの前駆体でアキュムレータ120を充満させるのを支援するために使用される。示されている通り、キャリアガス源150は、ライン151、弁152、圧力流量コントローラ154、弁142、158、159を介して、容器140および充填ライン121に連結されている。圧力センサ156は、弁157を介してキャリア供給ライン151に連結されている。
【0028】
示されている通りの弁142および144は、前駆体充填弁として働く。アキュムレータ120の充満は、これら二つのバルブ142および144が開かれて、充填ライン121を介して容器140にキャリアガスを、かつアキュムレータ120に前駆体を提供し、アキュムレータ充填および反応チャンバのパルス動作中にバルブ128が開いたままである時に起こる。上述の通り、アキュムレータ充填弁142、144は好ましくは、完全に開いた状態と完全に閉じた状態の間の急速な切り替えのために、かつ高温用途での使用のために適合されたダイアフラム弁などの高速弁である。リストリクタまたはオリフィス146は、流れを低減または制御して前駆体供給の精度を改善するために、容器出口と充填弁144の間に随意に提供されてもよい。
【0029】
コントローラ160は、アキュムレータ120内の圧力を制御するために、システム100に含まれている。コントローラ160は、圧力制御モジュール180の機能を実行するための命令またはコード(例えば、ソフトウェア)を実行するプロセッサ162を有する、任意の適切な電子デバイスまたはコンピューティングデバイス(PLCなど)であってもよい。一部の配置において、圧力制御モジュール180は、充填弁142、144をパルス開閉して、容器140からの前駆体でアキュムレータを充満させることによってアキュムレータ120内の圧力を制御するために、弁制御信号またはパルス信号181および183を生成するように構成されているPID制御ループまたはアルゴリズムの形態を取る。一部の実施形態において、弁パルシングは、アキュムレータ放出弁116が閉じている時に、または前駆体の投与中に実施される。他の実施形態において、弁パルシングは、弁116が開かれた状態など、前駆体投与中にパルシングも実施されうるように、反応器システム100による処理レシピ中に連続的に実施される。
【0030】
コントローラ160は、圧力センサ130から圧力信号131を受信するために、かつ弁パルス信号181、183を(有線または無線で)充填弁142、144に送信するために、入力/出力(I/O)164を含む。コントローラ160はまた、メモリまたはデータストレージ170を含む(またはそれにアクセスする)。プロセッサ162は、メモリ170へのアクセスを管理し、圧力制御モジュール180のために、感知されたアキュムレータ圧力172および圧力制御パラメータ174を格納および取得し、これらは制御信号181、183を生成するために圧力制御モジュール180によって使用される任意の変数または設定を含む場合がある。
【0031】
実際に、圧力制御モジュール180は、特定の基材処理レシピのためのアキュムレータ120の所望の圧力を画定する圧力設定値175、ならびにパルス時間間隔または幅(例えば、約1~1000ミリ秒、または約1~10ミリ秒、または約1~20ミリ秒の範囲内、または約15ミリ秒など)176、および一つ以上のユーザー定義PID変数178(圧力制御モジュール180がPID制御ループの形態を取る場合)を入力として受け止める。圧力センサ130からの圧力信号またはフィードバック131の受信に応答して、圧力制御モジュール180は、弁パルス信号181、183を生成して、アキュムレータ120を圧力設定値175(または設定値の下で約0.1~0.2トル)に維持する。圧力制御モジュール180は一部の場合において、アキュムレータ120が反応チャンバ110に放出している(弁116が開いている)時に、弁パルシング動作を停止するように構成されてもよく、これは、各パルスで提供される前駆体の用量のより正確な計算を容易にするのに有用である場合がある。
【0032】
図2は、高揮発性前駆体(例えば、前駆体供給源容器内に高い蒸気圧が存在する前駆体)またはキャリアガスが利用されないシステムで有用な例示的な反応器システム200を図示する。反応器システム200は、前駆体供給源容器250の下流にアキュムレータ220を含み、これは、容器250内の高揮発性前駆体からの蒸気引き出しを表す矢印251で概略的に示されている通り、充填弁240を介してアキュムレータ220を選択的に充満させるために使用される。よって、システム200は、前駆体供給源容器250でアキュムレータ220を充満させるための蒸気引き出し方法を実装するものとして考えられてもよい。これは典型的に、パルスの間、またはアキュムレータ220から、アキュムレータ放出弁211および213をそれぞれ介する二つの反応チャンバ210および212のうちの一つへの放出の間に生じる。
【0033】
図1の反応器システム100と同様に、反応器システム200は、アキュムレータ充填弁240のために、矢印231で示されている通り、弁パルシング信号または制御信号を生成するコントローラ230を含む。コントローラ230は、アキュムレータ220の圧力設定値およびアキュムレータの圧力(ならびにデフォルトでありうるか、またはユーザーによって定義されうるPIDパラメータ)に基づいて弁パルス信号231を生成するためにPIDコントローラまたは制御ループを使用する圧力コントローラを含むように、反応器システム100内のコントローラ160と同様に構成されてもよい。この目的のために、反応器システム200は、継続的または連続的にアキュムレータ220の圧力を感知し、それに応じて、矢印223で示す通り、圧力設定値で処理して充填弁240の制御信号231を生成するために、コントローラ230に圧力情報を送信する、アキュムレータ220に流体連結された圧力センサ222を含む。
【0034】
図3は、
図1のシステム100または
図2のシステム200の動作中など、アキュムレータ圧力制御を提供するために弁パルシングを使用した結果を示すグラフ300である。グラフ300は、経時的に(例えば、基材処理の工程にわたって)圧力センサによって測定されたアキュムレータ圧力320のプロットを提供する。ライン310は、PID制御ループを実行するPLCへの入力として提供された54トルの圧力設定値を示し、PID制御ループには圧力センサからの圧力フィードバックがさらに提供された。ライン320は322にて、投与と投与の間、または測定された圧力320の落ち込みまたは谷324によって示される通り、アキュムレータが反応チャンバの中に放出している時に、正確で一貫した圧力制御(またはアキュムレータの充満)を提供するのに弁パルシングが有用であることを示す。
【0035】
図4は、例えばシステム100またはシステム200内で、弁パルシング圧力制御方法400を実施するための制御フローチャートまたは概略図を図示する。示されている通り、PIDコントローラまたは制御モジュール410は、一つ以上のパラメータ(例えば、ユーザー定義のPIDパラメータ)とともに、アキュムレータの圧力設定値を入力405として受け止める。さらなる入力として、PIDコントローラ410は、アキュムレータと流体連通する圧力センサから、アキュムレータ内の前駆体ガスの現在の圧力に対応する圧力リードバックまたは信号440を受信する。PIDコントローラ410は420にて、これらの入力を処理し、パルス密度変調(PDM)を実施して、430に示す通り、アキュムレータ充填弁(複数可)を完全に開いた状態と完全に閉じた状態の間で(所定のパルス間隔で)パルシングさせ、それによって、追加的な前駆体でアキュムレータを充満させて、アキュムレータ圧力を圧力設定値またはその付近に制御する弁制御信号を生成する。
【0036】
図5は、反応器システム内のアキュムレータ圧力を制御するパルシング弁方法500の流れ図を図示する。方法500は、例えば
図1および
図2のシステム100および200の動作によってそれぞれ実施されてもよく、方法500は510にて、アキュムレータ上に、またはアキュムレータに関連付けられた圧力センサを提供することと、アキュムレータの充填弁のための弁パルス制御信号を生成するために、PID制御ループ(これはパルス幅変調を実施するためのサブルーチンを含んでもよい)を実行するように構成される充填弁コントローラを修正することとなどで開始する。
【0037】
方法500は520にて、弁コントローラによってアクセス可能なメモリまたはデータストレージ内に、アキュムレータ圧力設定値および一つ以上のPIDパラメータを格納することで続行する。次に、530にて方法500は、アキュムレータ圧力を感知することと、それに応じて、圧力信号または情報を圧力センサからコントローラに送信することとを含む。540にて方法500は、圧力設定値またはその付近のアキュムレータ圧力を得るために、前駆体供給源容器からの前駆体でアキュムレータを充填または充満させることで続行する。PID制御ループは、圧力設定値、PIDパラメータ、およびアキュムレータ圧力フィードバックを入力として受け止め、充填弁を完全に閉じた位置と完全に開いた位置との間で急速に経時的にパルス(例えば、部分的に開いた弁をシミュレート)させる制御信号を生成する。
【0038】
次に、550にて方法500は、基材処理レシピにおいて、アキュムレータによって供給される反応チャンバに前駆体を投与する時間であるかどうかを判定するコントローラを含む。そうでない場合、方法500は、ステップ530および540を繰り返すことで続行する。そうである場合、方法500は570にて、アキュムレータ充填弁を閉じること(例えば、充填弁のパルシングを停止または一時停止すること)で続行する。次に、580にて方法500は、充満/加圧されたアキュムレータからの前駆体を反応チャンバに投与することで続行する。次いで、方法500は、工程530および540を繰り返すことで続行してもよく、または590にて示す通りに終了してもよい。
【0039】
本開示の例示的な実施形態が本明細書に記載されているものの、本開示はそれに限定されないことが理解されるべきである。例えば、一つ以上の調整可能な関節を有する基材ハンドラー装置は、様々な特定の構成に関連して説明されているが、本開示は必ずしもこれらの例に限定されない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載のシステムおよび方法の様々な修正、変形、および強化が行われうる。
【0040】
本開示の主題は、本明細書で開示された様々なシステム、構成要素、構成、および他の特徴、機能、動作および/または特性のすべての新規かつ自明でない組み合わせおよび部分的な組み合わせだけでなく、ならびにその任意のおよびすべての均等物を含む。
【外国語明細書】