(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101611
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】加工装置及び被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240723BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240723BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240723BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20240723BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L21/68 P
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B23Q3/08 A
H01L21/304 622H
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005609
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】首藤 大地
【テーマコード(参考)】
3C016
3C034
3C043
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA05
3C016DA13
3C034AA08
3C034BB71
3C034BB73
3C043BA03
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA31
5F057BA13
5F057CA14
5F057DA01
5F057DA11
5F057EB16
5F057EB18
5F057FA13
5F057FA42
5F057FA45
5F057GA27
5F131AA02
5F131AA12
5F131BA32
5F131BA33
5F131CA07
5F131EB03
5F131EB04
5F131EB56
5F131EB58
5F131EB78
(57)【要約】
【課題】反りを有する被加工物を適切にチャックテーブルで吸引保持する。
【解決手段】反りを有する被加工物を加工する加工装置であって、被加工物を保持する保持面を有し、保持面から上方に突出する様に保持面の外周部に位置する環状領域に設けられた弾性部材を含むチャックテーブルと、弾性部材に液体を供給する液体供給ユニットと、チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、を備え、液体供給ユニットから弾性部材に供給される液体を利用して弾性部材と被加工物との間の隙間を封止可能である加工装置を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反りを有する被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物を保持する保持面を有し、該保持面から上方に突出する様に該保持面の外周部に位置する環状領域に設けられた弾性部材を含むチャックテーブルと、
該弾性部材に液体を供給する液体供給ユニットと、
該チャックテーブルで保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
を備え、
該液体供給ユニットから該弾性部材に供給される該液体を利用して該弾性部材と該被加工物との間の隙間を封止可能であることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該液体供給ユニットは、該チャックテーブルから離れた位置に設けられ、且つ、該弾性部材の外表面に該液体を供給するノズルを有することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該弾性部材は、該弾性部材の上面に露出する液体供給口を有し、
該液体供給ユニットは、該弾性部材の該液体供給口から該弾性部材の外表面に該液体を供給することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
反りを有する被加工物を加工する加工方法であって、
該被加工物を保持するチャックテーブルの保持面から上方に突出する様に該保持面の外周部に位置する環状領域に設けられた弾性部材の外表面に液体を供給すると共に、該液体を利用して該弾性部材と該被加工物との隙間を封止することにより、該被加工物の反りを低減した状態で該被加工物を該保持面で吸引保持する保持工程と、
該保持面で吸引保持されて反りが低減された状態の該被加工物を加工する加工工程と、
を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項5】
該保持工程では、該チャックテーブルから離れた位置に設けられたノズルから該弾性部材の外表面に該液体を供給することを特徴とする請求項4に記載の被加工物の加工方法。
【請求項6】
該弾性部材は、該弾性部材の上面に露出する液体供給口を有し、
該保持工程では、該弾性部材の該液体供給口から該弾性部材の外表面に該液体を供給することを特徴とする請求項4に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反りを有する被加工物を加工する加工装置と、反りを有する被加工物を加工する加工方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂フェイスダウン型のFO-WLP(Fan Out Wafer Level Package)の製造工程においては、例えば、まず、IC(Integrated Circuit)等のデバイスをそれぞれ有する複数の半導体デバイスチップを円板状の支持基板に所定パターンで配列した後、各半導体デバイスチップを樹脂(即ち、所謂モールド樹脂)で封止する。
【0003】
これにより、支持基板と略同径の樹脂基板を形成した後、次に、支持基板から樹脂基板を剥離し、樹脂基板の一面側において、各半導体デバイスチップに電気的に接続するための配線層、電極等を形成する。その後、樹脂基板を半導体デバイスチップ単位に切断する。これにより、FO-WLPが製造される。
【0004】
また、WL-CSP(Wafer level Chip Size Package)の製造工程においては、例えば、まず、それぞれIC(Integrated Circuit)等の複数のデバイスが形成された半導体ウェーハ(以下、単にウェーハ)のデバイス面側に配線層を形成した後、デバイス及び配線層を樹脂(即ち、所謂モールド樹脂)で封止する。
【0005】
次に、ウェーハのデバイス面側において、各半導体デバイスチップに電気的に接続するための電極等を形成した後、樹脂層及びウェーハの積層体を半導体デバイスチップ単位に切断する。これにより、WL-CSPが製造される。
【0006】
ところで、近年、電子機器の小型化及び薄型化に伴い、パッケージデバイスについても薄型化が要望されている。それゆえ、FO-WLP、WL-CSP等の製造プロセスでは、樹脂基板やウェーハが研削される。しかし、封止樹脂が硬化する際に樹脂基板やウェーハには反りが生じるので、樹脂基板やウェーハを円板状のチャックテーブルで適切に吸引保持できない場合がある。
【0007】
なお、同様の問題は、デバイスが樹脂で封止されていないウェーハを研削する場合にも生じ得る。そこで、チャックテーブルの外周部に環状の弾性部材を設けることで、反りを有するウェーハを吸引保持する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかし、デバイスが樹脂で封止されている樹脂基板や樹脂層及びウェーハの積層体では、円板の一面の面積が大きくなるほど、板の反り量も大きくなる。加えて、チャックテーブルの吸引力で反りを矯正して略平坦とするためには、デバイスが樹脂で封止されていないウェーハの場合に比べて大きな力が必要になる。
【0009】
それゆえ、特許文献1の様にチャックテーブルの外周部に環状の弾性部材を設けても、樹脂基板と弾性部材との間の僅かな隙間から真空漏れが発生し、樹脂基板をチャックテーブルで吸引保持できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、反りを有する被加工物を適切にチャックテーブルで吸引保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、反りを有する被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物を保持する保持面を有し、該保持面から上方に突出する様に該保持面の外周部に位置する環状領域に設けられた弾性部材を含むチャックテーブルと、該弾性部材に液体を供給する液体供給ユニットと、該チャックテーブルで保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、を備え、該液体供給ユニットから該弾性部材に供給される該液体を利用して該弾性部材と該被加工物との間の隙間を封止可能である加工装置が提供される。
【0013】
好ましくは、該液体供給ユニットは、該チャックテーブルから離れた位置に設けられ、且つ、該弾性部材の外表面に該液体を供給するノズルを有する。
【0014】
また、好ましくは、該弾性部材は、該弾性部材の上面に露出する液体供給口を有し、該液体供給ユニットは、該弾性部材の該液体供給口から該弾性部材の外表面に該液体を供給する。
【0015】
本発明の他の態様によれば、反りを有する被加工物を加工する加工方法であって、該被加工物を保持するチャックテーブルの保持面から上方に突出する様に該保持面の外周部に位置する環状領域に設けられた弾性部材の外表面に液体を供給すると共に、該液体を利用して該弾性部材と該被加工物との隙間を封止することにより、該被加工物の反りを低減した状態で該被加工物を該保持面で吸引保持する保持工程と、該保持面で吸引保持されて反りが低減された状態の該被加工物を加工する加工工程と、を備える被加工物の加工方法が提供される。
【0016】
好ましくは、該保持工程では、該チャックテーブルから離れた位置に設けられたノズルから該弾性部材の外表面に該液体を供給する。
【0017】
また、好ましくは、該弾性部材は、該弾性部材の上面に露出する液体供給口を有し、該保持工程では、該弾性部材の該液体供給口から該弾性部材の外表面に該液体を供給する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る加工装置のチャックテーブルは、保持面から上方に突出する様に保持面の外周部に位置する環状領域に設けられた弾性部材を含む。弾性部材には、液体供給ユニットから液体が供給され、この液体を利用して弾性部材と被加工物との間の隙間を封止可能である。それゆえ、反りを有する被加工物を適切にチャックテーブルで吸引保持できる。
【0019】
本発明の他の態様に係る加工方法の保持工程では、チャックテーブルの保持面から上方に突出する様に保持面の外周部に位置する環状領域に設けられた弾性部材の外表面に液体を供給すると共に、液体を利用して弾性部材と被加工物との隙間を封止することにより、被加工物の反りを低減した状態で被加工物を保持面で吸引保持できる。更に、続く加工工程では、被加工物の反りを低減した状態で、被加工物を加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図6】弾性部材に純水を供給する様子を示す図である。
【
図7】保持面で被加工物を吸引保持する様子を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係るチャックテーブル及び被加工物の一部断面側面図である。
【
図10】第3の実施形態に係るチャックテーブル及び被加工物の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、反り(warpage)を有する被加工物11を研削(即ち、加工)する研削装置(加工装置)2の斜視図である。
図1は、第1の実施形態に係る研削装置2の斜視図である。
【0022】
図1に示すX軸方向(前後方向)、Y軸方向(左右方向)、及び、Z軸方向(上下方向)は互いに直交する。研削装置2は、被加工物11の搬入、搬出等が作業者により行われるマニュアル式であるが、研削装置2は、被加工物11の搬入及び搬出に加えて研削及び洗浄を自動的に行うフルオート式であってもよい。
【0023】
被加工物11は、例えば、FO-WLPに分割される前の樹脂基板や、WL-CSPに分割される前の樹脂層及びウェーハの積層体である。被加工物11の一面11a側には、複数のデバイス(不図示)が形成されている。一面11aには、被加工物11と略同径の樹脂製の保護テープ(不図示)が貼り付けられてもよい。
【0024】
なお、被加工物11は、一面11a側に封止樹脂が設けられておらず、且つ、一面11a側に複数のデバイス(不図示)が形成された円板状のウェーハであってもよい。一面11a側には、上述の保護テープが貼り付けられてもよい。
【0025】
ところで、被加工物11の形状は、必ずしも円板状に限定されない。例えば、FO-WLPを製造する際には、複数の半導体デバイスチップを縦方向及び横方向に行列状に配列した後に樹脂で封止することで、矩形板状の樹脂基板を形成してもよい。いずれにしても、被加工物11は、数百μmから数mm程度の反りを有する。
【0026】
研削装置2は、その構成要素を支持する基台4を有する。基台4の上面には、長手部がX軸方向に沿って配置された矩形状の開口4aが形成されている。開口4aの下部には、ボールねじ式のX軸方向移動機構6が設けられている。
【0027】
図1では、X軸方向移動機構6の位置が矢印で示されており、具体的な構造は省略されている。X軸方向移動機構6は、X軸方向に略平行に配置された一対のガイドレール(不図示)を有する。一対のガイドレール上には、X軸移動板(不図示)がスライド可能に取り付けられている。
【0028】
X軸移動板の下面側には、ナット部(不図示)が設けられている。ナット部には、一対のガイドレールの間においてX軸方向と略平行に配置されたねじ軸(不図示)が、ボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。
【0029】
ねじ軸の一端部には、ステッピングモータ等のモータ(不図示)が連結されている。モータを動作させると、X軸移動板は、X軸方向に沿って移動する。X軸移動板の上部には、チャックテーブル10を回転させるための回転駆動ユニット(不図示)が設けられている。
【0030】
回転駆動ユニットは、モータ(不図示)と、モータの出力軸に固定された駆動プーリ(不図示)と、チャックテーブル10の回転軸に固定された従動プーリ(不図示)と、駆動プーリ及び従動プーリにかけられた無端ベルト(不図示)と、を含む。
【0031】
チャックテーブル10は、テーブルベース(不図示)に設けられているベアリングを介して、テーブルベースで回転可能に支持されている。チャックテーブル10の回転軸は、テーブルベースに形成されている貫通孔(不図示)に挿入されている。
【0032】
テーブルベースは、傾き調整機構(不図示)を介してX軸移動板で支持されている。傾き調整機構は、XY平面に対するテーブルベースの傾きを調整することによりチャックテーブル10の傾きを調整する。
【0033】
ここで、
図2を参照して、チャックテーブル10について説明する。
図2は、チャックテーブル10の一部断面側面図である。チャックテーブル10は、非多孔質のセラミックス等で形成された円板状の枠体12を有する。枠体12の上面12a側には、円板状の凹部14が形成されている。
【0034】
枠体12の凹部14の底面には、放射状に複数の流路16aが形成されている。また、枠体12には、枠体12の底面の中心を貫通する様に、中央流路16bが形成されている。各流路16aは、中央流路16bの一端に接続しており、中央流路16bの他端は、電磁弁18を介して、真空ポンプ等の吸引源20に接続している。
【0035】
凹部14には多孔質セラミックスで形成された円板状の多孔質板22が接着剤等で固定されている。多孔質板22は、略平坦な底面と、外周部に比べて中央部が僅かに突出した円錐状の上面22aと、を有する。なお、
図2では、上面22aを略平坦に示す。
【0036】
多孔質板22の上面22aと、枠体12の上面12aとは、略面一になっており、被加工物11を吸引保持する保持面10aを構成する。保持面10aの一部は、例えばXY平面と略平行になる様に、上述の傾き調整機構により調整される。
【0037】
チャックテーブル10において、保持面10aの外周部10bに位置する円環状の環状領域には、環状凹部16cが形成されている。本実施形態の環状凹部16cは、枠体12と多孔質板22との境界領域に形成されているが、環状凹部16cは、多孔質板22の外周縁と枠体12の外周縁との間の位置する枠体12のみに形成されてもよい。
【0038】
本実施形態において環状凹部16cの深さは、凹部14の深さよりも浅く、例えば、5.0mmである。環状凹部16cには、弾性部材24が接着剤等で固定されている。弾性部材24は、環状であり、径方向での断面が矩形状である。本実施形態の弾性部材24は、環状凹部16cが露出しない様に、環状凹部16cの全体に亘って設けられている。
【0039】
弾性部材24の幅24a(即ち、環状凹部16cの幅)は、例えば、5.0mmである。弾性部材24は、保持面10aから突出しており、突出量24bは、例えば、0.5mm以上1.5mm以下の所定値である。弾性部材24は、スポンジゴムで形成されている。
【0040】
本実施形態の弾性部材24は、エチレンプロピレンゴムで形成された独立気泡構造を有するスポンジである。弾性部材24は、スポンジであるので可撓性を有すると共に、独立気泡構造を有するので水、エア等を通過させないという特徴を有する。
【0041】
本実施形態の弾性部材24は、タイプCデュロメータでの硬度が35である。硬度の数字が小さいほど弾性部材24は柔らかく、硬度の数字が大きいほど弾性部材24は硬い。
【0042】
弾性部材24が軟らかすぎる場合(即ち、タイプCデュロメータでの硬度が30未満である場合)、被加工物11が保持面10aで吸引保持される際に、弾性部材24が被加工物11に粘着する恐れがある。この場合、被加工物11の吸引を解除しても、保持面10aから被加工物11を取り外せなくなる。
【0043】
これに対して、弾性部材24が硬すぎる場合(即ち、タイプCデュロメータでの硬度が40超の場合)、被加工物11が保持面10aで吸引保持される際に、被加工物11の外周部に作用する上向きの力が大きくなり、被加工物11が破損する恐れがある。
【0044】
本実施形態では、タイプCデュロメータでの硬度を30以上40以下とすることで、吸引解除後の被加工物11の取り外しと、被加工物11の破損防止と、を両立できる。
【0045】
なお、弾性部材24の外表面24cに対してプラズマ処理を施すことにより、外表面24cの親水性を高めてもよい。これにより、プラズマ処理を施さない場合に比べて、弾性部材24の外表面24cに後述する純水26が留まりやすくなるので、弾性部材24と被加工物11との隙間15に純水26が残りやすくなる。
【0046】
弾性部材24の外表面24cは、保持面10aよりも突出している弾性部材24の表面であり、弾性部材24が外力で変形していない状況において、円筒状の内周面及び外周面と、円環状の上面と、を含む。
【0047】
チャックテーブル10の側方には、弾性部材24の外表面24cに純水(液体)26を供給するノズル28が設けられている。ノズル28は、チャックテーブル10から離れた位置に設けられており、ノズル28の開口28aは、弾性部材24よりも上方に配置されている。
【0048】
ノズル28には、電磁弁30を介して純水供給源32が接続している。純水供給源32は、例えば、純水26が貯留されているタンク(不図示)と、タンクから純水26を供給するためのポンプ(不図示)と、を含む。
【0049】
ノズル28、電磁弁30及び純水供給源32は、純水供給ユニット(液体供給ユニット)34を構成する。なお、本実施形態の純水供給源32は、研削装置2の筐体内に設けられず、研削装置2の筐体外に設けられてもよい。即ち、研削装置2における純水供給ユニット34は、少なくともノズル28及び電磁弁30を有していればよい。
【0050】
ここで、
図1に戻る。
図1では、上述の弾性部材24は省略されている。チャックテーブル10は、X軸方向移動機構6によりX軸方向に沿って、開口4aの前方(X軸方向の一方)に位置する搬入搬出位置A1と、開口4aの後方(X軸方向の他方)に位置する研削位置A2と、の間を移動する。
【0051】
基台4の後方側には、四角柱状のコラム40が設けられている。コラム40の前方側面には、Z軸方向移動機構42が設けられている。Z軸方向移動機構42は、研削送り機構として機能する。
【0052】
Z軸方向移動機構42は、コラム40の前方側面に固定された一対のガイドレール44を有する。各ガイドレール44には、矩形状のZ軸移動板46がスライド可能に取り付けられている。
【0053】
Z軸移動板46の後面には、ナット部(不図示)が設けられている。ナット部には、一対のガイドレール44の間においてZ軸方向に沿って設けられたねじ軸48が、複数のボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。
【0054】
ねじ軸48の上端部には、ステッピングモータ等のモータ50が連結されている。モータ50でねじ軸48を回転させれば、Z軸移動板46は、ガイドレール44に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動板46の前面には、円筒状の保持部材52が固定されている。
【0055】
保持部材52には、研削ユニット(加工ユニット)54が固定されている。研削ユニット54は、保持部材52の円筒の内部に固定された円筒状のスピンドルハウジング56を有する。スピンドルハウジング56は、長手方向がZ軸方向に略平行に配置されている。
【0056】
スピンドルハウジング56内には、長手方向がZ軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル58の一部が回転可能に保持されている。スピンドル58の上側の一部には、モータ等の回転駆動源58aが設けられている。
【0057】
スピンドル58の下端部は、スピンドルハウジング56の下端よりも下方に突出しており、この下端部には、円板状のホイールマウント60が固定されている。ホイールマウント60の下面側には、ねじ等の固定部材(不図示)を利用して、環状の研削ホイール62が装着されている。
【0058】
研削ホイール62は、
図1において破線で示すカバー部材の内部に配置されている。研削ホイール62は、アルミニウム合金等の金属材料で形成された円環状のホイール基台62aを有する。ホイール基台62aの下面側には、複数の研削砥石62bが固定されている。
【0059】
複数の研削砥石62bは、ホイール基台62aの下面の周方向に沿って環状に、且つ、略等間隔に配列されている。研削砥石62bは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材(即ち、ボンド材)に、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合した後、成型、焼成等を経て形成される。
【0060】
研削ユニット54の下方には、上述のノズル28とは別に、純水等の研削水を研削領域に供給するための研削水供給ノズル64(
図3参照)が設けられている。
図3は、研削装置2の一部を拡大した斜視図である。
【0061】
研削水供給ノズル64には、不図示の電磁弁を介して、研削水を供給するための研削水供給源(不図示)が接続されている。本実施形態の研削水供給ノズル64は、研削ユニット54の直下に配置される所謂、内部ノズルである。
【0062】
研削水供給ノズル64、電磁弁及び研削水供給源は、研削水供給ユニット66を構成する。なお、研削水供給源として、純水供給ユニット34の純水供給源32が利用されてもよい。
【0063】
本実施形態において、被加工物11を研削する際には、研削ホイール62がチャックテーブル10の外側から内側に向かって進み(所謂、外内研削)、且つ、研削砥石62bの内刃で被加工物11が研削される(所謂、内刃研削)。
【0064】
しかし、外刃研削の場合には、研削水供給ノズル64は、XY平面視において研削ユニット54よりも外側に配置される所謂、外部ノズルであってもよい。また、研削水供給ノズル64に代えて、研削ホイール62に設けられた複数の貫通孔(不図示)から研削水を供給してもよい。
【0065】
再び、
図1に戻って、研削装置2には、コントローラ68が設けられている。コントローラ68は、X軸方向移動機構6、チャックテーブル10の回転駆動ユニット、電磁弁18,30、吸引源20、Z軸方向移動機構42、研削水供給ユニット66等の動作を制御する。
【0066】
コントローラ68は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0067】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従いプロセッサ等を動作させることによって、コントローラ68の機能が実現される。
【0068】
次に、
図4から
図8を参照して、反りを有する被加工物11を研削(即ち、加工)する研削方法(即ち、加工方法)の一例を説明する。
図4は、加工方法のフロー図である。
【0069】
図4に示す様に、本実施形態の加工方法では、被加工物11を保持面10aに載置する載置工程S10、被加工物11を保持面10aで吸引保持する保持工程S20、及び、被加工物11を研削する研削工程(加工工程)S30が、順次行われる。
【0070】
図5は、載置工程S10を示す図である。
図5に示す様に、載置工程S10では、被加工物11が下凸となる様に、被加工物11を保持面10aに載置する。このとき、被加工物11の外周縁は、弾性部材24の直上に位置するが、弾性部材24から僅かに離れているので、被加工物11と弾性部材24との間には、隙間15が形成される。
【0071】
載置工程S10に続く保持工程S20では、まず、
図6に示す様に、被加工物11が遠心力で飛散しない程度の低速(例えば20rpmから40rpm)でチャックテーブル10を回転させながら、ノズル28の開口28aから弾性部材24の外表面24cへ純水26を供給する。
図6は、弾性部材24に純水26を供給する様子を示す図である。
【0072】
弾性部材24に供給された純水26は、表面張力等に起因して、弾性部材24の上面から上方に数mm程度突出する様に盛り上がり、被加工物11と弾性部材24の上面との間の隙間15は、被加工物11の周方向に亘って純水26で封止される。
【0073】
隙間15は、例えば、被加工物11の周方向に亘って完全に途切れなく純水26で封止される。なお、弾性部材24に純水26を供給する段階では、保持面10aに負圧が作用していないので、保持面10a、被加工物11、及び、弾性部材24の外表面24cで規定される空間が純水26で充填されてもよい。
【0074】
次いで、チャックテーブル10の回転と、ノズル28からの純水26の供給と、を継続したまま、電磁弁18を開状態とすることで、保持面10aに負圧を作用させる。このとき、被加工物11と弾性部材24との隙間15は、純水26を利用して封止されている。
【0075】
それゆえ、反りが矯正される様に被加工物11は変形し、一面11a及び他面11bは略平坦になる。なお、保持面10aと被加工物11の一面11aとの間にある純水26は、保持面10aから吸引源20へ吸引される。
【0076】
図7は、保持面10aで被加工物11を吸引保持する様子を示す図である。被加工物11が保持面10aで吸引保持されると、被加工物11と保持面10aとの間の空間は略無くなり、略平坦に矯正された被加工物11により、弾性部材24は保持面10aの径方向の外側へ追いやられる様に変形する。
【0077】
この様に、保持工程S20において被加工物11の反りを低減した状態で被加工物11を吸引保持した後、研削工程S30では、保持面10aでの被加工物11の吸引保持を維持したまま、反りが低減された状態の被加工物11の他面11b側を研削ユニット54で研削する。
【0078】
図8は、研削工程S30を示す図である。なお、
図8では、純水供給ユニット34を省略している。研削工程S30では、保持工程S20におけるチャックテーブル10の回転速度よりも十分に高い回転速度(例えば、300rpm)でチャックテーブル10を回転させ、研削ホイール62をチャックテーブル10よりも十分に高速(例えば、4500rpm)で回転させる。
【0079】
加えて、研削水供給ノズル64から研削砥石62bと被加工物11との接触領域に研削水を供給しながら、研削ユニット54を所定の研削送り速度(例えば、6.0μm/s)で下方に研削送りする。この様にして、インフィード研削により被加工物11を研削する。
【0080】
保持工程S20において、被加工物11の反りを低減した状態で被加工物11を保持面10aで吸引保持できるので、研削工程S30では、被加工物11の反りを低減した状態で、被加工物11を研削できる。それゆえ、反りを有する被加工物11であっても、略一様に被加工物11を薄化できる。
【0081】
(第2の実施形態)次に、第2の実施形態について説明する。
図9は、第2の実施形態に係るチャックテーブル70及び被加工物11の一部断面側面図であり、第1の実施形態の
図6に対応する。
【0082】
チャックテーブル70も、保持面10aの外周部10bに弾性部材24を有する。但し、第2の実施形態の弾性部材24は、弾性部材24の上面に露出する純水供給口(液体供給口)24dを有する。
【0083】
純水供給口24dは、例えば、弾性部材24の周方向に沿って略等間隔で複数個設けられる。純水供給口24d間の間隔は、特に限定されないが、一例において、5.0mmから10mm程度である。なお、複数個の純水供給口24dが略等間隔で設けられることに代えて、1つの環状のスリットが純水供給口24dとして設けられてもよい。
【0084】
弾性部材24の内部には、純水供給口24dに接続する流路24eが形成されている。流路24eには、枠体12に形成されている所定の流路(不図示)を介して純水26が供給される。
【0085】
保持工程S20において、純水供給ユニット34は、ノズル28に代えて純水供給口24dから、弾性部材24の外表面24cに純水26を供給する。それゆえ、第2の実施形態では、保持工程S20においてチャックテーブル10を回転させなくても、純水26を弾性部材24の上面の略全体に供給できる。
【0086】
被加工物11が吸引保持される前においてチャックテーブル10の回転を省略すれば、保持面10a上における被加工物11の位置ずれを防止できるので、吸引保持不良や研削不良の発生頻度を低減できる。
【0087】
(第3の実施形態)次に、第3の実施形態について説明する。
図10は、第3の実施形態に係るチャックテーブル80及び被加工物21の上面図である。本実施形態のチャックテーブル80は円板状ではなく矩形板状である。
【0088】
チャックテーブル80は、非多孔質のセラミックス等で形成された矩形板状の枠体82を有する。枠体82の上面82a側には、矩形板状の凹部(不図示)が形成されている。凹部の底面には、放射状に複数の流路(不図示)が形成されている。
【0089】
また、枠体82には、枠体82の底面の中心を貫通する様に、中央流路(不図示)が形成されている。各流路は、中央流路の一端に接続しており、中央流路の他端は、上述の電磁弁18を介して、吸引源20に接続している。
【0090】
凹部には多孔質セラミックスで形成された矩形板状の多孔質板84が接着剤等で固定されている。多孔質板84は、それぞれ略平坦な上面84a及び底面を有する。多孔質板84の上面84aと、枠体82の上面82aとは、略面一になっており、被加工物11を吸引保持する保持面80aを構成する。
【0091】
チャックテーブル80は、保持面80aがXY平面と略平行になる様に、上述の傾き調整機構により傾きが調整される。保持面80aの外周部80bに位置する矩形環状の環状領域には、環状凹部(不図示)が形成されている。
【0092】
本実施形態の環状凹部は、枠体82と多孔質板84との境界領域に形成されているが、多孔質板84の外周縁と枠体82の外周縁との間の位置する枠体82のみに形成されてもよい。環状凹部には、上述の弾性部材24が接着剤等で固定されている。
【0093】
弾性部材24は、環状凹部の全体に亘って設けられている。弾性部材24は、保持面80aから所定の長さだけ突出している。弾性部材24の上面には、複数の純水供給口24dが略等間隔で露出している。
【0094】
各純水供給口24dには、第2の実施形態と同様に、純水供給源32から純水26が供給される。なお、複数個の純水供給口24dが略等間隔で設けられることに代えて、1つの環状のスリットが純水供給口24dとして設けられてもよい。
【0095】
保持面80aには、多孔質板84と略同じサイズを有する矩形板状の被加工物21が載置される。被加工物21も、FO-WLPに分割される前の樹脂基板や、WL-CSPに分割される前の樹脂層及びウェーハの積層体である。被研削面とは反対側に位置する被加工物21の所定面には樹脂製の保護テープ(不図示)が貼り付けられてもよい。
【0096】
被加工物21も、反りを有する。被加工物21の一辺における第1反り量と、当該一辺と直交する被加工物21の他辺における第2反り量とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0097】
本実施形態の保持工程S20では、純水26を利用して、弾性部材24と被加工物21との隙間15を封止することにより、被加工物21の反りを低減した状態で被加工物21を保持面80aで吸引保持できる。
【0098】
つまり、被加工物21の第1反り量及び第2反り量が、異なる場合であっても、略一定の高さの弾性部材24を利用して、被加工物21と弾性部材24との隙間15を純水26で封止することで、被加工物21の反りを低減した状態で被加工物21を保持面80aで吸引保持できる。
【0099】
第3の実施形態でも載置工程S10及び保持工程S20を順次行った後、研削工程S30を行う。但し、研削工程S30では、チャックテーブル80を回転させずに、研削ホイール62を高速で回転させる。
【0100】
更に、研削水供給ノズル64から研削砥石62bと被加工物11との接触領域に研削水を供給しながら、研削ユニット54の高さ位置を保持面80aと被加工物21との間の所定の高さ位置に固定した状態で、チャックテーブル80をX軸方向に沿って移動させる。この様にして、クリープフィード研削により被加工物21を研削する。
【0101】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、研削ユニット54に代えて、ホイールマウント60にバイトホール(不図示)が装着されたバイト切削ユニット(加工ユニット)や、ホイールマウント60に研磨ホイール(不図示)が装着された研磨ユニット(加工ユニット)が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0102】
2:研削装置(加工装置)、4:基台、4a:開口、6:X軸方向移動機構
10:チャックテーブル、10a:保持面、10b:外周部
11:被加工物、11a:一面、11b:他面、15:隙間
12:枠体、12a:上面、14:凹部
16a:流路、16b:中央流路、16c:環状凹部、18:電磁弁、20:吸引源
21:被加工物
22:多孔質板、22a:上面
24:弾性部材、24a:幅、24b:突出量、24c:外表面
24d:純水供給口(液体供給口)、24e:流路、26:純水(液体)
28:ノズル、28a:開口、30:電磁弁、32:純水供給源
34:純水供給ユニット(液体供給ユニット)
40:コラム、42:Z軸方向移動機構、44:ガイドレール、46:Z軸移動板
48:ねじ軸、50:モータ、52:保持部材、54:研削ユニット(加工ユニット)
56:スピンドルハウジング、58:スピンドル、58a:回転駆動源
60:ホイールマウント
62:研削ホイール、62a:ホイール基台、62b:研削砥石
64:研削水供給ノズル、66:研削水供給ユニット、68:コントローラ
70:チャックテーブル
80:チャックテーブル、80a:保持面、80b:外周部
82:枠体、82a:上面、84:多孔質板、84a:上面
A1:搬入搬出位置、A2:研削位置
S10:載置工程、S20:保持工程、S30:研削工程(加工工程)