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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101618
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】集塵装置
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/02 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
C22B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005622
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】有海 亮介
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA19
4K001BA02
4K001DB03
4K001DB14
4K001DB16
4K001DB23
4K001DB24
(57)【要約】
【課題】工業プロセスにおけるタンク等の閉鎖容器内から排気される空気中の粒子を効率的に回収できる集塵装置を提供する。
【解決手段】タンク等の閉鎖容器100の換気のために行われる排気中の粒子を捕集して回収する集塵装置10であって、閉鎖容器100に残留する粒子を含む空気を外部に送気する換気設備11と、閉鎖容器100の換気のために用いられる排気部101に取り付けられるフレキシブルダクト12と、換気設備11とフレキシブルダクト12を接続し、接続箇所からの排気漏洩を防ぐ接続アダプター13と、フレキシブルダクト12の排気側に設置され、内部に排気中の粒子を捕集するための液体14を有し、上面に排気用フィルター15が設けられた捕集機構16を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク等の閉鎖容器の換気のために行われる排気中の粒子を捕集して回収する集塵装置であって、
前記閉鎖容器に残留する粒子を含む空気を外部に送気する換気設備と、
前記閉鎖容器の換気のために用いられる排気部に取り付けられるフレキシブルダクトと、
前記換気設備と前記フレキシブルダクトを接続し、接続箇所からの排気漏洩を防ぐ接続アダプターと、
前記フレキシブルダクトの排気側に設置され、内部に排気中の粒子を捕集するための液体を有し、上面に排気用フィルターが設けられた捕集機構
を備えることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
前記液体は、水であることを特徴とする、請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記粒子はサンドブラスト後の研磨剤を含むことを特徴とする、請求項2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記サンドブラストの研磨剤は、非水溶性で、比重が4以上であることを特徴とする、請求項3に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記閉鎖容器内の液体は、撹拌は行わない静止系であり、前記フレキシブルダクトの排気口は前記液体の上部にあることを特徴とする、請求項4に記載の集塵装置。
【請求項6】
前記サンドブラストの研磨剤は、ガーネット、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニアのいずれか、または、それらの混合物であり、該研磨剤の粒径は、5~500μmであることを特徴とする、請求項5に記載の集塵装置。
【請求項7】
前記フレキシブルダクトの排気口と前記液体の液面との距離は、150mm以上、400mm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の集塵装置。
【請求項8】
前記フレキシブルダクトの制御風速は、10m/秒以上、20m/秒以下であり、制御風量は、6000m/Hr以上、10000m/Hr以下であることを特徴とする、請求項7に記載の集塵装置。
【請求項9】
前記フレキシブルダクトは、複数台を使用し、該フレキシブルダクト排気口の開口面積は、合計で100000mm以上、200000mm以下であることを特徴とする、請求項8に記載の集塵装置。
【請求項10】
前記閉鎖容器内の液体容量は、200L以上、400L以下であることを特徴とする、請求項9に記載の集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気中の粒子を回収する集塵装置に関し、より詳しくは、工業プロセスにおけるタンク等の閉鎖容器の換気のために行われる排気中の粒子を回収し、外気に粒子が排気されることを抑制する集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低品位なニッケル酸化鉱からのニッケルの回収方法として、硫酸を用いた高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)法がある。この方法は、乾燥及び焙焼工程等の乾式処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるとともに、ニッケル品位を50重量%程度まで向上させたニッケル・コバルト混合硫化物を得ることができるという利点を有している。
【0003】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスなどの工業プロセスで用いられるタンク等の閉鎖容器は様々な液体や粉体を貯蔵しているが、使用中にタンク等の閉鎖容器内壁面には液体や粉体が固着していく。固着した液体や粉体はノズル等を閉塞させる、センサー等の計装機器の動作を阻害する、タンク等の閉鎖容器の内容積を減じる、等種々の悪影響を及ぼすため、定期的に固着物を除去する必要がある。
【0004】
このような固着物は多くの場合硬く固まっているため、除去作業時には打撃等の衝撃を加える必要がある。この際、細かく砕けた固着物が粒子となり、タンク等の閉鎖容器内の空気中に飛散する。また固着物が非常に硬く打撃で除去できない場合、研磨による除去が必要になる場合がある。例えば研磨のためにサンドブラストを使用した場合、サンドブラストの吹き付け材(研磨剤)も粒子として空気中に飛散する。
【0005】
加えて閉鎖容器内で作業を行う場合、安全な作業環境を確保するために換気を行う必要がある。換気を行うとタンク等の閉鎖容器内の空気と共に、粒子を外気に放出することになる。粒子が外気に放出された場合、例えば周辺機器の内部に入り込んで動作不良を起こす、作業者が粒子を吸い込むことによる健康被害が生じるといった悪影響が発生する。しかし固着物の除去作業は非定常作業であり、常設の空気浄化設備を設けることは経済的ではないため、非定常作業で行われる固着物の除去作業時に排気される粒子を簡易かつ効果的に除去する機構が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1には、粉塵の吸口と集塵機の間に水を用いて、粉塵を取り除く事を特徴とする歯科技工用除塵装置が記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は歯科技工用の装置であって、工業プロセスで用いられるタンク等の閉鎖容器における、サンドブラスト等で発生する高濃度、大容量の粉塵の集塵に対しては適用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-334611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、工業プロセスにおけるタンク等の閉鎖容器内から排気される空気中の粒子を効率的に回収できる集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、タンク等の閉鎖容器の換気のために行われる排気中の粒子を捕集して回収する集塵装置であって、閉鎖容器に残留する粒子を含む空気を外部に送気する換気設備と、閉鎖容器の換気のために用いられる排気部に取り付けられるフレキシブルダクトと、換気設備とフレキシブルダクトを接続し、接続箇所からの排気漏洩を防ぐ接続アダプターと、フレキシブルダクトの排気側に設置され、内部に排気中の粒子を捕集するための液体を有し、上面に排気用フィルターが設けられた捕集機構を備える。
【0011】
本発明の一態様によれば、タンク等の閉鎖容器内から排気される空気中の粒子を、排気を接続アダプターを介してフレキシブルダクトで集約すると共に、フレキシブルダクト出口を液体で満たされた捕集機構に接続することで、工業プロセスにおけるタンク等の閉鎖容器内から排気される空気中の粒子を液体内に効率的に回収できる。
【0012】
このとき、本発明の一態様は、液体は、水であるとしてもよい。
【0013】
非水溶性の粒子であれば、一般的な水を用いることで捕集することができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、粒子はサンドブラスト後の研磨剤を含むとしてもよい。
【0015】
本発明によれば、サンドブラストで発生する高濃度、大容量の粉塵に対しても、十分集塵能力を有する集塵装置とすることができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、サンドブラストの研磨剤は、非水溶性で、比重が4以上であるとしてもよい。
【0017】
サンドブラストの研磨剤は、上記条件の粒子が用いられることが多く、本発明を適用することでこれらの粒子も集塵することが可能となる。
【0018】
また、本発明の一態様では、閉鎖容器内の液体は、撹拌は行わない静止系であり、フレキシブルダクトの排気口は液体の上部にあるとしてもよい。
【0019】
静止系とすることで捕集した粒子を沈降させて回収し易くさせ、また、フレキシブルダクトの排気口を液体の液面から離すことで、液体が排気による発泡で周囲に飛散するのを防止することができる。
【0020】
また、本発明の一態様では、サンドブラストの研磨剤は、ガーネット、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニアのいずれか、または、それらの混合物であり、研磨剤の粒径は、5~500μm(本明細書中において「~」は、下限以上、上限以下を意味するものとする。以下同じ)であるとしてもよい。
【0021】
また、本発明の一態様では、フレキシブルダクトの排気口と液体の液面との距離は、150mm以上、400mm以下としてもよい。
【0022】
また、フレキシブルダクトの制御風速は、10m/秒以上、20m/秒以下であり、制御風量は、6000m/Hr以上、10000m/Hr以下であるとしてもよい。
【0023】
また、フレキシブルダクトは、複数台を使用し、フレキシブルダクト排気口の開口面積は、合計で100000mm以上、200000mm以下であるとしてもよい。
【0024】
また、閉鎖容器内の液体容量は、200L以上、400L以下であるとしてもよい。
【0025】
工業プロセスにおける本発明に係る集塵装置の種々の設定条件は、上記数値範囲とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明によれば、工業プロセスにおけるタンク等の閉鎖容器内から排気される空気中の粒子を効率的に回収できる集塵装置を提供することができる。また、本発明によれば、タンク等の閉鎖容器内からの排気中の粒子を簡易かつ効果的に回収することにより、排気中の粒子による周辺設備の不具合を未然に防ぐと共に、周辺作業者の作業環境も良好な状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法のプロセスを示す工程図である。
図2】本発明の一実施形態に係る集塵装置を示した概略断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る集塵装置を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る集塵装置について図面を参照しながら以下の順序で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
1.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
2.集塵装置
【0029】
<1.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法>
先ず、集塵装置のより具体的な説明に先立ち、本発明の一実施形態に係る集塵装置が適用されるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法について簡単に説明する。なお、本発明の一実施形態にかかる集塵装置は、一例として、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において用いられるオートクレーブ等の閉鎖容器を対象としているが、必ずしもこの場合のみに限定されるわけではなく、これら以外の工業プロセスにおける閉鎖容器において、粒子を含む空気を換気する際に適用することも可能である。図1に、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法の工程(プロセス)図の一例を示す。
【0030】
スラリー調製工程S1では、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石を用いて、数種類のニッケル酸化鉱石を所定のNi品位、不純物品位となるように混合し、篩にかけて所定の分級点で分級してオーバーサイズの鉱石粒子を除去した後に、アンダーサイズの鉱石のみを水と混合してスラリー化する。
【0031】
浸出工程S2では、スラリー調製工程S1で得られたニッケル酸化鉱石のスラリーに対して、例えば高圧酸浸出法を用いた浸出処理を施す。具体的には、原料となるニッケル酸化鉱石を混合等して得られた鉱石スラリーに硫酸を添加し、例えば耐熱耐圧容器(オートクレーブ)を用いて、220~280℃の高い温度条件下で3~5MPaに加圧することによって鉱石からニッケル、コバルト等を浸出し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを形成する。
【0032】
浸出工程S2では、浸出率を向上させる観点から過剰の硫酸を加えるようにしている。そのため、得られた浸出スラリーには浸出反応に関与しなかった余剰の硫酸が含まれていて、そのpHは非常に低い。
【0033】
このことから、予備中和工程S3では、次工程の固液分離工程S4における多段洗浄時に効率よく洗浄が行われるように、浸出工程S2にて得られた浸出スラリーのpHを高めて所定の範囲に調整する。pHの調整方法としては、例えば石灰石(炭酸カルシウム)スラリー等の中和剤を添加することによって所定の範囲のpHに調整する。
【0034】
固液分離工程S4では、予備中和工程S3にてpH調整された浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトのほか不純物元素として亜鉛を含む浸出液と浸出残渣とを得る。
【0035】
中和工程S5では、固液分離工程S4にて分離された浸出液のpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物を分離して、ニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る。浸出液のpHは、石灰石(炭酸カルシウム)スラリー等の中和剤を添加することで調整される。
【0036】
脱亜鉛工程S6では、中和工程S5から得られた中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加する硫化処理を施すことにより亜鉛硫化物を生成させ、その亜鉛硫化物を分離除去してニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液(脱亜鉛終液)を得る。
【0037】
その後、硫化工程S7では、脱亜鉛工程S6後のニッケル回収用母液である脱亜鉛終液に対して硫化剤としての硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせ、不純物成分の少ないニッケル及びコバルトの混合硫化物と、ニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させた貧液とを生成させる。
【0038】
最終中和工程S8は、上述した固液分離工程S4から移送された遊離硫酸を含む浸出残渣と、硫化工程S7から移送されたマグネシウムやアルミニウム、鉄等の不純物を含むろ液(貧液)の中和を行う。浸出残渣やろ液は、中和剤によって所定のpH範囲に調整され、廃棄スラリー(テーリング)となる。生成されたテーリングは、テーリングダム(廃棄物貯留場)に移送される。
【0039】
<2.集塵装置>
これまで、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法のフローを一通り説明してきたが、本発明に係る集塵装置は、例えば、上述した浸出工程S2におけるオートクレーブや、各工程における反応槽などの閉鎖容器内を換気する際に用いられる。より詳しくは、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬において、閉鎖容器の内壁に固着したスケール等の固着物をサンドブラストにより除去した際に、生じた粒子を含む閉鎖容器内の空気を排気する過程で、これらの粒子が系外に排出されないように集塵するための装置である。以下、本発明の一実施形態に係る集塵装置の構成について説明する。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態に係る集塵装置を示した概略断面図である。なお、図2は説明のための概略図であり、実際の各設備の大きさや粒子の大きさを反映しているわけではない。本発明の一態様は、タンク等の閉鎖容器100の換気のために行われる排気中の粒子Pを捕集して回収する集塵装置10であって、閉鎖容器100に残留する粒子Pを含む空気を外部に送気する換気設備11と、閉鎖容器100の換気のために用いられる排気部101に取り付けられるフレキシブルダクト12と、換気設備11とフレキシブルダクト12を接続し、接続箇所からの排気漏洩を防ぐ接続アダプター13と、フレキシブルダクト12の排気側に設置され、内部に排気中の粒子Pを捕集するための液体14を有し、上面に排気用フィルター15が設けられた捕集機構16を備える。
【0041】
換気設備11は、閉鎖容器100に残留する粒子Pを含む空気を外部に送気するファンなどの設備である。換気設備11は、例えば、タンク等の閉鎖容器100内を換気する必要が生じた際に、閉鎖容器100の排気部101(排気ノズル等)に設置され、吸気部102(吸気ノズル等)から空気を取り込み、閉鎖容器100内の粒子Pと共に排気部101へと送風する。閉鎖容器100に予め換気のための設備が備わっている場合には、当該設備を換気設備11として利用してもよい。
【0042】
フレキシブルダクト12は、主に蛇腹状の構造で形成され屈折施工が自由にできるダクトであり、閉鎖容器100の換気のために用いられる排気部101に取り付けられる。様々な態様の閉鎖容器100に対応させ、取り付け場所によらず取り付けられるようにフレキシブルな材質のものが使用される。
【0043】
接続アダプター13は、換気設備11とフレキシブルダクト12を接続し、接続箇所からの排気漏洩を防ぐ。排気は陽圧のため、接続箇所に隙間があるとそこから排気と共に粒子Pが外部に漏洩してしまう。そこでタンク等の閉鎖容器100の換気設備11とフレキシブルダクト12の接続箇所からの排気漏洩を防ぐための接続アダプター13は、接続部からの排気漏洩を封止するために設置される。接続アダプター13は、一例として、一端側が換気設備11を覆う事が可能な大きさで、他端側がフレキシブルダクト12の流入口を覆う事が可能な大きさの部材が用いられ、換気設備11からの排気が全てフレキシブルダクト12の流入口へと向かうように形成されることが望ましい。本発明に係る集塵装置10が設置される場所は状況によって異なるため、適宜、シートやテープ等を用いて封止を行ってもよい。
【0044】
捕集機構16は、フレキシブルダクト12から送られてきた粒子Pを含む空気から粒子Pを捕集して、空気のみを外部に排気する機構である。捕集機構16は、内部に排気中の粒子Pを捕集するための液体14を有し、上面に排気用フィルター15が設けられている。
【0045】
フレキシブルダクト12から排気される粒子Pをそのまま系外に排気すると周辺機器の内部に入り込んで動作不良を起こしたり、作業者が吸い込むことによる健康被害といった悪影響が発生するため、捕集機構16により粒子Pを捕集して回収する必要がある。被研削対象であるタンク等の閉鎖容器内の固着物はタンクの使用目的によって粒子径、比重は異なるが、概ね比重1を超えるものが多い。そこで、捕集機構16として内部に液体14を有することで、フレキシブルダクト12から送気され、液面に衝突した粒子Pは液体14内に捕集され、比重の大きい粒子Pは重力により捕集機構16の容器底部に沈降、捕集される。
【0046】
使用する液体14については非水溶性の粒子であれば水を用いるが、排気中の粒子が水溶性の場合はアルコール等の無害な液体を用いることで粒子を捕集することができる。水に溶けてしまっても容易に水溶液が処理できる場合は水を用いてよい。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法では、固着物は主に非水溶性の金属化合物であるため、捕集機構16内部の液体14としては一般的な比重1の水を用いることができる。
【0047】
フレキシブルダクト12から排気される一部の粒子は空気の流れに同伴し、液面に衝突せずに上方へ排気されてしまう。そのため、捕集機構16の容器上部には排気用フィルター15を取り付けておくことで、空気の流れに同伴した粒子を捕集することができ、より確実な粒子捕集を期すことができる。フィルター15は粒子径に応じて適宜メッシュサイズを選定すればよい。
【0048】
このような構成とすることで、排気用フィルター15のみの使用では、フィルターの目詰まりによる排気不良が生じ易いが、本発明によれば液体14を内容した容器による粒子の沈降捕集と、フィルター15による粒子の捕集の2段階の機構を有するため、排気フィルターのみで粒子を補修するよりも長時間の運用が可能になる。
【0049】
タンク等の閉鎖容器100の内壁に固着した固着物(スケール等)の除去には、サンドブラストによる研磨などが行われる。この場合、閉鎖容器100の内部には研磨された固着物の粒子のほかにサンドブラストによる研磨剤も粒子として含まれるが、本発明に係る集塵装置10を適用することで両方の粒子を集塵することができる。サンドブラストの研磨剤は、非水溶性で、比重が4以上のものが使用され、例えば、工業用ガーネット、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニアのいずれか、または、それらの混合物が採用される。研磨剤の粒径は、5~500μmである。
【0050】
本発明の一態様では、閉鎖容器100内の液体は、撹拌は行わない静止系であり、フレキシブルダクト12の排気口103は液体14の上部にあることが好ましい。静止系とした方が、液体中に捕集した粒子が沈降し易く、上澄み液を排出して沈殿した粒子を回収するのが容易となる。また、フレキシブルダクト12の排気口103を液体14の上部に配置するのは、フレキシブルダクト12の排気口103を液体中に入れると、液体14が排気により発泡するため液体が周辺に飛散し、発泡した液体により捕集した粒子が飛散してしまうためである。フレキシブルダクト12の排気口103と液面との距離hは、150~400mmが好ましく、200~300mmがより好ましい。
【0051】
なお、フレキシブルダクト12の排気口103を液体内に沈めると、排気は液体内部を通過してから外気に放出されるため、排気中の粒子と液体の接触機会が最大化され、液体側での粒子捕集を行うことができる。したがって、飛散を防止するために十分な深さをもった容器を使用する、飛散防止のためのカバーを設けるといった対策を行えば、フレキシブルダクト12の排気口103を液体内に沈めてもよい。
【0052】
フレキシブルダクト12の制御風速に関し、排気流速が大きすぎると流体圧損が大きくなり換気量が確保できなくなるため、十分な口径のフレキシブルダクト12を選定する必要がある。一方で、排気流速が小さすぎると排気中の粒子が重力落下でダクト中に沈降してしまう。粒子径、比重によるが制御風速は、一般には10m/秒~20m/秒、より好ましくは10m/秒~15m/秒程度の流速があれば粒子は搬送できるため、この程度の流速になるようにダクト口径を選定することが望ましい。また、フレキシブルダクト12の制御風量は6000m/Hr以上、10000m/Hr以下とすることが望ましい。
【0053】
本発明の一態様では、フレキシブルダクトは複数台を使用し、フレキシブルダクト排気口の開口面積は、合計で100000mm以上200000mm以下とすることもできる。図3に本発明の他の実施形態に係る集塵装置を示す。本発明の他の実施形態に係る集塵装置20では、図3に示すように、2本のフレキシブルダクト22A,22Bを接続アダプター23を介して換気設備21と接続することができる。このようにすれば、上述したフレキシブルダクトのダクト口径の設計変更が難しい場合に、接続するダクトの本数を変更することで風速を調整することができる。一例として、口径Φ=Φ=300mmのフレキシブルダクトを用いた場合、開口面積の合計は、
(300/2)×π×2本≒141300mm
となり、上記数値範囲を満たすことで適切な制御風速・風量に設定することができる。2本のフレキシブルダクト22A,22Bの口径Φ,Φは、同じものでもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
なお、図3では、2本のフレキシブルダクト22A,22Bの排気口103A,103Bは1つの捕集機構26内に接続されているが、それぞれ異なる捕集機構(2つの捕集機構)に接続されてもよい。このようにすれば、例えば、閉鎖容器100内の粒子の量が多い場合に分散して集塵を行うことができる。
【0055】
本発明の一態様では、閉鎖容器100内の液体容量は、200L以上400L以下とすることが好ましい。上述したように、本発明の一態様に係る集塵装置は、主にニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法などの工業プロセスにおいて用いられるため200~400Lの液体が必要となる。
【0056】
本発明の一態様では、集塵装置10,20の構成の一部を簡易な素材で代替することも可能である。例えば、接続アダプター13,23としてビニール等の柔軟なシートを用いることができ、排気が漏れることを防ぐためにテープ等で隙間を十分に目張りするという方法でもよい。また、フレキシブルダクト12,22A,22Bはダクト自身で位置を保持することは難しいため、ダクトのルートによって適宜支持材で位置を保持することが好ましい。支持材は木材や配管材料やワイヤー等の材料が安価で適している。また、捕集機構16,26は、使わなくなったドラム缶等の容器の上部を切断し、内部に液体を入れて、上部にフィルターを設置して作製することができる。
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、工業プロセスにおけるタンク等の閉鎖容器内から排気される空気中の粒子を効率的に回収できる集塵装置を提供することができる。
【実施例0058】
以下、本発明について、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
(実施例)
実施例では、鉄分を含むスラリーを扱うタンク内壁面のスケール除去作業時に本発明の一態様に係る集塵装置を適用した。実施例で排出される鉄分を含む粒子は非水溶性であるため、水を用いて粒子の捕集を行った。フレキシブルダクトには空調や換気等に一般的に用いられているものを使用した。タンクのノズル部にファンを設置し、フレキシブルダクトとファンの間はブルーシートと養生テープを用いて封止した。また流速を調整するために2本のフレキシブルダクトを使用した(図3参照)。フレキシブルダクトは鋼管足場材とワイヤーで支持した。水を内容する容器にはポリエチレン製のドラム缶を切断し、その下側半分を使用した。
【0060】
(比較例)
比較例では、上記のスケール除去作業時に、従来のフィルター材のみを用いた集塵を行った。
【0061】
本発明に係る集塵装置を使用した集塵では、粒子を液体の水に当てることで運動エネルギーを奪うと共に大部分の粉塵を回収し、一部回収できなかった粉塵だけをフィルターで回収するためフィルターの損傷を軽減することができた。また、本発明に係る集麈装置を使用することで、従来よりもフィルターを長持ちさせることができ、保守の頻度を少なくすることができた。
【0062】
一方で、比較例におけるフィルターを利用した集麈だと、摩耗性の高い研磨剤、剥離した金属粉が風に乗って速度を持ってフィルターに衝突するため、目詰まりに加えてフィルター材の損傷が激しかった。
【0063】
また、実施例におけるタンクは、上部に撹拌機を有しており、撹拌機のギアボックス点検もタンクの固着物除去作業と並行して行われる。ギアボックスの歯車機構が異物を噛みこむと歯車の損傷を引き起こす可能性があるが、本発明に係る集塵装置を用いることで撹拌機周辺で排気される粒子を極小化することができ、ギアボックスのトラブルを未然に防ぐ一助となった。
【0064】
本発明に係る集塵装置は一般的な工場が常備する部材を用いて簡便に組み立てることができ、非定常作業で行われる固着物の除去作業時に排気される粒子を回収することができる。なお、特定化学物質障害予防規則(特化則)などで規制される物質が排気される場合は各規則に応じた粒子回収機構が要求されるため、本発明の限りではない。
【0065】
以上より、本発明の一態様に係る集塵装置を適用することにより、工業プロセスにおけるタンク等の閉鎖容器内から排気される空気中の粒子を効率的に回収できることが実証された。
【0066】
なお、上記のように本発明の一実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0067】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、集塵装置の構成も本発明の一実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10,20 集塵装置、11,21 換気設備、12,22A,22B フレキシブルダクト、13,23 接続アダプター、14,24 液体、15,25 排気用フィルター、16,26 捕集機構、100 閉鎖容器、101 (閉鎖容器の)排気部、102 (閉鎖容器の)吸気部、103,103A,103B (フレキシブルダクトの)排気口、P 粒子、h フレキシブルダクトの排気口と液体の液面との距離、Φ,Φ フレキシブルダクトの排気口の口径
図1
図2
図3