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特開2024-101646カソード仕上機及びこれに用いられる厚み測定器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101646
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】カソード仕上機及びこれに用いられる厚み測定器具
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20240723BHJP
   C25C 1/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C25C7/02 304
C25C1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005666
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 範幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 英和
(72)【発明者】
【氏名】中井 隆行
【テーマコード(参考)】
4K058
【Fターム(参考)】
4K058AA30
4K058BA21
4K058CA04
4K058EB02
4K058EB20
4K058FB01
(57)【要約】
【課題】カソードの種板の厚みを測定する厚み測定器具の検出面上に異物が付着することに起因する測定不良を抑制し、精度の良いカソードを量産可能に仕上げる。
【解決手段】カソードの種板2の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路7に沿って種板2を搬送し、搬送経路7の途中に厚み測定器具4を設け、種板2の内部応力を除去する内部応力除去手段5及び種板2の厚み情報に応じて種板2に溝付け加工を施す溝付け手段6を備え、厚み測定器具4は、搬送経路7を挟んで上下に対称的に配置される検出器11を有し、上側検出器11aで種板の表面との間の距離を検出し、かつ、下側検出器11bで種板2の裏面との間の距離を検出する検出手段10と、検出手段10からの検出情報に基づいて種板2の厚みを算出する厚み算出手段12と、下側検出器11bの検出面に対してエアを吹き付けて検出面上に落下した異物を除去するエア吹付手段13と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードの種板の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路に沿って前記種板を搬送する搬送手段と、
前記搬送経路の途中に設けられ、前記種板の厚みを非接触で測定する厚み測定器具と、
前記厚み測定器具よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記種板の内部応力を除去する内部応力除去手段と、
前記内部応力除去手段よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記厚み測定器具により測定された前記種板の厚みに応じて前記種板に溝付け加工を施す溝付け手段と、
を備え、
前記厚み測定器具は、前記搬送経路を挟んで上下に対称的に配置される検出器を有し、上側に位置する上側検出器で前記種板の表面との間の距離を検出すると共に、下側に位置する下側検出器で前記種板の裏面との間の距離を検出する検出手段と、
前記検出手段からの検出情報に基づいて前記種板の厚みを算出する厚み算出手段と、
前記下側検出器の検出面に対してエアを吹き付けて前記検出面上に落下した異物を除去するエア吹付手段と、を有することを特徴とするカソード仕上機。
【請求項2】
請求項1に記載のカソード仕上機において、
前記検出手段は光学式変位計からなる検出器を用いたものであることを特徴とするカソード仕上機。
【請求項3】
請求項1に記載のカソード仕上機において、
前記エア吹付手段は、前記種板の搬送方向に交差する交差方向に延びるエア配管を有し、このエア配管には供給圧が変化可能なエア供給源を接続すると共に、前記下側検出器の検出面に向けて延びる吹付ノズルを分岐して設けることを特徴とするカソード仕上機。
【請求項4】
請求項3に記載のカソード仕上機において、
エア吹付手段は、前記異物の大きさ、重量を踏まえて当該異物を除去する上で必要な圧縮エアを前記検出面に吹き付けることを特徴とするカソード仕上機。
【請求項5】
請求項4に記載のカソード仕上機において、
前記異物が銅粒子又は銅屑である場合、前記吹付ノズルは、吹出口の口径を0.5ないし1.5mmに設定し、かつ、前記吹出口と前記検出面との間の離間距離を10ないし20mmに設定することを特徴とするカソード仕上機。
【請求項6】
請求項4に記載のカソード仕上機において、
前記異物が銅粒子又は銅屑である場合、前記吹付ノズルは0.5ないし1.0MPaの圧縮エアを吹き付けることを特徴とするカソード仕上機。
【請求項7】
カソードの種板の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路に沿って前記種板を搬送する搬送手段と、
前記搬送経路の途中に設けられ、前記種板の厚みを非接触で測定する厚み測定器具と、
前記厚み測定器具よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記種板の内部応力を除去する内部応力除去手段と、
前記内部応力除去手段よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記厚み測定器具により測定された前記種板の厚みに応じて前記種板に溝付け加工を施す溝付け手段と、
を備えたカソード仕上機に用いられる前記厚み測定器具であって、
前記搬送経路を挟んで上下に対称的に配置される検出器を有し、上側に位置する上側検出器で前記種板の表面との間の距離を検出すると共に、下側に位置する下側検出器で前記種板の裏面との間の距離を検出する検出手段と、
前記検出手段からの検出情報に基づいて前記種板の厚みを算出する厚み算出手段と、
前記下側検出器の検出面に対してエアを吹き付けて前記検出面上に落下した異物を除去するエア吹付手段と、を有することを特徴とする厚み測定器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属分野の電解精製に使用するカソードの種板を仕上げるカソード仕上機に係り、特に、カソードの種板の厚みを測定する厚み測定器具の測定不良を改善することで精度の良いカソードの量産を実現可能とするカソード仕上機及びこれに用いられる厚み測定器具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の電解精製あるいは電解採取に代表される金属電解においては、アノードとなる母板(粗金属板)とカソードを交互に並べて電解槽に供給して電解操業を行っている。例えば、銅の電解精製であれば、カソードと精製粗銅鋳造アノードとを交互に電解槽に供給し通電する。すると、電解の進行につれアノードから銅が溶け出し、この溶け出した銅がカソード上に電着して製品となる電気銅が得られる。
【0003】
かかる金属電解において使用される電力は、アノードとカソードとの距離、つまり、アノードとカソードの間隔に大きく影響される。例えば、アノードとカソードの間隔を狭くすれば、電解液の電気抵抗を小さくできるので、金属電解に使用される電力を小さくできる。しかし、アノードとカソードの間隔を狭くし過ぎれば、電着が進むことによってカソードに電着した金属がアノードと接触する可能性があり、かかる接触(ショート)が生じれば、アノードからカソードに電流が直接流れて電力が空費される。かといって、アノードとカソードの間隔を広くすれば、アノードとカソードの接触は避けることができても、電解液の電気抵抗が大きくなり大きな電力を要してしまう。したがって、アノードとカソードの間隔は、ショートが生じない範囲でできるだけ狭くすることが望ましい。
また、上記金属電解では、複数のアノードと複数のカソードとを交互に並べているが、アノードとカソードの間隔にバラつきがあれば、電解槽内において、アノードとカソードとの間に流れる電流にばらつきが生じる。すると、カソードに電着される金属の状態にバラつきが生じ、製品の品質にもバラつきが生じる可能性がある。したがって、アノードとカソードの間隔は均一にすることが必要である。したがって、電解槽に供給されるカソードの種板には、形状(平坦度など)の整ったものが求められる。
【0004】
金属電解に用いるカソードの種板は、電解精製などの方法でステンレス板等の母板に金属電着させたのち、その母板から剥ぎ取った薄板を使用するのが一般的である。しかし、電着によって作られる薄板からなる種板は、電着歪みや母板から剥ぎ取る時に歪が生じ易い。また、種板は薄いので、運搬時やハンドリング時においても非常に曲がり易い。このように、種板は、その平坦度等の形状を整った状態に維持すること困難であるため、カソード仕上機において、カソードの種板を仕上げる際に内部応力除去処理や溝付け処理等の各種矯正が行われている。
【0005】
例えば特許文献1~3には、カソード仕上機において、カソードにおける種板の形状(平坦度など)を整える技術が開示されている。
特許文献1には、曲りや捩れが生じた電解用種板を、ワークローラ径50mm以下、ワークローラ本数15本以上のローラレベラにて一次矯正し、次いで外周にリング状鍔部を有する溝付けローラにて打出筋を形成し、しかる後外周に環状溝を有する矯正ローラにて二次矯正する電解用種板の歪み矯正方法が開示されている。
特許文献2には、粗銅アノードを陽極に、純銅製種板をカソードに用いて電気分解を行い、該カソード上に銅を電着させて電気銅を製造する方法において、表面に形成された互いに平行に形成された列状の凸部と列状の凹部の位相が隣接する列において縦方向にずれた状態で配列され、さらに隣接する列における隣接する凸部と凹部により形成されるほぼ菱形部分では相互に相対する方向に突出して凹凸形状が形成されている電気銅製造用種板が開示され、この種板を成形するための成形ローラやこの種板を用いて電気銅を製造する方法が開示されている。
特許文献3には、外周面に多数のリング状の鍔部を有する鍔付きローラを間隔を置いて上下に対向して配設した上下一対の成形ローラを複数組有する成形装置にて電気ニッケル用カソードを成形する際、成形ローラのクリアランス、加工溝の本数および位置を適正化して種板を矯正する電気ニッケル用カソードの成形方法が開示されている。
このように、カソードの種板の形状を整えることにより、作製されたカソードの歪を小さくすることが可能である。
【0006】
また、従前のカソード仕上機には、種板を搬送する搬送経路の途中に、種板の厚みを測定するための厚み測定器具が設けられている。この厚み測定器具において測定された種板の厚み情報に基づいて、上下一対の溝付けローラ等の成形ローラのクリアランス(隙間)を調整することで、種板ごとにその種板に最適な変形量を与えることが可能である。
ここで、厚み測定器具としては、測定対象となる種板の表面位置を検出する検出光を放射する放射部と、該検出光が測定対象の種板の表面で反射した反射検出光を受光する受光部とを備える光学式変位計(例えばレーザ変位計)が用いられ、上下1組からなる光学式変位計が種板の搬送経路を上下方向から挟む態様で配置されている。本例では、種板の搬送経路は、種板の表裏面が上下方向に向くように種板を水平姿勢で搬送するようになっているため、厚み測定器具に種板が通過すると、一組の光学式変位計が種板の表裏面の位置情報を取得し、この位置情報に基づいて種板の厚み情報を算出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-176880号公報(実施例,図4
【特許文献2】特開2001-192879号公報(発明の実施の形態,図6
【特許文献3】特開2004-360050号公報(発明の実施の形態,図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したカソード仕上機において、種板の表面上には、種板の表面に付着した銅粒子や、種板の周縁に形成された切れ端(以下、異物という場合がある)が存在している場合がある。そのため、こうした異物が種板から落下して搬送経路の下側に位置する光学式変位計の放射部や受光部に乗っかってしまうと、検出光が遮られてしまい、これに起因して種板の厚みを測定することが困難になるという懸念がある。
このように種板の厚みを測定することが困難になるケースでは、上下一対の溝付けローラ等の成形ローラを用いた矯正処理において、種板ごとに厚みに応じた最適な変形量を与えることができないため、カソード歪を規定の範囲内に抑制することが困難になる。尚、ここでいうカソード歪は、後述するように、支持ロッドに吊手を介して種板を吊り下げた状態のカソードに対し、種板を上下方向又は左右方向の端縁から見たときの種板の表裏面の最大厚み方向寸法δを指す(図9(b)(c)参照)。
【0009】
しかも、正常に種板の厚み測定が行われた結果カソード歪が規定の範囲内となったカソードが殆どのカソード群と、種板の厚み測定を行うことができなかった結果カソード歪が規定の範囲外となったカソードが殆どのカソード群とが混在した状態になるため、1日に生産されるカソード群全体としてのカソード歪のばらつきが極めて大きくなってしまう不都合が生じていた。
こうした不都合を回避するために、種板から落下した銅粒子や切れ端等の異物を定期的に取り除くための清掃を行う必要があった。しかしながら、こうした清掃を行うためには設備を一旦停止する必要があり、その停止した時間は種板の矯正処理が行われないため、その分、カソードの減産になってしまう。だからといって、カソード歪のばらつきが大きい状態で電解槽へのカソードの供給を行うことは、種板電解工程において必要以上に大きな電力を要してしまう原因や、ショートが発生する原因になるうえ、カソードに電着される金属の状態にバラつきが生じ、製品の品質にもバラつきが生じる原因になる。そのため、作業者の手作業でカソード歪の大きいカソードの再矯正を行わなくてはならず、2度手間となっていた。
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、カソードの種板の厚みを測定する厚み測定器具の検出面上に異物が付着することに起因する測定不良を抑制し、精度の良いカソードを量産可能に仕上げるカソード仕上機及びこれに用いられる厚み測定器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の技術的特徴は、カソードの種板の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路に沿って前記種板を搬送する搬送手段と、前記搬送経路の途中に設けられ、前記種板の厚みを非接触で測定する厚み測定器具と、前記厚み測定器具よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記種板の内部応力を除去する内部応力除去手段と、前記内部応力除去手段よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記厚み測定器具により測定された前記種板の厚みに応じて前記種板に溝付け加工を施す溝付け手段と、を備え、前記厚み測定器具は、前記搬送経路を挟んで上下に対称的に配置される検出器を有し、上側に位置する上側検出器で前記種板の表面との間の距離を検出すると共に、下側に位置する下側検出器で前記種板の裏面との間の距離を検出する検出手段と、前記検出手段からの検出情報に基づいて前記種板の厚みを算出する厚み算出手段と、前記下側検出器の検出面に対してエアを吹き付けて前記検出面上に落下した異物を除去するエア吹付手段と、を有することを特徴とするカソード仕上機である。
【0012】
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えたカソード仕上機において、前記検出手段は光学式変位計からなる検出器を用いたものであることを特徴とするカソード仕上機である。
本発明の第3の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えたカソード仕上機において、前記エア吹付手段は、前記種板の搬送方向に交差する交差方向に延びるエア配管を有し、このエア配管には供給圧が変化可能なエア供給源を接続すると共に、前記下側検出器の検出面に向けて延びる吹付ノズルを分岐して設けることを特徴とするカソード仕上機である。
本発明の第4の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えたカソード仕上機において、エア吹付手段は、前記異物の大きさ、重量を踏まえて当該異物を除去する上で必要な圧縮エアを前記検出面に吹き付けることを特徴とするカソード仕上機である。
本発明の第5の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えたカソード仕上機において、前記異物が銅粒子又は銅屑である場合、前記吹付ノズルは、吹出口の口径を0.5ないし1.5mmに設定し、かつ、前記吹出口と前記検出面との間の離間距離を10ないし20mmに設定することを特徴とするカソード仕上機である。
本発明の第6の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えたカソード仕上機において、前記異物が銅粒子又は銅屑である場合、前記吹付ノズルは0.5ないし1.0MPaの圧縮エアを吹き付けることを特徴とするカソード仕上機である。
【0013】
本発明の第7の技術的特徴は、カソードの種板の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路に沿って前記種板を搬送する搬送手段と、前記搬送経路の途中に設けられ、前記種板の厚みを非接触で測定する厚み測定器具と、前記厚み測定器具よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記種板の内部応力を除去する内部応力除去手段と、前記内部応力除去手段よりも前記種板の搬送方向下流側に設けられ、前記種板を挟持して搬送し、前記厚み測定器具により測定された前記種板の厚みに応じて前記種板に溝付け加工を施す溝付け手段と、を備えたカソード仕上機に用いられる前記厚み測定器具であって、前記搬送経路を挟んで上下に対称的に配置される検出器を有し、上側に位置する上側検出器で前記種板の表面との間の距離を検出すると共に、下側に位置する下側検出器で前記種板の裏面との間の距離を検出する検出手段と、前記検出手段からの検出情報に基づいて前記種板の厚みを算出する厚み算出手段と、前記下側検出器の検出面に対してエアを吹き付けて前記検出面上に落下した異物を除去するエア吹付手段と、を有することを特徴とする厚み測定器具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の技術的特徴によれば、カソードの種板の厚みを測定する厚み測定器具の検出面上に異物が付着することに起因する測定不良を抑制し、精度の良いカソードを量産可能に仕上げることができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、既存の光学系変位計を検出器として利用することで、厚み測定器具を簡単に構築することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、本構成を有しない場合に比べて。厚み測定器具にエア吹付手段を簡単に付加することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、下側検出器の検出面に落下した異物を効率良く除去可能なエア吹付手段を簡単に構築することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、本構成を有しない場合に比べて、吹付ノズルの行成を工夫することで、下側検出器の検出面上に落下した銅粒子または銅屑からなる異物の除去性能を良好に保つことができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、本構成を有しない場合に比べて、吹付ノズルから吹き付けられる圧縮エアの圧力を工夫することで、下側検出器の検出面上に落下した銅粒子または銅屑からなる異物の除去性能を良好に保つことができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、カソードの種板の厚みを測定する厚み測定器具の検出面上に異物が付着することに起因する測定不良を抑制し、精度の良いカソードを量産可能に仕上げるカソード仕上機を簡単に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明が適用されたカソード仕上機の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す厚み測定器具の要部を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係るカソード仕上機の全体構成を示す説明図である。
図3】(a)は実施の形態1で用いられる厚み測定器具の要部を示す斜視図、(b)は(a)に示す厚み測定器具の詳細を示す説明図、(c)はエアノズルの構成例を示す説明図である。
図4】(a)は上側光学式センサの構成例を示す説明図、(b)は受光素子の構成例を示す説明図である。
図5】(a)は実施の形態1で用いられるレベラーの全体構成を示す説明図、(b)はその動作原理を示す説明図である。
図6】(a)は図5(a)中VI方向から見た矢視図、(b)はレベラーの下部ユニットの構成例を示す説明図である。
図7】(a)は実施の形態1で用いられる溝成形ユニットの要部を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は溝付けローラの要部を示す説明図である。
図8】(a)は図7(a)中VIII方向から見た矢視図、(b)は溝成形ユニットにより成形された溝付きの種板の平面説明図である。
図9】(a)はカソード仕上機によって作製されたカソードの構成例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C方向から矢視図である。
図10】比較例1で用いられる厚み測定器具の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用されたカソード仕上機の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、カソード仕上機1は、カソードの種板2の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路7に沿って種板2を搬送する搬送手段3と、搬送経路7の途中に設けられ、種板2の厚みを非接触で測定する厚み測定器具4と、厚み測定器具4よりも種板2の搬送方向下流側に設けられ、種板2を挟持して搬送し、種板2の内部応力を除去する内部応力除去手段5と、内部応力除去手段5よりも種板2の搬送方向下流側に設けられ、種板2を挟持して搬送し、厚み測定器具4により測定された種板2の厚みに応じて種板2に溝付け加工を施す溝付け手段6と、を備え、厚み測定器具4は、図1(b)に示すように、搬送経路7を挟んで上下に対称的に配置される検出器11(具体的には11a,11b)を有し、上側に位置する上側検出器11aで種板の表面との間の距離を検出すると共に、下側に位置する下側検出器11bで種板2の裏面との間の距離を検出する検出手段10と、検出手段10からの検出情報に基づいて種板2の厚みを算出する厚み算出手段12と、下側検出器11bの検出面に対してエアを吹き付けて検出面上に落下した異物wを除去するエア吹付手段13と、を有するものである。
【0017】
このような技術的手段において、カソード仕上機1は、図1(a)に示す構成要素に限られるものではなく、搬送手段3に種板2を供給する種板供給手段や、溝付け手段6を経た種板を電解槽での使用を可能にするように吊手付きのカソードに成形する吊手成形手段など、仕上げに必要な他の要素を備えてもよいことは勿論である。また、種板2の裁断やカソード歪の測定などを行う機能を有していてもよい。
また、搬送手段3は種板2を搬送するものであれば対構成の搬送ローラ、ローラコンベア、搬送ベルト等適宜選定して差し支えない。図1(a)に示すカソード仕上機1では、ローラコンベア状の搬送部材3aが用いられる。
更に、本例では、搬送手段3は種板2の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路7に沿って種板2を搬送する領域を含むものであればよく、全てが水平の搬送経路7である必要はない。本例では、厚み測定器具4、内部応力除去手段5及び溝付け手段6は水平の搬送経路7に設けられている。
【0018】
また、本例において、図1(b)に示す厚み測定器具4は種板2の厚みを非接触で測定するものを広く含む。但し、種板2の厚みを非接触で直接測定することは難しいため、本例では、水平の搬送経路7に沿って搬送される種板2を挟んで上下に対称的に配置される検出器11を有し、上側検出器11a及び下側検出器11bで種板2の表裏面の位置を検出し、上側検出器11a及び下側検出器11bの相対位置関係と種板2の表裏面の位置とに基づいて、厚み算出手段12で種板2の厚みを算出する方式が採用されている。
更に、本例では、水平の搬送経路7の下側には下側検出器11bが検出面を上に向けて配置されているため、種板2の金属粒子や切れ端等の異物wが下側検出器11bの検出面上に落下し易い構造になっている。ここで、下側検出器11bの検出面上に異物wが落して堆積下すると、異物wが下側検出器11bの検出面から出射される出射光や検出面に入射される入射光を一部遮る作用を奏し、異物wによる遮光作用によって下側検出器11bによる種板2の裏面位置の検出に支障をきたす懸念がある。
本例では、このような事態を踏まえ、厚み測定器具4には、下側検出器11bの検出面にエアを吹き付けるエア吹付手段13が設けられている。このエア吹付手段13からのエアが下側検出器11bの検出面に吹き付けられると、検出面上の異物wは除去され、異物wによる検出面の遮光作用は解消される。これにより、下側検出器11bによる種板2の裏面位置の検出に支障をきたすことがなくなり、厚み測定器具4による種板2の厚み測定が測定不良になるケースが抑制される。
【0019】
また、内部応力除去手段5は、種板2を挟持して搬送し、種板2の内部応力を除去するものであれば、適宜選定して差し支えない。具体的には、種板2に大きな反りや凹凸差があると、カソード歪が規定の範囲外になる虞れがあるため、これらの変形を小さくするために、内部応力除去手段5では、種板2の変形に伴う内部応力を除去する処理を実施するようにすればよい。
更に、内部応力除去手段5を経た種板2はカソード歪が小さい平坦形状に矯正されるが、この種板2は面剛性が弱く、吊手に吊り下げてカソードとして使用すると、カソードの面が不安定になり易い傾向が見られる。つまり、前段の内部応力除去手段5だけでは、吊り下げられたカソードの鉛直性が十分に担保されないため、追加の矯正が必要であることに加え、電解が進み、カソードの表裏に例えば銅が電着し厚みができると、表裏の電着厚みの差により応力が生ずるので、この応力に対抗して変形を抑制する必要がある。
このため、本例では、溝付け手段6を採用し、種板の搬送方向に沿って延びる溝(凹溝、凸溝)を適宜間隔毎に複数形成し、種板の平坦度を維持し、かつ、面剛性を高めるようにすればよい。特に、本例では、溝付け手段6は、種板2ごとに厚み測定器具4にて測定された厚み情報に基づいて溝付け加工条件を選定することから、厚み測定器具4による測定不良が抑制されることは、種板2に対する溝付け加工が種板2の厚みに応じて適切に実施され、その分、カソード歪の小さい精度の良いカソードが作製されることになる。
【0020】
次に、本実施の形態に係るカソード仕上機1の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、厚み測定器具4の代表的態様としては、検出手段10が光学式変位計からなる検出器11を用いた態様が挙げられる。
また、エア吹付手段13の代表的態様としては、図1(b)に示すように、種板2の搬送方向に交差する交差方向に延びるエア配管13aを有し、このエア配管13aには供給圧が変化可能なエア供給源13bを接続すると共に、下側検出器11bの検出面に向けて延びる吹付ノズル13cを分岐して設ける態様が挙げられる。ここで、下側検出器11bが種板2の搬送方向に交差する方向に複数設けられている場合には、複数の下側検出器11bの検出面に向けて複数の吹付ノズル13cを分岐するようにすればよい。また、吹付ノズル13cからの圧縮エアは常時吹付けるようにしてもよいし、定期的に吹き付けるようにしてもよいし、あるいは、下側検出器11bの検出面の汚れを図示外の汚れ検出器で検出し、汚れ検出器で検出面が汚れるタイミングで圧縮エアを吹き付けるようにしてもよい。
【0021】
更に、エア吹付手段13の好ましい態様としては、異物wの大きさ、重量を踏まえて当該異物wを除去する上で必要な圧縮エアを検出面に吹き付ける態様が挙げられる。このとき、圧縮エアの吹付圧を大きく設定しすぎると、検出面上の異物wが飛び過ぎ、カソード仕上機1の周辺環境を汚す懸念があるため、検出面上の異物wが除去されて落下する軌跡が想定できる程度の吹付圧を選定し、除去された異物wの落下軌跡付近に予め回収手段15を設置し、除去した異物wを回収することが好ましい。
また、異物wが銅粒子又は切れ端等の銅屑である場合には、銅粒子は大きさが2mm~5mm、重量が0.3g~5gであり、また、銅屑は幅が2mm~5mm、厚みが2mm~5mm、長さが5mm~100mm、重量が3g~25gであることが経験的に判明している。この点を踏まえると、吹付ノズル13cの好ましい態様としては、吹出口の口径を0.5ないし1.5mmに設定し、かつ、吹出口と検出面との間の離間距離を10ないし20mmに設定する態様、あるいは、0.5ないし1.0MPaの圧縮エアを吹き付ける態様が好ましい。
【0022】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-カソード仕上機の全体構成-
図2は実施の形態1に係るカソード仕上機の全体構成を示す。
同図において、カソード仕上機1は、図示外の種板電解工程から得られた種板2が収容されたパレット20を搬送するパレットコンベア21の近傍に設置されている。
本例では、カソード仕上機1は、種板2を移載する種板移載装置22と、移載された種板2を搬送するローラコンベア23と、種板2を送り込む送り込みローラ24と、種板2の表面を平滑にする表面平滑ユニット25と、種板を送り込む送り込みローラ26と、種板2の厚みを測定する厚み測定器具4と、種板2の内部応力を除去する内部応力除去手段としてのレベラー50と、レベラー50を経た種板2に溝付け加工を施す溝付け手段としての溝成形ユニット80と、溝成形ユニット80を経た種板2を図示外の電解槽で使用可能な吊り下げ式のカソードSに成形するカソード成形ユニット(図示せず)と、を備えている。
【0023】
本例において、パレットコンベア21は、パレット20内に曲がりや捩れが生じたカソードの種板2を積載して所定位置まで搬送するコンベアである。尚、所定寸法の種板2を形成する方法としては、バリが少なく平滑な板となった種板が得られるものであれば、特には限定されない。
本例において、種板2は、例えば縦幅が約1000~1150mm、横幅が約1000~1150mm、厚さが約0.6~1.0mmの金属板である。電気銅の作製に使用される場合には、種板2には純度が99.99%の電気銅が使用される。
ここで、種板電解工程とは、例えば、電気銅を作製する場合であれば、純度が99.99%の電気銅の種板を得る工程を意味している。この種板電解工程では、純度98%程度の粗銅であるアノード(陽極)とステンレス製やチタン製の母板(陰極)とを、電解液を満たした電解槽に交互に供給した状態で実施される。この状態で、電解槽に対する電解液の給液を行いつつ、例えば、電流密度250A/m程度となるように両電極間に電流を供給すれば、純度が99.99%の電気銅の種板を得ることができる。この種板電解工程で使用される電解液はとくに限定されないが、例えば、膠(にかわ)、アビトン等が添加された銅の硫酸溶液が好ましい。
【0024】
本例において、種板移載装置22は、架台22a上に流体圧水平シリンダにて横行する移動台22bに流体圧垂直シリンダにて上下動可能に設けられたバキューム式吸着台22cにてパレットコンベア21のパレット20内の種板2を一枚ずつ吸着してローラコンベア23に移載するものである。更に、ローラコンベア23は、バキューム式移載装置22にて移載された種板2を矯正工程へ搬送するコンベアであり、パレットコンベア21に対し略直交する方向に配置され、種板2の表裏面が上下方向を向く水平の搬送経路7に沿って種板2を搬送するようになっている。
更にまた、表面平滑ユニット25は、種板2の表面に電解時に精製された粒状の突起あるいは返り等を押し潰して表面を平滑にする一対の平滑ローラ25a,25bを有し、一対の平滑ローラ25a,25bを予め決められた間隔を隔てて上下に配置した構造になっている。
【0025】
また、厚み測定器具4は、レベラー50、溝形成ユニット80による種板2の形状を矯正する矯正工程に至る前に、種板2の厚みを非接触で測定するものである。
更に、レベラー50は、種板2を挟持して搬送する上下千鳥状に配設した多数のワークローラ51,52を有し、種板2がワークローラ51,52間を通過することで、種板2の反りや凹凸差の変形を小さくし、変形に伴う内部応力を除去するようにするものである。
更にまた、溝成形ユニット80は、複数段(本例では3段)の上下一対の溝成形ローラ81~83を有し、種板2がこれらの溝成形ローラ81~83を通過することで、種板2の搬送方向に沿う溝を複数成形するものである。そして、本例では、溝成形ローラ81~83による溝成形処理(溝付け加工)は、厚み測定器具4により測定した種板2の厚み情報に基づいて溝成形処理条件を選定し、実施される。
【0026】
また、カソード成形ユニットは、図9(a)に示すように、レベラー50及び溝成形ユニット80を経て形状が矯正された種板2の一端縁に輪状の吊手101を取付け、この吊手101に電極として機能する板状の支持ロッド102を挿通させ、電解槽で使用可能なカソードSとして成形するものである。
【0027】
-厚み測定器具-
本例において、厚み測定器具4は、図3(a)(b)に示すように、図1(b)に示す検出手段10として、水平の搬送経路7を挟んで上下に対称的に配置される検出器としての光学式センサ30を有し、上側に位置する上側光学式センサ30aで種板2の表面との間の距離を検出すると共に、下側に位置する下側光学式センサ30bで種板2の裏面との間の距離を検出するものである。
本例では、光学式センサ30(30a,30b)は、種板2の搬送方向に交差する幅方向に間隔を置いて複数(本例では中央、幅方向左右の3箇所)設けられている。また、光学式センサ30(30a,30b)は、焦点距離等の光学特性を考慮し、搬送経路7の中心線Lから所定距離(本例では例えば80mm±15mm)離れた位置に検出面を有するように配置されている。
【0028】
<光学式センサの構成例>
本例において、光学式センサ30は上下で同様の構成を有しているため、ここでは上側光学式センサ30aを例に挙げて説明する。
ここで、光学式センサ30(本例では上側光学式センサ30a)は、例えば図4(a)に示すように、検出光Dを放射する放射部31と、搬送ライン(搬送経路7の中心線Lに相当)上を搬送される測定対象の種板2の表面で該検出光Dが反射した反射検出光Rを受光する受光部35とを備えている。
同図において、放射部31は光源32及び投光レンズ33から主に構成され、受光部35は受光素子36及び受光レンズ37から主に構成される。これらを図4(a)に示すように配設することで、三角測量法の原理により搬送ライン上を搬送される種板2の表面までの距離を測定することができる。
【0029】
すなわち、測定対象の種板2の表面から同じ距離h1で離間する投光レンズ33の中心及び受光レンズ37の中心が互いに離間する距離をQとし、受光レンズ37の中心が受光素子36の受光面から離間する距離をFとし、受光レンズ37の中心から受光素子36の受光面に下した垂線が該受光面に交わる点から反射検出光Rが該受光面に入射する位置までの距離をXとしたとき、距離h1は以下に示す式1から求めることができる。
[式1] h1=(F/X)・Q
【0030】
上記式1の4つの変数のうち、Q及びFは光学式センサ30の構造で定まる値であるので、距離h1は距離Xから一意的に求めることができる。尚、上記距離Xの具体的な算出方法については、後述する。受光素子36からは反射検出光の入射位置に応じた出力値が出力されるので、図3(b)に示すように、制御装置40に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の制御要素によって、この受光素子36から出力される出力値を所定のアルゴリズムに沿って演算処理することで、搬送ライン上を搬送される種板2の表面までの距離h1(上側離間距離という)を算出することができる。
同じように、下側光学式センサ30bは当該センサの検出面と種板2の裏面との間の距離h2(下側離間距離という)を算出することが可能である。
【0031】
<距離Xの算出方法>
さて、本例において、光学式センサ30を構成する受光部35は、例えばPSD(Position Sensitive Detector)からなる受光素子36と、光学式センサ30の光源32から発振された検出光Dとしてのレーザー光が、の表種板2面で反射した後に再び光学式センサ30に戻ってきたレーザー光である反射検出光Rを受光素子36にスポット光として集光させる受光レンズ37とで構成されている。ここで、受光部35には、特定の波長の光のみを通過させる干渉フィルタを取り付けてもよい。例えば検出光Dに採用した波長の光のみを通過させる干渉フィルタを取り付けることで、スポット光以外の光の入射を効果的に抑制することができる。
尚、図4(a)において、符号34は光源32を駆動する駆動回路、符号38,39は受光素子36に接続され、距離Xに応じて変化する電流差分(Ix1-Ix2)を増幅するアンプである。
【0032】
上記のPSDは、高抵抗半導体基板の片面又は両面に形成された均一な抵抗層の両端に、信号取り出し用の一対の出力電極が設けられた構造を有している。これにより、該抵抗層の表面にスポット光として反射検出光Rが入射すると、その入射位置に光量に比例した電荷が発生する。発生した電荷は光電流として抵抗層に到達し、上記の一対の出力電極までのそれぞれの距離に逆比例して分割され、出力電極から取り出される。例えばPSDが図4(b)に示す構造(PIN型フォトダイオード)を有する場合は、反射検出光Rの入射位置と、出力電極X、Xとの出力電流IX1,IX2との間には下記式2及び式3に示す関係が成立し、これら2つの式から導くことのできる式4に基づいて、光量及びその変化とは無関係にスポット光の入射位置Xを求めることができる。これにより、式1のXを算出することができる。ここで、IX1は出力電極Xの出力電流、IX2は出力電極Xの出力電流、Iは全光電流(IX1+IX2)、Lは受光面の長さ、XはPSD
の電気的中心位置から入射位置までの距離をそれぞれ表している。
[式2] IX1=((L/2-X)/L)×I
[式3] IX2=((L/2+X)/L)×I
[式4] (IX2-IX1)/(IX1+IX2)=2×X/L
【0033】
<種板の厚み算出手法>
したがって、図3(b)に示すように、制御装置40のCPUに光学式センサ30の間の離間距離G(センサ間離間距離という)を記憶しておけば、この記憶したセンサ間離間距離Gと、式1及び式4に基づいて算出した上側離間距離h1及び下側離間距離h2とを用いて、以下に示す式5から、種板の厚みtを算出することができる。
[式5] t=G-(h1+h2)
【0034】
<エア吹付機構>
更に、本実施の形態においては、種板2が厚み測定器具4を通過するとき、種板2の表裏面に付着していた異物w(本例では銅粒子や種板2の周縁に残存する切れ端等の銅屑)が下側光学式センサ30bの検出面上に落下して堆積する懸念がある。この場合、下側光学式センサ30bによる検出精度が不良になってしまうため、下側光学式センサ30bの検出面を清掃して堆積した異物wを取り除くことが必要になるが、異物wの清掃に伴い、カソード仕上機1の設備を一旦停止させなければならない。また、下側光学式センサ30bによる検出精度を不良のままにすると、厚み測定器具4による種板2の厚み測定値が不正確になってしまうため、後述するように、種板2の厚みに応じて種板2の形状を矯正する溝成形ユニット80による種板2の溝付け加工が適切に実施されず、作業者の手作業によるカソードの再矯正につながる懸念がある。
このため、本例では、下側光学式センサ30bは、図3(a)(b)に示すように、放射部31及び受光部35の検出光が通過する検出面に対して圧縮エアを吹き付けるエア吹付機構41を備えている。
このようなエア吹付機構41を備えることで、下側光学式センサ30bの検出面上に異物wが落下したとしても、検出面上に異物wが堆積することを防止することができる。これにより、異物wの清掃に伴う設備停止が不要になるうえ、作業者の手作業による再矯正が不要になる。
【0035】
本例において、エア吹付機構41は、下側光学式センサ30bの下部領域を種板2の裏面と平行に配置され、かつ、種板2の搬送方向に交差する方向に延びるエア配管としてのエアダクト42を有している。このエアダクト42は一端が開口し、他端部が塞がれた筒状に構成されており、エアダクト42の一端の開口にはエア供給源として例えばエアコンプレッサ43が連通接続されると共に、このエアコンプレッサ43は圧縮エアの供給圧を可変に選定できるようになっている。
更に、エアダクト42には複数の下側光学式センサ30bに対応した箇所に夫々通孔が設けられ、各通孔には夫々吹付ノズルとしてのエアノズル44(具体的44a~44c)が連通接続されている。各エアノズル44は複数の下側光学式センサ30bに対応して配置され、エアダクト42から略鉛直方向に延びる直線ノズル部45と、直線ノズル部45の先端から1/4円弧状に湾曲する湾曲ノズル部46とを有し、湾曲ノズル部46は下側光学式センサ30bの検出面Hに向けて圧縮エアを吹き付けるようになっている。ここで、エアノズル44から下側光学式センサ30bの検出面Hに対する圧縮エアの吹付方向は適宜選定して差し支えないが、本例では、種板2の搬送方向とは反対側の方向に向かって下側光学式センサ30bの検出面Hに沿う方向に選定されている。
【0036】
このとき、本例では、エアノズル44からの圧縮エアの吹付圧は、検出面上に落下した異物14を除去して落下させる程度に設定するようにすれば、下側光学式センサ30bの検出面Hに落下した異物wにエアノズル44から圧縮エアが吹き付けられたとしても、検出面H上の異物が遠くに飛散して浮遊することは避けられ、所定の落下軌跡に沿って下方へと落下するものと推測される。
このため、本例では。下側光学式センサ30bの下方には、検出面Hから除去されて落下した異物wが回収可能な回収容器47が配設されている。
【0037】
<エア吹付機構の好ましい態様>
(1)圧縮エアの吹付圧
本例では、圧縮エアの吹付圧は0.5~1.0MPaであることが好ましい。
ここで、0.5MPaより圧力が低くなると銅粒や種板2の切れ端を圧縮エアで吹き飛ばすだけの風力がないことからブローで除去できず、一方1.0MPaよりも圧力が高くなると銅粒が大気中に勢いよく飛散し周辺に散乱する。そのため、圧縮エアの圧力は0.5MPa~1.0MPaであることが望ましい。
【0038】
(2)圧縮エアの吹付頻度
圧縮エアの吹付頻度としては多い方がよいが、銅粒や切れ端が下側光学式センサ30bの検出面H上に載る頻度が特定できないため、常時吹き付けて常に銅粒や切れ検出面H上にない状態を作ることが好ましいが、一定時間毎に高頻度で吹き付けるようにしてもよい。あるいは、一枚毎の厚み測定結果を監視し、測定不良の発生の都度、エアダクト42に設けられた自動弁を操作して圧縮エアを吹き付ける機構を設けてもよい。圧縮エアの種類は銅粒や種板2の切れ端を圧縮エアの流れによって除去できるものであれば計装用圧縮エア、水分や油分を分離したコンプレッサの圧縮エアを問わず使用することができる。また、圧縮エアを吹き付けたに検出面Hに粉塵や油等の汚れが付かないようにフィルタ等の清浄設備を通過させた圧縮エアが好ましい。
【0039】
(3)エアノズルの口径、レイアウト
図3(c)に示すように、エアノズル44の口径は0.5~1.5mmとし、下側光学式センサ30bの検出面Hとエアノズル44の先端との間の距離eは10~20mmが好ましい。
ここで、0.5mmより口径が小さくなるとエアノズル44の抵抗によりブロー量が少なくなるとともに、検出面Hより20mm以上離すと圧縮エアの吹き飛ばす力が拡散してしまうため、重量のある銅粒が一部ブローで除去できず、一方1.5mmよりも口径が大きくかつ検出面Hとの距離eが10mmより近くなると、銅粉が勢いよく飛散し周辺に散乱してしまう。また10mmよりも近い場合にはエアノズル44の先端から放出された圧縮エアの噴射角度が狭く、検出面H全体を清掃することが出来ない。そのため、圧縮エアのエアノズル44先端形状は扁平でも構わないが口径は0.5mm~1.5mmで下側光学式センサ30bの検出面Hから10~20mm離した位置に設置することが望ましい。
【0040】
(4)エアノズルによる圧縮エアの吹付方向
エアノズル44の形状としては、図3(c)に仮想線で示すように、湾曲ノズル部46を略U状に湾曲させ、検出面Hに対し斜め上方から圧縮エアを吹き付けるようにしてもよい。この場合、図3(c)に実線で示すエアノズル44を用いた場合に比べて、圧縮エアが斜め下方に吹き付けられることから、検出面Hから除外された異物14が重力方向に向けて落下し易くなり、その分、回収容器47に異物14を回収し易くなる点で好ましい。
【0041】
-レベラー-
本例において、レベラー50は、図5及び図6に示すように、種板2に直接接触し種板2を挟持して矯正する複数のワークローラ51,52を備えている。この複数のワークローラ51,52は、上下に千鳥状に配置されており、少なくとも種板2の搬送方向に交差する幅方向寸法よりも長い寸法で連続的に延びるローラ本体を有している。
尚、レベラー50において種板1を搬送する搬送速度は特に限定されない。希望する処理量(つまりカソードの作製量)に応じて都度設定すればよい。レベラー50における種板2の搬送速度は、例えば、25~35m/分の範囲に設定される。
【0042】
また、種板2は、その上下方向が複数のワークローラ51,52によって種板2を搬送する方向と一致するように、上下のワークローラ51,52間に送り込まれる。上下のワークローラ51,52間に送り込まれた種板2は、上下のワークローラ51,52間を移動する間に、複数のワークローラ51,52で繰り返し板厚方向に曲げられるので、搬送方向における種板2の反りや凹凸差を小さくすることができる。つまり、種板2でカソードを成形したときに、上下方向の反りや凹凸差を小さくすることができる。
【0043】
本例において、レベラー50は、ワークローラ51,52の種板2とは反対側、つまり、ワークローラ51,52が種板1と接触する側の反対側に設けられるバックアップローラ53,54を備えている。ここで、上方のワークローラ51であれば、その上方にバックアップローラ53が設けられ、下方のワークローラ52であれば、その下方にバックアップローラ54が設けられる。
本例において、下方のバックアップローラ54は、バックアップローラアッセンブリ60の構成要素となっている。具体的には、バックアップローラアッセンブリ60は、ワークローラ51,52によるローラ押し込み量を調節するユニットであり、複数のバックアップローラ54と、支持部材62と、高さ調節機構63と、を備えている。
尚、ローラ押し込み量とは、上段の各ワークローラ51と種板2が接触する点を繋いで形成される第1接触面A1と、下段の各ワークローラ52と種板2が接触する点を繋いで形成される第2接触面A2と、の間の距離Wを示す(図5(b)参照)。
【0044】
本例において、支持部材62は、レベラー50における種板1の搬送方向に垂直な方向の断面が凹形状に形成された部材であり、矩形状の底板62aと、種板2の搬送方向に沿う一対の側板62bと、種板2の搬送方向に交差する方向の一対の端部壁64dとを有している。そして、バックアップローラ61は、その両端部が回転可能に支持部材62の一対の側板62bに支持されている。
高さ調節機構63は、支持部材62を昇降させる機能を有しており、高さ調節機構63によって支持部材62の高さを調節することによって、ローラ押し込み量Wを調節することができるようになっている。具体的には、支持部材62は、その下面が傾斜面、具体的には、図5(a)では右から左に下傾した傾斜面となっており、高さ調節機構63は、レベラー50の基台64の上面と支持部材62の傾斜面との間に配置された楔形の移動部材63aを備えている。この移動部材63aには、レベラー50における種板1の搬送方向と平行にネジ孔63hが形成されており、このネジ孔63hには、ネジ軸63bの先端に形成された雄ネジが螺合している。このネジ軸63bは、その基端部が基台64に立設された保持部材63cに回転可能に保持されている。したがって、図示外のハンドルを回転させてネジ軸63bを回転させれば、移動部材63aを種板1の搬送方向に沿って移動させることができる。すると、移動部材63aを支持部材62の傾斜面に接近する方向(つまり図5(a)では左方向)に移動させることにより、支持部材62を上昇させることができる。反対に、移動部材63aを支持部材62の傾斜面から離間する方向に移動させることにより、支持部材62を下降させることができる。つまり、ネジ軸63bを回転させれば、ローラ押し込み量Wを調節することができるようになっている。
尚、高さ調節機構63の構成は、支持部材62を昇降させてローラ押し込み量Wを調節できる構成であればよく、上述した構成に限定されない。
【0045】
<ローラ押し込み量について>
本例において、ローラ押込み量Wは特に限定されないが、種板2の搬入方向入口側が大きく、出口側が小さくなるように調整することが好ましい。第1接触面A1と第2接触面A2が一致する場合を基準、つまり、距離W=0とする。すると、第1接触面A1に対して第2接触面A2が下方に位置する場合には、距離Wはプラス量として規定され、第1接触面A1に対して第2接触面A2が上方に位置する場合には、距離Wはマイナス量として規定される。つまり、この距離Wを調整することによって、種板2の内部応力を効果的に除去することが可能である。例えば、ローラ押し込み量Wは、種板2の基準板厚が0.5~1.0mmの範囲である場合には、入口側で-2.0~0.0mm、出口側で0.5~1.5mmの範囲に設定することができる。
【0046】
また、本例では、支持部材62は断面が凹形状の空間部62sを備えており、種板2がレベラー50を通過するときに、種板2の表面から剥離した異物(同粒子や切り端等の銅屑)が支持部材62内に落下する懸念がある。このため、支持部材62内に落下した異物をレベラー50外に排出するための異物除去機構70を備えるようにすることが好ましい。
異物除去機構70は、例えば図5(a)及び図6(b)に示すように、支持部材62の端部、例えば支持部材62の種板2の搬送方向の排出側の端部にノズル71を有し、このノズル71は端部壁62dの開口62hを通して、その噴射口を支持部材62の空間部62sに向けた状態で設置されている。このノズル71には、エアダクト72を介して図示外の圧縮エア供給装置と接続されている。この圧縮エア供給装置から圧縮エアをノズル71に供給すれば、ノズル71から空間部62s内に連続して又は間欠的に圧縮エアを吹き出すようにすることができる。
更に、支持部材62の種板2の搬送方向の挿入側の端部には回収シュート75が設けられ、支持部材62の端部壁62dの開口62hを通じて支持部材62の空間部62sに連通している。このため、支持部材62内に落下した異物は圧縮エアにて回収シュート75側に排出され、回収シュート75に回収することが可能である。
尚、前述した厚み測定器具4のエア吹付機構41のエアコンプレッサ43については、図示外の圧縮エア供給装置を共用することも可能である。また、本例では、図6(b)に示すように、開口62hは端部壁62dにおいて部分的に開設された態様として例示されているが、これに限られるものではなく、端部壁62dの全面が開設された態様であってもよい。
【0047】
-溝成形ユニット-
本例において、溝成形ユニット80は、図7(a)に示すように、レベラー50による形状の矯正を経ることで、内部応力が除去された種板2に複数の溝gを形成するものである。具体的には、種板2を搬送しながら、種板2の搬送方向と平行な複数本の溝gを種板2に形成する。この溝成形ユニット80は、複数段(本例では3段)の溝成形ローラ81~83を備えている。これらの溝成形ローラ81~83は、いずれも上下一対の溝付けローラ81a~83a,81b~83bで構成されている。
尚、溝成形ローラ81~83において、種板2を搬送する搬送速度は特に限定されない。カソードの作製量に応じて適宜設定すればよく、例えば、25~35m/分に設定することができる。
【0048】
<溝成形ローラの構成例>
本例において、前段の溝成形ローラ81は、図7(a)~(c)に示すように、上下一対の溝付けローラ81a,81bのローラ本体84の中央付近領域にリング状の鍔部85を所庭間隔毎に3つ設け、各鍔部85間には種板2の厚みに応じて選定されるクリアランスCLを確保するようになっている。そして、本例では、溝付けローラ81a,81bは、鍔部85のうちいずれかの鍔部85には周面全域に山型状の凸部88を有する山鍔部85uとし、残りの鍔部85には周面全域に谷型状の凹部89を有する谷鍔部85dとしたものである。本例では、上側溝付けローラ81aは、真中の鍔部85が山鍔部85uとして構成され。その両側に位置する鍔部85が谷鍔部85dとして構成されている。これに対し、下側溝付けローラ81bは、上側溝付けローラ81aとは逆に、真中の鍔部85が谷鍔部85dとして構成され、その両側に位置する鍔部85が山鍔部85uとして構成されている。
【0049】
更に、中段の溝成形ローラ82は、図7(a)~(c)に示すように、上下一対の溝付けローラ82a,82bのローラ本体84の中央付近領域に隣接する外側領域に二つずつ合計四つのリング状の鍔部86を設け、四つのいずれかの鍔部86には周面全域に山型状の凸部88を有する山鍔部86uとし、残りの鍔部86には周面全域に谷型状の凹部89を有する谷鍔部86dとしたものである。本例では、上側溝付けローラ82aは、軸方向中央寄りに位置する二つの鍔部86が山鍔部86uとして構成され、その外側に位置する二つの鍔部86が谷鍔部86dとして構成されている。尚、下側溝付けローラ82bは、上側溝付けローラ82aとは逆の位置関係になるように、山鍔部86u又は谷鍔部86dを備えている。
【0050】
また、後段の溝成形ローラ83は、図7(a)~(c)に示すように、上下一対の溝付けローラ83a,83bのローラ本体84の軸方向端部寄り領域に二つずつ合計四つのリング状の鍔部87を設け、四つのいずれかの鍔部87には周面全域に山型状の凸部88を有する山鍔部87uとし、残りの鍔部87には周面全域に谷型状の凹部89を有する谷鍔部87dとしたものである。本例では、上側溝付けローラ83aは、軸方向中央寄りに位置する二つの鍔部87が山鍔部87uとして構成され、その外側に位置する二つの鍔部87が谷鍔部87dとして構成されている。尚、下側溝付けローラ83bは、上側溝付けローラ83aとは逆の位置関係になるように、山鍔部87u又は谷鍔部87dを備えている。
【0051】
本例では、前段、中段の溝成形ローラ81,82の鍔部85、86は、略同じ寸法間隔で山鍔部85u,86uと谷鍔部85d,86dとが交互に配置され、また、後段の溝成形ローラ83の鍔部85、86は、前段、中段の溝成形ローラ81,82に比べて狭い寸法間隔で山鍔部87uと谷鍔部87dとが交互に配置されている。
このため、図8(b)に示すように、前段、中段及び後段の溝成形ローラ81~83間を種板2が通過すると、対構成の溝付けローラ81a~83a,81b~83b間に種板2が通されるとき、種板2には、各鍔部85~87に挟まれたクリアランスCL部分で谷鍔部85d~87d側に凹んだ溝gが形成される。つまり、種板2には、図8に実線で示すように、種板2の表面側から見て凹んだ凹状の溝g1と、図8に点線で示すように、種板2の裏面側から見て凹み、かつ、種板2の表面側から見て突出する凸状の溝g2とが交互に形成される。
尚、本例では、溝成形ローラ81~83の各鍔部85~87のレイアウトや凹部88,凸部89の組み合わせについては、種板2に要求される溝付けパターンに応じて適宜選定して差し支えない。
【0052】
<隙間調整機構>
本例では、溝成形ユニット80は、図7(c)及び図8(a)に示すように、溝成形ローラ81~83を構成する上下一対の溝付けローラ81a~83a,81b~83bの鍔部85~87同士の隙間(クリアランスCL)を調整する隙間調整機構90を備えている。
本例において、隙間調整機構90は、各溝成形ローラ81~83に対して個別に設けても差し支えない。この場合、各溝成形ローラ81~83に要求されるクリアランスCLを個別に選定することが可能である。但し、各溝成形ローラ81~83で要求されるクリアランスCLが共通している場合には、各溝成形ロール81~83に対して隙間調整機構90を共用して設けるようにすればよい。
例えば図8(a)には、溝成形ローラ81を例に挙げて隙間調整機構90が示されているが、他の溝成形ローラ82,83に対しても同様の隙間調整機構90が個別若しくは共用して設けられる。
【0053】
本例では、溝成形ローラ81(82,83)を構成する上下対構成の溝付けロール81a,81b(82a,82b,83a,73b)は、いずれも両端軸部が軸受97,98によって回転可能に保持されている。
そして、隙間調整機構90は、例えば溝成形ローラ81(溝付けローラ81a,81b)を例に挙げると、溝成形ローラ81(溝付けローラ81a,81b)の軸受97,98間の距離を調整するものである。
ここで、隙間調整機構90は、シリンダ機構やネジ機構、あるいは、駆動モータにより回転するカム機構などによって構成されており、溝付けローラ81a,81bの両方の軸受97,98間の距離を調整するものである。この場合、一対の溝付けローラ81a,81bの夫々の軸受97,98を相対的に移動させてもよいし、あるいは、一対の溝付けローラ81a,81のいずれか一方の軸受97,98のみを移動させてもよい。また、一対の溝付けローラ81a,81bの一端側の軸受97間の距離を調整し、軸受97の移動に連動する連動機構(駆動伝達機構やリンク機構)を介して他端側の軸受98を移動させるようにしてもよい。
【0054】
本例によれば、隙間調整機構90は、溝成形ローラ81~83の軸受97,98間の距離を調整するものであるため、軸受97,98に保持されている対構成の溝付けローラ81a,81b(82a,82b,83a,83b)が適宜移動することになり、対構成の溝付けローラ81a,81b(82a,82b,83a,83b)間の距離、つまり、クリアランスCLが調整される。
【0055】
また、隙間調整機構90には、溝付けを行う種板2の基準板厚が入力されている。そして、基準板厚の種板2を用いてカソードS(図9(a)参照)を作製する際には、クリアランスCLが基準クリアランスになるように隙間調整機構90がクリアランスCLを調整する。ここでいう基準クリアランスとは、基準板厚の種板2に対して、適切な力で溝を形成できるクリアランスCLのことである。例えば、基準クリアランスは、種板2の基準板厚が0.5~1.0mmの範囲である場合には、通常、1.3~2.0mmの範囲に設定される。そして、クリアランスCLは、厚さ測定器具4での測定値に基づいてさらに調整される。
このように、基準クリアランスを基準板厚の種板2に対応した値に設定し、厚さ測定器具4での測定値に基づいてクリアランスCLを調整することは、さまざまな種板2に対応した値に設定するよりも、設定時の板厚のばらつきの影響を受けにくく、信頼性の高いクリアランスが得られる利点がある。
尚、種板2の基準板厚には、種板2の精製条件から決まる標準的な種板2の厚みを用いるのが好ましい。例えば、電解精製による電気銅の精製に使用されるカソードの種板2を精製する場合には、0.5~1.0mmの範囲における任意の値を種板2の基準板厚とすることができる。
【0056】
-カソード成形ユニット-
本実施の形態において、カソード仕上機1は、レベラー50及び溝成形ユニット80を経て種板2の形状を矯正した後、図示外のカソード成形ユニットにて矯正された種板2を用いてカソードSを成形する。
カソード成形ユニットは、吊手形成部と、支持ロッド取付部とを備えている。
吊手形成部は、溝成形ユニットによって溝gが付けられた種板2に吊手101を取り付けるものである。具体的には、帯状の板を、輪状になるようにその両端を種板2の端縁両面にカシメ固定して吊手101が京成される。例えば一対の吊手101を取り付ける場合には、図8(a)に示すように、溝gのない領域に略対称的に取り付けられる。
また、支持ロッド取付部は、吊手101に電飾としての支持ロッド102を取り付けるものである。具体的には、輪状になっている吊手101(例えば一対の吊手101)に支持ロッド102を挿通するようにすればよい。
【0057】
-カソードの作製例-
上述したカソード仕上機1によって作製されるカソードSの概略を説明する。
本例において、カソードSは、図9(a)に示すように、種板2を吊手101を介して支持ロッド102から吊り下げたものである。
そして、このカソードSの種板2には、その上下方向(カソードSを吊り下げたときに、鉛直方向となる方向に相当)に沿って伸びる溝g(g1,g2)が複数本形成されている。この複数本の溝gは溝成形ユニット80によって成形される。この複数本の溝gを形成することによって、カソードSの種板2の上下方向における種板2の凹凸が小さくなり、カソード歪を抑制することができる。従って、かかるカソードSを使用すれば、種板電解工程における電力量の消費を抑えることができるうえ、ショートが生じ難くなる。このため、電解精製の生産効率を向上させることができる。しかも、均一に電着させることが行い易くなるため、電着後のカソード(製品)の品質を良好に維持し易くなる。
尚、カソード歪とは、図9(b)(c)に示すように、種板2を上下方向又は左右方向の端縁から見たときの種板23の表裏面の最大厚み方向寸法δを指す。
【実施例0058】
◎実施例1
実施例1は、図2に示す構造のカソード仕上機においてカソードを作製した。カソード仕上機は、厚み測定器具4に図3に示すエア吹付機構41を採用したものを使用した。
カソード仕上機1に供給する種板2は以下の方法で作製した。
純度98%程度の粗銅であるアノード(陽極)とステンレス製の母板(陰極)を電解槽の電解液に供給し、24時間通電した後、母板から電着している銅を剥がして種板を作製した。使用した銅電解液は、銅濃度47±2g/1、硫酸濃度180±20g/1、膠100±10g/電着銅トン、アビトン10±5g/電着銅トン、チオ尿素110±10g/電着銅トンのものである。陽極と陰極との間に流す電流の電流密度は250A/mであり、電解槽に供給する電解液の給液量は25L/minに調整した。
尚、作製された種板は、いずれも純度99.99%の電気銅であり、その寸法は、縦1000mm×横1000mm×厚さ0.6~1.0mmの平板状であった。
【0059】
作製された種板2をカソード仕上機1に装入してカソードの作製を行った。カソード仕上機の運転条件としては、レベラー50による形状矯正において、ローラ押し込み量は、入口側で-0.6mm、出口側で+0.8mmとし、溝成形ユニット80の溝成形ローラ81~83の基準クリアランスは1.3mm、基準厚みは0.8mmとした。
尚、カソードの吊手は、作製された種板から切り出した板を使用した。板の寸法は、縦300mm×横100mm×厚さ0.6~1.0mmの帯状のものを使用した。
厚み測定器具4としては、上下一組からなる光学式センサ30を用い、レベラー50の前段において、種板2の搬送ラインに対して上下方向に対称となる位置に、上側光学式センサ31a及び下側光学式センサ30bを夫々設置し、夫々の搬送ラインに対する離間距離が80mmとなるように調整した。この場合、上記一組の光学式センサ30において、種板2の表面までの距離を検出することが可能な有効検出範囲は、搬送ラインを基準として80±15mmの範囲である。また、厚み測定器具4を通過する種板2の歪が上記検出範囲を超える場合や、異物が下側光学式センサ30bの放射部31及び受光部35を遮った場合は、測定不良として取り扱うようにし、更に、その測定不良となった種板2の枚数をカウントするようにした。
また、エア吹付機構41のエアノズル44は、その先端部の圧縮エアの吐出口の口径を1.0mmに設定し、吐出口と放射部31及び受光部35との離間距離を約15mmに設定し、エア供給源についてはエアコンプレッサ43を用いるようにし、エアの供給圧力を0.7MPaに設定した。
【0060】
◎比較例1
比較例1は、図10に示すように、図10に示すように、エア吹付機構41を使用しなかった厚み測定器具4’を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0061】
以下、実施例1及び比較例1において、夫々の条件で各1日間の試験操業を行った。
実施例1では、エアノズル44から連続的に圧縮エアを噴き出して下側光学式センサ30bの検出面から異物の除去を行う操業を1日間継続した。
そして、実施例1のカソード仕上機で作製されたカソードと、比較例1のカソード仕上機で作製されたカソードとについて、カソード歪を比較した。更に、実施例、及び比較例の夫々において、終業時に下側光学式センサの検出面(放射部及び受光部)上の異物の堆積状況を観察した。
【0062】
<結果>
結果を以下の表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
ここで、カソード歪は、吊手が取り付けられた種板に支持ロッド(24×42×1394mm)を通し、支持ロッドを保持してカソードを吊り下げた状態で測定した。カソード歪は、図9(b)(c)に示すδの値である。尚、カソード歪の測定装置については特開平7-190744号公報に開示されている測定装置によって測定した。そして、実施例、及び比較例の夫々において、その日一日に生産したカソードのカソード歪の平均値を求め、平均カソード歪とした。更に、カソード歪のばらつきを求め、カソード歪標準偏差とした。
【0065】
以下の表1に示すように、実施例1では測定不良としてカウントされた種板の枚数が16枚であったのに対し、比較例1では、1480枚に急増した。比較例1において、操業終了後に下側光学式センサの検出面への異物の堆積状況を確認したところ、放射部、及び受光部を覆うように異物が堆積しており、堆積した異物によって、検出光及び反射検出光が遮られていることが確認できた。一方、実施例1では、異物の堆積は認められなかった。このことから、測定不良は、厚み測定器具を通過する種板の歪が過大であることに起因する測定不良よりも、異物によって検出光及び反射検出光が遮られることに起因する測定不良の方が、数十倍多く発生していることが確認できた。
【0066】
また、比較例1では、1480枚の種板において測定不良となった。測定不良となった種板においては、種板の厚み情報が溝付け部に提供されないため、比較例1では、溝成形ユニットによる溝付け加工においてクリアランスCLの最適化が困難となり、平均カソード歪、及びカソード歪標準偏差の何れもが、実施例1に比べて悪化した。
また、実施例1では、再矯正が必要となるカソードはなかったのに対し、比較例1では、再矯正が必要となる程度にカソード歪が大きなカソードが多発したため、再矯正を行うための専用の人員を配置する必要が生じた。
このように、定期的に下側光学式センサの検出面上に堆積した異物を除去する必要性が確認できた。
【0067】
さて、比較例1では、本願のエア吹付機構(異物除去機構)を有していないため、カソード仕上機を停止して清掃を行う必要がある。カソード仕上機を停止してしまうと電解槽に必要なカソードを供給することができないため、その停止時間中は電解を停止する(電解停電)必要がある。比較例1では、異物清掃に起因して電解を停止する時間(電解停電時間)が1.3h/日となった。一方、実施例1では、そのような電解停電時間は発生しなかった。
そして、この電解停電に伴う減産は、約4t/日となった。即ち、実施例1の厚み測定器具を備えるカソード仕上げ機を使用することによって、実質的に約4t/日の増産が可能であることが示された。
【0068】
ここで、年間の増産量を想定したところ、実施例1の厚み測定器具を備えるカソード仕上機を使用することによって、約1054t/年の増産が実質的に可能であることが推定できた。
このように、実施例1のカソード仕上機は、種板の厚みを測定する厚み測定器具を工夫することで、光学式センサの検出面上に異物が落下したとしても、検出面上に異物が堆積することを防止することができる。即ち、実施例1のカソード仕上機は、カソードの種板の厚みを測定する厚み測定器具の検出面上に異物が付着することに起因する測定不良を抑制することができる。
これにより、種板電解工程における電力量の消費を抑えることができるうえ、ショートが生じ難くなる。しかも、均一に電着させることが行い易くなるため、電着後のカソード(製品)の品質を良好に維持し易くなる。更に、精度の良いカソードを量産でき、異物の清掃に伴う設備停止や、作業者の手作業による再矯正が不要になる。そして、その効果は、約1054t/年の増産が実質的に可能となるような、非常に大きなものであることが示された。
このように、実施例1に係るカソード仕上機は、カソードの種板の厚みを測定する厚み測定器具の検出面上に異物が付着することに起因する測定不良を抑制し、精度の良いカソードを量産可能に仕上げることで、電解精製の生産効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のカソード仕上機は、厚み測定器具を工夫することで、全体の装置構成を複雑にすることなく、非鉄金属などの電解精製工程に使用されるカソードの歪を大幅に抑制する上で有効である。
【符号の説明】
【0070】
1 カソード仕上機
2 種板
3 搬送手段
3a 搬送部材
4 厚み測定器具
5 内部応力除去手段
6 溝付け手段
7 搬送経路
10 検出手段
11 検出器
11a 上側検出器
11b 下側検出器
12 厚み算出手段
13 エア吹付手段
13a エア配管
13b エア供給源
13c 吹付ノズル
14 異物
15 回収手段
20 パレット
21 パレットコンベア
22 種板移載装置22
22a 架台
22b 移動台
22c バキューム式吸着台
23 ローラコンベア
24 送り込みローラ
25 平面円滑ユニット
25a,25b 平滑ローラ
26 送り込みローラ
30 光学式センサ
30a 上側光学式センサ
30b 下側光学式センサ
31 放射部
32 光源
33 投光レンズ
35 受光部
36 受光素子
37 受光レンズ
40 制御装置
41 エア吹付機構
42 エアダクト
43 エアコンプレッサ
44 エアノズル
45 直線ノズル部
46 湾曲ノズル部
50 レベラー
51,52 ワークローラ
53,54 バックアップローラ
60 バックアップローラアッセンブリ
62 支持部材
62a 底板
62b 側板
62d 端部壁
62h 開口
62s 空間部
63 高さ調節機構
63a 移動部材
63b ネジ軸
63c 保持部材
63h ネジ孔
64 基台
70 異物除去機構
71 ノズル
72 エアダクト
75 回収シュート
80 溝成形ユニット
81~83 溝成形ローラ
81a,81b 溝付けローラ
82a,82b 溝付けローラ
83a,83b 溝付けローラ
85~87 鍔部
85u~87u 山鍔部
85d~87d 谷鍔部
88 凸部
89 凹部
90 間隔調整機構
97,98 軸受
101 吊手
102 支持ロッド
S カソード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10