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特開2024-101723導電性材料組成物、導電膜、および導電膜の形成方法
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  • 特開-導電性材料組成物、導電膜、および導電膜の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101723
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】導電性材料組成物、導電膜、および導電膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240723BHJP
   C08G 67/00 20060101ALI20240723BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240723BHJP
   C08L 59/00 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01B1/22 A
C08G67/00
C08L71/00
C08L59/00
C08K3/08
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005811
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】野中 汐里
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
5G301
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4J002CB001
4J002CH011
4J002DA066
4J002FA066
4J002GH00
4J002GQ02
4J002HA06
4J005AB00
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA42
5G301DD02
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC09
5G323BA01
5G323BB01
(57)【要約】
【課題】高導電で高透明な導電膜を形成するための導電材料組成物を提供すること。
【解決手段】(A)金属ナノワイヤーと、(B)酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂と、(C)溶剤とを含むものであることを特徴とする導電性材料組成物。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属ナノワイヤーと、
(B)酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂と、
(C)溶剤と
を含むものであることを特徴とする導電性材料組成物。
【請求項2】
前記樹脂(B)が、下記一般式(1)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料組成物。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、又は置換されていても良い炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。Wは、炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価の有機基である。)
【請求項3】
前記樹脂(B)が、下記一般式(1a)~(1c)のいずれかで示される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の導電性材料組成物。
【化2】
(式中、R1aは、炭素数1~4のアルキル基である。Wは、炭素数4~10の飽和もしくは不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。Rb1はそれぞれ独立に、-W-OHであるか、又は、置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。R1cは、水素原子、又は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数4~20のヘテロアリール基である。Rc1はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は-W-OHである。nは平均繰り返し単位数を表し、3~2,000である。)
【請求項4】
更に、光酸発生剤又は熱酸発生剤を含有するものであることを特徴とする請求項1記載の導電性材料組成物。
【請求項5】
基板上に形成された導電膜であって、
前記基板上にコートされた請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性材料組成物の前記樹脂(B)成分が、酸および熱のいずれか、又は両方によって分解および/又は除去されたものであることを特徴とする導電膜。
【請求項6】
基板上に請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性材料組成物をコートし、酸および熱のいずれか、または両方によって前記樹脂(B)成分を分解および/又は除去して、導電膜を形成することを特徴とする導電膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高透明、高導電な導電膜を形成するための導電性材料組成物、導電膜およびこれの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELディスプレイやタッチパネルの普及に伴って、高透明な導電膜の市場拡大が続いている。
【0003】
透明電極としては、インジウムスズの酸化膜(ITO)が広く用いられている(特許文献1)。
【0004】
非接触型のタッチパネルには、ITO以上の高導電な透明電極が必要であり、これには銀ナノワイヤーが候補に挙がっている(特許文献2)。
【0005】
初期の銀ナノワイヤーの製造には鋳型(テンプレート)法が用いられていた。テンプレートとしては、カーボンナノチューブ、多孔質シリカやアルミナ、界面活性剤やブロック共重合体が用いられたが、反応時間が長く銀ナノワイヤーの生産性が低い問題があった。
【0006】
水やエチレングリコール中でポリビニルピロリドン等の界面活性剤添加し、硝酸銀などの還元によってナノワイヤーを成長させる方法が提案されている(非特許文献1)。この方法は生産性が高く、これによって銀ナノワイヤーの量産化が可能となった。
【0007】
銀ナノワイヤーをコートした基板を250℃程で加熱すると銀ナノワイヤー同士が溶融しくっつくことによって伸縮しても導電性の劣化を抑えることが出来る(非特許文献2)。ごく短時間の光照射で銀ナノワイヤーだけを加熱できるフラッシュアニール法は基板の熱上昇を抑え、伸縮性があるが耐熱性が250℃よりも低いポリウレタンフィルム上の銀ナノワイヤー同士を溶融することが出来る(非特許文献3)。また、非特許文献4には、銀ナノワイヤーの自己集合について開示されている。
【0008】
溶剤と銀ナノワイヤーだけから構成された銀ナノワイヤーインクを塗布した場合、銀ナノワイヤーの分布が不均一になる場合がある。銀ナノワイヤーの分布が不均一だと、透明性や導電性に斑が生じ、これを使ったデバイスの性能が低下する恐れがある。
【0009】
更には、溶剤と銀ナノワイヤーだけの銀ナノワイヤーインクを塗布した後の銀ナノワイヤー同士の融着のための加熱時において、銀ナノワイヤーが融着前に折れてしまうことがある。特に、銀ナノワイヤーの密度が低い場合や銀ナノワイヤーの径が細い場合は、ワイヤー同士の接触による支えが無く、かつワイヤー自体の強度不足のために、高温中の空気振動によって折れてしまうようである。透明性が高い導電膜を形成するには銀ナノワイヤーの濃度を低くしたり直径が小さい銀ナノワイヤーを用いたりするが、銀ナノワイヤーを折ることなく融着させることが必要である。
【0010】
銀ナノワイヤーを均一に塗布するためや、加熱時に銀ナノワイヤーが折れないようにするために、銀ナノインクの成分として樹脂を添加する方法が挙げられる。例えば、非特許文献5には、ポリビニルピロリドンの存在下での銀ナノ構造体の合成に関する技術が記載されている。樹脂を含有することによってコート後の膜が平坦化され、樹脂が銀ナノワイヤーを支えて銀ナノワイヤーが折れるのを防止することができる。ただし、絶縁性の樹脂の添加は導電性の低下につながる。そのため、均一で高導電な銀ナノワイヤー層を形成するためのインクの開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭41-10504号公報
【特許文献2】特開2022-135862号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Yugang Sunら、"Crystalline Silver Nanowires by Soft Solution Processing", Nano letters, Vol. 2, (2002), No. 2, p. 165-168
【非特許文献2】菰田夏樹ら、「銀ナノワイヤー印刷配線の導電性評価」、第26回エレクトロニクス実装学会春季公演大会予稿集、9D-04、 (2012)、 p. 318
【非特許文献3】Yang Yangら、"Facile fabrication of stretchable Ag nanowire/polyurethane electrodes using high intensity plused light", Nano Research, 9 (2), (2016), p. 401-414
【非特許文献4】Y. Gaoら、"Shinthesis, characterization and self-assembly of silver nanowires", Chemical Physics Letters, 380, (2003), p. 146-149
【非特許文献5】Masaharu Tsujiら、"Effects of chain length of polyvinylpyrrolidone for the synthesis of silver nanostructures by a microwave-polyol method", Materials Letters, 60, (2006), p. 834-838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高導電で高透明な導電膜を形成するための導電材料組成物、高導電で高透明な導電膜、および高導電で高透明な導電膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)金属ナノワイヤーと、
(B)酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂と、
(C)溶剤と
を含むものであることを特徴とする導電性材料組成物を提供する。
【0015】
このような導電材料組成物であれば、均一かつ高透明で高導電な導電膜を低コストで製造できるものとなる。
【0016】
前記樹脂(B)が、下記一般式(1)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、又は置換されていても良い炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。Wは、炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価の有機基である。)
【0017】
このような導電材料組成物であれば、適切な分解性及び流動性を示すことができる。
【0018】
また、前記樹脂(B)が、下記一般式(1a)~(1c)のいずれかで示される化合物であることが特に好ましい。
【化2】
(式中、R1aは、炭素数1~4のアルキル基である。Wは、炭素数4~10の飽和もしくは不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。Rb1はそれぞれ独立に、-W-OHであるか、又は、置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。R1cは、水素原子、又は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数4~20のヘテロアリール基である。Rc1はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は-W-OHである。nは平均繰り返し単位数を表し、3~2,000である。)
【0019】
このような導電材料組成物であれば、更に適切な分解性及び流動性を示すことができる。
【0020】
更に、光酸発生剤又は熱酸発生剤を含有するものであってもよい。
【0021】
光酸発生剤又は熱酸発生剤を含有するものであれば、樹脂(B)の分解温度を低くすることができる。
【0022】
また、本発明では、基板上に形成された導電膜であって、
前記基板上にコートされた本発明の導電性材料組成物の前記樹脂(B)成分が、酸および熱のいずれか、又は両方によって分解および/又は除去されたものであることを特徴とする導電膜を提供する。
【0023】
このような導電膜は、高透明で高導電な膜となることができる。
【0024】
また、本発明では、基板上に本発明の導電性材料組成物をコートし、酸および熱のいずれか、または両方によって前記樹脂(B)成分を分解および/又は除去して、導電膜を形成することを特徴とする導電膜の形成方法を提供する。
【0025】
このような導電膜の形成方法であれば、均一かつ高透明で高導電な膜を低コストで製造できる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の導電性材料組成物であれば、均一かつ高透明で高導電な導電膜を低コストで製造することができるものとなる。
【0027】
また、本発明の導電膜によれば、高透明で高導電な膜となることができる。
【0028】
そして、本発明の導電膜の形成方法であれば、均一かつ高透明で高導電な膜を低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の導電性材料組成物の一例を基板上に塗布して得られた塗膜の断面図である。
図2図1に示した塗膜中の樹脂を酸および熱のいずれか、又は両方によって分解及び除去させて得られた導電膜の断面図である。
図3】実施例1~3で用いた樹脂B1の空気中の熱分解データ(DTA)である。
図4】実施例1の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで220℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。
図5】実施例1の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで250℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。
図6】比較例1の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで250℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。
図7】比較例2の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで250℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述のように、均一で高透明、高導電な薄膜導電膜の開発が求められていた。
【0031】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、金属ナノワイヤーと、酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂と、溶剤とを含む導電性材料組成物であれば、導電性材料組成物のコート時においては樹脂の存在によって均一な金属ナノワイヤーの層を形成でき、酸および/又は熱によって絶縁性の樹脂が分解し蒸発することによって、高透明で高導電な金属ナノワイヤー層(導電膜)を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0032】
即ち、本発明は、
(A)金属ナノワイヤーと、
(B)酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂と、
(C)溶剤と
を含むものであることを特徴とする導電性材料組成物である。
【0033】
また、本発明は、基板上に形成された導電膜であって、
前記基板上にコートされた本発明の導電性材料組成物の前記樹脂(B)成分が、酸および熱のいずれか、又は両方によって分解および/又は除去されたものであることを特徴とする導電膜である。
【0034】
また、本発明は、基板上に本発明の導電性材料組成物をコートし、酸および熱のいずれか、または両方によって前記樹脂(B)成分を分解および/又は除去して、導電膜を形成することを特徴とする導電膜の形成方法である。
【0035】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
[導電性材料組成物]
本発明の導電性材料組成物は、
(A)金属ナノワイヤーと、
(B)酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂と、
(C)溶剤と
を含む。
【0037】
このような導電性材料組成物を用いることにより、該組成物のコート時においては樹脂(B)の存在によって均一な金属ナノワイヤー層の塗膜を形成できる。また、酸および/又は熱によって絶縁性の樹脂(B)を分解および/又は除去することができるので、組成物の塗膜に熱をかける又は塗膜中に酸を発生させることにより、該塗膜から高抵抗の樹脂(B)をなくすることができる。これにより、樹脂(B)を含まない、すなわち高導電の導電膜(金属ナノワイヤー層)を得ることができる。得られた導電膜が含む金属ナノワイヤーは、ナノレベルの径を有するものなので、可視光を透過することができる。したがって、得られた導電膜は、高透明のものとすることができる。
【0038】
更にはこの導電膜はフレキシブルであるため、フレキシブルなタッチセンサー、ディスプレイ、照明に応用することが出来る。更には伸縮性もあるため、体に張り付ける生体電極等の生体センサーにも応用可能である。
【0039】
以下、本発明の導電性材料組成物の各成分をより詳細に説明する。
【0040】
[(A)金属ナノワイヤー]
(A)成分である金属ナノワイヤーの直径は、例えば、1~200nmとすることができ、長さは0.5~500μmの範囲とすることができる。本発明の導電材料組成物を調製する際、(A)金属ナノワイヤーは、水や低級アルコールに分散している形態のものを用いるのが好ましい。
【0041】
(A)金属ナノワイヤーの金属種は特に限定されないが、該金属種としては、銀が好ましく、他には金、銅、コバルトを用いることが出来る。又、(A)金属ナノワイヤーは、銀単独でなく、銀と、金、白金、銅、またはコバルト等との合金であっても良い。
【0042】
[(B)樹脂]
(B)成分である樹脂は、酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂(分解性重合体)である。
【0043】
上記樹脂(B)の好ましい形態としては、下記一般式(1)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものが挙げられる。
【化3】
(式中、Rは、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和若しくは不飽和の一価の有機基である。Wは、炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価の有機基である。)
【0044】
そして、上記(B)成分の更に好ましい形態としては、下記一般式(1a)乃至(1c)で示される化合物(以下、「分解性重合体(1a)乃至(1c)」ということもある)が挙げられる。
【化4】
(上記一般式(1a)乃至(1c)中、R1aは、炭素数1~4のアルキル基である。Wは、炭素数4~10の飽和若しくは不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。Rb1はそれぞれ独立に、-W-OHであるか、又は、置換されていてもよい炭素数1~30の飽和若しくは不飽和の一価の有機基である。R1cは、水素原子、又は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数4~20のヘテロアリール基である。Rc1はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は-W-OHである。nは平均繰り返し単位数を表し、3~2,000であり、好ましくは3~500である。)
【0045】
上記一般式(1)又は(1a)乃至(1c)で示される鎖状アセタール構造の存在は、樹脂(B)への、適切な分解性及び流動性の付与のために効果的である。更に、分解後は揮発性の高い低分子化合物へと分解されるため、導電膜に多量に残存して、導電膜の導電性を悪化させることが少ない。
【0046】
上記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。
【0047】
ここで、本発明において「有機基」とは、少なくとも1つの炭素原子を含む基の意味であり、更に水素原子を含むことができ、また窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を含んでもよい。
【0048】
は単一でもよいし、複数種が混在してもよい。Rとして、より具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、ビニル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、ベンジル基、フルオレニル基、ナフチルメチル基、ノルボルネニル基、トリアコンチル基、2-フラニル基、および2-テトラヒドロフラニル基を例示できる。
【0049】
上記一般式(1)中、Wは、炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価の有機基である。Wは単一でもよいし、複数種が混在してもよい。Wとして、より具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、イコサメチレン基、トリアコンタメチレン基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ジメチルシクロヘキサンジイル基、2-ブテン-1,4-ジイル基、2,4-ヘキサジエン-1,6-ジイル基、3-オキサペンタン-1,5-ジイル基、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジイル基、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジイル基、フェニレン基、キシリル基、ナフタレンジイル基、ジメチルナフタレンジイル基、およびアダマンタンジイル基を例示できる。
【0050】
上記一般式(1a)及び(1b)中、R1aは、炭素数1~4のアルキル基である。R1aは単一でもよいし、複数種が混在してもよい。R1aとして、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、およびイソブチル基を例示できる。
【0051】
上記一般式(1a)乃至(1c)中、Wは、炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。Wは単一でもよいし、複数種が混在してもよい。Wとして、より具体的には、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ジメチルシクロヘキサンジイル基、2-ブテン-1,4-ジイル基、2,4-ヘキサジエン-1,6-ジイル基、3-オキサペンタン-1,5-ジイル基、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジイル基、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジイル基、フェニレン基、キシリル基、およびアダマンタンジイル基を例示できる。
【0052】
上記一般式(1b)中、Rb1はそれぞれ独立に、-W-OHであるか、又は、置換されていてもよい炭素数1~30の飽和若しくは不飽和の一価の有機基である。置換されていてもよい炭素数1~30の飽和若しくは不飽和の一価の有機基として、より具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、デシル基、ドデシル基、イコサニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、ベンジル基、フルオレニル基、ナフチルメチル基、ノルボルネニル基、イコサニル基、トリアコンチル基、2-フラニル基、および2-テトラヒドロフラニル基を例示できる。
【0053】
上記一般式(1c)中、R1cは、水素原子、又は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数4~20のヘテロアリール基である。R1cは単一でもよいし、複数種が混在してもよい。R1cとして、より具体的には、水素原子、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、2-フラニル基、およびアニシル基を例示できる。
【0054】
上記一般式(1c)中、Rc1はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は-Wa-OHである。炭素数1~4のアルキル基として、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、およびイソブチル基を例示できる。
【0055】
nは、平均繰り返し単位数を表し、3~2000であり、好ましくは3~500であり、より好ましくは5~300である。
【0056】
上記樹脂(B)が上記一般式(1)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有する場合、単一の繰り返し単位のみを有していてもよいし、2種以上の繰り返し単位を組合せて有していてもよい。
【0057】
上記一般式(1)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位として、更に具体的には、下記のものを例示できるがこれらに限定されない。
【化5】
【0058】
上記一般式(1a)で示される化合物として、更に具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。下式中nは上記と同様である。
【化6】
【0059】
上記一般式(1b)で示される化合物として、更に具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。下式中nは上記と同様である。
【化7】
【0060】
上記一般式(1c)で示される化合物として、更に具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。下式中nは上記と同様である。
【化8】
【0061】
、R1a、Rb1、R1c、Rc1、W及びWの構造の選択により、樹脂(B)の熱分解温度、加熱時重量減少率、および流動性等の特性を、必要に応じて調整可能であり、ひいては導電性材料組成物の特性を調整可能である。
【0062】
特に分解性重合体(1a)乃至(1c)は、流動性に優れるとともに、R1a及びWの構造の選択により、加熱時重量減少率を70質量%以上とすることが容易に可能である。分解性重合体(1a)及び(1b)は、熱分解温度が低く、結果として、導電膜材料のエッチング耐性の低下をさらに抑制することが可能であり好ましい。熱分解性重合体(1c)は、架橋剤として働く場合もあり、導電膜材料の特性調整範囲をさらに広げることが可能となり好ましい。
【0063】
樹脂(B)の重量平均分子量は、300~200,000が好ましく、300~50,000がより好ましく、500~40,000が更に好ましい。繰り返し単位の平均数としては、3~2,000が好ましく、3~500が更に好ましい。重量平均分子量が300以上であれば、揮発等による配合効果の低下を抑制することができ、十分な配合効果が得られる。また、重量平均分子量が200,000以下であれば、流動性が劣化等することもなく、埋め込み/平坦化特性に優れる。
【0064】
上記一般式(1)又は(1a)で示される構造を有する分解性重合体は、構造に応じて最適な方法を選択して製造することができる。前記分解性重合体(1a)を例にとると、具体的には、例えば下記の3つの方法から選択して製造可能である。同様の方法により、前記分解性重合体(1)についても製造可能である。なお、本発明で用いる分解性重合体の製造法は、これらに限定されるものではない。
【0065】
【化9】
(式中、R1aは、炭素数1~4のアルキル基である。Wは、炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~2,000である。)
【0066】
上記反応は、素反応としては、酸触媒による一般的なアセタール形成反応である。この素反応が繰り返し進行することにより、最終的に重合体を与えるものである。上記反応において、ジエーテル化合物(5)に対するジオール化合物(6)の最適使用量は、(5)1モルに対し、(6)0.5モル~2モルであり、特に0.8モル~1.2モルとすることが好ましい。上記反応において、t-ブチルエーテル化合物(7)に対するジオール化合物(6)の最適使用量は、(7)1モルに対し、(6)0.5モル~2モルとするのが好ましく、0.8モル~1.2モルとすることが特に好ましい。
【0067】
上記アセタール化反応は、各原料を溶媒中もしくは無溶媒で酸触媒と混合し、冷却又は加熱することにより行うことができる。反応に溶媒を使用する場合、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、γ-ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;o-ジクロロベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等から選択して、単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0068】
反応に用いる酸触媒としては、各種無機酸又は有機酸を用いることができるが、具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂、硫酸水素ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム、等の酸性触媒を挙げることができる。これらの酸触媒の使用量は、原料合計1モルに対して1×10-5~5×10-1モルが好ましい。
【0069】
反応温度は-20℃~100℃が好ましく、0℃~80℃がより好ましい。溶媒を使用する場合は溶媒の沸点程度を上限とすることが好ましい。反応温度-20℃以上であれば、反応がスムーズに進行し、100℃以下であれば、生成物の分解反応等の副反応を抑制することができる。上記反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等により反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常0.5~200時間程度である。反応終了後は通常の水系後処理(aqueous work-up)及び/又は不溶分のろ別処理により、目的物である前記分解性重合体(1a)を得ることができる。
【0070】
得られた分解性重合体(1a)は、必要であれば、その性状に応じて、分液、晶析、減圧濃縮、透析、限外ろ過等の常法により精製することも可能である。また、必要に応じて、市販の脱金属フィルターを通じることにより金属含有量を低減することもできる。
【0071】
反応の方法としては、例えば、各原料、酸触媒、必要に応じて溶媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下に各原料又は原料溶液を単独もしくは混合して滴下していく方法、あるいは固体酸触媒を充填したカラム等に混合原料又は混合原料溶液を通じる方法を取ることができる。分子量の調整については、例えば、反応時間による制御、酸触媒の量による制御、水/アルコール/塩基性化合物等の重合停止剤の添加/含有率調整による制御、原料を2種類用いる場合は原料仕込み比率による制御、あるいは、これらを複数組合せた制御により行うことができる。
【0072】
上記一般式(5)~(8)で示される原料化合物は、それぞれ1種類を用いることもできるし、それぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。上記一般式(5)、(7)、(8)で示される原料化合物等の化合物は、酸素、光、水分等に不安定な場合があり、このような場合、窒素等の不活性雰囲気下、及び遮光下での反応が好ましい。
【0073】
前記分解性重合体(1b)及び(1c)の場合は、具体的には、例えば下記の2つの方法から選択して製造可能である。同様の方法により、前記分解性重合体(1)についても製造可能である。なお、本発明で用いる分解性重合体の製造法は、これらに限定されるものではない。
【0074】
【化10】
(式中、Rは、R1a又はR1cである。R’は、Rb1又はRc1である。Wは、炭素数4~10の飽和若しくは不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。Rb1はそれぞれ独立に、-W-OHであるか、又は、置換されていてもよい炭素数1~30の飽和若しくは不飽和の一価の有機基である。R1cは、水素原子、又は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数4~20のヘテロアリール基である。Rc1はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は-Wa-OHである。nは平均繰り返し単位数を表し、3~2,000である。)
【0075】
上記反応は、素反応としては、酸触媒による一般的なアセタール形成反応である。この素反応が繰り返し進行することにより、最終的に重合体を与えるものである。上記反応において、アルデヒド化合物(9)に対するジオール化合物(6)の最適使用量は、(9)1モルに対し、(6)0.5モル~2モルであり、特に0.8モル~1.2モルとすることが好ましい。上記反応において、アセタール化合物(10)に対するジオール化合物(6)の最適使用量は、(10)1モルに対し、(6)0.5モル~2モルであり、特に0.8モル~1.2モルとすることが好ましい。
【0076】
上記アセタール化反応は、各原料を溶媒中もしくは無溶媒で酸触媒と混合し、冷却又は加熱することにより行うことができる。反応に溶媒を使用する場合、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、γ-ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;o-ジクロロベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等から選択して、単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0077】
反応に用いる酸触媒としては、各種無機酸、有機酸を用いることができるが、具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂、硫酸水素ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム、等の酸性触媒を挙げることができる。これらの酸触媒の使用量は、原料合計1モルに対して1×10-5~5×10-1モルが好ましい。
【0078】
反応温度は0℃~250℃が好ましく、20℃~200℃がより好ましい。溶媒を使用する場合は溶媒の沸点程度を上限とすることが好ましい。反応温度0℃以上であれば、反応がスムーズに進行し、250℃以下であれば、生成物の分解反応等の副反応を抑制することができる。上記反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等により反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常0.5~200時間程度である。反応終了後は通常の水系後処理(aqueous work-up)及び/又は不溶分のろ別処理により、目的物である前記分解性重合体(1”)すなわち分解性重合体(1b)又は(1c)を得ることができる。
【0079】
得られた分解性重合体(1”)は、必要であれば、その性状に応じて、分液、晶析、減圧濃縮、透析、限外ろ過等の常法により精製することも可能である。また、必要に応じて、市販の脱金属フィルターを通じることにより金属含有量を低減することもできる。
【0080】
反応の方法としては、例えば、各原料、酸触媒、必要に応じて溶媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下に各原料又は原料溶液を単独もしくは混合して滴下していく方法、あるいは固体酸触媒を充填したカラム等に混合原料又は混合原料溶液を通じる方法を取ることができる。反応により生成する水又はアルコールを留去しながら反応を行うことにより、反応速度を向上することができ好ましい。分子量の調整については、例えば、反応時間による制御、酸触媒の量による制御、水/アルコール/塩基性化合物等の重合停止剤の添加/含有率調整による制御、原料仕込み比率による制御、あるいは、これらを複数組合せた制御により行うことができる。
【0081】
樹脂(B)は、該樹脂(B)100質量部に対して金属ナノワイヤー(A)が5~1000質量部の範囲となるように導電性材料組成物に含まれるような量であることが好ましい。
【0082】
[(C)溶剤]
また、本発明の導電材料組成物は、(C)成分として溶剤を含有する。溶剤(C)としては、具体的には、水、重水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、D-グルコース、D-グルシトール、イソプレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、ジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、酢酸エチル、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸t-ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド等の極性溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物及びこれらの混合物等を挙げることができるが、これらの例に限定されるものではない。
【0083】
なお、溶剤の添加量は、樹脂(B)100質量部に対して10~50,000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0084】
[その他の成分]
本発明の導電性材料組成物は、上記成分(A)~(C)以外の成分を含むこともできる。以下、上記成分(A)~(C)以外のその他の成分を詳細に説明する。
【0085】
(界面活性剤)
本発明では、導電性材料組成物の基板等の被加工体への濡れ性を上げるため、界面活性剤を添加してもよい。このような界面活性剤としては、例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤が挙げられる。具体的には例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル等のノニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤、アルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系界面活性剤、アミノ酸型、およびベタイン型等の両性イオン型界面活性剤等を挙げることができる。
【0086】
なお、界面活性剤を添加する場合、その添加量は、樹脂(B)100質量部に対して5~1000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0087】
(酸発生剤)
(B)酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂は、酸の存在によって低温での主鎖分解が可能である。酸は組成物として添加することもできるが、組成物が酸を含まない場合、組成物の保管中に樹脂(B)成分の分解の進行を抑制できるので好ましい。代わりに、中性であり、光や熱によって酸が発生して酸性に変化する酸発生剤、すなわち光酸発生剤又は熱酸発生剤を添加することが好ましい。
【0088】
酸発生剤としては、例えば、酸のアンモニウム塩、ピリジニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、フォスフォニウム塩、ジアゾニウム塩等の中和塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート等を挙げることが出来る。酸発生剤の具体例は、例えば特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載されている。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0089】
なお、酸発生剤を配合する場合、その配合量は樹脂(B)100質量部に対し0.1~50質量部であることが好ましい。
【0090】
以上説明したような、本発明の導電性材料組成物であれば、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の方法で成膜することが出来る。更には、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の方法でパターニングすることも可能である。
【0091】
図1に、本発明の導電性材料組成物の一例を基板上に塗布して得られた塗膜の断面図を概略的に示す。
【0092】
導電性材料組成物の塗膜10は、基板20上に塗布(コート)されている。導電性材料組成物の塗膜10は、金属ナノワイヤー(A)11と、樹脂(B)12と、図示しない溶剤とを含む。樹脂(B)12は、酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂である。このような導電性材料組成物の塗膜10中の樹脂(B)12に酸および熱のいずれか、又は両方を作用させることにより、樹脂(B)12を分解でき、塗膜10から樹脂(B)12を除去することができる。
【0093】
これにより、先に説明したように、組成物のコート時においては樹脂(B)12の存在によって均一な金属ナノワイヤー(A)11の層を形成でき、酸および/又は熱によって絶縁性の樹脂(B)12が分解し蒸発することによって、図2に示す、高透明で高導電な金属ナノワイヤー(A)11の導電膜30を形成できる。
【0094】
<導電膜>
図2に示すこの導電膜30が、本発明の導電膜の一例である。すなわち、本発明の導電膜30は、基板20上に形成された導電膜30である。この導電膜30は、例えば図1に示すように基板20上にコートされた本発明の導電性材料組成物の樹脂(B)成分が、酸および熱のいずれか、又は両方によって分解および/又は除去されたものである。
【0095】
<導電膜の製造方法>
また、本発明では、基板上に本発明の導電性材料組成物をコートし、酸および熱のいずれか、または両方によって前記樹脂(B)成分を分解および/又は除去して、導電膜を形成することを特徴とする導電膜の形成方法を提供する。
【0096】
この方法では、例えば、基板上に本発明の導電性材料組成物を塗布し、その後熱および/又は酸によって樹脂(B)を分解蒸発させて銀ナノワイヤーの導電膜を形成することができる。
【0097】
加熱は、例えば、ホットプレート、オーブンによる加熱や、赤外線、近赤外線、可視光、紫外光、マイクロ波、電磁波の照射であっても良く、連続波であっても瞬間的なフラッシュ波であっても良い。
【0098】
樹脂(B)の熱分解温度が200~300℃の範囲であり、且つ加熱によって樹脂(B)を分解する場合は、この範囲の加熱が必要である。基板がガラス、石英、シリコン、ポリイミドなどの高耐熱基板の場合は、ホットプレートやオーブン中での200~300℃の加熱が可能である。ポリウレタン等の伸縮性基板の場合は耐熱性が低いので、フラッシュアニール法で金属ナノワイヤーだけを選択的に加熱することによって基板の熱変形を抑えることが出来る。
【0099】
導電性材料組成物中に先に説明した酸発生剤を添加すると、酸発生剤の分解によって発生した酸により樹脂(B)の分解温度が低温化する。例えばトリフルオロメタンスルホン酸が発生する酸発生剤を含有する場合、熱分解温度を100℃以下にすることが出来る。
【0100】
導電膜が屈曲性や伸縮性を有する特性を有するためには、金属ナノワイヤー同士が融合している方が好ましい。金属ナノワイヤー同士の融合のためには250℃程度の加熱が必要である。
【実施例0101】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
実施例及び比較例の各導電性材料溶液に添加される銀ナノワイヤー溶液1としては、Sigma-Aldrich社の平均直径20nmおよび平均長さ10μmの銀ナノワイヤーを濃度5mg/mLで含む水溶液を用い、銀ナノワイヤー溶液2としては、Sigma-Aldrich社の平均直径60nmおよび平均長さ40μmの銀ナノワイヤーを濃度5mg/mLで含む水溶液を用いた。
【0103】
なお、銀ナノワイヤーの平均直径及び平均長さは、Sigma-Aldrich社のカタログ値である。
【0104】
また、特開2015-149384号記載の合成方法で、下記樹脂(分解性ポリマー)B1~B3を合成した。樹脂B1~B3の構造式と分子量を下記に示す。樹脂B1~B3は、20質量%の各樹脂のイソプロピルアルコール溶液として用いた。
【0105】
なお、各樹脂のMw及びMw/MnはGPC(溶剤:THF、標準:ポリスチレン)により確認した。また、平均繰り返し単位数nは、Mwより求めた。
【0106】
【化11】
B1:Mw=5,200、Mw/Mn=2.64、n=34
【0107】
【化12】
B2:Mw3,900、Mw/Mn2.34、n=26
【0108】
【化13】
B3:Mw6,400、Mw/Mn2.53、n=20
【0109】
図3に、樹脂B1の空気中の熱分解データ(DTA)を示す。図3に示す熱分解データから、樹脂B1の分解開始温度が221.5℃であり、分解終了温度が246℃であることが分かった。
【0110】
各実施例及び各比較例では、上記銀ナノワイヤー溶液1又は2に、上記樹脂B1~B3のいずれか、溶剤、界面活性剤、添加剤を加えて、表1に記載の各実施例の導電材料溶液及び各比較例の組成物を調製した。
【0111】
表1に記載した界面活性剤及び添加剤は、以下のとおりである。
【0112】
フルオロアルキルノニオン系界面活性剤FS-31(DuPont社製)
【0113】
酸発生剤1:トリフェニルスルホニウムクロリド
酸発生剤2:トリフェニルスルホニウムメタンスルホン酸
酸発生剤3:トリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸
酸発生剤4:4-フルオロピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸
【0114】
比較例2では、樹脂として以下のものを用いた。
ポリビニルピロリドン:PVP Mw=3.2、Mw/Mn=2.20
【0115】
【表1】
【0116】
表1記載の実施例の各導電性材料組成物及び比較例の組成物を合成石英ウェハーに塗布し、ホットプレート上で上記表1に記載した温度でのベークを行って、組成物中の樹脂を分解及び蒸発により除去し、各例の導電膜を得た。実施例4及び5では、ベーク前に、照射パワー10mW/cmの低圧水銀灯での光照射を60秒間行った。
【0117】
ベーク後の導電膜の表面抵抗率を測定し、図4~7に示されるように電子顕微鏡での観察を行った。
【0118】
図4は、実施例1の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで220℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。図3のDTAデータの通り、この温度では樹脂B1が分解せずに黒く残っている。
【0119】
図5は、実施例1の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで250℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。図3のDTAデータの通り、この温度では樹脂B1が分解して消滅し、白い銀ナノワイヤーが現れている。
【0120】
図6は、比較例1の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで250℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。この写真では、銀ナノワイヤーが折れてしまっている。
【0121】
図7は、比較例2の導電性材料組成物を石英ウェハー上に塗布し、ホットプレートで250℃で10分間ベークした膜表面の1万倍の電子顕微鏡写真である。この写真では、ベース樹脂が黒く残っている。
【0122】
表1から、本発明の熱または酸分解性ポリマー含有銀ナノワイヤー分散液をコートした基板は、実施例1の図5に示されるように加熱により樹脂B1を分解して除去することにより、高い導電性を有する導電膜を形成することが示された。実施例2~7も、同様に、高い導電性を有する導電膜を形成することができた。また、実施例1~7の導電膜は、均一であり、高い透明性を示した。
【0123】
一方、熱または酸分解性ポリマーを有さない銀ナノワイヤー分散液を用いた比較例1では、図6に示されるように、加熱時に銀ナノワイヤーが断線し導電性が低かった。又、熱または酸で分解しない従来型のポリビニルピロリドンを添加した銀ナノワイヤー分散液組成物の場合は、図7、比較例2に示されるように加熱後に銀ナノワイヤーの断線は起こらなかったが、ポリビニルピロリドンが残存しており、導電性が低かった。
【0124】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1](A)金属ナノワイヤーと、(B)酸および熱のいずれか、又は両方によって主鎖が分解する樹脂と、(C)溶剤とを含むものであることを特徴とする導電性材料組成物。
[2]前記樹脂(B)が、下記一般式(1)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることを特徴とする[1]に記載の導電性材料組成物。
【化14】
(式中、Rは、水素原子、又は置換されていても良い炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。Wは、炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価の有機基である。)
[3]前記樹脂(B)が、下記一般式(1a)~(1c)のいずれかで示される化合物であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の導電性材料組成物。
【化15】
(式中、R1aは、炭素数1~4のアルキル基である。Wは、炭素数4~10の飽和もしくは不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。Rb1はそれぞれ独立に、-W-OHであるか、又は、置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。R1cは、水素原子、又は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数4~20のヘテロアリール基である。Rc1はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は-W-OHである。nは平均繰り返し単位数を表し、3~2,000である。)
[4]更に、光酸発生剤又は熱酸発生剤を含有するものであることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の導電性材料組成物。
[5]基板上に形成された導電膜であって、前記基板上にコートされた[1]~[4]のいずれかに記載の導電性材料組成物の前記樹脂(B)成分が、酸および熱のいずれか、又は両方によって分解および/又は除去されたものであることを特徴とする導電膜。
[6]基板上に[1]~[4]のいずれかに記載の導電性材料組成物をコートし、酸および熱のいずれか、または両方によって前記樹脂(B)成分を分解および/又は除去して、導電膜を形成することを特徴とする導電膜の形成方法。
【0125】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0126】
10…導電性材料組成物の塗膜、 11…金属ナノワイヤー、 12…樹脂、 20…基板、 30…導電膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
【特許文献1】特公昭41-10504号公報
【特許文献2】特開2022-135862号公報
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
【非特許文献1】Yugang Sunら、"Crystalline Silver Nanowires by Soft Solution Processing", Nano letters, Vol. 2, (2002), No. 2, p. 165-168
【非特許文献2】菰田夏樹ら、「銀ナノワイヤー印刷配線の導電性評価」、第26回エレクトロニクス実装学会春季公演大会予稿集、9D-04、 (2012)、 p. 318
【非特許文献3】Yang Yangら、"Facile fabrication of stretchable Ag nanowire/polyurethane electrodes using high intensity pulsed light", Nano Research, 9 (2), (2016), p. 401-414
【非特許文献4】Y. Gaoら、"Synthesis, characterization and self-assembly of silver nanowires", Chemical Physics Letters, 380, (2003), p. 146-149
【非特許文献5】Masaharu Tsujiら、"Effects of chain length of polyvinylpyrrolidone for the synthesis of silver nanostructures by a microwave-polyol method", Materials Letters, 60, (2006), p. 834-838