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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101764
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20240723BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240723BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B55/02 B
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005882
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達明
【テーマコード(参考)】
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C047FF04
3C047GG00
5F057AA02
5F057AA12
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA14
5F057DA11
5F057GA04
(57)【要約】
【課題】加工熱によるチャックテーブルの形状変化の抑制を従来よりも低コストで実現できる研削方法を提供すること。
【解決手段】研削装置1を使用して被加工物100を研削する研削方法であって、研削装置1をアイドリングするアイドリングステップと、アイドリングステップの後に、チャックテーブル10に保持された被加工物100に研削水を供給しながら、被加工物100を研削する研削ステップと、を有し、アイドリングステップは、スピンドル31を回転させるとともに、モータを使用しチャックテーブル10を回転させモータの熱をチャックテーブル10に伝達する暖機運転を実施して、研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態にすることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルを回転させるモータと、
研削ホイールを先端に備えたスピンドルを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物に研削加工を施す研削ユニットと、
を備えた研削装置を使用して該被加工物を研削する研削方法であって、
該研削装置をアイドリングするアイドリングステップと、
該アイドリングステップの後に、該チャックテーブルに保持された該被加工物に研削水を供給しながら、該被加工物を研削する研削ステップと、を有し、
該アイドリングステップは、該スピンドルを回転させるとともに、該モータを使用しチャックテーブルを回転させ該モータの熱を該チャックテーブルに伝達する暖機運転を実施して、研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態にすることを特徴とする研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハや光デバイスウェーハの薄化のために、研削ホイールでウェーハ(被加工物)を研削する研削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-019067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような研削装置では、立ち上げ時にアイドリング運転(暖機運転)を実施し、装置に不具合がないかチェックするとともに、加工室内やチャックテーブルを加工時と同様の温度に整え、所定の精度で加工が実施できるよう準備される。
【0005】
しかしながら、ウェーハ(被加工物)の加工を開始すると、研削ホイールと被加工物との摩擦熱(加工熱)により、チャックテーブルの温度がアイドリング時と比較し上昇する。この温度上昇は加工枚数を重ねるごとに徐々に上昇し、ある程度の枚数の加工を実施した後に飽和する。この温度上昇によって、チャックテーブルの形状変化が発生し、研削した被加工物の面内厚さばらつきが変化してしまうという問題があった。
【0006】
この問題に対する対策として、加工時より所定温度高い研削水を供給した状態でアイドリングする手法がある。しかしながら、このような手法では研削水の温度変更機構が必要となり装置コストが上がってしまうという新たな問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工熱によるチャックテーブルの形状変化の抑制を従来よりも低コストで実現できる研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の研削方法は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルを回転させるモータと、研削ホイールを先端に備えたスピンドルを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物に研削加工を施す研削ユニットと、を備えた研削装置を使用して該被加工物を研削する研削方法であって、該研削装置をアイドリングするアイドリングステップと、該アイドリングステップの後に、該チャックテーブルに保持された該被加工物に研削水を供給しながら、該被加工物を研削する研削ステップと、を有し、該アイドリングステップは、該スピンドルを回転させるとともに、該モータを使用しチャックテーブルを回転させ該モータの熱を該チャックテーブルに伝達する暖機運転を実施して、研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、研削する予定の被加工物を保持するチャックテーブルについて、モータを使用しチャックテーブルを回転させモータの熱を当該チャックテーブルに伝達する暖機運転を実施することにより、被加工物の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた状態にまで温度を上昇させるので、加工熱によるチャックテーブルの形状変化の抑制を従来よりも低コストで実現できるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、図1の実施形態に係る研削方法を実施する研削装置の構成例を示す斜視図である。
図3図3は、図2の研削装置の要部を示す断面図である。
図4図4は、図2の研削装置の要部を示す断面図である。
図5図5は、図2の研削装置の要部を示す断面図である。
図6図6は、図2のチャックテーブルの形状変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る研削方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図2は、図1の実施形態に係る研削方法を実施する研削装置1の構成例を示す斜視図である。実施形態に係る研削方法は、図1に示すように、アイドリングステップ1001と、研削ステップ1002と、を備える。実施形態に係る研削方法のアイドリングステップ1001及び研削ステップ1002は、いずれも、例えば、図2に示す研削装置1を用いて実施される。
【0013】
実施形態に係る研削方法の研削対象である被加工物100は、本実施形態では、図2に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物100は、平坦な表面の互いに交差(本実施形態では、直交)する分割予定ラインによって区画された各領域にチップ状のデバイスが形成されている。被加工物100は、表面の裏側の裏面が研削されて所定の厚みへと薄化された後、分割予定ラインに沿って切削装置等によって分割されることで、個々の半導体デバイスチップが製造される。被加工物100は、本発明ではこれに限定されず、樹脂により封止されたデバイスを複数有した円板状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0014】
実施形態に係る研削方法を実施する研削装置1は、図2に示すように、チャックテーブル10と、ターンテーブル20と、研削ユニット30と、接触式厚み測定ユニット40と、制御ユニット50と、を備える。本実施形態では、研削装置1は、さらに、カセット61,62と、位置合わせユニット63と、搬入ユニット64と、搬出ユニット65と、洗浄ユニット66と、搬出入ユニット67と、を備える。
【0015】
図3図4及び図5は、いずれも、図2の研削装置1の要部を示す断面図である。図6は、図2のチャックテーブル10の形状変化を説明する図である。チャックテーブル10は、図3図4及び図5に示すように、凹部が形成された円盤状の枠体11と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸引保持部12と、を備える。枠体11は、多孔質でないアルミナセラミックス等のセラミックスで形成されている。吸引保持部12は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミックス等で形成されている。吸引保持部12のポーラスセラミックスは、本実施形態では、例えば、アルミナセラミックス等の砥粒である骨材と、骨材同士を固定するボンドとを備え、骨材とボンドの隙間に気孔を形成して多孔質体としたものである。チャックテーブル10は、図3図4及び図5に示すように、下方に、チャックテーブル10を下方から支持する環状のテーブル支持部(テーブルベース)16が設けられている。テーブル支持部16は、ステンレス(SUS)等の金属で形成されている。
【0016】
チャックテーブル10(枠体11及び吸引保持部12)とテーブル支持部16とは、互いに異なる材質で形成されているため、互いに熱膨張率が異なる。金属で形成されたテーブル支持部16は、セラミックスで形成されたチャックテーブル10(枠体11及び吸引保持部12)よりも熱膨張率が大きいため、被加工物100を研削する際に生じる加工熱の影響を受けることにより、図6に示すように、中央部分が凹む中凹形状に変形し、形状変化する。ここで、被加工物100を研削する際に生じる加工熱は、被加工物100を研削する研削ホイール32と被加工物100との摩擦熱を主として含んでいる。なお、図6(A)は、加工熱の影響を受けていない状態のチャックテーブル10を示しており、図6(B)は、加工熱の影響を受けて変形し、加工熱の影響が飽和した状態のチャックテーブル10を示している。このため、このようなチャックテーブル10を備える研削装置1を使用して被加工物100を研削する場合には、チャックテーブル10が加工熱の影響を受けて変形し、加工熱の影響が飽和した状態のチャックテーブル10の形状に基づいて、研削後の被加工物100の厚さが所望の面内厚さばらつきとなるように、予め、チャックテーブル10の傾斜角及び研削ユニット30による研削条件等が調整され、設定される。
【0017】
吸引保持部12は、図6に示す真空吸引経路13を介して、図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10の吸引保持部12の上面は、載置された被加工物100を下方側から吸引保持する保持面14である。枠体11の上面と保持面14とは、本実施形態では、図3図4及び図5に示すように、チャックテーブル10の保持面14の中心14-1を頂点とし、外周が僅かに低い円錐面状に形成されている。なお、保持面14は、本発明ではこれに限定されず、平坦に形成されていてもよい。
【0018】
枠体11内には、チャックテーブル10の枠体11の温度を測定する温度測定器15が設けられている。温度測定器15は、制御ユニット50と接続されており、測定したチャックテーブル10の枠体11の温度を制御ユニット50に出力する。なお、本実施形態では、温度測定器15によりチャックテーブル10の温度を測定するが、本発明ではこれに限定されず、その他の機構を用いてチャックテーブル10の温度を測定してもよい。
【0019】
チャックテーブル10は、回転駆動部17により、保持面14の中心14-1を通り、保持面14を形成する円錐の底面に直交する所定の回転軸回りに、ターンテーブル20とは独立して回転自在に設けられている。図3に示すように、回転駆動部17は、テーブル支持部16の中央に設けられた開口を貫通するように位置付けられており、チャックテーブル10の枠体11の下方に接続されている。
【0020】
回転駆動部17は、図3に示すように、回転軸部材17-1と、ケーシング17-2と、エア供給源17-3と、モータ17-4と、駆動ベルト17-5と、を備える。回転軸部材17-1は、円柱状に形成されて、上端にチャックテーブル10の枠体11が接続され、下方にプーリ17-6が設けられている。ケーシング17-2は、円筒状に形成されており、回転軸部材17-1の上端及び下端を露出させて、回転軸部材17-1を収容することで、回転軸部材17-1が挿通されている。ケーシング17-2は、図3に示すように、内部に、エア供給源17-3からのエアを内周面に供給するエア供給路17-7が形成されている。ケーシング17-2は、エア供給路17-7から内周面に供給されるエアがエアベアリングとして機能することで、内周面で回転軸部材17-1をエアで軸受けする。モータ17-4は、回転軸にプーリ17-8が設けられている。プーリ17-6とプーリ17-8とには、ベルト、チェーン等の無端の駆動ベルト17-5が架けられている。モータ17-4は、駆動して回転軸を回転させることにより、プーリ17-8、駆動ベルト17-5及びプーリ17-6を介して、回転軸部材17-1に回転動作を加え、これにより、チャックテーブル10を回転させることができる。
【0021】
図3及び図4に示すように、テーブル支持部16の下方には、チャックテーブル10の回転軸を鉛直方向と平行なZ軸方向に対して傾斜させる回転軸調整ユニット18が設けられている。チャックテーブル10は、回転軸調整ユニット18により、回転軸が鉛直方向に平行なZ軸方向に対して所定の範囲内の傾斜角だけ傾斜することができ、これに伴い、保持面14は、保持面14を形成する円錐の底面がXY平面に平行な水平面に対して同じ傾斜角だけ傾斜することができる。
【0022】
実施形態に係る研削装置1は、本実施形態では、3つのチャックテーブル10が設けられている。3つのチャックテーブル10は、図2に示すように、平面視でチャックテーブル10よりも大きい円盤状のターンテーブル20上に、例えば120°の位相角で等間隔に配設されている。なお、チャックテーブル10は、本発明ではこれに限定されず、1つでも2つでもよく、4つ以上でもよい。ターンテーブル20は、水平面内で回転自在に設けられ、所定のタイミングで回転駆動される。3つのチャックテーブル10は、ターンテーブル20の回転によって、搬入搬出位置201、第1の研削位置202-1、第2の研削位置202-2、搬入搬出位置201に順次移動される。なお、第1の研削位置202-1と第2の研削位置202-2とを区別する必要がない場合には、双方に共通のものであるとして、符号の後ろに「-1」も「-2」も付さずに適宜省略して記す。
【0023】
研削ユニット30は、本実施形態では、図2に示すように、第1の研削ユニット30-1と、第2の研削ユニット30-2と、を備える。第1の研削ユニット30-1及び第2の研削ユニット30-2は、いずれも、チャックテーブル10に保持された被加工物100を研削する。以下、第1の研削ユニット30-1に関する各部を第2の研削ユニット30-2に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-1」を付して記し、第2の研削ユニット30-2に関する各部を第1の研削ユニット30-1に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-2」を付して記す。第1の研削ユニット30-1と第2の研削ユニット30-2とを区別する必要がない場合には、対応する各部を、双方に共通のものであるとして、符号の後ろに「-1」も「-2」も付さずに適宜省略して記す。
【0024】
研削ユニット30は、図2図4及び図5に示すように、スピンドル31と、研削ホイール32と、研削水供給ユニット34と、研削送りユニット35を備える。スピンドル31は、鉛直方向(Z軸方向)に平行な軸心回りに回転可能に設けられ、下端に着脱可能に装着されて備えた研削ホイール32を鉛直方向に平行な軸心回りに回転可能に支持する。研削ホイール32は、下面に研削砥石33を環状に配置している。
【0025】
研削ユニット30は、スピンドル31が、研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10の保持面14に、鉛直方向(Z軸方向)に対向するように配置されている。本実施形態では、図2に示すように、第1の研削ユニット30-1は、第1の研削位置202-1に位置付けられたチャックテーブル10の保持面14に対向配置されており、第2の研削ユニット30-2は、第2の研削位置202-2に位置付けられたチャックテーブル10の保持面14に対向配置されている。研削水供給ユニット34は、研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100に純水等の研削水を供給する。
【0026】
研削送りユニット35は、研削ユニット30のスピンドル31及びスピンドル31に装着された研削ホイール32を研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10に対して研削送り方向(鉛直方向と平行なZ軸方向)に沿って相対的に移動させることにより、スピンドル31及び研削ホイール32と研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。本実施形態では、図2に示すように、研削送りユニット35-1は、第1の研削ユニット30-1のスピンドル31-1及びスピンドル31-1に装着された研削ホイール32-1を第1の研削位置202-1に位置付けられたチャックテーブル10に対して研削送り方向に沿って相対的に移動させることにより、スピンドル31-1及び研削ホイール32-1と第1の研削位置202-1に位置付けられたチャックテーブル10とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。また、研削送りユニット35-2は、第2の研削ユニット30-2のスピンドル31-2及びスピンドル31-2に装着された研削ホイール32-2を第2の研削位置202-2に位置付けられたチャックテーブル10に対して研削送り方向に沿って相対的に移動させることにより、スピンドル31-2及び研削ホイール32-2と第2の研削位置202-2に位置付けられたチャックテーブル10とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。
【0027】
研削送りユニット35は、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。研削送りユニット35は、Z軸の軸心回りに回転自在に設けられたボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させるモータと、研削ユニット30のスピンドル31及びスピンドル31に装着された研削ホイール32をZ軸方向に移動自在に支持するガイドと、を有して構成されている。研削送りユニット35は、モータの回転位置を読み取るエンコーダを含み、エンコーダが読み取ったモータの回転位置に基づいて、スピンドル31及び研削ホイール32の研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置を制御ユニット50に出力する。なお、研削送りユニット35は、エンコーダによりスピンドル31及び研削ホイール32の研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出する構成に限定されず、Z軸方向に平行なリニアスケールと、研削送りユニット35によりZ軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドと、により構成してもよい。
【0028】
研削ユニット30は、スピンドル31を鉛直方向に平行な軸心回りに回転駆動することにより、スピンドル31の下端に装着した研削ホイール32を鉛直方向に平行な軸心回りに回転させ、研削位置202に位置付けられてスピンドル31に対向配置された、被加工物100を保持するチャックテーブル10を回転軸回りに回転させた状態で、回転させたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、研削水供給ユニット34により研削水を供給しながら、研削送りユニット35により、回転する研削ホイール32を研削送り方向に沿って押圧することによって、研削ホイール32の研削砥石33で被加工物100を研削する。研削ホイール32は、被加工物100を研削面に沿って研削して、被加工物100の被研削面を研削面と平行に形成する。本実施形態では、第1の研削ユニット30-1は、第1の研削位置202-1に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、研削送りユニット35-1により研削ホイール32-1を研削送りし、第1の研削位置202-1に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100を研削する。また、第2の研削ユニット30-2は、第2の研削位置202-2に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、研削送りユニット35-2により研削ホイール32-2を研削送りし、第2の研削位置202-2に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100を研削する。
【0029】
研削ユニット30は、本実施形態では、例えば、第1の研削ユニット30-1を粗研削ホイールで被加工物100を粗研削する粗研削ユニットとし、第2の研削ユニット30-2を仕上げ研削ホイールで被加工物100を仕上げ研削する仕上げ研削ユニットとして、第1の研削ユニット30-1で被加工物100を粗研削してから第2の研削ユニット30-2で被加工物100を仕上げ研削してもよい。
【0030】
接触式厚み測定ユニット40は、本実施形態では、図1に示すように、第1の研削位置202-1付近と、第2の研削位置202-2付近との2箇所に設けられている。2つの接触式厚み測定ユニット40は、設けられている位置を除き、いずれも、同じ構成及び同じ機能を有する。接触式厚み測定ユニット40は、図1に示すように、第1プローブ41と、第2プローブ42と、を備える。第1プローブ41及び第2プローブ42は、本実施形態では、いずれも接触した位置の高さを測定する接触式のプローブである。
【0031】
第1プローブ41は、被加工物100を保持したチャックテーブル10の保持面14の被加工物100の外側に接触することで、保持面14のZ軸方向における位置、すなわち保持面14の高さを測定する。第2プローブ42は、チャックテーブル10の保持面14に保持された被加工物100の上面(被研削面)に接触することで、被加工物100の上面のZ軸方向における位置(上面位置)、すなわち被加工物100の上面の高さ(上面高さ)を測定する。第1プローブ41及び第2プローブ42は、いずれも、測定した位置(高さ)の結果を制御ユニット50に出力する。接触式厚み測定ユニット40は、第1プローブ41及び第2プローブ42を、それぞれ保持面14及び被加工物100の上面に接触させる接触位置(図5参照)と、それぞれ保持面14及び被加工物100の上面から上方に退避させる退避位置(図4参照)との間で、移動させることが出来る。
【0032】
制御ユニット50は、研削装置1の各種構成要素の動作を制御して、実施形態に係る研削方法を含む被加工物100の研削処理等を研削装置1に実施させる。制御ユニット50は、被加工物100の研削を開始する前に、研削装置1の状態を、被加工物100の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた状態にして、所定の精度で被加工物100の研削が実施できるようにするためにアイドリング運転(暖機運転)を実施する際に、温度測定器15により、チャックテーブル10の枠体11の温度を測定する。制御ユニット50は、アイドリング運転を実施する際に、チャックテーブル10の枠体11の温度が所定の閾値に到達したか否かを判定し、所定の閾値に到達したと判定した場合、アイドリング運転を終了する。ここで、所定の閾値は、加工熱の影響が飽和した状態のチャックテーブル10の枠体11の温度に設定される。制御ユニット50は、研削ユニット30による被加工物100の研削中に、研削送りユニット35により、スピンドル31及び研削ホイール32の研削送り速度を検出して制御し、接触式厚み測定ユニット40により、保持面14の高さ及び研削中の被加工物100の上面高さを検出して、これらの高さの検出値に基づいて研削中の被加工物100の厚みを算出する。
【0033】
制御ユニット50は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット50が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット50の演算処理装置は、制御ユニット50の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、研削装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット50の入出力インターフェース装置を介して研削装置1の各構成要素に出力する。
【0034】
カセット61,62は、図2に示すように、複数の被加工物100を収容するための収容器である。また、位置合わせユニット63は、カセット61,62から取り出された被加工物100が仮置きされて、その中心位置合わせを行うためのテーブルである。
【0035】
搬入ユニット64は、吸着パッドを有し、位置合わせユニット63で位置合わせされた研削前の被加工物100を吸着保持して搬入搬出位置201に位置付けられたチャックテーブル10上に搬入する。搬出ユニット65は、搬入搬出位置201に位置付けられたチャックテーブル10上に保持された研削後の被加工物100を吸着保持して洗浄ユニット66に搬出する。洗浄ユニット66は、研削後の被加工物100を洗浄し、研削された被研削面に付着している研削屑等のコンタミネーションを除去する。
【0036】
搬出入ユニット67は、図2に示すように、例えばU字型の形状をしたハンドを備えるロボットピックであり、U字型ハンドによって被加工物100を吸着保持して被加工物100を搬送する。具体的には、搬出入ユニット67は、研削前の被加工物100をカセット61,62から位置合わせユニット63へ搬出するとともに、研削後の被加工物100を洗浄ユニット66からカセット61,62へ搬入する。
【0037】
実施形態に係る研削方法について説明する。実施形態に係る研削方法では、研削ステップ1002の実施前に、アイドリングステップ1001を実施する。アイドリングステップ1001は、研削装置1をアイドリングするステップである。アイドリングステップ1001では、具体的には、図4に示すように、研削ステップ1002で被加工物100を研削する予定の研削ユニット30のスピンドル31を回転させるとともに、研削する予定の被加工物100を保持するチャックテーブル10について、回転駆動部17のモータ17-4を使用し当該チャックテーブル10を回転させモータ17-4の熱を当該チャックテーブル10の枠体11及び吸引保持部12に伝達する暖機運転を実施して、研削ステップ1002における被加工物100の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態にする。
【0038】
アイドリングステップ1001では、本実施形態では、研削水供給ユニット34による研削水の供給を停止して実施することで、研削ステップ1002では実施する研削水供給ユニット34による研削水の供給によるチャックテーブル10側の冷却を停止することにより、速やかにモータ17-4による熱を研削ステップ1002で発生する加工熱の飽和量相当まで蓄積させて、研削ステップ1002における被加工物100の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態を実現することができる。また、アイドリングステップ1001では、研削ステップ1002における被加工物100の研削の際よりもモータ17-4の回転数を上昇させることにより、モータ17-4の回転によって生じる熱を上昇させることで、チャックテーブル10について、研削ステップ1002における被加工物100の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態をより早く実現できるようにしてもよい。また、アイドリングステップ1001では、図4に示すように、接触式厚み測定ユニット40により、第1プローブ41及び第2プローブ42を退避位置に位置付けた状態で実施することにより、チャックテーブル10の枠体11及び吸引保持部12に伝達した熱が接触式厚み測定ユニット40に伝達してしまう恐れを抑制することで、チャックテーブル10について、研削ステップ1002における被加工物100の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態をより早く実現できるようにしてもよい。
【0039】
アイドリングステップ1001では、制御ユニット50が、温度測定器15により、チャックテーブル10の枠体11の温度を測定しながら監視する。アイドリングステップ1001では、制御ユニット50が、チャックテーブル10の枠体11の温度が所定の閾値に到達したか否かを判定し、所定の閾値に到達していないと判定した場合には当該アイドリングステップ1001を継続し、所定の閾値に到達したと判定した場合には当該アイドリングステップ1001を終了する。なお、アイドリングステップ1001では、本発明ではこれに限定されず、予め設定されて制御ユニット50に記憶された所定の時間(例えば、10分、30分、等)実施した後に終了するとしてもよい。
【0040】
アイドリングステップ1001の実施後、研削ステップ1002の実施前に、研削ホイール32で研削する被加工物100をチャックテーブル10で保持し、チャックテーブル10を研削位置202に位置付ける処理を実施する。具体的には、まず、搬出入ユニット67により、カセット61,62に収容された研削前の被加工物100を搬出して、位置合わせユニット63に搬送し、位置合わせユニット63により、搬送された研削前の被加工物100を中心位置合わせした後に、搬入ユニット64により、位置合わせユニット63で中心位置合わせされた研削前の被加工物100を、搬入搬出位置201に位置付けられたチャックテーブル10の保持面14上に搬入する。次に、チャックテーブル10の保持面14で、保持面14上に搬入された研削前の被加工物100を、被加工物100の被研削面とは反対側の面(表面)側から吸引保持する。その後、ターンテーブル20を回転させることにより、保持面14で研削前の被加工物100を保持したチャックテーブル10を、搬入搬出位置201から研削位置202に移動させる。
【0041】
研削ステップ1002は、アイドリングステップ1001の後に、研削水供給ユニット34により、チャックテーブル10に保持された被加工物100に研削水を供給しながら、被加工物100を研削するステップである。研削ステップ1002では、まず、スピンドル31を鉛直方向に平行な軸心回りに回転駆動することにより、スピンドル31の下端に装着した研削ホイール32を鉛直方向に平行な軸心回りに回転させ、研削位置202に位置付けられてスピンドル31に対向配置された、被加工物100を保持するチャックテーブル10を、回転軸回りに回転させる。研削ステップ1002では、次に、回転させたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、研削水供給ユニット34により研削水を供給しながら、研削送りユニット35により回転する研削ホイール32を研削送り方向に沿って押圧することによって、研削ホイール32の研削砥石33で被加工物100を研削する。研削ステップ1002では、図5に示すように、接触式厚み測定ユニット40により、第1プローブ41及び第2プローブ42を接触位置に位置付けた状態で実施することにより、被加工物100の厚みを監視しながら被加工物100を研削することができる。
【0042】
以上のような構成を有する実施形態に係る研削方法は、研削する予定の被加工物100を保持するチャックテーブル10について、回転駆動部17のモータ17-4を使用し当該チャックテーブル10を回転させモータ17-4の熱を当該チャックテーブル10の枠体11及び吸引保持部12に伝達する暖機運転を実施することにより、研削ステップ1002における被加工物100の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた状態にまで温度を上昇させる。実施形態に係る研削方法は、研削水供給ユニット34による研削水の供給を停止して実施することで、研削ステップ1002では実施する研削水供給ユニット34による研削水の供給によるチャックテーブル10側の冷却を停止することにより、速やかにモータ17-4による熱を研削ステップ1002で発生する加工熱の飽和量相当まで蓄積させて、研削ステップ1002における被加工物100の研削の際に生じる加工熱の影響を受けた装置状態を実現することができる。このため、実施形態に係る研削方法は、従来のような加工時より所定温度高い研削水を供給するための研削水の温度変更機構が不要であるので、加工熱によるチャックテーブル10の形状変化の抑制を従来よりも低コストで実現できるという作用効果を奏する。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 研削装置
10 チャックテーブル
17-4 モータ
30 研削ユニット
31 スピンドル
32 研削ホイール
100 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6