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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101775
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】積層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240723BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240723BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/30 C
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005901
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 純己
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AB03
3E086AD01
3E086AD24
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA29
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB71
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
4F100AA01C
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK16B
4F100AK21B
4F100AK25D
4F100AK41B
4F100AK41D
4F100AK51D
4F100AK69B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ86
4F100GB15
4F100JB13D
4F100JM01B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】紙基材を備えた積層フィルムに関し、酸素バリア性及び水蒸気バリア性のいずれも優れた積層フィルムを提供する。
【解決手段】紙基材(A)の少なくとも表裏一側に、樹脂層(B1)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた、積層フィルムであって、前記樹脂層(B1)が、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂およびポリブチレンサクシネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材(A)の少なくとも表裏一側に、樹脂層(B1)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた、積層フィルムであって、
前記樹脂層(B1)が、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂およびポリブチレンサクシネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルム。
【請求項2】
前記樹脂層(B1)の質量が0.1g/m以上20g/m以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
樹脂層(B1)と無機層(C)の間に樹脂層(B2)を積層してなる構成を備え、当該樹脂層(B2)がポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を主成分樹脂として含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層(B2)が、さらにイソシアネート系化合物を含む、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層(B2)は、ウレタン結合を有する樹脂を主成分樹脂として含む、請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記樹脂層(B2)は、以下の(i)及び/又は(ii)の化合物を含有する熱硬化性組成物から形成される、請求項4に記載の積層フィルム。
(i)水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物
(ii)水酸基及びウレタン結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物
【請求項7】
前記樹脂層(B2)の質量が0.01g/m以上5g/m以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記無機層(C)が、酸化珪素、窒化珪素および酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の無機材料を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記無機層(C)の厚みが5nm以上200nm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層フィルムを用いてなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材(A)を備え、水蒸気バリア性及び酸素バリア性を備えた積層フィルム、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品、医薬品、工業部品等を包装する包装体用のフィルムとして、収容物の腐食腐敗を防ぎ、長期保管を可能とする積層フィルムが普及している。そのため、この種の積層フィルムには、水蒸気バリア性や酸素バリア性が要求される。
【0003】
紙は、天然資源由来の材料であり、再生可能な材料でもあるため、包装体用の材料として注目されている。しかし、紙は、多孔質構造からなり、ガス透過性が高く、吸湿性も有する材料である。そのため従来から、水蒸気バリア性や酸素バリア性を紙材料に付与する目的で、紙基材上に各種バリア層を設けることが知られている。例えば、紙基材上に、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルムを貼り合わせたり、ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルムを貼り合わせたり、酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルムを貼り合わせたりする方法が知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、紙基材上に、水溶性高分子と無機層状化合物を含むガスバリア層を少なくとも1層設けたガスバリア性積層体が開示されている。
特許文献2には、紙基材上に、水蒸気バリア層、水溶性高分子を含有するガスバリア層を有する紙製バリア原紙の少なくとも一方の面上に、さらに保護層を有する紙製バリア材料が開示されている。
特許文献3には、紙基材と、セルロースナノファイバーを含有するバリア層とを備える紙バリア積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-206472号公報
【特許文献2】特開2018-058360号公報
【特許文献3】特開2021-137983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来知られていた、紙基材を備えた積層フィルムは、酸素バリア性及び水蒸気バリア性の両方を満足できるものとは言い難かった。
本発明の目的は、紙基材を備えた積層フィルムに関し、酸素バリア性及び水蒸気バリア性(本発明では、両者をまとめて「ガスバリア性」とも称する)のいずれも優れた積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するための手段として、紙基材(A)の少なくとも表裏一側に、樹脂層(B1)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムにおいて、前記樹脂層(B1)の主成分樹脂として特定の樹脂を用いることを提案する。
すなわち、本発明は、次の構成を有する態様の積層フィルム並びに包装体を提案するものである。
【0008】
[1]本発明の第1の態様は、紙基材(A)の少なくとも表裏一側に、樹脂層(B1)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた、積層フィルムであって、前記樹脂層(B1)が、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂およびポリブチレンサクシネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルムである。
【0009】
[2]本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記樹脂層(B1)の質量が0.1g/m以上20g/m以下である、積層フィルムである。
【0010】
[3]本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様において、樹脂層(B1)と無機層(C)の間に樹脂層(B2)を積層してなる構成を備え、当該樹脂層(B2)がポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルムである。
[4]本発明の第4の態様は、前記第3の態様において、前記樹脂層(B2)が、さらにイソシアネート系化合物を含む、積層フィルムである。
【0011】
[5]本発明の第5の態様は、前記第4の態様において、前記樹脂層(B2)は、ウレタン結合を有する樹脂を主成分樹脂として含む、積層フィルムである。
[6]本発明の第6の態様は、前記第4の態様において、前記樹脂層(B2)は、以下の(i)及び/又は(ii)の化合物を含有する熱硬化性組成物から形成される、積層フィルムである。
(i)水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物
(ii)水酸基及びウレタン結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物
【0012】
[7]本発明の第7の態様は、前記第1~6のいずれか一の態様において、前記樹脂層(B2)の質量が0.01g/m以上5g/m以下である、積層フィルムである。
[8]本発明の第8の態様は、前記第1~7のいずれか一の態様において、前記無機層(C)が、酸化珪素、窒化珪素および酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の無機材料を含む、積層フィルムである。
[9]本発明の第9の態様は、前記第1~8のいずれか一の態様において、前記無機層(C)の厚みが5nm以上200nm以下である、積層フィルムである。
【0013】
[10]本発明の第10の態様は、前記第1~9のいずれか一の態様の積層フィルムを用いてなる包装体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する積層フィルムは、酸素バリア性及び水蒸気バリア性が共に優れており、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装材料として好適である。よって、本発明が提案する積層フィルムは、例えば食品や工業用品及び医薬品等の包装材料として好適に利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<<本発明積層フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルム(以下、「本発明積層フィルム」とも称する)は、紙基材(A)の少なくとも表裏一側に、樹脂層(B)及び無機層(C)が順次積層してなる構成を備えたものである。
【0017】
<紙基材(A)>
本発明積層フィルムにおける紙基材(A)は、繊維が絡まって薄く平らに成形されたものであればよい。中でも、植物由来のパルプを主材とするフィルム状であるのが好ましい。
ここで、上記「主材」とは、紙基材(A)を構成する原料の中で最も質量割合の高い材料の意味である。具体的な質量割合を限定するものではないが、例えば紙基材(A)を構成する原料の50質量%以上、中でも70質量%以上、その中でも80質量%以上、90質量%以上を占める原料を想定することができる。
【0018】
前記パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白パルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上の組み合わせであってもよい。
【0019】
紙基材(A)は、パルプ以外に、填料などの各種助剤を含むものであってもよい。
前記填料としては、例えばホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を挙げることができる。また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。
さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて含ませることができる。
【0020】
紙基材(A)の具体例としては、通常の上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷用紙、各種コート紙、片艶紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙やアート紙、マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙、コート紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、グラシン紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙等を例示することができる。但し、これらに限定するものではない。
【0021】
紙基材(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材(A)を製造することができる。
紙基材(A)は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0022】
紙基材(A)の表面を各種薬剤で処理することも可能である。この際の薬剤としては、例えば酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独或いは2種類以上を混合して用いることができる。
これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
紙基材(A)の表面処理の方法としては、例えば、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いた方法を挙げることができる。
【0023】
(紙基材(A)の厚み)
紙基材(A)の厚み(Ta)は、強度及び剛性を高める観点から、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、中でも20μm以上であることがさらに好ましい。また、ハンドリング性などの観点から、250μm以下であることが好ましく、220μm以下であることがより好ましく、中でも200μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
(紙基材(A)の坪量)
紙基材(A)の坪量は、20g/m以上400g/m以下であることが好ましく、中でも25g/m以上或いは200g/m以下のものがより好ましく、その中でも30g/m以上或いは100g/m以下のものがさらに好ましい。坪量がこの範囲内であると、本発明積層フィルムを、食品などの包装材などとして、包装用途に好適に使用することができる。
【0025】
<樹脂層(B)>
樹脂層(B)は、単層であっても、二層以上の多層構成であってもよい。
樹脂層(B)が二層以上からなる場合、各層の主材が樹脂であればよい。この際、「主材」とは、各層を構成する材料のうち最も質量割合の高いものを意味する。
【0026】
樹脂層(B)は、例えば下記樹脂層(B1)からなる単層構成であってもよいし、下記樹脂層(B1)及び下記樹脂層(B2)を備えた多層構成であってもよい。
【0027】
<樹脂層(B1)>
本発明積層フィルムにおいて、樹脂層(B1)は、紙基材(A)と無機層(C)の密着性を向上させるために有用である。無機層(C)中に生じた応力を緩和し、バリア性を向上させるためにも有用である。さらに、バリア性樹脂を含む樹脂層(B1)を設けることにより、よりバリア性を向上させることもできる。
【0028】
(樹脂層(B1):ベース樹脂)
樹脂層(B1)は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂およびポリブチレンサクシネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂(「樹脂層(B1)のベース樹脂」とも称する)を含むことが好ましく、主成分樹脂として含有することがさらに好ましい。
【0029】
なお、上記「主成分樹脂」とは、樹脂層(B1)に含まれる樹脂成分のうち最も多い質量%を占める樹脂を意味し、樹脂層(B1)に含まれる樹脂成分の合計質量を100質量%したとき、その樹脂が占める質量割合が50質量%以上である場合、60質量%以上である場合、70質量%以上である場合、80質量%以上である場合、90質量%以上である場合、100質量%である場合を想定することができる。
【0030】
[ポリ塩化ビニリデン系樹脂]
前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂とは、ポリ塩化ビニリデン樹脂、及び、ポリ塩化ビニリデン樹脂を変性してなる変性ポリ塩化ビニリデン樹脂を包含する意味である。
【0031】
前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂としては、具体的には、塩化ビニリデン重合体、或いは、塩化ビニリデンモノマーと各種共重合モノマーとの共重合体を挙げることができる。
当該共重合モノマーの具体例としては、例えば塩化ビニルやアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸や、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステルや、アクリル酸グリシジルメタクリル酸エステルや、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂の質量平均分子量は、ガスバリア性の観点から、5000~1000000であるのが好ましく、中でも8000以上或いは700000以下、その中でも10000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
[ポリビニルアルコール系樹脂]
前記ポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコール樹脂、及び、ポリビニルアルコール樹脂を変性してなる変性ポリビニルアルコール樹脂を包含する意味である。
【0034】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの重合体であるポリ酢酸ビニルのアセテート基をケン化することで得ることが出来る。また、ポリビニルアルコール系樹脂は、一部変性されたものであってもよく、例えばブテンジオール変性、シラノール変性、アセトアセチル変性が挙げられる。
【0035】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の質量平均分子量は、ガスバリア性や水への溶解性の観点から、8000~1000000であるのが好ましく、中でも10000以上或いは700000以下、その中でも12000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0036】
[エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂]
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂とは、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及び、エチレン-ビニルアルコール共重合体を変性してなる変性エチレン-ビニルアルコール共重合体を包含する意味である。
【0037】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂としては、酢酸ビニルの含有率が約79~92wt%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を完全ケン化した、エチレン含有率25~50モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
【0038】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂の質量平均分子量は、ガスバリア性や水への溶解性の観点から、8000~1000000であるのが好ましく、中でも10000以上或いは700000以下、その中でも12000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0039】
[ポリブチレンサクシネート系樹脂]
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂とは、ポリブチレンサクシネート樹脂、及び、ポリブチレンサクシネート樹脂を変性してなる変性ポリブチレンサクシネート樹脂を包含する意味である。
【0040】
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・セバケートなどが挙げられる。
【0041】
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の質量平均分子量は、紙基材(A)との密着性や屈曲性の観点から、5000~1000000であるのが好ましく、中でも8000以上或いは700000以下、その中でも10000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0042】
(質量)
前記樹脂層(B1)の質量は、ガスバリア性の観点から、0.1g/m以上であるのが好ましく、中でも0.3g/m以上、その中でも0.5g/m以上であるのがさらに好ましい。他方、生産性とコストの観点から、20g/m以下であるのが好ましく、中でも18g/m以下、その中でも15g/m以下であるのがさらに好ましい。
なお、樹脂層(B1)の質量は、紙基材(A)と、紙基材(A)上に樹脂層(B1)を積層したものを用意し、それぞれ同じ面積を切り出して、その質量を測定し差分により算出することができる。
【0043】
(樹脂層(B1)の形成方法)
樹脂層(B1)を形成する方法としては、樹脂層(B1)のベース樹脂と、必要に応じて「その他所定材料」とを溶媒に混合してコート液とし、該コート液を紙基材(A)上に塗布し、乾燥させると共に、必要に応じて硬化させることで樹脂層(B1)を形成することができる。
【0044】
前記の「その他所定材料」としては、例えば光重合開始剤、架橋剤、粒子、架橋触媒、カルボジイミド化合物、界面活性剤や、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーなどを挙げることができる。
【0045】
前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、アセトン等のケトン系溶媒;ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の炭化水素系溶媒等の有機溶媒を例示することができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0046】
また、樹脂層(B1)を形成するための組成物は、溶剤として水を含有してもよく、有機溶剤と水の混合物を溶剤として使用してもよい。該組成物が溶剤を含有することで、固形成分が溶剤により希釈されることで塗布性が良好となる。
溶剤は、例えば、固形分濃度が0.1~50質量%程度になるように、前記組成物に配合するとよい。
【0047】
コーティング方法としては、例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、バーコーター、スプレイ等を用いたコーティング方法等の方法がいずれも採用可能である。
コーティング後は、60~200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥等の加熱乾燥や、赤外線乾燥等の公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。
【0048】
次いで、必要に応じて、硬化させることができる。
硬化方法は、紫外線などを照射する光硬化、加熱する熱硬化のいずれでもよい。例えば、イソシアネート系化合物を配合した場合には加熱して熱硬化するのが好ましい。
熱硬化させる際の条件(加熱温度、時間)としては、例えば加熱温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上、中でも80℃以上が特に好ましい。上限は200℃程度である。加熱時間は0.5~120秒が好ましく、1~90秒がより好ましく、2~60秒が特に好ましい。
【0049】
<樹脂層(B2)>
前記樹脂層(B1)と無機層(C)の間に、樹脂層(B1)とは異なる樹脂層(B2)を設けてもよい。
中でも、樹脂層(B1)の主成分樹脂がポリブチレンサクシネート系樹脂である場合には、樹脂層(B1)と無機層(C)の間に樹脂層(B2)を積層するのが特に好ましい。
【0050】
(樹脂層(B2):ベース樹脂)
樹脂層(B2)は、ガスバリア性の観点から、熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂(「樹脂層(B2)のベース樹脂」とも称する)を主成分樹脂として含む層であるのが好ましい。
【0051】
なお、上記「主成分樹脂」とは、樹脂層(B2)に含まれる樹脂成分のうち最も多い質量%を占める樹脂を意味し、樹脂層(B2)に含まれる樹脂成分の合計質量を100質量%したとき、その樹脂が占める質量割合が50質量%以上である場合、60質量%以上である場合、70質量%以上である場合、80質量%以上である場合、90質量%以上である場合、100質量%である場合を想定することができる。
【0052】
[ポリエステル系樹脂]
前記ポリエステル系樹脂とは、ポリエステル樹脂に加えて、変性ポリエステル樹脂を包含する意味である。
【0053】
前記ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を反応させることにより得ることができる樹脂であればよい。また、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分以外の共重合成分を反応させて得られる樹脂であってもよい。
【0054】
前記多価カルボン酸成分は、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸及びオルトフタル酸等を例示することができ、これらのうちの1種でも、2種以上でもよい。
前記多価アルコール成分としては、例えばエチレン-グリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレン-グリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール及び1,6-ヘキサンジオール等を例示することができ、これらのうちの1種でも、2種以上でもよい。
【0055】
前記ポリエステル系樹脂の質量平均分子量は、樹脂層(B1)と無機層(C)の密着性を向上させ、無機層(C)の応力を緩和させる観点から、10000~1000000であるのが好ましく、中でも12000以上或いは700000以下、その中でも15000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0056】
[ウレタン系樹脂]
前記ウレタン系樹脂とは、ウレタン樹脂ばかりか、変性ウレタン樹脂を包含する意味である。
前記ウレタン系樹脂は、例えばポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを常法に従って反応させることにより製造される水溶性または水分散性樹脂であればよい。また、ポリヒドロキシ化合物及びポリイソシアネート化合物以外の化合物を反応させて得られる変性ウレタン樹脂でもよい。
【0057】
前記ポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリン等を挙げることができ、これらのうちの1種でも、2種以上でもよい。
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを挙げることができ、これらのうちの1種でも、2種以上でもよい。
【0058】
前記ウレタン系樹脂の質量平均分子量は、樹脂層(B1)と無機層(C)の密着性を向上させ、無機層(C)の応力を緩和させる観点から、10000~1000000であるのが好ましく、中でも12000以上或いは700000以下、その中でも15000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0059】
[アクリル系樹脂]
前記アクリル系樹脂とは、アクリル樹脂のほかに変性アクリル樹脂を包含する意味である。
前記アクリル系樹脂は、アクリル酸やメタクリル酸誘導体、スチレンなどの重合性不飽和単量体を数種類共重合させて得られる樹脂であればよい。
例えば、重合性不飽和単量体を従来公知の重合法を用いて重合して得られたものを使用することができる。
【0060】
前記重合性不飽和単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができ、これらのうちの1種でも、2種以上でもよい。
【0061】
また、アクリル樹脂を形成した後に架橋性化合物と架橋させる観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート及びフタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーや、アミノ基及びカルボキシル基等他の架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー並びに(メタ)アクリル酸等の酸性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー等を挙げることができる。
前記アクリル系樹脂の一例として、アクリル酸エステルとビニル化合物などを共重合したアクリル樹脂(アクリルポリオール)を挙げることができる。
【0062】
前記アクリル系樹脂の質量平均分子量は、樹脂層(B1)と無機層(C)の密着性を向上させ、無機層(C)の応力を緩和させる観点から、10000~1000000であるのが好ましく、中でも12000以上或いは700000以下、その中でも15000以上或いは500000以下であるのがさらに好ましい。
【0063】
(硬化剤)
樹脂層(B2)は、前記ベース樹脂のほか、イソシアネート系化合物などの硬化剤を含有してもよい。
【0064】
イソシアネート系化合物は硬化剤として機能するため、樹脂層(B2)がイソシアネート系化合物を含むことで、樹脂層(B2)中に架橋構造を導入することができる。さらに、樹脂層(B2)に適度な剛性と柔軟性を付与することができ、無機層(C)に残留する応力を緩和させることで無機層(C)のガスバリア性を高めることができ、紙基材(A)と無機層(C)の密着性を向上させ易くなる。
【0065】
イソシアネート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートや、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。ガスバリア性や、樹脂層(B1)と無機層(C)との密着性の点から、イソシアネート基が2つ以上のポリイソシアネートが好ましく、より好ましくはイソシアネート基が3つ以上のポリイソシアネートである。
【0066】
イソシアネート系化合物の含有量を調整することにより、樹脂層(B2)に適度な架橋を導入することができ、樹脂層(B2)の硬さ及び柔らかさを調整することができ、応力緩和性及び密着性などを調整することができる。かかる観点から、樹脂層(B2)におけるイソシアネート系化合物の含有量は、前記ベース樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上であるのが好ましく、中でも0.5質量部以上、その中でも0.8質量部以上、その中でも1.0質量部以上であるのがさらに好ましい。他方、400質量部以下であるのが好ましく、中でも200質量部以下、その中でも150質量部以下、その中でも100質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0067】
(樹脂層(B2)の特に好ましい態様)
樹脂層(B2)は、ウレタン結合を有する樹脂を主成分樹脂として含むことが特に好ましい。
ここで、上記「主成分樹脂」とは、樹脂層(B2)に含まれる樹脂成分のうち最も多い質量%を占める樹脂を意味する。樹脂層(B2)を100質量%とする場合、ウレタン結合を有する樹脂すなわち中間層ベース樹脂を、50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上(100質量%を包含する)含むことがさらに好ましい。
【0068】
前記ウレタン結合を有する樹脂は、例えば水酸基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物との反応によって得ることができる。
【0069】
樹脂層(B2)に、ウレタン結合を有する樹脂を含有せしめる方法の具体的態様としては、以下の(i)~(iv)の態様を挙げることができる。
(i)水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物とを含有する熱硬化性組成物を、紙基材(A)上に塗布し、乾燥、加熱する態様
(ii)水酸基及びウレタン結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物とを含有する熱硬化性組成物を、紙基材(A)上に塗布し、乾燥、加熱する態様
(iii)ウレタン結合を有する樹脂を含有する組成物を、紙基材(A)上に塗布、乾燥する態様
(iv)上記(i)~(iii)の二以上を組み合わせた態様
【0070】
上記熱硬化性組成物は、熱などのエネルギーを与えることによって、水酸基を有する化合物または水酸基及びウレタン結合を有する化合物の水酸基と、イソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基とがウレタン結合を生起して、分子内にウレタン結合を有する樹脂を生成する。
【0071】
[水酸基を有する化合物]
上記(i)の態様に用いられる水酸基を有する化合物としては、例えばアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。これらは、1種類のみを用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0072】
上記アクリルポリオールは、例えば(メタ)アクリル系モノマーと水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させて得ることができる。ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」との総称である。また、以下の説明において、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」との総称である。
【0073】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールあるいはトリオール、ポリブチレングリコールあるいはトリオール、ポリテトラメチレングリコールあるいはトリオール、さらには、これら炭素数の異なるオキシアルキレン化合物の付加重合体やブロック共重合体等を挙げることができる。
【0074】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンジオール等の脂肪族グリコールと、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、スベリン酸、アゼライン酸、1,10-デカメチレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸とを必須原料成分として反応させた脂肪族ポリエステルポリオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコールと、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸とを必須原料成分として反応させた芳香族ポリエステルポリオールなどを挙げることができる。
【0075】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えばブタジエンやイソプレンなどの炭素数4から12個のジオレフィン類の重合体および共重合体、炭素数4から12のジオレフィンと炭素数2から22のα-オレフィン類の共重合体のうち、水酸基を含有している化合物などを挙げることができる。
【0076】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸ジアルキルと1,6-ヘキサンジオールのみを用いて得たポリカーボネートポリオールや、より結晶性が低い点で、ジオールとして、1,6-ヘキサンジオールと、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールとを共重合させて得られるポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。
【0077】
[イソシアネート基を有する化合物]
上記(i)(ii)の態様に用いられるイソシアネート基を有する化合物としては、例えば分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0078】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート及びこれらイソシアネート化合物の重合体、誘導体、変性体、水素添加体などを挙げることができる。
【0079】
上記(i)の態様において、水酸基を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物との含有比率は、水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物を含有する熱硬化性組成物の高温度領域での貯蔵弾性率を向上させる観点から、水酸基を有する化合物100質量部に対して、イソシアネート基を有する化合物を1質量部以上含有させるのが好ましく、中でも2質量部以上、その中でも3質量部以上含有させるのがさらに好ましい。他方、前記熱硬化性組成物のタック性を抑制する観点から、水酸基を有する化合物100質量部に対して、イソシアネート基を有する化合物を500質量部以下の割合で含有させるのが好ましく、中でも400質量部以下、その中でも300質量部以下の割合で含有させるのがさらに好ましい。
【0080】
[水酸基及びウレタン結合を有する化合物]
上記(ii)の態様に用いられる、水酸基及びウレタン結合を有する化合物としては、例えばウレタンポリオール、ウレタン変性(メタ)アクリルポリオール、ウレタン変性ポリエステルポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ウレタン変性ポリオレフィン系ポリオール、ウレタン変性ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。ここで、「ウレタン変性(メタ)アクリルポリオール」とは、「ウレタン変性アクリルポリオール」と「ウレタン変性メタクリルポリオール」との総称である。
【0081】
上記ウレタンポリオールは、例えばポリイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物とを、水酸基がイソシアネート基に対して過剰となるような比率で反応させて得られる。その際に使用されるポリイソシアネート化合物としては、前述したポリイソシアネート化合物を挙げることができる。また、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物としては、例えば多価アルコール類、ポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。
【0082】
上記ウレタン変性(メタ)アクリルポリオールとしては、前述のアクリルポリオールを前述のポリイソシアネートで変性したものを挙げることができる。
【0083】
上記ウレタン変性ポリエーテルポリオールとしては、例えば前述のポリエーテルポリオールを前述のポリイソシアネート化合物で変性したものを挙げることができる。
【0084】
上記ウレタン変性ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えば前述のポリオレフィン系ポリオールを前述ポリイソシアネート化合物で変性したものを挙げることができる。
【0085】
ウレタン変性ポリカーボネートポリオールとしては、例えば前述のポリカーボネートポリオールを前述のポリイソシアネート化合物で変性したものを挙げることができる。
【0086】
上記(ii)の態様において、水酸基及びウレタン結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物との含有比率は、水酸基及びウレタン結合を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物を含有する熱硬化性組成物の高温度領域での貯蔵弾性率を向上させる観点から、水酸基及びウレタン結合を有する化合物100質量部に対して、イソシアネート基を有する化合物を1質量部以上含有させるのが好ましく、中でも2質量部以上、その中でも3質量部以上含有させるのがさらに好ましい。他方、前記熱硬化性組成物のタック性を抑制する観点から、水酸基及びウレタン結合を有する化合物100質量部に対して、イソシアネート基を有する化合物を500質量部以下の割合で含有させるのが好ましく、中でも400質量部以下、その中でも300質量部以下の割合で含有させるのがさらに好ましい。
【0087】
[ウレタン結合を有する樹脂]
上記(iii)の態様に用いられるウレタン結合を有する樹脂としては、ウレタン樹脂、ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂を挙げることができる。
【0088】
(40℃の貯蔵弾性率)
樹脂層(B2)は、JIS K7244-4(1999)に準拠した動的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した40℃の貯蔵弾性率が、100MPa以上5000MPa以下であることが好ましく、中でも150MPa以上或いは5000MPa以下であるのがより好ましく、その中でも200MPa以上或いは4000MPa以下、その中でも500MPa以上或いは3000MPa以下であるのがさらに好ましい。
【0089】
樹脂層(B2)の貯蔵弾性率が、上記範囲であれば、無機層(C)の応力を緩和しクラック等の発生を抑制することができ、樹脂層(B1)と無機層(C)との密着性並びにガスバリア性を高めることができる。
なお、樹脂層(B2)の貯蔵弾性率を調整するためには、例えば、樹脂層(B2)におけるベース樹脂の種類を変化させたり、硬化剤の配合量を調整したりする方法を挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0090】
(質量)
前記樹脂層(B2)の質量は、樹脂層(B1)と無機層(C)の密着性を向上させ、無機層の応力を緩和させる観点から、0.01g/m以上であるのが好ましく、中でも0.02g/m以上、その中でも0.03g/m以上であるのがさらに好ましい。他方、ブロッキングを抑制する観点から、20g/m以下であるのが好ましく、中でも15g/m以下、その中でも10g/m以下であるのがさらに好ましい。
なお、樹脂層(B2)の質量は、紙基材(A)上に樹脂層(B1)を積層したものと、その樹脂層(B1)上に更に樹脂層(B2)を積層したものを用意し、それぞれ同じ面積を切り出して、その質量を測定し差分により算出することができる。
【0091】
前記樹脂層(B1)の質量に対する前記樹脂層(B2)の質量割合(B2/B1)は、ガスバリア性の観点から、0.01以上であるのが好ましく、中でも0.03以上、その中でも0.05以上であるのがさらに好ましい。他方、ブロッキングを抑制する観点から、5以下であるのが好ましく、中でも4以下、その中でも3以下であるのがさらに好ましい。
【0092】
(樹脂層(B2)の形成方法)
樹脂層(B2)を形成する方法としては、樹脂層(B2)のベース樹脂と、必要に応じて「その他所定材料」とを溶媒に混合してコート液とし、前記樹脂層(B1)上に塗布し、乾燥させると共に、必要に応じて硬化させることで樹脂層(B2)を形成することができる。
【0093】
また、樹脂層(B2)は、以下の(i)~(iv)の態様により形成することができる。
(i)水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物と、必要に応じて「その他所定材料」とを混合して熱硬化性組成物を調製し、当該熱硬化性組成物を前記樹脂層(B1)上に塗布し、乾燥、加熱する態様
(ii)水酸基及びウレタン結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物と、必要に応じて「その他所定材料」とを混合して熱硬化性組成物を調製し、当該熱硬化性組成物を前記樹脂層(B1)上に塗布し、乾燥、加熱する態様
(iii)ウレタン結合を有する樹脂と、必要に応じて「その他所定材料」とを混合して熱硬化性組成物を調製し、当該熱硬化性組成物を前記樹脂層(B1)上に塗布し、乾燥する態様
(iv)上記(i)~(iii)の二以上を組み合わせた態様
【0094】
前記の「その他所定材料」としては、例えば光重合開始剤、架橋剤、粒子、架橋触媒、カルボジイミド化合物、界面活性剤や、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーなどを挙げることができる。
【0095】
上記樹脂組成物及び上記熱加工性組成物は、溶媒に混合してコート液とするのが好ましい。但し、これに限定するものではない。
前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、アセトン等のケトン系溶媒;ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の炭化水素系溶媒等の有機溶媒を例示することができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0096】
また、樹脂層(B2)を形成するための組成物は、溶剤として水を含有してもよく、有機溶剤と水の混合物を溶剤として使用してもよい。該組成物が溶剤を含有することで、固形成分が溶剤により希釈されることで塗布性が良好となる。
溶剤は、例えば、固形分濃度が0.1~50質量%程度になるように、前記組成物に配合するとよい。
【0097】
コーティング方法としては、例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、バーコーター、スプレイ等を用いたコーティング方法等の方法がいずれも採用可能である。
コーティング後は、60~200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥等の加熱乾燥や、赤外線乾燥等の公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。
【0098】
次いで、必要に応じて、硬化させるのが好ましい。
硬化方法は、紫外線などを照射する光硬化、加熱する熱硬化のいずれでもよい。例えば、イソシアネート系化合物を配合した場合には加熱して熱硬化するのが好ましい。
上記樹脂組成物又は上記熱加工性組成物を熱硬化させる際の条件(加熱温度、時間)としては、例えば加熱温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上、中でも80℃以上が特に好ましい。上限は200℃程度である。加熱時間は0.5~120秒が好ましく、1~90秒がより好ましく、2~60秒が特に好ましい。
【0099】
(質量)
樹脂層(B1)及び樹脂層(B2)の合計質量は、ガスバリア性及びブロッキングを抑制する観点から、0.15g/m以上40g/m以下であることが好ましく、中でも0.2g/m以上或いは35g/m以下、その中でも0.3g/m以上或いは30g/m以下であるのがより好ましい。
【0100】
また、ガスバリア性及び生産性の観点から、樹脂層(B1)及び樹脂層(B2)の合計質量をWb、前記紙基材(A)の質量をWaとしたときに、質量比(Wb/Wa)は0.001以上0.6以下であるのが好ましく、中でも0.005以上或いは0.5以下であるのがより好ましく、その中でも0.01以上或いは0.4以下であるのがさらに好ましい。
【0101】
(層厚み)
樹脂層(B1)及び樹脂層(B2)の合計厚み(Tb)は、ガスバリア性及びフィルムのブロッキングを抑制する観点から、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、中でも0.015μm以上或いは4μm以下、その中でも0.02μm以上或いは3μm以下であるのがより好ましい。
なお、樹脂層(B2)を設けない場合、上記樹脂層(B1)及び樹脂層(B2)の合計厚み(Tb)は、樹脂層(B1)の厚み(Tb1)と読み替えることができる。後述する場合についても同様である。
【0102】
樹脂層(B1)の厚み(Tb1)に対する、樹脂層(B2)の厚み(Tb2)の比率(Tb2/Tb1)は、ガスバリア性の観点から、0.001以上であるのが好ましく、中でも0.005以上、その中でも0.01以上であるのがより好ましい。他方、フィルムのブロッキングを抑制する観点から、0.5以下であるのが好ましく、中でも0.4以下、その中でも0.3以下であるのがより好ましい。
【0103】
樹脂層(B2)の厚み(Tb2)は、ガスバリア性及びフィルムのブロッキングを抑制する観点から、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、中でも0.015μm以上或いは4μm以下、その中でも0.02μm以上或いは3μm以下であるのがより好ましい。
【0104】
ガスバリア性及びフィルムのカールを抑制する観点から、樹脂層(B1)及び樹脂層(B2)の合計厚みを(Tb)、前記紙基材(A)の厚みを(Ta)としたときに、厚み比(Tb)/(Ta)は0.001以上0.2以下であるのが好ましく、中でも0.0012以上或いは0.15以下であるのがより好ましく、その中でも0.015以上或いは0.1以下であるのがさらに好ましい。
【0105】
また、樹脂層(B1)及び樹脂層(B2)の合計厚みを(Tb)は、ガスバリア性や光学特性の観点から、無機層(C)の厚み(Tc)の50~15000%であるのが好ましく、中でも100%以上或いは10000%以下、その中でも200%以上或いは5000%以下であるのがさらに好ましい。
【0106】
<無機層(C)>
本発明積層フィルムは、無機層(C)を備えることで、水蒸気、酸素ガス等のガスの透過を抑制し、ガスバリア性を本発明積層フィルムに付与することができる。
【0107】
無機層(C)は、無機物、特に無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物を主材として含有する層であるのが好ましい。
該「主材」とは、無機層(C)の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める材料という意味である。
【0108】
無機層(C)を構成する主材としての無機物としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム及び酸化炭化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種または2種以上の無機化合物を挙げることができる。
これらの中でも、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の無機材料を主材として含むことが好ましい。
【0109】
無機層(C)としては、例えば物理的気相蒸着(PVD)法により形成されたPVD無機層、プラズマアシスト蒸着法により形成されたプラズマアシスト蒸着無機層、化学蒸着(CVD)法により形成されたCVD無機層、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法により形成されたコート無機層などであるのが好ましい。
【0110】
無機層(C)を100質量%とする場合、前記無機物が70質量%以上を占めるのがより好ましく、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0111】
無機層(C)にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンを含有させて、ガスバリア性を向上させてもよい。
【0112】
無機層(C)は、無機物以外に有機物を含んでもよい。
無機物に有機物を混合して無機層(C)を形成することにより、無機層(C)を比較的柔軟な層とすることができる。このような柔軟な層を設けることにより、ガスバリア性をさらに高めることができる場合がある。すなわち、紙基材(A)の表面に粗大突起部などがある場合、これが起点となって、無機層(C)表面に、ピンホールと呼ばれる微小な欠陥が生じたり、加熱蒸着時に原料が塊となって飛来し付着して、無機層(C)表面に微小な欠陥が生じたりすることがあり、この欠陥による空隙をガスが通過することによってガスバリア性が低下することがある。このような場合には、柔軟な層を設けることにより、ガスバリア性を維持することができる。
当該有機物としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、PVAなどの有機物のほか、有機系フィラーなどを挙げることができる。
【0113】
(無機層(C)の層構成)
無機層(C)は、単層構成であっても、2層以上の複層構成であってもよい。
例えば、2層以上の複層構成の一例として、そのうちの一層を無機物、例えば無機酸化物のみからなる無機層(C)とし、他の一層を、無機酸化物と有機物とを含有する層とする例を挙げることができる。
無機酸化物と有機物とを含有する層は、上述のように柔軟な層とすることができるから、この層を積層することで、前記欠陥を埋めることができ、ガスバリア性を高めることができる場合がある。
なお、ここで言う「柔軟な層」とは、例えばフレキシブル用途など、屈曲性が必要な用途に対応できるように、無機層(C)の応力を緩和する層の意味を包含するものである。
【0114】
(厚み)
無機層(C)の厚み(Tc)は、所望するガスバリア性を確保しつつ、透明性を維持するなどの観点から、5nm以上200nm以下であることが好ましく、中でも10nm以上或いは150nm以下であることがより好ましく、その中でも15nm以上或いは100nm以下であることがさらに好ましい。無機層(C)が複数の場合は、それらの合計厚である。
無機層の層厚(Tc)は、積層フィルムの断面超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡などで観察することで測定できる。
【0115】
(無機層(C)の形成方法)
無機層(C)の形成(成膜)方法としては、例えば、真空加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相蒸着(PVD)法、化学気相蒸着(CVD)法などの公知の方法を用いることができる。PVD法、CVD法に、プラズマアシストを組み合わせてもよい。無機層が複数層の場合は、複数の無機層成膜法を用いてもよい。
ガスバリア性の点ではPVD法が好ましく、例えば、SiOx(1.0<x≦2.0)で表される酸化珪素からなる無機層を形成することが好ましい。SiOxのxの値が小さいとガスバリア性が高まり、xの値が大きいと無色透明性が良好となり、両者のバランスの点で、1.5≦x≦2.0が好ましい。
SiOxの組成の制御は、使用する原料の配合組成、反応ガス種、真空度、蒸着速度により調整可能であり、SiOxの組成は、X線光電子分光法(XPS)等により分析できる。
【0116】
PVD法にプラズマアシストを組み合わせる場合は、真空蒸着中に、プラズマにより蒸着物質をイオン化しながら蒸着する、或いは別に設けたイオン源から気体イオンを照射するのがよい。プラズマアシストによって、無機層内に酸素原子を効率的に取り込むことができるので、無機層のガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。また、プラズマアシストにより蒸着物質にエネルギーを付与できるため、緻密な無機層を形成できる。また、プラズマ中の励起種は反応性に富むため、酸素、窒素、アセチレン等のガス導入による蒸発物質の酸化、窒化、炭化等を容易に制御できる。
従って、SiOx、AlOx等の無機酸化物の場合、PVD法のみで得た無機層に比べ、プラズマアシストを組み合わせると、xの値が同じでも緻密な膜構造となりガスバリア性を向上させることができる。
【0117】
<本発明積層フィルムの物性)
上記構成を備えた本発明積層フィルムは、次のような物性を有することができる。
【0118】
(水蒸気バリア性)
本発明積層フィルムは、JIS K7129-5(2016)に準じて測定される、温度40℃相対湿度90%における水蒸気透過率(WVTR)が、7.4g/m/day以下であることが好ましく、中でも7.0g/m/day以下であることがより好ましく、6.0g/m/day以下であることがより好ましく、5.0g/m/day以下がより好ましく、4.5g/m/day以下がさらに好ましく、4.0g/m/day以下が特に好ましく、3.0g/m/day以下が最も好ましい。
【0119】
(酸素バリア性)
本発明積層フィルムは、JIS K7126-2(2006)に準じて測定される、25℃相対湿度80%の条件下での酸素透過率(OTR)が、2.5cc/m/day/atm以下であるのが好ましく、2.3cc/m/day/atm以下であるのがより好ましく、2.0cc/m/day/atm以下がより好ましく、1.8cc/m/day/atm以下がさらに好ましく、1,6cc/m/day/atm以下が特に好ましい。
【0120】
本発明積層フィルムは、水蒸気透過率(WVTR)、酸素透過率(OTR)の少なくとも一方が上記の範囲であることが好ましいが、水蒸気透過率(WVTR)、酸素透過率(OTR)の両方が上記の範囲であることがより好ましい。
【0121】
<表面樹脂層(D)>
本発明積層フィルムは、さらに無機層(C)の保護やガスバリア性向上を目的として、無機層(C)の表面に表面樹脂層(D)を設けてもよい。表面樹脂層(D)を設けることにより、本発明積層フィルムの水蒸気バリア性及び酸素バリア性をさらに高めることができる。
【0122】
表面樹脂層(D)の主成分樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂などの樹脂、エチレンイミン、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アルコキシシランなどを挙げることができる。
なお、上記「主成分樹脂」とは、表面樹脂層(D)に含まれる樹脂成分のうち最も多い質量%を占める樹脂を意味し、表面樹脂層(D)に含まれる樹脂成分の合計質量を100質量%したとき、その樹脂が占める質量割合が50質量%以上である場合、60質量%以上である場合、70質量%以上である場合、80質量%以上である場合、90質量%以上である場合、100質量%である場合を想定することができる。
【0123】
(厚み)
表面樹脂層(D)の厚みは、特に制限は無いが、10~1000nmが好ましく、中でも50nm以上或いは500nm以下であるのがより好ましい。
【0124】
(表面樹脂層(D)の形成方法)
表面樹脂層(D)の形成は、グラビアコート、グラビアリバースコート、キスリバースグラビアコート、スピンコート、バーコート、ダイコート等の公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、輻射熱乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0125】
<本発明積層フィルムの利用>
本発明積層フィルムは、そのまま使用して、包装用フィルムや包装体とすることもできる。但し、他のフィルムと積層するなどして使用してもよい。
当該「他のフィルム」としては、例えば、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム等を挙げることができ、ドライラミネート等の公知の方法で積層して使用してもよい。
【0126】
<本発明包装体>
本発明積層フィルムから包装体(「本発明包装体」と称する)を形成する場合、密閉するため本発明積層フィルムにシール性を付与することが有用である。例えば、本発明積層フィルムの基材(A)側及び無機層(C)側のうちの何れかの側面に、ポリオレフィン系フィルムを積層してシール性を付与することができる。
【0127】
本発明包装体の形態は、特に制限はない。例えば、袋体、チューブ、蓋材、底材などを挙げることができ、食品、医薬医療品、電子部品、工業部品などを収容する包装に用いることができ、水蒸気や酸素ガス等の透過を抑制できるので、収容物の腐食腐敗を防ぎ長期間保管を可能とする。
【0128】
<<語句の説明>>
本発明において「樹脂」とは、ポリマー、すなわち、重合体(共重合体を含む)の意味である。
また、本発明において、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
さらにまた、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0129】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれに限られるものではない。
【0130】
(紙基材(A))
・紙基材(A):上質紙(三菱製紙社製)、厚み65μm、坪量55g/m
【0131】
(樹脂層(B1)原料)
・コート液―1:ポリ塩化ビニリデン(PVDC)ラテックス分散液(旭化成社製「サランラテックスL574A」、樹脂成分58%)
・コート液-2:ポリビニルアルコール樹脂(三菱ケミカル社製 「ゴーセノール N-300」、ポリビニルアルコールの質量平均分子量22000)の10%水溶液
・コート液-3:ポリブチレンサクシネート・アジペート樹脂(三菱ケミカル社製)のエマルジョンの分散液、樹脂成分30%)
【0132】
(樹脂層(B2)原料)
・コート液-4:硬化剤としてのイソシアネート化合物(東ソー社製「コロネートHX」)と、アクリルポリオール(大成ファインケミカル社製「アクリット 6AN―3000」、質量平均分子量55000)とを1:10質量比で配合し、樹脂層(B2)に使用するコート液-4を得た。
【0133】
(無機層(C)原料)
無機層(C)の原料には、SiOx(キャノンオプトロン株式会社製)を用いた。
【0134】
<実施例1>
前記紙基材(A)の片面に、樹脂層(B1)のコート液-1をバーコート法で乾燥後の質量が5g/m(乾燥後厚み4μm)となるように塗布し、80℃で2分間乾燥させて樹脂層(B1)を形成した。次に、真空加熱蒸着装置を使用して、真空度2×10-3Paの条件下で酸化珪素SiOx(x=1.5)からなる35nm厚の無機層(C)を形成して積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0135】
<実施例2>
実施例1において、コート液-1の代わりにコート液-2を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0136】
<実施例3>
実施例1において、樹脂層(B1)のコート液-1をバーコート法で乾燥後の質量が5g/m(乾燥後厚み4μm)となるように塗布し、80℃で2分間乾燥させて樹脂層(B1)を形成した。その上からコート液-4をバーコート法で乾燥後の質量が1g/mとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥させて樹脂層(B2)を形成させた。次に、真空加熱蒸着装置を使用して、真空度2×10-3Paの条件下で酸化珪素SiOx(x=1.5)からなる35nm厚の無機層(C)を形成して積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0137】
<実施例4>
実施例3において、樹脂層(B1)のコート液-1の代わりにコート液2を用いた以外は、実施例3と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0138】
<実施例5>
実施例3において、樹脂層(B1)のコート液-1の代わりにコート液3を用いた以外は、実施例3と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0139】
<比較例1>
比較例1のサンプルフィルムとして坪量55g/mの紙基材(A)を用いた。
【0140】
<比較例2>
実施例1において、無機層(C)を形成しない以外は、実施例1と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0141】
<比較例3>
比較例2において、コート液-1の代わりにコート液-2を用いた以外は比較例2と同様にして積層フィルム(サンプルフィルム)を得た。
【0142】
<評価>
実施例、比較例で得られたサンプルフィルムについて、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0143】
(樹脂層(B1)(B2)の厚み)
樹脂層(B2)を形成する前の樹脂層(B1)、又は、無機層(C)を形成する前の樹脂層(B2)の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO染色し、樹脂層(B1)又は(B2)の断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製「H-7650」、加速電圧100kV)を用いて、樹脂層(B1)又は(B2)の厚みを測定した。
【0144】
(無機層(C)の厚み)
無機層(C)の厚みの測定は、蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることができる。具体的には、市販の二軸延伸ポリステルフィルム(12μm)上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成した。そして、測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、前記検量線からその膜厚を測定した。
【0145】
(樹脂層(B2)の貯蔵弾性率)
実施例及び比較例で使用したコート液-4を、バーコート法で紙基材(A)上に塗布し、80℃で乾燥させて、乾燥後厚み200μmの樹脂層(B2)からなるシートを形成した。
JIS K7244-1(1999)に準拠した動的粘弾性測定において、アイティー計測制御社製の動的粘弾性測定装置「DVA-200」を用いて、周波数1Hz、昇温速度3℃/分、測定温度-50~200℃の条件で粘弾性測定を行い、40℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0146】
(水蒸気バリア性:水蒸気透過率)
JIS K7129-5(2016)に準じて、水蒸気透過率測定装置(Technolox社製DELTAPERM)を用い、実施例・比較例で得られたサンプルフィルムについて、40℃相対湿度90%の条件下で水蒸気透過率(WVTR、単位:g/m/day)を測定することにより評価した。
【0147】
(酸素バリア性:酸素透過率)
JIS K7126-2(2006)に準じ、酸素透過率測定装置(MOCON社製OX-TRAN2/21型)を用い、実施例・比較例で得られたサンプルフィルムについて、25℃相対湿度80%の条件下で酸素透過率(OTR、単位:cc/m/day/atm)を測定することにより評価した。
【0148】
【表1】
【0149】
(考察)
上記実施例・比較例の結果、並びに、これまで本発明者が行ってきた試験結果から、紙基材(A)の少なくとも表裏一側に、樹脂層(B1)、無機層(C)が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムにおいて、前記樹脂層(B1)の主成分樹脂として特定の樹脂を用いることにより、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を高めることができることが分かった。
具体的には、前記樹脂層(B1)の主成分樹脂として、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂およびポリブチレンサクシネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を用いることにより、酸素バリア性及び水蒸気バリア性をいずれも高めることができることが分かった。
【0150】
なお、上記実施例では、樹脂層(B1)の主成分樹脂として、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂を用いているが、ポリビニルアルコール系樹脂と同様の弾性率やバリア性を有するというの観点から、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂も同様の効果を得ることができると推察できる。
【0151】
さらに、樹脂層(B1)の主成分樹脂としてポリブチレンサクシネート系樹脂を用いた場合には、樹脂層(B1)と無機層(C)の間に、樹脂層(B1)とは異なる樹脂層(B2)を積層するのが特に好ましいことが分かった。
この際、樹脂層(B2)の主成分樹脂は、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂であればよいと考えられる。
上記実施例では、樹脂層(B2)の主成分樹脂としてアクリル系樹脂を用いているが、アクリル系樹脂と同様の弾性率を持つという観点から、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂であっても、同様の効果が得られるものと推察される。