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特開2024-101795熱処理チャンバ、成膜装置、及び基板加熱方法
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  • 特開-熱処理チャンバ、成膜装置、及び基板加熱方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101795
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】熱処理チャンバ、成膜装置、及び基板加熱方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/58 20060101AFI20240723BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20240723BHJP
   G11B 5/64 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C23C14/58 A
G11B5/84 Z
G11B5/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005931
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】黒川 剛平
(72)【発明者】
【氏名】大橋 栄久
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆博
【テーマコード(参考)】
4K029
5D006
5D112
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA04
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA24
4K029BD11
4K029DA08
4K029FA06
4K029GA01
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
5D006BB01
5D006DA03
5D006EA03
5D112AA02
5D112AA24
5D112BA02
5D112FA00
5D112FB19
5D112FB22
5D112GB01
(57)【要約】
【課題】脱ガスを低減して基板に形成される膜の質向上を図る。
【解決手段】基板に対して熱処理を行う熱処理チャンバであって、熱処理チャンバは、基板を取り囲むチャンバ筐体と、チャンバ筐体の一部を構成する光透過窓と、チャンバ筐体の外側に設けられていて光透過窓を通してチャンバ筐体の内側に配置された基板に対して光を照射して基板を加熱処理するLED光源と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して熱処理を行う熱処理チャンバであって、
前記基板を取り囲むチャンバ筐体と、
前記チャンバ筐体の一部を構成する光透過窓と、
前記チャンバ筐体の外側に設けられていて前記光透過窓を通して前記チャンバ筐体の内側に配置された前記基板に対して光を照射して前記基板を加熱処理するLED光源と、
を備える、熱処理チャンバ。
【請求項2】
前記光透過窓を透過した、前記LED光源からの前記光の50%以上が前記基板に直接照射される、請求項1に記載の熱処理チャンバ。
【請求項3】
前記LED光源と前記基板との間の距離が50mm以下である、請求項1又は2に記載の熱処理チャンバ。
【請求項4】
前記LED光源は放出させる前記光の中心波長が500nm未満であり、前記光透過窓は石英からなる、請求項1又は2に記載の熱処理チャンバ。
【請求項5】
前記チャンバ筐体は、
第1壁と、
前記第1壁に対向して配置される第2壁と、
を備えており、
前記光透過窓には、
前記第1壁の一部を構成する第1光透過窓と、
前記第2壁の一部を構成していて前記第1光透過窓に対向して配置される第2光透過窓と、が含まれており、
前記LED光源には、
前記第1光透過窓を通して前記基板の表面に前記光を照射する第1LED光源と、
前記第2光透過窓を通して前記基板の裏面に前記光を照射する第2LED光源と、
が含まれており、
前記チャンバ筐体の両側に配置された、前記第1LED光源及び前記第2LED光源により、前記基板の両面が加熱処理される、
請求項1又は2に記載の熱処理チャンバ。
【請求項6】
基板に対して熱処理を行う熱処理チャンバと、
前記熱処理チャンバ内で前記基板の外周端部を複数の支持部材により支持して、前記複数の支持部材が取り付けられる基板ホルダの孔部で前記基板を保持するキャリアと、
前記キャリアを前記熱処理チャンバ内に搬送する搬送機構と、
を備え、
前記熱処理チャンバは、
前記キャリアにより保持された前記基板を取り囲むチャンバ筐体と、
前記チャンバ筐体の一部を構成する光透過窓と、
前記チャンバ筐体の外側に設けられていて前記光透過窓を通して前記チャンバ筐体の内側に配置された前記基板に対して光を照射して前記基板を加熱処理するLED光源と、
を備える、成膜装置。
【請求項7】
基板を取り囲むチャンバ筐体の外側に設けられたLED光源により、前記チャンバ筐体の一部を構成する光透過窓を通して前記チャンバ筐体の内側に配置された前記基板に対して光を照射して前記基板を加熱処理する加熱工程を含む、基板加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理チャンバ、成膜装置、及び基板加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チャンバ内に設置したハロゲンランプ等の加熱手段を用いて基板に加熱処理を行う成膜装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-044537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱手段では、熱源から放出されるガス(脱ガス)が多く、脱ガスが基板に取り込まれ、例えば基板表面に酸化物等が形成される場合がある。また、斯かる加熱手段は、熱源から放出される熱線の指向性が低く、基板以外の部材を加熱してしまうため、基板以外の部材から放出された脱ガスも基板の熱処理に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
そこで、本開示の技術は、上記課題に鑑み、脱ガスを低減して基板に形成される膜の質向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板に対して熱処理を行う熱処理チャンバであって、
前記基板を取り囲むチャンバ筐体と、
前記チャンバ筐体の一部を構成する光透過窓と、
前記チャンバ筐体の外側に設けられていて前記光透過窓を通して前記チャンバ筐体の内側に配置された前記基板に対して光を照射して前記基板を加熱処理するLED光源と、
を備える、熱処理チャンバが提供される。
【0007】
本開示の他の態様によれば、
基板に対して熱処理を行う熱処理チャンバと、
前記熱処理チャンバ内で前記基板の外周端部を複数の支持部材により支持して、前記複数の支持部材が取り付けられる基板ホルダの孔部で前記基板を保持するキャリアと、
前記キャリアを前記熱処理チャンバ内に搬送する搬送機構と、
を備え、
前記熱処理チャンバは、
前記キャリアにより保持された前記基板を取り囲むチャンバ筐体と、
前記チャンバ筐体の一部を構成する光透過窓と、
前記チャンバ筐体の外側に設けられていて前記光透過窓を通して前記チャンバ筐体の内側に配置された前記基板に対して前記光を照射して前記基板を加熱処理するLED光源と、
を備える、成膜装置が提供される。
【0008】
本開示の別の態様によれば、
基板を取り囲むチャンバ筐体の外側に設けられたLED光源により、前記チャンバ筐体の一部を構成する光透過窓を通して前記チャンバ筐体の内側に配置された前記基板に対して光を照射して前記基板を加熱処理する加熱工程を含む、基板加熱方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、脱ガスを低減して基板に形成される膜の質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る成膜装置により製造される記録媒体の断面図である。
図2】一実施形態に係る成膜装置の平面図である。
図3】一実施形態に係る成膜装置のチャンバの側面図である。
図4】一実施形態に係る成膜装置のキャリアの側面図である。
図5】一実施形態に係る熱処理チャンバの断面図(a)及び側面図(b)である。
図6】一実施形態に係る熱処理チャンバに用いられるLED光源の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
近年、磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、磁気記録装置の重要性が増すと共に、磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体の記録密度の著しい向上が図られつつある。
【0013】
磁気記録媒体の製造方法としては、例えば、非磁性基板の上に、軟磁性層、中間層、及び記録磁性層等を形成した後、記録磁性層の上に保護層を形成する方法がある。
【0014】
斯かる製造方法の場合、なるべく1つの成膜装置を用いて連続的に行うことが好ましい。連続的に処理を行うことにより、ハンドリングに際して基板の汚染が防止され、また、ハンドリング工程等を少なくして製造工程の効率化及び製品歩留まりを良くし、磁気記録媒体の生産性を高めることができる。
【0015】
そこで、斯かる磁気記録媒体の製造に際し、複数枚の非磁性基板を保持したキャリアを複数のチャンバ内へ順次搬送させながら、非磁性基板の両面に、磁性層等を順次成膜するインライン式成膜装置を用いることが提案されている。
【0016】
磁気記録媒体の製造工程の中には、成膜処理した基板を加熱処理する工程が含まれる。加熱処理工程の一例としては、基板を加熱処理することで磁性層形成時の加熱温度を高めて、垂直磁性層の結晶配向性を高め、もって磁気記録媒体の記録密度を高めることがある。
【0017】
従来、成膜処理された基板の加熱処理では、チャンバ内に設置したハロゲンランプヒータ、セラミックスヒータ、及び抵抗加熱ヒータ等のいずれか一つの加熱手段が用いられている。しかしながら、斯かる加熱手段は、熱源から放出される脱ガスが多く、脱ガスが基板に取り込まれ、例えば基板表面に酸化物等が形成される場合がある。
【0018】
また、斯かる加熱手段は、熱源から放出される熱線の指向性が低く、基板以外の部材、すなわち、基板ホルダ、キャリア、及びチャンバ筐体の内壁等を加熱してしまうため、基板以外の部材からの脱ガスも基板の熱処理に悪影響を及ぼすことがある。また、チャンバ内に、熱線を反射するための反射板や、熱に弱い部材を保護するためのシールド板を設ける必要があり、これら反射板やシールド板からの脱ガスも成膜に悪影響を及ぼしていた。
【0019】
特に、磁気記録再生装置の適用範囲が広くなるに伴い、磁気記録媒体の記録密度の更なる向上が求められ、記録密度の向上に伴って磁性層形成時の加熱温度がますます高まり、熱処理チャンバ内の部材からの脱ガスの影響も無視できなくなっている。
【0020】
そこで、本実施形態では、複数のチャンバ内へ円盤状基板を順次搬送させて成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて、ハードディスク装置に搭載される磁気記録媒体を製造する場合を例に挙げて、脱ガスを低減する技術について説明する。
【0021】
(磁気記録媒体の構成例)
図1は一実施形態に係る成膜装置により製造される記録媒体の断面図である。記録媒体は、例えば磁気記録媒体である。
【0022】
磁気記録媒体は、円盤状基板9の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83、及び保護層84が順次積層された構造を有し、さらに最表面に潤滑膜85が形成される。
【0023】
円盤状基板9としては、Alを主成分とした例えばAl-Mg合金等のAl合金基板、又は、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、及び各種樹脂等のいずれか一つからなる基板等が用いられる。つまり円盤状基板9には、非磁性基板であれば任意のものが用いられる。
【0024】
(インライン式成膜装置の構成例)
図2は一実施形態に係る成膜装置の平面図である。磁気記録媒体を製造する際は、例えば図2に示すようなインライン式成膜装置1を用いて、成膜対象となる円盤状基板9の両面に、少なくとも軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83、及び保護層84を順次積層する。また、斯かる積層工程において、インライン式成膜装置1は、成膜前の円盤状基板9に、または、成膜した円盤状基板9に加熱処理を行う。斯かる工程を経ることにより、磁気記録媒体を高い生産性で得ることができる。
【0025】
具体的に、インライン式成膜装置1は、ロボット台8と、ロボット台8上に載置された基板カセット移載ロボット3と、ロボット台8に隣接する基板着脱ロボット2と、キャリア7を回転させる複数のコーナー室4と、を備えている。また、インライン式成膜装置1は、コーナー室4とコーナー室4との間に配置された複数のチャンバ5と、複数のコーナー室4及び複数のチャンバ5の中を順次搬送される複数のキャリア7と、を備えている。
【0026】
また、各チャンバ5の接続部には、ゲートバルブ6が設けられ、各ゲートバルブ6が閉状態のとき、各チャンバ5内は、それぞれ独立した密閉空間となる。また、各チャンバ5には、それぞれ非図示の真空ポンプが接続されており、真空ポンプの動作により各チャンバ5内が減圧状態となされる。
【0027】
各チャンバ5内に、搬送機構によりキャリア7を順次搬送させながら、各チャンバ5内において、キャリア7に保持された円盤状基板9の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83、及び保護層84が順次成膜される。保護層84を円盤状基板9に成膜した後、インライン式成膜装置1から円盤状基板9を取り出し、円盤状基板9の両面に潤滑膜85を成膜することにより、最終的に図1に示す磁気記録媒体が得られる。
【0028】
また、チャンバ5として、円盤状基板9に加熱処理を行う熱処理チャンバを設けることにより、各層の成膜工程の前に又は後に、円盤状基板9に加熱処理が行われる。また、各コーナー室4は、キャリア7の移動方向を変更する室であり、各コーナー室4の内部に、キャリア7を回転させて次のチャンバ5に移動させる機構が設けられている。
【0029】
図3は一実施形態に係る成膜装置のチャンバ5の側面図である。インライン式成膜装置1は、キャリア7を搬送する搬送機構11として、例えば非接触状態で駆動するリニアモータ駆動機構を備えている。
【0030】
リニアモータ駆動機構は、キャリア7の下部に複数の磁石をN極とS極とが交互に並ぶように配置すると共に、複数の磁石の下方に隔壁を介してN極とS極とが螺旋状に交互に並ぶ回転磁石を搬送路に沿って配置している。リニアモータ駆動機構は、キャリア7側の磁石と回転磁石とを非接触で磁気的に結合させながら、回転磁石を軸回りに回転させることにより、キャリア7を搬送させる。
【0031】
図4は一実施形態に係る成膜装置のキャリア7の側面図である。キャリア7には、円盤状基板9を縦置きに保持する基板ホルダ10が設けられている。なお、縦置きとは、円盤状基板9の主面(表面又は裏面)が重力方向と平行となる状態を意味する。本実施形態では、2個の基板ホルダ10をキャリア7に配置しているが、キャリア7に設けられる基板ホルダ10の個数は制限されない。
【0032】
基板ホルダ10は、基板ホルダ10の内側に設けられた孔部12に円盤状基板9を着脱自在に保持する。基板ホルダ10の孔部12の周囲には、弾性変形可能に取り付けられた複数の支持部材13が設けられている。複数の支持部材13は、円盤状基板9の外周端部に接触して、孔部12の内側に嵌め込まれた円盤状基板9を支持する。本実施形態では、4個の支持部材13を基板ホルダ10に取り付けているが、円盤状基板9を支持するためには3個以上の支持部材13があれば円盤状基板9を安定的に保持できる。
【0033】
4個の支持部材13のうちの鉛直方向Zで上側に位置する2個の支持部材13は、鉛直方向Zで左上側に位置する第1側外周端部14と、鉛直方向Zで右上側に位置する第2側外周端部15と、をそれぞれ支持する。また、4個の支持部材13のうちの鉛直方向Zで下側に位置する2個の支持部材13は、鉛直方向Zで左下側に位置する第3側外周端部16と、鉛直方向Zで右下側に位置する第4側外周端部17と、をそれぞれ支持する。
【0034】
支持部材13は、例えばL字状又はコ字状に折り曲げられた板ばね部材である。支持部材13の基端側は、基板ホルダ10の本体に固定されており、支持部材13の先端側は、孔部12の内側に向かって突出している。支持部材13は、孔部12の周囲に形成された通路に配置される。支持部材13の先端には、円盤状基板9の落下を防止するため、円盤状基板9の外周端部に係合するV字溝又はU字溝が形成されている。
【0035】
孔部12の周囲に形成された4個の通路のうちの下側の2個の通路には、支持部材13による円盤状基板9の支持を解除する解除孔41が設けられている。2個の解除孔41には、支持部材13を下方に押し下げて、支持部材13による円盤状基板9の支持を解除する非図示の解除棒が挿入される。
【0036】
基板ホルダ10への円盤状基板9の着脱は、多関節ロボット等の基板着脱ロボット2により行われる。円盤状基板9の取り付け時は、2個の解除孔41に2本の解除棒がそれぞれ差し込まれて下側の2個の支持部材13を下方に押し下げた状態で、基板着脱ロボット2が非図示の基板保持部材に吊り下げた円盤状基板9を基板ホルダ10の孔部12に挿入する。そして、2本の解除棒による支持部材13の押し下げを解除することにより、下側の支持部材13が元の位置に復帰して、4個の支持部材13が円盤状基板9を支持する。
【0037】
円盤状基板9の取り外し時は、基板着脱ロボット2が基板保持部材を円盤状基板9の開口部に接触しないように円盤状基板9の開口部に挿入する。そして、2個の解除孔41に2本の解除棒がそれぞれ差し込まれて下側の2個の支持部材13を下方に押し下げて、4個の支持部材13による円盤状基板9の支持を解除することにより、基板着脱ロボット2が円盤状基板9を基板保持部材に吊り下げた状態にする。基板着脱ロボット2は、円盤状基板9が支持部材13と衝突しないように円盤状基板9を基板ホルダ10から取り外す。
【0038】
(熱処理チャンバの構成例)
図5は一実施形態に係る熱処理チャンバ53の断面図(a)及び側面図(b)である。複数のチャンバ5には、少なくとも1個以上の熱処理チャンバ53が含まれている。熱処理チャンバ53は、円盤状基板9を加熱処理するためのチャンバである。熱処理チャンバ53は、円盤状基板9を取り囲むチャンバ筐体54と、チャンバ筐体54の一部を構成する光透過窓50と、を備えている。
【0039】
また熱処理チャンバ53には、光透過窓50を通してチャンバ筐体54の内側に配置された円盤状基板9を加熱処理するLED(Light-Emitting Diode)光源51が設けられている。すなわち、LED光源51は、チャンバ筐体54の外側に設けられている。またLED光源51には、LED光源51を構成する各LED素子にオンオフ信号を供給する、非図示の制御ユニットが接続される。制御ユニットは、例えばPWM(Pulse Width Modulation)方式等により電圧を制御して各LED素子を調光する。
【0040】
熱処理チャンバ53は、チャンバ筐体54の外側にLED光源51を備えるため、LED光源51からの脱ガスが円盤状基板9の熱処理に悪影響を及ぼすことはない。また、LED光源51を構成する各LED素子は、放出させる光に指向性を持たせることができるため、LED光源51から放出される熱線の指向性も他の加熱手段と比べて高い。従って、熱線を円盤状基板9に集中させて、円盤状基板9以外の部材、すなわち、基板ホルダ10、キャリア7、及びチャンバ筐体54の内壁等に当てないようにすることで、円盤状基板9の熱処理に悪影響を及ぼす脱ガスを低減することができる。
【0041】
熱処理チャンバ53内に搬送されるキャリア7は、円盤状基板9の外周端部を複数の支持部材13により支持して複数の支持部材13が取り付けられる基板ホルダ10の孔部12で保持する構造を有している。従って、LED光源51は熱線を効率良く円盤状基板9に照射することができる。すなわち、円盤状基板9と基板ホルダ10とが離間しているため、LED光源51からの光が基板ホルダ10に照射されることを防止することができる。また、円盤状基板9に加えられた熱が基板ホルダ10に伝熱することを抑制することができる。
【0042】
図6は一実施形態に係る熱処理チャンバ53に用いられるLED光源51の斜視図である。LED光源51は、図6に示すようにLED光源51の本体に取り付けられた多数のLED素子52により構成される。各LED素子52は、放出する光に、LED光源51の本体の面に垂直な方向を中心軸とした指向性を持たせて配置されている。LED素子52の指向性は、中心軸に対して±60°以下とすることが好ましい。
【0043】
ここで、LED素子52の指向性の角度は、LED素子52の最も明るく光る位置を中心軸として中心軸の照度を100%とした場合に、照度が50%になる、中心軸に対する角度として定義される。なお、円盤状基板9の中央には開口部があるため、図6に示すLED光源51では、本体の中央付近にLED素子52が設けられていない。
【0044】
図5(a)を再び参照すると、熱処理チャンバ53では、光透過窓50を透過した、LED光源51からの光の50%以上が円盤状基板9に直接照射されるように、LED光源51と円盤状基板9との位置関係が設定されていることが好ましい。LED光源51からの光の50%以上が円盤状基板9に直接照射されることで、LED光源51からの光が円盤状基板9以外の部材を加熱することが防止され、熱処理チャンバ53内の脱ガスを低減することができる。
【0045】
また、LED光源51をチャンバ筐体54の両側に取り付けることで、円盤状基板9の両面を加熱処理することが好ましい。具体的には、チャンバ筐体54が、第1壁54aと、第1壁54aに対向して配置される第2壁54bと、を備えている。また光透過窓50には、第1壁54aの一部を構成する第1光透過窓50aと、第2壁54bの一部を構成していて第1光透過窓50aに対向して配置される第2光透過窓50bと、が含まれている。
【0046】
そしてLED光源51には、第1光透過窓50aを通して円盤状基板9の表面に光を照射する第1LED光源51aと、第2光透過窓50bを通して円盤状基板9の裏面に光を照射する第2LED光源51bと、が含まれている。すなわち、チャンバ筐体54の両側に取り付けられた、第1LED光源51a及び第2LED光源51bにより、円盤状基板9の両面が加熱処理される。
【0047】
チャンバ筐体54の両側に配置された、第1LED光源51a及び第2LED光源51bにより円盤状基板9の両面を加熱処理することで、円盤状基板9の昇温速度を高めることができる。ひいては、より自由度の高い熱処理条件を設定可能なインライン式成膜装置1を提供することが可能である。
【0048】
また、LED光源51と円盤状基板9との間の距離は50mm以下とすることが好ましい。LED光源51と円盤状基板9との間の距離を50mm以下とすることで、LED光源51からの熱線の広がりをさらに低減することができる。LED光源51からの光が円盤状基板9以外の部材を加熱することが防止されるため、熱処理チャンバ53内の脱ガスを低減することができる。
【0049】
さらに、LED光源51は放出させる光の中心波長が500nm未満であり、光透過窓50は石英からなることが好ましい。中心波長が500nm未満の光は、磁気記録媒体の膜中に多く含まれる、Fe、Pt及びCo等の少なくとも一つの金属元素を効率良く加熱する。また石英は、中心波長が500nm未満の光を80%以上透過すると共に、耐熱性及び強度に優れている。加えて、石英は、他の材料と比べて脱ガスの放出量が少ないので、光透過窓50として好適である。
【0050】
(基板加熱方法)
基板加熱方法には、次の工程が含まれていることが好ましい。なお、各工程の順序は限定されない。
【0051】
<加熱工程>
熱処理チャンバ53は、円盤状基板9を取り囲むチャンバ筐体54の外側に設けられたLED光源51により、チャンバ筐体54の一部を構成する光透過窓50を通してチャンバ筐体54の内側に配置された円盤状基板9に光を照射して円盤状基板9を加熱処理する。
【0052】
また熱処理チャンバ53は、光透過窓50を透過した、LED光源51からの光の50%以上を円盤状基板9に直接照射することが好ましい。さらに熱処理チャンバ53は、チャンバ筐体54の両側に取り付けられた、第1LED光源51a及び第2LED光源51bにより、第1光透過窓50a及び第2光透過窓50bを通して円盤状基板9の両面を加熱処理することが好適である。
【0053】
<準備工程>
なお、基板加熱方法には、LED光源51と円盤状基板9との間の距離を50mm以下とする準備工程が含まれることが好ましい。また準備工程には、LED光源51から放出させる光の中心波長を500nm未満とし、光透過窓50を石英により構成する工程を含むことが好ましい。
【0054】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態に係るインライン式成膜装置1によれば、次の作用効果を得ることができる。熱処理チャンバ53はチャンバ筐体54の外側にLED光源51を備えているため、LED光源51からの脱ガスが円盤状基板9の熱処理に悪影響を及ぼすことはない。また、LED光源51から放出される熱線の指向性は高いため、熱線を円盤状基板9に集中させて円盤状基板9以外の部材に当てないようにすることで、円盤状基板9の熱処理に悪影響を及ぼす脱ガスを低減することができる。ひいては、円盤状基板9に形成される膜の質向上を図ることができる。
【0055】
また、熱処理チャンバ53内に搬送されるキャリア7は円盤状基板9の外周端部を複数の支持部材13により支持して複数の支持部材13が取り付けられる基板ホルダ10の孔部12で保持する構造を有し、円盤状基板9と基板ホルダ10とが離間している。従って、LED光源51からの光が基板ホルダ10に照射されることを防止することができる。また、円盤状基板9に加えられた熱が基板ホルダ10に伝熱することを抑制することができる。
【0056】
さらに、光透過窓50を透過した、LED光源51からの光の50%以上は、円盤状基板9に直接照射される。従って、LED光源51からの光が円盤状基板9以外の部材を加熱することを防止することができる。ひいては、熱処理チャンバ53内の脱ガスを低減することができる。
【0057】
また、LED光源51と円盤状基板9との間の距離を50mm以下とすることで、LED光源51からの熱線の広がりをさらに低減することができる。ひいては、LED光源51からの光が円盤状基板9以外の部材を加熱することが防止されるため、熱処理チャンバ53内の脱ガスを低減することができる。
【0058】
さらに、LED光源51は放出させる光の中心波長が500nm未満であり、光透過窓50は石英からなる。従って、光透過窓50がLED光源51からの光を効率よく透過し、LED光源51からの光により円盤状基板9に形成される膜を効率良く加熱することができる。また、石英からなる光透過窓50は脱ガスの放出量が比較的少ないため、熱処理チャンバ53内の脱ガスを低減して円盤状基板9に形成される膜の質向上を図ることができる。
【0059】
また、チャンバ筐体54の両側に取り付けられた、第1LED光源51a及び第2LED光源51bにより、円盤状基板9の両面を加熱処理することで、円盤状基板9の昇温速度を高めることができる。ひいては、より自由度の高い熱処理条件を設定可能な成膜装置を提供することが可能である。
【0060】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
例えば本開示の成膜装置は、インライン式成膜装置1に限定されるものではなく、バッチ式成膜装置等の他の形態の成膜装置であってもよい。また本開示の基板は、磁気記録媒体用の円盤状基板9に限定されるものではなく、半導体集積回路用の基板であってもよい。また、本開示の基板の形状は円盤状に限定されない。
【0062】
また、上述した実施形態の説明で用いた序数、数量、単位、及び範囲等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に限定されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0063】
1…インライン式成膜装置(成膜装置の一例)
2…基板着脱ロボット
3…基板カセット移載ロボット
4…コーナー室
5…チャンバ
6…ゲートバルブ
7…キャリア
8…ロボット台
9…円盤状基板
10…基板ホルダ
11…搬送機構
12…孔部
13…支持部材
14…第1側外周端部
15…第2側外周端部
16…第3側外周端部
17…第4側外周端部
41…解除孔
50…光透過窓
50a…第1光透過窓
50b…第2光透過窓
51…LED光源
51a…第1LED光源
51b…第2LED光源
52…LED素子
53…熱処理チャンバ
54…チャンバ筐体
54a…第1壁
54b…第2壁
56…支持体
81…軟磁性層
82…中間層
83…記録磁性層
84…保護層
85…潤滑膜
Z…鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6