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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101818
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 1/00 20060101AFI20240723BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20240723BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20240723BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B24B1/00 F
B24B49/04 Z
B24B49/16
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005968
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB92
3C034CA02
3C034CA17
3C034CB03
3C049AA04
3C049AA16
3C049AA18
3C049AB04
3C049AB06
3C049AC02
3C049CB03
5F057AA04
5F057AA19
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA14
5F057DA11
5F057EB20
5F057FA46
5F057GA03
5F057GA13
5F057GB04
5F057GB05
5F057GB24
(57)【要約】
【課題】砥粒の小さい高番手の研削ホイールの消耗増加を抑制しつつ、更に加工時間が長くなることを抑制できる研削方法を提供すること。
【解決手段】被加工物100を研削する研削方法は、第1研削ホイール32で被加工物100を研削する第1研削ステップと、第1研削ホイール32より粒径の小さい第2研削ホイール42で被加工物100を研削する第2研削ステップと、を備え、第2研削ステップは、第1研削ステップで被加工物100に形成された研削ダメージ部を第1研削条件で研削するダメージ研削ステップと、ダメージ研削ステップの後に、被加工物100を第2研削条件で仕上げ研削する仕上げ研削ステップと、を含み、ダメージ研削ステップは、研削ダメージ部の有無を監視しながら研削を実施し、研削ダメージ部がないと検知した際に研削を終了させることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研削する研削方法であって、
第1研削ホイールで該被加工物を研削する第1研削ステップと、
該第1研削ホイールより粒径の小さい第2研削ホイールで該被加工物を研削する第2研削ステップと、を備え、
該第2研削ステップは、
該第1研削ステップで該被加工物に形成された研削ダメージ部を第1研削条件で研削するダメージ研削ステップと、
該ダメージ研削ステップの後に、該被加工物を第2研削条件で仕上げ研削する仕上げ研削ステップと、を含み、
該ダメージ研削ステップは、該研削ダメージ部の有無を監視しながら研削を実施し、該研削ダメージ部がないと検知した際に研削を終了させることを特徴とする研削方法。
【請求項2】
該第1研削条件は、該第2研削条件の送り速度より低速の送り速度で研削を実施することを特徴とする請求項1記載の研削方法。
【請求項3】
該ダメージ研削ステップは、該被加工物の厚みを測定しながら研削を実施し、該被加工物の厚み変化量と該第2研削ホイールが装着されたスピンドルの移動量とから該第2研削ホイールの消耗率を算出し、該消耗率の変化により該研削ダメージ部の有無を検知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の研削方法。
【請求項4】
該ダメージ研削ステップは、該被加工物を保持するチャックテーブルもしくは該第2研削ホイールが装着されたスピンドルにかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、該研削荷重の変化により該研削ダメージ部の有無を検知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の研削方法。
【請求項5】
該ダメージ研削ステップは、該第2研削ホイールが装着されたスピンドルの負荷電流値を監視しながら研削を実施し、該負荷電流値の変化により該研削ダメージ部の有無を検知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスでは、デバイスの目的厚さを得るために、多数の半導体デバイスの集合体である半導体ウェーハの段階で、裏面研削して薄化することが行われている。半導体ウェーハ(被加工物)を研削する研削装置では、半導体ウェーハの厚みを測定しながら研削を実施している。また、半導体ウェーハの厚みが指定の厚みになると研削を終了し、その後、研削ユニットの軸送りを止めた状態でのスパークアウト研削を実施した後に、研削ユニットを半導体ウェーハから離間させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-236736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような研削装置では、加工の効率性向上のために砥粒の粒径の大きい第1研削ホイールで高速研削し、その後第1研削ホイールより砥粒の粒径の小さい研削ホイールで低速研削することにより第1研削ホイールでの研削ダメージを除去する手法が取られている。この時に、第1研削ホイールでの研削と第2研削ホイールでの研削とを両軸同時加工で実施するので、どちらかの加工時間が長いと待ち時間が発生するため、第1研削ホイールでの研削と第2研削ホイールでの研削のそれぞれの加工時間を同等にすることが求められる。
【0005】
近年、デバイスの薄化要求が強まることによって、第2研削ホイールはより砥粒の粒径の小さい高番手の研削ホイールを使用することでデバイスの強度不足による割れを防止している。しかしながら、高番手ホイールでは砥粒の粒径が小さいことによって消耗過多となる。対策として、第2研削ホイールの送り速度を低速にすることが挙げられるが、低速加工の場合、加工時間が長くなることにより、第1研削ホイールの研削での加工時間より大幅に加工時間が長くなり生産性の低下となってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、砥粒の小さい高番手の研削ホイールの消耗増加を抑制しつつ、更に加工時間が長くなることを抑制できる研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の研削方法は、被加工物を研削する研削方法であって、第1研削ホイールで該被加工物を研削する第1研削ステップと、該第1研削ホイールより粒径の小さい第2研削ホイールで該被加工物を研削する第2研削ステップと、を備え、該第2研削ステップは、該第1研削ステップで該被加工物に形成された研削ダメージ部を第1研削条件で研削するダメージ研削ステップと、該ダメージ研削ステップの後に、該被加工物を第2研削条件で仕上げ研削する仕上げ研削ステップと、を含み、該ダメージ研削ステップは、該研削ダメージ部の有無を監視しながら研削を実施し、該研削ダメージ部がないと検知した際に研削を終了させることを特徴とする。
【0008】
該第1研削条件は、該第2研削条件の送り速度より低速の送り速度で研削を実施してもよい。
【0009】
該ダメージ研削ステップは、該被加工物の厚みを測定しながら研削を実施し、該被加工物の厚み変化量と該第2研削ホイールが装着されたスピンドルの移動量とから該第2研削ホイールの消耗率を算出し、該消耗率の変化により該研削ダメージ部の有無を検知してもよい。
【0010】
該ダメージ研削ステップは、該被加工物を保持するチャックテーブルもしくは該第2研削ホイールが装着されたスピンドルにかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、該研削荷重の変化により該研削ダメージ部の有無を検知してもよい。
【0011】
該ダメージ研削ステップは、該第2研削ホイールが装着されたスピンドルの負荷電流値を監視しながら研削を実施し、該負荷電流値の変化により該研削ダメージ部の有無を検知してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、第1研削ステップで被加工物に形成された研削ダメージ部の有無を監視しながら、研削ダメージ部が有り研削ダメージ部を研削する際には第2研削ホイールの消耗率を抑制できる第1研削条件で被加工物を研削し、研削ダメージ部が無くなり研削ダメージ部でない部分を研削する際には研削にかかる加工時間を抑制できる第2研削条件で被加工物100を研削するため、砥粒の小さい高番手の研削ホイールの消耗増加を抑制しつつ、更に加工時間が長くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、図1の実施形態に係る研削方法を実施する研削装置の構成例を示す斜視図である。
図3図3は、図2の研削装置の要部を示す断面図である。
図4図4は、図3の研削装置の要部の一部を示す分解断面図である。
図5図5は、図1の第2研削ステップを説明する図である。
図6図6は、図1の第2研削ステップを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る研削方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図2は、図1の実施形態に係る研削方法を実施する研削装置1の構成例を示す斜視図である。実施形態に係る研削方法は、図1に示すように、第1研削ステップ1001と、第2研削ステップ1002と、を備える。実施形態に係る研削方法の第1研削ステップ1001及び第2研削ステップ1002は、いずれも、例えば、図2に示す研削装置1を用いて実施される。
【0016】
実施形態に係る研削方法の研削対象である被加工物100は、本実施形態では、図2に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物100は、平坦な表面の互いに交差(本実施形態では、直交)する分割予定ラインによって区画された各領域にチップ状のデバイスが形成されている。被加工物100は、表面の裏側の裏面が研削されて所定の厚みへと薄化された後、分割予定ラインに沿って切削装置等によって分割されることで、個々の半導体デバイスチップが製造される。被加工物100は、本発明ではこれに限定されず、樹脂により封止されたデバイスを複数有した円板状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0017】
実施形態に係る研削方法を実施する研削装置1は、図2に示すように、チャックテーブル10と、ターンテーブル20と、第1研削ユニット30と、第2研削ユニット40と、接触式厚み測定ユニット50と、制御ユニット60と、を備える。本実施形態では、研削装置1は、さらに、カセット71,72と、位置合わせユニット73と、搬入ユニット74と、搬出ユニット75と、洗浄ユニット76と、搬出入ユニット77と、を備える。
【0018】
図3は、図2の研削装置1の要部を示す断面図である。図4は、図3の研削装置1の要部の一部を示す分解断面図である。チャックテーブル10は、図3及び図4に示すように、凹部が形成された円盤状の枠体11と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部12と、を備える。チャックテーブル10の吸着部12は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10の吸着部12の上面は、載置された被加工物100を下方側から吸引保持する保持面13である。枠体11の上面と保持面13とは、本実施形態では、図2に示すように、チャックテーブル10の保持面13の中心13-1を頂点とし、外周が僅かに低い円錐面状に形成されている。なお、保持面13は、本発明ではこれに限定されず、平坦に形成されていてもよい。
【0019】
チャックテーブル10は、図3及び図4に示すように、下方に、チャックテーブル10を支持する環状のベアリング14が設けられており、環状のベアリング14の下方には、環状の支持板15が固定されている。ベアリング14は、チャックテーブル10を支持板15に対して回転可能に支持している。支持板15の下方には、環状のテーブルベース16が設けられている。
【0020】
チャックテーブル10は、回転駆動源17により、保持面13の中心13-1を通り、保持面13を形成する円錐の底面に直交する所定の回転軸回りに、ターンテーブル20とは独立して回転自在に設けられている。図3及び図4に示すように、回転駆動源17は、ベアリング14、支持板15及びテーブルベース16のそれぞれの中央に設けられた開口に位置付けられており、チャックテーブル10の枠体11の下方に接続されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、支持板15とテーブルベース16との間には、荷重センサ18が設けられている。荷重センサ18は、チャックテーブル10の保持面13の周方向に沿って等間隔(例えば120度)で複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。荷重センサ18は、チャックテーブル10にかかる荷重を測定し、測定した荷重を制御ユニット60に出力する。荷重センサ18は、第1研削ユニット30や第2研削ユニット40による研削中に、チャックテーブル10にかかる研削荷重を測定し、測定した研削荷重を制御ユニット60に出力する。
【0022】
図3及び図4に示すように、テーブルベース16の下方には、チャックテーブル10の回転軸を鉛直方向と平行なZ軸方向に対して傾斜させる回転軸調整ユニット19が設けられている。チャックテーブル10は、回転軸調整ユニット19により、回転軸が鉛直方向に平行なZ軸方向に対して所定の範囲内の傾斜角だけ傾斜することができ、これに伴い、保持面13は、保持面13を形成する円錐の底面がXY平面に平行な水平面に対して同じ傾斜角だけ傾斜することができる。
【0023】
実施形態に係る研削装置1は、本実施形態では、3つのチャックテーブル10が設けられている。3つのチャックテーブル10は、図2に示すように、平面視でチャックテーブル10よりも大きい円盤状のターンテーブル20上に、例えば120°の位相角で等間隔に配設されている。なお、チャックテーブル10は、本発明ではこれに限定されず、1つでも2つでもよく、4つ以上でもよい。ターンテーブル20は、水平面内で回転自在に設けられ、所定のタイミングで回転駆動される。3つのチャックテーブル10は、ターンテーブル20の回転によって、搬入搬出位置201、第1研削位置202、第2研削位置203、搬入搬出位置201に順次移動される。
【0024】
第1研削ユニット30は、図2に示すように、第1スピンドル31と、第1研削ホイール32と、第1研削送りユニット34と、を備える。第1スピンドル31は、鉛直方向(Z軸方向)に平行な軸心回りに回転可能に設けられ、下端に着脱可能に装着された第1研削ホイール32を鉛直方向に平行な軸心回りに回転可能に支持する。第1研削ホイール32は、下面に第1研削砥石33を環状に配置している。
【0025】
第1研削ユニット30は、第1スピンドル31が、第1研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10の保持面13に、鉛直方向に対向するように配置されている。第1研削送りユニット34は、第1研削ユニット30の第1スピンドル31及び第1スピンドル31に装着された第1研削ホイール32を第1研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10に対して研削送り方向(鉛直方向と平行なZ軸方向)に沿って相対的に移動させることにより、第1スピンドル31及び第1研削ホイール32と第1研削位置202に位置付けられたチャックテーブル10とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。
【0026】
第1研削ユニット30は、第1スピンドル31を鉛直方向に平行な軸心回りに回転駆動することにより、第1スピンドル31の下端に装着した第1研削ホイール32を鉛直方向に平行な軸心回りに回転させ、第1研削位置202に位置付けられて第1スピンドル31に対向配置された、被加工物100を保持するチャックテーブル10を回転軸回りに回転させた状態で、回転させたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、不図示の研削流体供給ユニットにより研削流体を供給しながら、第1研削送りユニット34により、回転する第1研削ホイール32を研削送り方向に沿って押圧することによって、第1研削ホイール32の第1研削砥石33で被加工物100を研削する。第1研削ホイール32は、被加工物100を研削面に沿って研削して、被加工物100の被研削面を研削面と平行に形成する。
【0027】
第2研削ユニット40は、図2及び図3に示すように、第2スピンドル41と、第2研削ホイール42と、第2研削送りユニット44と、研削流体供給ユニット45と、負荷電流値検出センサ46と、荷重センサ48と、を備える。第2スピンドル41は、鉛直方向に平行な軸心回りに回転可能に設けられ、下端に着脱可能に装着された第2研削ホイール42を鉛直方向に平行な軸心回りに回転可能に支持する。第2研削ホイール42は、下面に第2研削砥石43を環状に配置している。
【0028】
第2研削ユニット40は、第2スピンドル41が、第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10の保持面13に、鉛直方向に対向するように配置されている。第2研削送りユニット44は、第2研削ユニット40の第2スピンドル41及び第2スピンドル41に装着された第2研削ホイール42を第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に対して研削送り方向に沿って相対的に移動させる研削送りをすることにより、第2スピンドル41及び第2研削ホイール42と第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。
【0029】
第2研削送りユニット44は、第1研削送りユニット34と同様に、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。第2研削送りユニット44は、Z軸の軸心回りに回転自在に設けられたボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させるモータと、第2スピンドル41をZ軸方向に移動自在に支持するガイドと、を有して構成されている。第2研削送りユニット44は、制御ユニット60により、モータの駆動が制御されることにより、送り速度、及び、移動量等が制御される。ここで、送り速度は、第2研削送りユニット44により、第2スピンドル41及び第2研削ホイール42を第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させる速度のことを指す。また、移動量は、第2研削送りユニット44により、第2スピンドル41及び第2研削ホイール42を第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させた量(高さ)のことを指す。送り速度は、単位時間当たりの移動量となる。
【0030】
第2研削送りユニット44は、モータの回転位置を読み取るエンコーダを含み、エンコーダが読み取ったモータの回転位置に基づいて、第2スピンドル41の第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置を制御ユニット60に出力する。ここで、Z軸方向の相対的な位置は、研削装置1に備え付けられた装置直交座標系(XYZ座標)が使用される。装置直交座標系は、例えば、ターンテーブル20上の中心が原点に設定される。また、第2研削送りユニット44は、研削開始前、研削中及び研削終了後に、例えば一定時間毎(例えば、毎秒)に、第2スピンドル41の第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出することにより、送り速度や移動量を検出し、検出した送り速度や移動量を制御ユニット60に出力する。なお、第2研削送りユニット44は、エンコーダにより第2スピンドル41の第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に対するZ軸方向の相対的な位置を検出する構成に限定されず、Z軸方向に平行なリニアスケールと、第2研削送りユニット44によりZ軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドと、により構成してもよい。
【0031】
研削流体供給ユニット45は、第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100に純水等の研削流体を供給する。負荷電流値検出センサ46は、第2スピンドル41に設けられたスピンドルモータに接続されて設けられており、第2スピンドル41に設けられたスピンドルモータに流れる電流値である第2スピンドル41の負荷電流値を検出する。なお、第2スピンドル41の負荷電流値は、第2研削ホイール42で被加工物100を研削する際の研削負荷や研削抵抗が増加すると上昇傾向になるものである。
【0032】
図3に示すように、第2スピンドル41の下方の、第2スピンドル41と第2スピンドル41の外周を覆うカバー部材との間には、荷重センサ48が設けられている。荷重センサ48は、第2スピンドル41に装着される第2研削ホイール42の周方向に沿って等間隔(例えば120度)で複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。荷重センサ48は、第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41にかかる荷重を測定し、測定した荷重を制御ユニット60に出力する。荷重センサ48は、第2研削ユニット40による研削中に、第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41にかかる研削荷重を測定し、測定した研削荷重を制御ユニット60に出力する。
【0033】
本実施形態では、第2研削ホイール42は、第1研削ホイール32より粒径が小さい。すなわち、第2研削ホイール42が環状に配置している第2研削砥石43を形成する砥粒の粒径は、第1研削ホイール32が環状に配置している第1研削砥石33を形成する砥粒の粒径よりも小さい。ここで、第1研削ホイール32が環状に配置している第1研削砥石33と、第2研削ホイール42が環状に配置している第2研削砥石43とは、いずれも、例えば、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等の砥粒を、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等のボンド材(結合材)で固定することによって形成されている。
【0034】
第1研削砥石33及び第2研削砥石43を形成する砥粒の粒径の表し方には、幾何学的径、相当径等の既知の手法がある。幾何学的径には、フェレー(Feret)径、定方向最大径(即ち、Krummbein径)、Martin径、ふるい径等があり、相当径には、投影面積円相当径(即ち、Heywood径)、等表面積球相当径、等体積球相当径、ストークス径、光散乱径等がある。また、砥粒の粒径が小さいとは、砥粒の粒径が高番手であることである。砥粒の番手は、粒径が小さくなるに従って大きくなるパラメータである。
【0035】
研削装置1は、例えば、まず、第1研削ユニット30により、砥石の粒径が第2研削砥石43よりも大きい第1研削砥石33を環状に配置している第1研削ホイール32で、被加工物100を粗研削を実施し、次に、第2研削ユニット40により、第1研削砥石33よりも砥石の粒径が小さい第2研削砥石43を環状に配置している第2研削ホイール42で、被加工物100を、粗研削により形成された研削ダメージ層を研削するダメージ研削、及び、仕上げ研削を実施する。
【0036】
接触式厚み測定ユニット50は、本実施形態では、図2に示すように、第1研削位置202付近と、第2研削位置203付近との2箇所に設けられている。2つの接触式厚み測定ユニット50は、設けられている位置を除き、いずれも、同じ構成及び同じ機能を有する。接触式厚み測定ユニット50は、図2に示すように、第1プローブ51と、第2プローブ52と、を備える。第1プローブ51及び第2プローブ52は、本実施形態では、いずれも接触した位置の高さを測定する接触式のプローブである。
【0037】
第1プローブ51は、被加工物100を保持したチャックテーブル10の保持面13の被加工物100の外側に接触することで、保持面13のZ軸方向における位置、すなわち保持面13の高さを測定する。第2プローブ52は、チャックテーブル10の保持面13に保持された被加工物100の上面(被研削面)に接触することで、被加工物100の上面のZ軸方向における位置(上面位置)、すなわち被加工物100の上面の高さ(上面高さ)を測定する。第1プローブ51及び第2プローブ52は、いずれも、測定した位置(高さ)の結果を制御ユニット60に出力する。また、第1プローブ51及び第2プローブ52は、いずれも、研削開始前、研削中及び研削終了後に、例えば一定時間毎(例えば、毎秒)に、チャックテーブル10の保持面13の高さ及び被加工物100の上面の高さを検出することにより、保持面13の高さの時間変化及び被加工物100の上面の高さの時間変化を取得し、取得したこれらの時間変化を制御ユニット60に出力する。
【0038】
制御ユニット60は、研削装置1の各種構成要素の動作を制御して、実施形態に係る研削方法を含む被加工物100の研削処理等を研削装置1に実施させる。制御ユニット60は、第2研削ユニット40による被加工物100の研削中に、第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に設けられた荷重センサ18により、当該チャックテーブル10にかかる研削荷重を取得し、第2研削送りユニット44により、第2スピンドル41の送り速度や移動量を取得し、負荷電流値検出センサ46により、第2スピンドル41の負荷電流値を取得し、荷重センサ48により、第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41にかかる研削荷重を取得し、接触式厚み測定ユニット50により、保持面13の高さの時間変化及び被加工物100の上面の高さの時間変化を取得する。制御ユニット60は、第2研削送りユニット44による第2スピンドル41の送り速度や移動量を制御する。
【0039】
制御ユニット60は、接触式厚み測定ユニット50により取得した、保持面13の高さ及び被加工物100の上面の高さに基づいて、被加工物100の上面の高さから保持面13の高さを差し引くことにより、被加工物100の厚みを算出する。制御ユニット60は、接触式厚み測定ユニット50により取得した、保持面13の高さの時間変化及び被加工物100の上面の高さの時間変化に基づいて、被加工物100の厚みの時間変化や被加工物100の厚みの変化量を算出し、この算出した被加工物100の厚みの時間変化や被加工物100の厚みの変化量に基づいて、第2研削ホイール42で被加工物100を研削した研削量を算出する。このように、制御ユニット60は、接触式厚み測定ユニット50により、実質的に、被加工物100の厚み、及び、被加工物100の厚みの時間変化や被加工物100の厚みの変化量を測定することができる。
【0040】
制御ユニット60は、第2研削送りユニット44により取得した第2スピンドル41の移動量と、接触式厚み測定ユニット50により実質的に測定して取得した被加工物100の厚みの変化量とに基づいて、第2スピンドル41の移動量から被加工物100の厚みの変化量を差し引くことにより、第2スピンドル41に装着された第2研削ホイール42の消耗量を算出する。また、制御ユニット60は、第2研削送りユニット44により取得した第2スピンドル41の移動量と、接触式厚み測定ユニット50により実質的に測定して取得した被加工物100の厚みの変化量とに基づいて、所定の単位時間(例えば、1秒)当たりの第2スピンドル41の移動量から所定の単位時間当たりの被加工物100の厚みの変化量を差し引き、この差し引いた値を所定の単位時間当たりの被加工物100の厚みの変化量で割ることにより、所定の単位時間における第2スピンドル41に装着された第2研削ホイール42の消耗率を算出する。また、制御ユニット60は、所定の単位時間における第2研削ホイール42の消耗率の時間変化のデータに基づいて、所定の時間(例えば、10秒間)当たりの第2研削ホイール42の消耗率の移動平均を算出する。
【0041】
制御ユニット60は、チャックテーブル10及び第2スピンドル41のそれぞれにかかる研削荷重の時間変化のデータに基づいて、所定の時間当たりのチャックテーブル10及び第2スピンドル41のそれぞれにかかる研削荷重の移動平均を算出する。制御ユニット60は、第2スピンドル41の負荷電流値の時間変化のデータに基づいて、所定の時間当たりの第2スピンドル41の負荷電流値の移動平均を算出する。
【0042】
制御ユニット60は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット60が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット60の演算処理装置は、制御ユニット60の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、研削装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット60の入出力インターフェース装置を介して研削装置1の各構成要素に出力する。
【0043】
カセット71,72は、図2に示すように、複数の被加工物100を収容するための収容器である。また、位置合わせユニット73は、カセット71,72から取り出された被加工物100が仮置きされて、その中心位置合わせを行うためのテーブルである。
【0044】
搬入ユニット74は、吸着パッドを有し、位置合わせユニット73で位置合わせされた研削前の被加工物100を吸着保持して搬入搬出位置201に位置付けられたチャックテーブル10上に搬入する。搬出ユニット75は、搬入搬出位置201に位置付けられたチャックテーブル10上に保持された研削後の被加工物100を吸着保持して洗浄ユニット76に搬出する。洗浄ユニット76は、研削後の被加工物100を洗浄し、研削された被研削面に付着している研削屑等のコンタミネーションを除去する。
【0045】
搬出入ユニット77は、図2に示すように、例えばU字型の形状をしたハンドを備えるロボットピックであり、U字型ハンドによって被加工物100を吸着保持して被加工物100を搬送する。具体的には、搬出入ユニット77は、研削前の被加工物100をカセット71,72から位置合わせユニット73へ搬出するとともに、研削後の被加工物100を洗浄ユニット76からカセット71,72へ搬入する。
【0046】
実施形態に係る研削方法について説明する。実施形態に係る研削方法では、第1研削ステップ1001の実施前に、第1研削ホイール32で研削する被加工物100をチャックテーブル10で保持し、当該チャックテーブル10を第1研削位置202に位置付ける処理を実施する。具体的には、まず、搬出入ユニット77により、カセット71,72に収容された研削前の被加工物100を搬出して、位置合わせユニット73に搬送し、位置合わせユニット73により、搬送された研削前の被加工物100を中心位置合わせした後に、搬入ユニット74により、位置合わせユニット73で中心位置合わせされた研削前の被加工物100を、搬入搬出位置201に位置付けられたチャックテーブル10の保持面13上に搬入する。次に、チャックテーブル10の保持面13で、保持面13上に搬入された研削前の被加工物100を、被加工物100の被研削面とは反対側の面(表面)側から吸引保持する。その後、ターンテーブル20を回転させることにより、保持面13で研削前の被加工物100を保持したチャックテーブル10を、搬入搬出位置201から第1研削位置202に移動させる。
【0047】
第1研削ステップ1001は、第1研削ホイール32で被加工物100を研削するステップである。第1研削ステップ1001では、まず、第1スピンドル31を鉛直方向に平行な軸心回りに回転駆動することにより、第1スピンドル31の下端に装着した第1研削ホイール32を鉛直方向に平行な軸心回りに回転させ、第1研削位置202に位置付けられて第1スピンドル31に対向配置された、被加工物100を保持するチャックテーブル10を、回転軸回りに回転させる。第1研削ステップ1001では、次に、回転させたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、不図示の研削流体供給ユニットにより研削流体を供給しながら、第1研削送りユニット34により回転する第1研削ホイール32を研削送り方向に沿って押圧することによって、第1研削ホイール32の第1研削砥石33で被加工物100を粗研削する。
【0048】
第1研削ステップ1001の実施後、第2研削ステップ1002の実施前に、ターンテーブル20を回転させることにより、第1研削ホイール32で研削後に第2研削ホイール42で研削する被加工物100を保持したチャックテーブル10を、第1研削位置202から第2研削位置203に移動させる。
【0049】
第2研削ステップ1002は、第1研削ステップ1001の実施後に、第1研削ホイール32より粒径の小さい第2研削ホイール42で被加工物100を研削するステップであり、図1に示すように、第1研削ステップ1001で被加工物100に形成された研削ダメージ部を第1研削条件で研削するダメージ研削ステップ1011と、ダメージ研削ステップ1011の後に、被加工物100を第2研削条件で仕上げ研削する仕上げ研削ステップ1012と、を含む。ダメージ研削ステップ1011と、仕上げ研削ステップ1012とは、いずれも、第2研削ユニット40により、第2研削ホイール42で、第2研削位置203に位置付けられたチャックテーブル10に保持された被加工物100を研削するので、第1研削条件でダメージ研削ステップ1011を実施した後に、続けて、第1研削条件を第2研削条件に変更して仕上げ研削ステップ1012を実施する。ここで、第1研削条件及び第2研削条件は、本実施形態では、第2研削送りユニット44による第2スピンドル41の送り速度である。すなわち、ダメージ研削ステップ1011と、仕上げ研削ステップ1012とは、本実施形態では、第2研削送りユニット44による第2スピンドル41の送り速度を除き、同じ条件で実施する。
【0050】
第2研削ステップ1002では、まず、第2スピンドル41を鉛直方向に平行な軸心回りに回転駆動することにより、第2スピンドル41の下端に装着した第2研削ホイール42を鉛直方向に平行な軸心回りに回転させ、第2研削位置203に位置付けられて第2スピンドル41に対向配置された、被加工物100を保持するチャックテーブル10を、回転軸回りに回転させる。第2研削ステップ1002では、次に、回転させたチャックテーブル10に保持された被加工物100に対し、研削流体供給ユニット45により研削流体を供給しながら、第2研削送りユニット44により回転する第2研削ホイール42を研削送り方向に沿って押圧することによって、第2研削ホイール42の第2研削砥石43で被加工物100を研削する。
【0051】
図5及び図6は、いずれも、図1の第2研削ステップ1002を説明する図である。図5は、第2研削ステップ1002を実施する際の第2スピンドル41の送り速度の例を表で示している。図6は、図5に示す第2スピンドル41の送り速度で第2研削ステップ1002を実施した際の、被加工物100の研削量に対する第2研削ホイール42の消耗率の変化のグラフを示している。ここで、算出した第2研削ホイール42の消耗率は、図6に示すように、算出するタイミングによって大きなばらつきが生じる場合がある。そこで、本実施形態では、この第2研削ホイール42の消耗率のばらつきを考慮して、第2研削ホイール42の消耗率の時間変化に基づいて算出される、所定の時間当たりの第2研削ホイール42の消耗率の移動平均を使用する。また、本実施形態では、第2研削ホイール42の消耗率と同様に、チャックテーブル10及び第2スピンドル41のそれぞれにかかる研削荷重や、第2スピンドル41の負荷電流値についても、その所定の時間当たりの移動平均を使用する。
【0052】
本実施形態では、被加工物100は、第1研削ステップ1001を実施することにより、被研削面側に15μm程度の厚みの研削ダメージ部が形成される。このように被研削面側に15μm程度の厚みの研削ダメージ部が形成された被加工物100を、第2研削ホイール42で、図5の比較例に示すように、第2スピンドル41の送り速度を0.4μm/sで一定に維持して、その他の第2研削ホイール42で被加工物100を研削する研削条件も同じに維持して、第2スピンドル41に装着された第2研削ホイール42で被加工物100を研削すると、図6のデータ301に示すように、被加工物100の研削量が15μm程度以下の領域では、第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が所定の閾値(図6のデータ301に示す例では0.7%)より大きくなり、被加工物100の研削量が増加するに従って第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が次第に減少し、被加工物100の研削量が15μm程度より大きい領域では、第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が所定の閾値以下の低い値に落ち着くことがわかる。ここで、図6において被加工物100の研削量が15μm程度以下の領域は、第2研削ホイール42で被加工物100の研削ダメージ部を研削している領域であり、図6において被加工物100の研削量が15μm程度より大きい領域は、第2研削ホイール42で被加工物100の研削ダメージ部の研削が終了し、研削ダメージ部ではない部分を研削している領域である。
【0053】
このように、第2研削ホイール42で被加工物100を研削する研削条件を同じに維持した場合、第2研削ホイール42で被加工物100の研削ダメージ部を研削する際には、第2研削ホイール42で被加工物100の研削ダメージ部でない部分を研削する際と比較して、第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が大きくなることから、第2研削ホイール42にかかる研削負荷が大きくなっていることがわかる。これにより、第2研削ホイール42で被加工物100を研削する研削条件を同じに維持した場合、第2研削ホイール42で被加工物100の研削ダメージ部を研削する際には、第2研削ホイール42で被加工物100の研削ダメージ部でない領域を研削する際と比較して、さらに、研削される被加工物100を保持するチャックテーブル10及び被加工物100を研削する第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41のそれぞれにかかる研削荷重が小さくなり、被加工物100を研削する第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41の負荷電流値が低くなる。
【0054】
そこで、ダメージ研削ステップ1011は、第1研削ステップ1001で被加工物100に形成された研削ダメージ部の有無を監視しながら研削を実施し、研削ダメージ部がないと検知した際に第1研削条件での研削を終了させる。本実施形態では、ダメージ研削ステップ1011は、以下の第1例、第2例、及び第3例の方法で、研削ダメージ部の有無を監視する。
【0055】
ダメージ研削ステップ1011の第1例では、制御ユニット60は、被加工物100の厚みを測定しながら研削を実施し、被加工物100の厚み変化量と第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41の移動量とから第2研削ホイール42の消耗率を算出し、消耗率の変化により研削ダメージ部の有無を検知する。
【0056】
ダメージ研削ステップ1011の第1例では、具体的には、制御ユニット60は、第2研削送りユニット44により取得した第2スピンドル41の送り速度と、接触式厚み測定ユニット50により実質的に測定して取得した被加工物100の厚みの時間変化とに基づいて、第2スピンドル41の送り速度から被加工物100の厚みの時間変化を差し引くことにより、第2スピンドル41に装着された第2研削ホイール42の消耗率を算出し、第2研削ホイール42の消耗率の時間変化に基づいて、所定の時間当たりの第2研削ホイール42の消耗率の移動平均を算出する。ダメージ研削ステップ1011の第1例では、そして、所定の時間当たりの第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が所定の閾値より大きくなった場合、研削ダメージ部がまだ残存していると検知し、所定の時間当たりの第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以下となった場合、研削ダメージ部が無くなって、研削ダメージ部の研削が終了したと検知する。
【0057】
ここで、ダメージ研削ステップ1011の第1例における所定の閾値は、研削ダメージ部でない部分を研削する際に算出される所定の時間当たりの第2研削ホイール42の消耗率の移動平均よりも十分に大きく、研削ダメージ部を研削する際に算出される所定の時間当たりの第2研削ホイール42の消耗率の移動平均を十分に上回らない値に予め定められ、制御ユニット60に記憶される。
【0058】
ダメージ研削ステップ1011の第1例では、例えば、図5の実施例に示すように、第2スピンドル41の送り速度を0.1μm/sとして、第2スピンドル41に装着された第2研削ホイール42で被加工物100を研削すると、図6のデータ302に示すように、被加工物100の研削量が15μm手前(図6に示す例では約14μm)を境に、第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が、所定の閾値(図6のデータ302に示す例では0.2%)より大きい状態から、所定の閾値以下の状態に移行していることがわかる。このような場合では、制御ユニット60は、算出した第2研削ホイール42の消耗率の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以下となったことを検知したタイミングで、研削ダメージ部が無くなって、研削ダメージ部の研削が終了したと検知し、ダメージ研削ステップ1011の第1例を終了する。
【0059】
ダメージ研削ステップ1011の第2例では、制御ユニット60は、研削される被加工物100を保持するチャックテーブル10もしくは第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41にかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、研削荷重の変化により研削ダメージ部の有無を検知する。
【0060】
ダメージ研削ステップ1011の第2例では、具体的には、制御ユニット60は、荷重センサ18により、研削される被加工物100を保持するチャックテーブル10にかかる研削荷重を取得し、荷重センサ48により、第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41にかかる研削荷重を取得し、チャックテーブル10及び第2スピンドル41のそれぞれにかかる研削荷重の時間変化に基づいて、所定の時間当たりのチャックテーブル10及び第2スピンドル41のそれぞれにかかる研削荷重の移動平均を算出する。ダメージ研削ステップ1011の第2例では、そして、所定の時間当たりのチャックテーブル10もしくは第2スピンドル41にかかる研削荷重の移動平均が所定の閾値より小さくなった場合、研削ダメージ部がまだ残存していると検知し、所定の時間当たりのチャックテーブル10もしくは第2スピンドル41にかかる研削荷重の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となった場合、研削ダメージ部が無くなって、研削ダメージ部の研削が終了したと検知する。ダメージ研削ステップ1011の第2例では、制御ユニット60は、算出したチャックテーブル10もしくは第2スピンドル41にかかる研削荷重の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となったことを検知したタイミングで、研削ダメージ部が無くなって、研削ダメージ部の研削が終了したと検知し、ダメージ研削ステップ1011の第2例を終了する。
【0061】
ここで、ダメージ研削ステップ1011の第2例における所定の閾値は、研削ダメージ部でない部分を研削する際に算出されるチャックテーブル10もしくは第2スピンドル41にかかる研削荷重の移動平均よりも十分に小さく、研削ダメージ部を研削する際に算出されるチャックテーブル10もしくは第2スピンドル41にかかる研削荷重の移動平均を十分に下回らない値に予め定められ、制御ユニット60に記憶される。
【0062】
ダメージ研削ステップ1011の第3例では、制御ユニット60は、第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41の負荷電流値を監視しながら研削を実施し、負荷電流値の変化により研削ダメージ部の有無を検知する。
【0063】
ダメージ研削ステップ1011の第3例では、具体的には、制御ユニット60は、負荷電流値検出センサ46により、第2スピンドル41の負荷電流値を取得し、第2スピンドル41の負荷電流値の時間変化に基づいて、所定の時間当たりの第2スピンドル41の負荷電流値の移動平均を算出する。ダメージ研削ステップ1011の第3例では、そして、所定の時間当たりの第2スピンドル41の負荷電流値の移動平均が所定の閾値より低くなった場合、研削ダメージ部がまだ残存していると検知し、所定の時間当たりの第2スピンドル41の負荷電流値の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となった場合、研削ダメージ部が無くなって、研削ダメージ部の研削が終了したと検知する。ダメージ研削ステップ1011の第3例では、制御ユニット60は、算出した第2スピンドル41の負荷電流値の移動平均が例えば所定の時間内で所定の閾値以上となったことを検知したタイミングで、研削ダメージ部が無くなって、研削ダメージ部の研削が終了したと検知し、ダメージ研削ステップ1011の第3例を終了する。
【0064】
ここで、ダメージ研削ステップ1011の第3例における所定の閾値は、研削ダメージ部でない部分を研削する際に算出される第2スピンドル41の負荷電流値の移動平均よりも十分に低く、研削ダメージ部を研削する際に算出される第2スピンドル41の負荷電流値の移動平均を十分に下回らない値に予め定められ、制御ユニット60に記憶される。
【0065】
また、ダメージ研削ステップ1011では、第2研削ホイール42で被加工物100を研削する際の第1研削条件の送り速度を、仕上げ研削ステップ1012において第2研削ホイール42で被加工物100を研削する際の第2研削条件の送り速度より低速で、研削を実施する。ダメージ研削ステップ1011では、このようにすることにより、研削ダメージ部を研削する際の研削負荷を低減して、仕上げ研削ステップ1012において研削ダメージ部でない部分を研削する際の研削負荷に近付ける、もしくは、それ以下に抑制することができる。ダメージ研削ステップ1011では、これにより、研削ダメージ部を研削する際に砥粒の小さい高番手の第2研削ホイール42の消耗増加を抑制できる。
【0066】
例えば、図5の実施例に示すように、ダメージ研削ステップ1011における第1研削条件の第2スピンドル41の送り速度を0.1μm/sとし、仕上げ研削ステップ1012における第2研削条件の第2スピンドル41の送り速度を0.4μm/sとすると、図6のデータ302に示すように、ダメージ研削ステップ1011で被加工物100を研削した被加工物100の研削量が18μm以下の領域と、仕上げ研削ステップ1012で被加工物100を研削した被加工物100の研削量が18μm以上の領域とでは、第2研削ホイール42の消耗率及びその移動平均が大きな差がないことがわかる。このように、ダメージ研削ステップ1011における第1研削条件の第2スピンドル41の送り速度を仕上げ研削ステップ1012における第2研削条件の第2スピンドル41の送り速度よりも低速にすることにより、研削ダメージ部を研削する際に砥粒の小さい高番手の第2研削ホイール42の消耗増加を抑制できるとともに、第2研削ホイール42の消耗を抑えつつ研削ダメージ部でない部分を高速で研削することができることがわかる。
【0067】
以上のような構成を有する実施形態に係る研削方法は、第1研削ステップ1001で被加工物100に形成された研削ダメージ部の有無を監視しながら、研削ダメージ部が有り研削ダメージ部を研削する際には第2研削ホイール42の消耗率を抑制できる第1研削条件で被加工物100を研削し、研削ダメージ部が無くなり研削ダメージ部でない部分を研削する際には研削にかかる加工時間を抑制できる第2研削条件で被加工物100を研削する。このため、実施形態に係る研削方法は、砥粒の小さい高番手の研削ホイールの消耗増加を抑制しつつ、更に加工時間が長くなることを抑制できるという作用効果を奏する。
【0068】
また、実施形態に係る研削方法は、第1研削条件を、第2研削条件の送り速度より低速の送り速度で研削を実施する。このため、実施形態に係る研削方法は、研削ダメージ部を研削する際には第2スピンドル41の送り速度を低速にすることで好適に第2研削ホイール42の消耗率を抑制でき、研削ダメージ部でない部分を研削する際には第2スピンドル41の送り速度を高速にすることで好適に加工時間が長くなることを抑制できる。
【0069】
また、実施形態に係る研削方法は、第1例では、制御ユニット60が、被加工物100の厚みを測定しながら研削を実施し、被加工物100の厚み変化量と第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41の移動量とから第2研削ホイール42の消耗率を算出し、消耗率の変化により研削ダメージ部の有無を検知する。また、実施形態に係る研削方法は、第2例では、制御ユニット60が、研削される被加工物100を保持するチャックテーブル10もしくは第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41にかかる研削荷重を監視しながら研削を実施し、研削荷重の変化により研削ダメージ部の有無を検知する。また、実施形態に係る研削方法は、第3例では、制御ユニット60が、第2研削ホイール42が装着された第2スピンドル41の負荷電流値を監視しながら研削を実施し、負荷電流値の変化により研削ダメージ部の有無を検知する。これらのため、実施形態に係る研削方法は、研削ダメージ部の有無を精度よく好適に検知する事が出来る。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 研削装置
10 チャックテーブル
32 第1研削ホイール
41 第2スピンドル
42 第2研削ホイール
100 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6