(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001025
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】重合体、レジスト組成物、パターンが形成された基板の製造方法、並びに(メタ)アクリル酸エステル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/38 20060101AFI20231226BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20231226BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08F220/38
C08F220/26
G03F7/039 601
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148444
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2021509539の分割
【原出願日】2020-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2019059909
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019059910
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019060490
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】向井 一晃
(72)【発明者】
【氏名】城 健
(72)【発明者】
【氏名】加門 良啓
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 諭
(72)【発明者】
【氏名】安齋 竜一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】現像液溶解性に優れる重合体、前記重合体を含むレジスト組成物、および前記レジスト組成物を用いたパターンが形成された基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される単量体に基づく構成単位(1)を含み、多環構造を有する単量体に基づく構成単位の含有量が35モル%以下である、重合体。式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表す;A
1はエステル結合を含む連結基又は単結合を表す、ただし、A
1は第3級炭素原子を有さない;Z
1は、A
1と結合している炭素原子と-SO
2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単量体に基づく構成単位(1)、酸脱離性基を有する構成単位(2)を含み、前記構成単位(2)が、脂環式炭化水素基を含む酸脱離性基を有する構成単位(2i)を含み、前記構成単位(2)が、単環の脂環式炭化水素基を含む酸脱離性基を有する構成単位(2ii)を含み、多環構造を有する単量体に基づく構成単位の含有量が35モル%以下であり、
全構成単位に対して前記構成単位(1)が15モル%以上である、重合体。
【化1】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表す;A
1はエステル結合を含む連結基又は単結合を表す、ただし、A
1は第3級炭素原子を有さない;Z
1は、A
1と結合している炭素原子と-SO
2-とを含めて炭素数4の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
【請求項2】
ラクトン骨格を有する構成単位(3)をさらに含む、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合体、及び活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含む、レジスト組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜に対して露光する工程と露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体、前記重合体を含むレジスト組成物、パターンが形成された基板を前記レジスト組成物を用いて製造する方法、(メタ)アクリル酸エステル、及び前記(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
本願は、2019年3月27日に日本に出願された特願2019-059909号、特願2019-059910号、及び特願2019-060490号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
スルホニル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「スルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステル」と称す場合がある。)は、含硫黄単量体として知られている。スルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた重合体、又は他の単量体と共重合させた共重合体は、例えば、誘電性が高い材料、屈折率が高い材料、又は抗炎症効果を有する医療用接着剤として利用されている。
【0003】
このようなスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換反応による方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
半導体の製造に用いられるリソグラフィーの露光光源は、短波長化が進み、次世代の露光光源として、波長193nmのArFエキシマレーザーや、より高エネルギーな波長13.5nmのEUV(極端紫外線)を用いた半導体素子の量産が進んでいる。
これらに適用するレジスト用重合体は、基板への密着性や極性溶媒への親和性の観点から、極性基を含むことが望ましい。そのような極性基を含む単量体として、従来、ラクトン基を含む(メタ)アクリル酸エステルが多く用いられてきた。
スルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルは高い極性を持ち、レジスト用重合体を構成する単量体(原料モノマー)としても適用できることが期待される。
【0005】
スルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルを単量体として用いて、レジスト用重合体を製造する場合、スルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステル中に高分子量体が混入していると、現像時に前記高分子量体が不溶解分となって欠陥が生じる場合がある。このため、前記高分子量体の含有量をできる限り低減する必要がある。
【0006】
リソグラフィー技術における照射光の短波長化及びパターンの微細化に好適に対応できるレジスト組成物として、化学増幅型レジスト組成物が知られている。化学増幅型レジスト組成物は、酸の作用により酸脱離性基が脱離するレジスト用重合体と、光酸発生剤とを含む。
近年、パターンの微細化が急速に進んでおり、感度、パターン形成性、ラインウィドゥスラフネス(LWR)等の種々のリソグラフィー特性を、さらに改善できるレジスト材料の開発が望まれている。
【0007】
特許文献2の比較例には、式(a1-1-2)で表される単量体:式(a2-1-1)で表される単量体:式(a3-1-1)で表される単量体:式(I-2)で表される単量体を、モル比で30:20:40:10の割合で含む混合物を重合して得られる重合体が記載されている。また、この重合体と酸発生剤とを含有するレジスト組成物を用いてレジストパターンを形成したところ、パターン側面に荒れが生じ、ラインウィドゥスラフネス(LWR)が劣ったことが示されている。
【0008】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-153763号公報
【特許文献2】特開2012-234166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のようなエステル交換法でスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合、平衡を生成物側に傾けるために、反応によって生じるメタノール等のアルコールを蒸留によって抜き出すことが行われる。このため、反応温度を高温にする必要がある。
【0011】
本発明者らによる検討の結果、スルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルは重合性が高く、エステル交換反応で高温に曝されるとスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルの重合等による高分子量体が生成することが明らかとなった。
特許文献1には、生成物を再結晶や洗浄等で精製することが記載されているが、このような方法では、前記高分子量体を十分に除去することはできない。
【0012】
また、酸脱離性基を有する重合体を含むレジスト組成物にあっては、重合体の現像液溶解性を向上させることでLWRの改善が期待できる。
【0013】
本発明は、現像液溶解性に優れる重合体の提供、前記重合体を含むレジスト組成物の提供、前記レジスト組成物を用いたパターンが形成された基板の製造方法の提供、高分子量体を低減した(メタ)アクリル酸エステルの提供、又は高分子量体を低減した(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 下記式(1)で表される単量体に基づく構成単位(1)を含み、多環構造を有する単量体に基づく構成単位の含有量が35モル%以下である、重合体。
【0015】
【0016】
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表す;A1はエステル結合を含む連結基又は単結合を表す、ただし、A1は第3級炭素原子を有さない;Z1は、A1と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
[2] 酸脱離性基を有する構成単位(2)をさらに含む、前記[1]の重合体。
[3] 前記構成単位(2)が、脂環式炭化水素基を含む酸脱離性基を有する構成単位(2i)を含む、前記[2]の重合体。
[4] 前記構成単位(2)が、単環の脂環式炭化水素基を含む酸脱離性基を有する構成単位(2ii)を含む、前記[3]の重合体。
[5] 全構成単位に対して前記構成単位(1)が15モル%以上である、前記[1]~[4]のいずれかの重合体。
[6] ラクトン骨格を有する構成単位(3)をさらに含む、前記[1]~[5]のいずれかの重合体。
[7] 前記[1]~[6]のいずれかの重合体、及び活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含む、レジスト組成物。
[8] 前記[7]のレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜に対して露光する工程と露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法。
【0017】
[9] 以下の工程1、2を有する、下記式(1x)で表される(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
工程1:下記式(2x)で表されるアルコールと下記式(3x)で表される(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応により下記式(1x)で表される(メタ)アクリル酸エステル(1x)を含む溶液を得る工程。
工程2:前記工程1により得た前記(メタ)アクリル酸エステル(1x)を含む溶液に、貧溶媒を加えて高分子量体を析出させ、前記高分子量体を除去する工程。
【0018】
【0019】
式(1x)中、R11は水素原子又はメチル基を表す;A11はエステル結合を含む連結基又は単結合を表す、ただし、A11は第3級炭素原子を有さない;Z11は、A11と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
式(2x)中、Z11は、ヒドロキシ基と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
式(3x)中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12は直鎖もしくは分岐状の炭素数1~10のアルキル基を表す。
[10] 前記工程2において、貧溶媒として炭化水素系溶媒を用いる、前記[9]の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0020】
[11] 分子量5000以上の高分子量体の含有量が0.1質量%以下である、下記式(1x)で表される(メタ)アクリル酸エステル。
【0021】
【0022】
式(1x)中、R11は水素原子又はメチル基を表す;A11はエステル結合を含む連結基又は単結合を表す、ただし、A11は第3級炭素原子を有さない;Z11は、A11と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、現像液溶解性が良好な重合体、前記重合体を含むレジスト組成物、及び前記レジスト組成物を用いたパターンが形成された基板の製造方法を提供できる。
本発明によれば、高分子量体を低減したスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又は両方を意味する。
本明細書において、「構成単位」は、単量体の重合反応により形成される原子団を意味する。
本明細書において、式(1)で表される単量体を、単量体(1)と記載する場合がある。他の式で表される単量体も同様である。
本明細書において、式(1)で表される化合物を、化合物(1)と記載する場合がある。他の式で表される化合物についても同様である。
【0025】
<重合体>
本実施形態の重合体(以下、「重合体A」ともいう。)は、下式(1)で表される単量体(1)に基づく構成単位(1)を含む。重合体Aの全構成単位に対して、多環構造を有する単量体に基づく構成単位の含有量は35モル%以下である。
重合体Aは、さらに酸脱離性基を有する構成単位(2)の1種以上を含むことが好ましい。重合体Aは、構成単位(1)及び(2)以外の他の構成単位を1種以上含んでもよい。
重合体Aはレジスト用重合体として好適である。
【0026】
[構成単位(1)]
構成単位(1)は、単量体(1)のエチレン性二重結合が開裂して形成される構成単位である。
【0027】
【0028】
式(1)において、R1は、水素原子又はメチル基である。
A1はエステル結合を含む連結基、又は単結合である。ただし、A1は第3級炭素原子を含まない。前記連結基として、例えば-A2-C(=O)O-、又は-A3-O-C(=O)-が挙げられる。前記A2、A3は、炭素数1~5の2価の鎖式炭化水素基である。A2、A3としての鎖式炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。A2、A3は炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。A2、A3は第3級炭素原子を含まない。
【0029】
Z1は、A1と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基(4員環~7員環)を形成する原子団である。環式構造の安定性の観点から、この含硫黄環式炭化水素基の炭素数は4~6が好ましい。また、この含硫黄環式炭化水素基環を構成する炭素原子に置換基が結合していてもよい。前記置換基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐状のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルデヒド基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
【0030】
単量体(1)は、含硫黄環式炭化水素基環を構成する炭素原子に、置換基が結合していないか、又は置換基として炭素数1~6のアルキル基が結合している態様が好ましい。この態様の単量体は下記式(1’)で表される。
【0031】
【0032】
式(1’)において、R1、A1は、式(1)におけるR1、A1と同様である。
nは1~4の整数を表す。A1と結合しているヘテロ環は、例えばnが1のときは4員環、nが4のときは7員環である。安定性及び合成の容易性の点で、nは2が好ましい。
R2は、前記ヘテロ環を構成する炭素原子に結合している置換基を表す。ただし、R2は、前記A1と結合している炭素原子には結合しない。
m個のR2はそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。mが2以上の場合、1分子中に複数存在するR2は、互いに同一であってもよく、異なってもよい。
mは0以上(n+1)以下の整数であり、0以上n以下の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0が最も好ましい。
【0033】
前記A1と結合している基の例として、下記式(1a)~(1d)で表される基が挙げられる。式中*はA1との結合手を表す。
【0034】
【0035】
単量体(1)としては、R1が水素原子又はメチル基であり、A1が単結合であり、A1に前記式(1a)~(1d)で表される基のいずれかが結合している態様が好ましい。
式(1a)~(1d)で表される基のうち、安定性及び合成の容易性の点で、式(1b)で表される基が特に好ましい。
重合体Aに含まれる構成単位(1)は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0036】
重合体Aの全構成単位に対して、構成単位(1)は15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましい。上限は感度及び解像度の点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
例えば、重合体Aの全構成単位に対して、構成単位(1)は15~70モル%が好ましく、20~60モル%がより好ましく、25~60モル%がさらに好ましく、25~50モル%が特に好ましい。
【0037】
[構成単位(2)]
構成単位(2)は、酸脱離性基を有する単量体(以下、単量体(2)ともいう。)に基づく構成単位である。酸脱離性基とは酸の作用により開裂する結合を有する基であり、前記結合の開裂により酸脱離性基の一部又は全部が重合体から脱離する基である。ポジ型の化学増幅型レジスト組成物にあっては、露光後の加熱により、露光部において重合体の酸脱離性基が酸と反応して脱離し、アルカリ現像液に可溶となる。
単量体(2)は(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、公知の化合物を用いることができる。
単量体(2)は、リソグラフィープロセスにおけるドライエッチング耐性の点で、脂環式炭化水素基を含む酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を含むことが好ましい。
前記脂環式炭化水素基は単環でもよく多環でもよい。前記脂環式炭化水素基はヘテロ原子を含んでもよい。前記ヘテロ原子は、O、S及びNからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。環を構成する原子数は5~22が好ましい。
レジストの感度や解像度に優れることから、アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有するアクリル酸エステルがより好ましい。具体例として、下式の単量体(2-1)~(2-4)が挙げられる。
特に構成単位(1)と組み合わせたときに、現像液溶解性の向上効果が得られやすい点で、単量体(2-4)がより好ましい。
【0038】
【0039】
式(2-1)~(2-4)において、R31、R32、R33、R34は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。
R21、R24、R25は、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
R22、R23は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
R331、R332、R333、R334は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
X1、X2、X3、X4は、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
n1、n2、n3、n4は、それぞれ独立に0~4の整数を表す。n1、n2、n3又はn4が2以上の場合、1分子中に複数存在するX1、X2、X3又はX4は、互いに同一であってもよく、異なってもよい。
Z2、Z3は、それぞれ独立に-O-、-S-、-NH-又は-(CH2)k-を表す。kは、1~6の整数を表す。
qは0又は1を表す。
rは0~3の整数を表す。
【0040】
重合体Aに含まれる構成単位(2)は1種でもよく、2種以上でもよい。
重合体Aの全構成単位に対して、構成単位(2)は20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると良好な感度が得られやすく、上限値以下であるとレジストとしての良好なバランスが得られやすく、基板との良好な密着性が得られやすい。
【0041】
構成単位(2)は、脂環式炭化水素基を含む酸脱離性基を有する構成単位(2i)を含むことが好ましい。前記脂環式炭化水素基は単環でもよく多環でもよい。前記脂環式炭化水素基はヘテロ原子を含んでもよい。前記ヘテロ原子は、O、S及びNからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。環を構成する原子数は5~22が好ましい。
構成単位(2)の総モル数に対して、構成単位(2i)の含有量は25モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、75モル%以上が特に好ましい。100モル%でもよい。構成単位(2i)の含有量が前記下限値以上であると、構成単位(1)と組み合わせたときに、現像液溶解性の向上効果が得られやすい。
【0042】
構成単位(2)は、単環の脂環式炭化水素基を含む酸脱離性基を有する構成単位(2ii)を含むことがより好ましい。前記単環の脂環式炭化水素基はヘテロ原子を含まないことが好ましい。前記単環の脂環式炭化水素基の、環を構成する原子数は5~8がより好ましく、5~6がさらに好ましい。例えば、前記単量体(2-4)に基づく構成単位がより好ましい。
構成単位(2)の総モル数に対して、構成単位(2ii)の含有量は25モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、75モル%以上が特に好ましい。100モル%でもよい。構成単位(2ii)の含有量が前記下限値以上であると、構成単位(1)と組み合わせたときに、現像液溶解性の向上効果が得られやすい。
【0043】
重合体Aの全構成単位に対して、多環構造を有する単量体に基づく構成単位の含有量は35モル%以下であり、30モル%以下がより好ましい。多環構造を有する構成単位が35モル%以下であると、重合体Aの現像液溶解性に優れる。
【0044】
[他の構成単位]
他の構成単位としては、化学増幅型レジスト組成物において公知の構成単位を用いることができる。例えばラクトン骨格を有する構成単位、親水性基を有する構成単位が挙げられる。
【0045】
(ラクトン骨格を有する構成単位(以下、ラクトン単位ともいう。))
ラクトン骨格とは、-O-C(=O)-を有する環を含む単環又は多環の原子団を意味する。前記-O-C(=O)-を有する環は、-C(=O)-O-C(=O)-を有する環でもよい。
ラクトン骨格は、4~20員環が好ましく、5~10員環がより好ましい。
ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に芳香族又は非芳香族の、炭化水素環又は複素環が縮合していてもよい。
【0046】
ラクトン骨格を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。特に、基板等への密着性に優れる点から、置換又は無置換のδ-バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び置換又は無置換のγ-ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ-ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0047】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β-(メタ)アクリロイルオキシ-β-メチル-δ-バレロラクトン、4,4-ジメチル-2-メチレン-γ-ブチロラクトン、β-(メタ)アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン、β-(メタ)アクリロイルオキシ-β-メチル-γ-ブチロラクトン、α-(メタ)アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン、2-(1-(メタ)アクリロイルオキシ)エチル-4-ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5-(メタ)アクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン、8-メタクリロキシ-4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン、9-メタクリロキシ-4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン、等が挙げられる。
重合体Aに含まれるラクトン単位は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0048】
重合体Aがラクトン単位を含む場合、その含有量は、重合体Aの全構成単位に対して、10~70モル%が好ましく、20~60モル%がより好ましく、30~50モル%がさらに好ましい。上記範囲であると基板への密着性の向上効果が得られやすい。
【0049】
(親水性基を有する構成単位(以下、親水性単位ともいう。))
本明細書における「親水性基」とは、-C(CF3)2-OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基及びアミノ基からなる群から選ばれる1種以上である。
親水性基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、ヒドロキシ基を有するスチレン誘導体が好ましい。
【0050】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシアダマンチル、2-又は3-シアノ-5-ノルボルニル(メタ)アクリレート、2-シアノメチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン等が挙げられる。
基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシアダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5-ジヒドロキシアダマンチル、2-又は3-シアノ-5-ノルボルニル(メタ)アクリレート、2-シアノメチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
重合体Aに含まれる親水性単位は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0051】
親水性基を有する構成単位は、重合体Aの現像液への濡れ性向上に寄与する。重合体Aの全構成単位に対して、親水性基を有する構成単位の含有量は、0~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~20モル%がさらに好ましい。上記範囲であるとレジストとしての良好なバランスが得られやすい。
【0052】
重合体Aの好ましい態様として、下記(i)~(iv)の態様が挙げられる。
(i)構成単位(1)及び構成単位(2)を含み、全構成単位に対して、構成単位(1)が15~70モル%、構成単位(2)が20~80モル%であり、これらの合計が35~100モル%である重合体。
(ii)構成単位(1)、構成単位(2)、及びラクトン単位を含み、全構成単位に対して、構成単位(1)が15~70モル%、ラクトン単位が10~70モル%、構成単位(1)とラクトン単位との合計が25~85モル%であり、構成単位(2)が20~80モル%であり、構成単位(1)と構成単位(2)とラクトン単位との合計が45~100モル%である重合体。
(iii)構成単位(1)、構成単位(2)、及び親水性単位を含み、全構成単位に対して、構成単位(1)が15~70モル%、親水性単位が0~40モル%、構成単位(1)と親水性単位との合計が15~80モル%であり、構成単位(2)が20~80モル%であり、構成単位(1)と構成単位(2)と親水性単位との合計が35~100モル%である重合体。
(iv)構成単位(1)、構成単位(2)、ラクトン単位及び親水性単位を含み、全構成単位に対して、構成単位(1)が15~70モル%、ラクトン単位が10~70モル%、親水性単位が0~40モル%、構成単位(1)とラクトン単位と親水性単位との合計が25~85モル%であり、構成単位(2)が25~80モル%であり、構成単位(1)と構成単位(2)とラクトン単位と親水性単位との合計が50~100モル%である重合体。
【0053】
重合体Aは、例えば、重合溶媒の存在下で、重合開始剤を使用し、単量体をラジカル重合させる溶液重合法で製造できる。
重合体Aの重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、3,000~50,000がより好ましく、5,000~30,000がさらに好ましい。
【0054】
<レジスト組成物>
本実施形態のレジスト組成物は、重合体Aと、レジスト溶媒と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むことが好ましい。重合体Aは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物(溶剤を除く)に対して、重合体Aの含有量は、特に限定されないが、70~99.9質量%が好ましい。
【0055】
レジスト溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などが挙げられる。レジスト溶媒は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト溶媒の使用量は、形成するレジスト膜の厚みにもよるが、重合体Aの100質量部に対して100~10,000質量部の範囲が好ましい。
【0056】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物は、化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
光酸発生剤の使用量は、重合体Aの100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0057】
レジスト組成物は、必要に応じて、含窒素化合物、酸化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸又はその誘導体)、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤は、レジスト組成物の分野で公知のものを使用できる。
【0058】
<パターンが形成された基板の製造方法>
本実施形態のパターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
まず、シリコンウエハー等の被加工基板の表面(被加工面)上に、レジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、レジスト組成物が塗布された被加工基板を、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
ついで、レジスト膜に、フォトマスクを介して、250nm以下の波長の光を照射して潜像を形成する(露光)。照射光としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUVエキシマレーザーが好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
また、前記レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0059】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜に現像液を接触させてレジスト膜の一部を溶解する。ポジ型現像プロセスではアルカリ現像液で露光部を溶解して除去する。
重合体Aは、露光により発生した酸によって酸脱離性基の結合が開裂し、露光部のアルカリ現像液への溶解速度が増す。
アルカリ現像液としてはアルカリ性水溶液が用いられる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類;等の水溶液が挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にドライエッチングする。
ドライエッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【0060】
<(メタ)アクリル酸エステル>
本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルは、下記式(1x)で表されるスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステル(化合物(1x))であって、分子量5000以上の高分子量体の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする。
【0061】
【0062】
式(1x)中、R11は水素原子又はメチル基を表す;A11はエステル結合を含む連結基又は単結合を表す、ただし、A11は第3級炭素原子を有さない;Z11は、A11と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
【0063】
ここで、分子量5000以上の高分子量体の含有量が規定される本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルは、「(メタ)アクリル酸エステル」ではなく「(メタ)アクリル酸エステル組成物」と称すべき場合もあるが、本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルにおいて、分子量5000以上の高分子量体(以下、単に「高分子量体」と称す場合がある。)は、0.1質量%以下という極く少量で含まれるか、又はその含有量は検出限界以下で、ほとんど含まれないものでもある。また、高分子量体含有量0.1質量%以下で、「(メタ)アクリル酸エステル製品」とされ、更に各種用途に使用されるものであるので、本実施形態においては、このように高分子量体を極く少量含む、又はほとんど含まない(メタ)アクリル酸エステルを「(メタ)アクリル酸エステル」と称することとする。
また、上記の通り、高分子量体含有量が0.1質量%以下とは、高分子量体の分析における検出限界以下で、実質的に高分子量体含有量0質量%を包含するものである。
【0064】
[化合物(1x)]
前記式(1x)において、A11は、エステル結合を含む連結基又は単結合である。ただし、A11は第3級炭素原子を有さない。A11としてのエステル結合を含む連結基は、前記A1としてのエステル結合を含む連結基と同様である。A11は原料入手容易性と合成容易性の観点からは単結合であることが好ましい。
R11は水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0065】
Z11は、A11と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基(4員環~7員環)を形成する原子団である。環式構造の安定性の観点から、この含硫黄環式炭化水素基の炭素数は4~6が好ましい。また、この含硫黄環式炭化水素基環を構成する炭素原子に置換基が結合していてもよい。前記置換基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐状のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルデヒド基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
【0066】
原料の入手容易性や化合物の安定性の観点から、この含硫黄環式炭化水素基は、スルホニル基を含む環が5員環である2-スルホラン、3-スルホラン構造がより好ましく、その中でも3-スルホラン構造が最も好ましい。
化合物(1x)として、3-スルホラニルメタクリレートが最も好ましい。
【0067】
[高分子量体]
本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル中の高分子量体の含有量は後述の実施例の項に記載の方法で分析することができ、その検出限界は0.03質量%以下である。
【0068】
本実施形態の(メタ)アクリル酸エステル中の高分子量体とは、後述の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の工程1において、目的物(化合物(1x))であるスルホニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、又は化合物(1x)の製造原料である後述の化合物(3x)が、その高い重合性に起因して重合又は共重合して生成する高分子量体である。その分子量は5000以上で、後述の実施例の項に記載される方法で測定される重量平均分子量(Mw)は3×105~6×105程度である。分子量が5000未満の高分子量体であれば、溶媒に可溶であるので再結晶等により母液に残存して除去されるため、後述の工程2における除去対象とならない。
【0069】
本実施形態の(メタ)アクリル酸エステル中の高分子量体の含有量は0.1質量%以下で少ないほど好ましく、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下で、最も好ましくは検出限界以下である。
【0070】
このように高分子量体の含有量が低減された本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルは、後述の本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法により製造することができる。
【0071】
[用途]
高分子量体含有量が低減された本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルは、高分子量体に影響されることなく、スルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステル本来の優れた特性を発揮できる。例えば、プラスチック原料、塗料、接着剤等多岐に渡る用途に有用である。
特に、本実施形態のスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、レジスト用途、例えばArFレジスト用重合体を構成する単量体として有用である。高分子量体の含有量が低減された単量体を用いることで、レジスト用重合体のリソグラフィー特性を改善できる。例えば、レジスト用重合体の溶解性と現像性を向上させ、高分子量体に由来する現像時の欠陥を防止できる。また、スルホニル基に由来して基板への密着性や極性溶媒への親和性を向上できる。
本実施形態のスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、前記重合体Aを構成する前記単量体(1)として好適に使用できる。
【0072】
<(メタ)アクリル酸エステルの製造方法>
本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、前記式(1x)で表される(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、以下の工程1,2を含む。
【0073】
工程1:下記式(2x)で表されるアルコールと下記式(3x)で表される(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応により、前記式(1x)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む溶液を得る工程。
【0074】
【0075】
式(2x)中、Z11は、ヒドロキシ基と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団を表す。
【0076】
【0077】
式(3x)中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12は直鎖もしくは分岐状の炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0078】
工程2:工程1により得た前記式(1x)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む溶液に貧溶媒を加えて高分子量体を析出させ、前記高分子量体を除去する工程。
【0079】
[工程1:反応工程]
工程1では、前記式(2x)で表されるアルコール化合物(2x)と前記式(3x)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物(3x)との反応によって化合物(1x)を得る。
【0080】
化合物(2x)において、Z11は、ヒドロキシ基と結合している炭素原子と-SO2-とを含めて炭素数3~6の含硫黄環式炭化水素基を形成する原子団である。環式構造の安定性の観点からこの含硫黄環式炭化水素基の炭素数は4~6が好ましい。また、この含硫黄環式炭化水素基の環を構成する炭素原子に置換基が結合していてもよい。前記置換基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐状のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルデヒド基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
原料の入手容易性から、この含硫黄環式炭化水素基は、スルホニル基を含む環が5員環となる2-スルホラン、3-スルホラン構造がより好ましい。その中でも3-スルホラン構造が最も好ましい。
化合物(2x)としては、3-ヒドロキシスルホランが最も好ましい。
【0081】
化合物(3x)において、R11は、水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0082】
R12は直鎖もしくは分岐状の炭素数1~10のアルキル基である。直鎖もしくは分岐状の炭素数1~10のアルキル基としてはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ノルマルペンチル基、ノルマルヘキシル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられる。
エステル交換反応では原料エステル由来のアルコールを蒸留により除去する必要があることから、エステル交換反応で生成する副生アルコールの沸点が低い方が好ましい。この観点から、R12はメチル基が好ましい。
即ち、化合物(3x)としては、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルが好ましい。
【0083】
工程1において、化合物(1x)は、エステル交換反応によって製造される。エステル交換反応の条件は特に制限されず、公知の方法で行えばよい。例えば、特開2007-153763号公報には、3-ヒドロキシスルホランとメタクリル酸メチルを反応させて、3-スルホラニルメタクリレートを得る方法が開示されている。
【0084】
収率よく化合物(1x)を得るため、化合物(2x)は脱水してから用いることが好ましい。脱水の方法としては、化合物(2x)を有機溶媒に溶解させて加熱し、有機溶媒と水の共沸により水を除く方法が好ましい。共沸有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン等が利用できる。また、化合物(3x)が水と共沸する場合には、化合物(2x)を化合物(3x)に溶解させて共沸により脱水することもできる。
【0085】
エステル交換反応においては触媒を用いてもよいし、用いなくてもよい。収率よく化合物(1x)を得るため、触媒を用いることが好ましい。触媒を用いる場合には、チタン触媒やスズ触媒が利用できる。チタン触媒としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン、テトライソブトキシチタン等が挙げられる。スズ触媒としては、ジノルマルブチルスズオキシド、ジノルマルオクチルスズオキシド、ジ-2-エチルヘキシルスズオキシド等が挙げられる。反応後の触媒の除去性の観点からチタン触媒を用いることが好ましい。
【0086】
触媒の使用量は、効率よく化合物(1x)を得る点から、化合物(2x)1モルに対して0.001モル以上が好ましく、0.01モル以上がより好ましい。また、触媒の使用量は、触媒の除去性やコストの点から、化合物(2x)1モルに対して0.05モル以下が好ましく、0.03モル以下がより好ましい。エステル交換触媒は一度に加えてもよいし、分割して加えてもよい。
例えば、触媒の使用量は、化合物(2x)1モルに対して0.001~0.05モルが好ましく、0.01~0.03モルがより好ましい。
【0087】
エステル交換反応において化合物(3x)の使用量は特に限定されないが、収率よく化合物(1x)を得る点から、化合物(2x)の1モルあたり0.5モル以上が好ましく、0.8モル以上がより好ましく、1.0モル以上がさらに好ましい。特に、副生アルコールを化合物(3x)との共沸により除去する場合には、化合物(3x)の使用量が少ないと、副生アルコールを十分に除くことができないため、反応率が低下するおそれがある。また、エステル交換反応の釜効率や反応後の処理工程への負荷を抑制する点から、化合物(3x)の使用量は化合物(2x)の1モルあたり、12モル以下が好ましく、10モル以下がより好ましく、8モル以下がさらに好ましい。
例えば、化合物(3x)の使用量は、化合物(2x)の1モルあたり、0.5~12モルが好ましく、0.8~10モルがより好ましく、1~8モルがさらに好ましい。
【0088】
反応系には化合物(3x)や化合物(1x)の重合を抑制するため、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の種類は特に限定されず、1種類用いてもよいし2種類以上用いてもよい。
【0089】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール、tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどのフェノール系化合物、N,N-ジイロプロピル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジ-2-ナフチルパラフェニレンジアミンなどのアミン系化合物、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケイトなどのN-オキシル系化合物などが挙げられる。
【0090】
また、重合を防止するためにエステル交換反応中に酸素含有ガスをバブリングすることも好ましい。導入する酸素含有ガスの量は適宜設定できる。酸素含有ガスとしては空気を用いることが特に好ましい。
【0091】
エステル交換反応の温度は特に限定されないが、副生アルコールの除去や反応速度向上のため、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また化合物(3x)や化合物(1x)の重合を抑制するため、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
例えば、エステル交換反応の温度は、30~160℃が好ましく、60~140℃がより好ましい。
【0092】
エステル交換反応の時間は、効率よく化合物(1x)を得る点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。また、化合物(3x)や化合物(1x)の重合を抑制するため、50時間以下が好ましく、30時間以下がより好ましい。
例えば、エステル交換反応の時間は、0.5~50時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。
【0093】
反応後の後処理として、触媒を用いた際には、触媒を失活させる操作を行ってもよい。特に、化合物(1x)をレジスト用として用いる場合には、金属の混入をなるべく低減することが好ましい。そのために、触媒として金属を用いた場合は、触媒を失活させて除去することが好ましい。その方法としては、例えば次の方法が挙げられる。
すなわち、反応液を撹拌しながらおよそ70℃以下に冷却した後、添加した触媒と同量以上の水と、吸着剤と、ろ過助剤としてセライトとを添加し、触媒を金属酸化物にして失活させ、析出させる。添加終了後に1~5時間程度撹拌を続ける。析出した金属酸化物は加圧ろ過、又は減圧ろ過等によって除去することができる。
【0094】
[工程2:精製工程]
工程2では、工程1によって製造した化合物(1x)を含む溶液に貧溶媒を加えて高分子量体を析出させ、析出した高分子量体を除去する。なお、この工程2における貧溶媒による高分子量体の析出は、化合物(1x)を析出させずに、高分子量体を析出させるものであり、高分子量体が析出しない後述の洗浄操作や再結晶操作とは異なる。
【0095】
加える貧溶媒としては特に制限は無く、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチルなどのエステル系溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。貧溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
高分子量体の溶解度が低い炭化水素系溶媒を用いることがより好ましい。中でも、蒸留等により除去が容易な点で、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数5~7の飽和炭化水素系溶媒がさらに好ましい。
【0096】
貧溶媒の添加量は、高分子量体の量や溶解度によって、適宜決定することができる。高分子量体の溶解度を下げて析出させるために、反応に用いた化合物(2x)の質量に対して、0.2質量倍以上が好ましく、0.5質量倍以上がより好ましい。また、経済性や釜効率のため、反応に用いた化合物(2x)の質量に対して、5質量倍以下が好ましく、3質量倍以下がより好ましい。
例えば、貧溶媒の添加量は、反応に用いた化合物(2x)の質量に対して、0.2~5質量倍が好ましく、0.5~3質量倍がより好ましい。
【0097】
析出した高分子量体の除去方法は特に制限はなく、蒸留残差として分離、加圧ろ過、減圧ろ過、遠心分離等が挙げられる。化合物(1x)の沸点や性状、スケール、高分子量体の量などを考慮して、適宜適切な手法を用いればよい。除去の過程で再び高分子量体を生じさせないために、加熱しない手法である加圧ろ過や減圧ろ過、遠心分離を用いることが望ましい。
高分子量体の分離後は、減圧蒸留等により濃縮して貧溶媒を除去すればよい。
【0098】
工程2は、必要に応じて化合物(1x)の精製操作を含んでもよい。化合物(1x)の精製方法としては、洗浄、加熱処理、ろ過、蒸留、再結晶等が挙げられる。これらを単独で実施してもよいし、2以上を組み合わせて実施してもよい。精製は、高分子量体の析出工程の前に実施してもよく、後に実施してもよく、前後両方で実施してもよい。
【0099】
化合物(2x)はスルホニル基を有するため、極性が高く、水に溶けやすい。そのため洗浄液として、水、又は塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩を5~30質量%溶解した水溶液を用いて洗浄することで、化合物(2x)を水層へ除去することができる。洗浄回数は適宜決定することができる。化合物(1x)への金属の混入を低減する点から、水で洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0100】
前記洗浄は溶媒を加えずに実施してもよいし、溶媒で希釈してもよい。化合物(1x)の加水分解や水層への流出を低減するため、溶媒で希釈することが好ましい。溶媒としては特に制限は無く、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチルなどのエステル系溶媒などが利用できる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒を用いる量は、化合物(1x)の溶解度や洗浄液の量に応じ適宜決定することができる。
【0101】
化合物(1x)を蒸留により精製する場合には、重合禁止剤を添加して、空気など酸素含有ガスを適宜導入しながら1.3kPa(10mmHg)以下の真空度で実施するのが好ましい。特に、熱履歴が少ない点で、薄膜蒸留などの手法で実施することが好ましい。
【0102】
化合物(1x)を再結晶により精製する場合には、室温から40℃の間で前記化合物(1x)を溶解し、室温以下に冷却することによって結晶が析出するような溶媒を用いる。再結晶に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を単独又は混合して用いることができる。また、再結晶の回収率を向上させるために、結晶を溶かしにくいヘキサン、オクタン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、水などを、前記アルコール系溶媒、前記エステル系溶媒又は前記エーテル系溶媒に混合して用いることもできる。溶媒の再利用を行いやすい点で、アルコール系溶媒を単独で使用することが好ましい。また、結晶が析出するときのスラリー濃度を適切にし、回収率を向上させる点で、アルコール系溶媒と炭化水素系溶媒との混合溶媒がより好ましい。
スラリー濃度は、粘度の増加抑制や工程通過性をよくする観点から25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。また経済性や釜効率の点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
例えば、スラリー濃度は、5~25質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。
【0103】
再結晶に際しては、30℃以上で化合物(1x)を溶媒に溶かし、それを徐々に冷却し、内温が5~10℃になったら種晶を加えて結晶化を促進することが好ましい。結晶化に伴って、潜熱により内温が上昇するが、それを冷却して内温が10℃以下になったら結晶を分離する。結晶の分離は、遠心ろ過器、加圧ろ過器などを用いて行うことができる。結晶の分離後は溶媒により洗浄を行う。
再結晶後に、水に混和又は溶解する溶媒を用いて結晶を分離し、その後に湿結晶ケーキを水で洗浄することが好ましい。これにより、結晶に付着した溶媒の大部分を除去でき、湿結晶の温度が室温付近まで上昇しても融解する可能性がほとんどなくなる。
【実施例0104】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0105】
≪実施例(I)≫
反応追跡はガスクロマトグラフィーにより実施した。
<重量平均分子量の測定方法>
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
【0106】
<共重合組成比の測定方法>
各例で得られた重合体について、各単量体に基づく構成単位の組成比(単位:モル%)を、1H-NMRの測定により求めた。
この測定においては、日本電子(株)製、ECS-400型 超伝導FT(フーリエ変換)-NMR装置を用い、約5質量%のサンプル溶液(溶媒は重クロロホルム)を直径5mmφのサンプル管に入れ、観測周波数400MHz、シングルパルスモードにて、64回の積算を行った。測定温度は60℃で行った。
【0107】
<現像液溶解性の評価方法(濁度の測定方法)>
濁度計(Orbeco-Hellige社製、製品名:TB200)を用い、下記の測定方法で濁度Th(80)及び濁度Tm(80)を測定した。Th(80)は低極性の有機溶媒への溶解性の指標であり、Tm(80)は高極性の有機溶媒への溶解性の指標である。濁度が高いほど有機溶媒への溶解性が低いことを示す。言い換えると、濁度が高いほど極性が高く、アルカリ現像液への溶解性に優れる傾向となる。
【0108】
[濁度Th(80)の測定方法]
(1)PGMEA/γ-ブチロラクトン=75/25質量%の混合溶媒に、測定対象の重合体を溶解して、濃度20質量%のPGMEA/γ-ブチロラクトン溶液(以下、試料溶液という。)を調製する。
(2)前記(1)で調製した試料溶液にn-ヘプタンを添加して混合液とし、前記混合液の濁度が10NTUになるときの、前記試料溶液に対する、n-ヘプタンの添加量(Xh質量%)を決定する。
(3)前記Xh質量%の80%に相当する量のn-ヘプタンを、前記(1)で調製した試料溶液に添加し、25℃で4時間攪拌して測定溶液を得る。
(4)前記測定溶液の25℃における濁度をTh(80)とする。
[濁度Tm(80)の測定方法]
(5)前記(1)で調製した試料溶液にメタノールを添加して混合液とし、前記混合液の濁度が5.0NTUになるときの、前記試料溶液に対する、メタノールの添加量(Xm質量%)を決定する。
(6)前記Xm質量%の80%に相当する量のメタノールを、前記(1)で調製した試料溶液に添加し、25℃で4時間攪拌して測定溶液を得る。
(7)前記測定溶液の25℃における濁度をTm(80)とする。
【0109】
以下の実施例、比較例において下記単量体(m1)~(m7)を用いた。
【0110】
【0111】
【0112】
[実施例1-1]
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA8.1質量部及びγ-ブチロラクトン32.5質量部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。その後、下記混合物1を滴下漏斗より、4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持して反応溶液を得た。
(混合物1の組成)
単量体(m1)8.17質量部(20モル%)、
単量体(m2)10.20質量部(30モル%)、
単量体(m3)13.44質量部(40モル%)、
単量体(m4)4.72質量部(10モル%)、
溶媒:PGMEA8.9質量部、γ-ブチロラクトン35.7質量部、及び
重合開始剤:ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名))3.91質量部。
【0113】
得られた反応溶液を約10倍量の、メタノール及び水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)に撹拌しながら滴下し、白色の析出物の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールへ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、重合体湿粉を得た、重合体湿粉を減圧下60℃で約36時間乾燥して乾燥粉末状の重合体を得た。
得られた重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す(以下、同様。)。
得られた重合体について上記の方法で濁度を測定した。結果を表1に示す(以下、同様。)。
なお、表1に示す共重合組成比は仕込み比であるが、得られた重合体の共重合組成比を前記の方法で測定したところ、構成単位(m1)は20.2モル%、構成単位(m2)は30.1モル%、構成単位(m3)は39.7モル%、構成単位(m4)は10.0モル%であり、仕込み比とほぼ同じであった。
【0114】
上記で得た乾燥粉末状の重合体15.0質量部、PGMEA105.0質量部、及び光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレート0.3質量部を混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過し、レジスト組成物を製造した。
【0115】
[実施例1-2、比較例1-1]
実施例1-1における単量体の仕込み組成を表1に示すとおりに変更した。その他は実施例1-1と同様にして重合体を製造し、評価した。
また、得られた重合体を用い、実施例1-1と同様にしてレジスト組成物を製造した。
【0116】
[比較例2-1、2-2]
実施例1-1における単量体の仕込み組成を表1に示すとおりに変更した。その他は実施例1-1と同様にして重合体を製造し、評価した。
また、得られた重合体を用い、実施例1-1と同様にしてレジスト組成物を製造した。
【0117】
[実施例3-1、4-1、比較例3-1]
実施例1-1における単量体の仕込み組成を表1に示すとおりに変更した。その他は実施例1-1と同様にして重合体を製造し、評価した。
また、得られた重合体を用い、実施例1-1と同様にしてレジスト組成物を製造した。
【0118】
【0119】
表1に示されるように、実施例1-1、1-2、3-1、4-1の重合体は、濁度が高いことから、極性が高く、アルカリ現像液への溶解性に優れる。
【0120】
≪実施例(II)≫
以下の実施例及び比較例において、3-ヒドロキシスルホランは特許文献1(特開2007-153763号公報)の手法に従って合成したものを用いた。
メタクリル酸メチルは三菱ケミカル株式会社製のアクリエステルM(製品名)を用いた。
テトラブトキシチタンは関東化学株式会社製のものを用いた。
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルは富士フィルム和光純薬社製のものを用いた。
セライトはキシダ化学株式会社製のセライト545(製品名)を用いた。
【0121】
エステル交換反応における反応率は、ガスクロマトグラフ(以下「GC」という。装置:アジレント・テクノロジー(株)アジレント6890GC、カラム:HP-5)の測定におけるピーク面積から次式により算出した。
反応率(%)=(A/B)×100
ここで、Aは検量線による化合物(1)の定量値、Bは検量線による化合物(1)と化合物(2)の定量値の合計を表す。
【0122】
高分子量体の含有量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」という。装置:東ソー(株)HLC-8320GPC、カラム:Shodex LF-804(3本)、溶離液:テトラヒドロフラン)の測定におけるピーク面積値から、検量線による定量値で算出した。
【0123】
高分子量体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(装置:東ソー(株)HLC-8320GPC、カラム:Shodex LF-804(3本)、溶離液:テトラヒドロフラン)の測定における溶出時間から、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出した。
【0124】
<実施例5-1>
[工程1]
ディーンスタークを備えた100mLのガラス製フラスコに、3-ヒドロキシスルホラン20.1g(147mmol)、メタクリル酸メチル103.1g(1.0mol)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(以下「HO-TEMPO」という)0.12gを加え、加熱還流させてディーンスタークにより溶液中の水分を除去した。次にテトラブトキシチタンを1.5g(4mmol)加え、空気を20mL/minで吹き込みながら、反応液を加熱し内温100~110℃で還流させた。反応により生じるメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸によりディーンスタークを用いて除きながら、2.5時間撹拌した。この間に抜き出したメタノールとメタクリル酸メチルの混合液は、45.8gであった。GC分析による反応率は91%であった。その後室温まで冷却してから、水1.6gとセライト6.9gを加えて1時間撹拌し、得られた混合液をろ紙により減圧ろ過した。GPC分析とMw測定を行ったところ、Mw4.6×105の高分子量体が1.15質量%検出された。
【0125】
[工程2]
得られたろ液にトルエンを30mL加え、水を15mL加えて有機層を洗浄し分液漏斗を用いて水層を排出した。その後水を20mL加え有機層を洗浄し分液漏斗を用いて水層を排出した。次にヘキサンを24g加えて撹拌し、ゲル状の高分子量体を析出させた。硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、ろ紙を用いて減圧ろ過し、ろ液をエバポレーターを用いて濃縮し、粗3-スルホラニルメタクリレートを22.1g得た。GPC分析の結果、分子量5000以上の高分子量体は検出されなかった。
得られた粗3-スルホラニルメタクリレートに2-プロパノール66.2gとヘプタン33.1gを加えて撹拌しながら冷却し、20℃を下回ったところで種晶を加えて結晶を析出させた。得られた結晶をろ過し、ヘプタンと水で結晶を洗浄し、減圧乾燥して精製3-スルホラニルメタクリレートを12.9g得た。GPC分析の結果、分子量5000以上の高分子量体は検出されなかった。
【0126】
<実施例5-2>
[工程1]
撹拌機、温度計、ディーンスタークを備えた3Lのガラス製フラスコに、3-ヒドロキシスルホラン351g(2.6mol)、メタクリル酸メチル1770g(17.7mol)、HO-TEMPO 2.2gを加え、加熱還流させてディーンスタークにより溶液中の水分を除去した。次にテトラブトキシチタンを26g(77mmol)加え、空気を20mL/minで吹き込みながら、反応液を加熱し内温100~110℃で還流させた。反応により生じるメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸によりディーンスタークを用いて除きながら、8時間撹拌した。この間に抜き出したメタノールとメタクリル酸メチルの混合液は、902gであった。GC分析による反応率は88%であった。その後室温まで冷却してから、水28gとセライト121gを加えて1時間撹拌し、得られた混合液をろ紙により減圧ろ過した。GPC分析とMw測定を行ったところ、Mw4.0×105の高分子量体が0.08質量%検出された。
【0127】
[工程2]
得られたろ液にトルエンを900mL加え、水を200mL加えて有機層を洗浄し、水層を242g分離した。次に水を200mL加えて有機層を洗浄し、水層を204g分離した。次にヘキサンを650mL加えて撹拌し、ゲル状の高分子量体を析出させた。硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、ろ紙を用いて減圧ろ過し、ろ液をエバポレーターを用いて濃縮し、粗3-スルホラニルメタクリレートを406g得た。GPC分析の結果、分子量5000以上の高分子量体は検出されなかった。
得られた粗3-スルホラニルメタクリレートを26℃に保温しながら2-プロパノール1181gとヘプタン592gを加えて撹拌しながら冷却し、20℃を下回ったところで種晶を加えて結晶を析出させた。得られた結晶をろ過し、ヘプタンと水で結晶を洗浄し、減圧乾燥して精製3-スルホラニルメタクリレートを219g得た。GPC分析の結果、分子量5000以上の高分子量体は検出されなかった。
【0128】
<実施例5-3>
[工程1]
撹拌機、温度計、ディーンスタークを備えた10Lのガラス製セパラブルフラスコに、3-ヒドロキシスルホラン1394g(10.2mol)、メタクリル酸メチル7269g(72.6mol)、HO-TEMPO 4.4gを加え、加熱還流させてディーンスタークにより溶液中の水分を除去した。次にテトラブトキシチタンを70g(0.2mol)加え、空気を20mL/minで吹き込みながら、反応液を加熱し内温100~110℃で還流させた。反応により生じるメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸によりディーンスタークを用いて除きながら、6時間撹拌した。この間に抜き出したメタノールとメタクリル酸メチルの混合液は、1477gであった。GC分析による反応率は67%であった。次いで70℃以下まで冷却し、テトラブトキシチタンを35g(0.1mol)加え、空気を20mL/minで吹き込みながら、反応液を加熱し内温100~110℃で還流させた。反応により生じるメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸によりディーンスタークを用いて除きながら、7.5時間撹拌した。この間に抜き出したメタノールとメタクリル酸メチルの混合液は、2081gであった。GC分析による反応率は87%であった。再び70℃以下まで冷却し、テトラブトキシチタンを3.5g(0.01mol)加え、空気を20mL/minで吹き込みながら、反応液を加熱し内温100~110℃で還流させた。3.5時間撹拌したが、GC分析による反応率は87%であった。この間に抜き出したメタノールとメタクリル酸メチルの混合液は、525gであった。その後70℃以下まで冷却してから、水16gとセライト483gを加えて1時間撹拌し、得られた混合液をろ紙により加圧ろ過した。GPC分析とMw測定を行ったところ、Mw4.2×105の高分子量体が0.21質量%検出された。
【0129】
[工程2]
得られたろ液にトルエンを3000g加え、水を812g加えて有機層を洗浄し、水層を965g分離した。次に水を837g加えて有機層を洗浄し、水層を852g分離した。次にヘキサンを2020g加えて撹拌し、ゲル状の高分子量体を析出させた。ろ紙による加圧ろ過により高分子量体を除去し、ろ液をエバポレーターを用いて濃縮し、粗3-スルホラニルメタクリレートを1641g得た。GPC分析の結果、分子量5000以上の高分子量体は検出されなかった。
得られた粗3-スルホラニルメタクリレートを22℃に保温しながら2-プロパノール4690gとヘプタン2380gを加えて撹拌しながら冷却し、17℃を下回ったところで種晶を加えて結晶を析出させた。得られた結晶をろ過し、ヘプタンと水で結晶を洗浄し、減圧乾燥して精製3-スルホラニルメタクリレートを1000g得た。GPC分析の結果、分子量5000以上の高分子量体は検出されなかった。
【0130】
<比較例5-1>
3-ヒドロキシスルホラン20.0g(147mmol)、メタクリル酸メチル118.0g(1.2mol)、HO-TEMPO 0.12g、テトラエトキシチタン0.7g(4mmol)を用い、実施例5-1と同様に工程1を行った。ろ液のGPC分析とMw測定を行ったところ、Mw4.8×105の高分子量体が0.29質量%検出された。
【0131】
得られたろ液にトルエンを30mL加え、水を15mL加えて有機層を洗浄し分液漏斗を用いて水層を排出した。その後水を15mL加え有機層を洗浄し分液漏斗を用いて水層を排出した。硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、ろ紙を用いて減圧ろ過し、ろ液をエバポレーターを用いて濃縮し、粗3-スルホラニルメタクリレート25.6gを得た。GPC分析の結果、高分子量体が0.22質量%検出された。この粗3-スルホラニルメタクリレートに2-プロパノールを38.9g加えたところ、ゲル状の高分子量体が析出したが、そのまま2-プロパノールをさらに38.4g、ヘプタンを38.5g加え、20℃を下回ったところで種晶を加えて再結晶を実施し、精製3-スルホラニルメタクリレートを21.3g得た。GPCによる分析の結果、分子量5000以上の高分子量体が0.11質量%検出された。
【0132】
これらの例において、各工程における高分子量体のMw測定とGPC分析の結果を以下の表2に示す。
表2中、工程1後とは反応が終わった後、工程2後とは、貧溶媒を加えて高分子量体を析出させて除去し濃縮した後、再結晶後とは再結晶精製により得られた精製3-スルホラニルメタクリレートの分析結果を表している。
N.D.とは検出されなかったことを示す。
【0133】
【0134】
表2の結果に示されるように、実施例5-1~5-3で得られた3-スルホラニルメタクリレートは、分子量5000以上の高分子量体が検出されない高純度のものであった。
一方、工程2を行わなかった比較例5-1では、得られた3-スルホラニルメタクリレートに、分子量5000以上の高分子量体が0.11質量%含まれていた。
これらの結果より、精製工程において貧溶媒により高分子量体を析出させることで高分子量体を除去することができ、分子量5000以上の高分子量体の含有量を0.1重量%以下に低減できることがわかる。
本実施形態によれば、現像液溶解性が良好な重合体、前記重合体を含むレジスト組成物、及び前記レジスト組成物を用いたパターンが形成された基板の製造方法が得られる。
本実施形態によれば、高分子量体を低減したスルホニル基含有(メタ)アクリル酸エステルが得られる。
本実施形態の(メタ)アクリル酸エステルは高分子量体含有量が低減され、プラスチック、塗料、接着剤等多岐に渡る用途に有用である。また、レジスト用重合体を構成する単量体として好適であり、リソグラフィー特性の改善に有用である。