(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102539
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】重合体の製造方法、当該製造方法により得られる重合体を含有する組成物、レジスト組成物およびレジストパターン
(51)【国際特許分類】
C08F 212/04 20060101AFI20240724BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20240724BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C08F212/04
C08F220/26
C08F212/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006498
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 良平
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB02Q
4J100AB07Q
4J100AL08P
4J100AL26P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA05P
4J100BA10Q
4J100BA11P
4J100BA15P
4J100BC02P
4J100BC03P
4J100BC04P
4J100BC08P
4J100BC09P
4J100BC12P
4J100BC22P
4J100BC23P
4J100BC43P
4J100BC49P
4J100BC53P
4J100BC83P
4J100CA04
4J100FA04
4J100FA08
4J100GA02
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】スチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーとを低温で原子移動ラジカル重合できる重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】酸解離性基を有する重合性モノマーおよびスチレン系モノマーを含有する重合成分を原子移動ラジカル重合する重合体の製造方法であって、前記原子移動ラジカル重合を、有機塩素化合物であるラジカル重合開始剤、銅(II)化合物およびアミン化合物の存在下において、重合温度60℃以下で行う重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性基を有する重合性モノマーおよびスチレン系モノマーを含有する重合成分を原子移動ラジカル重合する重合体の製造方法であって、
前記原子移動ラジカル重合を、有機塩素化合物であるラジカル重合開始剤、銅(II)化合物およびアミン化合物の存在下において、重合温度60℃以下で行う重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ラジカル重合開始剤が、シアン化アルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、ビニルアルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、フェニルアルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、炭素原子数1~6のクロロカルボン酸および前記クロロカルボン酸のアルキルエステル(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)から選択される1種以上である請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
前記銅(II)化合物の使用量を前記ラジカル重合開始剤1モル当量に対して0.1~0.5モル当量の範囲とする請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
前記銅(II)化合物が、ハロゲン化銅(II)である請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
前記アミン化合物が、3級アミン構造および/又はピリジン環を有する化合物である請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項6】
前記アミン化合物が、2,2’-ビピリジル、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリスピリジルメチルアミンおよびトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミンからなる群から選択される1種以上である請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項7】
前記原子移動ラジカル重合を、前記ラジカル重合開始剤、前記銅(II)化合物、前記アミン化合物およびスズ化合物の存在下で行う請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項8】
前記酸解離性基を有する重合性モノマーが、下記一般式(a-1)で表されるモノマー、(a-2)で表されるモノマーおよび(a-3)で表されるモノマーからなる群から選択される1種以上である請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【化1】
(前記一般式(a-1)、(a-2)および(a-3)において、
R
11は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、
Va
1は、エーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基であり、
n
a1は、0~2の範囲の整数であり、
Ra
1は、酸解離性基であり、
R
12は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、
Wa
1は、n
a2+1価の炭化水素基であり、
n
a2は、1~3の範囲の整数であり、
Ra
2は、酸解離性基であり、
Ya
1は、単結合又はエーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基であり、
Zは重合性基を含む基であり、
Ra
3は、酸解離性基であり、
n
a31は、0~3の範囲の整数であり、
n
a32は、0以上の整数である。但し、n
a32はn
a32≦n
a31×2+4を満たす。)
【請求項9】
前記酸解離性基が、下記一般式(ad-1)、(ad-2)、(ad-3)又は(ad-4)で表される基である請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【化2】
(前記一般式(ad-1)、(ad-2)、(ad-3)および(ad-4)において、
Ra
10は、炭素原子数1~12のアルキル基又は炭素原子数1~12のエーテル結合を有するアルキル基であり、
Ra
11、Ra
12およびRa
13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、
Ra
11、Ra
12およびRa
13のうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよく、
Ara
1は、環形成炭素原子数6~12のアリール基又は環形成炭素原子数6~12のアルキルアリール基であり、
Ra
14およびRa
15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、
Ra
16は、環形成炭素原子数6~12のアリール基、環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基又は、炭素原子数1~10のアルキル基であり、
Xaは環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基である。)
【請求項10】
前記スチレン系モノマーが下記一般式(b)で表されるスチレン化合物である請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【化3】
(前記一般式(b)において、
R
21は、水素原子又はメチル基であり、
R
22は、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~15のアルキルカルボニルオキシ基、水酸基、カルボキシル基、又は水酸基もしくはカルボキシル基の水素原子が酸解離性溶解抑制基で置換された基あり、
n
bは0~5の範囲の整数である)
【請求項11】
前記酸解離性溶解抑制基が、下記一般式(bp-1)又は(bp-2)で表される基である請求項10に記載の重合体の製造方法。
【化4】
(前記一般式(bp-1)および(bp-2)において、
Rb
10は、水素原子又はメチル基であり、
Rb
12は、炭素原子数1~5のアルキル基であり、
Xbは、環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基であり、
n
b1は0又は1であり、
Rb
13は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、
Rb
14は、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基である。
n
b2は0~3の範囲の整数である。)
【請求項12】
前記酸解離性基を有する重合性モノマーと前記スチレン系モノマーを、酸解離性基を有する重合性モノマー:スチレン系モノマー(質量比)=95:5~30:70で使用する請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の製造方法で得た酸解離性基を有する重合性モノマーとスチレン系モノマーのランダム共重合体を含有する組成物。
【請求項14】
レジスト組成物である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項14のレジスト組成物を用いたレジストパターン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の製造方法、当該製造方法により得られる重合体を含有する組成物、レジスト組成物およびレジストパターンに関する。
【背景技術】
【0002】
リビングラジカル重合は開始反応および成長反応からなり、連鎖移動反応、停止反応等の成長末端を失活させる副反応を伴わない重合である。当該リビングラジカル重合を用いることで特定の構造をブロック化したポリマー、分子量の揃ったポリマーなどの特徴あるポリマーが製造可能になることから、用途を問わず広く採用されている。
【0003】
リビングラジカル重合のなかでも原子移動ラジカル重合(ATRP)はモノマーの汎用性が高く、多様な構造を有するポリマーの合成が可能であるため、近年注目を集めている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反応性の異なる2種以上のモノマーを用いて原子移動ラジカル重合する場合、重合条件の設定が通常は厳しくなる。例えば重合成分にスチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーとを用いて原子移動ラジカル重合する場合においては、スチレン系モノマーの重合には重合温度100℃以上に通常設定されるが、100℃以上の重合温度では酸解離性基を有する重合性モノマーの分解が生じるおそれがある。その一方で、酸解離性基を有する重合性モノマーの分解が生じないように重合温度を低温に設定した場合、スチレン系モノマーの重合が十分に進まない問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーとを低温で重合できる重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の化合物を用いることで重合温度60℃以下であってもスチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーとを原子移動ラジカル重合が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の重合体の製造方法等に関するものである。
1.酸解離性基を有する重合性モノマーおよびスチレン系モノマーを含有する重合成分を原子移動ラジカル重合する重合体の製造方法であって、
前記原子移動ラジカル重合を、有機塩素化合物であるラジカル重合開始剤、銅(II)化合物およびアミン化合物の存在下において、重合温度60℃以下で行う重合体の製造方法。
2.前記ラジカル重合開始剤が、シアン化アルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、ビニルアルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、フェニルアルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、炭素原子数1~6のクロロカルボン酸および前記クロロカルボン酸のアルキルエステル(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)から選択される1種以上である1に記載の重合体の製造方法。
3.前記銅(II)化合物の使用量を前記ラジカル重合開始剤1モル当量に対して0.1~0.5モル当量の範囲とする1又は2に記載の重合体の製造方法。
4.前記銅(II)化合物が、ハロゲン化銅(II)である1~3のいずれかに記載の重合体の製造方法。
5.前記アミン化合物が、3級アミン構造および/又はピリジン環を有する化合物である1~4のいずれかに記載の重合体の製造方法。
6.前記アミン化合物が、2,2’-ビピリジル、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリスピリジルメチルアミンおよびトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミンからなる群から選択される1種以上である1~5のいずれかに記載の重合体の製造方法。
7.前記原子移動ラジカル重合を、前記ラジカル重合開始剤、前記銅(II)化合物、前記アミン化合物およびスズ化合物の存在下で行う1~6のいずれかに記載の重合体の製造方法。
8.前記酸解離性基を有する重合性モノマーが、下記一般式(a-1)、(a-2)又は(a-3)で表されるモノマーである1~7のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【化1】
(前記一般式(a-1)、(a-2)および(a-3)において、
R
11は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、
Va
1は、エーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基であり、
n
a1は、0~2の範囲の整数であり、
Ra
1は、酸解離性基であり、
R
12は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、
Wa
1は、n
a2+1価の炭化水素基であり、
n
a2は、1~3の範囲の整数であり、
Ra
2は、酸解離性基であり、
Ya
1は、単結合又はエーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基であり、
Zは重合性基を含む基であり、
Ra
3は、酸解離性基であり、
n
a31は、0~3の範囲の整数であり、
n
a32は、0以上の整数である。但し、n
a32はn
a32≦n
a31×2+4を満たす。)
9.前記酸解離性基が、下記一般式(ad-1)、(ad-2)、(ad-3)又は(ad-4)で表される基である1~8のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【化2】
(前記一般式(ad-1)、(ad-2)、(ad-3)および(ad-4)において、
Ra
10は、炭素原子数1~12のアルキル基又は炭素原子数1~12のエーテル結合を有するアルキル基であり、
Ra
11、Ra
12およびRa
13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、
Ra
11、Ra
12およびRa
13のうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよく、
Ara
1は、環形成炭素原子数6~12のアリール基又は環形成炭素原子数6~12のアルキルアリール基であり、
Ra
14およびRa
15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、
Ra
16は、環形成炭素原子数6~12のアリール基、環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基又は、炭素原子数1~10のアルキル基であり、
Xaは環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基である。)
10.前記スチレン系モノマーが下記一般式(b)で表されるスチレン化合物である1~9のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【化3】
(前記一般式(b)において、
R
21は、水素原子又はメチル基であり、
R
22は、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~15のアルキルカルボニルオキシ基、水酸基、カルボキシル基、又は水酸基もしくはカルボキシル基の水素原子が酸解離性溶解抑制基で置換された基あり、
n
bは0~5の範囲の整数である)
11.前記酸解離性溶解抑制基が、下記一般式(bp-1)又は(bp-2)で表される基である10に記載の重合体の製造方法。
【化4】
(前記一般式(bp-1)および(bp-2)において、
Rb
10は、水素原子又はメチル基であり、
Rb
12は、炭素原子数1~5のアルキル基であり、
Xbは、環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基であり、
n
b1は0又は1であり、
Rb
13は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、
Rb
14は、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基である。
n
b2は0~3の範囲の整数である。)
12.前記酸解離性基を有する重合性モノマーと前記スチレン系モノマーを、酸解離性基を有する重合性モノマー:スチレン系モノマー(質量比)=95:5~30:70で使用する1~11のいずれかに記載の重合体の製造方法。
13.1~12のいずれかに記載の製造方法で得た酸解離性基を有する重合性モノマーとスチレン系モノマーのランダム共重合体を含有する組成物。
14.レジスト組成物である13に記載の組成物。
15.14のレジスト組成物を用いたレジストパターン。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、スチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーとを低温で原子移動ラジカル重合できる重合体の製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
[重合体の製造方法]
本発明の重合体の製造方法は、酸解離性基を有する重合性モノマーおよびスチレン系モノマーを含有する重合成分を原子移動ラジカル重合する重合体の製造方法であって、原子移動ラジカル重合を、有機塩素化合物であるラジカル重合開始剤、銅(II)化合物およびアミン化合物の存在下において、重合温度60℃以下で行う。
【0012】
リビングラジカル重合は、活性重合末端が原子又は原子団により保護されたドーマント種が可逆的にラジカルを発生させてモノマーと反応することにより生長反応が進行し、第一のモノマーが消費されても生長末端が活性を失うことなく、逐次的に追加される第二モノマーと反応してブロックポリマーを得ることができる。
本発明の重合体の製造方法では、ラジカル重合開始剤として有機塩素化合物を用いることで、生長途中で起こる副反応を抑制し、高い収率で狭分散な重合体を得ることができる。また、銅(II)化合物およびアミン化合物を用いることで、不安定な高活性触媒の失活を防ぐことができる。
以下、本発明の重合体の製造方法に用いる各成分について説明する。
【0013】
(有機塩素化合物)
有機塩素化合物は分子内に塩素を有する有機化合物であり、ラジカル重合開始剤として機能する。活性末端をBrではなくClとすることで、生長途中で起こる副反応を抑制し、高い収率で狭分散な重合体を得ることができる。
有機塩素化合物は、塩素以外のハロゲン原子を含まないと好ましい。
【0014】
有機塩素化合物は、好ましくはシアン化アルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、ビニルアルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、フェニルアルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)、炭素原子数1~6のクロロカルボン酸および前記クロロカルボン酸のアルキルエステル(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基)から選択される1種以上である。
前記クロロカルボン酸のアルキルエステルは、クロロカルボン酸にフェニル基がさらに置換したフェニルクロロカルボン酸のアルキルエステルも使用できる。
【0015】
有機塩素化合物の具体例としては、フェニルメチルクロライド、1-フェニルエチルクロライド、1-フェニルイソプロピルクロライド等のフェニルアルキルクロライド(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基);2-クロロプロピオン酸、2-クロロイソ酪酸、2-クロロプロピオン酸メチル、2-クロロプロピオン酸エチル、2-クロロイソ酪酸エチル、2,3-ジクロロプロピオン酸メチルなどの炭素原子数1~6のクロロカルボン酸およびそのアルキルエステル(アルキルエステルのアルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基);クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル(アルキル基は炭素原子数1~6のアルキル基);クロロアセトフェノン、クロロアセトン、クロロイソプロピルフェニルケトン、p-トルエンスルフォニルクロリド、2-クロロプロピオニトリル、α,α’-ジクロロキシレン、クロロアセトニトリル(シアン化メチルクロライド)、ビニルメチルクロライド、等が挙げられる。
【0016】
有機塩素化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
有機塩素化合物の使用量は特に限定されないが、重合成分(例えばスチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーの合計)100molに対して例えば0.05~20molであり、好ましくは0.1~10molであり、より好ましくは0.5~10molである。
【0018】
(銅(II)化合物)
活性種として銅(I)化合物ではなく銅(II)化合物を使用する。
【0019】
銅(II)化合物は、Cu2+X2で表される化合物であり、Xは、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシル基、(SO4)1/2、(PO4)1/3、(HPO4)1/2、(H2PO4)、トリフラート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、アリールスルホネート(好ましくはベンゼンスルホネート又はトルエンスルホネート)、SeR11、CN及びR12COOからなる群から選択することができる。ここで、R11は、アリール基、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~20(好ましくは炭素原子数1~10)のアルキル基を表し、R12は、水素原子、ハロゲンで1~5回(好適にはフッ素もしくは塩素で1~3回)置換されていてもよい直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
【0020】
入手の容易さ等も考慮すると、銅(II)化合物はハロゲン化銅(II)であると好ましい。
【0021】
銅(II)化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
銅(II)化合物の使用量は特に限定されないが、ラジカル重合開始剤(有機塩素化合物)1モル当量に対して例えば0.1~1.0モル当量であり、好ましくは0.1~0.8モル当量であり、より好ましくは0.1~0.5モル当量である。
【0023】
(アミン化合物)
アミン化合物は、銅(II)化合物と配位結合可能な配位子化合物であればよく、例えば銅(II)とσ結合を介して配位できる1つ以上の窒素原子を含む配位子を有する化合物である。
【0024】
アミン化合物は、好ましくは3級アミン構造および/又はピリジン環を有する化合物であり、より好ましくは下記一般式(c-1)又は(c-2)で表される化合物である
【0025】
【化5】
(前記一般式(c-1)および(c-2)において、
R
c1、R
c2、R
c3およびR
c4は、それぞれ独立に、アミノ結合(-N-)を有してもよい炭素原子数1~12のアルキル基であり、
R
c5およびR
c6は、それぞれ独立に、アミノ結合(-N-)および/又はビニル結合を有してもよい炭素原子数2~12のアルキル基であり、
X
cは2価の連結基であり、
nc1およびnc1は、それぞれ独立に、0~4の範囲の整数であり、
nc3は0又は1の整数である。)
【0026】
Rc1~Rc6において、アミノ結合(-N-)を有する炭素原子数1~12のアルキル基とは、アルキル基の少なくとも1つの炭素原子が窒素原子に置き換わった基を意味する。
Rc5およびRc6において、ビニル結合を有する炭素原子数2~12のアルキル基とは、アルキル基の少なくとも1組の炭素原子がビニル結合を形成していることを意味する。
【0027】
Rc1~Rc6のアルキル基の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい。
また、Rc1~Rc6のアルキル基は、さらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、水酸基、オキソ基、エーテル結合(-O-)、カルボキシル基、シアノ基等が挙げれる。
【0028】
Xcの2価の連結基は、例えば単結合又はアミノ結合(-N-)を有してもよい炭素原子数1~12のアルキレン基である。
【0029】
アミン化合物の具体例としては、2,2’-ビピリジル及びその誘導体、1,10-フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[2-(ジエチルアミノ)エチル]アミン、トリス[2-(ジ-(2-(メトキシカルボニル)エチル)アミノ)エチル]アミン、トリス[2-(ジ-(2-(n-ブトキシカルボニル)エチル)アミノ)エチル]アミン、2,5,9,12-テトラメチル-2,5,9,12-テトラアザトリデカン、2,6,9,13-テトラメチル-2,6,9,13-テトラアザテトラデカン、4,11-ジメチル-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、N’-N”-ジメチル-N’,N”-ビス((ピリジン-2-イル)メチル)アミン、2,5,8,12-テトラメチル-2,5,8,12-テトラアザトリデカン、トリス(2-ピリジルメチル)アミン、N,N,N‘,N’-テトラ[(2-ピリジル)メチル]エチレンジアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’,N”-トリメチル-1,3-プロパンジアミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、N-(n-プロピル)ピリジルメチルアミン、N-(n-オクチル)ピリジルメチルアミン等のポリアミンが挙げられる。
【0030】
アミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
アミン化合物の使用量は、銅(II)化合物1モル当量に対して例えば0.5~4モル当量であり、好ましくは0.75~3モル当量であり、より好ましくは1~2モル当量である。
【0032】
(スズ化合物)
本発明の製造方法では原子移動ラジカル重合を、好ましくは前記ラジカル重合開始剤、前記銅(II)化合物、前記アミン化合物およびスズ化合物の存在下で行う。
スズ化合物は、銅(II)化合物とアミン化合物の錯体化合物の還元剤として機能する化合物であり、スズ化合物をさらに用いることで銅(II)化合物の高活性触媒の失活を防ぐことができる。
【0033】
スズ化合物としては、例えば有機スズ化合物が使用でき、当該有機スズ化合物としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート等のジアルキルスズ化合物;オクチル酸スズ、2-エチルヘキサン酸スズ等のカルボン酸スズ塩が挙げられる。
【0034】
スズ化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
スズ化合物の使用量は、銅(II)化合物1モル当量に対して例えば0.1~10モル当量であり、好ましくは0.2~5モル当量であり、より好ましくは0.3~1モル当量である。
【0036】
(酸解離性基を有する重合性モノマー)
重合成分である酸解離性基を有する重合性モノマーにおいて、「重合性モノマー」とは、重合性基を有するモノマーを意味し、当該重合性基としては例えばビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、アリル基、スチリル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0037】
本発明の製造方法で得られる重合体を例えば化学増幅型レジスト組成物のベース樹脂とする場合、酸解離性基を有する重合性モノマーは、好ましくは下記一般式(a-1)、(a-2)又は(a-3)で表されるモノマーである。
【0038】
【化6】
(前記一般式(a-1)、(a-2)および(a-3)において、
R
11は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、
Va
1は、エーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基であり、
n
a1は、0~2の範囲の整数であり、
Ra
1は、酸解離性基であり、
R
12は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、
Wa
1は、n
a2+1価の炭化水素基であり、
n
a2は、1~3の範囲の整数であり、
Ra
2は、酸解離性基であり、
Ya
1は、単結合又はエーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基であり、
Zは重合性基を含む基であり、
Ra
3は、酸解離性基であり、
n
a31は、0~3の範囲の整数であり、
n
a32は、0以上の整数である。但し、n
a32はn
a32≦n
a31×2+4を満たす。)
【0039】
R11およびR12の炭素原子数1~5のアルキル基の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい。
R11およびR12の炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0040】
R11およびR12の炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基であり、当該ハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子である。
【0041】
R11およびR12は、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0042】
Va1およびYa1のエーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基のいずれでもよく、好ましくは脂肪族炭化水素基である。
当該脂肪族炭化水素基は、飽和でもよく不飽和でもよい。また、当該脂肪族炭化水素基の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれもよく、環構造を含んでもよい。
【0043】
Va1およびYa1のエーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~4のアルキレン基である。
【0044】
Wa1のna2+1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基のいずれでもよく、好ましくは脂肪族炭化水素基である。
当該脂肪族炭化水素基は、飽和でもよく不飽和でもよい。また、当該脂肪族炭化水素基の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれもよく、環構造を含んでもよい。
【0045】
na2+1価は、好ましくは2~4価であり、より好ましくは2価又は3価である。
【0046】
Zの「重合性基を含む基」は、重合性基のみから構成される基でもよいし、重合性基と当該重合性基以外の他の基とから構成される基でもよい。「重合性基以外の他の基」としては、エーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基が挙げられる。
上記エーテル結合を有しててもよい2価の炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~4のアルキレン基である。
【0047】
Zの重合性基を含む基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フルオロビニル基、ジフルオロビニル基、トリフルオロビニル基、ジフルオロトリフルオロメチルビニル基、トリフルオロアリル基、パーフルオロアリル基、トリフルオロメチルアクリロイル基、ノニルフルオロブチルアクリロイル基、ビニルエーテル基、含フッ素ビニルエーテル基、アリルエーテル基、含フッ素アリルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、含フッ素スチリル基、含フッ素ビニルナフチル基、ノルボルニル基、含フッ素ノルボルニル基、シリル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
【0048】
Ra1、Ra2およびRa3の酸解離性基は、光酸発生剤、熱酸発生剤などの酸発生剤から発生する酸の作用により解離可能な置換基であり、好ましくは下記一般式(ad-1)、(ad-2)、(ad-3)又は(ad-4)で表される基である。
【0049】
【化7】
(前記一般式(ad-1)、(ad-2)、(ad-3)および(ad-4)において、
Ra
10は、炭素原子数1~12のアルキル基又は炭素原子数1~12のエーテル結合を有するアルキル基であり、
Ra
11、Ra
12およびRa
13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~12のアルキル基であり、
Ra
11、Ra
12およびRa
13のうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよく、
Ara
1は、環形成炭素原子数6~12のアリール基又は環形成炭素原子数6~12のアルキルアリール基であり、
Ra
14およびRa
15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~12のアルキル基であり、
Ra
16は、環形成炭素原子数6~12のアリール基、環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、
Xaは環形成炭素原子数5~15の脂環式炭化水素基であり、
*は結合手である。)
【0050】
Ra10の炭素原子数1~12のアルキル基の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい。
Ra10の炭素原子数1~12のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基である。
【0051】
Ra10の炭素原子数1~12のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0052】
Ra10の炭素原子数1~12のエーテル結合を有するアルキル基は、上記アルキル基の炭素炭素間にエーテル結合(-O-)を含む基である。
【0053】
Ra11、Ra12およびRa13の炭素原子数1~12のアルキル基は、Ra10の炭素原子数1~12のアルキル基と同じである。
【0054】
Ra11、Ra12およびRa13のうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。
例えばRa11およびRa12が互いに結合してシクロヘキセン環又はシクロペンテン環を形成してもよく、Ra12およびRa13が互いに結合してシクロペンタン環を形成をしてもよい。
【0055】
Ara1の環形成炭素原子数6~12のアリール基としては、フェニル基、ナフタレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
【0056】
Ara1の環形成炭素原子数6~12のアルキルアリール基は、上記アリール基にさらにアルキル基が置換した基である。
【0057】
Ra14、Ra15およびRa15の炭素原子数1~12のアルキル基は、Ra10の炭素原子数1~12のアルキル基と同じである。
【0058】
Ra16の環形成炭素原子数6~12のアリール基は、Ara1の環形成炭素原子数6~12のアリール基と同じである。
【0059】
Ra16の環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基は、単環式脂環式炭化水素基および多環式脂環式炭化水素基のいずれもでよい。
Ra16の環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられる。
【0060】
Xaの環形成炭素原子数5~15の脂環式炭化水素基は、単環式脂環式炭化水素基および多環式脂環式炭化水素基のいずれもでよい。
Xaの環形成炭素原子数5~15の脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられる。
【0061】
Xaの環形成炭素原子数5~15の脂環式炭化水素基はさらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、水酸基、オキソ基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1~6のカルボキシアルキル基、炭素原子数1~6のアシルアルコキシ基等が挙げれる。
【0062】
一般式(ad-1)で表される酸解離性基の具体例を以下に示す。
【0063】
【0064】
一般式(ad-2)で表される酸解離性基の具体例を以下に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
一般式(ad-3)で表される酸解離性基の具体例を以下に示す。
【0068】
【0069】
一般式(ad-3)で表される酸解離性基の具体例を以下に示す。
【0070】
【0071】
本発明の製造方法で得られる重合体の酸解離性基を有する重合性モノマーの繰り返し部分の具体例を以下に示す。尚、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
(スチレン系モノマー)
重合成分であるスチレン系モノマーは特に限定されない。
本発明の製造方法で得られる重合体を例えば化学増幅型レジスト組成物のベース樹脂とする場合、スチレン系モノマーは、好ましくは下記一般式(b)で表されるスチレン化合物である。
【0087】
【化27】
(前記一般式(b)において、
R
21は、水素原子又はメチル基であり、
R
22は、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~15のアルキルカルボニルオキシ基、水酸基、カルボキシル基、又は水酸基もしくはカルボキシル基の水素原子が酸解離性溶解抑制基で置換された基あり、
n
bは0~5の範囲の整数である)
【0088】
R22の炭素原子数1~5のアルキル基の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい。
R22の炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0089】
R22の炭素原子数2~15のアルキルカルボニルオキシ基は、R-C(=O)-O-で表される置換基であり(Rはアルキル基)、R22の炭素原子数2~15のアルキルカルボニルオキシ基のアルキル基部分の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい。
R22の炭素原子数2~15のアルキルカルボニルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基等が挙げられる。
【0090】
R
22の酸解離性溶解抑制基は、解離前はアルカリ溶解抑制性を示すことができ、且つ、光酸発生剤、熱酸発生剤などの酸発生剤から発生する酸の作用により解離可能な置換基を意味する。
当該酸解離性溶解抑制基は、好ましくは下記一般式(bp-1)又は(bp-2)で表される基である。
【化28】
(前記一般式(bp-1)および(bp-2)において、
Rb
10は、水素原子又はメチル基であり、
Rb
12は、炭素原子数1~5のアルキル基であり、
Xbは、環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基であり、
n
b1は0又は1であり、
Rb
13は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、
Rb
14は、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基である。
n
b2は0~3の範囲の整数であり、
*は結合手である。)
【0091】
Rb12、Rb13およびRb14の炭素原子数1~5のアルキル基の構造は、直鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい。
Rb12、Rb13およびRb14の炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0092】
XbおよびRb14の環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基は、単環式脂環式炭化水素基および多環式脂環式炭化水素基のいずれもでよい。
XbおよびRb14の環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられる。
【0093】
XbおよびRb14の環形成炭素原子数5~12の脂環式炭化水素基はさらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、水酸基、オキソ基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1~6のカルボキシアルキル基、炭素原子数1~6のアシルアルコキシ基等が挙げれる。
【0094】
酸解離性溶解抑制基の具体例を以下に示す。
【化29】
【0095】
本発明の重合体の製造方法に用いる重合成分はスチレン系モノマーおよび酸解離性基を有する重合性モノマーを含めばよく、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン系モノマーおよび酸解離性基を有する重合性モノマー以外のその他のモノマー成分を用いてもよい。
重合成分におけるスチレン系モノマーおよび酸解離性基を有する重合性モノマーが占める割合は、例えば80重量%以上であり、好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上である。
重合成分におけるスチレン系モノマーおよび酸解離性基を有する重合性モノマーが占める割合の上限は特に限定されないが、例えば100重量%である。
【0096】
本発明の重合体の製造方法では、スチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーの反応順序は特に限定されず、例えば下記2つのパターンのいずれかを採用できる。
パターン1:スチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーとを一括で仕込んで、有機塩素化合物であるラジカル重合開始剤、銅(II)化合物およびアミン化合物の存在下で重合する。
パターン2:スチレン系モノマーおよび酸解離性基を有する重合性モノマーの一方のモノマーを、有機塩素化合物であるラジカル重合開始剤、銅(II)化合物およびアミン化合物の存在下で重合し、当該反応系に他方のモノマーをさらに加えて重合する。
【0097】
本発明の重合体を製造する際のスチレン系モノマーと酸解離性基を有する重合性モノマーの仕込み比(質量)としては、例えばスチレン系モノマー:酸解離性基を有する重合性モノマー=80:20~5:95であり、好ましくはスチレン系モノマー:酸解離性基を有する重合性モノマー=70:30~10:90であり、より好ましくはスチレン系モノマー:酸解離性基を有する重合性モノマー=60:40~25:75である。
【0098】
本発明の重合体の製造方法では、溶媒を使用することが好ましい。
使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
上記溶媒は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0099】
重合温度は60℃以下とする。重合温度を60℃以下とすることで酸解離性基を有する重合性モノマーの分解を防ぎ、得られる重合体の収率を高めることができる。
重合温度は好ましくは50℃以下である。また、重合温度の下限は特に限定されないが、例えば25℃である。
【0100】
重合反応時の重合雰囲気は特に限定されず、例えば窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気とするとよい。
【0101】
本発明の重合体の製造方法により重合体を製造した場合、得られた重合体中に、重合で用いた銅(II)化合物などに起因する金属が残留する場合がある。得られた重合体中に残留した金属は、重合終了後に活性アルミナ等を用いて除去するとよい。
【0102】
[レジスト組成物]
本発明の重合体の製造方法により得らえる重合体は、レジスト組成物のベースポリマーとして好適に用いることができる。
スチレン系モノマーおよび酸解離性基を有する重合性モノマーを重合成分とする重合体は、酸の作用により現像液に対する溶解性を変化させることができ、酸発生剤と組み合わせることでレジスト組成物とすることができる。
【0103】
レジスト組成物が含有する酸発生剤は公知のものが使用できる。
【0104】
レジストパターンの製造は、基板上にレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(1)、レジスト膜を露光する工程(2)、および露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程(3)を経て製造することができる。
レジスト膜を露光する工程(2)において、前記レジスト膜の露光をEUV(極端紫外線)で行うことによってナノメートルオーダーの微細なレジストパターンを形成することができる。
【実施例0105】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0106】
実施例および比較例において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
GPCの測定条件は以下の通りである。
【0107】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8420GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GUARDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8420GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0108】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0109】
(実施例1:重合体(1)の合成)
窒素置換したフラスコに、メタクリル酸tert-ブチル22.7g、4-アセトキシスチレン48.1g、塩化銅(II)0.6g、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン2.8gおよび溶剤としてメチルエチルケトン64.8gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキサン酸スズ(II)1.0g、ジクロロ酢酸エチル1.7gを加え、窒素気流下、55℃で28時間反応させた。
得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して重合体(1)を得た。
【0110】
得られた重合体(1)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)5,700、数平均分子量(Mn)4,630、分子量分布(Mw/Mn)1.23であった。
【0111】
(実施例2:重合体(2)の合成)
窒素置換したフラスコに、2-エチル-2-アダマンチルメタクリレート47.3g、スチレン34.7g、塩化銅(II)0.1g、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン0.5gおよび溶剤として酢酸ブチル79.3gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら45℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキサン酸スズ(II)0.9g、ジクロロ酢酸メチル1.2gを加え、窒素気流下、45℃で35時間反応させた。
得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して重合体(2)を得た。
【0112】
得られた重合体(2)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)8,400、数平均分子量(Mn)7,060、分子量分布(Mw/Mn)1.19であった。
【0113】
(実施例3:重合体(3)の合成)
窒素置換したフラスコに、メタクリル酸1-メチルシクロペンチル168.23g、スチレン13.4g、塩化銅(II)0.3g、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン1.74gおよび溶剤として酢酸ブチル142.5gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキサン酸スズ(II)1.8g、(1-クロロエチル)ベンゼン2.8gを加え、窒素気流下、40℃で24時間反応させた。
得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して重合体(3)を得た。
【0114】
得られた重合体(3)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)3,100、数平均分子量(Mn)2,380、分子量分布(Mw/Mn)1.30であった。
【0115】
(実施例4:重合体(4)の合成)
窒素置換したフラスコに、メタクリル酸tert-ブチル48.3g、4-tert-ブトキシスチレン25.7g、塩化銅(II)0.3g、トリスピリジルメチルアミン1.0gおよび溶剤としてアニソール26.6gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキサン酸スズ(II)0.4g、(1-クロロエチル)ベンゼン0.7gを加え、窒素気流下、60℃で20時間反応させた。
得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して重合体(4)を得た。
【0116】
得られた重合体(4)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)15,200、数平均分子量(Mn)12,560、分子量分布(Mw/Mn)1.21であった。
【0117】
(実施例5:重合体(5)の合成)
窒素置換したフラスコに、5-ビニル-2-ヒドロキシ安息香酸tert-ブチル62.9g、4-アセトキシスチレン5.2g、塩化銅(II)1.4g、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン2.3gおよび溶剤として酢酸n-ブチル18.8gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら50℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキサン酸スズ(II)1.5g、(1-クロロエチル)ベンゼン2.4gを加え、窒素気流下、50℃で34時間反応させた。
得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して重合体(5)を得た。
【0118】
得られた重合体(5)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)4,200、数平均分子量(Mn)3,720、分子量分布(Mw/Mn)1.13であった。
【0119】
(実施例6:重合体(6)の合成)
窒素置換したフラスコに、メタクリル酸tert-ブチル55.7g、4-アセトキシスチレン32.3g、塩化銅(II)0.7g、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン1.2gおよび溶剤として酢酸ブチル44.9gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキサン酸スズ(II)0.8g、2-クロロプロピオニトリル0.8gを加え、窒素気流下、55℃で40時間反応させた。
得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して重合体(6)を得た。
【0120】
得られた重合体(6)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)9,800、数平均分子量(Mn)8,100、分子量分布(Mw/Mn)1.21であった。
【0121】
(実施例7:重合体(7)の合成)
窒素置換したフラスコに、メタクリル酸tert-ブチル49.0g、4-アセトキシスチレン14.0g、塩化銅(II)0.5g、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン1.9gおよび溶剤として酢酸ブチル28.4gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキサン酸スズ(II)1.2g、塩化アリル1.1gを加え、窒素気流下、40℃で36時間反応させた。
得られた反応物に、活性アルミナ30gを加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去して重合体(7)を得た。
【0122】
得られた重合体(7)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)4,620、数平均分子量(Mn)3,610、分子量分布(Mw/Mn)1.28であった。
【0123】
(比較例1:重合体(1’)の合成)
窒素置換したフラスコに、メタクリル酸tert-ブチル14.5g、スチレン10.5g、塩化銅(I)29.3mgおよび4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル(dNbipy)178.2mgを仕込んだ。トルエン中のエチルブロモイソブチレート(29.7μl,20.3×10-2mmol)のパージングされた溶液を加え、その密封したフラスコを、40℃で24時間反応させた。
しかしながら反応は進行せず、重合体を得ることはできなかった。
【0124】
実施例および比較例の結果から、有機塩素化合物と銅(II)化合物とを組み合わせて用いることで、通常は60℃以下では反応が進行しないスチレンモノマーの反応が進行したことが分かる。