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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102729
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】半導体デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240724BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L27/146 C
H01L27/146 D
H01L21/50 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006816
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正英
(72)【発明者】
【氏名】萩原 啓
(72)【発明者】
【氏名】為村 成亨
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118BA14
4M118CA14
4M118CB01
4M118EA01
4M118EA14
4M118HA24
4M118HA25
4M118HA27
4M118HA30
(57)【要約】
【課題】パッド部分の強度を確保し、入出力配線の信頼性を高めることができる、柔軟性を備えた半導体デバイスとその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体デバイスは、フレキシブル基板上に接着層を介して半導体デバイスチップが積層された半導体デバイスであって、前記半導体デバイスチップは、少なくともデバイス領域の支持基板が除去されたSOIチップであり、入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に補強部材としての枠が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板上に接着層を介して半導体デバイスチップが積層された半導体デバイスであって、
前記半導体デバイスチップは、少なくともデバイス領域の支持基板が除去されたSOIチップであり、
入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に補強部材としての枠が設けられている、半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体デバイスにおいて、
前記枠は、前記支持基板の一部、及び/又は、前記支持基板とは異なる材料で形成されている、半導体デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体デバイスにおいて、
前記入出力パッドには、ボンディングワイヤーが接続されている、半導体デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体デバイスにおいて、
前記半導体デバイスチップ上に光電変換膜を備え、前記半導体デバイスはCMOSイメージセンサである、半導体デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体デバイスにおいて、
前記フレキシブル基板は表面が凹面形状の台座であり、又は、前記フレキシブル基板は表面が凹面形状の台座に接着され、
前記半導体デバイスチップのセンサエリアが前記台座の表面に固定されている、半導体デバイス。
【請求項6】
SOI基板にデバイス回路を形成する工程と、
前記SOI基板の少なくともデバイス領域の支持基板を除去するとともに、入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に補強部材としての枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程と、
前記半導体デバイスチップを、接着層を介してフレキシブル基板に接着する工程と、
前記半導体デバイスチップの前記入出力パッドに入出力配線を接続する工程と、
を備える、半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体デバイスの製造方法において、
前記枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程は、前記支持基板の前記枠となる領域をマスクし、前記デバイス領域の前記支持基板を除去する工程よりなる、半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体デバイスの製造方法において、
前記枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程は、前記支持基板を除去する工程と、前記入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に前記枠となる材料を接着する工程とからなる、半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の半導体デバイスの製造方法において、
前記枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程は、前記支持基板を薄膜化する工程と、前記入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に前記支持基板と異なる材料を接着する工程と、前記材料をマスクとして前記支持基板を除去する工程とからなる、半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の半導体デバイスの製造方法において、
前記入出力パッドに入出力配線を接続する工程は、ワイヤーボンディングによって行う、半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス及びその製造方法に関し、特に、フレキシブル基板を用いた半導体デバイスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルディスプレイやウェアラブルな電子機器等、半導体デバイスの用途が様々に広がっており、柔軟性を備えた半導体デバイスの開発が進められている。
【0003】
本発明者らは、高精細・高フレームレートなどCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ本来の高い性能を有し、かつ自由に曲げることのできる新しいイメージセンサの実現を目指しており、FDSOI(Fully-depleted silicon on insulator)基板上に形成したCMOS回路と光電変換膜を、プラスチック製の柔軟な基板に転写して作製する、フレキシブルCMOSイメージセンサの研究を進めている(非特許文献1)。柔軟性を備えたイメージセンサは、レンズの収差をセンサ面で改善することができ、また、ウェアラブルな電子機器への適用が可能である等、多くの利点・用途が期待されている。
【0004】
図9A図9Fに、本発明者らがこれまでに開発した半導体デバイスとその製造工程を示す。
【0005】
図9Aは、CMOS回路の形成工程である。FDSOI基板は、支持基板11上に絶縁膜12を介してSi層13が設けられている。このSi層13にp型及びn型のMOSトランジスタ14を形成し、CMOS回路を形成する。さらに、配線層15、絶縁膜16、画素電極17及び入出力パッド18等、必要な電極・配線を形成する。
【0006】
次いで、図9Bに示すように、CMOS回路の表面に、仮接着基板20を貼り付ける。仮接着基板20は、紫外線照射で粘着力が低下する機能を持つ基板であることが望ましい。その後、FDSOI基板の支持基板11を、研削及び/又はエッチングにより除去し、薄膜化されたCMOSデバイスチップ10を作製する。
【0007】
次に、フレキシブル基板30を準備し、その表面に接着層40として両面粘着性の導電性粘着フィルム40を設ける。この接着層40は、金属膜であってもよい。図9Cに示すように、仮接着基板20とともにCMOSデバイスチップ10の裏面(絶縁膜12)を、接着層40を介してフレキシブル基板30に接着する。
【0008】
図9Dにおいて、仮接着基板20に紫外線を照射して粘着力を低下させ、仮接着基板20を剥離する。
【0009】
次に、CMOSデバイスチップ10の表面に、図9Eに示すように、画素電極17に接続する光電変換膜50を作製する。光電変換膜50は、結晶セレン(c-Se)等からなる。
【0010】
最後に、図9Fに示すように、CMOSデバイスチップ10にFPC(Flexible Printed Circuits)等の入出力配線60を圧着し、チップ10の入出力パッド18と接続する。
【0011】
このような工程により、図9Fに示すフレキシブルなCMOSイメージセンサが作製される。FDSOIはSi層13の厚さが100nm以下であることから、CMOSデバイスチップ10の厚さは、配線層の部分が支配的となって10μm以下に薄くすることができる。また、光電変換膜部分50の厚さは約100nmと薄いため、デバイスは柔軟性が得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】後藤・為村,“フレキシブルCMOSイメージセンサの実現に向けた転写FDSOIトランジスタおよび論理回路の特性評価”,応用物理学会春季学術講演会,25a-E103-9,(2022年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図9Fのデバイスでは、CMOS回路部分(CMOSデバイスチップ)10の厚さが非常に薄く、またその下のプラスチック基板30が柔軟であることが原因で、入出力信号のための配線手段として、通常の半導体デバイスで用いられるワイヤーボンディングを用いることができない。ワイヤーボンディングではCMOS回路のパッド18上の一点に圧力を加えるため、その際に、CMOSデバイスチップ10が破損してしまう問題があった。
【0014】
そのため、入出力配線にFPC60の圧着などを用いるが、金属ワイヤーで直接配線するワイヤーボンディングに比べて配線抵抗が高くなり、また、コストが増大する。FPCを用いる場合も、デバイスを変形させる際に接続部が剥がれるおそれがあり、信頼性に課題があった。
【0015】
したがって、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、パッド部分の強度を確保し、入出力配線の信頼性を高めることができる、柔軟性を備えた半導体デバイスとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明に係る半導体デバイスは、
(1)フレキシブル基板上に接着層を介して半導体デバイスチップが積層された半導体デバイスであって、前記半導体デバイスチップは、少なくともデバイス領域の支持基板が除去されたSOIチップであり、入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に補強部材としての枠が設けられている、半導体デバイスである。
【0017】
(2)上記(1)の半導体デバイスは、更に、前記枠が、前記支持基板の一部、及び/又は、前記支持基板とは異なる材料で形成されていることが好ましい。
【0018】
(3)上記(1)または(2)の半導体デバイスは、更に、前記入出力パッドに、ボンディングワイヤーが接続されていることが好ましい。
【0019】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの半導体デバイスは、更に、前記半導体デバイスチップ上に光電変換膜を備え、前記半導体デバイスはCMOSイメージセンサであることが好ましい。
【0020】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの半導体デバイスは、更に、前記フレキシブル基板が、表面が凹面形状の台座であり、又は、前記フレキシブル基板が、表面が凹面形状の台座に接着され、前記半導体デバイスチップのセンサエリアが前記台座の表面に固定されていることが好ましい。
【0021】
上記課題を解決するために本発明に係る半導体デバイスの製造方法は、
(6)SOI基板にデバイス回路を形成する工程と、前記SOI基板の少なくともデバイス領域の支持基板を除去するとともに、入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に補強部材としての枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程と、前記半導体デバイスチップを、接着層を介してフレキシブル基板に接着する工程と、前記半導体デバイスチップの前記入出力パッドに入出力配線を接続する工程とを備える、半導体デバイスの製造方法である。
【0022】
(7)上記(6)の半導体デバイスの製造方法は、更に、前記枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程が、前記支持基板の前記枠となる領域をマスクし、前記デバイス領域の前記支持基板を除去する工程よりなることが好ましい。
【0023】
(8)上記(6)の半導体デバイスの製造方法は、更に、前記枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程が、前記支持基板を除去する工程と、前記入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に前記枠となる材料を接着する工程とからなることが好ましい。
【0024】
(9)上記(6)の半導体デバイスの製造方法は、更に、前記枠を設けた半導体デバイスチップを形成する工程が、前記支持基板を薄膜化する工程と、前記入出力パッドが設けられた領域に対応する裏面に前記支持基板と異なる材料を接着する工程と、前記材料をマスクとして前記支持基板を除去する工程とからなることが好ましい。
【0025】
(10)上記(6)~(9)のいずれかの半導体デバイスの製造方法は、前記入出力パッドに入出力配線を接続する工程を、ワイヤーボンディングによって行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明における半導体デバイス及びその製造方法によれば、柔軟性を備えた半導体デバイスにおいて、パッド部分の強度を確保し、入出力配線の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態1の半導体デバイスの構造の一例である。
図2A】半導体デバイスチップにおける枠の配置例である。
図2B】半導体デバイスチップにおける枠の配置例である。
図2C】半導体デバイスチップにおける枠の配置例である。
図2D】半導体デバイスチップにおける枠の配置例である。
図3】実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートの一例である。
図4A】実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図4B】実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図4C】実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図4D】実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図4E】実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図4F】実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図4G】実施の形態1の基板構造のバリエーションを説明する図である。
図4H】実施の形態1の基板構造のバリエーションを説明する図である。
図5A】実施の形態2の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図5B】実施の形態2の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図5C】実施の形態2の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図5D】実施の形態2の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図5E】実施の形態2の基板構造のバリエーションを説明する図である。
図5F】実施の形態2の基板構造のバリエーションを説明する図である。
図6A】実施の形態3の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図6B】実施の形態3の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図6C】実施の形態3の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図6D】実施の形態3の半導体デバイスの製造工程を説明する図である。
図6E】実施の形態3の基板構造のバリエーションを説明する図である。
図6F】実施の形態3の基板構造のバリエーションを説明する図である。
図7】実施の形態4の半導体デバイスの構造の一例である。
図8A】実施の形態5の半導体デバイスの構造の一例である。
図8B】実施の形態5の半導体デバイスの構造の一例である。
図9A】これまでに開発した半導体デバイスとその製造工程を説明する図である。
図9B】これまでに開発した半導体デバイスとその製造工程を説明する図である。
図9C】これまでに開発した半導体デバイスとその製造工程を説明する図である。
図9D】これまでに開発した半導体デバイスとその製造工程を説明する図である。
図9E】これまでに開発した半導体デバイスとその製造工程を説明する図である。
図9F】これまでに開発した半導体デバイスとその製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の半導体デバイスの構造の一例である。本発明の実施の形態1に係る半導体デバイスは、フレキシブルCMOSイメージセンサであるが、その構造と製造方法は、他の半導体デバイスにも応用可能である。なお、各図において、説明の便宜上、各構成の長さ・厚さ等の比率を実際の比率から誇張して示している。
【0030】
本発明のデバイスは、入出力パッド18の下部に補強部材としての枠70を設けることで、パッド部分の強度を確保する。図1において、CMOS回路を形成したFDSOI基板(CMOSデバイスチップ)10の裏面に、補強部材としての枠70が設けられている。枠70は、少なくともパッド(入出力パッド)18の下部に対応した領域に設けられる。また、CMOS回路が形成されたデバイス領域は、FDSOI基板の支持基板11が除去されている。本実施形態では、枠70は、パッド18下のSi支持基板11の一部を枠70として残したものである。
【0031】
枠70は、少なくとも30~100μmの厚さを有することが望ましい。補強の観点からは枠70の厚さは厚い方がよいが、枠70がSiからなる場合は200μm程度の厚さがあれば十分であり、それ以上の場合はアスペクト比が大きくなるので、作製上の注意が必要である。また、入出力パッド18のサイズにもよるが、枠70は100μm程度の幅を有することが望ましい。デバイス領域の必要な面積及び柔軟性が確保できる場合には、枠70の幅は、500~1000μmに広げてもよい。
【0032】
枠70を備えたCMOSデバイスチップ10は、プラスチック等からなるフレキシブル基板30上に、両面接着性の接着層(粘着層)40により接着されている。フレキシブル基板30はプラスチックに限らず、可撓性のある材料からなる基板であればよい。また、本実施形態では、CMOSデバイスチップ10を用いているが、CMOS回路に限らず、トランジスタを含む回路(デバイス回路)を形成した一般的な半導体デバイスチップであってもよい。CMOSデバイスチップ10上には結晶セレン(c-Se)などからなる光電変換膜50が積層され、画素電極17と接続されている。また、CMOS回路の入出力パッド18には、ボンディングワイヤー(金属ワイヤー)80からなる入出力配線が接続されている。
【0033】
本実施形態において、接着層(粘着層)は、10~500μmの厚さであり、例えば「導電性アクリル系粘着剤/導電メッシュ基材/導電性アクリル系粘着剤」で構成される導電性の粘着フィルム40を用いることができる。なお、導電性の粘着フィルム40は、その一部を接地配線とコンタクトし、接地(グランド)電位に保持されることが、CMOS回路の動作の安定のために望ましい。また、フレキシブル基板30は、例えば、厚さ50~200μmのPET(polyethylene terephthalate)フィルムを用いることができるが、他の柔軟なプラスチックフィルムであってもよい。
【0034】
次に、半導体デバイスチップにおける枠70の配置例について説明する。図2A図2Dには、フレキシブル基板30を接着する前の半導体デバイスチップ(CMOSデバイスチップ)10の裏面が示されている。
【0035】
図2Aは、半導体デバイスチップ10の一つの辺に、所定幅の枠(補強部材)70が設けられた例である。この構造は、入出力パッド18が半導体デバイスチップ10の一辺に配置された場合に対応しており、枠70は、少なくともパッド(入出力パッド)18が配置された領域に対応した幅に設けられる。この枠配置は、枠70の占める領域が少なく、半導体デバイスの柔軟性が大部分維持できる。
【0036】
図2Bは、半導体デバイスチップ10の一辺と当該辺に対向する辺に、所定幅の枠70が設けられた例である。この構造は、入出力パッド18が半導体デバイスチップ10の両側の対向する辺に配置された場合に対応している。枠70は、少なくともパッド(入出力パッド)18が配置された領域に対応した幅に設けられる。この枠配置は、枠70が一つの方向(図で縦方向)に沿って設けられており、当該方向と直交する方向(図で横方向)の半導体デバイスの柔軟性は、影響を受けない。
【0037】
図2Cは、半導体デバイスチップ10の一辺と当該辺に直交する辺に、所定幅の枠70が設けられた例である。この構造は、入出力パッド18が半導体デバイスチップ10の隣接する2辺に配置された場合に対応している。枠70は、少なくともパッド(入出力パッド)18が配置された領域に対応した幅に設けられる。この枠配置は、枠70が2方向(縦方向及び横方向)に設けられており、2方向に一定程度の強度を有することから、デバイスのハンドリングが容易になる。また、枠70が形成されていない2辺については、柔軟性を有している。
【0038】
図2Dは、半導体デバイスチップ10の周囲の4辺に、所定幅の枠70が設けられた例である。この構造は、入出力パッド18を半導体デバイスチップ10の任意の辺に配置することができ、入出力配線の設計の自由度が高い。この枠配置は、枠70が半導体デバイスチップ10の周囲に設けられていることから、デバイスの中央部が柔軟性を有している。したがって、例えば、半導体デバイスチップ10を撮像素子として形成し、中央部でレンズ収差を改善するとき等に、有効な構造である。
【0039】
なお、図示していないが、半導体デバイスチップ10の3辺にコの字状の枠を設けることも可能である。また、図2A図2Dでは、各辺の長さ全体にわたって枠70を配置したが、各辺の入出力パッド18の配置された領域のみに枠70を設けてもよい。さらに、入出力パッド18に対応する任意の部分に補強部材を配置してもよい。本発明の半導体デバイスは、枠70を設けた部分の柔軟性は失われるため、デバイスの用途に応じて、枠70の形状を選択することが望ましい。
【0040】
図3は、実施の形態1の半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートの一例である。以下、図3のフローチャートと、図4A図4Fの製造工程を示す図に基づいて、実施の形態1の半導体デバイス(図1)の製造工程を順に説明する。
【0041】
ステップS1:CMOS回路形成工程
図4Aは、FDSOI基板上に形成されたCMOS回路を示している。FDSOI基板は、Siからなる支持基板11上に絶縁膜(SiO膜)12を介してSi層13が設けられている。Si層13の厚さは、通常100nm以下である。このSi層13にp型及びn型のMOSトランジスタ14を形成し、CMOS回路を形成する。FDSOI基板に形成されたMOSトランジスタ14は、チャンネル領域が完全に空乏化するため、ソースとドレインの間の寄生容量値が低減し、また、リーク電流が大幅に低減する。その後、MOSトランジスタ14と接続する配線層15及び絶縁膜(層間絶縁膜又は表面絶縁膜)16を形成し、さらに、画素電極17及び入出力パッド18等、必要な電極を形成して、FDSOI基板に例えば撮像素子のための回路を形成する。なお、FDSOI基板は、後の工程でSi支持基板11を除去することにより、薄膜化されたCMOSデバイスチップ10となる。
【0042】
ステップS2:支持基板除去・枠形成工程
ステップS1で作製されたCMOS回路の表面に、仮接着基板20を貼り付ける。仮接着基板20は、紫外線照射で粘着力が低下する機能を持つ基板であることが望ましい。仮接着基板20として、市販のバックグラインドテープ又はダイシングテープを用いることができる。そして、図4Bに示すように、FDSOI基板の支持基板11に対して、パッド(入出力パッド)18が配置された領域に対応する裏面部分に、レジスト71を形成する。レジスト71の形成部分は、後に補強部材の枠70となる部分であり、図2A図2Dに示すような所望の枠形状とすることができる。
【0043】
レジスト71は、Si支持基板11に直接形成してもよいが、目的とする枠70の構造(特に厚さ)に応じて、レジスト71の形成前にSi支持基板11の厚さを薄くしてもよい。例えば、8インチウェーハの支持基板11は約700μmの厚さを有しており、このままの厚さで枠70として利用してもよい。しかし、この厚さで枠70を形成すると、枠70のアスペクト比が大きくなって加工が困難であるし、強度的にも700μmの厚さは必要性が低い。したがって、レジスト71の塗布前に、Si支持基板11を研削等により、例えば、30~200μm程度に薄くしてもよい。予めSi支持基板11を薄くすることは、後述のエッチング時間の短縮にも効果がある。
【0044】
その後、図4Cに示すように、レジスト71でマスクしていない部分のSi支持基板11を、エッチングにより除去する。エッチングはXeFガスを用いることができる。或いは、SF又はCF等のガスを用いてもよい。またウェットエッチングでもよい。絶縁膜(SiO膜)12をストッパーとして、Si支持基板11を選択的に除去することができる。Si支持基板11を除去することにより、半導体デバイスチップ10の薄膜化・柔軟化が図られる。デバイス領域の支持基板11は除去され、エッチング時にマスクされて残ったSi支持基板11が枠70となる。Si支持基板11の結晶方位やエッチングの手法によって、枠70の深さ方向のプロファイルは変化するが、パッド18下の部分にSi支持基板11が残っている方法であればよい。
【0045】
なお、枠70を残すことによって、CMOSデバイスチップ10単体でハンドリングが可能となる場合には、仮接着基板20の貼り付けを省略してもよい。
【0046】
ステップS3:フレキシブル基板接着工程
フレキシブル基板30を準備し、CMOSデバイスチップ10とフレキシブル基板30とを、接着層(粘着層)40を用いて接着する。フレキシブル基板30は、例えば、厚さ50~200μmのPETからなるプラスチック基板である。また、接着層40は、例えば、厚さ100~500μmの導電性の粘着フィルム40である。枠70と粘着フィルム40の厚さの関係にもよるが、本実施形態では、図4Dに示すように、枠70のある部分とない部分の段差が、粘着フィルム40で吸収されている。
【0047】
ステップS4:仮接着基板剥離工程
図4Eは、仮接着基板20の剥離工程を示す。仮接着基板20に紫外線を照射して粘着力を低下させ、仮接着基板20を剥離する。なお、仮接着基板20としては、紫外線照射で粘着力が低下するもの以外にも、加熱で粘着力が低下するものを用いてもよい。またSi支持基板11の除去の工程中にデバイスを支持できるものであれば、機械的に固定・剥離をする方法を用いてもよい。仮接着基板20を剥離することにより、CMOSデバイスチップ10がフレキシブル基板30上に設けられた転写デバイスが作製される。
【0048】
ステップS5:光電変換膜形成工程
次いで、CMOSデバイスチップ10の表面に光電変換膜50を形成する。本実施形態では、光電変換膜50は、結晶セレン(c-Se)である。結晶セレン(c-Se)は、例えば、CMOSデバイスチップ10上にスパッタリング又はCVD(Chemical Vapor Deposition)等により非晶質セレン(a-Se)を形成し、これを160℃程度の低温で加熱して結晶化を行うことにより作製される。必要に応じて光電変換膜50の形成領域を限定し、図4Fに示すように、CMOSデバイスチップ10の画素電極17に接続する光電変換膜50を作製する。なお、実際の光電変換膜50は、その表面に電圧印加のための透明導電膜(図示せず)が形成される。また、光電変換膜50は、結晶セレン層に正孔注入阻止層(酸化ガリウム層)及び/又は電子ブロッキング層(酸化ニッケル層)を設けた多層構造としてもよい。
【0049】
ステップS6:入出力配線形成工程
最後に、入出力信号のための配線を形成する。本実施形態では、図1に示すように、CMOSデバイスチップ10の入出力パッド18に、ワイヤーボンディングによって入出力配線を行う。入出力パッド18の下部には枠70が設けられていることから、ワイヤーボンディング時の圧力が加えられても、CMOSデバイスチップ10が破損することはない。また、本発明のデバイスは、入出力パッド18と金属ワイヤー80とがボンディングで強固に接続することにより、入出力抵抗が低くなるとともに、入出力配線の信頼性が高くなる。なお、入出力配線は、ボンディングワイヤー80に代えて、FPC等を圧着して接続してもよい。FPC等を用いた場合でも、枠70を設けたことにより入出力配線の信頼性が高くなる。こうして、図1に示す、本実施形態の半導体デバイス(フレキシブルCMOSイメージセンサ)が完成する。さらに、導電性粘着フィルム40に接地電極又は所定電位の電極を接続してもよい。フィルム40を一定の所定電位に保持することによりMOSトランジスタ回路を安定して動作させることができる。
【0050】
FDSOI基板はSi層の厚さが100nm以下であることから、CMOSデバイスチップ(回路部分)10の厚さは、配線層15(及び絶縁膜16)の部分が支配的となって10μm以下に薄くすることができる。また、光電変換膜50部分の厚さは100nm~数100nmと薄い。したがって、半導体デバイスは、十分な柔軟性を有する。加えて、本発明の半導体デバイスは、入出力パッド18の下部に枠70を備えており、パッド部分の強度を確保し、入出力配線の信頼性を高めることができる。
【0051】
なお、FDSOI基板に代えて、一般のSOI基板(Si層13の厚さが100nmより厚いSOI基板)を用いてもよい。FDSOIではないSOI基板を用いた場合、Si層13が3~5μmであり、CMOS回路部分の厚さがおよそ10μm以上にはなるが、それでも支持基板が除去されたSOIチップは、一定の柔軟性が得られ、同様にフレキシブルなCMOSイメージセンサを実現することができる。
【0052】
本実施形態の基板構造のバリエーションについて説明する。これまで説明した半導体デバイスは、図4Dに示すように、接着工程において、枠70のある部分とない部分の段差を接着層(粘着フィルム)40で吸収していた。しかし、枠70、接着層40、及びフレキシブル基板30の厚さ(高さ)と柔軟性の関係によっては、図4Gに示すように、比較的薄い接着層(粘着フィルム)40を用い、フレキシブル基板30で段差を吸収する場合もある。
【0053】
また、図4Hはさらに別の基板構造であり、枠70の部分にはフレキシブル基板30を貼り付けない場合である。この基板構造では、接着層40及びフレキシブル基板30は、CMOSデバイスチップ10の裏面のみに形成される。このとき、接着層(粘着フィルム)40及びフレキシブル基板30を合わせた厚さは、枠70の高さより薄くすることができる。また、接着層40として金属層を用いることもできる。この構造により、デバイスの一層の薄膜化が実現できる。
【0054】
(実施の形態2)
図5A図5Dは、実施の形態2の半導体デバイスの製造工程の一例である。本発明の実施の形態2に係る半導体デバイスは、パッド18下の枠70を、Si支持基板11を残して枠とする代わりに、支持基板11を除去した後に、別途、枠70となる材料を貼り付けて形成する。以下、本実施形態の半導体デバイスの構造及び製造工程を図に基づいて説明するが、実施の形態1と共通の構成については、説明を省略又は簡略化する。
【0055】
ステップS1:CMOS回路形成工程
図5Aは、FDSOI基板上に形成されたCMOS回路を示している。本実施形態のCMOS回路形成工程は、実施の形態1と同一である。FDSOI基板のSi層13にp型及びn型のMOSトランジスタ14を形成し、さらに、配線層15、絶縁膜16、画素電極17及び入出力パッド18等を形成して、撮像素子のためのCMOS回路を作製する。
【0056】
ステップS2:支持基板除去・枠形成工程
図5Bは、支持基板除去工程を示す。作製されたCMOSデバイスチップ10の表面に、仮接着基板20を貼り付ける。仮接着基板20は、紫外線照射で粘着力が低下する機能を持つ基板であることが望ましい。その後、FDSOI基板のSi支持基板11を、研削及び/又はエッチングにより除去する。エッチングはXeFガスを用いることができる。或いは、SF又はCF等のガスを用いてもよい。またエッチングは行わずにCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いてSi支持基板11を除去してもよい。絶縁膜(SiO膜)12をストッパーとして、Si支持基板11を選択的に除去することができる。図5Bは、Si支持基板11が除去されたCMOSデバイスチップ10を示している。Si支持基板11を除去することにより、CMOSデバイスチップ10の薄膜化・柔軟化が図られる。
【0057】
次いで、図5Cに示すように、枠70を形成する。支持基板11が削除されたCMOSデバイスチップ10の裏面(絶縁膜12上)に、枠70となる材料72を貼り付ける。材料72は、CMOSデバイスチップ10に対してワイヤーボンディングを行ったとき、デバイスチップ10の破損が生じない程度の一定の強度を有する材料であればよく、例えば、30~300μm程度の厚さの金属(例えばステンレス板)、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、ガラス等の材料を用いることができる。本実施形態では、材料72を枠70の形状に予め整形して、CMOSデバイスチップ10の入出力パッド18が配置された領域の裏面に貼り付ける。なお、CMOSデバイスチップ10の裏面全体に材料72を貼り付け、その後、材料72を所望の枠70の形状に整形してもよい。材料72を貼り付ける工程は、薄い接着層を用いてもよいし、他の任意の接着手段を用いてもよい。
【0058】
ステップS3:フレキシブル基板接着工程
図5Dは、フレキシブル基板の接着工程を示している。図4Dと同様に、フレキシブル基板30を準備し、CMOSデバイスチップ10とフレキシブル基板30とを、接着層(粘着フィルム)40を用いて接着する。枠70と粘着フィルム40の厚さの関係にもよるが、本実施形態では、図5Dに示すように、枠70のある部分とない部分の段差が、粘着フィルム40で吸収されている。
【0059】
ステップS4~S6
この後、図4Eに示すステップS4の仮接着基板剥離工程、図4Fに示すステップS5の光電変換膜形成工程、図1に示すステップS6の入出力配線形成工程と同様の各工程を行い、半導体デバイスを完成する。
【0060】
本実施形態の半導体デバイスは、枠70を、CMOSデバイスチップ10の裏面に、枠70となる材料72を貼り付けて形成する。したがって、枠の材質、厚さ等を、Si支持基板11と無関係に選択することができ、枠形成の自由度が高くなる。
【0061】
本実施形態においても、枠70、接着層40、及びフレキシブル基板30の厚さ(高さ)と柔軟性の関係により、基板構造のバリエーションが可能である。図5Dでは、枠70(72)のある部分とない部分の段差を接着層(粘着フィルム)40で吸収しているが、図5Eに示すように、フレキシブル基板30で段差を吸収する構造も可能である。また、図5Fに示すように、枠70(72)の部分にはフレキシブル基板30を貼り付けず、接着層40及びフレキシブル基板30を、CMOSデバイスチップ10の裏面のみに、枠70の高さより薄く形成する構造も可能である。
【0062】
(実施の形態3)
図6A図6Dは、実施の形態3の半導体デバイスの製造工程の一例である。本発明の実施の形態3に係る半導体デバイスは、パッド18下の枠70を、Si支持基板11と貼り付けた材料72により形成する。以下、本実施形態の半導体デバイスの構造及び製造工程を図に基づいて説明するが、実施の形態1,2と共通の構成については、説明を省略又は簡略化する。
【0063】
ステップS1:CMOS回路形成工程
図6Aは、FDSOI基板上に形成されたCMOS回路を示している。本実施形態のCMOS回路形成工程は、実施の形態1と同一である。FDSOI基板のSi層13にp型及びn型のMOSトランジスタ14を形成し、さらに、配線層15、絶縁膜16、画素電極17及び入出力パッド18等を形成して、撮像素子のためのCMOS回路を作製する。
【0064】
ステップS2:支持基板除去・枠形成工程
ステップS1で作製されたCMOS回路の表面に、仮接着基板20を貼り付ける。仮接着基板20は、紫外線照射で粘着力が低下する機能を持つ基板であることが望ましい。その後、FDSOI基板のSi支持基板11を、必要に応じて、研削及び/又はエッチングにより厚さ方向に除去して所望の厚さとする。Si支持基板11をどの程度の厚さとするかは、最終的な枠70の厚さを考慮して決定すればよく、例えば、30~100μmに薄くしてもよいし、厚い補強部材が必要な場合は薄膜化を行わなくともよい。なお、薄膜化を行う場合は、XeFガスを用いたエッチング、或いは、CMPを用いることができる。その後、図6Bに示すように、所望の厚さとしたSi支持基板11上に、枠70の一部となる材料72を貼り付ける。材料72は、補強部材としての強度を有する材料であるとともに、Si支持基板11をエッチング除去する際のマスクとなる、エッチング耐性を有する材料とする。例えば、30~100μm程度の厚さの金属、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、ガラス等の材料を用いることができる。本実施形態では、材料72を枠70の形状に予め整形して、Si支持基板11の入出力パッド18が配置された領域に対応する部分に貼り付ける。なお、Si支持基板11の全体に材料72を貼り付け、その後、材料72を所望の枠70の形状に整形してもよい。材料72を貼り付ける工程は、薄い接着層を用いてもよいし、他の任意の接着手段を用いてもよい。
【0065】
その後、図6Cに示すように、材料72でマスクされていない部分のSi支持基板11を、エッチングにより除去する。エッチングはXeFガスを用いることができる。或いは、SF又はCF等のガスを用いてもよい。またウェットエッチングでもよい。絶縁膜(SiO膜)12をストッパーとして、Si支持基板11を選択的に除去することができる。残ったSi支持基板11と材料72が、全体として枠70となる。
【0066】
ステップS3:フレキシブル基板接着工程
図6Dは、フレキシブル基板の接着工程を示している。図4Dと同様に、CMOSデバイスチップ10とフレキシブル基板30とを、接着層(粘着フィルム)40を用いて接着する。枠70と粘着フィルム40の厚さの関係にもよるが、本実施形態では、図6Dに示すように、枠70のある部分とない部分の段差が、粘着フィルム40で吸収されている。
【0067】
ステップS4~S6
この後、図4Eに示すステップS4の仮接着基板剥離工程、図4Fに示すステップS5の光電変換膜形成工程、図1に示すステップS6の入出力配線形成工程と同様の各工程を行い、半導体デバイスを完成する。
【0068】
本実施形態の半導体デバイスは、枠70を、Si支持基板11(の一部)と材料72重ね合わせた構造としている。したがって、本実施形態は、Si支持基板11だけの枠70とするよりも、材料72の選択により枠70の強度を高めることができる。
【0069】
本実施形態においても、枠70、接着層40、及びフレキシブル基板30の厚さ(高さ)と柔軟性の関係により、基板構造のバリエーションが可能である。図6Dでは、枠70(11及び72)のある部分とない部分の段差を接着層(粘着フィルム)40で吸収しているが、図6Eに示すように、フレキシブル基板30で段差を吸収する構造も可能である。また、図6Fに示すように、枠70(11及び72)の部分にはフレキシブル基板30を貼り付けず、接着層40及びフレキシブル基板30を、CMOSデバイスチップ10の裏面のみに、枠70の高さより薄く形成する構造も可能である。
【0070】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4の半導体デバイスの構造の一例であり、枠70を周囲4辺に設けた図2Dの枠構造のデバイスである。本実施形態は、CMOSデバイスチップ10の周囲の辺に入出力パッド18が配線層15により引き出されており、入出力パッド18が配置された領域の下部に枠70が形成されている。本実施形態では、枠のない部分が枠70で囲われる構造であるため、粘着フィルム等を貼りやすいように、枠70をテーパー形状としている。このテーパー形状は、結晶性を利用したウェットエッチング、又は、異方性のドライエッチングを用いて形成することができる。なお、枠70の形状は四角でなくとも円でもよい。
【0071】
テーパー形状の枠70を形成後に、CMOSデバイスチップ10を、フレキシブル基板30に接着層(粘着フィルム)40を用いて接着する。テーパー形状の枠70を用いることにより、内部に気泡などを生ずることなく粘着フィルム40及びフレキシブル基板30を接着することができる。
【0072】
(実施の形態5)
本発明の半導体デバイスは、枠70を設けた部分の強度と、枠70を設けていない部分の柔軟性を利用して、様々なデバイスに利用することができる。図8Bは、実施の形態5の半導体デバイスの構造の一例であり、本発明をCMOSイメージセンサに適用した例である。これまで説明した製造方法に基づいて、イメージセンサの入出力パッド18の下部に枠70を設けるとともに、CMOS回路部分(本実施形態ではセンサエリア)の支持基板11を削除して絶縁膜12を露出させて、図8Aに示す半導体デバイス(イメージセンサ)を形成する。この枠70は、例えば図2Dに示すように、チップの周囲4辺に配置される。
【0073】
次いで、図8Bに示すように、レンズの像面湾曲収差をセンサ面で改善するために、デバイスを凹面形状に変形させて台座31に接着する。本実施形態では、フレキシブル基板30を表面が凹面形状の台座31とし、枠70以外のセンサエリアを凹面形状の台座31の表面に接着して固定する。この場合、薄いCMOS回路部分は柔軟性を有しており、凹面形状の台座に沿って直接貼り付けることができる。なお、図8Bには明示されていないが、台座31とデバイスチップとは、接着層40で接着されてよい。本実施形態では、フレキシブル基板30からなる台座31は柔軟性を有しているため、この構造のまま異なるレンズ状態の像面湾曲収差について、センサ面で曲率を変えて柔軟に対応することもできる。または、台座31を用いずに、CMOS回路部分だけ或いはCMOS回路部分と極めて薄いフレキシブル基板30(例えば、図4H)の構造を用いて、空気圧等でセンサ面で曲率を変えて使用することもできる。台座31は、必ずしも柔軟性がなくてもよく、金属、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、ガラス等の材料で構成し、この台座31にCMOS回路部分を直接或いはCMOS回路部分とフレキシブル基板30の構造を接着し、曲率を固定して使用することもできる。以上のような用途では、半導体デバイスは、例えばレンズとともにカメラシステムに組み込まれ、パッド18の部分を固定した状態で使用されるため、ワイヤーボンディングでの配線が適している。
【0074】
本発明の半導体デバイスは、パッド18下に枠70を設けることで、ボンディングに対する強度は高くなるが、デバイスの用途に応じて、配線方法や関連構造を選択することが望ましい。ワイヤーボンディングでは、配線したパッド部分を動かすとワイヤーが断線するおそれがあるため、ワイヤーボンディングでの配線は、パッド部分を固定して(それ以外の部分を変形させて)使用するデバイスに用いるのが望ましい。あるいはワイヤー部分をモールドして変形に耐性を持たせる方法も考えられる。パッド部分も含めて変形させる用途ではFPCなどで配線することが望ましい。このFPCを用いる場合も、本発明の構造により、接続部への負荷が低減するため、信頼性が高まるという効果がある。
【0075】
本発明の半導体デバイスによれば、パッド18下の部分(デバイスチップ裏面)に補強部材としての枠70を設けることで、パッド部分の強度を確保してワイヤーボンディングを可能とする。FPC等で配線してパッド部分を含めてデバイスを変形させる際には、接続部への負荷を低減し、信頼性を確保できる。配線方法としてはワイヤーボンディングとFPC以外にも、フリップチップボンディングなど、その他、半導体で用いられる様々な実装方法が適用できる。
【0076】
本発明の半導体デバイスは、イメージセンサに限らず、ロジック回路、演算回路、メモリ、通信デバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスなど、半導体Si基板に形成されるデバイスであってもよく、それらを転写したデバイスの安定的な信号入出力に寄与する。
【0077】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態に記載の各ブロック、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成ブロック、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 CMOSデバイスチップ
11 Si支持基板
12 絶縁膜
13 Si層
14 MOSトランジスタ
15 配線層
16 絶縁膜
17 画素電極
18 入出力パッド
20 仮接着基板
30 フレキシブル基板
40 接着層(粘着フィルム)
50 光電変換膜
60 FPC
70 枠
71 レジスト
72 枠の材料
80 ボンディングワイヤー
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F