(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102748
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240724BHJP
H01L 21/22 20060101ALI20240724BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/31 E
H01L21/22 511Q
H01L21/22 511A
H01L21/324 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006849
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板谷 秀治
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AB33
5F045AC03
5F045AC12
5F045AC15
5F045BB08
5F045DP19
5F045DQ05
5F045EB08
5F045EF09
5F045EJ02
5F045EJ10
5F045EK06
5F045EM10
5F045EN05
(57)【要約】
【課題】基板の処理工程において、基板の余剰待機時間を少なくすることが可能な技術を提供する。
【解決手段】基板を加熱する処理を含む基板処理が可能な処理室と、基板を支持するボートと、前記ボートを支持するボート支持部を複数備え、該ボート支持部を公転可能な公転部と、前記公転部上方のエリアの内、前記処理室の下方に配された第一エリアと、加熱処理後の基板を待機可能な第二エリアと、隣接する搬送室との間で基板を移載可能な第三エリアと、を有する移載室と、前記第二エリアにおいて基板を冷却処理可能な冷却部と、前記処理室における基板の基板処理の終了時刻と前記第二エリアにおける基板の冷却処理の終了時刻との差に応じて、前記公転部により前記第二エリアから前記第三エリアに基板を公転させる公転動作を行う、又は前記処理室から前記第一エリアに基板を移動させる移動動作を行うよう制御可能な制御部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱する処理を含む基板処理が可能な処理室と、
前記基板を支持するボートと、
前記ボートを支持するボート支持部を複数備え、前記ボート支持部を公転可能な公転部と、
前記公転部上方のエリアの内、前記処理室の下方に配された第一エリアと、加熱処理後の前記基板を待機可能な第二エリアと、隣接する搬送室との間で前記基板を移載可能な第三エリアと、を有する移載室と、
前記第二エリアにおいて前記基板を冷却処理可能な冷却部と、
前記処理室における前記基板の基板処理の終了時刻と、前記第二エリアにおける前記基板の冷却処理の終了時刻との差に応じて、前記公転部により、前記第二エリアから前記第三エリアに前記基板を公転させる公転動作を行う、又は前記処理室から前記第一エリアに前記基板を移動させる移動動作を行うよう制御可能な制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷却処理の終了時刻が前記基板処理の終了時刻よりも早い場合、前記公転動作を行うよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第二エリアから前記第三エリアに移動するまでの時間が前記終了時刻の差よりも小さい場合、前記公転動作を行うよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、新たに加熱処理する基板が存在しない場合に、前記公転動作を行うよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記冷却処理では、前記第二エリアに待機された前記基板に冷却ガスを供給するよう構成され、
前記制御部は、前記第二エリアに前記基板が待機していない場合、前記冷却ガスの供給量を、前記冷却処理時の供給量よりも少なくするよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理室から前記第一エリアに移動された前記基板は、次に前記第二エリアに移動するよう構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基板が前記第二エリアに移動した後に、前記冷却部を稼働させるよう制御する
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理室を加熱する加熱部を更に備え、
前記制御部は、前記基板処理の終了時刻が前記冷却処理の終了時刻よりも早い或いは同等の場合、前記移動動作を行うよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記加熱部は抵抗加熱ヒータを備える請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板処理は、
前記基板を前記処理室に搬入する搬入処理と、
前記処理室にて前記基板を加熱する加熱処理と、
前記加熱処理の後、前記基板を前記処理室から前記移載室に移動する準備を行う移動準備処理と、
を含む請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記搬入処理は、前記処理室内が加熱された状態で行われる
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板処理の終了時刻とは、前記移動準備処理が終了した時刻である
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記基板処理における前記基板の加熱状態が、他ロットの基板処理における前記基板の加熱状態と実質同じとなるよう、前記基板処理の時間を設定可能とする
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記移動動作の後に、前記冷却処理が継続している場合、前記第一エリアに基板を待機させるよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記移動動作の後に、前記第三エリアにて前記ボートに新たな基板の搭載が完了していない場合、基板処理済みの前記基板を前記第一エリアに待機させるよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記第三エリアに移動された前記ボートに新たな基板を搭載する間、基板処理済みの前記基板を前記第一エリアに待機させるよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記基板を加熱処理する時間のうち、少なくとも一部の時間においては、前記第一エリアに前記ボートを存在させないよう制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項18】
移載室中の第一エリアの上方に配された処理室にて、ボートに搭載された基板を加熱する処理を含む基板処理と、前記移載室中の第二エリアにてボートに搭載された基板を冷却する冷却処理とを行う工程と、
前記基板処理の終了時刻と、前記冷却処理の終了時刻との差に応じて、公転部により、前記第二エリアから、搬送室に隣接し、前記移載室中に配された第三エリアに前記基板を公転させる、又は前記処理室から前記第一エリアに前記基板を移動させる工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項19】
請求項18に記載の基板処理方法で基板を処理する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
移載室中の第一エリアの上方に配された処理室にて、ボートに搭載された基板を加熱する処理を含む基板処理と、前記移載室中の第二エリアにてボートに搭載された基板を冷却する冷却処理とを行う手順と、
前記基板処理の終了時刻と、前記冷却処理の終了時刻との差に応じて、公転部により、前記第二エリアから、搬送室に隣接し、前記移載室中に配された第三エリアに前記基板を公転させる、又は前記処理室から前記第一エリアに前記基板を移動させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置の一態様としては、例えば移載室にて複数のボートを配置する装置が存在する(例えば特許文献1参照)。移載室に配置されるボートは、移載室上方の処理室へ移動し、加熱処理含む基板処理が行われ、その後、移載室に戻り冷却処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理室における基板の加熱処理を含む基板処理の終了時刻及び移載室における基板の冷却処理の終了時刻によっては、基板の余剰待機時間が多くなることが考えられる。
【0005】
本開示は、基板の処理工程において、基板の余剰待機時間を少なくすることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を加熱する処理を含む基板処理が可能な処理室と、
前記基板を支持するボートと、
前記ボートを支持するボート支持部を複数備え、前記ボート支持部を公転可能な公転部と、
前記公転部上方のエリアの内、前記処理室の下方に配された第一エリアと、加熱処理後の前記基板を待機可能な第二エリアと、隣接する搬送室との間で前記基板を移載可能な第三エリアと、を有する移載室と、
前記第二エリアにおいて前記基板を冷却処理可能な冷却部と、
前記処理室における前記基板の基板処理の終了時刻と、前記第二エリアにおける前記基板の冷却処理の終了時刻との差に応じて、前記公転部により、前記第二エリアから前記第三エリアに前記基板を公転させる公転動作を行う、又は前記処理室から前記第一エリアに前記基板を移動させる移動動作を行うよう制御可能な制御部と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の処理工程において、基板の余剰待機時間を少なくすることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成例を示す横断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す縦断面図である。
【
図3A】
図2に示すリアクタが備える第一ガス供給部の概略構成例を示す説明図である。
【
図3B】
図2に示すリアクタが備える第二ガス供給部の概略構成例を示す説明図である。
【
図3C】
図2に示すリアクタが備える第三ガス供給部の概略構成例を示す説明図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の制御部の構成を示す図である。
【
図5A】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作について説明する説明図である。
【
図5B】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作について説明する説明図である。
【
図5C】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作について説明する説明図である。
【
図5D】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作について説明する説明図である。
【
図5E】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作について説明する説明図である。
【
図6A】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作の他の例について説明する説明図である。
【
図6B】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作の他の例について説明する説明図である。
【
図6C】本開示の一実施形態に係る基板処理装置における公転部の動作の他の例について説明する説明図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
本開示の一実施形態に係る基板処理装置の概要構成を、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本技術に係る基板処理装置の概略構成例を示す横断面図である。
図2は、本開示の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成例を示す縦断面図であり、
図1における矢印2X-2Xに沿った断面図でもある。
【0011】
図1及び
図2には、本開示の技術が適用される基板処理装置100が示されている。基板処理装置100は、基板Sを処理する装置である。基板処理装置100は、搬送室140とリアクタ200とを備えている。
【0012】
<搬送室140>
搬送室140は、負圧下で基板Sを搬送する部屋である。搬送室140は筐体142によって構成される。なお、図示省略するが搬送室140には、室内を負圧下にするための真空装置が接続されている。この真空装置により搬送室140内が負圧に設定される。
【0013】
搬送室140は、リアクタ200が有する移載室270と連通するように構成されている。具体的には、搬送室140は、移載室270を構成する筐体272に設けられた搬入搬出口144を通して連通する。搬入搬出口144は、基板Sを搬送室140から移載室270へ搬入したり、基板Sを移載室270から搬送室140へ搬出したりするための通路として用いられる。搬入搬出口144は、筐体272に取り付けられたゲートバルブ146によって開閉される。
【0014】
搬送室140には、負圧下で基板Sを移載(搬送)する搬送ロボット150が設置されている。搬送ロボット150は、エンドエフェクタを備えたアーム152を有する。搬送ロボット150は、昇降装置(図示省略)及び回転装置(図示省略)により搬送室140の気密性を維持した状態で昇降及び回転ができるように構成されている。
【0015】
搬送ロボット150は、リアクタ200による処理を施す前の基板Sを搬送室140の外側の装置から受け取り、受け取った基板Sをリアクタ200内の移載室270に搬入する。また、搬送ロボット150は、リアクタ200による処理を施した後の基板Sを移載室270から搬出し、搬出した基板Sを搬送室140の外側の装置へ受け渡す。本実施形態では、リアクタ200による処理を施す前の基板Sを未処理の基板Sという。また、リアクタ200による処理(加熱処理及び冷却処理)を施した後の基板Sを処理済みの基板Sという。
【0016】
<リアクタ200>
リアクタ200は、基板Sを処理することが可能な装置である。リアクタ200は、例えば、基板Sの表面に薄膜を形成する等の処理を行う装置である。
【0017】
リアクタ200は、処理室210と、ボート240と、公転部260と、移載室270と、冷却部290と、コントローラ400とを備える。なお、処理室210は移載室270よりも上方に位置する。なお、ここでいう上方とは、鉛直方向の上方を指す。また、下方という場合は、鉛直方向の下方を指す。また、本実施形態における鉛直方向は、基板処理装置100の上下方向と同じ方向である。以下では、鉛直方向の上方及び下方を単に「上方」及び「下方」と省略して呼ぶ。
【0018】
(処理室210)
処理室210は、基板Sを加熱する処理を含む基板処理を施すことが可能な部屋である。この処理室210は、反応管212によって主に構成される。この反応管212の外周側には反応管212を介して処理室210を加熱する加熱部としてのヒータ214が配置される。ヒータ214は、反応管212の外周壁から離隔している。本実施形態では、ヒータ214として、抵抗加熱ヒータを用いている。なお、ヒータ214は、処理室210を加熱できれば、抵抗加熱ヒータ以外のヒータを用いてもよい。
【0019】
反応管212の上端は閉塞されている。反応管212の下端には、反応管212の径方向内側へ張り出すフランジ部212aが設けられている。フランジ部212aの中心は開放されており、炉口212bを形成している。炉口212bを通してボート240が処理室210と移載室270との間を移動する。
【0020】
反応管212は、基板Sを支持するボート240を収容可能に構成されている。なお、反応管212の内部空間のうち、基板Sを支持するボート240が収納される領域を処理領域と呼び、処理領域を構成する区画を処理室210と呼ぶ。
【0021】
反応管212には、複数のノズル220が設けられている。これらのノズル220は、反応管212の周壁を貫通し、下方から上方へ向けて延在している。各々のノズル220には、ガス孔(図示省略)が延在方向に間隔をあけて複数設けられている。ノズル220のガス孔から供給されるガスは、処理室210においてボート240に支持された基板Sに供給される。
【0022】
ノズル220は、例えばガス種ごとに設けられる。本実施形態では、一例として二本のノズル220a、220bを用いている。各ノズル220は水平方向において重ならないように配置されている。
【0023】
図3Aに示されるように、ノズル220aには、第一ガス供給部222から第一ガスが供給される。すなわち、第一ガス供給部222は、ノズル220aへ第一ガスを供給するように構成されている。第一ガス供給部222は、ガス供給管222aと、第一ガス源222bと、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)222cと、開閉弁であるバルブ222dとを備えている。ガス供給管222aには、上流方向から順に、第一ガス源222b、MFC222c、及びバルブ222dが設けられている。ガス供給管222aはノズル220aと連通するよう構成されている。
【0024】
第一ガス源222bは第一元素を含有する第一ガス(「第一元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第一元素含有ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。具体的にはヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のSi-Cl結合を含むクロロシラン原料ガスである。なお、第一ガス供給部222はシリコン含有ガス供給部ともいう。
【0025】
図3Bに示されるように、ノズル220bには、第二ガス供給部224から第二ガスが供給される。すなわち、第二ガス供給部224は、ノズル220bへ第二ガスを供給するように構成されている。第二ガス供給部224は、ガス供給管224aと、第二ガス源224bと、MFC224cと、バルブ224dとを備えている。ガス供給管224aには、上流方向から順に、第二ガス源224b、MFC224c、及びバルブ224dが設けられている。ガス供給管224aはノズル220bと連通するよう構成されている。
【0026】
第二ガス源224bは第二元素を含有する第二ガス(以下、「第二元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第二元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第二元素含有ガスは、反応ガス又は改質ガスとして考えてもよい。
【0027】
ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本実施形態では、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスである。具体的には、アンモニア(NH3)、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等のN-H結合を含む窒化水素系ガスである。なお、第二ガス供給部224は反応ガス供給部ともいう。
【0028】
本実施形態では、ノズル220の本数を二本としているが、本開示はこの構成に限定されない。ノズル220の本数は、基板処理の内容に合わせて三本以上に設定してもよい。
【0029】
図2に示されるように、反応管212には、排気部230が接続されている。排気部230は、反応管212内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気する装置である。排気部230は、排気管230aと、バルブ230bと、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ230cと、真空ポンプ(図示省略)とを有する。排気管230aは、反応管212内と連通している。この排気管230aには、バルブ230b及びバルブ230cを介して真空ポンプが接続されている。また、排気部230には、反応管212内の圧力を検出する機能を備える圧力検出部230dが設けられてもよい。なお、上述のガス供給部と排気部230との協働により反応管212内の圧力が調整される。圧力を調整する際には、例えば圧力検出部230dで検出した圧力値が所定の値になるよう調整してもよい。
【0030】
(ボート240)
ボート240は、基板Sを支持することが可能な支持具である。ボート240は、複数の基板Sを上下方向に間隔をあけて支持可能に構成されている。このボート240は、天板部242と、底板部244と、支持部246とを備えている。支持部246は、天板部242と底板部244との間に位置している。また、支持部246は、複数の基板Sを上下方向に間隔をあけて支持可能にする載置部(図示省略)を複数備えている。言い換えると、支持部246は、複数の載置部により複数の基板Sを上下方向に多段に支持することが可能である。
【0031】
(公転部260)
図1に示されるように、公転部260は、ボート240を公転可能な装置である。公転部260は、ボート支持部262と、公転台264と、公転軸266と、公転機構268とを備えている。
【0032】
ボート支持部262は、ボート240を支持する部分である。ボート支持部262は、公転台264に複数設けられている。具体的には、公転台264の回転方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では一例として3つのボート支持部262が公転台264に設けられている。またボート支持部262は、回転軸262aと、回転機構262bとを有している。回転軸262aは、公転台264から上下方向に延びている。この回転軸262aの上端部は、ボート240の底板部244に解除可能に接続される。底板部244が回転軸262aの上端部に接続された状態で回転軸262aが回転すると、ボート240が公転台264に対して回転する。例えば、搬送ロボット150による基板Sの移載時にボート240が回転することでボート240の向きを調整することが可能となる。回転機構262bは、公転台264に固定されており、回転軸262aを回転可能に支持している。
【0033】
複数のボート支持部262は、公転台264の上面にそれぞれ設けられている。公転台264の中央部には公転軸266が接続されている。公転軸266の回転により、公転台264は回転する。公転台264の回転により、公転軸266を中心にボート支持部262が公転する。
【0034】
公転軸266は、公転台264に接続されている。この公転軸266は、上下方向に延びており、移載室270の底壁を貫通している。公転軸266は、公転機構268からの回転力によって公転台264を回転させてボート支持部262を公転させる。公転機構268は後述するコントローラ400によって制御される。
【0035】
公転機構268は、移載室270の底壁下面に設けられており、公転軸266を回転可能に支持する。例えば、公転台264を公転移動させることで、ボート240を搬入搬出口144に隣接する位置から処理室210の下方に移動させたりする。具体的には、次のエリアに移動させる際、状況に応じて120度程度、ボートを公転させるよう、公転台264を回転させる。
【0036】
(移載室270)
図2に示されるように、移載室270は、搬送室140内の搬送ロボット150により搬入搬出口144を介して基板Sの移し替えが可能な部屋である。移載室270は、処理室210の下方に位置し、処理室210と連通するように構成されている。具体的には、移載室270を構成する筐体272の上部(天井部)に反応管212の下端部が接続されている。移載室270は、炉口212bを通して反応管212内と連通している。
【0037】
筐体272の側壁には、基板Sを搬入出するための搬入搬出口144が設けられている。搬入搬出口144は、ゲートバルブ146によって開閉される。移載室270では、搬入搬出口144を介して搬送ロボット150により基板Sをボート240に載置(搭載)したり、搬送ロボット150によりボート240から基板Sを取り出したりすることが行われる。
【0038】
移載室270には、ボートエレベータ274が設けられている。このボートエレベータ274は、ボート240を上昇及び下降可能な装置である。このボートエレベータ274は、ボート240を支持する蓋体276を有している。この蓋体276が上昇及び下降することでボート240が移載室270と処理室210との間を移動する。蓋体276は、炉口212bを閉塞する部材である。このため蓋体276の径は、炉口212bの径よりも大きくなるよう構成されている。なお、反応管212のフランジ部212aの下面又は蓋体276の上面に封止部材としてのOリングを設けてもよい。Oリングを設ける場合、ボート240を処理室210の所定位置にセットすると、フランジ部212aと蓋体276との間でOリングが押しつぶされて変形する。これにより反応管212内がより気密に保たれる。また蓋体276には、ヒータが設けられていてもよい。蓋体276にヒータを設けることによって、ボート240の下方に配置される基板Sの温度と上方に配置される基板Sの温度とを同等に維持可能となる。
【0039】
蓋体276上には、ボート240を支持するボート支持部278が設けられている。このボート支持部278は、回転軸278aと、回転機構278bとを有している。回転軸278aは上下方向に延びている。回転軸278aの上端部にはボート240の底板部244が接続される。ボート240の底板部244が回転軸278aの上端部に接続された状態で回転軸278aが回転すると、ボート240が蓋体276に対して回転する。例えば、回転軸278aの回転により処理室210内に収容したボート240が回転する。また蓋体276には回転機構278bが固定されている。回転機構278bは、回転軸278aを回転可能に支持する。
【0040】
ボートエレベータ274は、蓋体276を下方に移動させて、回転軸278aの上端部で公転部260上のボート支持部262からボート240を受け取る。ボートエレベータ274は、ボート240を受け取ると、蓋体276を上昇させる。そして、ボート240を処理室210へ収容する。また、ボートエレベータ274は、処理室210における基板Sの基板処理終了後、蓋体276を下降させて処理室210からボート240を取り出す。そして、蓋体276上の回転軸278aから公転部260上のボート支持部262へボート240を受け渡す。
【0041】
移載室270には、排気部280が接続されている。排気部280は、移載室270内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気する装置である。排気部280は、排気管280aと、バルブ280bと、APCバルブ280cと、真空ポンプ(図示省略)とを有する。排気管280aは、移載室270と連通している。この排気管280aには、バルブ280b及びバルブ280cを介して真空ポンプが接続されている。また、排気部280には、移載室270の圧力を検出する機能を備える圧力検出部280dを設けてもよい。
【0042】
図1に示されるように、移載室270は、公転部260上方のエリア内に、第一エリアA1と、第二エリアA2と、第三エリアA3と、を有している。なお、第一エリアA1及び第二エリアA2については、
図2にも示されている。
【0043】
第一エリアA1は、公転部260とボートエレベータ274との間でボート240の移動を行うことが可能なエリアである。具体的には、第一エリアA1では、公転部260のボート支持部262とボートエレベータ274のボート支持部278との間でボート240の移動が行われる。この第一エリアA1は、処理室210の下方に配されている。また第一エリアA1内には、上方から見た場合に少なくとも炉口212bが含まれる。
【0044】
第二エリアA2は、加熱処理後の基板Sを待機させることが可能なエリアである。また、第二エリアA2は、加熱処理後の基板Sを冷却処理させることも可能なエリアである。具体的には、第二エリアA2では、加熱処理後の基板Sに向けて冷却部290から不活性ガスが送られる。これにより加熱処理後の基板Sが冷却される。第二エリアA2は、公転部260が時計回り(右回り)に回転する場合に、第一エリアA1の回転方向下流に配される。
【0045】
第三エリアA3は、搬送室140と隣接しており、搬送室140との間で基板Sを移載させることが可能なエリアである。具体的には、搬送ロボット150は、第三エリアA3に位置するボート240に対して未処理の基板Sを受け渡したり、第三エリアA3に位置するボート240から処理済みの基板Sを受け取ったりする。このようにして第三エリアA3と搬送室140との間で基板Sが移載される。第三エリアA3においては、ボート240は搬入搬出口144と対向する位置に配され、搬送ロボット150が基板Sを移載可能に構成さている。
【0046】
本実施形態では、
図1に示されるように、便宜上第一エリアA1と第二エリアA2と第三エリアA3を、それぞれ公転部260の回転軸を中心とした等角度(120度)のエリアとしている。すなわち、第一エリアA1と第二エリアA2と第三エリアA3の大きさがそれぞれ同じ大きさに設定されている。本開示はこの構成に限定されない。各エリアの大きさは適宜設定してもよい。また第一エリアA1と第二エリアA2と第三エリアA3とは別のエリアを新たに設定してもよい。
【0047】
(冷却部290)
図1に示されるように、冷却部290は、加熱処理後の基板Sを冷却処理可能な装置である。本実施形態では、冷却部290から不活性ガスを基板Sへ送り、基板Sを冷却する。
【0048】
冷却部290は、移載室270に配置されている。具体的には、冷却部290は、公転部260の公転台264上に公転台264の回転方向に間隔をあけて複数配置されている。本実施形態では一例として、公転部260の3つのボート支持部262の近傍に3つの冷却部290がそれぞれ配置されている。冷却部290は、ボート支持部262に支持されたボート240へ向けて不活性ガスを供給するように構成されている。各冷却部290にはガス孔が設けられており、各冷却部290に送られる不活性ガスがガス孔を通してボート240が支持する基板Sへ送られる。
【0049】
図3Cに示されるように、各々の冷却部290には、第三ガス供給部291より不活性ガスが供給される。第三ガス供給部291は、ガス供給管292a、292b、292cと、第三ガス源294と、MFC296a、296b、296cと、バルブ298a、298b、298cとを備えている。ガス供給管292aには、上流方向から順に、第三ガス源294、MFC296a及びバルブ298aが設けられている。ガス供給管292aは、3つの冷却部290のうちの冷却部290aと連通するよう構成されている。ガス供給管292bには、上流方向から順に、第三ガス源294、MFC296b及びバルブ298bが設けられている。ガス供給管292bは、3つの冷却部290のうちの冷却部290bと連通するよう構成されている。ガス供給管292cには、上流方向から順に、第三ガス源294、MFC296c及びバルブ298cが設けられている。ガス供給管292cは、3つの冷却部290のうちの冷却部290cと連通するよう構成されている。第三ガス源294から供給される不活性ガスとしては、例えば窒素(N
2)ガス等が挙げられる。
【0050】
<コントローラ>
次に
図4を用いてコントローラ400を説明する。
コントローラ400は、基板処理装置100の各部の動作を制御する。
【0051】
制御部(制御手段)であるコントローラ400は、CPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、記憶装置としての記憶部403、I/Oポート404を備えたコンピュータとして構成される。RAM402、記憶部403、I/Oポート404は、内部バス405を介して、CPU401とデータ交換可能なように構成される。基板処理装置100内のデータの送受信は、CPU401が有する機能の一つである送受信指示部406の指示により行われる。また基板処理装置100における演算は、CPU401が有する機能の一つである算出部407により行われる。また基板処理装置100における各動作の選択は、CPU401が有する機能の一つである処理選択部408による選択により行われる。また基板処理装置100における各動作の設定は、CPU401が有する機能の一つである処理設定部409による選択により行われる。
【0052】
CPU401は、記憶部403からの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置423からの操作コマンドの入力等に応じて記憶部403からプロセスレシピを読み出すように構成される。そして、CPU401は、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、例えばゲートバルブ146の開閉動作、各ポンプのオンオフ制御、MFCの流量調整動作、バルブの開閉動作等を制御可能に構成される。
【0053】
記憶部403は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成される。記憶部403内には、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等で構成されるレシピ410や、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム411や、基板処理の種別が記憶された処理種別情報テーブル412や、基板処理の履歴が記録される処理履歴テーブル413等が読み出し可能に格納される。
【0054】
なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ400に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。
【0055】
以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。また、RAM402は、CPU401によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成される。
【0056】
I/Oポート404は、ゲートバルブ146、各圧力調整器、各ポンプ、ヒータ制御部等の各構成に接続される。さらに、上位装置420にネットワークを介して接続されるネットワーク送受信部421が設けられる。
【0057】
なお、コントローラ400は、上述のプログラムを格納した外部記憶装置422を用いてコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本技術に係るコントローラ400を構成することができる。なお、外部記憶装置422としては、例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、DVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、並びに、USBメモリ等の半導体メモリが挙げられる。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置422を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置422を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶部403や外部記憶装置422は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部403単体のみを含む場合、外部記憶装置422単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。
【0058】
次にコントローラ400による移載室270における基板Sの搬送動作について説明する。
【0059】
コントローラ400は、処理室210における基板Sの基板処理の終了時刻と、第二エリアA2における基板Sの冷却処理の終了時刻との差に応じて、公転部260により、第二エリアA2から第三エリアA3に基板Sを公転させる公転動作を行う、又は処理室210から第一エリアA1に基板を移動させる移動動作を行うよう制御することが可能である。ここで、第二エリアA2から第三エリアA3に基板Sを公転させる公転動作とは、公転部260の公転により、第二エリアA2において冷却処理が終了した基板Sを第三エリアA3に移動させる動作をいう。また、処理室210から第一エリアA1に基板を移動させる動作とは、処理室210において加熱処理を含む基板処理が終了した基板Sを第一エリアA1に移動させる動作をいう。処理室210から第一エリアA1に移動された基板Sは、次に第二エリアA2に移動するよう構成されている。すなわち、コントローラ400は、処理室210から第一エリアA1に移動された基板Sを第二エリアA2に移動させる。
【0060】
なお、基板処理とは、基板Sを処理室210に搬入する搬入処理と、処理室210にて基板Sを加熱する加熱処理と、基板Sの加熱処理の後、基板Sを処理室210から移載室270に移動する準備を行う移動準備処理と、を含む処理である。すなわち、基板Sの基板処理の終了時刻とは、移動準備処理が完了した時刻である。また移動準備処理とは、例えば、を処理室210から移載室270へ移動するにあたり、反応管212内の圧力を移載室270の圧力に近づける処理等を指す。搬入処理は、処理室210内が加熱された状態で行われる。すなわち、第一エリアA1から送られる基板Sは、加熱された処理室210内に収容される。
【0061】
本実施形態では、コントローラ400は、冷却処理の終了時刻が基板処理の終了時刻よりも早い場合、処理室210から基板Sを搬出することなく、公転動作を行うよう制御する。特に、基板Sが第二エリアA2から第三エリアA3に移動するまでの時間が基板処理の終了時刻と冷却処理の終了時刻との差よりも小さい場合、公転動作を行うよう制御する。
【0062】
また、コントローラ400は、新たに加熱処理する基板Sが存在しない場合に、公転動作を行うよう制御する。
【0063】
加熱処理された基板Sは第二エリアA2において、冷却部290から送られる不活性ガスにより冷却される。具体的には、処理室210から取り出された基板Sは第二エリアA2で待機状態となり、冷却部290からの不活性ガスにより冷却される。ここで、コントローラ400は、第二エリアA2に基板Sが待機していない場合、冷却ガスの供給量を、冷却処理時の供給量よりも少なくするよう制御する。具体的には、コントローラ400は、は、第二エリアA2に加熱処理済みの基板Sがある場合、第二エリアA2において冷却部290から基板Sへ送られる不活性ガスの供給量を増大させる。第二エリアA2における不活性ガスの供給量は、第三ガス源294で生成される不活性ガスの量を増大させてもよい。また、第二エリアA2に位置しない冷却部290から供給される不活性ガスの供給量を低減して第二エリアA2における不活性ガスの供給量を増大させてもよい。
【0064】
また、コントローラ400は、基板Sが第二エリアA2に移動した後に、冷却部290を稼働させるよう制御してもよい。すなわち、コントローラ400は、第二エリアA2に基板Sが存在しない場合に冷却部290を停止させおき、第二エリアA2に基板Sが存在する場合に冷却部290を稼働させるように制御してもよい。
【0065】
本実施形態では、コントローラ400は、基板処理の終了時刻が冷却処理の終了時刻よりも早い或いは同等の場合、移動動作を行うよう制御する。言い換えると、冷却処理の終了時刻が基板処理の終了時刻よりも遅い場合、又は冷却処理の終了時刻と基板処理の終了時刻が実質同じ場合に移動動作を行うよう制御する。
【0066】
コントローラ400は、基板処理における基板Sの加熱状態が、他ロットの基板処理における基板Sの加熱状態と実質同じとなるよう、基板処理の時間を設定可能としてもよい。実質同じとは、例えば±10℃程度の範囲をいう。
【0067】
コントローラ400は、移動動作の後に、第二エリアA2において冷却処理が継続している場合、基板処理済みの基板Sを第一エリアA1に待機させるよう制御してもよい。
【0068】
またコントローラ400は、移動動作の後に、第三エリアA3にてボート240に新たな基板Sの搭載が完了していない場合、第一エリアA1に冷却処理済みの基板Sを待機させるよう制御してもよい。さらにコントローラ400は、第三エリアA3に移動されたボート240に新たな基板Sを搭載する間、基板処理済みの基板Sを第一エリアA1に待機させるよう制御してもよい。
【0069】
またコントローラ400は、基板Sを加熱処理する時間のうち、少なくとも一部の時間においては、第一エリアA1にボート240を存在させないよう制御してもよい。
【0070】
(2)基板処理工程
次に
図5A~
図5E及び
図7を用いて基板処理工程を説明する。基板処理装置の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いて基板Sを処理する工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ400により制御される。
【0071】
まず、
図5Aに示されるように、搬送室140から搬送ロボット150を用いて基板Sが移載室270の第三エリアA3にあるボート240に移載される。ここでボート240に移載される基板Sを便宜上符号S1で示す。
【0072】
次に、
図5Bに示されるように、公転部260の回転(
図5Bでは時計回りの回転)により、基板S1を支持するボート240が第三エリアA3から第一エリアA1に公転移動し、基板を支持していないボート240が第二エリアA2から第三エリアA3に公転移動する。ここで、第三エリアA3に移動し基板を支持していないボート240には、搬送室140から搬送ロボット150を用いて基板S2が移載される。
【0073】
(ボート搬入工程S202)
基板S1を支持するボート240が第一エリアA1に移動すると、このボート240はボートエレベータ274によって支持された状態で上昇する。そして、ボート240は処理室210に収容される。すなわち、ボート搬入工程S202では、第一エリアA1に位置するボート240が処理室210へ搬入される。
【0074】
(加熱工程S204)
処理室210内に収容されたボート240は加熱処理される。すなわち、ボート240に搭載された基板S1が加熱処理されて成膜される。
【0075】
(ボート搬出準備工程S206)
次に、処理室210からのボート240の搬出準備が開始される。具体的には、処理室210と移載室270との間の圧力が調整される。圧力が調整されると、ボート240の搬出準備が終了する。なお、ボート搬出準備工程S206の終了時刻は、基板Sの基板処理終了時刻である。
【0076】
(ボート搬出工程S208)
ボート搬出準備が終了すると、ボートエレベータ274によってボート240が処理室210から搬出され、公転部260の第一エリアA1上のボート支持部262に受け渡される。
【0077】
そして、処理室210から搬出されたボート240は、
図5Cに示されるように、公転部260の回転により、第一エリアA1から第二エリアA2へ公転移動する。第二エリアA2へ移動したボート240は、冷却部290から送られる不活性ガスにより冷却される。
【0078】
一方、基板S2を支持したボート240は、公転部260の回転により、第三エリアA3から第一エリアA1へ移動し、ボートエレベータ274によって支持された状態で上昇する。そして、ボート240は処理室210に収容され、加熱処理を含む基板処理が開始される。
【0079】
ここで、コントローラ400は、加熱処理を含む基板処理の終了時刻と、冷却処理の終了時刻との差に応じて、公転部260により、第二エリアA2から搬送室140に隣接し移載室270中に配された第三エリアA3に基板S1を公転させる公転動作、又は処理室210から第一エリアA1に基板S1を移動させる移動動作のいずれかの動作を選択する。本実施形態では、コントローラ400が冷却処理の終了時刻が基板処理の終了時刻よりも早い場合、公転動作を行うよう制御する。また、コントローラ400は、基板処理の終了時刻が冷却処理の終了時刻よりも早い或いは同等の場合、移動動作を行うよう制御する。ここで、本実施形態では、
図5Dに示されるように、基板処理よりも早く冷却処理が終了するため、冷却処理が終了した基板S1を支持するボート240が第三エリアA3に移動する。そして第三エリアA3において、処理済みの基板S1が搬送ロボット150によってボート240から搬出される。
【0080】
次に、
図5Eに示されるように基板S1が取り出されたボート240に搬送ロボット150が新たな基板S3を移載する。ボート240に基板S3の移載が終了した後は、基板S3を支持するボート240は、基板S2を支持するボート240の基板処理が終了するまで第三エリアA3で待機する。ここで、本実施形態の基板処理装置100では、冷却処理の終了時刻が基板処理の終了時刻よりも早いため、基板S2の基板処理が終了するまでの間に基板S1の搬出と基板S3の搬入をしている。このため、基板処理装置100は、例えば、基板S2の基板処理が終了するまで第二エリアA2で基板S1を冷却処理する又は待機させる場合と比べて、基板Sの余剰待機時間を少なくすることができる。一方、基板処理の終了時刻が冷却処理の終了時刻よりも早い或いは同等の場合、処理室210から第一エリアA1に基板S1を移動させる移動動作を行うため、基板Sの余剰待機時間を少なくすることができ、処理室210内での基板S2の過加熱も抑制することができる。
【0081】
次に本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、処理室210における基板S2の基板処理の終了時刻と、第二エリアA2における基板S1の冷却処理の終了時刻との差に応じて、コントローラ400が、公転部260により、第二エリアA2から第三エリアA3に基板S1を公転させる公転動作を行う、又は処理室210から第一エリアA1に基板S2を移動させる移動動作を行うよう制御する。このため、加熱処理の終了時刻と冷却処理の終了時刻との差により基板Sの公転動作を設定可能である。したがって上記のように基板Sの余剰待機時間を少なくすることができる。その結果、基板処理工程における処理スループットを向上させることができる。
【0082】
本実施形態では、冷却処理の終了時刻が基板処理の終了時刻よりも早い場合、コントローラ400は公転動作を行うよう制御する。このため、冷却処理の時間が基板処理の時間よりも短い場合に、基板処理終了を待たずに冷却済み基板を搬出できる。
【0083】
本実施形態では、コントローラ400が第二エリアA2から第三エリアA3に移動するまでの時間が終了時刻の差よりも小さい場合、公転動作を行うよう制御する。このため、冷却処理の時間と回転時間との合計時間が基板処理の時間よりも短い場合に、基板処理終了を待たずに冷却済み基板を搬出できる。
【0084】
本実施形態では、コントローラ400が新たに加熱処理する基板が存在しない場合に、公転動作を行うよう制御する。このため、新たに処理する基板が存在しない場合に、基板処理終了を待たずに冷却済み基板を搬出できる。
【0085】
本実施形態では、コントローラ400が第二エリアA2に基板が待機していない場合、冷却ガスの供給量を、冷却処理時の供給量よりも少なくするよう制御するため、冷却ガスの使用量を抑制できる。
【0086】
本実施形態では、コントローラ400が処理室210から第一エリアA1に移動された基板を次に第二エリアA2に移動させる。このため、加熱処理済み基板の冷却を待たずに、新たな基板を処理室210に搬入することができる。
【0087】
本実施形態では、コントローラ400は、基板が第二エリアA2に移動した後に、冷却部290を稼働させるよう制御する。このため、加熱処理済み基板を遅延なく冷却し、更に新たな基板を処理室に搬入することができるので、処理スループットを向上させることができる。
【0088】
本実施形態では、コントローラ400は、基板処理の終了時刻が冷却処理の終了時刻よりも早い或いは同等の場合、移動動作を行うよう制御する。このため、基板処理と冷却処理がほぼ同時、もしくは基板処理が早く終わった場合、複数のロット間において、処理室210での基板Sの加熱処理時間を一定にすることができる。
【0089】
本実施形態では、ヒータ214として抵抗加熱ヒータを用いている。このため、抵抗加熱ヒータは、オフにしても急峻に温度を低下させることが難しい。したがって、移動動作を行うことでロット間の加熱処理時間を一定にすることができる。
【0090】
本実施形態における基板処理は、搬入処理と加熱処理と移動準備処理とを含んでいる。このため、ヒータ214の影響を受ける搬入処理から移動準備処理までの時間をロット間で一定にすることができる。
【0091】
本実施形態における搬入処理は、処理室210内が加熱された状態で行われる。このため、事前に加熱された状態の処理室210に基板を搬入した場合であってもロット間での加熱処理時間を一定にすることができる。
【0092】
本実施形態における基板処理の終了時刻は、移動準備処理が終了した時刻としている。このため、基板処理の加熱処理の終了時刻をそろえることで、ロット間での加熱処理時間を一定にすることができる。
【0093】
本実施形態における基板処理における基板の加熱状態が、他ロットの基板処理における基板の加熱状態と実質同じとなるよう、基板処理の時間を設定可能とする。このため、ロット間で基板処理の加熱状態をそろえることで、加熱処理状態を一定にすることができる。
【0094】
本実施形態におけるコントローラ400は、移動動作の後に、冷却処理が継続している場合、第一エリアA1に基板Sを待機させるよう制御するため、冷却処理を止めることが無いので、冷却処理開始に係る起動時間等をかける必要がなく、全体のスループットを向上させることができる。
【0095】
本実施形態では、移動動作の後に、第三エリアA3にてボート240に新たな基板の搭載が完了していない場合、第一エリアA1に冷却処理済みの基板を待機させるよう制御してもよい。この場合、第三エリアA3にて新たな基板の搭載作業を途中で停止することがないので、搭載処理開始に係る調整時間(第三エリアA3と搬送室140との間のゲートバルブ146の開閉やボート240の上下動作等)が必要なく、全体のスループットを向上させることができる。
【0096】
本実施形態では、第三エリアA3に移動されたボート240に新たな基板を搭載する間、第一エリアA1に冷却処理済みの基板を待機させるよう制御してもよい。この場合、第三エリアA3にて、ボート240に新たな基板の搭載作業を途中で停止することがないので、搭載処理開始に係る調整時間(第三エリアA3と搬送室140との間のゲートバルブ146の開閉やボート240の上下動作等)が必要なく、全体のスループットを向上させることができる。
【0097】
本実施形態では、基板を加熱処理する時間のうち、少なくとも一部の時間においては、第一エリアA1にボートを存在させないよう制御してもよい。この場合、基板を加熱処理する間、第一エリアA1においても熱影響を受けることがあるが、ボート240を存在させないため、余計な熱影響を与えるのが抑制される。
【0098】
(その他の実施形態)
図5A~
図5Eに示される実施形態では、基板Sを3つのボート240のうち、2つのボート240に主に載置して装置を運用しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、
図6A、
図6B、
図6Cに示されるように、3つのボート240のすべてのボート240に基板Sを配置してもよい。なお、
図6Aでは、
図5Bにおいて基板S2をボート240に搬入した後、基板を支持してないボート240に基板S3を搬入する工程がし示されている。このとき、基板S1は第二エリアA2において冷却処理され、基板S2は第一エリアA1において処理室210に収容されて基板処理される。その後、
図6Bに示されるように、基板S2が処理室210から取り出され、第二エリアA2に移動して冷却処理される。基板S3は第一エリアA1に移動し処理室210に収容されて基板処理される。基板S1は第三エリアA3に移動し、搬出される。そして、
図6Cに示されるように、基板S1が搬出されたボート240に基板S1が搬入される。
【0099】
また、基板処理装置100として、リアクタ200を一つ用いる例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、複数のリアクタ200を搬送室140に連結してもよい。この場合には、並行して複数のリアクタ200で基板Sの基板処理を行うことができる。また、複数のリアクタ200がそれぞれ異なる基板処理を行う装置であってもよい。この場合、一つ目のリアクタ200で基板処理をした後に、次のリアクタ200で別の基板処理をしてもよい。
【0100】
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う成膜処理において、第一元素含有ガス(第一ガス)としてヘキサクロロジシラン(Hexachlorodisilane、HCDS)ガスを用い、第二元素含有ガス(第二ガス)としてアンモニア(NH3)ガスを用いて、基板S上にSiN膜を形成する場合を例に挙げたが、本実施形態がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、HCDSガスやNH3ガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であってもよい。また、第一元素としては、Siではなく、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等、種々の元素であってもよい。また、第二元素としては、Hではなく、例えば窒素(N)等であってもよい。
【0101】
以下、本開示の他の実施形態を以下に開示する。
基板を加熱する処理を含む基板処理が可能な処理室と、
前記基板を支持するボートと、
前記ボートを支持するボート支持部を複数備え、前記ボート支持部を公転可能な公転部と、
前記公転部上方のエリアの内、前記処理室の下方に配された第一エリアと、加熱処理後の前記基板を待機可能な第二エリアと、隣接する搬送室との間で前記基板を移載可能な第三エリアと、を有する移載室と、
前記第二エリアにおいて前記基板を冷却処理可能な冷却部と、
前記処理室における前記基板の基板処理の終了時刻と、前記第二エリアにおける前記基板の冷却処理の終了時刻との差に応じて、前記公転部により、前記第二エリアから前記第三エリアに前記基板を公転させる公転動作を行う、又は前記処理室から前記第一エリアに前記基板を移動させる移動動作を行うよう制御可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、
(A)前記処理室における基板処理の終了時刻と前記移載室における冷却処理の終了時刻との差が所定範囲内であれば、前記ボートを公転動作させないよう前記公転部を制御する、又は
(B)前記処理室における基板処理の終了時刻と前記移載室における冷却処理の終了時刻との差が所定範囲内であれば、前記冷却処理を停止するよう制御する、又は
(C)前記基板を加熱処理する時間のうち、少なくとも一部の時間においては、前記第二エリアに前記ボートを通過させないよう前記公転部を制御する、又は
(D)前記基板を加熱処理する時間のうち、少なくとも一部の時間においては、前記第一エリアまたは前記第三エリアにて、前記ボートを待機させるよう前記公転部を制御する、
基板処理装置。
【符号の説明】
【0102】
S…基板、100…基板処理装置、210…処理室、240…ボート、260…公転部、270…移載室、400…コントローラ