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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102780
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】積層フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20240724BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240724BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240724BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B7/022
C08J7/04 Z CES
C08J7/04 CEV
C08J7/04 CEY
C08J7/04 CFD
C08J7/04 CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048822
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2023006809
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 道久
(72)【発明者】
【氏名】松浦 春彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】教海 宏輔
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AA15
4F006AA17
4F006AA22
4F006AA35
4F006AA37
4F006AB13
4F006AB16
4F006AB18
4F006AB24
4F006AB33
4F006AB35
4F006AB38
4F006AB64
4F006AB65
4F006AB67
4F006BA07
4F006BA15
4F006CA04
4F006DA04
4F006EA01
4F006EA05
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK05
4F100AK05A
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK12
4F100AK12A
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK33
4F100AK33A
4F100AK41
4F100AK41C
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK51
4F100AK51C
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AK74
4F100AK74C
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02A
4F100CA13
4F100CA13C
4F100CB05
4F100CB05D
4F100DE01
4F100DE01A
4F100EC04
4F100EH46
4F100EJ24
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ50
4F100EJ52
4F100EJ52B
4F100GB32
4F100GB41
4F100HB00
4F100JB09
4F100JB09A
4F100JK07
4F100JK07C
4F100JK08
4F100JK08C
4F100JL13
4F100JL13D
(57)【要約】
【課題】構造色の発現性に優れ、成型性が良好であり立体形状の成型加工に対応可能であり、また必要により発色層の高い塗膜強度を示すものとすることができる積層フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム1の少なくとも片面に樹脂層(A)、樹脂層(B)を順次備えた積層フィルム10であって、前記樹脂層(A)が微粒子(a1)を含む樹脂組成物(A)から形成され、下記(1)、(2)を満足する積層フィルム10。
(1)微粒子(a1)が特定の樹脂を含んでなる高分子微粒子であること
(2)160℃における引張弾性率が2.5×10Pa以下であること
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層(A)、樹脂層(B)を順次備えた積層フィルムであって、前記樹脂層(A)が微粒子(a1)を含む樹脂組成物(A)から形成され、下記(1)、(2)を満足する積層フィルム。
(1)微粒子(a1)がポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体を含むポリスチレン類、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂類、並びにポリカーボネートのいずれかを含んでなる高分子微粒子であること
(2)160℃における引張弾性率が2.5×10Pa以下であること
【請求項2】
前記樹脂層(B)がシリコーン樹脂又はアクリル樹脂を含む樹脂組成物(B)から形成される、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(A)が架橋剤(a2)を含有する、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記架橋剤(a2)が、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ヒドラジド化合物、オキサゾリン化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、ラジカル重合性単量体、アジリジン化合物、シラン化合物、及びカルボジイミド化合物よりなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
微粒子(a1)100質量部に対する、架橋剤(a2)の含有量が1~20質量部である、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項6】
微粒子(a1)に、反応性官能基として、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、オキセタニル基、ケト基、アルド基、シリル基、アリル基、ビニルエーテル基、スルホン酸基、アミノ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つが導入された請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記樹脂層(A)がさらに水溶性樹脂(c)を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムが共重合ポリエステルフィルム、ABS樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムのいずれかから選択される、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムがアクリル樹脂フィルムである、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルムが無色透明または着色された共重合ポリエステルフィルムである、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項11】
基材フィルムの160℃における引張弾性率が2.0×10Pa以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項12】
基材フィルムの160℃における引張試験において、150%伸長した際に割れが発生しない、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記樹脂層(A)の厚みが1~10μmである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記樹脂層(B)の厚みが1~20μmである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項15】
真空成型機(Mayku Formbox)を用いて、成型倍率が2.5倍、温度はダイヤル6番(最大設定)、1分間の熱プレス成型で割れが発生しない、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルムの樹脂層(B)上に直接又は粘着層を介して他の基材フィルムを貼合したフィルム積層体。
【請求項17】
請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルムの基材フィルム上に直接又は粘着層を介して他の基材フィルムを貼合したフィルム積層体。
【請求項18】
請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルムを製造する方法であって、
前記基材フィルム上に塗布された前記樹脂組成物(A)を25~120℃で、10秒間~10分間の条件で加熱して前記樹脂層(A)を形成する加熱処理工程を備える積層フィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルムを製造する方法であって、
前記樹脂層(A)上に塗布された前記樹脂組成物(B)を25~120℃で、10秒間~10分間の条件で加熱して前記樹脂層(B)を形成する加熱処理工程を備える積層フィルムの製造方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルムを製造する方法であって、
前記樹脂層(A)上に塗布された前記樹脂組成物(B)を活性エネルギー線照射により、積算光量で250mJ/cm以下の条件で照射して前記樹脂層(B)を形成する照射処理工程を備える積層フィルムの製造方法。
【請求項21】
加飾用である、請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項22】
成形同時転写用である、請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項23】
自動車用である、請求項1~15のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業材料、光学材料、電子部品材料、電池用包装材など様々な分野で、基材フィルムの少なくとも片面に機能層を設けた積層フィルムが使用されている。積層フィルムの基材フィルムとしては、ポリエステルフィルムとして代表的なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムが、透明性、機械強度、耐熱性、柔軟性などに優れることから広く使用されている。
【0003】
単分散微粒子が三次元的に配列したコロイド結晶に光を入射すると回折干渉により、結晶の周期構造に依存するため、特定波長の光が反射される(ブラッグ反射)。その反射波長が可視光領域に生じる場合、構造性発色、いわゆる構造色として視認することができる。
近年、このようなコロイド結晶の研究が精力的に行われており(特許文献1~3)、光学素子、光機能材料など、各種分野への応用展開が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5003268号公報
【特許文献2】国際公開第2008/120529号
【特許文献3】特開2014-189719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術は構造色の発現は比較的良好である反面、構造発色機能層の塗膜強度が不足する傾向にあり、指先で擦るだけで容易に塗膜が脱落する傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に対して、構造色の発現性に優れ、成型性が良好であり立体形状の成型加工に対応可能であり、また必要により発色層が高い塗膜強度を示すものとすることができる積層フィルム及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定構成の硬化樹脂層を備えた積層フィルムを用いることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[23]を提供するものである。
【0008】
[1]基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層(A)、樹脂層(B)を順次備えた積層フィルムであって、前記樹脂層(A)が微粒子(a1)を含む樹脂組成物(A)から形成され、下記(1)、(2)を満足する積層フィルム。
(1)微粒子(a1)がポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体を含むポリスチレン類、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂類、並びにポリカーボネートのいずれかを含んでなる高分子微粒子であること
(2)160℃における引張弾性率が2.5×10Pa以下であること
[2]前記樹脂層(B)がシリコーン樹脂又はアクリル樹脂を含む樹脂組成物(B)から形成される、[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記樹脂層(A)が架橋剤(a2)を含有する、上記[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記架橋剤(a2)が、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ヒドラジド化合物、オキサゾリン化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、ラジカル重合性単量体、アジリジン化合物、シラン化合物、及びカルボジイミド化合物よりなる群から選択される1種又は2種以上である、上記[3]に記載の積層フィルム。
[5]前記微粒子(a1)100質量部に対する、架橋剤(a2)の含有量が1~20質量部である、上記[3]又は[4]に記載の積層フィルム。
[6]微粒子(a1)に、反応性官能基として、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、オキセタニル基、ケト基、アルド基、シリル基、アリル基、ビニルエーテル基、スルホン酸基、アミノ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つが導入された、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]前記樹脂層(A)がさらに水溶性樹脂(c)を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
[8]前記基材フィルムが共重合ポリエステルフィルム、ABS樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムのいずれかから選択される、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
[9]前記基材フィルムがアクリル樹脂フィルムである、上記[8]に記載の積層フィルム。
[10]前記基材フィルムが無色透明または着色された共重合ポリエステルフィルムである、上記[8]に記載の積層フィルム。
[11]基材フィルムの160℃における引張弾性率が2.0×10Pa以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
[12]基材フィルムの160℃における引張試験において、150%伸長した際に割れが発生しない、上記[1]~[11]のいずれかに記載の積層フィルム。
[13]前記樹脂層(A)の厚みが1μm~10μmである、上記[1]~[12]のいずれかに記載の積層フィルム。
[14]前記樹脂層(B)の厚みが1μm~20μmである、上記[1]~[13]のいずれかに記載の積層フィルム。
[15]真空成型機(Mayku Formbox)を用いて、成型倍率が2.5倍、温度はダイヤル6番(最大設定)、1分間の熱プレス成型で割れが発生しない、上記[1]~[14]のいずれかに記載の積層フィルム。
[16]上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルムの樹脂層(B)上に直接又は粘着層を介して他の基材フィルムを貼合したフィルム積層体。
[17]上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルムの基材フィルム上に直接又は粘着層を介して他の基材フィルムを貼合したフィルム積層体。
[18]上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルムを製造する方法であって、前記基材フィルム上に塗布された前記樹脂組成物(A)を25~120℃で、10秒間~10分間の条件で加熱して前記樹脂層(A)を形成する加熱処理工程を備える積層フィルムの製造方法。
[19]上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルムを製造する方法であって、前記樹脂層(A)上に塗布された前記樹脂組成物(B)を25~120℃で、10秒間~10分間の条件で加熱して前記樹脂層(B)を形成する加熱処理工程を備える積層フィルムの製造方法。
[20]上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルムを製造する方法であって、前記樹脂層(A)上に塗布された前記樹脂組成物(B)を活性エネルギー線照射により、積算光量で250mJ/cm以下の条件で照射して前記樹脂層(B)を形成する照射処理工程を備える積層フィルムの製造方法。
[21]加飾用である、上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルム又は上記[16]又は[17]に記載のフィルム積層体。
[22]成形同時転写用である、上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルム又は上記[16]又は[17]に記載のフィルム積層体。
[23]自動車用である、上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルム又は上記[16]又は[17]に記載のフィルム積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定構成の樹脂層(A)及び樹脂層(B)を備え、構造色の発現性に優れ、さらに成型性が良好であり三次元の立体成型が可能であり、また必要により発色層(樹脂層(A))が高い塗膜強度を示すものとすることができる積層フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
図2】樹脂層(A)中、微粒子(a1)が規則的に配列することで構造発色性を発現する状態を示す模式図である。
図3】積層フィルムを三次元成型した後の状態を示す図面代用写真である(拡大倍率:1倍)(実施例2)。
図4】積層フィルムを三次元成型した後の状態を示す図面代用写真である(拡大倍率:1倍)(比較例1)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層(A)及び樹脂層(B)を備えた積層フィルムであって、前記樹脂層(A)が微粒子(a1)を含む樹脂組成物(A)から形成され、下記(1)、(2)を満足する積層フィルムである。
(1)微粒子(a1)がポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体を含むポリスチレン類、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂類、並びにポリカーボネートのいずれかを含んでなる高分子微粒子であること
(2)160℃における引張弾性率が2.5×10Pa以下であること
以下、樹脂組成物(A)が硬化してなる硬化樹脂層が基材フィルム上に設けられる積層フィルムの実施形態を参照しつつ本発明を説明する。
【0013】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルム10(以下、「本積層フィルム」と称す場合がある。)は、図1を参照していうと、基材フィルム1と、基材フィルム1の少なくとも一方の面に形成される樹脂層(A)と樹脂層(B)とをその順で備える。以下、各部材についてより詳細に説明するが、まず積層フィルム10を構成する各部材について説明する。
【0014】
<基材フィルム>
本積層フィルム10を構成する基材フィルム1(以下、「本基材フィルム」と称す場合がある。)は、フィルム状を呈するものであれば、その材料を特に限定するものではない。例えば紙製、樹脂製、金属製などであってもよい。これらの中でも、機械的強度及び柔軟性の観点から、樹脂製であることが好ましい。
【0015】
樹脂製の基材フィルム1としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの高分子を膜状に形成した樹脂フィルムを挙げることができる。
また、フィルム化が可能であれば、これらの材料を混合したもの(ポリマーブレンド)や構成単位を複合化したもの(共重合体)であっても構わない。
【0016】
上記例示したフィルムの中でも、共重合ポリエステルフィルム、ABS樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムは、成型性、強度などの物性が優れており、特に好ましい。
【0017】
アクリル樹脂フィルムとしては、「アクリプレン(登録商標)」(三菱ケミカル(株)製)、「テクノロイ(登録商標)」(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0018】
ABS樹脂フィルムとしては、ABSフィルム(オカモト(株)製)、ABSシート(積水成型工業(株)製)等が挙げられる。
【0019】
ポリウレタンフィルムとしては、シーダム(株)製、日本ユニポリマー(株)製等のものが挙げられる。
【0020】
次に共重合ポリエステルフィルムを例に挙げて説明する。
共重合ポリエステルフィルムは単層でも、性質の異なる2以上の層を有する多層フィルム(すなわち、積層フィルム)でもよい。共重合ポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分樹脂とするフィルムである。
また、共重合ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであるのが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性の観点で、二軸延伸フィルムであるのがより好ましい。したがって、二軸延伸共重合ポリエステルフィルムがよりさらに好ましい。
【0021】
上記共重合ポリエステルフィルムの主成分樹脂であるポリエステルは、共重合ポリエステルであることが必要である。
なお、主成分樹脂とは、共重合ポリエステルフィルムを構成する樹脂の中で最も質量割合の大きい樹脂の意味であり、共重合ポリエステルフィルムを構成する樹脂の50質量%以上、或いは75質量%以上、或いは90質量%以上、或いは100質量%を占めればよい。
【0022】
上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の一種又は二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種又は二種以上を挙げることができる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸がテレフタル酸を含み、グリコール成分がエチレングリコールを含み、かつ第3成分がこれら以外であることが好ましい。
中でも、基材フィルムとしては、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタンフィルムが好ましい。
【0023】
本積層フィルム10における基材フィルム1には、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルの製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0024】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒子径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.1~3μmの範囲である。平均粒子径を上記範囲で用いることにより、フィルムに適度な表面粗度を与え、良好な滑り性と平滑性が確保できる。
【0025】
なお、粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めた平均粒子径である。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径とする。後述の微粒子(a1)及び易滑層中の粒子の平均粒子径についても同様である。
【0026】
粒子を配合する場合、例えば、表層と、中間層を設けて、表層に粒子を含有させることが好ましい。この場合、より好ましくは、粒子を含有する表層、中間層、及び粒子を含有する表層をこの順に有する多層構造とするとよい。
【0027】
さらに基材フィルム1中の粒子の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003~3質量%の範囲である。粒子の含有量を上記範囲内とすることで、基材フィルムの透明性を確保しつつ、基材フィルムに滑り性を付与しやすくなる。ただし、基材フィルムは、実質的に粒子を含有しなくてもよい。
なお、本明細書において「実質的に粒子を含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子質量濃度)がその部材や層(ここでは、基材フィルム)に対して、200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。以下で示す同様の用語も同様の意味である。
基材フィルムに粒子が実質的に含有されない場合、あるいは含有量が少ない場合は、基材フィルムの透明性が高くなり外観が良好なフィルムが得られ、また、硬化樹脂層表面の平滑性が高くなりやすくなる。一方で、積層フィルムの滑り性が不十分となる場合がある。そのため、そのような場合には、硬化樹脂層中に粒子を配合するなどすることで、滑り性を向上させたりしてもよいし、後述する粒子を有する易滑層などを設けて滑り性を向上させてもよい。
【0028】
本基材フィルムを構成する共重合ポリエステルフィルムの色については特に制限はないが、特に透明性が必要とされる光学用の場合、無色透明共重合ポリエステルフィルムであることが好ましい。また、外観を重視する加飾用の場合、黒色、白色、茶褐色などの着色共重合ポリエステルフィルムが好ましい。着色の目安として、OD値(光学濃度)で2.0以上、好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上がよい。
【0029】
基材フィルムの厚みは、好ましくは9~350μmであり、より好ましくは12~250μm、その中でも特に20~125μmである。基材フィルムが上記範囲内であると、工業材料、光学部材、化粧品、包装材料、自動車内装用、加飾用などの各分野において好適に使用できる。
【0030】
本基材フィルム1が2以上の層を有する積層構造を備える場合、ベース層Aと表面層B及び表面層Cから構成されるB/A/C及びベース層Aと表面層Bから構成されるB/A/Bの3層構造が好ましい。基材フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、各層を構成する主成分樹脂は、上記の通りポリエステルが好ましい。
【0031】
本基材フィルム1は、積層フィルムに成型性(二次元)を付与する観点から、160℃における引張弾性率が2.5×10Pa以下であることが必要である。好ましくは、2.0×10Pa以下、さらに好ましくは1.8×10Pa以下である。上記範囲を満足することにより、下地の構造色との追従性が良好となり、構造発色性を維持した状態で、成型性(二次元)を付与することが可能となる。下限値は特に制限されないが、1.0×10Pa以上であることが実際的である。
【0032】
<樹脂層(A)>
本積層フィルムの樹脂層(A)は、樹脂組成物(A)を硬化させて形成されるものであり、基材フィルム上に設けられる。樹脂層(A)は、基材フィルムの片面のみに設けられてもよいが、両面に設けられてもよい。
本樹脂層(A)は、構造発色性を有すると共に反射率の調整が可能である特徴を有する。樹脂組成物は、重合することでポリマーとなる成分を含み、具体的には、光重合性化合物及び熱重合性化合物のいずれかの重合性化合物を含有してもよい。
【0033】
樹脂組成物は、構造発色性を有する微粒子(a1)を含有することを必須要件とする。
本発明において、微粒子(a1)がある程度の規則性をもって配列した構造を形成することで構造色の発現が可能になっていると推察される。
樹脂組成物は、耐久性向上の観点から、架橋剤(a2)を含有するのが好ましい。
架橋剤(a2)は、微粒子(a1)が好ましい態様として有する反応性官能基との反応で架橋構造を形成することにより塗膜強度、即ち、硬化に耐久性及び基材フィルムへの密着性を付与することが特徴である。
【0034】
<微粒子(a1)>
微粒子(a1)は、一般的な高分子からなり、かつ反応性官能基を有することが好ましい。
一般的な高分子としては、例えば、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体等のポリスチレン類、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂類、ポリカーボネートが挙げられる。
これらの高分子への反応性官能基の導入方法については後述する。
【0035】
これらの中でも、原材料の入手が容易であり、粒子径の揃った微粒子を生産することが容易なことから、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン類であることが好ましい。その中でも、高屈折率の重合体が得られることから、ポリスチレン類が特に好ましい。
高屈折率の重合体は、粒子内外の屈折率差が大きくなり、構造発色性が向上することから好ましい。微粒子(a1)は、反応性官能基を有するものが好ましく、非架橋高分子であっても、架橋高分子であってもよい。
【0036】
微粒子(a1)の製造方法に関しては、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等で適当な大きさの重合体を得て、これを粉砕して微粉とし、篩分等の操作により粒子径を揃える方法がある。また、ソープフリー乳化重合によって、粒子径の揃った微粒子(a1)を直接得る方法がある。これらの中では、生産性に優れることから、ソープフリー乳化重合による方法が好ましい。
【0037】
本発明において、微粒子(a1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
[ポリ(メタ)アクリル酸エステル類]
本発明におけるポリ(メタ)アクリル酸エステル類とは、(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体である。ここで主成分とは、重合体全体に対して(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率が50質量%以上、更には60質量%以上であることを表す。「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の一方又は双方を指す。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル単位の原料となる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルが挙げられる。
【0040】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル類は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよいが、一般的にはランダム共重合体である。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル類は、上述の(メタ)アクリル酸エステルの他に、任意の単量体を共重合してもよい。
【0041】
任意の単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン等のスチレン類;スチレンスルホン酸のナトリウム塩等の金属塩;アクリル酸、メタクリル酸等の酸性単量体;アクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド等のアクリルアミド類が挙げられる。
これらの中で、粒子径の制御が良好となることから、スチレンスルホン酸のナトリウム塩等の金属塩が好ましい。
また、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類に架橋構造を導入する場合には、公知の多官能単量体を共重合すればよい。
【0042】
[ポリスチレン類]
本発明におけるポリスチレン類とは、スチレン単位を主成分とする重合体である。ここで主成分とは、重合体全体に対してスチレン単位の含有率が50質量%以上、更には60質量%以上であることを表す。
ポリスチレン類は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよいが、一般的にはランダム共重合体である。
ポリスチレン類は、スチレンの他に、任意の単量体を共重合してもよい。
【0043】
任意の単量体としては、例えば、メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン以外のスチレン類;スチレンスルホン酸のナトリウム塩等の金属塩;アクリル酸、メタクリル酸等の酸性単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド等のアクリルアミド類が挙げられる。
これらの中で、粒子径の制御が良好となることから、スチレンスルホン酸のナトリウム塩等の金属塩が好ましい。
また、ポリスチレン類に架橋構造を導入する場合には、公知の多官能単量体を共重合すればよい。
【0044】
ポリスチレン類は、スチレン単位を80.0~99.75質量%含有することが好ましい。スチレン単位の含有率が上記範囲内であれば、粒子の屈折率が高くなり、構造発色性が向上することから好ましい。スチレン単位の含有率は90.0質量%以上がより好ましい。また、99.4質量%以下がより好ましい。
【0045】
微粒子(a1)の個数平均粒子径は構造発色性を良好にする観点から50~450nm、特に100~400nm、とりわけ150~300nmであることが好ましい。なお、微粒子(a1)の個数平均粒子径は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
【0046】
[反応性官能基]
本発明に係る微粒子(a1)は、反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、オキセタニル基、ケト基、アルド基、シリル基、アリル基、ビニルエーテル基、スルホン酸基、アミノ基及びリン酸基が挙げられる。これらは、1種単独で有してもよく、2種以上を有してもよい。
これらの中でも、発色性の観点から、水酸基、グリシジル基、オキセタニル基、ケト基、アルド基、シリル基、アリル基、ビニルエーテル基、アミノ基及びリン酸基が好ましく、水酸基、グリシジル基、オキセタニル基、ケト基、アルド基がより好ましく、グリシジル基、ケト基、アルド基がさらに好ましい。
【0047】
微粒子(a1)が反応性官能基を2種有する場合、少なくとも1種はケト基であることが好ましく、ケト基とカルボキシル基の組み合わせがより好ましい。
また、微粒子(a1)が反応性官能基を2種有し、少なくとも1種はケト基である場合、ケト基の含有比率(ケト基/もう1種の反応性官能基のモル比)は0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、一方、100以下が好ましく、10以下がより好ましい。特に、もう1種の反応性官能基がカルボキシル基である場合、前記ケト基の含有比率は、0.01以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、一方、10以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。
【0048】
微粒子(a1)への反応性官能基を導入方法は特に限定されないが、例えば、高分子微粒子の重合単位を構成する前述の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン類、他の任意の単量体等のラジカル重合性の二重結合を有する単量体に対して、反応性官能基を有する重合性単量体を共重合する方法が挙げられる。
【0049】
反応性官能基として水酸基を有する具体的な重合性単量体としては以下が挙げられるが、以下の例示単量体に限定されるものではない。
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリル系単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル系単量体;アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基含有アリル単量体:など。
これらの単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
反応性官能基としてカルボキシル基を有する具体的な重合性単量体としては以下が挙げられるが、以下の例示単量体に限定されるものではない。
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸モノブチル等のイタコン酸モノアルキル(炭素数1~8)エステル;マレイン酸モノブチル等のマレイン酸モノアルキル(炭素数1~8)エステル;ビニル安息香酸等のビニル基含有芳香族カルボン酸;等の各種カルボキシル基含有単量体及びこれらの塩:など。
これらの単量体は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、中和によりNa等の対イオンを有していても構わない。
【0051】
反応性官能基としてグリシジル基、オキセタニル基を有する具体的な重合性単量体としては以下が挙げられるが、以下の例示単量体に限定されるものではない。
グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、p-グリシジルスチレン、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート等。
これらの単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
反応性官能基としてケト基、アルド基を有する具体的な重合性単量体としては以下が挙げられるが、以下の例示単量体に限定されるものではない。
ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、N-ビニルホルムアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシブチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート等。
これらの単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
反応性官能基としてシリル基を有する具体的な重合性単量体としては以下が挙げられるが、以下の例示単量体に限定されるものではない。
ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等。
これらの単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
反応性官能基としてアリル基、ビニルエーテル基、アミノ基及びリン酸基を有する具体的な重合性単量体としては以下が挙げられるが、以下の例示単量体に限定されるものではない。
アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、リン酸ビス[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル等。
これらの単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
[微粒子(a1)の製造方法]
微粒子(a1)はソープフリー乳化重合によって得ることが好ましい。ソープフリー乳化重合は公知の重合方法であり、例えば下記の通りである。
反応容器にイオン交換水を仕込み、必要に応じて加熱、攪拌しながら、重合助剤を加え、重合助剤をイオン交換水に十分に分散させる。次に攪拌を続けながら重合開始剤を添加する。その後、攪拌を続けながら単量体を逐次滴下し、重合反応を開始させる。重合の進行に従って粒子が形成される。
【0056】
重合時の固形分濃度、即ち、重合時の系全体に対する微粒子(a1)の濃度は20~40質量%が好ましい。
重合時の固形分濃度が前記下限以上であれば、微粒子(a1)の生産性が向上する。また、前記上限以下であれば、重合時のカレット及び重合装置内壁等への付着物の発生がない。
重合温度は重合開始剤を使用した場合には、一般に60~90℃に設定される。反応終了後、微粒子(a1)をエマルションとして取り出す。
【0057】
前記エマルションのpHは3.0~11.0であることが好ましい。エマルションpHが上記範囲外となった場合、金属腐食の観点から生産性に乏しくなる。また、反応性官能基としてケト基、架橋剤(a2)としてヒドラジド化合物を選択した場合、pHは3.0~11.0であることが好ましく、3.0~8.0であることがより好ましく、6.0~8.0であることが更に好ましい。pHが3.0未満の場合、金属腐食の観点から生産性に乏しくなる。pHが11.0を超える場合、ケト基とヒドラジド化合物の反応性が低下し、十分な物理的耐久性を示す構造体が得られなくなる。
このため、エマルションのpHが上記好適範囲を外れる場合は、適宜、アルカリ又は酸を添加してpH調整することが好ましい。
通常、上記の微粒子(a1)の製造で得られるエマルションのpHは2.0~7.0程度であることから、一般的にはアルカリを添加してpH調整が行われる。pH調整に用いるアルカリとしては、加熱等で構造体からの除去が容易なことから、アンモニア水などが好ましい。
【0058】
ソープフリー乳化重合で用いる重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤;過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド等の油溶性重合開始剤;酸化剤と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤が挙げられる。
【0059】
<架橋剤(a2)>
本樹脂組成物は、架橋剤(a2)を含有することが好ましく、微粒子(a1)が有する反応性官能基を介して架橋を行うことにより微粒子(a1)間を化学的に結合させることができる。これにより、本樹脂組成物を用いて形成された本樹脂層(A)は、耐久性及び基材フィルムとの密着性に優れたものとなるので好ましい。
架橋剤(a2)としては、微粒子(a1)に導入した反応性官能基との反応性を有する任意の化合物を使用することができる。例えば、多官能のエポキシ化合物、イソシアネート化合物、ヒドラジド化合物、オキサゾリン化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、ラジカル重合性単量体、アジリジン化合物、シラン化合物、カルボジイミド化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
多官能のエポキシ化合物としては以下が挙げられるが、以下の例示化合物に限定されるものではない。
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂肪族型、脂環式型、ノボラック型、アミノフェノール型、ヒダトイン型、イソシアヌレート型、ビフェノール型、ナフタレン型等の各種エポキシプレポリマー等の多官能エポキシ樹脂等。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
多官能のイソシアネート化合物としては以下が挙げられるが、以下の例示化合物に限定されるものではない。なお、イソシアネート化合物としてはブロックイソシアネート化合物も含むこととする。
ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(異名称:水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、及び前記イソシアネートのトリマー体、アロファネート体、ビウレット体、ダイマー体、ダイマー・トリマー体、カルボジイミド体、ウレトンイミン体、2官能以上のポリオール等と前記イソシアネートとの反応で得られるアダクト体等。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
多官能のヒドラジド化合物としては以下が挙げられるが、以下の例示化合物に限定されるものではない。
シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジヒドラジドの他、炭酸ポリヒドラジド、脂肪族、脂環式、芳香族ビスセミカルバジド、芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸のポリヒドラジド、芳香族炭化水素のジヒドラジド、ヒドラジン-ピリジン誘導体及びマレイン酸ジヒドラジドなどの不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド等。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
多官能のオキサゾリン化合物としては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマー「エポクロス」(日本触媒株式会社製)が挙げられる。多官能のオキサゾリン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
多官能のアミン化合物としては、以下が挙げられるが、以下の例示化合物に限定されるものではない。
エチレンジアミン及びその付加物、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン及びその変性品、N-アミノエチルピペラジン、ビス-アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス-ヘキサメチレントリアミン、ジシアンジアミド、ジアセトアクリルアミド、各種変性脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等の脂肪族アミン;3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3-アミノ-1-シクロヘキシルアミノプロパン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等の脂環式アミン及びその変性物;4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、2,4’-トルイレンジアミン、m-トルイレンジアミン、o-トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族アミン及びその変性物;その他特殊アミン変性物;アミドアミン、アミノポリアミド樹脂等のポリアミドアミン;ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ-2-エチルヘキサン塩等の3級アミン類;等。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
多官能のカルボン酸化合物としては、以下が挙げられるが、以下の例示化合物に限定されるものではない。なお、カルボン酸化合物としてはその酸無水物も含むこととする。
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
多官能のラジカル重合性単量体としては、以下が挙げられるが、以下の例示化合物に限定されるものではない。
N-[トリス(3-(メタ)アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド、N,N-ビス(2-(メタ)アクリルアミドエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N’-[オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ-3,1-プロパンジイル)]ビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-((メタ)アクリロイルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミド}ビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
多官能のアジリジン化合物としては、例えば、アジリジン基含有ポリマー「ケミタイト」(日本触媒株式会社製)が挙げられる。多官能のアジリジン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
多官能のシラン化合物としては、以下が挙げられるが、以下の例示化合物に限定されるものではない。
メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
多官能のカルボジイミド化合物としては、例えば、カルボジイミド基含有ポリマー「カルボジライト」(日清紡ケミカル株式会社製)が挙げられる。多官能のカルボジイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
[微粒子(a1)の反応性官能基と架橋剤(a2)との好適な組み合わせ]
本発明において、微粒子(a1)が有する反応性官能基と架橋剤(a2)との組み合わせとしては、下記が好ましい。
微粒子(a1)の反応性官能基がケト基、アルド基の場合、組み合わせる架橋剤(a2)はヒドラジド化合物が好ましい。
微粒子(a1)の反応性官能基がグリシジル基、オキセタニル基の場合、組み合わせる架橋剤(a2)はアミン化合物、カルボン酸化合物、ヒドラジド化合物が好ましい。
微粒子(a1)の反応性官能基が水酸基の場合、組み合わせる架橋剤(a2)はイソシアネート化合物が好ましい。
微粒子(a1)の反応性官能基がカルボキシル基の場合、組み合わせる架橋剤(a2)はエポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物が好ましい。
微粒子(a1)の反応性官能基がシリル基の場合、組み合わせる架橋剤(a2)はシラン化合物が好ましい。
微粒子(a1)の反応性官能基がアリル基、ビニルエーテル基の場合、組み合わせる架橋剤(a2)はラジカル重合性単量体が好ましい。
【0071】
<水溶性樹脂(c)>
本樹脂層(A)は水溶性樹脂(c)を含むことが好ましい。水溶性樹脂とは、高分子化合物の内で、水に溶解するか少なくとも水に分散する物質である。
水溶性樹脂(c)としては、分子内にスルホニル基、カルボキシル基等のイオン性基;水酸基等の水溶性置換基を有しており、水に溶解するものが好ましい。水溶性樹脂(c)は、本樹脂層(A)として均一な塗膜を形成することを可能とする。
【0072】
水溶性樹脂には、非イオン性の水溶性樹脂と、イオン性の水溶性樹脂がある。
非イオン性の水溶性樹脂としては、例えば、水溶性ポリアクリルアミド、水溶性アクリル系樹脂、非イオン性のポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリ酢酸ビニル;デンプン、ゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物が挙げられる。
イオン性の水溶性樹脂としては、例えば、水溶性ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸、イオン性のポリビニルアルコール系樹脂、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0073】
これらの中では、高分子主鎖の耐加水分解性が高い理由で、非イオン性のポリビニルアルコール系樹脂及び/又はイオン性のポリビニルアルコール系樹脂を用いることが好ましい。また、水溶性樹脂の中では、イオン強度が向上することから、イオン性の水溶性樹脂が好ましい。
本発明において、水溶性樹脂(c)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
[イオン性の水溶性樹脂]
イオン性の水溶性樹脂とは、アニオン性又はカチオン性の部位を有する水溶性樹脂のことであり、具体的には上述の通りである。
イオン性の水溶性樹脂の中では、耐溶剤性に優れるという理由で、イオン性のポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
【0075】
[イオン性のポリビニルアルコール系樹脂]
イオン性のポリビニルアルコール系樹脂とは、分子鎖中に、スルホニル基又はその塩;カルボキシル基又はその塩;4級アンモニウム塩等のイオン性基を含むポリビニルアルコール系樹脂である。
【0076】
イオン性のポリビニルアルコール系樹脂として、具体的には、分子鎖中にスルホニル基のナトリウム塩を含むポリビニルアルコール系樹脂、分子鎖中にカルボキシル基のナトリウム塩を含むポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。
これらの中では、塩が解離しやすいという理由で、スルホニル基のナトリウム塩を含むポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
【0077】
イオン性のポリビニルアルコール系樹脂の市販品としては、例えば、「ゴーセネックス」(三菱ケミカル株式会社製、特殊変性ポリビニルアルコール系樹脂)が挙げられる。
【0078】
<水溶媒(d)>
本樹脂組成物は、水溶媒(d)により希釈されることで塗布液とするとよい。
本樹脂組成物は、液状の塗布液として本基材フィルムに塗布し、乾燥し、かつ硬化させることで本樹脂層(A)とするとよい。
本樹脂組成物を構成する各成分は、水溶媒(d)に溶解あるいは分散させることができる。本発明において、樹脂組成物は、実質的に有機溶媒を含まないことが好ましい。
「実質的に有機溶媒を含まない」とは、水以外に微粒子(a1)の製造過程でやむを得ず除去しきれなかった有機溶媒が、本発明の主旨を損なわない範囲において、少量混合していてもよいことを意味する。具体的には水全体の質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、その中でも特に2質量%以下がよい。有機溶媒の具体例として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒などが挙げられる。
【0079】
水溶媒(d)の使用量には特に制限はなく、調製される樹脂組成物の塗布性、液の粘度及び表面張力、固形分の相溶性等を考慮して適宜決定される。本樹脂組成物は、水溶媒(d)を用いて、好ましくは固形分濃度が5~80質量%、より好ましくは10~70質量%、その中でも特に15~60質量%の塗布液として調製されるのが好ましい。
特に、本樹脂組成物の塗布外観、形成される硬化樹脂層の外観を考慮した場合、硬化樹脂組成物の固形分濃度は24質量%以上、例えば24~40質量%、好ましくは24~30質量%であることが好ましい。
なお、樹脂組成物における「固形分」とは、揮発性成分である溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。
【0080】
<その他成分>
本樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の主旨を損なわない範囲内で適宜、種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤などが挙げられる。これらの1種のみを配合してもよく、2種以上を配合してもよい。
【0081】
<各成分の含有量>
本樹脂層(A)及び本樹脂組成物(A)における架橋剤(a2)の含有量は、架橋剤(a2)を配合することによる塗膜強度の向上効果を有効に得た上で、構造発色性を良好とする観点から、微粒子(a1)100質量部に対して、1~20質量部の範囲が好ましく、1.5~10質量部の範囲がより好ましく、さらに好ましくは2~5質量部の範囲である。
また、同様の観点から、架橋剤(a2)の含有量は、微粒子(a1)が有する反応性官能基に対する架橋剤(a2)の反応当量が0.1~10当量、特に0.5~1.5当量となるような量であることが好ましい。
【0082】
本樹脂層(A)及び本樹脂組成物(A)が水溶性樹脂(c)を含有する場合、水溶性樹脂(c)の含有量は、構造発色性の観点から、本樹脂層(A)及び本樹脂組成物(A)中の微粒子(a1)100質量部に対して0.001~0.4質量部の範囲が好ましく、0.005~0.4質量部の範囲がより好ましく、さらに好ましくは0.05~0.4質量部の範囲である。
なお、本樹脂層(A)及び本樹脂組成物(A)の固形分中の微粒子(a1)の含有率については、構造発色性の観点から5~60質量%、特に10~40質量%、とりわけ20~40質量%の範囲であることが好ましい。
【0083】
<本樹脂組成物(A)の調製方法>
本樹脂組成物(A)は、特に水溶媒(d)を含む本樹脂組成物(A)は、水溶媒(d)と、微粒子(a1)、架橋剤(a2)及び必要に応じて用いられる水溶性樹脂(c)等のその他の成分を混合することで調製することができる。
例えば、前述の方法で製造された、微粒子(a1)を含むエマルションと、架橋剤(a2)と、必要に応じて用いられる水溶性樹脂(c)等のその他の成分と、固形分濃度調整用の水溶媒(d)とを混合することにより調製することができる。
【0084】
<樹脂層(A)の厚み>
本樹脂層(A)の厚みは、通常1~10μm、好ましくは2~9μm、より好ましくは3~8μmの範囲、特に好ましくは6±1μmである。本樹脂層(A)の厚みを前記範囲内とすることにより、所望する構造色が発色しやすくなる。
ここで、樹脂層(A)の厚みは、後述の積層フィルムの製造方法において、本樹脂組成物(A)を塗布して加熱乾燥した後の厚みである。
【0085】
<樹脂層(B)>
本積層フィルムの樹脂層(B)(以下、「本樹脂層(B)」と称す場合がある。)は、樹脂組成物(B)(以下、「本樹脂組成物(B)」と称す場合がある。)を硬化させて形成されるものであり、樹脂層(A)上に設けられる。
本樹脂層(B)は、樹脂層(A)を保護する特徴を有する。
樹脂組成物(B)は、重合することでポリマーとなる成分を含み、具体的には、光重合性化合物及び熱重合性化合物のいずれの重合性化合物を含有してもよい。後述の実施例の項に記載の方法で測定される本樹脂層(B)の屈折率は、1.30~1.55、特に1.35~1.55であることが好ましい。本樹脂層(B)の屈折率が上記範囲内であれば、良好な構造発色を発現することが可能となる。
【0086】
樹脂組成物(B)は、樹脂層(A)中に含まれる構造色微粒子への熱ダメージ低減の観点から、100℃以下で硬化可能なタイプ、あるいは250mJ/cm以下の照射量で硬化可能なタイプを選択するのが好ましい。
さらに、積層フィルムに成型性を付与する観点から、160℃における引張弾性率が2.5×10Pa以下であることが必要である。好ましくは、2.0×10Pa以下、さらに好ましくは1.8×10Pa以下である。上記範囲を満足することにより、下地の構造色層との追従性が良好となり、構造発色性を維持した状態で、成型性(二次元)を付与することが可能となる。下限値は特に制限されないが、1.0×10Pa以上であることが実際的である。
前記条件を満足するものであれば、従来から公知の材料を用いることができる。例えば、紫外線架橋を形成する官能基を有する紫外線硬化型樹脂としては、シリコーン含有(メタ)アクリレートなどのシリコーン樹脂、あるいはウレタン(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂及びアクリル樹脂は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
前記紫外線硬化型樹脂を用いれば、付随的に、樹脂層(B)表面には、防汚性(撥水性や撥油性)を付与することも可能である。
シリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業(株)製の1液型RTVゴム(例えば、KE-3423、KE-347、KE-3475、KE-3495、KE-4895、KE-4896、KE-1830、KE-1884、KE-3479、KE-348、KE-4897、KE-4898、KE-1820、KE-1825、KE-1831、KE-1833、KE-1885、KE-1056、KE-1151、KE-1842、KE-1886、KE-3424G、KE-3494、KE-3490、KE-40RTV、KE-4890、KE-3497、KE-3498、KE-3493、KE-3466、KE-3467、KE-1862、KE-1867、KE-3491、KE-3492、KE-3417、KE-3418、KE-3427、KE-3428、KE-41、KE-42、KE-44、KE-45、KE-441、KE-445、KE-45S等)、信越化学工業(株)製の2液型RTVゴム(例えば、KE-1800T-A/B、KE-66、KE-1031-A/B、KE-200、KE-118、KE-103、KE-108、KE-119、KE-109E-A/B、KE-1051J-A/B、KE-1012-A/B、KE-106、KE-1282-A/B、KE-1283-A/B、KE-1800-A/B/C、KE-1801-A/B/C、KE-1802-A/B/C、KE-1281-A/B、KE-1204-A/B、KE-1204-AL/BL、KE-1280-A/B、KE-513-A/B、KE-521-A/B、KE-1285-A/B、KE-1861-A/B、KE-12、KE-14、KE-17、KE-113、KE-24、KE-26、KE-1414、KE-1415、KE-1416、KE-1417、KE-1300T、KE-1310ST、KE-1314-2、KE-1316、KE-1600、KE-1603-A/B、KE-1606、KE-1222-A/B、KE-1241等)等が例示される。
【0087】
アクリル樹脂に関しては、(ウレタン(メタ)アクリレート)を用いるのが好ましい。
本発明において、「(メタ)アクリレート」という表現を用いた場合、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は両方を意味するものとする。
【0088】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるもの、乃至、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものである。ウレタン(メタ)アクリレートは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0089】
イソシアネート系化合物としては、例えば、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート等のポリイソシアネート系化合物が挙げられ、これらの中ではジイソシアネート化合物が好ましい。また、イソシアネート系化合物としては、ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物等が挙げられる。
上記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
上記脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
これらの中でも、耐黄変性に優れる点で脂肪族系ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましい。また、イソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、同様の観点から、脂肪族系ジイソシアネート、又は脂環式ジイソシアネートをイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、これらの中でもイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物がより好ましい。
イソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1個含有する単官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート等のエチレン性不飽和基を2個含有する2官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上含有する3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、反応性及び汎用性に優れ、硬化塗膜の耐擦傷性とのバランスに優れる点で、エチレン性不飽和基を3個以下含有する(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、また、中でもエチレン性不飽和基を2個以上含有する多官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0091】
上記ポリオール系化合物は、水酸基を2個以上有する化合物(但し、上記水酸基含有(メタ)アクリレートは除く。)であればよい。
【0092】
上記ポリオール系化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0093】
上記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール類、キシリトールやソルビトール等の糖アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3個以上の水酸基を含有する脂肪族アルコール類等が挙げられる。
【0094】
上記脂環式ポリオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロヘキサンジオール類、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール類、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0095】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
【0096】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0097】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトール等)等が挙げられる。
【0098】
上記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0099】
上記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0100】
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0101】
ポリカーボネート系ポリオールに使用される上記多価アルコールとしては、上記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0102】
なお、ポリカーボネート系ポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0103】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマー又はコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0104】
上記ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部又は一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0105】
上記ポリイソプレン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてイソプレンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリイソプレン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部又は一部が水素化された水添化ポリイソプレンポリオールであってもよい。
【0106】
上記(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとの共重合体でもよい。
【0107】
上記ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0108】
上記ポリオール系化合物は1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0109】
上記イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との付加反応、または、イソシアネート系化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、及びポリオールとの付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5質量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0110】
ウレタン(メタ)アクリレートが、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものを含む場合、イソシアネート系化合物とポリオール系化合物を反応させて得られたイソシアネート基を有する反応生成物、又は該反応生成物とイソシアネート系化合物の混合物を、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と反応させて得るとよい。
このような反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものと、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものの混合物となってもよい。
【0111】
イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンが好適である。これらを単独、あるいは2種以上併せて用いることができる。
【0112】
またイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。また、適宜重合禁止剤などを使用してもよい。
【0113】
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物及びイソシアネート系化合物、または、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物の反応生成物であるが、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物とイソシアネート系化合物とを反応することで生成してもよい。あるいは、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物と、イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物とを反応することで生成してもよい。この際、水酸基を有さない(メタ)アクリレートは、未反応物として残存するが、そのまま硬化性樹脂組成物に含有させて使用するとよい。
また、以上説明したイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、上記のとおりイソシアネート系化合物の一部又は全部が、イソシアネート系化合物とポリオール系化合物の反応生成物であってもよい。
【0114】
ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、例えば3,000以上100,000以下であり、5,000以上70,000以下が好ましく、8,000以上30,000以下がより好ましい。前記範囲を満足する樹脂層(B)を積層フィルムなどの積層体構成において形成することで、良好な成型性を確保することができる。
【0115】
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量は、例えば120g/eq以上250g/eq以下、好ましくは135g/eq以上220g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上200g/eq以下である。ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量が上記範囲内であると、架橋点の調整により、適度な架橋密度を有する樹脂層の形成が可能となり、樹脂層(B)を積層フィルムなどの積層体構成において形成することで、適度な硬度を付与できる。
【0116】
樹脂組成物(B)におけるウレタン(メタ)アクリレートの比率は、固形分全量に対して、50質量%以上であるとよく、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0117】
本発明では、上記ウレタン(メタ)アクリレートを単独で、又は2種以上を混合し、重合してベースポリマーを調製することが好ましい。ベースポリマーは後述する溶媒等に溶解又は分散させて、樹脂層(A)上に塗布、硬化して樹脂層(B)を形成することが好ましい。
【0118】
(溶媒)
樹脂組成物(B)は、溶媒により希釈されることで塗布液としてもよい。樹脂組成物(B)は、液状の塗布液として樹脂層(A)上に塗布し、乾燥し、かつ硬化させることで樹脂層(B)としてもよい。樹脂組成物(B)を構成する各成分は、溶媒に溶解させてもよいが、溶媒中に分散させてもよい。
溶媒としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒の具体例として、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0119】
有機溶媒の使用量には特に制限はなく、調製される樹脂組成物(B)の塗布性、液の粘度及び表面張力、固形分の相溶性等を考慮して適宜決定される。樹脂組成物(B)は、前述の溶媒を用いて、好ましくは固形分濃度が15~80質量%、より好ましくは20~70質量%の塗布液として調製される。なお、樹脂組成物(B)における「固形分」とは、揮発性成分である溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。
【0120】
(その他成分)
樹脂組成物(B)には、本発明の主旨を損なわない範囲内で、上記ウレタン(メタ)アクリレート以外に、(メタ)アクリレート等の光重合性化合物を含有していてもよい。
また、樹脂組成物(B)には、必要に応じて、本発明の主旨を損なわない範囲内で適宜、種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、光開始剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、有機顔料、有機粒子、無機粒子、屈折率調整剤(例えば、中空ナノシリカ)、難燃剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤などを併用してもよい。
【0121】
(光開始剤)
樹脂組成物(B)が光硬化性樹脂組成物の場合、硬化性を向上させるため、光開始剤を含有することが好ましい。光開始剤は、光重合開始剤であり、公知のものを使用することができる。光重合開始剤としては例えば、光ラジカル発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。
【0122】
樹脂組成物(B)に用いることのできる光重合開始剤のうち、光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)651」、IGM RESINS製]、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)184」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)1173」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)127」、IGM RESINS製]、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)2959」、IGM RESINS製]、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)907」、IGM RESINS製]、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)TPO」、IGM RESINS製]、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)819」、IGM RESINS製]等のホスフィンオキシド類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾフェノン及びその各種誘導体;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル等のギ酸誘導体等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
これらの光ラジカル発生剤の中でも、硬化物の耐光性の観点から、好ましいのはアルキルフェノン類、ホスフィンオキシド類、ギ酸誘導体であり、更に好ましいのは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾイルギ酸メチルであり、特に好ましいのは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンである。
【0124】
光酸発生剤としては公知のものが使用可能であるが、中でもジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が硬化性、酸発生効率等の観点から好ましい。具体例を挙げると、ジ(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩(具体的にはPF塩、SbF塩、テトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート塩等)が例示できる。
(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩の具体例としては、ジアルキルフェニルヨードニウムのPF塩[商品名「Omniad(登録商標)250」、IGM RESINS製]が特に好ましい。これらの光酸発生剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせてもよい。
【0125】
光開始剤の含有量は、樹脂組成物(B)中の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計100質量部に対して、硬化性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは1質量部以上である。一方、樹脂組成物(B)を溶液としたときの塗布液の安定性を維持する観点及び硬化塗膜の平面性の観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは7質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以下である。
【0126】
樹脂層(B)の厚さは特に限定されないが、例えば、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。上限としては、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0127】
<樹脂層の形成方法>
上記のとおり、本樹脂層は、本樹脂組成物を基材フィルム表面に塗布し、乾燥して塗布層を形成し、その塗布層を硬化することで得ることができる。
本樹脂組成物を塗布する方法としては、例えばエアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥条件は、特に限定されず、室温付近で行ってもよいし、加熱により行ってもよい。加熱を行う場合、加熱温度が高い方が塗膜強度が向上する傾向があるが、反面反射率が低下する傾向がある。
微粒子(a1)の耐熱性を考慮した場合、120℃を超えると微粒子(a1)の融解が始まりやすい傾向にあるため、樹脂層(A)及び樹脂層(B)の加熱は、好ましくは25~120℃、より好ましくは25~110℃、その中でも特に90~110℃の範囲がよい。
また、乾燥時間は、水溶媒(d)が十分に揮発できる限り特に限定されず、例えば10秒間~30分間、好ましくは10秒間~10分間、より好ましくは15秒間~10分間である。
即ち、本積層フィルムは、好ましくは、本基材フィルム上に塗布された本樹脂組成物を25~120℃で、10秒間~10分間、好ましくは10秒間~5分間の条件で加熱して本樹脂層を形成する加熱処理工程を備える本発明の積層フィルムの製造方法に従って製造される。
【0128】
本樹脂組成物の硬化方法は、樹脂組成物の硬化メカニズムに応じて適宜選択すればよく、樹脂組成物が熱硬化樹脂組成物であれば加熱することで硬化させればよい。また、光硬化樹脂組成物であれば活性エネルギー線を照射して硬化させればよい。
【0129】
樹脂組成物を硬化させる際に用いることのできる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
樹脂組成物の硬化方法は、成形時間及び生産性の観点並びに加熱による各部材の熱収縮及び熱劣化を防止できる観点などから、これらの中ではエネルギー線照射により硬化することが好ましい。エネルギー線の照射は、いずれの面側から行ってもよく、基材フィルム側から行ってもよいし、基材フィルムの反対側から行ってもよい。
積層フィルムを製造する際、樹脂組成物を紫外線照射により硬化させる場合には、種々の紫外線照射装置を用いることができ、その光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED-UVランプ等を使用することができる。紫外線の照射量(単位はmJ/cm)は、通常50~3,000mJ/cmであり、樹脂組成物の硬化性、硬化物(硬化膜)の可撓性等の観点から好ましくは100~1,000mJ/cmであり、積層フィルムの平面性の観点から、より好ましくは100~500mJ/cm、その中でも特に100~250mJ/cmの範囲で適宜決定される。
【0130】
また、積層フィルムを製造する際、樹脂組成物を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常、0.5~20Mradであり、樹脂組成物の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から好ましくは1~15Mradの範囲で適宜決定される。
【0131】
以上、樹脂層(A)と樹脂層(B)とを順次積層する場合について説明したが、例えば、樹脂層(B)中に樹脂層(A)が内包される構成であれば、本発明に包含される。そのような構成を採用することで擬似二層構成となり、基材フィルムに対する密着性と塗膜強度との両立も可能となる。このような積層工程をとり得る場合には、必ずしも樹脂層(A)と樹脂層(B)を段階的に順次積層する手段に限定されることはなく、また必ずしも両層の界面が明確でなくてもよく、一つの層中の表面側が樹脂層(B)、高分子フィルム側が樹脂層(A)となっていて、実質的に同じ構成となっていれば本発明に包含される。また、基材と樹脂層(A)と樹脂層(B)とはその順に配設されていればよく、例えば各層の間に機能性の層を介在させたものを排除してはいない。
【0132】
<易接着層>
本積層フィルムには、基材フィルムの表面に易接着層を有してもよい。易接着層は、本硬化樹脂層が設けられる基材フィルムの一方の面に設けられるとよく、易接着層の表面に上記した硬化樹脂層が形成されるとよい。
易接着層を設けることで、基材フィルムに樹脂層を接着させやすくなる場合がある。易接着層は、バインダー樹脂及び架橋剤を含む易接着層組成物から形成される。
【0133】
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも、硬化樹脂層との密着性向上の観点からは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂、アクリル樹脂である。これらバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。易接着層組成物において、バインダー樹脂の含有量は、固形分基準で、例えば20~90質量%、好ましくは30~80質量%である。
【0134】
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用でき、例えばオキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。
なお、オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を有するアクリルポリマーなどであってよい。
これらの中でも、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、及びエポキシ化合物が好ましい。これら架橋剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
易接着層組成物における架橋剤の含有量は、固形分基準で、例えば、5~50質量%、好ましくは10~40質量%である。
【0135】
易接着層組成物には、耐ブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を配合してもよい。粒子としては、後述する易滑層で示したものを適宜使用できる。ただし、易接着層組成物(すなわち、易接着層)は、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。粒子を実質的に含有しないことで、樹脂層表面の平滑性を高めることができる。
また、易接着層組成物には、架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などが配合されていてもよい。さらに、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
【0136】
易接着層組成物は、一般的に、水、有機溶剤、又はこれらの混合液により希釈されていることが好ましく、易接着層は、易接着層組成物の希釈液を、基材フィルムの表面に塗布液としてコーティングして、乾燥することにより形成するとよい。コーティングは、従来公知の方法で行うとよい。
【0137】
易接着層の厚さは、通常0.003~1μmの範囲であり、好ましくは0.005~0.6μm、さらに好ましくは0.01~0.4μmの範囲である。厚さを0.003μm以上とすることで、十分な接着性を確保できる。また、1μm以下とすることで、外観の悪化や、ブロッキングなどを生じにくくする。
【0138】
<易滑層>
本積層フィルムには、易滑層を有してもよい。易滑層は、基材フィルムの硬化樹脂層が設けられる一方の面とは反対側の面に設けられるとよい。易滑層は、基材フィルムの表面に設けられるとよい。積層フィルムは、易滑層を有することで、滑り性が良好となる。そのため、上記の通り、積層フィルムの硬化樹脂層が設けられる側の面の平滑性を高めても、積層フィルムのロール巻き取り性及び取り扱い性が良好になる。
【0139】
易滑層は、例えばバインダー樹脂、架橋剤及び粒子を含む易滑層組成物から形成される。なお、バインダー樹脂及び架橋剤に使用できる化合物は、上記易接着層に使用されるバインダー樹脂、架橋剤で説明したとおりである。
また、易滑層組成物におけるバインダー樹脂の含有量は、固形分基準で、例えば、20~90質量%、好ましくは30~80質量%である。易滑層組成物における架橋剤(a2)の含有量は、固形分基準で、例えば、5~50質量%、好ましくは10~40質量%である。
【0140】
易滑層に使用される粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機高分子粒子等が挙げられる。その中でも透明性の観点からシリカが好ましい。粒子の平均粒子径は、ポリエステルフィルムの表面平滑性を損なうことなく、滑り性を良好にする観点から、好ましくは0.005~1.0μm、より好ましくは0.01~0.8μm、さらに好ましくは0.01~0.6μmの範囲内である。易滑層組成物における粒子の含有量は、固形分基準で、例えば1~20質量%、好ましくは3~15質量%である。易滑層に使用される粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0141】
易滑層組成物は、一般的に、水、有機溶剤、又はこれらの混合液により希釈されていることが好ましく、易滑層は、易滑層組成物の希釈液を、基材フィルムの表面に塗布液としてコーティングして、乾燥することにより形成するとよい。コーティングは、従来公知の方法で行うとよい。
【0142】
易滑層の厚さは、通常0.003~1μmの範囲であり、好ましくは0.005~0.6μm、さらに好ましくは0.01~0.4μmの範囲である。厚さを0.003μm以上とすることで、易滑層に含有される粒子を十分に保持でき、滑り性を付与できる。また1μm以下とすることで、外観の悪化や、ブロッキングなどを生じにくくする。
【0143】
<コーティング>
本基材フィルムの表面には必要に応じてコーティングを施すことができ、コーティングにより上記した易接着層及び易滑層を形成するとよい。コーティングは、インラインあるいはオフラインあるいはそれらを両方組み合わせて行うことができるが、インラインで行うことが好ましい。インラインで行うコーティングは、基材フィルムの製造ラインにおいて基材フィルムにコーティングを施すとよい。例えば、基材フィルムが二軸延伸フィルムである場合には、例えば、縦延伸が終了した段階で、易接着層及び易滑層の少なくとも一方を形成するための塗布液を塗布した後、その後の基材フィルムの製造工程で塗布液を乾燥、硬化などさせるとよい。
【0144】
<積層フィルムの物性>
(構造発色性)
本発明で用いる微粒子(a1)は、構造発色性を有する。構造発色とは、図2に示すように、粒子径の揃った微粒子が規則的に配列したときに構造色を発現することを意味する。
構造発色とは、微粒子が規則正しく配列した結晶構造を有しているため、光の波長によって干渉や散乱等の光学物理的現象が起こり、見る角度によって色が変化して見える、角度依存性のある発色現象のことである。
【0145】
構造発色は光の性質によるものであるから、可視光領域のみではなく、紫外線領域、赤外線領域でも同様に発現する。
紫外線領域で構造色を発現させるには、個数平均粒子径が小さい、例えば個数平均粒子径50~100nmの微粒子を用いればよく、赤外線領域で構造色を発現させるには、個数平均粒子径が大きい、例えば個数平均粒子径100~450nmの微粒子を用いればよい。
本発明では、フィルムの加飾性向上のために構造発色を利用する観点から、可視光領域での構造色を発現することが好ましい。可視光領域で構造発色をさせる観点からは、微粒子の個数平均粒子径が75~350nm程度であることが好ましい。
【0146】
ここで可視光領域とは波長360~830nmを表し、紫外線領域とは波長200~359nmを表し、赤外線領域とは波長831~2500nmを表す。
本発明において、構造発色性評価としては、硬化樹脂層表面を正面から見た場合と斜め45度の角度で見た場合とで、色調に関して、目視による官能評価を行った。
【0147】
(成型性:二次元)
本積層フィルムに関して、160℃での引張弾性率は2.5×10Pa以下であることが必要である。好ましくは、2.0×10Pa以下、さらに好ましくは1.8×10Pa以下である。上記範囲を満足することにより、下地の構造色との追従性が良好となり、構造発色性を維持した状態で、成型性を付与することが可能となる。例えば、パーソナルコンピューター、スマートフォンの筐体など、適度な伸張性が必要とされる成形用途に適用可能となる。下限値は特に制限されないが、1.0×10Pa以上であることが実際的である。
【0148】
(樹脂層(B)の160℃における塗膜の貯蔵弾性率)
樹脂層(B)の160℃における塗膜の貯蔵弾性率は、好ましくは1.3×10Pa以下、より好ましくは1.0×10Pa以下、さらに好ましくは9.0×10Pa以下、その中でも特に8.0×10Pa以下がよい。上記範囲を満足することにより、下地の構造色との追従性が良好となり、構造発色性を維持した状態で、成型性を付与することが可能となる。
【0149】
(成型性:三次元)
さらに好ましくは、本積層フィルムは、成型性評価装置(Mayku Formbox)を用いて、温度はダイヤル6番(最大設定)、1分間熱プレス成型した時に割れが発生しないことがよい。前記範囲を満足することで、複雑な立体形状、例えば、自動車内装用などにも対応可能な成型性を付与することができる。
【0150】
本積層フィルム構成を基準にして、別の実施態様として、例えば、基材フィルム/樹脂層(B)/樹脂層(A)/基材フィルム、基材フィルム/樹脂層(B)/樹脂層(A)/基材フィルム/基材フィルム、基材フィルム/粘着層/樹脂層(B)/樹脂層(A)/基材フィルム、基材フィルム/粘着層/樹脂層(B)/樹脂層(A)/基材フィルム/粘着層/基材フィルムなどのフィルム積層体構成も可能である。
【0151】
<用途>
本発明の積層フィルムは、工業材料用途、光学用途、包装材料用途など、様々な用途で使用可能であるが、化粧シート、スマートフォンの筐体、パーソナルコンピューターの筐体、自動車内装部品などの加飾用途、成形同時転写用に使用されることが好ましい。具体的には基材フィルムから剥がされて、樹脂層(A)/樹脂層(B)/成形樹脂(PCなど)などの構成を転写することができる。
【0152】
<語句の説明など>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0153】
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0154】
<評価方法>
種々の物性及び特性の測定及び評価方法は、以下の通りである。
【0155】
(1)微粒子(a1)の個数平均粒子径
微粒子(a1)のエマルションを基材に塗布し、乾燥させた後、倍率2万倍以上の電子顕微鏡で、微粒子の画像を観察した。画像中、少なくとも400個の微粒子の直径を測定し、これを算術平均して個数平均粒子径を求めた。
【0156】
(2)樹脂層の厚み(硬化後)
予め、試料サンプルの樹脂層(硬化後)の断面をミクロトームで切断し、SEMによる断面観察により、樹脂層(A)及び樹脂層(B)の膜厚みを計測した。
【0157】
(3)構造発色性(成型後)
基材フィルム/樹脂層(A)/樹脂層(B)から構成される試料フィルムを下記の三次元賦形して、その後に、硬化樹脂層表面(樹脂層(A)表面)が構成する平面を正面から見た場合と斜め45度の角度で見た場合とで見える色調を目視により官能評価した。
【0158】
(4)樹脂層(B)の屈折率
株式会社アタゴ製アッベ式屈折計「NAR-1T」を用い、樹脂層(B)表面の屈折率を求めた。なお、屈折率の測定は、ナトリウムD線を用い、23℃で行った。
【0159】
(5)成型性(二次元)
基材フィルム/樹脂層(A)/樹脂層(B)から構成される試料フィルムを用いて、粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、「itk DVA-225」)を用いて、振動周波数10Hz、歪0.1%、昇温速度10℃/分、チャック間20mmで-25℃から200℃まで測定を行い、得られたデータから160℃における引張り貯蔵弾性率[Pa]を求めた。
【0160】
(6)成型性(三次元)
成型性評価装置(Mayku Formbox)を用いて、成型倍率が2.5倍、温度はダイヤル6番(最大設定)、1分間熱プレス成型した際の割れ発生の有無を観察した。なお、加工形態は、図3,4に示したとおり、ピラミッド型に成形した。
○:割れが発生しない
×:割れが発生する
【0161】
(7)160℃における引張試験
160℃における引張試験において、150%伸長させたときの割れ発生の有無を確認した。割れがなく良好な場合を「○」、割れが発生する場合は「×」と判定した。
【0162】
(8)樹脂層(B)の160℃における貯蔵弾性率
厚さ38μmのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製:「T100-38」)・厚さ38μmのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製:「T100-38」)に樹脂組成物(樹脂層(B))を塗工した各サンプルについて、DVA(アイティー計測制御株式会社製:「DVA-225」)にて貯蔵弾性率を測定した。測定によって得た貯蔵弾性率の値から、下記式によって樹脂層(B)の160℃における塗膜弾性率を算出した。
DVAの条件は下記のとおりである。
温度:室温~200℃、昇温速度:10℃/min、チャック間距離:20mm、幅5mm
また、厚みはマイクロメータによる実測値を用いた。
(樹脂層(B)の160℃における塗膜弾性率)
={(“T100-38/樹脂層(B)”の160℃貯蔵弾性率)×(総厚み)
-(“T100-38”の160℃貯蔵弾性率)×(“T100-38”厚み)}
/(樹脂層(B)の厚み)
【0163】
各実施例及び比較例における積層フィルムの原料は、以下のとおりである。
【0164】
<微粒子(a1)>
スチレン630質量部、アクリル酸9質量部を混合し、単量体混合液[i]を調製した。
また、スチレン101質量部、アクリル酸2質量部、ダイアセトンアクリルアミド43質量部を混合し、単量体混合液[ii]を調製した。
一方、p-スチレンスルホン酸ナトリウム1.2質量部、炭酸水素ナトリウム1.5質量部をイオン交換水1615質量部に溶解させた助剤溶液を調製した。
攪拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置、及び、原料・助剤仕込み装置を備えた反応容器に、助剤溶液を仕込み、内温を77℃に昇温させた。
次に、反応容器に過硫酸アンモニウム4.3質量部をイオン交換水455質量部に溶解させた重合開始剤溶液を投入し、その5分後に単量体混合液[i]を2.5時間かけて逐次滴下した。
単量体混合液[i]の滴下終了後、単量体混合液[ii]を0.5時間かけて逐次滴下した。
単量体混合液[ii]の滴下終了後、1.5時間77℃での攪拌を継続した後、内温を90℃に昇温させた。その後、90℃での攪拌を3時間維持した。
内温を20℃まで冷却した後、重合反応物を不織布ガーゼ(トリート)で濾過して、反応性官能基としてケト基及びカルボキシル基を有する微粒子のエマルションを得た。このエマルションに対し、10質量%アンモニア水を添加することでpHを7.0に調製した。また、適宜イオン交換水を加え、固形分濃度を29.0質量%に調整することで反応性官能基としてケト基及びカルボキシル基を有する微粒子(a1)のエマルションを得た。
この微粒子(a1)の個数平均粒子径は250nmであった。
【0165】
[実施例1]
厚さ75μmのPMMAフィルム(三菱ケミカル株式会社製:「アクリプレン SBL902」)上に、下記硬化樹脂組成物(樹脂組成物(A))を、厚み(乾燥後)が7μmとなるようにバーコート(♯10)で塗布し、100℃で1分間加熱して樹脂層(A)を形成した。次に、樹脂層(A)上に樹脂組成物(B1)を厚み(乾燥後)が15μmになるように100℃で1分間加熱して形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの試料サンプルについて前述の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0166】
(樹脂組成物(A))
微粒子(a1)のエマルション18質量部、架橋剤(a2)として10質量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液1.4質量部、4質量%ポリビニルアルコール(「ゴーセネックス CKS-50」、三菱ケミカル株式会社製)水溶液0.1質量部、イオン交換水0.5質量部を混合することで固形分濃度20.0質量%の硬化樹脂組成物を調製した。
この硬化樹脂組成物は微粒子(a1)100質量部に対してアジピン酸ジヒドラジドを1.3質量部含み、微粒子(a1)の反応性官能基に対して架橋剤(a2)を1当量含むものである。
【0167】
(樹脂組成物(B1))
KE109E(信越化学工業株式会社製 シリコーン樹脂)
【0168】
(硬化樹脂組成物(B2))
(B2)ウレタン(メタ)アクリレート系組成物
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、7%酸素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、アクリロイルモルホリン195質量部、イソホロンジイソシアネート34質量部とネオペンチルグリコール12質量部、水酸基価62のポリエステルポリオール52質量部、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.1質量部、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.02質量部を仕込み、60℃で8時間反応させた。続いて、2-ヒドロキシエチルアクリレートを7質量部投入した後、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物(柔軟性アクリル樹脂)(B2)を得た。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系組成物(B2)の質量平均分子量は12000、60℃での粘度は2,000mPa・sであった。
【0169】
(樹脂組成物(B3))
APG400(新中村工業(株)製アクリルハードコート、n=7)
【化1】
【0170】
(樹脂組成物(B4))
AUP828(トクシキ(株)製自己修復ウレタン)
【0171】
(樹脂組成物(B5))
AUP2361(トクシキ(株)製自己修復ウレタン、AUP828の屈折率・延伸性改良品)
【0172】
[実施例2]及び[比較例1]
樹脂組成物(B)を変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得、同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0173】
[比較例2]
実施例1において、基材フィルムを三菱ケミカル(株)製PETフィルム(T100タイプ:50μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得、同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0174】
[比較例3]~[比較例4]
実施例2において、樹脂層(B)の樹脂組成物を変更した以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得、同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0175】
【表1】

PMMA:ポリメチルメタクリレート
PET:ポリエチレンテレフタレート
【0176】
<考察>
実施例1及び2では、オーバーコート層として、特定構成の樹脂層(B)を備えることで、構造発色性を維持したまま、割れの発生もなく、三次元成型加工が可能であることがわかった。図3はピラミッド型に賦型した例である。割れの無い良好な成型加工ができていることがわかる。
さらに選択する樹脂によっては得られる樹脂層(B)表面に撥水性を付与できるため、外部からの汚れ付着防止など、保護層としての役割を兼ねることもできる。
また、実施例1及び2の積層フィルムにおいては、基材フィルム上に配設した樹脂層(A)を指先でこするだけでは、塗膜が脱落しなかった。つまり、実施例の樹脂層(A)(発色層)については基材フィルムに対する高い塗膜強度が達成されていることを確認した。
一方、比較例1、3では、樹脂層(B)の柔軟性が不十分なため、積層フィルムの構成にした際、成型性が不十分であった。図4は比較例1の条件でピラミッド型に三次元成型加工をした例である。同図より、立体成型品表面に筋状の割れが多数発生していることが確認できた。
また、比較例2は基材フィルムの柔軟性に乏しいため、積層フィルムの構成にした際、成型性が不十分であった。結果として、立体成型品表面に筋状の割れが多数発生していることが確認できた。
【符号の説明】
【0177】
1 基材フィルム
a1 微粒子(a1)
10 積層フィルム
A 樹脂層(A)
B 樹脂層(B)
図1
図2
図3
図4