(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102808
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法及び室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20240724BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20240724BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240724BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20240724BHJP
C08K 5/057 20060101ALI20240724BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240724BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240724BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C08L83/06
C07F7/18 Y
C08K5/5415
C08K5/544
C08K5/057
C08K5/103
C08K3/36
C08K3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197862
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2023006514
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516272870
【氏名又は名称】韓国信越シリコーン株式会社
【氏名又は名称原語表記】SHIN-ETSU SILICONE KOREA Co.,LTD.
【住所又は居所原語表記】411, Seocho-daero, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 功
(72)【発明者】
【氏名】パク ジャリョン
(72)【発明者】
【氏名】チャ ソンウ
【テーマコード(参考)】
4H049
4J002
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP10
4H049VQ02
4H049VQ21
4H049VQ35
4H049VQ79
4H049VR21
4H049VR22
4H049VR42
4H049VR43
4H049VS02
4H049VS21
4H049VS35
4H049VS79
4H049VU28
4H049VW02
4J002CP061
4J002DE236
4J002DJ016
4J002EC079
4J002EH049
4J002EH059
4J002EX037
4J002EX078
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD149
4J002FD157
4J002FD158
4J002FD180
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】貯蔵安定性に優れ、難接着な被着体に対して温水浸漬後も良好な接着性を維持する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を安価に製造する方法、及び該組成物を提供する。
【解決手段】[I](A-1)分子鎖両末端がSiOH基で封鎖された特定粘度のオルガノポリシロキサン、(A-2)加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、(A-3)2個のアミノ基を有し、かつ芳香環を含まないシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物を室温で混合後、湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させて反応生成混合物(A)を得る工程、
[II]上記(A)、(B)硬化触媒、(C)無機充填剤、(D)特定構造の脂肪酸エステル残基を1~3個とヒドロキシル基を0~2個、合計で3個有する有機化合物、必要により(A-2)、(A-3)を配合して均一に混合する工程
を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[I]:
(A-1)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
で示される分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖された23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-2)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.2~20質量部、及び
(A-3)下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~20質量部
を室温(5℃以上40℃未満)で均一に混合した後、室温で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させて反応生成混合物(A)を得る工程、及び
[II]:
上記反応生成混合物(A)に、
上記(A-2)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部)、
上記(A-3)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部)、
(B)硬化触媒:0.001~20質量部、
(C)無機充填剤:5~300質量部、及び
(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH
2R
8 (4)
(式中、R
8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)
:0.1~5質量部
を配合して均一に混合する工程
を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【請求項2】
(A-1)下記一般式(1)
【化4】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
で示される分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖された23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-2)下記一般式(2)
【化5】
(式中、R
2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.2~20質量部、及び
(A-3)下記一般式(3)
【化6】
(式中、R
4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~20質量部
の上記の配合比率での混合物を室温(5℃以上40℃未満)で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させてなる反応生成混合物(A)、
上記(A-2)成分:0~18質量部(但し、組成物全体で(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部)、
上記(A-3)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部)、
(B)硬化触媒:0.001~20質量部、
(C)無機充填剤:5~300質量部、及び
(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH
2R
8 (4)
(式中、R
8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)
:0.1~5質量部
を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(B)成分が有機チタン化合物である請求項2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(D)成分が一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基を有する、一分子中に3個のヒドロキシル基を持つ多価アルコールの脂肪酸エステルである請求項2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
(D)成分が一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基を有する、グリセリンの脂肪酸エステルである請求項2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
(D)成分がトリアセチン、ジアセチン及びモノアセチンから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
(C)成分の無機充填剤が炭酸カルシウム及び/又は煙霧質シリカである請求項2に記載の室温硬化性ポリシロキサン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の湿気(水分)により室温(5℃以上40℃未満、特には23℃±15℃)で硬化してシリコーンゴム硬化物(シリコーンエラストマー弾性体)を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、特に密封された包装形態での貯蔵安定性に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法、及び該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室温で硬化してゴム状弾性体を生成するオルガノポリシロキサン組成物の中で、空気中の水分と接触することにより硬化反応が進行する、いわゆる1成分型(1液型)室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、2成分型組成物のように使用する直前に使用者がベース組成物(ベースポリマー、フィラー、硬化触媒等を含む混合物)と硬化剤組成物(架橋剤等を含む混合物)などを配合比率に応じて秤量して、混合したりする煩雑さがなく、配合上のミスを生じることがない上に、一般的に接着向上のためのプライマーを使用しない場合でも広範囲の被着体への接着性が優れているので、電気・電子工業などにおける弾性接着剤やコーティング材として、また建築用、土木用のシーリング材などとして広く用いられている。また、わが国で最も汎用的に使用されているオルガノポリシロキサン組成物は光学的に透明である煙霧質シリカを充填剤に使用しているため、硬化前、硬化後の外観として、乳白色半透明とすることが可能であり、ガラス回りのシール用途で好まれている。また、この乳白色半透明のオルガノポリシロキサン組成物は少量の顔料を配合することにより所望の色への着色が容易であることから、製造者にとって生産性が良い組成物であることが知られている。
【0003】
このような1成分型室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、反応機構から縮合硬化型に分類され、更に、空気中の水分と接触した際に組成物から放出される化合物によっても分類され、代表的なものに脱酢酸型、脱オキシム型、脱アミド型、脱ヒドロキシルアミン型、脱アセトン型、脱アルコール型等のオルガノポリシロキサン組成物が挙げられる。脱酢酸型では硬化反応が進行する際に酢酸が放出されるため、酢酸の強い臭気がしばしば問題になり、また金属を腐食するため用途が制限され、わが国では観賞用小型水槽用途などごく一部の用途でしか使用されていない。脱オキシム型は製造の容易さや脱酢酸型に比べて臭気が少ないこと、銅系など一部金属以外には腐食が起こらないこと、シランカップリング剤を配合することで広範な被着体への接着性を有する組成物が得られることからわが国では最も汎用的に業務用、一般消費者用として普及し、好適に使用されている。しかしながら昨今、硬化する際に発生、放出されるオキシム化合物であるメチルエチルケトオキシムの発がん性への懸念が高まり、欧州CLPではメチルエチルケトオキシムの発がん性の区分を2022年3月に区分1bに移行することが決定している。安全面に配慮して対策を講じれば使用可能ではあるが、業務用として専門従事者が使用するのではなく、日曜大工等で一般消費者が入手して気軽に使用する場合には、煩わしい注意事項の遵守は困難と考えられる。メチルエチルケトオキシムの代わりにメチルイソブチルケトオキシムを発生して硬化する脱オキシム型での代替も提案されているが、悪臭が強く、使用箇所には局所排気設備の設置等が必要である。脱アミド型、脱ヒドロキシルアミン型は架橋剤として配合されるアミドシラン類、アミノキシシラン類、脱アセトン型は架橋剤として配合されるイソプロペノキシシラン類が高価であり、特定用途向けでは良好な特性を発揮するものの汎用品として一般消費者が使用するには依然として高価であり普及していない。
【0004】
一方で、硬化時にアルコールを放出して硬化する脱アルコール型のオルガノポリシロキサン組成物は、臭気が少ないこと、銅や鉄などの金属類を腐食しないこと、シランカップリング剤を配合することで自己接着性(プライマーを使用しない場合の各種基材に対する硬化後の接着性)に優れる組成物が得られること、接着耐久性に優れるなどの特長を有し、一般消費者にとっても使用しやすい硬化タイプと言うことができる。
【0005】
しかしながら、1成分型で脱アルコール型のオルガノポリシロキサン組成物は、製造後短期間の間は前記した優れた特性を有するが、配合によっては保存中に時間の経過とともに製造直後の特性が得られなくなるなど、貯蔵安定性に欠点があった。また、使用現場で直射日光のもとで保管されたり、輸送中にコンテナ内で保管されるなどのしばしば起こり得る50℃を超える高温環境下での保管後は、比較的短期間の保管後も製造直後の特性が得られないばかりか、硬化不良を起こしてしまうなどの問題があった。
【0006】
1成分型で脱アルコール型のオルガノポリシロキサン組成物は古くから提案されており、組成物の代表例として、特公昭39-27643号公報(特許文献1)で提案されている末端水酸基封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとチタン化合物からなる組成物が挙げられる。また、特開昭55-43119号公報(特許文献2)では、末端にアルコキシシロキシ基を有するオルガノポリシロキサンとアルコキシシラン及びアルコキシチタンからなる組成物が提案されている。しかし、これらの組成物はシーリング材に良好な物理的特性を付与するために、炭酸カルシウムを配合した場合、貯蔵安定性が得られず、長期間保管した組成物を使用した際に所望の特性が得られなかったり、50℃を超える高温環境下で保管した場合は組成物が硬化しなくなってしまうなどの問題があった。更に特公平7-39547号公報(特許文献3)では、密封状態において貯蔵安定性に優れる組成物について提案されているが、ここで提案されている組成物ではアルコキシシリルアルキレン基をオルガノポリシロキサンの末端に修飾したベースポリマーの使用が必須であり、このポリマーの調製のために、工業的にコスト高となってしまうことなどの問題が生じた。本発明者らは、特許第4775600号公報(特許文献4)にて、多価アルコールの脂肪酸エステルを配合することで貯蔵安定性を向上できることを提案した。しかしながら、該組成物を難接着なフッ素樹脂を塗装したアルミニウム材(以下、フッ素樹脂塗装アルミニウムという)などの表面に使用して硬化させた場合、通常の条件での使用では接着性に問題がないものの、温水浸漬のような過酷な条件においては接着性が低下するという問題があった。
【0007】
また、脱アルコール型のオルガノポリシロキサン組成物を得るためには、ベースポリマーとしてアルコキシシリル基で予め末端封鎖されたオルガノポリシロキサンを使用する場合と末端官能基がシラノール基であるオルガノポリシロキサンを出発原料として製造工程中でアルコキシ基を有するシラン化合物で末端封鎖をする場合があるが、製造の容易さや貯蔵安定性を得るためには予めアルコキシシリル基で末端封鎖されたオルガノポリシロキサンをベースポリマーとして使用することが好ましい。しかし、アルコキシシリル基で末端封鎖されたオルガノポリシロキサンを得るための触媒が高価であったり、触媒を除去するのに長時間を要するためにコストが高くなる欠点を有している。そのため、製造工程中でシラノール基を末端封鎖する方法として、アミノ基含有シランなどの塩基性シラン化合物を末端封鎖触媒として配合することが一般的に知られており、特許第5888112号公報(特許文献5)、特許第6252466号公報(特許文献6)では、グアニジン基やフェニルメタンアミン基を有する塩基性シラン化合物を末端封鎖触媒として使用することが例示されている。しかしながら、末端封鎖用の触媒として使用する塩基性シラン化合物が特殊であることから、依然として経済的に不利になるという問題が発生する場合がある他、難接着なフッ素樹脂塗装アルミニウムの表面に対しては、これら触媒成分が接着阻害成分として働き、この点においても温水浸漬後など過酷な条件においては十分な接着性が得られない。このことから、構造接着構法など耐久接着性が求められる用途に好適に使用できる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を安価に得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭39-27643号公報
【特許文献2】特開昭55-43119号公報
【特許文献3】特公平7-39547号公報
【特許文献4】特許第4775600号公報
【特許文献5】特許第5888112号公報
【特許文献6】特許第6252466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を解決し、大気中の湿気により室温で硬化してシリコーンゴム硬化物を与える脱アルコール型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、特に密封された包装形態での貯蔵安定性に優れ、フッ素樹脂塗装アルミニウムなどの難接着な被着体に対して温水浸漬後も良好な接着性を維持する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を安価に製造可能な室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法、及び該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、
[I]:
(A-1)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
で示される分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖された23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-2)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.2~20質量部、及び
(A-3)下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~20質量部
を室温(5℃以上40℃未満)で均一に混合した後、室温で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させて反応生成混合物(A)を得る工程、及び
[II]:
上記反応生成混合物(A)に、
上記(A-2)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部)、
上記(A-3)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部)、
(B)硬化触媒:0.001~20質量部、
(C)無機充填剤:5~300質量部、及び
(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH
2R
8 (4)
(式中、R
8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)
:0.1~5質量部
を配合して均一に混合する工程
を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法により得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、密封された包装形態での貯蔵安定性に優れ、大気中の湿気により室温で硬化して、フッ素樹脂塗装アルミニウムのような難接着被着体に対して温水浸漬後にも接着性を維持するシリコーンゴム硬化物を与えることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法及び室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
[1]
[I]:
(A-1)下記一般式(1)
【化4】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
で示される分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖された23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-2)下記一般式(2)
【化5】
(式中、R
2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.2~20質量部、及び
(A-3)下記一般式(3)
【化6】
(式中、R
4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~20質量部
を室温(5℃以上40℃未満)で均一に混合した後、室温で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させて反応生成混合物(A)を得る工程、及び
[II]:
上記反応生成混合物(A)に、
上記(A-2)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部)、
上記(A-3)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部)、
(B)硬化触媒:0.001~20質量部、
(C)無機充填剤:5~300質量部、及び
(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH
2R
8 (4)
(式中、R
8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)
:0.1~5質量部
を配合して均一に混合する工程
を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
[2]
(A-1)下記一般式(1)
【化7】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
で示される分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖された23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-2)下記一般式(2)
【化8】
(式中、R
2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.2~20質量部、及び
(A-3)下記一般式(3)
【化9】
(式中、R
4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~20質量部
の上記の配合比率での混合物を室温(5℃以上40℃未満)で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させてなる反応生成混合物(A)、
上記(A-2)成分:0~18質量部(但し、組成物全体で(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部)、
上記(A-3)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部)、
(B)硬化触媒:0.001~20質量部、
(C)無機充填剤:5~300質量部、及び
(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH
2R
8 (4)
(式中、R
8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)
:0.1~5質量部
を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3]
(B)成分が有機チタン化合物である[2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4]
(D)成分が一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基を有する、一分子中に3個のヒドロキシル基を持つ多価アルコールの脂肪酸エステルである[2]又は[3]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[5]
(D)成分が一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基を有する、グリセリンの脂肪酸エステルである[2]~[4]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[6]
(D)成分がトリアセチン、ジアセチン及びモノアセチンから選ばれる少なくとも1種である[2]~[5]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[7]
(C)成分の無機充填剤が炭酸カルシウム及び/又は煙霧質シリカである[2]~[6]のいずれかに記載の室温硬化性ポリシロキサン組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法によれば、密封された包装形態での貯蔵安定性に優れ、硬化後はフッ素樹脂塗装アルミニウムのような難接着な被着体に対して温水浸漬のような過酷な条件においても良好な接着性を維持するシリコーンゴム硬化物を与える脱アルコール型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を安価かつ簡便に提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、
[I]:
(A-1)下記一般式(1)
【化10】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
で示される分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖された23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-2)下記一般式(2)
【化11】
(式中、R
2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.2~20質量部、及び
(A-3)下記一般式(3)
【化12】
(式中、R
4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~20質量部
を室温(5℃以上40℃未満)で均一に混合した後、室温で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させて反応生成混合物(A)を得る工程、及び
[II]:
上記反応生成混合物(A)に、
上記(A-2)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部)、
上記(A-3)成分:0~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部)、
(B)硬化触媒:0.001~20質量部、
(C)無機充填剤:5~300質量部、及び
(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH
2R
8 (4)
(式中、R
8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)
:0.1~5質量部
を配合して均一に混合する工程
を含んでなるものである。
【0014】
本発明の製造方法により得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)上記(A-1)~(A-3)成分の上記の配合比率での混合物を室温で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させてなる反応生成混合物、
(B)硬化触媒、
(C)無機充填剤
(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH2R8 (4)
(式中、R8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)
及び
必要により更に上記(A-2)成分、(A-3)成分の特定量を含むものである。
【0015】
工程[I]について説明する。
工程[I]は、本発明にかかる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主成分となる成分(A)を調製する工程であり、少なくとも下記の(A-1)成分、(A-2)成分、及び(A-3)成分を後述する配合量で室温(5℃以上40℃未満)で所定時間均一に混合した後、室温で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させて反応生成混合物(A)を得るものである。
【0016】
(A-1)成分は、下記一般式(1)で示される分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖された23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンである。
【化13】
(式中、R
1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
【0017】
式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子などで置換された基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中で、メチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0018】
また、mは10以上の整数であり、オルガノポリシロキサンの23℃における粘度が20~1,000,000mPa・s、好ましくは500~100,000mPa・sの範囲となる整数であり、通常、10~3,000、好ましくは20~2,000、より好ましくは30~1,200程度の整数である。mが10未満では本発明にかかる組成物の粘度が低くなりすぎて作業性を損なうだけでなく硬化後の弾性追従性も得られない。
【0019】
(A-1)成分は、23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであり、好ましくは500~100,000mPa・sである。粘度が20mPa・s未満では本発明にかかる組成物の作業性を損なうだけでなく硬化後の弾性追従性も得られず、1,000,000mPa・sを超えると粘度が高すぎて組成物の製造自体が困難になるだけでなく作業性が著しく悪化してしまう。なお、粘度は、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定することができる(以下、同じ)。
(A-1)成分は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
なお、(A-1)成分は、その全部を工程[I]にて配合することが好ましい。
【0020】
(A-2)成分は、下記一般式(2)で示されるアルコキシシラン等の加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物であり、(A-1)成分の分子鎖末端シラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)と加水分解・縮合反応して分子鎖両末端及び/又は片末端のシラノール基を加水分解性シリル基で封鎖するための(A-1)成分の末端封鎖剤、組成物の架橋剤(硬化剤)、及び脱水剤として作用するものである。
【化14】
(式中、R
2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
【0021】
式中、R2は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子などで置換された基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましく、より好ましくはメチル基、ビニル基、フェニル基である。
【0022】
R3は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、上記R2の例示においてハロゲン置換一価炭化水素基以外と同様のものが例示され、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。なお、R3は同一であっても異なっていてもよく、またR2とR3が同一の基であっても異なっていてもよい。
また、aは3又は4である。
【0023】
(A-2)成分の加水分解性オルガノシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ノルマルプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ノルマルブチルトリメトキシシラン、ノルマルヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等の(オルガノ)アルコキシシラン化合物及びそれらの部分加水分解縮合物が挙げられる。なお、本発明において、部分加水分解縮合物とは上記加水分解性オルガノシラン化合物を部分的に加水分解・縮合して生成する、分子中にアルコキシ基等の残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する(以下、同様)。
【0024】
本発明において、(A-2)成分の加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。中でも工業的に比較的安価に得られるメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びその部分加水分解縮合物が好ましく、特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びその部分加水分解縮合物であることが好ましい。
【0025】
(A-2)成分の配合量は、(A-1)成分100質量部に対して、0.2~20質量部であり、好ましくは0.5~10質量部である。配合量が少なすぎると末端封鎖率が悪く、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造することができなくなる。配合量が多すぎると室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化速度が遅くなり、硬化後の機械的特性が低下するばかりか、経済的にも不利となる。なお、(A-2)成分は(A-1)成分の末端封鎖剤であると共に、なおかつ組成物の架橋剤(硬化剤)としても作用するものであることから、本発明の製造方法において、(A-2)成分は、その全部(100質量%)を工程[I]において配合してもよいが、(A-2)成分の一部(例えば90~10質量%、特には75~25質量%)を工程[I]において配合し、(A-2)成分の残部(例えば10~90質量%、特には25~75質量%)を工程[II]において配合してもよい。
(A-2)成分は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(A-3)成分は、下記一般式(3)で示される、一分子中に2個のアミノ基(1個の1級アミノ基及び1個の2級アミノ基(イミノ基))を有し、かつ分子中に芳香環を含まない、アミノ官能性シランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物であり、(A-1)成分の分子鎖末端シラノール基と(A-2)成分の加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物との加水分解・縮合反応により(A-1)成分の分子鎖両末端及び/又は片末端を加水分解性シリル基で末端封鎖する際の末端封鎖反応を進行させる末端封鎖触媒(縮合触媒)、及び本発明にかかる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に接着性を付与する接着付与剤として重要な効果を発揮するものである。
【化15】
(式中、R
4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、bは2又は3である。)
【0027】
式中、R4は炭素数2~10の脂肪族二価炭化水素基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基が挙げられ、R5は炭素数1~10の脂肪族二価炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基等が挙げられる。
また、式中、R6及びR7はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、上記R2と同様の基が挙げられる。
また、bは2又は3である。
【0028】
(A-3)成分のシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物は、分子構造中に芳香環や、好ましくは共役系脂肪族不飽和二重結合は含まない。これらがある化合物及び/又はその加水分解縮合物を使用した場合には、硬化後のシリコーンゴム硬化物の紫外線照射後の外観に黄変色が生じるため、屋外のシーリング用途や殺菌灯の光が当たる室内シーリング用途で使用する際に好ましくない。
【0029】
(A-3)成分の例としては、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(3-アミノプロピルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(8-アミノオクチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、[(2-アミノエチルアミノ)メチル]トリメトキシシラン、[(2-アミノエチルアミノ)メチル]メチルジメトキシシランやその部分加水分解縮合物などが挙げられ、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物が安価で効果が高く好ましい。
【0030】
(A-3)成分の配合量は、(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部であり、好ましくは0.2~10質量部である。0.1質量部未満では十分な接着性が得られず、20質量部を超えると価格的に不利となるばかりか耐温水接着性の低下を招く場合がある。なお、(A-3)成分は工程[I]における(A-1)成分の末端シラノール基の封鎖反応の触媒及び/又は封鎖剤としても作用するだけでなく、本発明の組成物から得られる硬化物(シリコーンゴム硬化物)に接着性を付与する成分(接着性付与剤)としても作用するものであることから、本発明の製造方法において、(A-3)成分は、その全部(100質量%)を工程[I]において配合してもよいが、(A-3)成分の一部(例えば90~10質量%、特には75~25質量%)を工程[I]において配合し、(A-3)成分の残部(例えば10~90質量%、特には25~75質量%)を工程[II]において配合してもよい。
(A-3)成分は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(A)成分の反応生成混合物は、前記(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分を所定の割合で、室温(5℃以上40℃未満)で均一に混合した後、室温(5℃以上40℃未満)で湿気遮断環境下に6時間以上静置反応させることによって得られる。
【0032】
(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分の混合操作は、室温(5℃以上40℃未満、特には23℃±15℃)下であれば、開放系、密閉系の如何なる方法で実施してもよいが、混合時間が長すぎると成分の加水分解反応、縮合反応が進行するため、密閉系で混合することが好ましい。(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分の混合操作時間は、例えば、5~60分間、特に10~30分間程度が好ましい。
【0033】
次いで、(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分の混合物を室温(5℃以上40℃未満、特には23℃±15℃)で湿気遮断環境下に6時間以上、好ましくは6時間~90日間、より好ましくは6時間~14日間静置反応させる。静置反応させる時間が6時間未満では反応が十分進行せず、後述する工程[II]において、(B)成分添加後に増粘し作業性を損なったり、増粘が進んでゲル化して室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造自体ができなくなる。40℃以上の温度にするためには熱源による加熱が必要となり経済性を損なうばかりか、(A-2)成分、(A-3)成分が揮発し、混合装置のヘッドスペース内壁表面で固化するなどの不具合を生じるため、40℃未満の室温にて反応を行う。
また、静置反応は、前述した通り湿気遮断環境下で行うものであり、密閉もしくは乾燥空気又は不活性ガスの通気もしくは充満した状態で実施することが好ましく、例えば、ドラムやコンテナ、タンク内で反応させることが挙げられる。
【0034】
室温(5℃以上40℃未満)で均一に混合した後、室温(5℃以上40℃未満)で6時間以上静置反応させた反応生成混合物(A)中には、(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分がそれぞれ未反応のまま残存した各原料成分と、(A-1)成分と(A-2)成分及び/又は(A-3)成分が反応し(A-1)成分の両末端のヒドロキシル基がアルコキシシリル基によって両末端とも封鎖された両末端がアルコキシシリル基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、片末端のみがアルコキシシリル基で封鎖され、もう片末端のヒドロキシル基がそのまま残っているオルガノポリシロキサン、及び末端のアルコキシシリル基のアルコキシ基の一部が加水分解してシラノールとなっているオルガノポリシロキサン、そのシラノールに(A-2)成分が反応したオルガノポリシロキサン、更に(A-3)成分のアルコキシシリル基が(A-1)成分のヒドロキシル基と反応して生成した構造のオルガノポリシロキサンなどの多数の構造のオルガノポリシロキサンに加え、(A-2)成分及び(A-3)成分が部分的に加水分解した成分、更にそれぞれ及び/又はお互いが縮合反応を起こし部分加水分解縮合物を形成した成分など、極めて多数の成分からなる混合物となるため、分析による反応生成混合物(A)の組成の同定は実質的に不可能である。
【0035】
室温(5℃以上40℃未満)で6時間以上反応させた後は、密閉容器で密封保管あるいは湿気を含まない乾燥空気あるいは不活性ガスを通気した状態で保管する限りには反応生成混合物が顕著な増粘、ゲル化を発生するまでの期間使用に耐えるが、6時間以上反応させた後は1年以内に使用することが好ましく、より好ましくは90日以内、更に好ましくは14日以内に使用することが本発明にかかる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の特性を安定的に得るためによい。
【0036】
次に、工程[II]について説明する。
工程[II]は、上記工程[I]で得られた反応生成混合物(A)と、(B)硬化触媒と、(C)無機充填剤と、(D)1分子中に、下記一般式(4)
-OC(=O)CH2R8 (4)
(式中、R8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)と、
必要に応じて(A-2)一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物や、(A-3)一般式(3)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物を配合して均一に混合する工程を含んでなるものである。
【0037】
(A-2)一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、上述したように工程[I]においてその全部(100質量%)を配合してもよいが、組成物の架橋剤(硬化剤)としても作用するものであることから、工程[II]においても配合して、組成物の架橋剤(硬化剤)として使用することができる。
なお、工程[I]と工程[II]に用いる(A-2)成分は、同一のものであっても異種のものであってもよい。
【0038】
(A-2)成分を工程[II]においても配合する場合、(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部中、(A-2)成分の一部(例えば90~10質量%、特には75~25質量%)を工程[I]において配合し、(A-2)成分の残部(例えば10~90質量%、特には25~75質量%)を工程[II]において配合することが好ましい。
具体的に、工程[II]に(A-2)成分を配合する場合、上記(A-1)成分100質量部に対して0.02~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.2~20質量部である。)、特に0.05~9質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.2~12質量部である。)、更には0.125~7.5質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.5~10質量部である。)とすることが好ましい。工程[II]における(A-2)成分の配合量が少なすぎると得られる組成物の長期保管時の安定性を損なったり、製造中に増粘して作業性を損なったり、ゲル化する場合があり、多すぎると得られる組成物の深部硬化性が遅くなったり硬化後の伸びが低下したり接着性能が低下する場合がある。
【0039】
(A-3)一般式(3)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物は、上述したように工程[I]においてその全部(100質量%)を配合してもよいが、工程[I]において(A-1)成分の末端シラノール基の封鎖反応の触媒及び封鎖剤となるだけでなく本発明の組成物から得られる硬化物(シリコーンゴム硬化物)に接着性を付与する成分としても作用するものであることから、工程[II]においても配合して、接着付与成分として使用することができる。
なお、工程[I]と工程[II]に用いる(A-3)成分は、同一のものであっても異種のものであってもよい。
【0040】
(A-3)成分を工程[II]においても配合する場合、(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部中、(A-3)成分の一部(例えば90~10質量%、特には75~25質量%)を工程[I]において配合し、(A-3)成分の残部(例えば10~90質量%、特には25~75質量%)を工程[II]において配合することが好ましい。
具体的に、工程[II]に(A-3)成分を配合する場合、上記(A-1)成分100質量部に対して0.01~18質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~20質量部である。)、特に0.02~9質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.1~12質量部である。)、更には0.05~7.5質量部(但し、工程[I]と工程[II]の合計で(A-1)成分100質量部に対して0.2~10質量部である。)とすることが好ましい。工程[II]における(A-3)成分の配合量が少なすぎると得られる組成物の長期保管時の安定性を損なったり、製造中に増粘して作業性を損なったり、ゲル化する場合があり、多すぎると得られる組成物の深部硬化性が遅くなったり硬化後の伸びが低下したり接着性能が低下する場合がある。
【0041】
(B)成分の硬化触媒としては、錫、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、鉄、アンチモン、ビスマス、マンガン等の金属の有機カルボン酸塩、アルコキサイド、キレート化合物などが例示され、より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートエステル、ジメチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジネオデカノエート、スタナスオクトエート等の錫化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウムなどの有機アルミニウム;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトナート、トリブトキシジルコニウムステアレートなどの有機ジルコニウム化合物;テトラノルマルブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、テトライソプロポキシチタン、テトラターシャリーブトキシチタンなどのアルコキシチタン化合物;ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジブトキシビス(メチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物、ジブチルアミン、ラウリルアミン、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のアミン化合物及びその塩等が例示される。これらの化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明にかかる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性がよく、接着性に優れることから、アルコキシチタン化合物、チタンキレート化合物等の有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウムであることが好ましく、中でも、アルコキシチタン化合物、チタンキレート化合物等の有機チタン化合物であることがより好ましい。
【0042】
(B)成分の添加量は、(A-1)成分100質量部に対して、0.001~20質量部であり、0.1~15質量部であることが好ましい。(B)成分の添加量が少なすぎると硬化速度が遅くなったり、硬化不良を起こすことがあり、多すぎると硬化速度が速くなりすぎて作業性を損なったり、接着性能が低下したり、長期保管時の安定性を損なう他、経済的にも不利益を生じる。
(B)成分の硬化触媒は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(C)成分は無機充填剤であり、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、タルク、ガラスバルーン、結晶性シリカ微粉末、非晶性シリカ微粉末、シリカヒドロゲル、シリカエアロゲル、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、フェライト、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、マイカ、クレイ、ベントナイト等が挙げられる。中でも、炭酸カルシウム及び/又は煙霧質シリカを含有するものであることがより好ましい。
【0044】
炭酸カルシウムは、脂肪酸、樹脂酸(ロジン酸等)、又はそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、脂肪酸エステル、第四級アンモニウム塩等の処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであるか、表面無処理の炭酸カルシウムであるか自由に選択される。ここで使用される樹脂酸としては、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、デキストロピマール酸、レボピマール酸、パルストリン酸、サンダラコピマール酸等が例示される。脂肪酸としては、特に制限されないが、炭素数12以上のものが好ましく、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等を用いることができる。
また、上記処理剤の処理量は、炭酸カルシウムに対して3.0質量%以下、特に0.5~2.5質量%である。処理量が3.0質量%より多いと組成物の貯蔵安定性や接着性が損なわれる。
【0045】
上記処理剤で処理される炭酸カルシウムは、平均一次粒径が0.1μm以下、特に0.03~0.1μmのコロイダル炭酸カルシウム、0.1μmより大きい重質炭酸カルシウムを単独又は併用して使用することができる。
なお、コロイダル炭酸カルシウムの粒径は電子顕微鏡法により測定した値であり、重質炭酸カルシウムの粒径は空気透過法により測定し、算出された比表面積からの計算値である。
【0046】
煙霧質シリカは、乾式法でクロロシラン化合物を原料として製造されるもので、BET法比表面積が50m2/g以上のものであることが好ましく、より好ましくは80~400m2/gのものである。煙霧質シリカは、メチルトリクロロシラン、ジメチルクロロシラン等のクロロシラン化合物、ヘキサメチルシラザン等のシラザン化合物、あるいはオクタメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面処理されているものが好ましいが、経済性を優先し、表面処理されていない煙霧質シリカをそのまま用いてもよい。
【0047】
(C)成分の配合量は、(A-1)成分100質量部に対して5~300質量部であり、好ましくは10~200質量部である。(C)成分の配合量が少なすぎると得られる組成物のチクソ性が低下し必要な非流動性が得られないことから作業性が低下し、多すぎると粘度が高くなりすぎ作業ができなくなる。
(C)成分の無機充填剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0048】
(D)成分は、1分子中に、下記一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物(αは1~3の整数で、βは0、1又は2であり、かつα+β=3を満たす。)であり、本発明にかかる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の貯蔵安定性を向上させる効果があり、密封容器にて長期間保管された組成物の硬化物に良好な機械的特性を付与する働きをするものである。
-OC(=O)CH2R8 (4)
(式中、R8は水素原子又は一価炭化水素基である。)
【0049】
上記一般式(4)において、R8は水素原子、又は一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~18の一価炭化水素基であり、該一価炭化水素基は、飽和一価炭化水素基(アルキル基)でも不飽和一価炭化水素基(例えば、アルケニル基等)でもよく、また、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよい。R8の具体例としては、水素原子や、メチル基、エチル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基などの一価炭化水素基が挙げられるが、少ない添加量で十分な効果を得るためにはできるだけ分子量の小さな基が好ましく、中でも水素原子であることがより好ましい。
【0050】
(D)成分において、脂肪酸エステル残基の個数であるαは1以上3以下、好ましくは3である。ヒドロキシル基の個数であるβは0、1又は2、好ましくは0である。脂肪酸エステル残基とヒドロキシル基の合計であるα+βは3である。
【0051】
(D)成分は、上記一般式(4)において、R8と-OC(=O)-基の間に必ず-CH2-基が存在するものである。即ち、上記一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基は炭素数2以上のカルボン酸のエステル残基(酢酸以上の炭素原子数を有するカルボン酸のエステル残基)である必要があり、かつ、カルボニル基C(=O)に隣接するα-炭素が1級の炭素原子である必要がある。(D)成分として、上記一般式(4)における-CH2-基の水素原子が他の有機基に置換されたエステル化合物(例えばグリセロールトリス(2-エチルヘキサノエート)、グリセロールトリス(ネオデカノエート)などの、カルボニル基C(=O)に隣接するα-炭素が分岐構造の2級炭素原子や3級炭素原子であるエステル化合物)を使用した場合は、本発明にかかる組成物に十分な貯蔵安定性を付与することができない。
【0052】
また、(D)成分の一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物に代えて、α+β<3である化合物、例えば、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ラウリル、ベヘニン酸ベヘニル、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸リナリルなどの、α+β<3である脂肪酸エステルを使用した場合は、本発明にかかる組成物に十分な貯蔵安定性を付与することはできない。更に、(D)成分の一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基をα個とヒドロキシル基をβ個有する有機化合物に代えて、α+β≧3であり、かつα=0の化合物、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、セルロースなどを使用した場合は、本発明にかかる組成物に十分な接着性を与えることができないばかりか、組成物の粘度が著しく上昇するなどの悪影響がでるため、使用できない。
【0053】
(D)成分は、一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基を1~3個とヒドロキシル基を0、1又は2個有し、該脂肪酸エステル残基とヒドロキシル基を合計で3個有する有機化合物(炭化水素化合物)である限りは、特に制限を受けない。
(D)成分としては、上記一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基を有する、1分子中に3個のヒドロキシル基を持つ多価アルコールの脂肪酸エステルが好適に用いられ、より好ましくは上記一般式(4)で示される脂肪酸エステル残基を有する、グリセリンの脂肪酸エステルが用いられる。
【0054】
(D)成分の具体例としては、トリアセチン、ジアセチン、モノアセチン、トリブチリン、トリカプリリン、トリステアリン、グリセロールジアセテートラウレート、トリメチロールプロパントリステアレート、トリメチロールプロパントリアセテートなどが挙げられるが、少ない添加量で大きな効果が得られることからトリアセチン、ジアセチン、モノアセチンが好ましく、特にトリアセチンがより好ましい。
【0055】
(D)成分の配合量は、(A-1)成分100質量部に対して、0.1~5質量部であり、好ましくは0.5~2.5質量部である。(D)成分の配合量が上記範囲の下限未満であると、所望の効果が得られないことがあり、一方、上記範囲の上限を超えると、組成物の接着性が低下する。
(D)成分は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0056】
(D)成分は、本発明の製造方法において、工程[II]で配合されるものであるが、工程[I]においても配合することができる。(D)成分を工程[I]においても配合する場合、工程[I]と工程[II]の配合比率は、1:9~9:1とすることが好ましい。
【0057】
また、その他の添加剤としては、硬化後のシリコーンゴム硬化物を低モジュラスにするための成分である、トリメチルシラノール、ジフェニルメチルシラノールなどのモノシラノール類、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類、片末端がケイ素原子に結合した水酸基でもう一方の末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、可塑剤、希釈剤としての両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、イソパラフィン等、難燃剤としての白金化合物、炭酸亜鉛粉末、必要に応じてチクソ性向上剤としてのポリエーテル、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、ベンガラ及び酸化セリウム等の耐熱性向上剤、耐寒性向上剤、防錆剤、防かび剤、抗菌剤等が挙げられ、これらの添加剤は、本発明の目的を損なわない範囲で添加できる。また、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加され得る。
【0058】
その他の成分は、本発明の製造方法において、工程[I]及び/又は工程[II]のいずれにおいても配合することができるが、工程[II]において配合することが好ましい。
【0059】
本発明にかかる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、得られるシリコーンゴム硬化物の紫外線照射後の外観に黄変色が生じるため、芳香環を含むシランカップリング剤を含まないことが好ましい。
【0060】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法において、工程[II]としては、上述した(A)~(D)成分、及び必要により(A-2)成分、(A-3)成分、その他の成分を乾燥雰囲気下及び/又は減圧脱気下に常法に従って配合し、均一に混合することにより、いわゆる1成分型として製造することができる。工程[II]における混合温度は、室温(5℃以上40℃未満、特には23℃±15℃)でよく、また混合時間としては組成物が均一に混合される時間であれば特に限定されず、短いほど合理的であるが、例えば1秒間~60分間、特に3秒間~30分間程度であることが好ましい。
【0061】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法において、最良の実施形態としては(A)成分の調製(工程[I])を原料タンク内で実施し、(A)~(D)成分、及び必要により(A-2)成分、(A-3)成分、その他の成分の添加、混合(工程[II])をインラインのプラント内で外気に接触させることなく半連続もしくは連続的に製造できる装置を用いることが最も好ましい。
【0062】
上記工程[I]、工程[II]により得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、密封包装して保存することが好ましい。
【0063】
本発明の製造方法により得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、通常、大気雰囲気下に放置することにより、大気中の水分の存在によって硬化する。
【0064】
本発明の製造方法により得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、種々の用途に使用し得るが、特にシーリング材や接着剤の用途に有効である。
【実施例0065】
以下、本発明の実施例と比較例を説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の粘度は23℃における回転粘度計による測定値である。また、本発明にかかる組成物は全て株式会社ダルトン製「混合攪拌機(型式:5DMV-01-r)」を用いて調製した。室温は23℃を意味する。
【0066】
[実施例1]
分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度50,000mPa・s、式(1)においてmは約860である。)100質量部、メチルトリメトキシシラン7質量部、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.2質量部を23℃の室温下、常圧で10分間均一に混合して混合物を調製したのち、混合を停止し、該混合物を23℃密閉下で18時間静置して反応させ、反応生成混合物1を得た。反応生成混合物1を100質量部と、脂肪酸処理されたコロイダル炭酸カルシウム「白艶華CC-R(白石工業株式会社製)」100質量部、重質炭酸カルシウム「OMYACARB-5-CN」(OMYA Korea社製)10質量部を均一に混合した後、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度100mPa・s)10質量部、トリアセチン1質量部、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン3質量部を加え、23℃減圧下で気泡を取除きながら30分間かけて均一になるまで混合して組成物1を調製した。
【0067】
[実施例2]
実施例1において、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.2質量部のかわりに3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン0.2質量部を用いて反応生成混合物2を得て、反応生成混合物1のかわりに反応生成混合物2を用いた以外は実施例1と同様にして組成物2を調製した。
【0068】
[実施例3]
実施例1において、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.2質量部のかわりに3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン0.3質量部を用いて反応生成混合物3を得て、反応生成混合物1のかわりに反応生成混合物3を用いた以外は実施例1と同様にして組成物3を調製した。
【0069】
[実施例4]
分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度20,000mPa・s、式(1)においてmは約650である。)100質量部、メチルトリメトキシシラン3質量部、ビニルトリメトキシシラン1質量部、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.2質量部を23℃の室温下、常圧で10分間均一に混合して混合物を調製したのち、混合を停止し、該混合物を23℃密閉下で10日間静置して反応させ、反応生成混合物4を得た。反応生成混合物4を100質量部と、脂肪酸処理されたコロイダル炭酸カルシウム「白艶華CC-R(白石工業株式会社製)」100質量部、重質炭酸カルシウム「OMYACARB-5-CN」(OMYA Korea社製)10質量部、BET比表面積が150m2/gの表面未処理の煙霧質シリカ(OCI社製「Konasil-150」)0.5質量部を均一に混合した後、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度100mPa・s)10質量部、メチルトリメトキシシラン3質量部、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.1質量部、トリアセチン1質量部、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン3質量部を加え、23℃減圧下で気泡を取除きながら30分間かけて均一になるまで混合して組成物4を調製した。
【0070】
[実施例5]
実施例1において、反応生成混合物を得るための混合後の静置反応時間を6時間に変更して反応生成混合物5を得て、反応生成混合物1のかわりに反応生成混合物5を用いた以外は実施例1と同様にして組成物5を調製した。
【0071】
[比較例1]
実施例1において、反応生成混合物を得るための混合後の静置反応時間を1時間に変更して反応生成混合物6を得て、反応生成混合物1のかわりに反応生成混合物6を用いた以外は実施例1と同様にして組成物6を調製した。
【0072】
[比較例2]
実施例1において、反応生成混合物を得るための混合後の静置反応時間を4時間に変更して反応生成混合物7を得て、反応生成混合物1のかわりに反応生成混合物7を用いた以外は実施例1と同様にして組成物7を調製した。
【0073】
[比較例3]
実施例1において、トリアセチンを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして組成物8を調製した。
【0074】
[比較例4]
実施例1において、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.2質量部のかわりに3-アミノプロピルトリエトキシシラン0.4質量部を用いて反応生成混合物9を得て、反応生成混合物1のかわりに反応生成混合物9を用いた以外は実施例1と同様にして組成物9を調製した。
【0075】
[比較例5]
分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度50,000mPa・s、式(1)においてmは約860である。)100質量部と、脂肪酸処理されたコロイダル炭酸カルシウム「白艶華CC-R(白石工業株式会社製)」100質量部、重質炭酸カルシウム「OMYACARB-5-CN」(OMYA Korea社製)10質量部を均一に混合した後、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度100mPa・s)10質量部、メチルトリメトキシシラン7質量部、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.2質量部、トリアセチン1質量部、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン3質量部を加え、23℃減圧下で気泡を取除きながら30分間かけて均一になるまで混合して組成物10を調製した。
【0076】
上記実施例1~5、比較例1~5で得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物について下記に示す性能を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0077】
[物理的特性]
上記実施例、比較例で得られた各組成物を用いて、調製した組成物をポリエチレン製の枠に押出し、温度23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置して硬化させ、厚さ2mmのシートを作製した。このシートの物理的特性(硬さ、引張強さ)をJIS K 6249に準拠して測定した。
【0078】
[フッ素樹脂塗装アルミニウムへの接着性]
調製した組成物について、日本建築学会発行の「外壁接合部の水密設計および施工に関する技術指針・同解説」付録に掲載された建築用シールの性能評価試験方法(案)の「シーリング材と金属外装材との接着性評価試験」に養生条件以外は準拠して接着性を評価した。被着体には一般的に接着させることが難しいとされている高温焼付型フッ素樹脂塗料に分類される「YJ2443(KCC社製)」を塗装したアルミニウム材(以下、フッ素樹脂塗装アルミニウムと記述する)を使用した。具体的には以下の通りである。
・試験体:50mm角、5mm厚の被着体の片面上に幅10mm×厚さ5mm×長さ50mmのビード状のシーリング材になるように組成物を施工して(即ち、ビード状に組成物を塗布した後、養生して、又は養生の後に50±2℃の温水に7日間浸漬して)作製した。
・養生条件:温度23±2℃、相対湿度50±10%にて7日間養生した。
・接着性試験方法:試験体端部側のビード状のシーリング材端部を指でつまんでビード方向であって、かつ被着体から剥離させる方向に180°の角度で折り曲げ、そのまま押さえた状態で、180°折り曲げ部分のシーリング材と被着体の間にカッターナイフにより約45°の角度で斜めに切込みを入れ、このときの、シーリング材の剥離の有無、剥離した場合の剥離部分の破壊状況を確認し記録した。剥離しない場合は、この操作を3回まで繰り返した。3回の操作で剥離しない場合は、更にビード状のシーリング材端部を同様に180°の方向に引張って剥離させ、剥離部分の破壊状態を確認し記録した。
評価は養生後の試験体と養生後に50±2℃の温水に7日間浸漬した後の試験体について実施した。養生後、温水浸漬後それぞれの試験体の接着性試験の結果、剥離部分が凝集破壊であって接着性が良好と判断された場合は○、剥離部分の一部もしくは全体が界面剥離して接着性が不良であった場合には×とそれぞれ判定した。なお、プライマーは使用しなかった。
【0079】
[貯蔵安定性]
調製した組成物をポリエチレン製のシーリング材用の容量330mlのポリカートリッジに充填し、ポリエチレン製の内栓をして密封した。その後、カートリッジを70℃の恒温槽に入れ、7日間保存して取り出し後、24時間、23℃、相対湿度50%にて静置したカートリッジ内の組成物を用いて、上記物理的特性試験と同様の方法で硬さ、引張強さを測定した。また、上記フッ素樹脂塗装アルミニウムへの接着性についても試験した。なお、組成物をポリエチレン製の枠に押出し、温度23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置して硬化させ、厚さ2mmのシートを作製した際にゴム状弾性体(シリコーンゴム硬化物)が形成されず硬さが測定できなかった場合を硬化不良とした。
硬さについては、保存前の硬さから±10ポイント未満の硬さが得られた場合を合格とし、保存前の硬さから±10ポイント以上の差が生じた場合は不合格とした。引張強さについては、保存前の引張強さの80%以上の引張強さが得られた場合を合格とし、80%未満の場合を不合格とした。フッ素樹脂塗装アルミニウムへの接着性については上記[フッ素樹脂塗装アルミニウムへの接着性]と同様に接着性試験を行い、その接着性評価が良好な場合を○、不良の場合を×と判定した。
【0080】