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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103039
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20240725BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240725BHJP
   B23K 26/38 20140101ALN20240725BHJP
【FI】
B23Q17/00 E
B23Q17/00 A
B24B49/10
H01L21/78 N
H01L21/78 P
H01L21/304 622L
H01L21/304 622Q
B23K26/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007168
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 良樹
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C029FF01
3C034AA20
3C034CA19
3C034CA30
3C034CB13
3C034DD10
3C034DD20
4E168AD07
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB23
4E168FC01
4E168HA01
4E168JA13
5F057AA20
5F057DA01
5F057DA11
5F057FA13
5F057FA36
5F057FA42
5F057FA48
5F057GA02
5F057GA04
5F063AA28
5F063DD25
5F063DE01
5F063DE11
5F063DE23
5F063EE21
5F063FF04
5F063FF28
5F063FF35
5F063FF37
5F063FF51
5F063FF57
(57)【要約】
【課題】生産インフラの作動状況を示す値に対して設定された許容値が厳しすぎてエラーの報知が頻発する場合に、該許容値を規定する閾値を容易に適切な値に調整することができる加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物Wを保持する保持手段20と、保持手段20に保持された被加工物Wに加工を施す加工手段8と、保持手段20と加工手段8とを相対的に加工送りする送り手段と、生産インフラ30と、制御手段100と、表示手段16と、を含み構成された加工装置1であって、制御手段100は、生産インフラ30の作動状況を監視する生産インフラ監視部110と、生産インフラ30の作動状況の許容値を規定する閾値を設定する閾値設定部120と、生産インフラ監視部110が生産インフラ30の作動状況が該許容値を逸脱した際に報知する報知部130と、を備え、表示手段16は、生産インフラ30の作動状況を表示すると共に該許容値を逸脱した生産インフラ30を明示し、閾値が調整可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該保持手段と該加工手段とを相対的に加工送りする送り手段と、生産インフラと、制御手段と、表示手段と、を含み構成された加工装置であって、
該制御手段は、該生産インフラの作動状況を監視する生産インフラ監視部と、該生産インフラの作動状況の許容値を規定する閾値を設定する閾値設定部と、該生産インフラ監視部が該生産インフラの作動状況が該許容値を逸脱した際に報知する報知部と、を備え、
該表示手段は、該生産インフラの作動状況を表示すると共に該許容値を逸脱した生産インフラを明示し、該閾値が調整可能に構成された加工装置。
【請求項2】
該報知部は、該表示手段において、許容値を逸脱した生産インフラに関する表示形態を変化させて報知する請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該表示手段に閾値変更を許可するボタンを表示し、該許可ボタンにより閾値変更が許可された場合に、該生産インフラの閾値が調整可能になる請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
該生産インフラの作動状況は、クリーンエア圧力、純水圧力、バキューム圧力、純水温度、のうち少なくともいずれかを含む請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産インフラの作動状況を監視する生産インフラ監視部を備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、複数のウエーハを収容したカセットを載置するカセットテーブルと、該カセットからウエーハを搬出し仮置きテーブルに位置付ける搬出手段と、該仮置きテーブルから該チャックテーブルまでウエーハを搬送する第1搬送手段と、切削済みのウエーハを該チャックテーブルから洗浄手段まで搬送する第2搬送手段と、該洗浄済みのウエーハを該第1搬送手段によって該洗浄手段から該仮置きテーブルまで搬送し、該搬出手段によって該カセット内に収容するように構成されている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、レーザー加工装置は、上記したダイシング装置における切削手段に替えてレーザー光線照射手段が配設されている点を除き、該ダイシング装置と略同様に構成されている(例えば特許文献2を参照)。
【0005】
上記したダイシング装置、レーザー加工装置を含む加工装置には、切削水や洗浄水として使用される純水を供給するための純水インフラ、チャックテーブル、搬送手段、洗浄手段を構成するスピンナーテーブル、ミスト等を含む汚染空気を外部に排気する排気ダクト等にバキューム圧力(陰圧)を生成するための陰圧インフラ、ウエーハの乾燥、チャックテーブルに対して清浄なクリーンエア圧力を供給するための高圧エアインフラ等を含む生産インフラが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-199451号公報
【特許文献2】特開2004-322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した各生産インフラが接続された加工装置の制御手段は、各生産インフラの作動状況を各種の検出手段によって監視する。該制御手段には、各生産インフラが作動する際に許容される許容値が設定されており、該加工装置による加工が実施されている最中に該生産インフラの作動状況が該許容値から逸脱している場合には、該制御手段によってエラーを報知することとしている。
【0008】
しかし、加工装置には多数の生産インフラが接続されており、被加工物の種類や、加工条件に応じて適切な許容値が変化するため、該許容値を規定する閾値が厳しめに設定されている場合は、正常に加工が遂行可能であるにも関わらずエラーが報知される場合がある。このようなエラーが頻発するような場合、該エラーの対処に時間が掛かり、生産効率を悪化させるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、生産インフラの作動状況を示す値に対して設定された許容値が厳しすぎてエラーの報知が頻発したり、加工条件によって適切な許容値が変化していることに起因してエラーの報知が頻発したりする場合に、該許容値を規定する閾値を容易に適切な値に調整することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該保持手段と該加工手段とを相対的に加工送りする送り手段と、生産インフラと、制御手段と、表示手段と、を含み構成された加工装置であって、該制御手段は、該生産インフラの作動状況を監視する生産インフラ監視部と、該生産インフラの作動状況の許容値を規定する閾値を設定する閾値設定部と、該生産インフラ監視部が該生産インフラの作動状況が該許容値を逸脱した際に報知する報知部と、を備え、該表示手段は、該生産インフラの作動状況を表示すると共に該許容値を逸脱した生産インフラを明示し、該閾値が調整可能に構成された加工装置が提供される。
【0011】
該報知部は、該表示手段において、許容値を逸脱した生産インフラに関する表示形態を変化させて報知するようにすることが好ましい。また、該表示手段に閾値変更を許可するボタンを表示し、該許可ボタンにより閾値変更が許可された場合に、該生産インフラの閾値が調整可能になるようにしてもよい。さらに、該生産インフラの作動状況は、クリーンエア圧力、純水圧力、バキューム圧力、純水温度、のうち少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加工装置は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該保持手段と該加工手段とを相対的に加工送りする送り手段と、生産インフラと、制御手段と、表示手段と、を含み構成された加工装置であって、該制御手段は、該生産インフラの作動状況を監視する生産インフラ監視部と、該生産インフラの作動状況の許容値を規定する閾値を設定する閾値設定部と、該生産インフラ監視部が該生産インフラの作動状況が該許容値を逸脱した際に報知する報知部と、を備え、該表示手段は、該生産インフラの作動状況を表示すると共に該許容値を逸脱した生産インフラを明示し、該閾値が調整可能に構成されていることから、設定された閾値が厳しすぎてエラーが頻発したり、加工条件によって該閾値の調整が必要になったりする場合に、該閾値を容易に適切に変更することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のレーザー加工装置の全体斜視図である。
図2図1に示すレーザー加工装置の表示手段に温度表示画面が表示された状態を示す概念図である。
図3】スピンナーテーブルにエアブローノズルから供給されるクリーンエア圧力の閾値を調整する態様を示す概念図である。
図4】スピンナーテーブルに洗浄水ノズルから供給される純水圧力の閾値を調整する態様を示す概念図である。
図5】スピンナーテーブルに洗浄水ノズルから供給される純水温度の閾値を調整する態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に基づいて構成される加工装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明の加工装置の一例として示すレーザー加工装置1の全体斜視図が示されている。本実施形態のレーザー加工装置1によって加工される被加工物は、例えば、図示のような半導体のウエーハWであり、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたものであって、環状のフレームFに粘着テープTを介して支持されている。
【0016】
レーザー加工装置1は、ウエーハWを保持する保持手段20と、保持手段20に保持されたウエーハWに加工を施す加工手段としてのレーザー光線照射手段8と、保持手段20とレーザー光線照射手段8とを相対的に移動する送り手段(図示は省略している)と、レーザー加工装置1に接続される生産インフラ30(一部のみを示している)と、表示手段16と、レーザー加工装置1を制御すると共に生産インフラ30の作動状況を監視する制御手段100と、を備えている。
【0017】
また、レーザー加工装置1は、略直方体形状のハウジング2を備え、ハウジング2のカセットテーブル4aに載置される複数のウエーハWを収容するカセット4と、カセット4からフレームFに支持されたウエーハWを仮置きテーブル5に搬出する搬出手段3と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハWを、保持手段20を構成するチャックテーブル22に搬送する吸着パッド6を備えた第1搬送手段TR1と、保持手段20に保持されたウエーハWを撮像しレーザー加工すべき領域を検出するためアライメント手段10と、レーザー加工されたウエーハWを洗浄、乾燥する洗浄手段12と、レーザー加工されたウエーハWを保持手段20から該洗浄手段12に搬送する吸着パッド14を備えた第2搬送手段TR2と、を備えている。
【0018】
上記した送り手段は、ハウジング2内に配設され、チャックテーブル22をX軸方向に移動させるX軸送り手段、Y軸方向に移動させるY軸送り手段を備えると共に、レーザー光線照射手段8を上下(Z軸方向)に昇降させるZ軸送り手段とを含み構成される。
【0019】
レーザー光線照射手段8は、図示を省略するボックス内に収容された光学系を備え、該光学系によりウエーハWに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振し、該レーザー光線を集光し照射する集光器81を備えている。チャックテーブル22に保持されたウエーハWに対し吸収性を有する波長のレーザー光線を集光器81から照射して、ウエーハWの分割予定ラインに沿って分割溝を形成するアブレーション加工を施すことができる。
【0020】
洗浄手段12は、回転可能に構成されレーザー加工が施されたウエーハWを吸引保持するスピンナーテーブル12aと、スピンナーテーブル12a上に保持されたウエーハWに洗浄水として純水を噴射する洗浄水ノズル12bと、スピンナーテーブル12a上に保持された洗浄後のウエーハWを乾燥すべくクリーンエアを噴射するエアブローノズル12cとを備えている。
【0021】
生産インフラ30は、例えば、洗浄手段12、チャックテーブル22等に純水を供給する純水インフラ31と、洗浄手段12、チャックテーブル22、光学系を収容するボックス等に高圧のクリーンエア圧力を生成して供給する高圧エアインフラ32と、チャックテーブル22、スピンナーテーブル12a、第1の搬送手段TR1、第2の搬送手段TR2、レーザー加工が実施される加工点領域に接続される排気ダクト、洗浄手段12の洗浄領域等に接続されバキューム圧力(陰圧)を供給する陰圧インフラ33とを含む。本実施形態では、さらに各作動部で使用された純水を外部に排出する排水インフラ34を含む。各生産インフラには、各生産インフラを通じて供給又は排出される流体の圧力、温度、流量を検出する検出手段が配設され、各検出手段によって検出された値は、生産インフラ30の作動状況を示す値として制御手段100に伝達され監視される。上記した各生産インフラは複数の作動部に分岐する分岐経路を備えており、上記した各検出手段は分岐経路毎に配設されている。例えば、陰圧インフラ33によって生成されるバキューム圧力は、1つのバキュームポンプに接続された主経路から、チャックテーブル22、スピンナーテーブル12a、第1搬送手段TR1、第2搬送手段TR2、加工点領域、洗浄手段12等に分岐する分岐経路によって供給され、陰圧インフラ33のバキューム圧力、温度、流量は、各分岐経路上に配設された検出手段により検出される。
【0022】
制御手段100は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する)。制御手段100には、制御プログラムによって実行される上記した生産インフラの作動状況を監視する生産インフラ監視部110と、該生産インフラの作動状況の許容値を規定する閾値を設定する閾値設定部120と、該生産インフラ監視部が、該生産インフラの作動状況を示す値が該許容値を逸脱した際に報知する報知部130と、を備え、表示手段16は、該生産インフラの作動状況を表示すると共に該許容値を逸脱した生産インフラを明示し、該閾値が調整可能に構成されている。
【0023】
本実施形態のレーザー加工装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、以下に、本実施形態のレーザー加工装置1の機能、作用についてより具体的に説明する。
【0024】
図1に基づき説明したレーザー加工装置1によってレーザー加工を開始するに際し、未加工のウエーハWを複数収容したカセット4をレーザー加工装置1に搬入すると共に、電源を投入してレーザー加工装置1を起動する。レーザー加工装置1を起動したならば、作業者によって、被加工物として搬入されたウエーハWの情報、加工条件等を入力する。入力された情報に基づき、制御手段100によってレーザー加工装置1の各作動部の制御が開始されると共に、各生産インフラの作動状況の監視も開始される。レーザー加工装置1の制御が開始されると、昇降自在に構成されたカセットテーブル4aを上昇して、カセット4に収容された未加工のウエーハWが、搬出手段3によって仮置きテーブル5に搬出される。次いで、上記した陰圧インフラ33によるバキューム圧力が生成された第1搬送手段TR1の吸着パッド6によってウエーハWを吸着し、図1において搬出入位置に位置付けられたチャックテーブル22上に搬送される。該陰圧インフラ33によってウエーハWが載置されたチャックテーブル22上にバキューム圧力を生成し、ウエーハWを吸引保持したならば、ウエーハWを、上記した送り手段によりアライメント手段10の直下に位置付けて、ウエーハWを撮像する。該アライメント手段10により撮像された画像情報は、制御手段100の適宜の記憶領域に記憶される。
【0025】
次いで、アライメント手段10により撮像された画像に基づいて、レーザー加工すべき領域であるウエーハWの所定の分割予定ラインを検出し、上記した送り手段を作動して、集光器81を所定の分割予定ラインの加工開始位置に位置付ける。次いで、レーザー光線照射手段8を作動して、ウエーハWの表面にレーザー光線の集光点を位置付け、分割予定ラインに向けてウエーハWに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射すると共に、上記した送り手段を作動して、チャックテーブル22をX軸方向に加工送りし、該分割予定ラインに沿って分割溝を形成する。さらに、チャックテーブル22をY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段、チャックテーブル22を回転させる回転駆動手段等を作動して、ウエーハWにおいてレーザー加工を実施すべき全ての分割予定ラインに対して分割溝を形成する。上記したレーザー加工を実施する際に、レーザー加工を実施する加工点からアブレーション加工により飛散するデブリ等を除去すべく加工領域に排気ダクトが接続され、陰圧インフラ33によって供給されるバキューム圧力の作用により加工領域から吸引した空気を、図示を省略する浄化フィルター(図示は省略する)を通して外部に排気する。
【0026】
ウエーハWの全ての分割予定ラインに対して分割溝を形成したならば、ウエーハWが保持されたチャックテーブル22を図1に示す搬出入位置に移動して、陰圧インフラ33によって吸着パッド14にバキューム圧力が生成された第2搬送手段TR2によりウエーハWを吸着する。次いで、洗浄手段12にウエーハWを搬送し、洗浄手段12のスピンナーテーブル12aに載置する。ウエーハWがスピンナーテーブル12aに載置されたならば、陰圧インフラ33により供給されたバキューム圧力によって吸引保持する。次いで、スピンナーテーブル12aを高速で回転させると共に、洗浄水ノズル12bをスピンナーテーブル12aの上方で揺動させながら純水インフラ31によって供給された高圧の洗浄水(純水)を供給し、ウエーハWの加工面を所定時間洗浄する。該洗浄を実施した後、スピンナーテーブル12aを回転させたまま、エアブローノズル12cをスピンナーテーブル12a上で揺動させて、高圧エアインフラ32によって供給される高圧のクリーンエアを噴射してウエーハWを乾燥する。該洗浄及び乾燥が完了したならば、バキューム圧力が供給される第1搬送手段TR1の吸着パッド6によりウエーハWを吸着して、仮置きテーブル5に搬送し、搬出手段3を作動してカセット4の所望の位置に収容し、一連のレーザー加工の工程が完了する。該洗浄手段12には、陰圧インフラ33が接続されており、上記したウエーハWの洗浄、乾燥を実施している最中に、洗浄手段12の内部に飛散したデブリやミストを含む空気を吸引して外部に排気する。
【0027】
上記したレーザー加工装置1によってレーザー加工が実施されている間、各生産インフラの作動状況を監視する生産インフラ監視部110に、各生産インフラの作動状況を検出する検出手段からの情報が伝達される。伝達された該情報は、図2に示すように、閾値設定部120に予め設定された作動状況の許容値を規定する閾値と共に、表示手段16の表示領域16aに表示される。図2に示す表示手段16では、圧力表示モードアイコン17Aが有効とされ、各生産インフラの圧力に関する作動状況を示す圧力表示画面が表示されており、各生産インフラにおける圧力に関する作動状況M1~M11が表示されている。
【0028】
図2に示す表示手段16には、扇形状のメーターで、以下に説明する各生産インフラの作動状況を示す検出値と、該閾値によって規定された許容値が表示されている。なお、具体的な表示形式はこれに限定されるものではなく、例えば棒グラフ形状、円グラフ形状で表示されてもよい。
【0029】
<作動状況M1>
スピンナーテーブル12aの保持面に生成されるバキューム圧力
検出値:0.03MPa、許容値:0.04Mpa以下
<作動状況M2>
スピンナーテーブル12aにエアブローノズル12cから供給されるクリーンエア圧力
検出値:0.26MPa、許容値:0.30MPa以上
<作動状況M3>
スピンナーテーブル12aに洗浄水ノズル12bから洗浄水として供給される純水圧力
検出値:0.31MPa、許容値:0.20~0.30MPa
<作動状況M4>
洗浄手段12に接続される排気ダクトから排出される排気圧力
検出値:0.04MPa、許容値:0.05MPa以下
<作動状況M5>
チャックテーブル22の保持面に生成されるバキューム圧力
検出値:0.025MPa、許容値:0.030MPa以下
<作動状況M6>
チャックテーブル22の保持面に内側から供給される水ブローの純水圧力
検出値:0.32MPa、許容値:0.30~0.35MPa
<作動状況M7>
チャックテーブル22の保持面に内側から供給されるエアブローのクリーンエア圧力
検出値:0.22MPa、許容値:0.20~0.25MPa
<作動状況M8>
レーザー加工が実施される加工点から排気する排気圧力
検出値:0.02MPa、許容値:0.03MPa以下
<作動状況M9>
第1搬送手段TR1の吸着パッド6に生成されるバキューム圧力
検出値:0.015MPa、許容値:0.020以下
<作動状況M10>
第2搬送手段TR2の吸着パッド14に生成されるバキューム圧力
検出値:0.015MPa、許容値:0.020以下
<作動状況M11>
レーザー光線照射手段8の光学系を収容したボックス内のクリーンエア圧力
検出値:0.30MPa、許容値:0.20MPa以上
【0030】
制御手段100の生産インフラ監視部110は、上記した作動状況M1~M11を示す検出値が、閾値設定部120において設定された閾値により規定される許容値から逸脱しているか否かを判定する。検出された作動状況の検出値が、該許容値から逸脱していると判定された場合、その旨を作業者に報知すべく報知部130の指令に基づき表示手段16に明示する。そして、明示された報知を認識した作業者は、レーザー加工装置1や、レーザー光線照射手段8によって加工されたウエーハWを確認して、必要に応じて、各生産インフラの閾値の調整を行う。
【0031】
上記した実施形態では、図3(a)に拡大して示すように、洗浄手段12のエアブローノズル12cからスピンナーテーブル12aに供給されるクリーンエア圧力(図3(a)の領域41を参照)が、閾値によって規定された許容値0.30MPa以上の領域に達せず、許容値から逸脱していることが判定されると共に、図4(a)に拡大して示すように、洗浄手段12の洗浄水ノズル12bからスピンナーテーブル12aに供給される純水圧力(図4(a)の領域42を参照)が、上限及び下限を示す閾値によって規定された許容値0.20~0.30MPaの領域から逸脱していることが判定される。この結果、報知部130は、該逸脱を作業者に報知すべく、図2図3(a)、及び図4(a)に示すように、作動状況M2、M3の表示領域を点滅させる。本実施形態では、この際、作動状況M2、M3の表示領域を、正常である場合の白黒表示から、赤色に変色して点滅させ、これと同時に報知ブザーを鳴らすようにしている。
【0032】
上記したように作動状況M2、M3の検出値が許容値から逸脱したことが検出されたことにより、作業者は、作動状況M2、M3に対応する生産インフラの確認を実施する。ここで、上記した検出値の許容値からの逸脱が、該許容値を規定する閾値が必要以上に厳しすぎることに起因したり、ウエーハWの種類や加工条件によって、作動状況M2、M3の許容値が変化しているのに対応していないことに起因したりするものであると作業者が判断した場合、本実施形態のレーザー加工装置1では、以下に説明する手順に従い、表示手段16上で、許容値を逸脱したと報知された作動状況M2、M3の閾値を調整することができる。
【0033】
例えば、図3(a)に示す作動状況M2において該閾値を調整するに際しては、作業者の指Fの先端を閾値ラインL1上にタッチして長押しする。これにより、該閾値ラインL1が移動可能なアクティブな状態になる。そして、指Fの先端を閾値ラインL1にタッチしアクティブな状態としたまま、図3(a)の矢印R1で示す方向に移動させる。これにより、図3(b)に示すように、閾値ラインL1が移動して、検出値である0.26MPaが許容値に含まれるように、すなわち、閾値ラインL1が、検出値よりも左側にくる0.24MPaの位置まで移動させる。該移動の後、指Fを閾値ラインL1から離すことで、閾値ラインL1がインアクティブとなり0.24MPaの位置で固定される。この結果、許容値が0.24MPa以上に調整されて、作動状況M2において示されるクリーンエア圧力の検出値0.26MPaは、許容値に含まれることになり、表示手段16における報知(赤色の点滅等)が停止する。
【0034】
図4(a)に示す調整前の作動状況M3において、該上限の閾値ラインL2を調整する場合は、上記と同様に、作業者の指Fの先端を閾値ラインL2にタッチして長押しすることで、該閾値ラインL2が移動可能なアクティブな状態にする。そして、指Fの先端を閾値ラインL2にタッチし閾値ラインL2をアクティブな状態としたまま、図4(a)において矢印R2で示す方向に移動させる。これにより、図4(b)に示すように、閾値ラインL2を移動して、検出値である0.31MPaが許容値に含まれるように、すなわち、閾値ラインL2が検出値よりも右側にくるように0.32MPaの位置まで移動させる。該移動の後、指Fを閾値ラインL2から離すことで、閾値ラインL2がインアクティブとなり0.32MPaの位置で固定される。この結果、作動状況M3において示される洗浄手段12のスピンナーテーブル12aに供給される純水圧力の検出値(0.31MPa)は、許容値内に含まれることとなって、表示手段16における報知(赤色の点滅等)が停止する。
【0035】
上記した本実施形態のレーザー加工装置1によれば、設定された閾値が厳しすぎてエラーが頻発したり、加工条件によって閾値が異なり該閾値の調整が必要になったりする場合に、該閾値を容易に適切に変更することが可能になる。
【0036】
上記した実施形態では、表示手段16に、圧力に関する作動状況を表示する例を示したが、各生産インフラの温度及び流量に対しても上記したのと同様に監視することができる。各生産インフラの温度に関する作動状況を表示手段16に表示する場合には、図2に示す圧力表示画面が示された表示手段16の温度表示モードアイコン17Bをタッチすることにより温度表示画面に切り替えて、各生産インフラの温度に関する作動状況が閾値と共に表示される。また、各生産インフラの流量に関する作動状況を表示する場合には、表示手段16の流量表示モードアイコン17Cをタッチすることにより、流量表示画面に切り替えて、各生産インフラの流量に関する作動状況が閾値と共に表示される。図2に基づき説明した表示手段16に圧力表示画面が示されている場合でも、生産インフラ監視部110によって各生産インフラの温度に関する作動状況や、各生産インフラの流量に関する作動状況が許容値を外れているかが判定され、各生産インフラの温度に関する作動状況や、各生産インフラの流量に関する作動状況が、許容値から逸脱していると判定された場合は、表示手段16にその旨を明示することができる。該明示する方法は、例えば、図2に示された温度表示モードアイコン17Bや流量表示モードアイコン17Cを点滅して作業者に明示して報知することが可能であり、温度表示モードアイコン17Bや流量表示モードアイコン17Cをタッチして画面を切り換えることにより、報知の内容をより具体的に確認することができる。
【0037】
上記した温度表示画面や、流量表示画面において、作動状況を示す値が許容値を逸脱していると判定されて報知された場合であっても、作業者が、該検出された値は許容値に含まれるべきである、と判断した場合は、上記した実施形態と同様に、閾値の調整が可能である。
【0038】
図5(a)には、図示を省略する温度表示画面において報知される作動状況の一例が示されている。図示の作動状況は、スピンナーテーブル12aに洗浄水ノズル12bから供給される純水温度に関するものであり、閾値設定部120に設定された上限の閾値ラインL4と下限の閾値ラインL5とにより許容値が23.0~24.0℃であることが規定され、領域51に表示された純水温度の検出値が22.5℃であることが表示されている。そして、生産インフラ監視部110により、作動状況が該許容値から逸脱していることが判定され、該逸脱したことが、点滅により明示されて作業者に報知されている。ここで、作業者が、該純水温度の検出値が許容値内であると判定されるべきと判断した場合は、該下限の閾値ラインL5を調整すべく、図5(a)に示すように、作業者の指Fの先端を下限の閾値ラインL5にタッチして長押しすることで、該閾値ラインL5が移動可能なアクティブな状態になる。そして、指Fの先端を閾値ラインL5にタッチし、閾値ラインL5をアクティブな状態としたまま、図5(a)において矢印R3で示す方向に移動させる。これにより、図5(b)に示すように閾値ラインL5を移動して、検出値である22.5℃が許容値に含まれるように、すなわち、下限の閾値ラインL5が検出値よりも左側にくるように、例えば、22.0℃の位置まで移動させる。該移動の後、指Fを閾値ラインL5から離すことで、閾値ラインL5がインアクティブとなり22.0℃の位置で固定される。この結果、許容値の下限が拡大されて、洗浄手段12のスピンナーテーブル12aに供給される純水温度の検出値(22.5℃)は、許容値に含まれることとなるため、許容値を逸脱していない状態となり、表示手段16における報知(赤色の点滅等)が停止する。
【0039】
各生産インフラの作動状況を示す流量に関する検出値についても、上記したのと同様に、生産インフラ監視部110によって許容値を逸脱しているか否かが判定されて、作動状況の検出値が許容値を逸脱していると判定された場合に表示手段16に明示されて作業者に報知される。そして、作業者の判断により、許容値を逸脱して報知された生産インフラの作動状況の検出値が許容値に含まれるように、閾値を調整することが可能である(閾値の調整手順は、上記したのと略同様であることから、詳細な説明は省略する)。
【0040】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態では、本発明をレーザー加工装置に適用した例を示したが、生産インフラが接続されたあらゆる加工装置に適用することが可能であり、例えば、ダイシング装置、研削装置、研磨装置等に適用することができる。特に、ダイシング装置においては、切削加工領域、洗浄手段等に多量の純水が供給されることから、本発明が適用されることで、供給される純水の圧力、温度、流量を適切に監視することが可能になる。
【0041】
上記した実施形態では、作動状況を示す検出値が許容値を逸脱していることが判定され明示された際に閾値を調整することを説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図2の表示手段16に示すように、閾値変更ボタンを配設し、閾値変更ボタンをタッチすることにより、閾値の変更を任意のタイミングで有効にして、上記した閾値の調整を実施することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1:レーザー加工装置
2:ハウジング
3:搬出手段
4:カセット
4a:カセットテーブル
5:仮置きテーブル
6:吸着パッド
8:レーザー光線照射手段
81:集光器
10:アライメント手段
12:洗浄手段
12a:スピンナーテーブル
12b:洗浄水ノズル
12c:エアブローノズル
14:吸着パッド
16:表示手段
16a:表示領域
17A~17C:表示モード切替えボタン
18:閾値変更許可ボタン
20:保持手段
22:チャックテーブル
30:生産インフラ
31:純水インフラ
32:高圧エアインフラ
33:陰圧インフラ
34:排水インフラ
100:制御手段
110:生産インフラ監視部
120:閾値設定部
130:報知部
F:指
TR1:第1搬送手段
TR2:第2搬送手段
図1
図2
図3
図4
図5