(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103040
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】処理方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/08 20060101AFI20240725BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A01N59/08 A
A01N59/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007169
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 壮介
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BA04
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】より効率的に対象物を抗菌する処理方法等を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、工業プロセス内に設けられた容器の内容物に対する処理方法が提供される。この処理方法は、容器の内部に水を加えることで内容物を希釈する希釈工程を備える。希釈工程が完了するまでに、水以外に抗菌剤が容器に添加される。抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩と、塩素安定化剤と、を組み合わせてなる成分である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業プロセス内に設けられた容器の内容物に対する処理方法であって、
前記容器の内部に水を加えることで前記内容物を希釈する希釈工程を備え、ここで、前記希釈工程が完了するまでに、前記水以外に抗菌剤が前記容器に添加され、
前記抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩と、塩素安定化剤と、を組み合わせてなる成分である、処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の処理方法において、
前記容器は前記水が流通する配管を備え、
前記抗菌剤は、前記配管を介して添加される、処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の処理方法において、
前記希釈工程では、前記抗菌剤の添加完了後に、前記配管に前記水を流通させつつ、前記配管を介して前記容器に前記水を加える操作が行われる、処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の処理方法において、
前記塩素安定化剤は、含窒素化合物を含む、処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の処理方法において、
前記抗菌剤は、前記次亜塩素酸又はその塩に含まれる塩素原子と、前記塩素安定化剤に含まれる窒素原子と、の割合が、モル比で1:1以上1:2以下の範囲となるように組み合わされた成分である、処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載の処理方法において、
前記抗菌剤のpHは8以上である、処理方法。
【請求項7】
請求項1に記載の処理方法において、
前記希釈工程完了後の前記内容物は、1~20000mg/Lの濃度(塩素分子換算)で有効成分を含む、処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の処理方法において、
前記希釈工程完了後の前記内容物は、その容積が200立米以下である、処理方法。
【請求項9】
請求項1に記載の処理方法において、
前記希釈工程完了後の前記内容物は、同一容器に1時間以上滞留する、処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種工業分野におけるプロセスに対して、抗菌剤(殺菌剤)を添加する技術が知られている。具体的に、特許文献1には、所定の有機化合物を抗菌対象系に添加する抗菌方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される抗菌剤は必ずしも廉価なものではなく、より効率的に対象物を抗菌する技術が望まれていた。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、より効率的に対象物を抗菌する処理方法等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、工業プロセス内に設けられた容器の内容物に対する処理方法が提供される。この処理方法は、容器の内部に水を加えることで内容物を希釈する希釈工程を備える。希釈工程が完了するまでに、水以外に抗菌剤が容器に添加される。抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩と、塩素安定化剤と、を組み合わせてなる成分である。
【0007】
(1)
工業プロセス内に設けられた容器の内容物に対する処理方法であって、
前記容器の内部に水を加えることで前記内容物を希釈する希釈工程を備え、ここで、前記希釈工程が完了するまでに、前記水以外に抗菌剤が前記容器に添加され、
前記抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩と、塩素安定化剤と、を組み合わせてなる成分である、処理方法。
(2)
(1)に記載の処理方法において、
前記容器は前記水が流通する配管を備え、
前記抗菌剤は、前記配管を介して添加される、処理方法。
(3)
(2)に記載の処理方法において、
前記希釈工程では、前記抗菌剤の添加完了後に、前記配管に前記水を流通させつつ、前記配管を介して前記容器に前記水を加える操作が行われる、処理方法。
(4)
(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の処理方法において、
前記塩素安定化剤は、含窒素化合物を含む、処理方法。
(5)
(4)に記載の処理方法において、
前記抗菌剤は、前記次亜塩素酸又はその塩に含まれる塩素原子と、前記塩素安定化剤に含まれる窒素原子と、の割合が、モル比で1:1以上1:2以下の範囲となるように組み合わされた成分である、処理方法。
(6)
(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の処理方法において、
前記抗菌剤のpHは8以上である、処理方法。
(7)
(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の処理方法において、
前記希釈工程完了後の前記内容物は、1~20000mg/Lの濃度(塩素分子換算)で有効成分を含む、処理方法。
(8)
(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の処理方法において、
前記希釈工程完了後の前記内容物は、その容積が200立米以下である、処理方法。
(9)
(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の処理方法において、
前記希釈工程完了後の前記内容物は、同一容器に1時間以上滞留する、処理方法。
【0008】
上記態様によれば、より効率的に対象物を抗菌する処理方法等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の処理方法が実施される処理システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
すなわち、本実施形態の処理方法は以下に示されるものである。
工業プロセス内に設けられた容器の内容物に対する処理方法であって、
前記容器の内部に水を加えることで前記内容物を希釈する希釈工程を備え、ここで、前記希釈工程が完了するまでに、前記水以外に抗菌剤が前記容器に添加され、
前記抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩と、塩素安定化剤と、を組み合わせてなる成分である、処理方法。
【0012】
[適用対象]
本実施形態の処理方法は、工業プロセス内に設けられた容器の内容物に対して施されるものであるが、この工業プロセスは特に制限されない。なお、本処理方法では、水による希釈工程が実行されるため、ここでの工業プロセスは、典型的には、水系が用いられるプロセスである。
【0013】
より具体的な例を挙げると、この工業プロセスは、製紙工業、化学工業、製鉄工業、電力工業等の各種工業プロセスであってよい。以下、本実施形態の処理方法が、製紙工業のプロセスに用いられる場合を例に挙げて説明を続けることにする。
【0014】
[処理システム及び処理方法]
本実施形態の処理方法が実施される処理システムの例について、図を交えて説明する。
図1は、本実施形態の処理方法が実施される処理システムの全体構成を示す図である。
【0015】
図1の処理システム100は、第1の容器1と、第2の容器2とを備える。ここで、第1の容器1は、前述の希釈工程が行われる容器であり、その内部に内容物を収容するものである。
【0016】
ここでの内容物は、適用される工業プロセスに応じ、適宜設定すればよく、有機物であっても無機物であってもよい。なお、本実施形態の処理方法は、菌の発生・増殖を抑制する効果を発現することから、この内容物は、有機成分を含む場合が典型的な例として挙げられる。この有機成分は、低分子有機化合物や、高分子有機化合物(樹脂、多糖類等)を包含する。また、この内容物は、媒体(水や有機溶媒等)に分散や溶解されていてもよい。なお、適用対象である工業プロセスが製紙工業に関するプロセスである場合、この内容物はデンプンスラリー(デンプン)、塗工液(カラー液)、サイズプレス糊液スラリー、炭酸カルシウムスラリー、パルプ、クレー等を含んでいてもよい。その他、製紙工業以外に関するプロセスが適用対象である場合、内容物は、ペイント塗料類、各種ラテックス、防汚塗料、ポリマー溶解液等であってよい。
【0017】
また、処理システム100における第2の容器2は、抗菌剤を貯蔵する容器である。前述の通り、この抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩と、塩素安定化剤と、を組み合わせてなる成分である。本実施形態の処理方法では、希釈工程が完了するまでに、この第2の容器2に貯蔵された抗菌剤が、第1の容器1に添加される。なお、抗菌剤の添加タイミング、第1の容器1に水が添加され始める前であってもよく、第1の容器1に水が添加される途中であってもよい。なお、
図1では、調製した抗菌剤を第2の容器2に貯蔵する態様を示しているが、本実施形態の処理方法は、このような態様に制限されない。たとえば、処理システム100内に、次亜塩素酸又はその塩を貯蔵する容器と、塩素安定化剤を貯蔵する容器と、を設け、使用の直前にこれらを混合する態様も本実施形態の処理方法の一例として挙げられる。なお、この次亜塩素酸又はその塩と、塩素安定化剤と、の混合は処理システム100内の所定の容器で行われてもよいし、処理システム100内に存在する配管等で行われてもよい。
【0018】
なお、次亜塩素酸塩を構成するカチオン部分は、有機カチオン、無機カチオンのいずれであってもよい。有機カチオンとしては、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン等が例示される。一方、無機カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン等が例示される。
【0019】
また、塩素安定化剤としては、具体的には、スルファミン酸又はその誘導体等のスルファミン酸系化合物;5,5'-ジメチルヒダントイン等のヒダントイン類;イソシアヌル酸;尿素;ビウレット;カルバミン酸メチル;カルバミン酸エチル;アセトアミド、ニコチン酸アミド、メタンスルホン酸アミド及びトルエンスルホン酸アミド等のアミド化合物;マレイミド、コハク酸イミド及びフタルイミド等のイミド化合物;アラニン、グリシン、ヒスチジン、リシン、トレオニン、オルニチン、フェニルアラニン等のアミノ酸;メチルアミン、ヒドロキシルアミン、モルホリン、ピペラジン、イミダゾール及びヒスタミン、アミノメタンスルホン酸、タウリン等のアミン;アンモニア;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
なお、次亜塩素酸又はその塩及び塩素安定化剤のそれぞれは、単独(1種)の成分を用いてもよく、複数種の成分を用いてもよい。また、第2の容器2内には、上述の成分以外に、水や、他の添加剤等が含まれていてもよい。
【0021】
また、本明細書において、「抗菌剤」との用語は、適用対象について菌の住みにくい環境をつくる作用をもたらす剤との趣旨で用いている。また、この「抗菌」との用語は、「除菌」、「殺菌」、「滅菌」の各用語の意味を包含するのものとして扱う。また、菌の増殖が抑制されることから、本実施形態の抗菌剤によって奏される効果を「防腐」と称してもよい。
【0022】
本実施形態の抗菌剤において、塩素安定化剤は、含窒素化合物を含むことが好ましい。とりわけ、処理にかかるコストを抑制する観点からは、この含窒素化合物は、アンモニア又はアンモニウム塩であることが好ましい。
【0023】
さらに、抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩に含まれる塩素原子と、塩素安定化剤に含まれる窒素原子と、の割合が所定の割合で組み合わされていることが好ましい。抗菌剤は、次亜塩素酸又はその塩に含まれる塩素原子と、塩素安定化剤に含まれる窒素原子と、の割合が、モル比で1:1以上(すなわち、窒素原子のモル数の方が豊富)となるように組み合わされた成分であることが好ましく、1:1以上1:2以下の範囲となるように組み合わされた成分であることが好ましい。抗菌剤の成分をこのような範囲に設定することにより、所望の抗菌効果がより得られやすくなる。
【0024】
また、本実施形態の抗菌剤のpHは、適用対象等に応じ適宜設定すればよいが、抗菌剤のpHは8以上であることが好ましい。これにより、抗菌剤自体の保存安定性が増しやすくなる。
【0025】
本実施形態の抗菌剤の濃度は、適用対象等に応じ適宜設定すればよい。なお、本実施形態の抗菌剤は過塩素酸又はその塩を含むため、有効成分としては含塩素系の活性種(クロラミン等)を含み得る。抗菌剤の濃度の評価は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、系中に含まれる含塩素系の活性種に含まれる塩素原子の量に基づき、当該塩素原子がすべて塩素分子(Cl2)である場合を仮定し、系中(抗菌剤中)の濃度(すなわち、「塩素分子換算」の濃度)を評価することができる。この抗菌剤の濃度は、たとえば1~30000mg/Lの濃度(塩素分子換算)であってもよく、3~25000mg/Lの濃度(塩素分子換算)であってもよく、10~20000mg/Lの濃度(塩素分子換算)であってもよい。
【0026】
本実施形態の抗菌剤は、第2の容器2内で各成分を組み合わせることで調製されてもよいし、他の容器で調製された後、この第2の容器2に移送されてもよい。
【0027】
また、
図1に示す通り、本実施形態の処理システム100においては、第1の容器1が、水が流通する配管11を備えている。すなわち、本実施形態においては、第1の容器1内の内容物を希釈する工程(希釈工程)が実行されるが、水(W)は、この配管11を介して第1の容器1に注入されることになる。なお、
図1には詳細には示していないが、この配管11内にはバルブ等が設けられ、注入される水(W)の量、注入速度等が制御されてもよい。
【0028】
なお、好適には、第2の容器2に用意された抗菌剤は、この配管11を介して添加されてもよい。すなわち、第2の容器2は配管21を備えていてもよく、また、この配管21中に備えられたポンプ22によって、抗菌剤が、第1の容器1に接続された配管11に導入されてもよい。なお、本実施形態における希釈工程では、第2の容器2からの抗菌剤の添加完了後に、配管11に水を流通させつつ、配管11を介して容器に水を加える操作が行われることが好ましい。これにより、第1の容器1に加えるべき抗菌剤の量を適切に管理しやすくなる。
【0029】
なお、第1の容器1へ抗菌剤を添加する経路はこれには限られず、公知のいずれかの手法によって添加されてもよい。
【0030】
また、希釈工程において第1の容器1に添加される抗菌剤や水の量、又は抗菌剤や水の添加スピードは、第1の容器1の内容物の状態に応じて制御されてもよい。たとえば、第1の容器1の内容物のpH、濃度、菌数、カビ数、酸化還元電位、電気伝導率等のパラメータを取得し、このパラメータに基づき、抗菌剤や水の添加量や添加スピードが制御されてもよい。
【0031】
このようにして、希釈工程により第1の容器1内に抗菌剤が添加されることになるが、希釈工程完了後の内容物における抗菌剤の濃度は、用途に応じて適宜設定すればよい。すなわち、希釈工程完了後の内容物は、1~20000mg/Lの濃度(塩素分子換算)で有効成分を含んでもよく、3~15000mg/Lの濃度(塩素分子換算)で有効成分を含んでもよく、5~10000mg/Lの濃度(塩素分子換算)で有効成分を含んでもよい。このような希釈工程完了後の内容物について、抗菌剤の濃度を上記のように設定することにより、抗菌作用が長く維持されやすい。
【0032】
本実施形態の処理方法は、希釈工程完了までに抗菌剤が添加される特徴を有する。そのため、希釈工程完了後の容積が比較的小さいプロセスにおいても好適に用いることができる。典型的には、第1の容器1に存在する、希釈工程完了後の内容物は、その容積が200立米以下であってもよく、その容積が100立米以下であってもよく、その容積が50立米以下であってもよく、その容積が30立米以下であってもよい。
【0033】
また、本実施形態の処理方法は、内容物が長期保管される材料である場合に好ましく用いられる。このような観点から、希釈工程完了後の内容物は、同一容器に1時間以上滞留されるものであってもよく、同一容器に3時間以上滞留されるものであってもよく、同一容器に12時間以上滞留されるものであってもよく、同一容器に1日以上滞留されるものであってもよく、同一容器に3日以上滞留されるものであってもよい。なお、ここでの同一容器における滞留は、希釈工程が実施される第1の容器1に滞留させる態様を指すものであってもよいし、第1の容器1とは異なる他の貯留用容器(図示せず)に滞留させる態様を指すものであってもよい。なお、第1の容器1から他の貯留用容器への内容物の移送は、一括で行われてもよいし、段階的に行われてもよい。たとえば、第1の容器1で希釈した内容物の一部を他の貯留用容器に移送し、この他の貯留用容器の残量等を管理しながら、適宜、第1の容器1から希釈した内容物を段階的に加えていくことも実施形態のひとつである。もちろん、希釈後の内容物の保管方法はこれらに限定されない。
【0034】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0035】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。また、以下では「無機系抗菌剤」との表現を用いているが、抗菌剤の成分の構造中に炭素原子を含む抗菌剤(例えば塩素安定化剤として有機化合物を用いるもの等)を本発明から排除する趣旨ではない。
【0036】
[実施例1]防腐試験結果
<試験条件>
製紙工場で用いられるデンプン粉末を滅菌水で希釈し、固形分濃度20%のデンプンスラリーを作製し、30℃で4日間腐敗させ、種菌スラリーを作製した。
同様に固形分濃度20%としたデンプンスラリーに種菌スラリーを2%混合し、試験に供した。
なお、各抗菌剤は以下の溶液を用いた。
有機系抗菌剤は有姿の添加量で示し、無機系抗菌剤は全塩素濃度見合いで添加した。
【0037】
・有機系抗菌剤
DBNE(2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール) 22.5%とCl-MIT(5-クロロ-2-メチルイソチアゾリン-3-オン) 1.5%を含む溶液
【0038】
・無機系抗菌剤(硫酸アンモニウム+次亜塩素酸ナトリウム)
純水中で硫酸アンモニウム中のN(窒素原子)と次亜塩素酸ナトリウム中のCl(塩素原子)がモル比で1:1になるよう混合した溶液を用いた。生成後の抗菌剤濃度は1940mg/L as Cl2であった。
【0039】
<試験結果>
各試験において、所定時間経過後のスラリー中の菌数をカウントし、表1にまとめた。
従来の有機系抗菌剤では有姿で200mg/L添加しても、15分の接触時間では十分な殺菌が出来なかったが、無機系抗菌剤は15分と短時間の接触においても良好な殺菌効果を確認出来た。
また、1日後と3日後を比較しても、有機系抗菌剤よりも優れた防腐効果を得る事が出来た。
【0040】
【0041】
[実施例2]防腐試験結果
<試験条件>
製紙工場で用いられる防腐剤未添加のデンプンスラリー(固形分濃度40%)を供した。
なお、各抗菌剤は以下の溶液を用いた。
有機系抗菌剤は有姿の添加量で示し、無機系抗菌剤は全塩素濃度見合いで添加した。
なお、本実施例では、菌数、カビ数のほか、酸化還元電位(ORP)、pHを評価項目に加えている。
【0042】
・有機系防腐剤
DBNE(2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール) 22.5%とCl-MIT(5-クロロ-2-メチルイソチアゾリン-3-オン) 1.5%を含む溶液
【0043】
・無機系抗菌剤1(臭化アンモニウム+次亜塩素酸ナトリウム)
純水中で臭化アンモニウム中のN(窒素原子)と次亜塩素酸ナトリウム中のCl(塩素原子)がモル比で1:1になるよう混合した溶液を用いた。生成後の抗菌剤濃度は1430mg/L as Cl2であった。
【0044】
・無機系抗菌剤2(硫酸アンモニウム+次亜塩素酸ナトリウム)
純水中で硫酸アンモニウム中のN(窒素原子)と次亜塩素酸ナトリウム中のCl(塩素原子)がモル比で1:1になるよう混合した溶液を用いた。生成後の抗菌剤濃度は1970mg/L as Cl2であった。
【0045】
・無機系抗菌剤3(塩化アンモニウム+次亜塩素酸ナトリウム)
純水中で塩化アンモニウム中のN(窒素原子)と次亜塩素酸ナトリウム中のCl(塩素原子)がモル比で1:1になるよう混合した溶液を用いた。生成後の抗菌剤濃度は1950mg/L as Cl2であった。
【0046】
・次亜塩素酸ナトリウム
【0047】
<試験結果>
各試験の結果を表2にまとめた。
従来の有機系抗菌剤では有姿で200 mg/L添加しても、30分の接触時間では十分な殺菌が出来なかったが、無機系抗菌剤1から3のどれも、30分と短時間の接触においても良好な殺菌効果を確認出来た。
また、無機系抗菌剤の種類によっても差が出ており、無機系抗菌剤は1日後までは菌数を低く抑制出来たが、3日目にはいくらか菌が増殖していた。
菌数の推移に応じてORP値も変動しており、腐敗が進んだ箇所はORP値が大幅に低下し、適切な防腐処理が行えている条件ではORP値は高く維持できていた。
【0048】
【0049】
表1及び表2に示される結果から、所定の無機系抗菌剤を用いた場合に、所望の効果が奏されやすいことが示唆される。このことから、これらの抗菌剤は、本発明の処理方法に好適に用いることができる。