(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103132
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】粘着シート、離型フィルム付き粘着シート、及びフレキシブル画像表示装置構成部材用粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240725BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240725BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240725BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240725BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240725BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240725BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240725BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240725BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240725BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240725BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240725BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240725BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240725BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240725BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/06
C09J4/00
G02B5/30
H05B33/14 Z
H05B33/02
H10K59/10
G09F9/00 302
G09F9/30 308Z
G09F9/30 349Z
B32B27/00 M
B32B27/00 D
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007306
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】峯元 誠也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍一朗
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
4J004
4J040
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB16
2H149AB24
2H149BA01
2H149BA11
2H149EA01
2H149EA22
2H149FA02Z
2H149FA04Z
2H149FA06Z
2H149FA08Z
2H149FA12Z
2H149FA13Z
2H149FA16Z
2H149FA58Z
2H149FA66
2H149FB01
2H149FD21
2H149FD30
2H149FD31
2H149FD35
2H149FD47
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC41
3K107EE12
3K107EE55
3K107EE61
3K107FF02
4F100AA21A
4F100AG00
4F100AH08A
4F100AK25A
4F100AK41B
4F100AK42
4F100AK49
4F100AK51A
4F100AK52B
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CA30A
4F100CB04A
4F100CB05A
4F100GB41
4F100JA05A
4F100JA07A
4F100JB14A
4F100JK06
4F100JK07A
4F100JK17
4F100JL11
4F100JL13A
4F100JL14B
4J004AA10
4J004AB01
4J004DB03
4J004EA06
4J040DF001
4J040DF031
4J040FA132
4J040FA292
4J040GA05
4J040GA07
4J040HD30
4J040HD35
4J040HD41
4J040JA09
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA05
4J040MA10
5C094AA31
5C094BA27
5C094ED14
5G435AA14
5G435BB05
5G435HH05
(57)【要約】
【課題】フレキシブル部材、特にポリイミドに対する接着性に優れ、かつ、フレキシブル性にも優れた粘着シートを提供することを目的とする。
【解決手段】アクリル系共重合体及び、有機金属化合物を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、前記有機金属化合物が、チタン化合物、アルミニウム化合物、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、及び、鉄化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、前記粘着シートの周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、-20℃における貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))が1000kPa以下であり、ゲル分率が85%以下である、粘着シートとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体及び、有機金属化合物を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、
前記有機金属化合物が、チタン化合物、アルミニウム化合物、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、及び、鉄化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記粘着シートの周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、-20℃における貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))が1000kPa以下であり、ゲル分率が85%以下である、粘着シート。
【請求項2】
前記有機金属化合物が、金属アルコキシド、金属キレート、金属アシレートからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体が、水酸基含有(メタ)アクリレート由来の構造部位を有し、かつ、カルボキシ基含(メタ)アクリレート由来の構造部位を含まないアクリル系共重合体である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体の水酸基価が30mgKOH/g以上である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤組成物が、アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物を含有する、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物がウレタン結合を有する、請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤組成物が、光重合開始剤を含有する、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記光重合開始剤が、水素引抜型光重合開始剤である、請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、損失正接(Tanδ)の極大値で定義されるガラス転移温度(Tg)が-20℃以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項10】
周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、25~60℃における損失正接(Tanδ)が0.2以上である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項11】
周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、60℃における貯蔵剪断弾性率(G'(60℃))が30kPa以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項12】
厚さ0.5~1.2mmとし、温度23℃にて10kPaの圧力を600秒印加した後のひずみ(γmax)が60%以上である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項13】
厚さ0.5~1.2mmとし、温度23℃にて10kPaの圧力を600秒印加した後のひずみ(γmax)と、その後応力を除荷し600秒経過後のひずみ(γmin)から下記式にて計算される復元率が80%以上である、請求項1に記載の粘着シート。
復元率(%)={(γmax-γmin)/γmax}×100
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに一項に記載の粘着シートと、離型フィルムとが積層してなる構成を備えた離型フィルム付き粘着シート。
【請求項15】
2つの画像表示装置構成部材が、請求項1~13のいずれか一項に記載の粘着シートを介して積層してなる構成を備えた、画像表示装置用積層体。
【請求項16】
請求項15に記載の画像表示装置用積層体を備えたフレキシブル画像表示装置。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の粘着シートからなるフレキシブル画像表示装置構成部材用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、離型フィルム付き粘着シート、及びフレキシブル画像表示装置構成部材用粘着シートに関するものであり、さらに詳しくは、十分な粘着性、フレキシブル性を有する、粘着シート、離型フィルム付き粘着シート、及びフレキシブル画像表示装置構成部材用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)や量子ドット(QD)を用いた、フレキシブル画像表示装置が開発され、広く商用化されつつある。
フレキシブル画像表示装置としては、画像表示面が曲面形状を有するベンダブル、繰り返し折り曲げが可能なフォルダブル、巻き取ることができるローラブル、伸縮されるストレッチャブル等が挙げられる。
このような画像表示装置では、表面保護フィルムやカバーレンズ、円偏光板、タッチフィルムセンサー、発光素子等の複数の部材シートが、透明な粘着シートで貼り合わされた積層構造をしており、それぞれの積層構造は、部材シートと粘着シートが積層してなる積層シートとみなすことができる。
【0003】
折り曲げ可能な屈曲性表示装置は、折り曲げた際の層間応力に起因する様々な課題が生じている。例えば、画面を折り畳んだ状態から開いたときに、屈曲状態に置かれたことによる影響が残らずに速やかに平らな状態に復元する積層シートが求められている。
また、折り畳み操作を繰り返すうちに、粘着シートが剥がれたり、被着体である部材にストレスがかかることで部材の亀裂が生じ、遂には破断する場合があり、特に過酷な条件となる低温での繰り返しでの折り畳み操作で耐久性のある積層シートであることも求められている。
このようなフレキシブル画像表示装置における粘着シートには、光学特性は勿論のこと、フレキシブル性、特に折り曲げに対する高度な耐久性が必要となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、繰り返し折り曲げた後に折り畳み部分で表示される画像に乱れを生じるおそれのない、粘着層付き積層フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、実使用環境下に近い屈曲試験によっても、折れや剥がれが発生することのない、所定範囲のガラス転移温度及び貯蔵弾性率を有する両面粘着シートと画像表示装置用フレキシブル部材とを有する積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-196255号公報
【特許文献2】国際公開第2018/173896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粘着シート以外の画像表示装置用フレキシブル部材は、素材が多岐にわたるだけでなく、折れや破断を防ぐため表面処理コートがなされる場合がある。このような部材シートを一体化するための粘着シートにおいては、幅広い素材において安定した粘着力を有する必要がある。
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示の技術は、フレキシブル部材に対する粘着力を考慮したものではなかった。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、フレキシブル部材、特にポリイミドに対する接着性に優れ、かつ、フレキシブル性にも優れた、粘着シート、離型フィルム付き粘着シート、及びフレキシブル画像表示装置用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み、アクリル系共重合体と特定の有機金属化合物を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートの貯蔵弾性率、ゲル分率を特定範囲とすることにより、フレキシブル部材に対する接着性に優れ、かつ、フレキシブル性にも優れた粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] アクリル系共重合体及び、有機金属化合物を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、
前記有機金属化合物が、チタン化合物、アルミニウム化合物、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、及び、鉄化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記粘着シートの周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、-20℃における貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))が1000kPa以下であり、ゲル分率が85%以下である、粘着シート。
[2] 前記有機金属化合物が、金属アルコキシド、金属キレート、金属アシレートからなる群から選択される少なくとも一つである、[1]に記載の粘着シート。
[3] 前記アクリル系共重合体が、水酸基含有(メタ)アクリレート由来の構造部位を有し、かつ、カルボキシ基含(メタ)アクリレート由来の構造部位を含まないアクリル系共重合体である、[1]または[2]に記載の粘着シート。
[4] 前記アクリル系共重合体の水酸基価が30mgKOH/g以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着シート。
[5] 前記粘着剤組成物が、アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
[6] 前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物がウレタン結合を有する、[5]に記載の粘着シート。
[7] 前記粘着剤組成物が、光重合開始剤を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の粘着シート。
[8] 前記光重合開始剤が、水素引抜型光重合開始剤である、[7]に記載の粘着シート。
[9] 周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、損失正接(Tanδ)の極大値で定義されるガラス転移温度(Tg)が-20℃以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の粘着シート。
[10] 周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、25~60℃における損失正接(Tanδ)が0.2以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の粘着シート。
[11] 周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、60℃における貯蔵剪断弾性率(G'(60℃))が30kPa以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の粘着シート。
[12] 厚さ0.5~1.2mmとし、温度23℃にて10kPaの圧力を600秒印加した後のひずみ(γmax)が60%以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の粘着シート。
[13] 厚さ0.5~1.2mmとし、温度23℃にて10kPaの圧力を600秒印加した後のひずみ(γmax)と、その後応力を除荷し600秒経過後のひずみ(γmin)から下記式にて計算される復元率が80%以上である、[1]~[12]のいずれかに記載の粘着シート。
復元率(%)={(γmax-γmin)/γmax}×100
[14] [1]~[13]のいずれかに記載の粘着シートと、離型フィルムとが積層してなる構成を備えた離型フィルム付き粘着シート。
[15] 2つの画像表示装置構成部材が、[1]~[13]のいずれかに記載の粘着シートを介して積層してなる構成を備えた、画像表示装置用積層体。
[16] [15]に記載の画像表示装置用積層体を備えたフレキシブル画像表示装置。[17] [1]~[13]のいずれかに記載の粘着シートからなるフレキシブル画像表示装置構成部材用粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着シートは、フレキシブル部材、特にポリイミドに対する粘着力に優れ、かつ、フレキシブル性にも優れる。そのため、本発明の粘着シートは、フレキシブル画像表示装置に用いる粘着シートとして好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において「フィルム」とは、シート、フィルム、テープを概念的に包含するものである。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0012】
本発明において、「x~y」(x,yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「x以上y以下」の意と共に、「好ましくはxより大きい」あるいは「好ましくはyより小さい」の意も包含するものである。
また、「x以上」(xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはxより大きい」の意を包含し、「y以下」(yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはyより小さい」の意も包含するものである。
さらに、「x及び/又はy(x,yは任意の構成)」とは、x及びyの少なくとも一方を意味するものであって、xのみ、yのみ、x及びy、の3通りを意味するものである。 また、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包括する意味であり、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートを包括する意味であり、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを包括する意味である。
【0013】
本発明の実施形態の一例に係る粘着シート(以下、「本粘着シート」と称する)は、アクリル系共重合体及び、有機金属化合物を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、前記有機金属化合物が、チタン化合物、アルミニウム化合物、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、及び、鉄化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、前記粘着シートの周波数1Hzの剪断モードでの動的粘弾性測定により得られる、-20℃における貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))が1000kPa以下であり、ゲル分率が85%以下である。
以下、本粘着シートについて説明する。
【0014】
〔アクリル系共重合体〕
アクリル系共重合体は、通常、アルキル基の炭素数が3以上のアルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構造部位を含むものである。なかでも、本粘着シートで用いるアクリル系共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構造部位以外に、水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)由来の構造部位を有し、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート由来の構造部位を含まないことが、粘着物性の点から好ましい。
このようなアクリル系共重合体は、アルキル基の炭素数が3以上のアルキル(メタ)アクリレート(a1)、及び水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)を含む共重合成分を重合して得られるものである。
また、前記共重合成分には、アルキル基の炭素数が3以上のアルキル(メタ)アクリレート(a1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)以外の成分、例えばアルキル基の炭素数が1、2のアルキル(メタ)アクリレート及びビニルエステル系モノマーから選ばれる少なくとも1種の共重合性モノマー(a3)〔以下、「共重合性モノマー(a3)」と称する〕、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)、その他の共重合性モノマー(a5)等が含まれていてもよい。
【0015】
〔アルキル(メタ)アクリレート(a1)〕
前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)としては、例えばn-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソイコシル(メタ)アクリレート等の分岐アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらのなかでも、粘着性や復元性の点から直鎖アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、粘着性と低温における屈曲性のバランスをとる観点から、アルキル基の炭素数が3~18、さらには3~16、特には3~12、殊には3~8の直鎖、分岐アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、例えばn-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、低温における貯蔵剪断弾性率(G')の増加を抑えて屈曲性を改善する観点から、特にアクリレートであることが好ましい。
【0017】
アクリル系共重合体に対する、アルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構造部位の含有量は、低温における貯蔵剪断弾性率(G')の増加を抑える点で、アクリル系共重合体の総質量の通常40~95%であり、好ましくは45~90%、特に好ましくは50~85%ある。アルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構造部位の含有量が前記下限値以上であると低温における貯蔵剪断弾性率(G')の増加を抑えられ、上限値以下であると粘着性等その他の物性と両立できる点から好ましい。
【0018】
〔水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)〕
前記水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレングリコール構造を有する(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリレート;2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0019】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)のなかでも、低温における貯蔵剪断弾性率(G')を低減するという点で、炭素数1~10、さらには1~6、殊には2~4のヒドロキシアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレート、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましく、特には1級水酸基含有(メタ)アクリレート、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
また、水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)として、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いる場合、その割合〔2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート〕は質量基準で、95/5~30/70であることが好ましく、更には90/10~40/60、特には85/15~45/65、殊には80/20~50/50であることが好ましい。2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが少なすぎると粘着剤として用いた際の粘着力が低下し、多すぎると粘着剤として用いた際の折り曲げ耐久性が低下する傾向がある。
【0021】
なお、前記水酸基含有モノマー(a2)としては、水酸基含有モノマー(a2)に不純物として含まれるジ(メタ)アクリレートの含有割合が少ないもの程好ましく、具体的には、0.5質量%以下のものを用いることが好ましく、特に好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下のものである。
【0022】
アクリル系共重合体に対する、水酸基含有モノマー(a2)由来の構造部位の含有量は、アクリル系共重合体の総質量の通常5~60%であり、好ましくは8~45%、特に好ましくは10~35%、更に好ましくは11~30%、殊に好ましくは12~25%である。
かかる含有量が少なすぎると粘着剤として用いた際の耐湿熱性が低下する傾向があり、多すぎるとアクリル系樹脂の自己架橋反応が起こりやすくなり、耐熱性が低下する傾向がある。
【0023】
〔共重合性モノマー(a3)〕
本発明においては、共重合成分として、更に共重合性モノマー(a3)を含有することが、凝集力向上、更には粘着剤とした際の粘着力向上の点から好ましい。
【0024】
前記共重合性モノマー(a3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの共重合性モノマー(a3)は単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なかでも、粘着剤として使用した場合の凝集力向上の点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
アクリル系共重合体が共重合性モノマー(a3)由来の構造部位を含有する場合、その含有量は、アクリル系共重合体の総質量の通常1~70%であることが好ましく、特に好ましくは3~60%、更に好ましくは5~45%である。かかる共重合性モノマー(a3)の含有量が少なすぎると、粘着剤として使用した場合の粘着力が低下する傾向があり、多すぎるとアクリル系共重合体の分子量が小さい場合に粘着剤として使用すると耐久性が低下する傾向がある。
【0026】
また、共重合性モノマー(a3)として、メチル(メタ)アクリレート及び/又はエチル(メタ)アクリレートを用いる場合、アクリル系共重合体に対するメチル(メタ)アクリレート及び/又はエチル(メタ)アクリレート由来の構造部位の含有量は、アクリル系共重合体の総質量の通常5~40%であり、好ましくは7~30%、更に好ましくは10~25%である。メチル(メタ)アクリレート及び/又はエチル(メタ)アクリレート由来の構造部位の含有量が多すぎると、粘度上昇により加工時のハンドリング性が低下する傾向があり、少なすぎると粘着剤として使用した際に粘着力が低下する傾向がある。
【0027】
〔官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)〕
本粘着シートにおいては、アクリル系共重合体の共重合成分として官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)(但し、水酸基含有モノマー(a2)を除く。)を必要に応じて用いることができる。
【0028】
前記官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)としては、例えば、窒素原子を有する官能基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられる。
これらのなかでも、凝集力や架橋促進作用を付与する点で、窒素原子を有する官能基含有モノマーが好ましく、特に好ましくはアミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーであり、更に好ましくはアミノ基含有モノマーである。
【0029】
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート;t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート;エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0030】
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチルメチルアクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。
【0031】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0032】
上記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0033】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0034】
これらの官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0035】
アクリル系共重合体が、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)由来の構造部位を有する場合、その含有量は、アクリル系共重合体の総質量の通常30%以下であり、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、殊に好ましくは5%以下である。官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)由来の構造部位の含有量が多すぎるとアクリル系共重合体の耐熱性が低下する傾向がある。
【0036】
〔その他の共重合性モノマー(a5)〕
本粘着シートにおいては、アクリル系共重合体の共重合成分として、その他の共重合性モノマー(a5)を必要に応じて用いることができる。
【0037】
上記その他の共重合性モノマー(a5)としては、例えばメトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレートや、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等のモノマーが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0038】
また、アクリル系共重合体の高分子量化を目的とする場合には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物等を少量併用することもできる。この際、これらのエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物は反応性が高く、アクリル系共重合体の重合成分として用いた際に未反応で残存することは通常ないものである。なお、使用量が多すぎるとこれらのエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物が未反応で残存することとなり、アクリル系共重合体がゲル化する傾向がある。
【0039】
アクリル系共重合体がその他の共重合モノマー(a5)由来の構造部位を含有する場合、その含有量は、アクリル系共重合体の総質量の通常50%以下であり、好ましくは40%以下、更に好ましくは20%以下である。上記その他の共重合性モノマー(a5)の含有割合が多すぎると耐熱性が低下したり、粘着力が低下する傾向がある。
【0040】
本粘着シートで用いるアクリル系共重合体は、上記の共重合成分を適宜選択し、重合することにより得ることができる。
【0041】
前記アクリル系共重合体を重合する方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法が挙げられ、なかでも、溶液重合が、安全に、安定的に、任意のモノマー組成でアクリル系共重合体を製造できる点で好ましい。
以下、本発明で用いられるアクリル系共重合体の好ましい製造方法の一例を示す。
【0042】
まず、有機溶剤中に、前記の共重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、溶液重合してアクリル系樹脂溶液を得る。
【0043】
[有機溶剤]
前記重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらの溶剤のなかでも、酢酸エチルが好ましい。
【0044】
[重合開始剤]
上記重合反応に用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であるアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤等を用いることができ、アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、(1-フェニルエチル)アゾジフェニルメタン、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、ジイソブチリルペルオキシド等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0045】
上記重合開始剤の使用量は、共重合成分100質量部に対して、通常0.001~10質量部であり、好ましくは0.1~8質量部、特に好ましくは0.5~6質量部、更に好ましくは1~4質量部、殊に好ましくは1.5~3質量部、最も好ましくは2~2.5質量部である。上記重合開始剤の使用量が少なすぎると、アクリル系共重合体の重合率が低下し、残存モノマーが増加したり、アクリル系共重合体の重量平均分子量が高くなる傾向がある。使用量が多すぎると、後記のアクリル系共重合体のゲル化が発生する傾向がある。
【0046】
[重合条件等]
溶液重合の重合条件については、従来公知の重合条件にしたがって重合すればよく、例えば、溶剤中に、重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し所定の重合条件にて重合することができる。
【0047】
上記重合反応における重合温度は、通常40~120℃であるが、本発明においては、安定的に反応できる点から50~90℃が好ましく、特に好ましくは55~75℃、更に好ましくは60~70℃である。重合温度が高すぎるとアクリル系共重合体がゲル化しやすくなる傾向があり、低すぎると重合開始剤の活性が低下するため、重合率が低下し、残存モノマーが増加する傾向がある。
【0048】
また、重合反応における重合時間(後述の追い込み加熱を行う場合は、追い込み加熱開始までの時間)は特に制限はないが、最後の重合開始剤の添加から0.5時間以上であることが好ましく、特に好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上、殊に好ましくは5時間以上である。重合時間の上限は通常72時間である。
なお、重合反応は、除熱がしやすい点で溶剤を還流しながら行うことが好ましい。
【0049】
上記アクリル系共重合体の製造においては、残存重合開始剤の量を低減させるため、追い込み加熱により、重合開始剤を加熱分解させることが好ましい。
【0050】
上記追い込み加熱温度は、上記重合開始剤の10時間半減期温度より高い温度で行うことが好ましく、具体的には通常40~150℃であり、ゲル化抑制の点から55~130℃であることが好ましく、特に好ましくは75~95℃である。追い込み加熱温度が高すぎると、アクリル系共重合体が黄変する傾向があり、低すぎると重合成分や重合開始剤が残存し、アクリル系共重合体の経時安定性や熱安定性が低下する傾向がある。
かくして、アクリル系共重合体を得ることができる。
【0051】
また、アクリル系共重合体は、側鎖に光活性部位、例えば重合性炭素二重結合基が導入されていてもよい。これにより粘着剤組成物の架橋効率を高めることができ、より短時間で粘着剤組成物を架橋することができ生産性を上げることができる。
【0052】
アクリル系共重合体の側鎖に重合性炭素二重結合基を導入する方法としては、例えば上述した水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)や官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)を含む共重合体を作製し、その後、これらの官能基と反応しうる官能基と重合性炭素二重結合基とを有する化合物を、重合性炭素二重結合基の活性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法を挙げることができる。
【0053】
これらの官能基の組み合わせとしては、エポキシ基(グリシジル基)とカルボキシ基、アミノ基とカルボキシ基、アミノ基とイソシアネート基、エポキシ基(グリシジル基)とアミノ基、水酸基とエポキシ基、水酸基とイソシアネート基等を挙げることができる。これらの官能基の組み合わせの中でも、反応制御のし易さから水酸基とイソシアネート基との組み合わせが好ましい。なかでも共重合体が水酸基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する組み合わせが好適である。
【0054】
重合性炭素二重結合基を有するイソシアネート化合物としては、上述した2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0055】
前記官能基と反応しうる官能基と重合性炭素二重結合基とを有する化合物の含有量は、粘着性や応力緩和性を向上させる観点から、アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下である。なお、下限値は通常0質量部である。
【0056】
アクリル系共重合体の水酸基価は、30mgKOH/g以上が好ましく、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g以上が特に好ましい。また、水酸基価の上限は、通常150mgKOH/gであり、好ましくは120mgKOH/gである。なお、前記水酸基価は、重合に用いた単量体の組成比からビニル系重合体1gに含まれる遊離の水酸基量を求め、これをアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウム量(単位mg)を計算することで求めることができる。
【0057】
アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、低温における貯蔵剪断弾性率(G')の増加を抑える点から-20℃以下であることが好ましく、より好ましくは-23℃以下、さらに好ましくは-25℃以下、特に好ましくは-30℃以下である。なお、高温における貯蔵剪断弾性率低下による糊はみだし等の懸念から、ガラス転移温度(Tg)の下限値は通常-50℃である。
【0058】
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置を用いて、動的粘弾性を周波数1Hzの剪断モードにて測定した際の損失正接(tanδ)が最大となった温度を読み取ることにより求められる。
例えば、アクリル系共重合体を、直径8mmの円柱体(高さ1.0mm)に成型し、これを粘弾性測定装置(T.A.Instruments社製、「DHR 2」)を用いて、以下の測定条件下で、損失正接(tanδ)を測定することができる。
【0059】
(測定条件)
・測定治具:Φ8mmパラレルプレート
・歪み:0.1%
・周波数:1Hz
・測定温度:-60~100℃
・昇温速度:5℃/分
【0060】
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、凝集力の高い粘着剤組成物が得られる観点から、40万以上であることが好ましく、より好ましくは50万以上、さらに好ましくは55万以上である。
また、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)の上限値は、取り扱い性や均一撹拌性の点から、150万以下であることが好ましく、より好ましくは120万以下、さらに好ましくは110万以下である。
【0061】
本発明において、重量平均分子量(Mw)は、例えば以下のようにして求めることができる。
(重量平均分子量の測定方法)
4mgのアクリル系共重合体に対して、テトラヒドロフラン(THF)12mLを用いて溶解させたものを測定試料とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)分析装置(東ソー社製「HLC-8320GPC」)を用いて、下記の条件で分子量分布曲線を測定することで、重量平均分子量(Mw)を求めることができる。
・ガードカラム:TSKguardcolumnHXL
・分離カラム:TSKgelGMHXL(4本)
・温度:40℃
・注入量:100μL
・ポリスチレン換算
・溶媒:THF
・流速:1.0mL/分
【0062】
前記アクリル系共重合体の含有量は、粘着剤組成物の総質量の通常10~75%であり、好ましくは12~73%、より好ましくは20~71%、特に好ましくは30~69%である。
【0063】
〔有機金属化合物〕
前記有機金属化合物は、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機鉄化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。なかでも、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物が好ましく、有機チタン化合物が特に好ましい。
【0064】
また、前記有機金属化合物は、金属アルコキシド、金属キレート、及び金属アシレートから選択される少なくとも1種であることが、粘着物性の点から好ましい。なかでも、金属アルコキシド、金属キレートが好ましい。
前記有機金属化合物を用いることにより、フレキシブル部材を構成する幅広い素材において安定した粘着力を有するとともに、とりわけポリイミドに対する粘着性に優れた粘着シートとする事ができる。
【0065】
通常、粘着シートの粘着性を向上するための添加剤(粘着助剤)としては、シランカップリング剤が一般的に用いられている。しかし、シランカップリング剤は、ガラス部材への粘着性向上効果に優れるものの、フレキシブル部材に対する粘着助剤としては不十分であった。
本発明者らは、上記事情のもと検討を積み重ねた。その結果、上記有機金属化合物を用いる事で、ガラスのみならず幅広いフレキシブル部材、とりわけポリイミドに対する安定した粘着力を有する、汎用性に優れた粘着シートが提供できることを見出したものである。
また、前記有機金属化合物を用いることにより、各種部材の表面上に単分子膜を形成し、凝集が抑制されて均一に分散する。これにより、フレキシブル性と接着性を両立した粘着シートとすることができ、さらに、前記有機金属化合物は高分子量であるため、粘着シートから揮発成分の揮発を抑制することができる。
【0066】
フレキシブル部材に対する粘着力向上効果は、以下のメカニズムで発現するものと考えられる。
前記有機金属化合物は、アクリル系共重合体の水酸基と可逆性の無い結合やキレートによる相互作用を形成する。さらに、有機金属化合物がアクリル系共重合体を含む粘着シートの表面上へ偏析し、フレキシブル部材上の官能基(例えばポリイミドの場合はマレイミド基やアミド基、ポリエステルの場合はエステル基)とも可逆性の無い結合やキレートによる相互作用を形成する。このように有機金属化合物は、アクリル系共重合体の水酸基、フレキシブル部材上の官能基と結合や相互作用を形成することにより、アクリル系共重合体とフレキシブル部材の界面における粘着強度が上昇するため、フレキシブル部材に対する粘着力が向上すると考えられる。
【0067】
[金属アルコキシド]
前記金属アルコキシドは、下記一般式(1)で表される化合物である。
(R1O)nM(OR2)m・・・(1)
前記一般式(1)において、Mは、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛、ジルコニウム、及び鉄からなる群から選択される1種の金属原子を表し、R1、R2は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数3~18の炭化水素基を表し、nは1~4の整数を表し、mは0以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。また、前記ヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子等が挙げられる。
【0068】
具体的な金属アルコキシドとしては、例えばチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラターシャリーブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラオクチルオキシド、チタンテトラ(2-エチルヘキシルオキシド)、ターシャリーアミルチタネート、テトラキス(オクタデシルオキシ)チタン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジ-トリデシルホスフェート)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(オクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルスルフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等のチタンアルコキシド化合物;
アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムセカンダリーブトキシド等のアルミニウムアルコキシド化合物;
テトラメトキシスタンナン、テトラエトキシスタンナン、トリフェノキシメチルスタンナン、1,2-ビス(トリエトキシスタンナン)エタン等のスズアルコキシド化合物;亜鉛メトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛プロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛2-エチルヘキサノエート、亜鉛ネオデカノエート等の亜鉛アルコキシド化合物;
ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムノルマルプロポキシド、ジルコニウムノルマルブトキシド、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m-アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ-ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m-アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3-メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2-ビス(2-プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2-(ビス2-プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト-O,O、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m-アミノ)フェニルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド化合物;
鉄(II)メトキシド、鉄(III)メトキシド、鉄(II)エトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(II)イソプロポキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(II)2-エチルヘキソキシド、鉄(III)2-エチルヘキソキシド等の鉄アルコキシド化合物等が挙げられる。
なかでも、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネートが好ましい。
【0069】
[金属キレート]
前記金属キレートとしては、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛、ジルコニウム、及び鉄からなる群から選択される1種の金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物が挙げられる。
【0070】
前記多座配位子Lとしては、例えばアセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらは、ケトエノール互変異性体化合物であり、多座配位子Lにおいてはエノールが脱プロトンしたエノラート(例えばアセチルアセトネート)であってもよい。
【0071】
また、前記金属キレートは、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。例えば、中心金属原子Mが1つである金属キレート化合物は下記一般式(2)で表される。
M(L)o(X)p ・・・(2)
前記一般式(2)において、o≧1、p≧0である。oが2以上の場合、o個のLは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。pが2以上の場合、p個のXは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。また、o+pはMの原子価を表す。
【0072】
前記単座配位子Xとしては、例えば塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2-エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基等のアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。
【0073】
具体的な前記金属キレートとしては、例えばチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタン-1,3-プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンアミノエチルアミノエタノレート、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ-n-ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ-sec-ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、モノsec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム-sec-ブチレート、アルミニウムエチレート等のアルミニウムキレート化合物;
スズテトラアセテート、スズテトラオクテート、ブチルスズトリアセテート、ブチルスズトリブチレート、ブチルスズトリヘキシレート、ブチルスズトリオクテート、ブチルスズトリラウレート、ブチルスズトリメチルマレート、オクチルスズトリアセテート、オクチルスズトリブチレート、オクチルスズトリヘキシレート、オクチルスズトリオクテート、オクチルスズトリラウレート、オクチルスズトリメチルマレート、フェニルスズトリブチレート、フェニルスズトリラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジブチレート、ジブチルスズジヘキシレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルマレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジブチレート、ジオクチルスズジヘキシレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジエチルマレート等のスズキレート化合物;
亜鉛プロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛アセチルアセテート、亜鉛エチルアセトアセテート、亜鉛アセチルアセトネート等の亜鉛キレート化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のジルコニウムキレート化合物;
トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)等の鉄キレート化合物等が挙げられる。
なかでも、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましく、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)が特に好ましい。
【0074】
[金属アシレート]
前記金属アシレートは、下記一般式(3)で表される化合物である。
M(OCOR3)q ・・・(3)
前記一般式(3)において、Mはチタン、アルミニウム、スズ、亜鉛、ジルコニウム、及び鉄からなる群から選択される1種の金属原子を、R3はヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基、qは1~4の整数であり、また、Mの原子価を表す。
前記R3のヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子等が挙げられる。
また、上記炭化水素基としては、例えば脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基等が挙げられる。なかでも脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0075】
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
前記脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば炭素数2~30の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数2~30の直鎖状または分岐状のアルケニル基、炭素数2~30の直鎖状または分岐状のアルキニル基等が挙げられる。
【0076】
前記芳香族炭化水素基としては、例えばアリール基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0077】
具体的な金属アシレートとしては、例えばトリノルマルブトキシチタンモノステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレート、ジイソプロポキシチタンジイソステアレート、(2-ノルマルブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、チタニウムステアレート、ノルマルブチルリン酸エステルチタン等のチタンアシレート化合物;ギ酸アルミニウム(トリギ酸アルミニウム等)、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム(トリプロピオン酸アルミニウム等)、酪酸アルミニウム(三酪酸アルミニウム等)、ミリスチン酸アルルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム等のアルミニウムアシレート化合物;酢酸スズ、オクタン酸スズ、ラウリル酸スズ、パルミチン酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、ナフテン酸スズ、ネオデカン酸スズ等のスズアシレート化合物;酪酸亜鉛、カプロン酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、ペラルゴン酸亜鉛、カプリン酸亜鉛、ウンデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、アラキン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、リグノセリン酸亜鉛、セロチン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛等の亜鉛アシレート化合物;オクチル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム等のジルコニウムアシレート化合物;ラウリン酸鉄(II)、ラウリン酸鉄(III)、パルミチン酸鉄(II)、パルミチン酸鉄(III)、ステアリン酸鉄(II)、ステアリン酸鉄(III)、オレイン酸鉄(II)、オレイン酸鉄(III)、ナフテン酸鉄(II)、ナフテン酸鉄(III)、ネオデカン酸鉄(II)、ネオデカン酸鉄(III)等の鉄アシレート等が挙げられる。
【0078】
前記有機金属化合物の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対し、通常0.01~5質量部であり、好ましくは0.05~3質量部であり、特に好ましくは0.1~1.5質量部である。有機金属化合物の含有量を前記範囲とすることにより、フレキシブル性に優れた粘着シートとすることができる。
【0079】
〔アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物〕
前記粘着剤組成物は、フレキシブル性に優れる点から、アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。
【0080】
前記アルキレングリコール骨格としては、低温における貯蔵剪断弾性率を低下させる観点から、炭素数2~10、更には2~8、特には2~6、殊には2~4のアルキレン鎖を有するアルキレングリコール骨格が好ましく、とりわけエチレングリコール骨格、プロピレングリコール骨格、ブチレングリコール骨格等が好ましく、より好ましくはプロピレングリコール骨格である。
【0081】
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物としては、例えば下記一般式(4)で示される単官能(メタ)アクリル系オリゴマーが挙げられる。
CH2=CR4-COO-R5-Y-(R6O)k-R7 ・・・(4)
式中、R4は水素またはメチル基を表す。R5及びR7は独立して、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数2~10のアルケニル基を表す。Yはウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレア結合の何れかから選択される結合基である。R6はエチレン基又はプロピレン基であるアルキレン基を表す。kは繰り返し単位の(C2H4O)rと(C3H6O)sとの合計繰り返し単位数であるr+sを表す、1~500の整数である。オキシエチレン構造とオキシプロピレン構造が併存する場合は、ランダム型又はブロック型であってもよい)。
【0082】
前記一般式(4)の正数「k」は、屈折率を低減させるとともに、屈曲時の高い復元性を維持しつつ、低温における貯蔵剪断弾性率を低下させる観点から、10~500であることが好ましく、より好ましくは100~450、さらに好ましくは200~400である。
【0083】
なかでも、アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物は、ウレタン結合を有する単官能ウレタン(メタ)アクリレートであることが、フレキシブル性に優れるから好ましい。
【0084】
前記単官能ウレタン(メタ)アクリレートは高極性でかつ鎖長が長いため、ポリマー鎖が絡み合うことで高い復元性が得られる傾向があり、また、分子回転性の高いオキシプロピレン構造を有するため低い貯蔵剪断弾性率が得られる傾向があることから、特に有効である。
【0085】
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物は、屈曲時の高い復元性を維持しつつ、低温における貯蔵剪断弾性率を低下させる観点から、ホモ重合した時の重合体のガラス転移温度が-40℃以下であることが好ましく、より好ましくは-45℃以下、さらに好ましくは-50℃以下である。
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物は、高温における貯蔵剪断弾性率低下による糊はみだし等の懸念からから、ホモ重合した時の重合体のガラス転移温度が-80℃以上であることが好ましく、より好ましくは-75℃以上、さらに好ましくは-70℃以上である。
【0086】
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、屈曲時の高い復元性を維持しつつ、低温における貯蔵剪断弾性率を低下させる観点から、3.0万以下であることが好ましく、より好ましくは2.8万以下、さらに好ましくは2.5万以下である。
また、前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)の下限値は、屈曲時の高い復元性を維持しつつ、ブリードアウトによる粘着性低下を防ぐ観点から、0.3万以上であることが好ましく、より好ましくは0.4万以上、さらに好ましくは0.5万以上である。
なお、アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、前記アクリル系共重合体で説明した「重量平均分子量の測定方法」に準じて求めることができる。
【0087】
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対し、通常10~100質量部であり、好ましくは20~90質量部であり、特に好ましくは40~80質量部である。アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物の含有量を前記範囲とすることにより、フレキシブル性に優れた粘着シートとすることができる傾向がある。
【0088】
また、本発明においては、前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物(以下、「その他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある)を用いてもよい。
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物としては、例えば単官能(メタ)アクリル系モノマー、多官能(メタ)アクリル系モノマー、多官能(メタ)アクリル系オリゴマー等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0089】
[単官能(メタ)アクリル系モノマー]
前記単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的にはn-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、及び、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
[多官能(メタ)アクリル系モノマー]
前記多官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0091】
[多官能(メタ)アクリル系オリゴマー]
前記多官能(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えば多官能ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、多官能エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、多官能ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー等の多官能(メタ)アクリル系オリゴマーを挙げることができる。
【0092】
なお、前記多官能(メタ)アクリル系モノマーや多官能(メタ)アクリル系オリゴマーを用いた場合には、架橋剤としても作用することとなる。
【0093】
前記その他のラジカル重合性化合物を用いる場合、その含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対し、通常10~100質量部であり、好ましくは20~90質量部であり、特に好ましくは40~80質量部である。その他のラジカル重合性化合物の含有量を前記範囲とすることにより、フレキシブル性に優れた粘着シートとすることができる傾向がある。
【0094】
〔光重合開始剤〕
前記粘着剤組成物には、アクリル系共重合体及び、有機金属化合物の他に、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は、活性エネルギー線によってラジカルを発生する化合物であればよい。
【0095】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0096】
光重合開始剤としては、開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤のいずれであってもよく、それぞれ単独に使用しても両者を混合して使用してもよく、さらに各々について1種又は2種以上を併用してもよい。
【0097】
本発明においては、アクリル系共重合体自体に重合性炭素二重結合基のような官能基を必要とせず、効率的に架橋できる点から、水素引抜型光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0098】
前記開裂型光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイドや、それらの誘導体等を挙げることができる。
【0099】
前記水素引抜型光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイル蟻酸メチル、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノンやその誘導体等を挙げることができる。なかでも、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンが好ましい。
【0100】
前記光重合開始剤を用いる場合、その含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して通常0.1~10質量部、なかでも0.5~6質量部、そのなかでも1~4質量部であることが好ましい。かかる含有量が前記下限値以上であると硬化不良を防げる傾向があり、前記上限値以下であると粘着剤組成物から析出する等の溶液安定性の低下を抑えやすく、脆化や着色の問題を抑制しやすい傾向がある。
【0101】
〔熱架橋剤〕
前記粘着剤組成物には、架橋密度をより向上して長期信頼性を改善する点から熱架橋剤を含有してもよい。
かかる熱架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。これらのなかでもアクリル系共重合体との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
【0102】
前記熱架橋剤を用いる場合、その含有量は、通常アクリル系共重合体100質量部に対して通常5~40質量部、好ましくは10~30質量部である。
【0103】
〔その他の成分〕
前記粘着剤組成物は、「その他の成分」として、本発明の効果を損なわない限度で必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、防錆剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、防錆剤、無機粒子等の各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて、三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物等の反応触媒を適宜含有してもよい。
これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。なお、本発明においては、シランカップリング剤を含まないことが、好ましい。
【0104】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0105】
紫外線吸収剤を用いる場合、その含有量としては、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。かかる含有量が前記下限値以上であると耐光信頼性が向上する傾向があり、前記上限値以下であると耐黄変性が向上する傾向がある。
【0106】
(防錆剤)
防錆剤としては、例えばトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類等が好ましく、光学部材が腐食するのを防止することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
防錆剤を用いる場合、その含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましく、なかでも0.1~3質量部であることが好ましい。
【0107】
前記その他の成分の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。かかる含有量が多すぎるとアクリル系共重合体との相溶性が低下し、耐久性が低下する傾向がある。
【0108】
粘着剤組成物は、アクリル系共重合体及び、有機金属化合物、好ましくはラジカル重合性化合物、光重合開始剤、必要に応じてさらに熱架橋剤やその他の成分をそれぞれ所定量混合することにより調製される。
【0109】
<本粘着シートの製造方法>
次に、本粘着シートの製造方法について説明する。
但し、以下の説明は、本粘着シートを製造する方法の一例であり、本粘着シートはかかる製造方法により製造されるものに限定されるものではない。
【0110】
本粘着シートの作製においては、アクリル系共重合体及び、有機金属化合物、好ましくはアルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物、光重合開始剤、必要に応じて熱架橋剤やその他の成分等を含有する本粘着シート形成用の粘着剤組成物を調製し、当該粘着剤組成物をシート状に成形し、架橋すなわち重合反応させて硬化させ、必要に応じて適宜加工を施すことにより、本粘着シートを作製すればよい。
【0111】
また、本粘着シートの作製においては、前記と同様にして本粘着シート形成用の粘着剤組成物を調製し、これを部材シート又はフレキシブル画像表示装置構成部材上にコーティングし、当該粘着剤組成物を硬化させることにより、本粘着シートを形成してもよい。 但し、この方法に限定するものではない。
【0112】
本粘着シート形成用の粘着剤組成物を調製する際、前記原料を、温度調節可能な混練機(例えば一軸押出機、二軸押出機、プラネタリーミキサー、二軸ミキサー、加圧ニーダー等)を用いて混練すればよい。
なお、種々の原料を混練する際、酸化防止剤等の各種添加剤は、予め樹脂と共にブレンドしてから混練機に供給してもよいし、予め全ての材料を溶融混合してから供給してもよいし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給してもよい。
【0113】
粘着剤組成物をシート状に成形する方法としては、公知の方法、例えばウェットラミネーション法、ドライラミネート法、Tダイを用いる押出キャスト法、押出ラミネート法、カレンダー法やインフレーション法、射出成形、注液硬化法等を採用することができる。なかでも、シートを製造する場合は、ウェットラミネーション法、押出キャスト法、押出ラミネート法が好適である。
【0114】
また、粘着剤組成物の硬化は、活性エネルギー線を照射することにより行うことができ、粘着剤組成物の成形体、例えばシート体に成形したものに、活性エネルギー線を照射することにより、本粘着シートを製造することができる。なお、活性エネルギー線の照射の他に、加熱してさらに硬化を図ることもできる。
【0115】
また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法等に関しては特に限定されず、光重合開始剤を活性化させてモノマー成分を重合できればよい。
光重合開始剤として水素引抜型光重合開始剤を用いた場合、アクリル系共重合体からも水素引抜反応を起こして、アクリル系共重合体が架橋構造に取り込まれ、架橋点が多い架橋構造を形成することができる。
したがって、本粘着シートは水素引抜型光重合開始剤を用いて硬化してなるものであることが好ましい。
【0116】
前記活性エネルギー線照射における活性エネルギー線としては、例えば遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線、可視光線等の光線、X線、α線、β線、γ線、電子線、プロトン線、中性子線等の電離性放射線が挙げられる。なかでも、光学装置構成部材へのダメージ抑制や反応制御の観点から紫外線が好適である。また、硬化速度、照射装置の入手のしやすさ、価格等からも、紫外線照射による硬化が有利である。
【0117】
紫外線照射の光源としては、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いることが挙げられる。なかでも、高圧水銀ランプを用いることが好ましい。
【0118】
活性エネルギー線照射量(積算光量)としては、硬化の点から、0.03~3J/cm2が好ましく、より好ましくは0.1~2J/cm2、さらに好ましくは0.3~1.5J/cm2の条件で行われる。
【0119】
また、本粘着シートの製造方法の別の実施態様として、粘着剤組成物を適切な溶剤に溶解させ、各種コーティング手法を用いて実施することもできる。
コーティング手法を用いた場合、前記の活性エネルギー線照射による硬化の他、熱硬化させることにより、本粘着シートを得ることもできる。コーティングの場合、本粘着シートの厚みは塗工厚みと塗工液の固形分濃度によって調整できる。
【0120】
例えば、粘着剤組成物を溶剤に溶解した後、離型フィルムにコーティングして乾燥し、活性エネルギー線照射により硬化し、本粘着シートを形成することができる。さらに、必要に応じて離型フィルムを積層してもよい。この場合、離型フィルムにコーティングして乾燥し、活性エネルギー線照射により硬化し、その上に離型フィルムを積層してもよいし、また、離型フィルムにコーティングして乾燥し、離型フィルムを積層した後、活性エネルギー線照射により硬化し本粘着シートを形成してもよい。
【0121】
かかる溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。なかでも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、トルエンが好ましく、特に酢酸エチルが好適に用いられる。
【0122】
溶剤の含有量としては、乾燥性から、アクリル系共重合体100質量部に対して、600質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましく、400質量部以下がさらに好ましく、300質量部以下が特に好ましい。一方、1質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましく、150質量部以上が特に好ましい。
コーティング方法としては、例えばロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷、バーコーティング等の慣用の方法により行なうことができる。
【0123】
前記乾燥後における粘着剤組成物中の溶剤含有量としては1質量%以下となることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0124】
乾燥温度としては、通常40~150℃であり、より好ましくは45~140℃、さらに好ましくは50~130℃、特に好ましくは55~120℃である。前記温度範囲であると、離型フィルムの熱変形を抑えつつ、効率的かつ比較的安全に溶剤を除去できる。
【0125】
乾燥時間としては、通常1~30分間であり、より好ましくは3~25分間、さらに好ましくは5~20分間である。前記時間範囲であると、効率的かつ十分に溶剤を除去できる。
【0126】
乾燥方法としては、例えば乾燥機、熱ロールによる乾燥、フィルムに熱風を吹き付ける乾燥等が挙げられる。なかでも、乾燥機を用いることが均一かつ容易に乾燥できる点から好ましい。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0127】
前記にて得られた粘着シートの少なくとも片面に、ブロッキング防止や異物付着防止の観点から、離型フィルムを設けることもできる。
【0128】
本粘着シートは、粘着剤組成物からなる粘着層(本粘着シート)の片面又は両面に、離型フィルムを積層してなる構成を備えた離型フィルム付き粘着シート(粘着シート積層体)として提供することもできる。
本粘着シートの両面に離型フィルムを設ける場合は、相対的に剥離力の低い軽剥離フィルムと、相対的に剥離力の高い重剥離フィルムが積層された積層体構成とするのが好ましい。
両面に離型フィルムを設けた離型フィルム付き粘着シートの使用時には、まず、一方の離型フィルム(軽剥離フィルム)を剥離して粘着シートの一方の面を露出させて、部材シート又はフレキシブル画像表示装置構成部材(第1部材とする)との貼り合わせを行い、他方の離型フィルム(重剥離フィルム)を剥離して露出した粘着シートの他方の面に、部材シート又はフレキシブル画像表示装置構成部材(第2部材とする)を貼り合わせればよい。
【0129】
かかる離型フィルムとしては、公知の離型フィルムを適宜用いることができる。
離型フィルムの材質としては、例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等のフィルムに、シリコーン樹脂等の離型剤を塗布して離型処理したものや、離型紙等を適宜選択して用いることができる。
その中でも、ポリエステルフィルム、さらにその中でもポチエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムが、透明性、機械強度、耐熱性、柔軟性などに優れている点で好ましい。上記基材に、シリコーン樹脂を主成分とする硬化型シリコーン系離型剤を硬化してなる離型層を設けた離型フィルムを使用することができる。
【0130】
一般的にフレキシブル性に優れた粘着シートを離型フィルム付き粘着シートとした場合、離型フィルムの剥離力が高いと、粘着シートが柔軟であるため、離型フィルムを剥離する際に粘着シートが変形して剥離痕がつきやすい傾向がある。
このため、フレキシブル性に優れた粘着シートに用いる離型フィルム、特に軽剥離フィルムは、従来、汎用的に使用していた軽剥離タイプの離型フィルムより、さらに軽い力で剥離できる剥離フィルムが好ましい。
【0131】
しかし、離型フィルムの軽剥離化のために、離型剤層の厚みを厚くすると、使用する離型剤の種類によっては、離型剤層由来の成分が粘着シートの表面に転着して、粘着シートの信頼性を損なう場合がある。このため、離型フィルムとしては、粘着シートからの離型性が良好であり、かつ、粘着シートへの離型剤の移行性が少ないことが好ましい。
【0132】
本粘着シートと離型フィルムとの剥離力は、1.5~0.05N/cmが好ましく、1.2~0.06N/cmがより好ましく、1.0~0.07N/cmがさらに好ましい。離型フィルムと粘着シートの剥離力は、試験速度:300m/分の180°剥離試験による測定値である。上記範囲であれば、本粘着シートから離型フィルムを剥離する際の剥離痕を防ぐことができる。
【0133】
また、本粘着シートから離型フィルムを剥離して露出した粘着面の、蛍光X線分析装置を用いて測定したケイ素原子のピーク強度は、100cps以下であるのが好ましい。ピーク強度が100cps以下であれば、粘着シート表面に移行した離型剤により、粘着シートを画像表示装置構成用積層体としたときの信頼性を損なうことがなく好ましい。かかる観点から、該ピーク強度は90cps以下であるのがより好ましく、80cps以下であるのがさらに好ましく、70cps以下であるのが殊に好ましい。なお下限は通常0cpsである。
【0134】
離型フィルムの厚みは、特に制限されない。なかでも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、10~250μmであることが好ましく、そのなかでも25~200μm、そのなかでも35~190μmであることがさらに好ましい。
【0135】
また、必要に応じて、エンボス加工や種々の凹凸(円錐や角錐形状や半球形状等)加工を行ってもよい。また、各種部材シートへの接着性を向上させる目的で、表面にコロナ処理、プラズマ処理及びプライマー処理等の各種表面処理を行ってもよい。
【0136】
本粘着シートは、粘着剤組成物から形成されてなるアクリル系粘着層のみからなる単層シートであっても、アクリル系粘着層や他の粘着剤層が複数積層されている複層シートであってもよい。
【0137】
<本粘着シートの物性>
本粘着シートは、次のような物性を有することができる。
【0138】
(ゲル分率)
本粘着シートのゲル分率は、85%以下であり、好ましくは80%以下、さらに好ましくは78%以下である。本粘着シートのゲル分率が前記数値以下であることにより、フレキシブル部材に対する粘着力を高めることができる。また、下限は、通常30%以上であり、好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上である。ゲル分率が前記下限値以上であることにより、形状を十分に保持することができる傾向がある。
前記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安になるものであり、後述の実施例に記載の測定条件で測定することができる。
【0139】
(貯蔵剪断弾性率)
本粘着シートは、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる、-20℃の貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))は1000kPa以下であり、400kPa以下であることが好ましく、300kPa以下であることが特に好ましく、250kPa以下であることが一層好ましい。
なお、本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))の下限値に関しては、高温における貯蔵剪断弾性率とのバランスから、50kPa以上であることが好ましい。
【0140】
本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))が前記範囲であることで、例えば本粘着シートを部材シートに貼着して、積層体或いは画像表示装置用積層体を形成した際、特に低温から高温において、積層体又は画像表示装置用積層体の折り曲げ時の層間応力を小さくすることができ、部材シート又はフレキシブル画像表示装置構成部材のデラミや割れを抑制することができる。
【0141】
本粘着シートは、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる、-30℃の貯蔵剪断弾性率(G'(-30℃))は1200kPa以下であることが好ましく、1000kPa以下であることがさらに好ましく、800kPa以下であることがさらに好ましく、700kPa以下であることが特に好ましく、500kPa以下であることが一層好ましい。
なお、本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(-30℃))の下限値に関しては、高温における貯蔵剪断弾性率とのバランスから、100kPa以上であることが好ましい。
【0142】
本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(-30℃))が前記範囲であることで、例えば本粘着シートを部材シートに貼着して、積層体或いは画像表示装置用積層体を形成した際、特に低温から高温において、積層体又は画像表示装置用積層体の折り曲げ時の層間応力を小さくすることができ、部材シート又はフレキシブル画像表示装置構成部材のデラミや割れを抑制することができる。
【0143】
本粘着シートは、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる、25℃の貯蔵剪断弾性率(G'(25℃))は高い粘着性が得られる観点から、100kPa以下であることが好ましく、50kPa以下であることがさらに好ましく、40kPa以下であることが特に好ましく、30kPa以下であることが一層好ましい。
なお、本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(25℃))の下限値に関しては、糊はみだし防止、及び粘着シートの形状維持の観点から、5kPa以上であることが好ましい。
【0144】
本粘着シートは、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる、60℃の貯蔵剪断弾性率(G'(60℃))は高い粘着性が得られる観点から、50kPa以下であることが好ましく、40kPa以下であることがさらに好ましく、35kPa以下であることが特に好ましく、30kPa以下であることが一層好ましい。
なお、本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(60℃))の下限値に関しては、糊はみだし防止、及び粘着シートの形状維持の観点から、1kPa以上であることが好ましい。
【0145】
本粘着シートは、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる、80℃の貯蔵剪断弾性率(G'(80℃))は高い粘着性が得られる観点から、30kPa以下であることが好ましく、25kPa以下であることがさらに好ましく、20kPa以下であることが特に好ましく、15kPa以下であることが一層好ましい。
なお、本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(80℃))の下限値に関しては、糊はみだし防止、及び粘着シートの形状維持の観点から、1kPa以上であることが好ましい。
【0146】
(損失正接(tanδ))
本粘着シートは、周波数1Hzの剪断モードで、動的粘弾性測定により得られる、25~60℃における損失正接(tanδ)が0.18以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.3以上であることが特に好ましい。上限値は、通常1である。25~60℃における損失正接(tanδ)が前記数値以上であると、フレキシブル性に優れる。
【0147】
(損失正接(tanδ)の極大点、及び、ガラス転移温度(Tg))
本粘着シートは、周波数1Hzの剪断モードで、動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の極大点が-20℃以下にあることが好ましく、-25℃以下にあることがさらに好ましく、-30℃以下にあることが特に好ましく、-35℃以下にあることが一層好ましい。下限値は、通常-80℃である。
当該損失正接(tanδ)の極大点は、ガラス転移温度(Tg)と解釈することができ、ガラス転移温度(Tg)が前記範囲にあることで、本粘着シートの貯蔵剪断弾性率(G'(-20℃))を1000kPa以下に調整しやすくなる。
【0148】
周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の変曲点が1点のみ観察される場合、言い換えれば、tanδ曲線が単峰山形状を呈する場合、ガラス転移温度(Tg)が単一であるとみなすことができる。
【0149】
損失正接(tanδ)の「極大点」とは、tanδ曲線におけるピーク値、すなわち微分した際に正(+)から負(-)に変化する変曲点の中で、所定範囲或いは全体範囲において最大の値を持つ点の意味である。
【0150】
種々の温度における貯蔵剪断弾性率G'及び損失正接(tanδ)は、レオメーターを用いて測定することができる。
【0151】
貯蔵剪断弾性率(G')及び損失正接(tanδ)は、本粘着シートを構成する粘着剤組成物に含まれる成分(例えば、前記のアクリル系共重合体や、ラジカル重合性化合物等)の種類及びその重量平均分子量等を調整したり、さらに粘着シートのゲル分率等を調整したりすることによって、前記範囲に調整することができる。但し、この方法に限定されるものではない。
【0152】
(最大ひずみ)
本粘着シートは、厚さ0.5~1.2mmとし、温度23℃にて10kPaの圧力を600秒印加した後のひずみ(γmax(23))が、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、100%以上であることが特に好ましい。
【0153】
(復元性)
本粘着シートは、厚さ0.5~1.2mmとし、温度23℃にて10kPaの圧力を600秒印加した後のひずみ(γmax(23))と、その後応力を除荷し600秒経過後のひずみ(γmin(23))から下記式にて計算される復元率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
復元率(%)=〔(γmax(23)-γmin(23))/γmax(23)〕×100
【0154】
本粘着シートがこのような復元性を有していれば、本粘着シートを部材シートに貼着し、低温又は高温下で折り畳み操作を行った場合であっても、屈曲状態に置かれたことによる折り跡が残らないフレキシブル性に優れた粘着シートとすることができる。なお、復元性は高い方が好ましいため、復元性の上限は100%である。
【0155】
本粘着シートにおいて、フレキシブル性を良好にするためには、アクリル系共重合体又は粘着層が、水酸基含有(メタ)アクリレート由来の構造部位を含有することが好ましく、粘着層がアルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物を含有することがさらに好ましい。
【0156】
前記アルキレングリコール骨格を有するラジカル重合性化合物としては、前述の一定範囲長さを有するアルキレン基を有するオキシアルキレン構造を含有する重合性化合物が好ましい。この様なアルキレングリコール骨格を有する重合性化合物を用いることで、アクリル系共重合体と結合しやすくなり、ポリマー鎖同士の絡み合いが強くなる。そのため、伸長前後のエントロピー差が大きくなり、エントロピー弾性によって復元性を向上することができる。
但し、復元性の調整方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0157】
(粘着力)
本粘着シートのアクリル系粘着剤層の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定されるが、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(CPI)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ITO層を蒸着したPETに貼着する場合には、1~50N/cmの粘着力を有することが好ましく、特に好ましくは2~30N/cmである。前記粘着力は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0158】
(透明性、ヘイズ)
本粘着シートは、目視観察にて透明性を有するものであり、透明性は各成分が均一に相溶していることを示すものである。
【0159】
また、本粘着シートは、ヘイズが1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、特に0.5%以下であることがより好ましい。
本粘着シートのヘイズが1.0%以下であることにより、画像表示装置用の用途に好適に使用することができる傾向がある。
本粘着シートのヘイズを前記範囲にするためには、本粘着シートが有機粒子等の粒子を含まないことが好ましい。
【0160】
(厚み)
本粘着シートの厚みは、特に制限されるものではなく、その厚みが10μm以上であれば、ハンドリング性が良好であり、また、厚みが1000μm以下であれば、本粘着シートの薄型化に寄与することができる。
よって、本粘着シートの厚みは、10μm以上であることが好ましく、なかでも15μm以上、特に20μm以上、更に25μm以上であることがより好ましい。
一方、上限に関しては、1000μm以下であることが好ましく、なかでも500μm以下、特に250μm以下、更に100μm以下、殊には75μm以下であることがさらに好ましい。
【0161】
<本粘着シートの好ましい用途>
本粘着シートは、画像表示装置構成部材の貼合に好適に使用されるものである。具体的には、ディスプレイ部材を構成する部材(「ディスプレイ部材」とも称する)、とりわけ、ディスプレイを作製するのに用いるフレキシブル画像表示装置構成部材の貼合に好適に使用されるものであり、フレキシブル画像表示装置構成部材用粘着シートとして使用される。
なお、フレキシブル画像表示装置構成部材については、後述するものと同一のものを使用することができる。
【0162】
<<画像表示装置用積層体>>
本発明の実施形態の一例に係る画像表示装置用積層体(以下、「本画像表示装置用積層体」と称することがある。)は、2つの画像表示装置構成部材が、本粘着シートを介して積層してなる構成を有する画像表示装置用積層体である。本画像表示装置用積層体は、2つのフレキシブル画像表示装置構成部材が、本粘着シートを介して積層してなる構成を有するフレキシブル画像表示装置用積層体(以下、「本フレキシブル画像表示装置用積層体」と称することがある。)であることが好ましい。
【0163】
本画像表示装置用積層体の構成要素のうち、本粘着シートについては上述の通りであり、粘着シート以外の要素について、以下説明する。
【0164】
(画像表示装置構成部材)
本画像表示装置用積層体を構成する画像表示装置構成部材としては、例えばフレキシブル画像表示装置構成部材が挙げられる。前記フレキシブル画像表示装置構成部材としては、例えば有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のフレキシブルディスプレイ、カバーレンズ(カバーフィルム)、偏光板、偏光子、位相差フィルム、バリアフィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、タッチセンサーフィルム等を挙げることができる。これらのうちのいずれか1種又は2種のうちの2つを組み合わせて使用すればよい。例えばフレキシブルディスプレイと、その他のフレキシブル画像表示装置構成部材との組み合わせや、カバーレンズと、その他のフレキシブル画像表示装置構成部材との組み合わせを挙げることができる。
【0165】
なお、フレキシブル画像表示装置構成部材とは、屈曲可能な部材、とりわけ、繰り返し屈曲可能な部材であることを意味する。特に、曲率半径が25mm以上の湾曲形状に固定が可能な部材、とりわけ、曲率半径25mm未満、より好ましくは、曲率半径3mm未満での繰り返しの曲げ作用に耐えることができる部材であることが好ましい。
【0166】
上述の構成において、フレキシブル画像表示装置構成部材の主成分としては、樹脂シート又はガラス等が挙げられる。
かかる樹脂シートの材質としては、例えばポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアラミド樹脂等を挙げることができ、これらは1種の樹脂であっても、又は2種以上の樹脂であってもよい。なかでも、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分として含む樹脂シートであることが好ましい。
ここで「主成分」とは、フレキシブル画像表示装置構成部材を構成する成分の中で最も多い重量比率を占める成分であることをいい、具体的にはフレキシブル画像表示装置構成部材を形成する樹脂組成物(樹脂シート)の50質量%以上を占めるものであり、さらには55質量%以上、特には60質量%以上を占めることが好ましい。
また、フレキシブル画像表示装置構成部材は、薄膜ガラスからなるものであってもよい。
【0167】
上述の構成において、2つのフレキシブル画像表示装置構成部材のいずれか一方、すなわち第1のフレキシブル画像表示装置構成部材は、特に、ASTM D882に準拠して測定した25℃の引張強度が10~900MPaであることが好ましく、なかでも15MPa以上800MPa以下、そのなかでも20MPa以上700MPa以下であることがさらに好ましい。
一方のフレキシブル画像表示装置構成部材の25℃引張強度(ASTM D882)が前記範囲であれば屈曲時にも割れにくくなり好ましい。
【0168】
また、他方のフレキシブル画像表示装置構成部材、すなわち、第2のフレキシブル画像表示装置構成部材に関しては、ASTM D882に準拠して測定した25℃の引張強度が10~900MPaであることが好ましく、なかでも15MPa以上800MPa以下、そのなかでも20MPa以上700MPa以下であることがさらに好ましい。
他方のフレキシブル画像表示装置構成部材の25℃引張強度(ASTM D882)が前記範囲であれば屈曲時にも割れにくくなり好ましい。
【0169】
前記引張強度の高いフレキシブル画像表示装置構成部材としては、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム、アラミドフィルム等を挙げることができ、これらの引張強度としては一般に900MPa以下である。
他方、前記引張強度がやや低いフレキシブル画像表示装置構成部材としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム等を挙げることができ、これらの引張強度としては通常10MPa以上である。
本フレキシブル画像表示装置用積層体は、このような引張強度がやや低い材料からなるフレキシブル画像表示装置構成部材を備えたものであっても、本粘着シートの作用により割れ等の不具合を抑制することができる。
【0170】
<本画像表示装置用積層体の製造方法>
本画像表示装置用積層体の製造方法としては、特に制限されるものではなく、上述のように、例えば、粘着剤組成物を画像表示装置構成部材上、好ましくはフレキシブル画像表示装置構成部材上に塗布して粘着シートを形成してもよいし、予め粘着シートを形成した後に、画像表示装置構成部材、好ましくはフレキシブル画像表示装置構成部材と貼合してもよい。
【0171】
<<フレキシブル画像表示装置>>
本発明の実施形態の一例に係るフレキシブル画像表示装置(以下、「本フレキシブル画像表示装置」と称することがある。)は、2つのフレキシブル画像表示装置構成部材が本粘着シートを介して貼り合わされた構成を有するフレキシブル画像表示装置用積層体を組み込んでなる画像表示装置である。例えば、2つのフレキシブル画像表示装置構成部材が本粘着シートを介して貼り合わされた構成を有するフレキシブル画像表示装置用積層体を、他の画像表示装置構成部材に積層することで、該積層体を備えた本フレキシブル画像表示装置を形成することができる。
【0172】
「フレキシブル画像表示装置」とは、繰り返し折り曲げても折り曲げの跡を残さず、折り曲げを解放した際には折り曲げる前の状態まで素早く復元することができ、折り曲げても歪みなく画像を表示できる画像表示装置をいう。
より具体的には、曲率半径が25mm以上の湾曲固定形状が可能な部材、とりわけ、曲率半径25mm未満、より好ましくは、曲率半径3mm未満での繰り返しの曲げ作用に耐えることができる部材からなる画像表示装置を挙げることができる。
【0173】
本積層体は、高温における環境下で折り畳み操作をしても、積層体のデラミや割れを防止でき、復元性も良好であるため、フレキシブル性に優れたフレキシブル画像表示装置を製造できることが特徴の一つである。
【実施例0174】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは、質量基準を意味する。
【0175】
<原材料>
先ず、実施例及び比較例で調製した(メタ)アクリル系重合体、及び粘着剤組成物の詳細について説明する。
【0176】
<(メタ)アクリル系共重合体>
・(メタ)アクリル系共重合体(1):2-エチルヘキシルアクリレート67部、エチルアクリレート10部、メチルアクリレート5部、2-ヒドロキシエチルアクリレート20部のランダム共重合体(水酸基価:83mgKOH/g、重量平均分子量:70万、Tanδピークで定義されるガラス転移温度:-23℃、)。
・(メタ)アクリル系共重合体(2):2-エチルヘキシルアクリレート60部、ブチルアクリレート15部、エチルメタクリレート5部、2-ヒドロキシエチルアクリレート14部及び、4-ヒドロキシブチルアクリレート4部のランダム共重合体(水酸基価:96mgKOH/g、重量平均分子量:94万、Tanδピークで定義されるガラス転移温度:-23℃、)
【0177】
<有機金属化合物>
・有機金属化合物(1):チタン金属キレート化合物(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC-400」)
・有機金属化合物(2):チタン金属アルコキシド化合物(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト38S」)
【0178】
<その他成分>
・光重合開始剤:4-メチルベンゾフェノンと2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの混合物(水素引抜型)(IGM社製「エザキュアTZT))
・ラジカル重合性化合物:ポリプロピレングリコール骨格ウレタンアクリレート(AGC社製「PEM-X264」)
・シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM403」)
【0179】
[実施例1~7、比較例1、2]
表1に示す通りの配合組成にて、粘着剤組成物の原材料及び、溶剤としての酢酸エチルを均一混合し、粘着剤組成物溶液(固形分濃度40質量%)を得た。
【0180】
前記粘着剤組成物溶液を、離型フィルム(三菱ケミカル社製、シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み100μm)上にコーティングした。コーティング後、温度90℃に加熱した乾燥機内に入れて10分間保持し、粘着剤組成物が含有する溶剤を揮発乾燥させた。
更に、溶剤を乾燥させた当該粘着剤組成物の表面に、離型フィルム(三菱ケミカル社製、シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み75μm)を積層した積層体を形成し、高圧水銀ランプ(波長365nm)を用いて、前記離型フィルムを介して前記粘着剤組成物に対して、紫外線照射を行い(積算光量については表1参照)、離型フィルム付粘着シートを得た。
得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。結果を後記の表1に示す。
【0181】
<貯蔵剪断弾性率(G')、損失正接(Tanδ)、ガラス転移温度(Tg)>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートから片面側の離型フィルムを取り除き、ハンドローラーで積層することを繰り返して厚さ約0.8mmに調整し、直径8mmの円状に打ち抜いたものをサンプルとした。得られたサンプルをレオメータ(T.A.Instruments社製「DHR-2」)に設置し、測定治具:直径8mmパラレルプレート、周波数:1Hz、測定温度:-60~100℃、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、-40~85℃における貯蔵剪断弾性率(G')の値並びに、25~60℃における損失正接(Tanδ)の値を読み取った。
また、得られた動的粘弾性の温度分散データから、ガラス転移温度(Tg)として、損失正接(tanδ)の極大点の温度を読み取った。
【0182】
<ゲル分率>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートから離型フィルムを取り除き、これをサンプルとした。
このサンプルを150メッシュのSUS製金網でサンプルを包み、酢酸エチル中に24時間浸漬した。その後70℃で4.5時間乾燥させ、酢酸エチル浸漬の前後における粘着シートの質量をそれぞれ測定し、両質量の差を金網中に残存した不溶解の粘着シートの質量とした。酢酸エチル浸漬前における粘着剤シートの質量に対する、金網中に残存した不溶解の粘着シートの質量百分率をゲル分率(%)として算出した。
【0183】
<対ガラス粘着力>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートから片面側の離型フィルムを取り除き、裏打ちフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル社製、ダイヤフィルムS-100、厚さ50μm)をハンドローラーで貼着した。これを幅10mm×長さ150mmの短冊状に裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、ソーダライムガラスにハンドローラーで貼着した。得られた積層体にオートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、粘着力測定サンプルを作製した。
得られた粘着力測定サンプルについて、23℃、50%RHの条件にて、180°をなす角度に剥離速度300mm/分にて引っ張りながら、ソーダライムガラスから裏打ちフィルムを剥離し、ロードセルで引張強度(N/cm)を測定して粘着力とした。
【0184】
<対ポリイミド(CPI)粘着力>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートから片面側の離型フィルムを取り除き、裏打ちフィルムとしてPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイヤフィルムS-100、厚さ50μm)をハンドローラーで貼着した。これを幅10mm×長さ150mmの短冊状に裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、予めソーダライムガラスに貼り合わせた透明ポリイミド(CPI)フィルム(KOLON社製「C_50」)にハンドローラーで貼着した。得られた積層体にオートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、粘着力測定サンプルを作製した。 得られた粘着力測定サンプルについて、23℃、50%RHの条件にて、180°をなす角度に剥離速度300mm/分にて引っ張りながら、ソーダライムガラスから裏打ちフィルムを剥離し、ロードセルで引張強度(N/cm)を測定して粘着力とした。
【0185】
<対ポリエチレンテレフタレート(PET)粘着力>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートから片面側の離型フィルムを取り除き、裏打ちフィルムとしてPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイヤフィルムS-100、厚さ50μm)をハンドローラーで貼着した。これを幅10mm×長さ150mmの短冊状に裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、予めソーダライムガラスに貼り合わせたPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイヤフィルムS-100、厚さ50μm)にハンドローラーで貼着した。得られた積層体にオートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、粘着力測定サンプルを作製した。
得られた粘着力測定サンプルについて、23℃、50%RHの条件にて、180°をなす角度に剥離速度300mm/分にて引っ張りながら、ソーダライムガラスから裏打ちフィルムを剥離し、ロードセルで引張強度(N/cm)を測定して粘着力とした。
【0186】
前記で測定した対ガラス、対CPI及び、対PETの粘着力の和、並びに平均値を求めた。
【0187】
<クリープ試験>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートから片面側の離型フィルムを取り除き、ハンドローラーで積層することを繰り返して厚さ約0.8mmに調整し、直径8mmの円状に打ち抜いたものをサンプルとした。
かかるサンプルについて、粘弾性測定装置(T.A.Instruments社製 「DHR2」)を用いて、23℃で10kPaの応力を10分間加えた後の最大歪み値(γmax)と、応力を除いた10分後の残留歪み値(γmin)を読み取った。
【0188】
<復元性>
クリープ試験で得られた最大歪み値(γmax)及び残留歪み値(γmin)を下記式に代入して、復元率を求めた。
復元率(%)={(γmax-γmin)/γmax}×100
【0189】
【0190】
アクリル系共重合体及び、特定の有機金属化合物を含有する粘着剤組成物から形成され、-20℃における貯蔵弾性率及び、ゲル分率が特定範囲である実施例1~7の粘着シートは、ポリイミドやポリエチレンテレフタレートといったフレキシブル部材に対する粘着力に優れるものであった。また、実施例1~7の粘着シートは、貯蔵弾性率が低く、23℃における復元率に優れているため、フレキシブル性に優れるものであった。
一方、有機金属化合物を含まない比較例1、2の粘着シートは、フレキシブル部材に対する粘着力に劣るものであった。
本発明の粘着シートは、フレキシブル部材に対する粘着力に優れ、かつ、フレキシブル性を有するため、ベンダブル、フォルダブル、ローラブル、ストレッチャブル等の様々なフレキシブル画像表示装置を得るための粘着シートとして有用であり、とりわけ、繰り返し折り曲げが生じるフォルダブル画像表示装置用の粘着シートに好適である。