(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103258
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】液晶組成物、液晶硬化層、光学フィルムおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007497
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】酒井 飛鷹
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐貴
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149DA02
2H149DA24
2H149DB13
2H149FA02X
2H149FA33Y
2H149FD04
2H149FD21
2H149FD25
2H149FD28
(57)【要約】
【課題】本発明は、塗布時の析出物の発生を抑制し、配向性に優れた液晶硬化層を形成することがでる液晶組成物、液晶硬化層、光学フィルムおよび画像表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】液晶化合物と、添加剤と、溶媒とを含有する液晶組成物であって、
液晶化合物における、HSP値の分散力項をδDaとし、極性項をδPaとし、水素結合項をδHaとし、
添加剤における、HSP値の分散力項をδDbとし、極性項をδPbとし、水素結合項をδHbとし、常温常圧下での沸点をBpとした際に、
下記式(1)および(2)をいずれも満たす、液晶組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物と、添加剤と、溶媒とを含有する液晶組成物であって、
前記液晶化合物における、ハンセン溶解度パラメーターの分散力項をδDaとし、極性項をδPaとし、水素結合項をδHaとし、
前記添加剤における、ハンセン溶解度パラメーターの分散力項をδDbとし、極性項をδPbとし、水素結合項をδHbとし、25℃、1気圧における沸点をBpとした際に、
下記式(1)および(2)をいずれも満たす、液晶組成物。
【数1】
【請求項2】
前記添加剤の含有量が、前記液晶化合物100質量部に対して1~30質量部である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
下記式(3)を満たす、請求項1に記載の液晶組成物。
【数2】
【請求項4】
前記添加剤の沸点が下記式(4)を満たす、請求項1に記載の液晶組成物。
【数3】
【請求項5】
前記添加剤が液晶性を示さない、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項6】
前記液晶化合物が、下記式(5)で表される化合物である、請求項1に記載の液晶組成物。
P1-L1-D5-(A1)a1-D3-(G1)g1-D1-〔Ar-D2〕q1-(G2)g2-D4-(A2)a2-D6-L2-P2 ・・・(5)
ここで、前記式(5)中、
a1、a2、g1およびg2は、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a1およびg1の少なくとも一方は1を表し、a2およびg2の少なくとも一方は1を表す。
q1は、1または2を表す。
D1、D2、D3、D4、D5およびD6は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR1R2-、-CR3=CR4-、-NR5-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。ただし、q1が2である場合、複数のD2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
G1およびG2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
A1およびA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
P1およびP2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、P1およびP2の少なくとも一方は重合性基を表す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。ただし、q1が2である場合、複数のArは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【請求項7】
前記液晶化合物が、棒状液晶化合物であり、
前記棒状液晶化合物の長軸方向と短軸方向との屈折率差Δnが、下記式(6)を満たす、請求項1に記載の液晶組成物。
Δn(450)/Δn(550)<1.0 (6)
ここで、前記式(6)中、Δn(450)は450nmにおける屈折率差を表し、Δ(550)は550nmにおける屈折率差を表す。
【請求項8】
前記式(5)中のArが、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す、請求項6に記載の液晶組成物。
【化1】
ここで、前記式(Ar-1)~(Ar-5)中、
*は、結合位置を表す。
Q
1は、NまたはCHを表す。
Q
2は、-S-、-O-、または、-N(R
6)-を表し、R
6は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y
1は、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~12の芳香族複素環基、または、置換基を有してもよい炭素数6~20の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
7、-NR
8R
9、-SR
10、-COOR
11、または、-COR
12を表し、R
7~R
12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z
1およびZ
2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
A
3およびA
4は、それぞれ独立に、-O-、-N(R
13)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R
13は、水素原子または置換基を表す。
Xは、第14~16族の非金属原子を表す。ただし、前記非金属原子には、水素原子または置換基が結合していてもよい。
D
7およびD
8は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR
1R
2-、-CR
3=CR
4-、-NR
5-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
L
3およびL
4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
P
3およびP
4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、P
3およびP
4の少なくとも1つが重合性基を表す。
Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
Q
3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。
【請求項9】
前記添加剤が、環構造を有さない化合物である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項10】
前記添加剤が、脂肪族炭化水素化合物であって、前記脂肪族炭化水素化合物を構成する-CH2-の1個以上が-O-または-CO-で置換されていてもよい化合物である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶組成物の配向状態を固定化してなる液晶硬化層。
【請求項12】
ポジティブAプレートである、請求項11に記載の液晶硬化層。
【請求項13】
請求項11に記載の液晶硬化層を有する、光学フィルム。
【請求項14】
前記液晶硬化層が、光配向膜の表面に形成されている、請求項13に記載の光学フィルム。
【請求項15】
請求項13に記載の光学フィルムを有する、画像表示装置。
【請求項16】
液晶表示装置である、請求項15に記載の画像表示装置。
【請求項17】
有機EL表示装置である、請求項15に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、液晶硬化層、光学フィルムおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートおよび位相差フィルム等の光学フィルムは、画像着色解消または視野角拡大のために、様々な画像表示装置で用いられている。
光学フィルムとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、液晶硬化層を有する光学フィルムを使用することが提案されている。
【0003】
このような液晶硬化層として、例えば、特許文献1には、液晶化合物、ハイソルブMTEMおよび溶媒を含有する液晶組成物を用いて形成される光学異方性層が知られている(例えば、[0098]など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された上記液晶組成物について検討したところ、液晶硬化層の配向性は良好であったが、液晶組成物の塗布時に析出物が発生する場合があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、塗布時の析出物の発生を抑制し、配向性に優れた液晶硬化層を形成することがでる液晶組成物、液晶硬化層、光学フィルムおよび画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、液晶化合物とともに、所定のパラメーターが特定の範囲を満たす添加剤を配合した液晶組成物を用いると、塗布時の析出物の発生が抑制され、配向性に優れた液晶硬化層を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
[1] 液晶化合物と、添加剤と、溶媒とを含有する液晶組成物であって、
液晶化合物における、ハンセン溶解度パラメーターの分散力項をδDaとし、極性項をδPaとし、水素結合項をδHaとし、
添加剤における、ハンセン溶解度パラメーターの分散力項をδDbとし、極性項をδPbとし、水素結合項をδHbとし、25℃、1気圧における沸点をBpとした際に、
後述する式(1)および(2)をいずれも満たす、液晶組成物。
[2] 添加剤の含有量が、液晶化合物100質量部に対して1~30質量部である、[1]に記載の液晶組成物。
[3] 後述する式(3)を満たす、[1]または[2]に記載の液晶組成物。
[4] 添加剤の沸点が後述する式(4)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶組成物。
[5] 添加剤が液晶性を示さない、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶組成物。
[6] 液晶化合物が、後述する式(5)で表される化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の液晶組成物。
[7] 液晶化合物が、棒状液晶化合物であり、
棒状液晶化合物の長軸方向と短軸方向との屈折率差Δnが、後述する式(6)を満たす、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶組成物。
[8] 後述する式(5)中のArが、後述する式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す、[6]に記載の液晶組成物。
[9] 添加剤が、環構造を有さない化合物である、[1]~[8]のいずれかに記載の液晶組成物。
[10] 添加剤が、脂肪族炭化水素化合物であって、脂肪族炭化水素化合物を構成する-CH2-の1個以上が-O-または-CO-で置換されていてもよい化合物である、[1]~[9]のいずれかに記載の液晶組成物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の液晶組成物の配向状態を固定化してなる液晶硬化層。
[12] ポジティブAプレートである、[11]に記載の液晶硬化層。
[13] [11]または[12]に記載の液晶硬化層を有する、光学フィルム。
[14] 液晶硬化層が、光配向膜の表面に形成されている、[13]に記載の光学フィルム。
[15] [13]または[14]に記載の光学フィルムを有する、画像表示装置。
[16] 液晶表示装置である、[15]に記載の画像表示装置。
[17] 有機EL表示装置である、[15]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布時の析出物の発生を抑制し、配向性に優れた液晶硬化層を形成することがでる液晶組成物、液晶硬化層、光学フィルムおよび画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、光学フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記である。
また、本明細書において、表記される2価の基(例えば、-CO-O-)の結合方向は、結合位置を明記している場合を除き、特に制限されず、例えば、後述する式(5)中のD1が-CO-NR-である場合、G1側に結合している位置を*1、Ar側に結合している位置を*2とすると、D1は、*1-CO-NR-*2であってもよく、*1-NR-CO-*2であってもよい。
【0012】
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、それぞれ、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚み方向のレターデーションを表す。なお、波長λは、特に記載がないときは、550nmとする。
また、本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。
具体的には、AxoScan OPMF-1にて、平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0013】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、液晶化合物と、添加剤と、溶媒とを含有する液晶組成物である。
また、本発明の液晶組成物は、液晶化合物における、ハンセン溶解度パラメーターの分散力項をδDaとし、極性項をδPaとし、水素結合項をδHaとし、かつ、添加剤における、ハンセン溶解度パラメーターの分散力項をδDbとし、極性項をδPbとし、水素結合項をδHbとし、25℃、1気圧における沸点をBpとした際に、下記式(1)および(2)をいずれも満たす液晶組成物である。
【数1】
【0014】
ここで、ハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameters:HSP)は、物質の溶解度を3つの成分(分散項δd,極性項δp,水素結合項δh)に分割し、3次元空間に表したものである。分散項δdは分散力による効果、極性項δpは双極子間力による効果、水素結合項δhは水素結合力の効果を示す。
また、ハンセン溶解度パラメーターの定義と計算は、Charles M.Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook (CRCプレス,2007年)に記載されている。また、コンピュータソフトウエア Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることにより、文献値等が知られていない化合物に関しても、その化学構造から簡便にハンセン溶解度パラメーターを推算することができる。
本発明においては、HSPiPバージョン5.1.08を用いて、推算値を用いることにより、液晶化合物および添加剤の分散項δd、極性項δp、水素結合項δhを求める。
また、本発明においては、液晶組成物が液晶化合物を2種以上含有している場合、いずれか1種の液晶化合物との関係で上記式(1)を満たし、かつ、上記式(2)を満たす添加剤を含有していればよい。
【0015】
本発明においては、上述した通り、液晶化合物とともに、上記式(1)および(2)を満たす添加剤を配合した液晶組成物を用いることにより、塗布時の析出物の発生が抑制され、配向性に優れた液晶硬化層を形成することができる。
この効果が発現する理由は、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、本発明者らは、液晶化合物との関係で上記式(1)を満たす添加剤を配合することにより、液晶化合物と添加剤との親和性が高くなり、互いに相互作用することによって液晶化合物の結晶化が抑制されたため、塗布時の析出物の発生が抑制されたと推察している。
また、本発明者らは、上記式(2)を満たす添加剤を配合することにより、液晶化合物の運動性が向上し、熟成初期において配向欠陥が解消されやすくなったため、配向性に優れた液晶硬化層を形成することができたと推察している。
以下、本発明の液晶組成物の各成分について詳細に説明する。
【0016】
本発明の液晶組成物は、塗布時の析出物の発生をより抑制できる理由から、下記式(3)を満たしていることが好ましく、下記式(3-1)を満たしていることがより好ましい。
【数2】
【0017】
〔液晶化合物〕
本発明の液晶組成物が含有する液晶化合物は特に限定されず、従来公知の液晶化合物を用いることができる。
一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。更にそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。
本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物(円盤状液晶化合物)を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、または、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1や特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]や特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明においては、塗布時の析出物の発生をより抑制できる理由から、上記液晶化合物が、棒状液晶化合物であり、かつ、長軸方向と短軸方向との屈折率差Δnが下記式(6)を満たしていることが好ましい。
Δn(450)/Δn(550)<1.0 (6)
ここで、上記式(6)中、Δn(450)は450nmにおける屈折率差を表し、Δ(550)は550nmにおける屈折率差を表す。
また、棒状液晶化合物の長軸方向とは、分子内で最も長い軸の方位のことをいい、短軸方向とは、長軸方向に直交する方位のことをいう。
また、屈折率差Δnは、棒状液晶化合物を用いて作製した光学異方性層について、上述した方法で測定されるRe(λ)の値(nm)を光学異方性層の膜厚の値(nm)で除算して値をいう。なお、測定対象となる光学異方性層、すなわち、棒状液晶化合物を用いて作製した光学異方性層は、以下の手順で作製した光学異方性層を用いる。
すなわち、下記組成を有する液晶組成物Lを、ラビング処理されたポリイミド配向膜(日産化学工業(株)製SE-150)付ガラス基板に、スピンコートにより塗布する。
次いで、塗膜を加熱し、液晶性を示す温度で配向処理し、液晶層を形成する。
次いで、液晶性を示す温度から40℃低い温度まで冷却して1000mJ/cm2の紫外線照射による配向固定化を行い、光学異方性膜を作製する。
【0019】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物L
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・棒状液晶化合物 15.00質量部
・光重合開始剤(イルガキュア819、BASF社製) 0.45質量部
・下記含フッ素化合物A 0.12質量部
・クロロホルム 35.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0020】
【0021】
本発明においては、液晶硬化層の耐久性が向上する理由から、上記液晶化合物が、重合性基を有していることが好ましく、2個以上の重合性基を有していることがより好ましい。
ここで、重合性基としては、後述する式(5)中のP1およびP2において説明する重合性基と同様のものが挙げられ、中でも、後述する式(P-1)~(P-20)のいずれかで表される重合性基が好適に挙げられる。
【0022】
本発明においては、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となる理由から、上記液晶化合物が、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
P1-L1-D5-(A1)a1-D3-(G1)g1-D1-〔Ar-D2〕q1-(G2)g2-D4-(A2)a2-D6-L2-P2 ・・・(5)
【0023】
上記式(5)中、a1、a2、g1およびg2は、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a1およびg1の少なくとも一方は1を表し、a2およびg2の少なくとも一方は1を表す。
また、上記式(5)中、q1は、1または2を表す。
また、上記式(5)中、D1、D2、D3、D4、D5およびD6は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR1R2-、-CR3=CR4-、-NR5-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。ただし、q1が2である場合、複数のD2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(5)中、G1およびG2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
また、上記式(5)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
また、上記式(5)中、L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
また、上記式(5)中、P1およびP2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、P1およびP2の少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、後述する式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、P1およびP2ならびに後述する式(Ar-3)中のP3およびP4の少なくとも1つが重合性基を表す。
また、上記式(5)中、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。ただし、q1が2である場合、複数のArは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
上記式(5)中、a1、a2、g1およびg2は、本発明の液晶組成物がスメクチック相の液晶状態を示しやすくなる理由から、いずれも1であることが好ましい。
また、形成される液晶硬化層の耐久性がより良好となる理由から、a1およびa2がいずれも0であり、かつ、g1およびg2がいずれも1であることが好ましい。
【0025】
上記式(5)中、q1は、1であることが好ましい。
【0026】
上記式(5)中、D1、D2、D3、D4、D5およびD6の一態様が示す2価の連結基としては、例えば、-CO-、-O-、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR1R2-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR1R2-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-CO-O-CR1R2-、-NR5-CR1R2-、および、-CO-NR5-などが挙げられる。R1、R2およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
これらのうち、-CO-、-O-、および、-CO-O-のいずれかであることが好ましい。
【0027】
上記式(5)中、G1およびG2の一態様が示す炭素数6~20の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;が挙げられる。なかでも、ベンゼン環(例えば、1,4-フェニル基など)が好ましい。
【0028】
上記式(5)中、G1およびG2の一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基としては、5員環又は6員環であることが好ましい。また、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよいが飽和脂環式炭化水素基が好ましい。G1およびG2で表される2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、特開2012-21068号公報の[0078]段落の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0029】
本発明においては、形成される液晶硬化層の耐久性がより良好となる理由から、上記式(5)中のG1およびG2は、シクロアルカン環であることが好ましい。
シクロアルカン環としては、具体的には、例えば、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環などが挙げられる。
これらのうち、シクロヘキサン環が好ましく、1,4-シクロヘキシレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が更に好ましい。
【0030】
また、上記式(5)中、G1およびG2について、炭素数6~20の芳香環または炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキルチオール基、および、N-アルキルカルバメート基などが挙げられ、中でも、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、または、ハロゲン原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基およびシクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基およびメトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、上記で例示したアルキル基にオキシカルボニル基(-O-CO-基)が結合した基が挙げられ、中でも、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基またはイソプロポキシカルボニル基が好ましく、メトキシカルボニル基がより好ましい。
アルキルカルボニルオキシ基としては、上記で例示したアルキル基にカルボニルオキシ基(-CO-O-基)が結合した基が挙げられ、中でも、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基またはイソプロピルカルボニルオキシ基が好ましく、メチルカルボニルオキシ基がより好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0031】
上記式(5)中、A1およびA2の一態様が示す炭素数6~20以上の芳香環としては、上記式(5)中のG1およびG2において説明したものと同様のものが挙げられる。
また、上記式(5)中、A1およびA2の一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基としては、上記式(5)中のG1およびG2において説明したものと同様のものが挙げられる。
なお、A1およびA2について、炭素数6~20の芳香環または炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0032】
上記式(5)中、L1およびL2の一態様が示す炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、へプチレン基などが好適に挙げられる。なお、L1およびL2は、上述した通り、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基であってもよく、Qで表される置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0033】
上記式(5)中、P1およびP2が示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。また、アリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~10がより好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6~18が好ましく、6~12がより好ましい。また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0034】
上記式(5)中、P1およびP2の少なくとも一方が示す重合性基は、特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、公知のラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を挙げることができる。この場合、重合速度はアクリロイルオキシ基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイルオキシ基が好ましいが、メタクリロイルオキシ基も重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、公知のカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基が特に好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては、下記式(P-1)~(P-20)のいずれかで表される重合性基が挙げられる。
【0035】
【0036】
上記式(5)中、形成される液晶硬化層の耐久性が良好となる理由から、上記式(5)中のP1およびP2が、いずれも重合性基であることが好ましく、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0037】
一方、上記式(5)中、Arの一態様が示す炭素数6~20以上の芳香環としては、上記式(5)中のG1およびG2において説明したものと同様のものが挙げられる。
また、上記式(5)中、Arの一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基としては、上記式(5)中のG1およびG2において説明したものと同様のものが挙げられる。
なお、Arについて、炭素数6~20の芳香環または炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0038】
本発明においては、塗布時の析出物の発生をより抑制できる理由から、上記液晶化合物が、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を有する化合物であることが好ましく、上記式(5)で表され、かつ、上記式(5)中のArが、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す化合物であることがより好ましい。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-5)中、*は、結合位置を表すが、上記式(5)中のArが下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す場合は、*は、D1またはD2との結合位置を表す。
【0039】
【0040】
上記式(Ar-1)中、Q1は、NまたはCHを表し、Q2は、-S-、-O-、または、-N(R6)-を表し、R6は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Y1は、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~12の芳香族複素環基、または、置換基を有してもよい炭素数6~20の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
R6が示す炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
Y1が示す炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
Y1が示す炭素数3~12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピリジル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
Y1が示す炭素数6~20の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
また、Y1が有していてもよい置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0041】
また、上記式(Ar-1)~(Ar-5)中、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR7、-NR8R9、-SR10、-COOR11、または、-COR12を表し、R7~R12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、tert-ブチル基、1,1-ジメチル-3,3-ジメチル-ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基;等が挙げられる。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられ、炭素数6~12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
炭素数6~20の1価の芳香族複素環基としては、具体的には、例えば、4-ピリジル基、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であるのが好ましい。
一方、R7~R10が示す炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0042】
Z
1およびZ
2は、上述した通り、互いに結合して芳香環を形成してもよく、例えば、上記式(Ar-1)中のZ
1およびZ
2が互いに結合して芳香環を形成した場合の構造としては、例えば、下記式(Ar-1a)で表される基が挙げられる。なお、下記式(Ar-1a)中、*は、上記式(5)中のD
1またはD
2との結合位置を表す。
【化4】
ここで、上記式(Ar-1a)中、Q
1、Q
2およびY
1は、上記式(Ar-1)において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0043】
また、上記式(Ar-2)および(Ar-3)中、A3およびA4は、それぞれ独立に、-O-、-N(R13)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R13は、水素原子または置換基を表す。
R13が示す置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0044】
また、上記式(Ar-2)中、Xは、第14~16族の非金属原子を表す。ただし、上記非金属原子には、水素原子または置換基が結合していてもよい。
また、Xが示す第14~16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、水素原子または置換基が結合した窒素原子〔=N-RN1,RN1は水素原子または置換基を表す。〕、水素原子または置換基が結合した炭素原子〔=C-(RC1)2,RC1は水素原子または置換基を表す。〕が挙げられる。
置換基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、水酸基等が挙げられる。
【0045】
また、上記式(Ar-3)中、D7およびD8は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR1R2-、-CR3=CR4-、-NR5-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
ここで、2価の連結基としては、上記式(5)中のD1、D2、D3、D4、D5およびD6において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0046】
また、上記式(Ar-3)中、L3およびL4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
ここで、アルキレン基としては、上記式(5)中のL1およびL2において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0047】
また、上記式(Ar-3)中、P3およびP4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、P3およびP4少なくとも1つが重合性基を表す。
1価の有機基としては、上記式(5)中のP1およびP2において説明したものと同様のものが挙げられる。
また、重合性基としては、上記式(5)中のP1およびP2において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
ここで、AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
また、Q3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
AxおよびAyとしては、国際公開第2014/010325号の[0039]~[0095]段落に記載されたものが挙げられる。
また、Q3が示す炭素数1~20のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられ、置換基としては、上記式(5)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0049】
上記式(5)で表される化合物としては、特開2019-139222号公報の段落[0019]~[0023]に記載された重合性化合物;国際公開第2019/160014号の段落[0059]~[0061]に記載された重合性化合物;国際公開第2019/160016号の段落[0055]に記載された重合性化合物;下記式で表される化合物(1-1)~化合物(1-19);下記式で表される化合物(2-1)~化合物(2-5);などが挙げられる。なお、化合物(1-14)の構造中、アクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、化合物(1-14)は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
また、上記式(5)で表される化合物としては、例えば、特開2010-084032号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0067]~[0073]に記載の化合物)、特開2016-053709号公報に記載の一般式(II)で表される化合物(特に、段落番号[0036]~[0043]に記載の化合物)、および、特開2016-081035公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0043]~[0055]に記載の化合物)等のうち、スメクチック性を示すものが挙げられる。
【0058】
更に、上記式(5)で表される化合物としては、下記式(1)~(22)で表される化合物のうち、スメクチック性を示すものが好適に挙げられ、具体的には、下記式(1)~(22)中のK(側鎖構造)として、下記表1~表3に示す側鎖構造を有する化合物がそれぞれ挙げられる。
なお、下記表1~表3中、Kの側鎖構造に示される「*」は、芳香環との結合位置を表す。
また、下記表2中の2-2および下記表3中の3-2で表される側鎖構造において、それぞれアクリロイルオキシ基およびメタクリロイル基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【化12】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
〔添加剤〕
本発明の液晶組成物が含有する添加剤は、上述した液晶化合物との関係で上記式(1)を満たし、かつ、上記式(2)を満たす化合物であれば特に限定されない。
【0063】
本発明においては、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となる理由から、上記添加剤の沸点(Bp)が下記式(4)を満たしていることが好ましい。
【数3】
【0064】
また、本発明においては、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となる理由から、上記添加剤が液晶性を示さない化合物であることが好ましい。
ここで、「液晶性を示さない」ことは、20~250℃の範囲を10℃刻みでクロスニコル状態での偏光顕微鏡観察することで確認することができる。
【0065】
また、本発明においては、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となる理由から、上記添加剤が、環構造を有さない化合物であることが好ましい。
【0066】
また、本発明においては、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となる理由から、上記添加剤が、脂肪族炭化水素化合物であって、脂肪族炭化水素化合物を構成する-CH2-の1個以上が-O-または-CO-で置換されていてもよい化合物であることが好ましい。
【0067】
上記添加剤としては、具体的には、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
【化13】
【0068】
本発明においては、上記添加剤の含有量は、上述した液晶化合物100質量部に対して1~30質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることが更に好ましい。なお、添加剤の含有量の基準となる液晶化合物は、添加剤との関係で上記式(1)を満たす液晶化合物には限定されず、液晶組成物に含有する液晶化合物のことをいい、2種以上の液晶化合物を含有する場合にはそれらの合計量をいう。
上記添加剤の含有量が、上述した液晶化合物100質量部に対して1質量部以上であると、塗布時の析出物の発生をより抑制できる。
また、上記添加剤の含有量が、上述した液晶化合物100質量部に対して30質量部以下であると、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となる。
【0069】
〔溶媒〕
本発明の液晶組成物が含有する溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、および、にアミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が挙げられる。溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
〔重合開始剤〕
本発明の液晶組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)等が挙げられる。
重合開始剤としては、オキシム型の重合開始剤も好ましい。その具体例としては、例えば、国際公開第2017/170443号の[0049]~[0052]段落に記載された開始剤が挙げられる。
【0071】
〔二色性物質〕
本発明の液晶組成物は、後述する液晶硬化層を偏光子(光吸収異方性膜)として利用する観点から、二色性物質を含有していてもよい。
本発明において、二色性物質とは、方向によって吸光度が異なる色素を意味する。二色性物質は、液晶性を示してもよいし、液晶性を示さなくてもよい。
【0072】
二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および、無機物質(例えば量子ロッド)などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]段落、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特開2016-006502号公報の[0005]~[0051]段落、特開2018-053167号公報[0014]~[0032]段落、特開2020-11716号公報の[0014]~[0033]段落、国際公開第2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、国際公開2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、国際公開第2017/154835号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/154695号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/195833号の[0013]~[0037]段落、国際公開第2018/164252号の[0014]~[0034]段落、国際公開第2018/186503号の[0021]~[0030]段落、国際公開第2019/189345号の[0043]~[0063]段落、国際公開第2019/225468号の[0043]~[0085]段落、国際公開第2020/004106号の[0050]~[0074]段落、国際公開第2021/044843号の[0015]~[0038]段落などに記載されたものが挙げられる。
【0073】
本発明においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、後述する液晶硬化層としての偏光子(光吸収異方性膜)を黒色に近づける観点から、波長370nm以上500nm未満の範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500nm以上700nm未満の範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
【0074】
上記二色性物質は、架橋性基を有していてもよい。
上記架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0075】
本発明の液晶組成物が二色性物質を含有する場合、二色性物質の含有量は、上記液晶化合物100質量部に対して1~400質量部であることが好ましく、2~100質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることが更に好ましい。
また、二色性物質の含有量は、液晶組成物における固形分中の1~50質量%となる量であることが好ましく、2~40質量%となる量であることがより好ましい。
【0076】
〔レベリング剤〕
本発明の液晶組成物は、液晶硬化層の表面を平滑に保ち、配向制御を容易にする観点から、レベリング剤を含むことが好ましい。
このようなレベリング剤としては、添加量に対するレベリング効果が高い理由から、フッ素系レベリング剤またはケイ素系レベリング剤が好ましく、泣き出し(ブルーム、ブリード)を起こしにくい点から、フッ素系レベリング剤がより好ましい。
レベリング剤としては、例えば、特開2007-069471号公報の[0079]~[0102]段落に記載された化合物、特開2013-047204号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0020]~[0032]段落に記載された化合物)、特開2012-211306号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0022]~[0029]段落に記載された化合物)、特開2002-129162号公報に記載された一般式(I)で表される液晶配向促進剤(特に[0076]~[0078]および[0082]~[0084]段落に記載された化合物)、ならびに、特開2005-099248号公報に記載された一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物(特に[0092]~[0096]段落に記載された化合物)等が挙げられる。なお、レベリング剤は、後述する配向制御剤としての機能を兼ね備えてもよい。
【0077】
〔配向制御剤〕
本発明の液晶組成物は、必要に応じて、配向制御剤を含んでいてもよい。
配向制御剤により、ホモジニアス配向の他、ホメオトロピック配向(垂直配向)、傾斜配向、ハイブリッド配向、およびコレステリック配向等の種々の配向状態を形成でき、また、特定の配向状態をより均一且つより精密に制御して実現できる。
【0078】
ホモジニアス配向を促進する配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤、および、高分子の配向制御剤を用いることができる。
低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002-20363号公報の[0009]~[0083]段落、特開2006-106662号公報の[0111]~[0120]段落、および、特開2012-211306号公報の[0021]~[0029]段落の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004-198511号公報の[0021]~[0057]段落、および、特開2006-106662号公報の[0121]~[0167]段落を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0079】
また、ホメオトロピック配向を形成または促進する配向制御剤としては、例えば、ボロン酸化合物、およびオニウム塩化合物が挙げられる。この配向制御剤としては、特開2008-225281号公報の[0023]~[0032]段落、特開2012-208397号公報の[0052]~[0058]段落、特開2008-026730号公報の[0024]~[0055]段落、および、特開2016-193869号公報の[0043]~[0055]段落に記載された化合物を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0080】
一方、コレステリック配向は、本発明の液晶組成物にキラル剤を加えることにより実現でき、そのキラル性の向きによりコレステリック配向の旋回方向を制御できる。
なお、キラル剤の配向規制力に応じてコレステリック配向のピッチを制御してもよい。
【0081】
本発明の液晶組成物が配向制御剤を含む場合の含有量は、組成物中の全固形分質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。含有量がこの範囲であると、望む配向状態を実現しつつ、析出、相分離、および配向欠陥等が抑制され、均一で透明性の高い硬化物を得ることができる。
【0082】
〔その他の成分〕
本発明の液晶組成物は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、上述した液晶化合物以外の他の液晶化合物(例えば、上記式(1)を満たさない液晶化合物など)、界面活性剤、チルト角制御剤、配向助剤、可塑剤、および、架橋剤が挙げられる。
【0083】
[液晶硬化層]
本発明の液晶硬化層は、上述した本発明の液晶組成物の配向状態を固定化してなる液晶硬化層である。
液晶硬化層の形成方法としては、例えば、上述した本発明の液晶組成物を用いて、所望の配向状態とした後に、重合により固定化する方法等が挙げられる。
ここで、所望の配向状態とする条件は特に制限されないが、加熱処理を施すことが好ましく、加熱処理を施した後に冷却処理を施すことがより好ましい。加熱処理における加熱温度は、製造適性などの点から、10~250℃が好ましく、50~200℃がより好ましく、70~150℃が更に好ましい。また、加熱処理における加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。また、加熱処理後の冷却処理における温度は、加熱処理のける加熱温度よりも低い温度であれば特に限定されないが、室温(23℃)~80℃が好ましい。
また、上記重合の条件は特に制限されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2がより好ましく、30mJ/cm2~3J/cm2が更に好ましく、50~1000mJ/cm2が特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
なお、液晶硬化層は、後述する光学フィルムにおける任意の支持体または配向膜上、または、後述する偏光板における偏光子上に形成できる。
【0084】
本発明の液晶硬化層における液晶化合物の配向状態としては、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの状態であってもよく、液晶硬化層の主面に対して水平配向した状態で固定化されていることが好ましい。
なお、本明細書において「水平配向」とは、液晶硬化層の主面(または、液晶硬化層が支持体および配向膜等の部材上に形成されている場合、その部材の表面)と、液晶化合物の長軸方向とが平行であることをいう。なお、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、液晶化合物の長軸方向と液晶硬化層の主面とのなす角度が10°未満の配向であることを意味するものとする。
液晶硬化層において、液晶化合物の長軸方向と液晶硬化層の主面とのなす角度は、0~5°が好ましく、0~3°がより好ましく、0~2°が更に好ましい。
【0085】
本発明の液晶硬化層は、光学異方性層であることが好ましく、ポジティブAプレートまたはポジティブCプレートであることがより好ましく、ポジティブAプレートであることが更に好ましい。
【0086】
ここで、ポジティブAプレート(正のAプレート)とポジティブCプレート(正のCプレート)は以下のように定義される。
フィルム面内の遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、ポジティブAプレートは式(A1)の関係を満たすものであり、ポジティブCプレートは式(C1)の関係を満たすものである。なお、ポジティブAプレートはRthが正の値を示し、ポジティブCプレートはRthが負の値を示す。
式(A1) nx>ny≒nz
式(C1) nz>nx≒ny
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。
この「実質的に同一」について、ポジティブAプレートでは、例えば、(ny-nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、-10~10nm、好ましくは-5~5nmである場合も「ny≒nz」に含まれ、(nx-nz)×dが、-10~10nm、好ましくは-5~5nmである場合も「nx≒nz」に含まれる。また、ポジティブCプレートでは、例えば、(nx-ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、0~10nm、好ましくは0~5nmである場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0087】
本発明の液晶硬化層がポジティブAプレートである場合、λ/4板として機能する観点から、Re(550)が100~180nmであることが好ましく、120~160nmであることがより好ましく、130~150nmであることが更に好ましく、130~145nmであることが特に好ましい。
ここで、「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
【0088】
本発明の液晶硬化層は、上述した本発明の液晶組成物が二色性物質を含有する場合は、偏光子(光吸収異方性膜)として用いることができる。
【0089】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、本発明の液晶硬化層を有する光学フィルムである。
図1を参照しながら、光学フィルムの構造について説明する。
図1は、光学フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
なお、
図1は模式図であり、各層の厚みの関係および位置関係等は必ずしも実際のものとは一致せず、
図1に示す支持体および配向膜は、いずれも任意の構成部材である。
【0090】
図1に示す光学フィルム10は、支持体16と、配向膜14と、本発明の液晶組成物の硬化物としての液晶硬化層12とをこの順で有する。
また、液晶硬化層12は、異なる2層以上の液晶硬化層の積層体であってもよい。例えば、後述する本発明の偏光板を円偏光板として用いる場合、または、本発明の光学フィルムをIPS(In-Plane-Switching)方式またはFFS(Fringe-Field-Switching)方式の液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合には、ポジティブAプレートとポジティブCプレートの積層体であることが好ましい。
また、液晶硬化層を支持体から剥離して、液晶硬化層単独で光学フィルムとして用いてもよい。
以下、光学フィルムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0091】
〔液晶硬化層〕
本発明の光学フィルムが有する液晶硬化層は、上述した本発明の液晶硬化層である。
光学フィルムにおいては、上記液晶硬化層の厚みについては特に制限されないが、0.1~10μmが好ましく、0.5~5μmがより好ましい。
【0092】
〔支持体〕
光学フィルムは、上述したように、液晶硬化層を形成するための基材として支持体を有してもよい。
このような支持体は、透明であることが好ましい。具体的には、光透過率が80%以上であることが好ましい。
【0093】
このような支持体としては、例えば、ガラス基板およびポリマーフィルムが挙げられる。ポリマーフィルムの材料としては、セルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、およびラクトン環含有重合体等のアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、およびアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、および芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;ならびにこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
また、後述する偏光子がこのような支持体を兼ねる態様であってもよい。
【0094】
上記支持体の厚みは特に制限されないが、5~60μmが好ましく、5~40μmがより好ましい。
【0095】
〔配向膜〕
光学フィルムにおいて、液晶硬化層は、配向膜(特に、後述する光配向膜)の表面に形成されていることが好ましい。光学フィルムが上述した任意の支持体を有する場合、配向膜は、支持体と液晶硬化層との間に挟まれていてもよい。また、上述した支持体が配向膜を兼ねる態様であってもよい。
【0096】
配向膜は、組成物に含まれる液晶化合物を水平配向させる機能を有する膜であれば、どのような膜でもよい。
配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手できる。
配向膜用ポリマー材料としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、またはそれらのいずれかの誘導体が好ましく、変性または未変性のポリビニルアルコールがより好ましい。
光学フィルムが有してもよい配向膜としては、例えば、国際公開第01/88574号の43頁24行~49頁8行に記載された配向膜;特許第3907735号公報の段落[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールからなる配向膜;および、特開2012-155308号公報に記載された液晶配向剤により形成される液晶配向膜;等が挙げられる。
【0097】
配向膜の形成時に配向膜表面に物体が接触せず、面状悪化を防ぐことが可能となるため、配向膜として光配向膜を利用することが好ましい。
光配向膜としては、特に制限されないが、国際公開第2005/096041号の段落[0024]~[0043]に記載されたポリアミド化合物およびポリイミド化合物等のポリマー材料により形成される配向膜;特開2012-155308号公報に記載された光配向性基を有する液晶配向剤により形成される液晶配向膜;および、Rolic Technologies社製の商品名LPP-JP265CP等を用いることができる。
【0098】
配向膜の厚みは特に制限されないが、支持体に存在しうる表面凹凸を緩和して均一な膜厚の液晶硬化層を形成する観点から、0.01~10μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましく、0.01~0.5μmが更に好ましい。
【0099】
〔他の液晶硬化層〕
光学フィルムにおいて、液晶硬化層は、他の液晶硬化層の表面に形成されていることが好ましい。
ここで、他の液晶硬化層としては、例えば、上述した本発明の液晶組成物から塩基性化合物を除いた組成物の配向状態を固定化してなる液晶硬化層が挙げられる。具体的には、上述した液晶化合物、重合開始剤、レベリング剤および溶媒などを含有する組成物の配向状態を固定化してなる液晶硬化層;上述した液晶化合物、重合開始剤、二色性物質、レベリング剤および溶媒などを含有する組成物の配向状態を固定化してなる液晶硬化層(光吸収異方性膜);などが挙げられる。
【0100】
〔紫外線吸収剤〕
光学フィルムは、外光(特に紫外線)の影響を考慮して、紫外線(UV)吸収剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤は、液晶硬化層に含まれていてもよいし、光学フィルムを構成する液晶硬化層以外の部材に含まれていてもよい。液晶硬化層以外の部材としては、例えば、支持体が好適に挙げられる。
紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できる従来公知のものがいずれも使用できる。このような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得る観点から、ベンゾトリアゾール系またはヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。
また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することも好ましい。
【0101】
紫外線吸収剤としては、例えば、特開2012-18395公報の[0258]~[0259]段落に記載された化合物、および、特開2007-72163号公報の[0055]~[0105]段落に記載された化合物等が挙げられる。
また、市販品として、Tinuvin400、Tinuvin405、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479、および、Tinuvin1577(いずれもBASF社製)等を用いることができる。
【0102】
[偏光板]
本発明の偏光板は、上述した本発明の光学フィルムを有する偏光板である。
ここで、本発明の光学フィルムが有する液晶硬化層が、光吸収異方性膜でない場合には、本発明の偏光板は、後述する偏光子または上述した本発明の液晶硬化層(ただし、光吸収異方性膜に限る。)を有する。
本発明の偏光板は、上述した本発明の光学フィルム以外に、他の光学フィルムや、後述する保護フィルム、その他の機能層を有してもよい。機能層の機能は特に限定されず、例えば、上述した配向膜の他、接着層、応力緩和層、平坦化層、反射防止層、屈折率調整層、紫外線吸収層などの機能を有する層であってもよい。
保護フィルムは、偏光子を挟んで両側に用いても、偏光子の片側のみに用いてもよい。
また、保護フィルムを、本発明の光学フィルムと同じ側に有する場合は、偏光子と光学フィルムとの間や、光学フィルムの偏光子とは反対側等に、粘着剤または接着剤を介して配置してもよい。
偏光板は、上述した光学異方性層がλ/4板(ポジティブAプレート)である場合、円偏光板として用いることができる。
偏光板を円偏光板として用いる場合は、上述した光学異方性層をλ/4板(ポジティブAプレート)とし、λ/4板の遅相軸と後述する偏光子の吸収軸とのなす角が30~60°であることが好ましく、40~50°であることがより好ましく、42~48°であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
ここで、λ/4板の「遅相軸」は、λ/4板の面内において屈折率が最大となる方向を意味し、偏光子の「吸収軸」は、吸光度の最も高い方向を意味する。
また、偏光板は、IPS方式またはFFS方式の液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いることもできる。
偏光板をIPS方式またはFFS方式の液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合は、上述した光学異方性層を、ポジティブAプレートとポジティブCプレートとの積層体の少なくとも一方のプレートとし、ポジティブAプレート層の遅相軸と、後述する偏光子の吸収軸とのなす角を直交または平行とすることが好ましく、具体的には、ポジティブAプレート層の遅相軸と、後述する偏光子の吸収軸とのなす角が0~5°または85~95°であることがより好ましい。
また、上記光学補償フィルムが、偏光子、ポジティブCプレート、および、ポジティブAプレートをこの順に積層している場合は、ポジティブAプレートの遅相軸と、偏光子の吸収軸とのなす角は平行であることが更に好ましい。
同様に、上記光学補償フィルムが、偏光子、ポジティブAプレート、および、ポジティブCプレートをこの順に積層している場合は、ポジティブAプレートの遅相軸と、偏光子の吸収軸とのなす角は直交であることが更に好ましい。
後述する液晶表示装置に、本発明の偏光板を用いる場合には、光学異方性層の遅相軸と、後述する偏光子の吸収軸とのなす角が、平行または直交であることが好ましい。
なお、本明細書において「平行」とは、厳密に平行であることを要求するものではなく、一方と他方とのなす角度が10°未満であることを意味するものとする。また、本明細書において「直交」とは、厳密に直交していることを要求するものではなく、一方と他方とのなす角度が80°超100°未満であることを意味するものとする。
【0103】
〔偏光子〕
偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であれば特に制限されず、従来公知の吸収型偏光子および反射型偏光子を利用することができる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子等が用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、および特許第4751486号公報が挙げられ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用できる。
塗布型偏光子としては、WO2018/124198、WO2018/186503、WO2019/132020、WO2019/132018、WO2019/189345、特開2019-197168号公報、特開2019-194685号公報、および特開2019-139222号公報が挙げられ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用できる。
反射型偏光子としては、複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子、および、選択反射域を有するコレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせた偏光子等が用いられる。
これらのうち、密着性がより優れる点で、ポリビニルアルコール系樹脂(-CH2-CHOH-を繰り返し単位として含むポリマー。特に、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つ)を含む偏光子が好ましい。
また、耐クラック性を付与できる観点から、偏光子は対向する端辺に沿って偏光解消部が形成されていてもよい。偏光解消部としては、特開2014-240970号公報が挙げられる。
また、偏光子は、長尺方向および/または幅方向に所定の間隔で配置された非偏光部を有していてもよい。非偏光部は、部分的に脱色された脱色部である。非偏光部の配置パターンは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、非偏光部は、偏光子を所定サイズの画像表示装置に取り付けるために所定サイズに裁断(切断、打ち抜き等)した際に、画像表示装置のカメラ部に対応する位置に配置される。非偏光部の配置パターンとしては、特開2016-27392号公報が挙げられる。
【0104】
偏光子の厚みは特に制限されないが、3~60μmが好ましく、3~30μmがより好ましく、3~10μmが更に好ましい。
【0105】
〔保護フィルム〕
保護フィルムの材料としては特に限定されず、例えばセルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、ポリオレフィン、脂環式構造を有するポリマー(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製))、などが挙げられる。このうちセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0106】
保護フィルムの光学特性としては、特に限定されないが、保護フィルムを、本発明の光学フィルムと同じ側に有する場合は、下記式を満たすことが好ましい。
0nm≦Re(550)≦10nm
-40nm≦Rth(550)≦40nm
【0107】
〔粘着剤層〕
偏光板において、光学フィルムにおける液晶硬化層と、偏光子との間に、粘着剤層が配置されていてもよい。
硬化物と偏光子との積層のために用いられる粘着剤層を形成する材料としては、例えば、動的粘弾性測定装置で測定した貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比(tanδ=G”/G’)が0.001~1.5である物質で形成された部材が挙げられ、いわゆる、粘着剤、およびクリープしやすい物質等が含まれる。粘着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤が挙げられるが、これに制限されない。
【0108】
〔接着剤層〕
偏光板は、光学フィルムにおける液晶硬化層と偏光子との間に、接着剤層が配置されていてもよい。
硬化物と偏光子との積層のために用いられる接着剤層としては、活性エネルギー線の照射または加熱により硬化する硬化性接着剤組成物が好ましい。
硬化性接着剤組成物としては、カチオン重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物、および、ラジカル重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物等が挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.01~20μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.05~5μmが更に好ましい。接着剤層の厚さがこの範囲にあれば、積層される保護層または液晶硬化層と偏光子との間に浮きまたは剥がれが生じず、実用上問題のない接着力が得られる。また、気泡の発生を抑制できる観点から接着剤層の厚さは0.4μm以上が好ましい。
また、耐久性の観点から接着剤層のバルク吸水率を10質量%以下に調整してもよく、2質量%以下が好ましい。バルク吸水率は、JIS K 7209に記載の吸水率試験方法に準じて測定される。
接着剤層としては、例えば、特開2016-35579号公報の[0062]~[0080]段落を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0109】
〔易接着層〕
偏光板は、光学フィルムにおける液晶硬化層と偏光子との間に、易接着層が配置されていてもよい。液晶硬化層と偏光子との密着性に優れ、更に、偏光子へのクラックの発生を抑止する観点から、易接着層の85℃での貯蔵弾性率が1.0×106Pa~1.0×107Paであることが好ましい。易接着層の構成材料としては、ポリオレフィン系成分およびポリビニルアルコール系成分が挙げられる。易接着層の厚さは、500nm~1μmが好ましい。
易接着層としては、例えば、特開2018-36345号公報の[0048]~[0053]段落を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0110】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムを有する、画像表示装置である。
画像表示装置に用いられる表示素子は特に制限されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL(Electro Luminescence)」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。これらのうち、液晶セル、および有機EL表示パネルが好ましく、液晶セルがより好ましい。
すなわち、画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、または、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置が好ましく、液晶表示装置がより好ましい。
【0111】
〔液晶表示装置〕
画像表示装置の一例である液晶表示装置は、上述した偏光板、すなわち、本発明の光学フィルムと、上述した偏光子または上述した本発明の液晶硬化層(ただし、光吸収異方性膜に限る。)と、液晶セルとを有する液晶表示装置である。
なお、液晶セルの両側に設けられる偏光板のうち、フロント側の偏光板として上述した偏光板を用いることが好ましく、フロント側およびリア側の偏光板として上述した偏光板を用いることがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0112】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe-Field-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに制限されない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)、および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、VAモードの液晶セルは、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、および特開平10-307291号公報等に開示されている。
【0113】
〔有機EL表示装置〕
画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、偏光子と、上述した液晶硬化層からなるλ/4板(ポジティブAプレート)と、有機EL表示パネルとをこの順で有する態様が挙げられる。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例0114】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0115】
[実施例1]
〔保護フィルム1の作製〕
<コア層セルロースアシレートドープ1の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・下記ポリエステル 12質量部
・下記耐久性改良剤 4質量部
・メチレンクロライド(第1溶剤) 430質量部
・メタノール(第2溶剤) 64質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0116】
【0117】
【0118】
<外層セルロースアシレートドープ1の調製>
上記のコア層セルロースアシレートドープ1の90質量部に、下記のマット剤分散液1を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶剤) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・コア層セルロースアシレートドープ1 1質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0119】
<保護フィルム1の作製>
上記コア層セルロースアシレートドープ1および上記外層セルロースアシレートドープ1を、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターを用いてろ過した。その後、バンド流延機を用いて、上記コア層セルロースアシレートドープ1およびその両側の外層セルロースアシレートドープ1を、流延口から3層同時に20℃のドラム上に流延した。
次いで、ドラム上のフィルムの溶剤含有率が略20質量%である状態で、ドラム上からフィルムを剥ぎ取った。得られたフィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、フィルムの溶剤含有率が3~15質量%である状態で、フィルムを幅方向に1.1倍に延伸しつつ、乾燥した。
その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間で搬送させることにより更に乾燥し、膜厚40μmのセルロースアシレートフィルム1を作製し、保護フィルム1とした。保護フィルム1の位相差を測定した結果、Re=1nm、Rth=-5nmであった。
【0120】
〔光学異方性層1の作製〕
<光配向膜用組成物1の調製>
酢酸ブチルおよびメチルエチルケトンをそれぞれ80質量部および20質量部含む混合液に対して、下記共重合体C1を8.4質量部と、下記熱酸発生剤D1を0.3質量部とを添加し、光配向膜用組成物1を調製した。
【0121】
・共重合体C1(重量平均分子量:40,000)
【化16】
【0122】
【0123】
<液晶組成物1の調製>
下記組成の光学異方性層形成用の液晶組成物1を調製した。
【0124】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶化合物R1 42.00質量部
・下記液晶化合物R2 42.00質量部
・下記液晶化合物R3 12.00質量部
・下記液晶化合物R4 4.00質量部
・下記非液晶化合物M1 1.00質量部
・下記添加剤A1 5.00質量部
・下記重合開始剤S1 0.50質量部
・下記レベリング剤P1 0.09質量部
・メチルエチルケトン 235.93質量部
・シクロペンタノン 74.51質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶化合物R1および液晶化合物R2の構造中、アクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、液晶化合物R1および液晶化合物R2は、それぞれ、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
なお、液晶組成物1において、式(1)および式(2)のいずれも満たすのは、添加剤A1のみである。
【0125】
液晶化合物R1〔Δn(450)/Δn(550):0.80〕
【化18】
【0126】
液晶化合物R2〔Δn(450)/Δn(550):0.83〕
【化19】
【0127】
液晶化合物R3〔Δn(450)/Δn(550):1.05〕
【化20】
【0128】
液晶化合物R4〔Δn(450)/Δn(550):1.04〕
【化21】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
レベリング剤P1(下記式中数字は、レベリング剤P1中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。)
【化25】
【0133】
<光学異方性層1の作製>
作製したセルロースアシレートフィルム1の片側の面に、先に調製した光配向膜用組成物1をバーコーターで連続的に塗布した。塗布後、120℃の加熱ゾーンにて1分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.3μmの光異性化組成物層を形成した。続けて、鏡面処理バックアップロールに巻きかけながら、偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜を形成した。
引き続き、長尺状に形成された光配向膜上に、先に調製した液晶組成物1をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。また、塗布室の温度は23℃とした。形成した組成物層を、加熱ゾーンで120℃まで加熱した後、60℃まで冷却させた。その後、温度を保ったまま、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(300mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、配向を固定化し、厚み2.2μmの光学異方性層1を作製した。
得られた光学異方性層1を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層1の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe1(550)は135nmであり、Re1(450)/Re1(550)は0.86であった。
【0134】
[実施例2]
液晶組成物1における添加剤A1の添加量を0.50質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層2を作製した。
得られた光学異方性層2を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層2の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe2(550)は135nmであり、Re2(450)/Re2(550)は0.86であった。
【0135】
[実施例3]
液晶組成物1における添加剤A1の添加量を35.00質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層3を作製した。
得られた光学異方性層3を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層3の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe3(550)は135nmであり、Re3(450)/Re3(550)は0.86であった。
【0136】
[実施例4]
添加剤A1に代えて、下記添加剤A2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層4を作製した。
得られた光学異方性層4を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層4の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe4(550)は135nmであり、Re4(450)/Re4(550)は0.86であった。
【0137】
【0138】
[実施例5]
添加剤A1に代えて、下記添加剤A3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層5を作製した。
得られた光学異方性層5を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層5の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe5(550)は135nmであり、Re5(450)/Re5(550)は0.86であった。
【0139】
【0140】
[実施例6]
液晶化合物R1~R4(配合量:合計100質量部)に代えて、下記液晶化合物R5(配合量:100質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層6を作製した。
得られた光学異方性層6を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層6の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe6(550)は135nmであり、Re6(450)/Re6(550)は0.83であった。
【0141】
液晶化合物R5〔Δn(450)/Δn(550):0.83〕
【化28】
【0142】
[実施例7]
添加剤A1に代えて、下記添加剤A4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層7を作製した。
得られた光学異方性層7を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層7の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe7(550)は135nmであり、Re7(450)/Re7(550)は0.86であった。
【0143】
【0144】
[実施例8]
液晶化合物R1~R4(配合量:合計100質量部)に代えて、下記液晶化合物R6(配合量:100質量部)を用い、添加剤A1に代えて、上記添加剤A4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層8を作製した。
得られた光学異方性層8を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層8の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe8(550)は135nmであり、Re8(450)/Re8(550)は1.09であった。
【0145】
液晶化合物R6〔Δn(450)/Δn(550):1.09〕
【化30】
【0146】
[実施例9]
加熱ゾーンにおける加熱を115℃までの加熱に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層9を作製した。
得られた光学異方性層9を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層9の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe9(550)は135nmであり、Re9(450)/Re9(550)は0.86であった。
【0147】
[比較例1]
添加剤A1を配合しなかった以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層B1を作製した。
得られた光学異方性層B1を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層B1の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe(550)は135nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であった。
【0148】
[比較例2]
添加剤A1に代えて、下記添加剤A5を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性層B2を作製した。
得られた光学異方性層B2を保護フィルム1から剥離して、光学異方性層B2の位相差を測定したところ、面内レターデーションRe(550)は135nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であった。
【0149】
【0150】
〔評価〕
<析出性>
実施例1~9および比較例1~2において光学異方性層を作製する際に、液晶組成物を連続的に塗布した際の塗布部を観察し、以下の評価基準で評価した。結果を下記表4に示す。なお、スジ欠陥は、析出物に起因するものである。
(評価基準)
A:3000m塗布してもスジ欠陥が認識できない。
B:3000m塗布するとスジ欠陥がわずかに視認できるが、実用上問題がない。
C:3000m塗布すると強いスジ欠陥を視認でき、実用上問題がある。
【0151】
<配向性>
配向性の測定は、テーブル上に、下から順にLED(Light Emitting Diode)光源、下側偏光板、光学異方性層(試料)、上側偏光板を各面が水平になるように設置して行う。この時、試料と上側偏光板は回転可能とする。光源から出射し、下側偏光板、試料、上側偏光板と順に透過した光を垂直方向から輝度計(BM-5A(TOPCON製))を用いて輝度を測定した。
測定は、まず試料のない状態で上側偏光板を回転させて最も輝度が暗くなる位置に合わせる(クロスニコルの状態)。保護フィルムから剥離した試料を偏光板の間に挿入し、クロスニコル下で試料を回転させて最小となる輝度を測定する。次に上側偏光板と下側偏光板の2枚の偏光板を平行ニコル配置にして、試料を回転させて最大となる輝度を測定した。
上側偏光板および下側偏光板に起因する輝度漏れの寄与を除去するため、下記式により求められる値を以下の評価基準で評価した。結果を下記表4に示す。
配向性 = 1/((試料設置時のクロスニコル下における最小輝度)/(試料設置時の平行ニコル下における最大輝度)-(試料のない状態でのクロスニコル下における最小輝度)/(試料のない状態での平行ニコル下における最大輝度))
(評価基準)
A:上記配向性が200,000以上
B:上記配向性が100,000以上、200,000未満
C:上記配向性が100,000未満
【0152】
【0153】
表4に示す結果から、添加剤を配合しない場合には、塗布時に析出物が発生し、形成される液晶硬化層の配向性が劣ることが分かった(比較例1)。
また、液晶化合物との関係で上記(1)を満たさない添加剤を配合した場合には、塗布時に析出物が発生することが分かった(比較例2)。
これに対し、液晶化合物との関係で上記式(1)を満たし、かつ、上記式(2)を満たす添加剤を配合すると、塗布時の析出物の発生が抑制され、形成される液晶硬化層の配向性が良好となることが分かった(実施例1~9)。
特に、実施例1と実施例2との対比から、添加剤の含有量が液晶化合物100質量部に対して1質量部以上であると、塗布時の析出物の発生をより抑制できることが分かった。
また、実施例1と実施例3との対比から、添加剤の含有量が液晶化合物100質量部に対して30質量部以下であると、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となることが分かった。
また、実施例1と実施例4との対比から、式(1)の左辺の値が3.0未満であると(すなわち、上記式(3)を満たしていると)、塗布時の析出物の発生をより抑制できることが分かり、添加剤の沸点(Bp)が250~290℃であると(すなわち、上記式(4)を満たしていると)、形成される液晶硬化層の配向性がより良好となることが分かった。
また、実施例7と実施例8との対比から、液晶化合物について、式(5)中のArが上記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表すと、塗布時の析出物の発生をより抑制できることが分かった。