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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010326
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】スルホニウム塩化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 381/12 20060101AFI20240117BHJP
   C07C 53/40 20060101ALI20240117BHJP
   C07D 327/06 20060101ALI20240117BHJP
   C07D 333/46 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C07C381/12
C07C53/40
C07D327/06
C07D333/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111603
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 靖崇
(72)【発明者】
【氏名】和田 健二
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC60
4H006BC10
4H006BC19
4H006BD81
4H006TN60
(57)【要約】
【課題】
シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを反応させてスルホニウム塩化合物を得るスルホニウム塩化合物の合成反応において、より穏やかな低温下で、短時間に、高い選択性で目的のスルホニウム塩化合物を得ることを可能とする反応方法を提供する。
【解決手段】
シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを反応させてスルホニウム塩化合物を得る合成反応を、フロー式反応により行う、スルホニウム塩化合物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを反応させてスルホニウム塩化合物を得る合成反応を、フロー式反応により行う、スルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項2】
前記スルホキシド化合物の活性化剤を反応系に添加して前記反応を行う、請求項1に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項3】
前記シリルエノールエーテル化合物又は前記ケテンシリルアセタール化合物と前記スルホキシド化合物とを含有する原料混合溶液と、前記スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液とを、それぞれ異なる流路に導入して各溶液を各流路内に流通させ、各流路内を流通する各溶液を合流して該合流液が反応流路内を流通中に、前記シリルエノールエーテル化合物又は前記ケテンシリルアセタール化合物と活性化された前記スルホキシド化合物との反応を生じて前記合流液中にスルホニウム塩化合物を得ることを含む、請求項2に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項4】
前記シリルエノールエーテル化合物又は前記ケテンシリルアセタール化合物を含有する原料溶液Aと、前記スルホキシド化合物を含有する原料溶液Bと、前記スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液とを、それぞれ異なる流路に導入して各溶液を各流路内に流通させ、各流路内を流通する各溶液を合流して該合流液が反応流路内を流通中に、前記シリルエノールエーテル化合物又は前記ケテンシリルアセタール化合物と活性化された前記スルホキシド化合物との反応を生じて前記合流液中にスルホニウム塩化合物を得ることを含む、請求項2に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項5】
前記反応流路の等価直径を0.2~50mmとする、請求項3又は4に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項6】
前記合流液が前記反応を生じながら前記反応流路内を流通する時間を10分以下とする、請求項3又は4に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項7】
前記反応の温度を-20℃以上とする、請求項3又は4に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項8】
前記活性化剤が酸無水物化合物である、請求項3又は4に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【請求項9】
前記スルホキシド化合物が環状スルホキシド化合物である、請求項3又は4に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホニウム塩化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホニウム塩化合物は、相間移動触媒や光カチオン重合開始剤として利用されている。スルホニウム塩化合物の合成反応として、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物と、スルホキシド化合物とを反応させる方法が知られている。これらの反応では、スルホキシド化合物を酸無水物化合物などで活性化し、活性化されたスルホキシド化合物と、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とを反応させる。上記の活性化されたスルホキシド化合物はプメラー転移などの副反応を生じやすく、副反応を抑えるために、上記合成反応は-30℃、あるいはそれを下回るような低温下で行われる(例えば特許文献1~3)。
このような低温下の反応は、スルホニウム塩化合物の工業的な生産において、生産性の向上の制約になる。すなわち、氷点下数十℃という低温反応を実施できる設備が限られ、また、この低温を維持するためにエネルギーコストがかさみ、さらに、低温反応に起因して反応速度が制約されるので十分に長い反応時間を確保する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-130280号公報
【特許文献2】特開2004-170806号公報
【特許文献3】特開2005-014514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを反応させてスルホニウム塩化合物を得るスルホニウム塩化合物の合成反応において、より穏やかな低温下で、短時間に、高い選択性で目的のスルホニウム塩化合物を得ることを可能とする反応方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は下記手段により解決される。
〔1〕
シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを反応させてスルホニウム塩化合物を得る合成反応を、フロー式反応により行う、スルホニウム塩化合物の製造方法。
〔2〕
上記スルホキシド化合物の活性化剤を反応系に添加して上記反応を行う、〔1〕に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
〔3〕
上記シリルエノールエーテル化合物又は上記ケテンシリルアセタール化合物と上記スルホキシド化合物とを含有する原料混合溶液と、上記スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液とを、それぞれ異なる流路に導入して各溶液を各流路内に流通させ、各流路内を流通する各溶液を合流して合流液が反応流路内を流通中に、上記シリルエノールエーテル化合物又は上記ケテンシリルアセタール化合物と活性化された上記スルホキシド化合物との反応を生じて上記合流液中にスルホニウム塩化合物を得ることを含む、〔2〕に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
〔4〕
上記シリルエノールエーテル化合物又は上記ケテンシリルアセタール化合物を含有する原料溶液Aと、上記スルホキシド化合物を含有する原料溶液Bと、上記スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液とを、それぞれ異なる流路に導入して各溶液を各流路内に流通させ、各流路内を流通する各溶液を合流して合流液が反応流路内を流通中に、上記シリルエノールエーテル化合物又は上記ケテンシリルアセタール化合物と活性化された上記スルホキシド化合物との反応を生じて上記合流液中にスルホニウム塩化合物を得ることを含む、〔2〕に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
〔5〕
上記反応流路の等価直径を0.2~50mmとする、〔3〕又は〔4〕に記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
〔6〕
上記合流液が上記反応を生じながら上記反応流路内を流通する時間を10分以下とする、〔3〕~〔5〕のいずれかに記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
〔7〕
上記反応の温度を-20℃以上とする、〔3〕~〔6〕のいずれかに記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
〔8〕
上記活性化剤が酸無水物化合物である、〔2〕~〔7〕のいずれかに記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
〔9〕
上記スルホキシド化合物が環状スルホキシド化合物である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のスルホニウム塩化合物の製造方法。
【0006】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において流路、合流部、及びミキサー等の管内断面サイズ(等価直径)について説明する場合、流路同士の連結部分、流路と合流部との連結部分、及び流路とミキサーとの連結部分は除いたサイズである。すなわち、上記各連結部分のサイズは、連結部分の中を上流から下流へと流体が流れるように、連結チューブ等を用いて適宜に調整される。
本明細書において「X化合物」という場合、Xそのものに加え、Xが置換基を有する形態を包含する意味である。
本明細書において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスルホニウム塩化合物の製造方法によれば、より穏やかな低温下で、短時間に、高効率に、目的のスルホニウム塩化合物を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のフロー式反応システムの好ましい一実施形態の概略を示す説明図である。
図2】本発明のフロー式反応システムの別の好ましい実施形態の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のスルホニウム塩化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを反応させてスルホニウム塩化合物を得る合成反応を、フロー式反応により行うものである。上記反応では、スルホキシド化合物が活性化剤の作用で活性種となり、この活性種とシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とが反応する。
活性化剤で活性化されたスルホキシド化合物は熱に不安定であることが知られている。また、活性化されたスルホキシド化合物はプメラー転移などの副反応を生じやすいことが知られている。したがって、上記の反応はマイナス数十℃という非常に低い温度で行われている。本発明は、上記反応にフロー式反応システムを適用することにより、反応温度を高めた場合に副反応をむしろ効果的に抑制でき、目的のスルホキシド化合物をより高い選択性で、短時間に、低エネルギーコストで得ることを実現したものである。
【0010】
上記フロー式反応の好ましい一実施形態(第1実施形態)は、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを含有する原料混合溶液と、スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液とを、それぞれ異なる流路に導入して各溶液を各流路内に流通させ、各流路内を流通する各溶液を合流して合流液が反応流路内を流通中に、上記シリルエノールエーテル化合物又は上記ケテンシリルアセタール化合物と活性化された上記スルホキシド化合物との反応を生じて上記合流液中にスルホニウム塩化合物を得ることを含む。
第1実施形態において、上記原料混合溶液は、バッチ式で調製したものを用いることができる。
また、原料混合溶液それ自体もフロー式で調製することもできる。例えば、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物を含有する溶液と、スルホキシド化合物を含有する溶液とを、それぞれ異なる流路に導入して各溶液を各流路内に流通させ、各流路内を流通する各溶液を合流して下流へと流通する合流液を上記原料混合溶液とし、この合流液と上記活性化剤溶液とを合流してもよい。このような形態も第1実施形態に包含されるものである。
【0011】
また、上記フロー式反応の別の好ましい実施形態(第2実施形態)は、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物を含有する原料溶液Aと、スルホキシド化合物を含有する原料溶液Bと、スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液とを、それぞれ異なる流路に導入して各溶液を各流路内に流通させ、各流路内を流通する各溶液を合流して合流液が反応流路内を流通中に、上記シリルエノールエーテル化合物又は上記ケテンシリルアセタール化合物と活性化された上記スルホキシド化合物との反応を生じて上記合流液中にスルホニウム塩化合物を得ることを含む。
本明細書において「上流」及び「下流」との用語は、液体が流れる方向に対して用いられ、液体が導入される側(液体が流れて来る側)が上流であり、液体が流れ出て行く側が下流となる。
【0012】
本発明の製造方法を実施するフロー式反応システムの一実施形態を、図面を用いて説明する。なお、各図面は、本発明の理解を容易にするための説明図であり、各部材のサイズないし相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
【0013】
図1は、上記第1実施形態に用いるフロー式反応システムの一例を示す概略図である。図1に示すフロー式反応システム(10)は、上記原料混合溶液を導入する導入口(Ia)を備えた流路(1)、及び上記活性化剤溶液を導入する導入口(Ib)を備えた流路(2)を有する。
流路(1)と流路(2)とは合流部(3)で合流し、この合流部(3)の下流側端部には反応流路(4)が連結している。
【0014】
導入口(Ia)及び(Ib)にはそれぞれ、通常はシリンジポンプ等の送液ポンプ(図示せず)が接続され、このポンプを作動することにより、上記原料混合溶液及び上記活性化剤溶液を、各流路内に所望の流速で流通させることができる。
【0015】
図2は、上記第2実施形態に用いるフロー式反応システムの一例を示す概略図である。図2に示すフロー式反応システム(20)は、上記原料溶液Aを導入する導入口(Ic)を備えた流路(5)、上記原料溶液Bを導入する導入口(Id)を備えた流路(6)、及び上記活性化剤溶液を導入する導入口(Ie)を備えた流路(7)を有する。
流路(5)と流路(6)と流路(7)は合流部(8)で合流し、この合流部(8)の下流側端部には反応流路(9)が連結している。
【0016】
最初に図1に示す第1実施形態の各構成について以下に説明する。
【0017】
[流路(1)]
流路(1)は、導入口(Ia)から導入された、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物とを含有する原料混合溶液を、上記合流部(3)へと供給する流路である。
流路(1)は、その等価直径を0.2~50mmとすることが好ましい。流路(1)の等価直径を0.2mm以上とすることにより、送液時の圧力上昇を抑制でき、また不溶物が生成した場合にも流路の閉塞を抑制することができる。また、流路(1)の等価直径を50mm以下とすることにより、合流部(3)への導入時の液温を、適切に制御することができる。流路(1)の等価直径は、0.5~30mmがより好ましく、1~20mmがさらに好ましく、1~10mmがさらに好ましい。
上記「等価直径」(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意の管内断面形状の配管ないし流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の管内断面の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の管内断面積、p:配管のぬれぶち長さ(内周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管の管内断面の直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、管内断面が一辺aの正四角形管ではdeq=4a/4a=a、一辺aの正三角形管ではdeq=a/31/2、流路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
【0018】
流路(1)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm~15m程度(好ましくは、30cm~10m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質に特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ステンレス鋼、銅若しくは銅合金、ニッケル若しくはニッケル合金、チタン若しくはチタン合金、石英ガラス、又はライムソーダガラスなどが挙げられる。可撓性、耐薬品性の観点から、チューブの材質は、PFA、テフロン(登録商標)、ステンレス鋼、ニッケル合金又はチタンが好ましい。
【0019】
上記導入口(Ia)から上記原料混合溶液を導入する流速に特に制限はなく、流路の等価直径、原料混合溶液の濃度、上記活性化剤溶液の濃度、及び上記活性化剤溶液の導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、0.1~5000mL/min(分)が好ましく、0.5~3000mL/minがより好ましく、0.8~2000mL/minがさらに好ましい。また、0.1~1000mL/minとしてもよく、0.5~500mL/minとしてもよく、0.5~200mL/minとしてもよく、0.6~100mL/minとしてもよく、0.7~50mL/minとしてもよく、0.8~20mL/minとしてもよく、0.8~10mL/minとしてもよい。
【0020】
<原料混合溶液>
流路(1)内に導入する上記原料混合溶液は、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とスルホキシド化合物を有機溶媒中に溶解してなる溶液である。この有機溶媒として、例えば、含ハロゲン溶媒、エーテル溶媒、及び炭化水素溶媒などが挙げられる。
含ハロゲン溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン及びo-ジクロロベンゼンが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
炭化水素溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デカリン、テトラリン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
また、上記有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒、アセトニトリルなどのニトリル溶媒、γ-ブチロラクトンなどのラクトン溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチルなどのエステル溶媒、並びにジメチルアセトアミド及びN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド溶媒、ジメチルスルホン及びスルホランなどのスルホン溶媒なども使用できる。
【0021】
上記原料混合溶液中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量に特に制限はなく、上記原料混合溶液中のスルホキシド化合物の含有量、上記原料混合溶液の導入流量、及び上記活性化剤溶液の濃度と導入流量等を考慮し、適宜に調整されるものである。上記原料混合溶液中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量は、例えば0.01~5M(モル/リットル)とすることができ、0.05~3Mが好ましく、0.1~2Mがより好ましい。工業的な大量生産を考慮すると、上記原料混合溶液中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量は1M以上とすることが好ましく、1~2Mがより好ましい。
また、上記原料混合溶液中のスルホキシド化合物の含有量に特に制限はなく、上記原料混合溶液中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量、原料混合溶液の導入流量、及び上記活性化剤溶液の濃度と導入流量等を考慮し、適宜に調整されるものである。上記原料混合溶液中のスルホキシド化合物の含有量は、例えば0.01~14Mとすることができ、0.05~10Mが好ましく、0.1~5Mがより好ましい。工業的な大量生産を考慮すると、上記原料混合溶液中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量は1M以上とすることが好ましく、1~5Mがより好ましい。
また、上記原料混合溶液中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物と、スルホキシド化合物との含有量の比は、化学量論比で定まるが、モル比で、[シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物]/[スルホキシド化合物]を0.3~3とすることが好ましく、0.5~2とすることがより好ましく、1~1.5とすることがさらに好ましい。
【0022】
流路(1)の温度(流路(1)が配される雰囲気の温度)は、例えば、-60~20℃とすることができ、-40~10℃が好ましく、-30~0℃とすることがより好ましく、-20~-10℃とすることがさらに好ましい。流路(1)の温度は、反応流路(4)の温度と同じ、又は近い温度域に設定することが好ましい。
【0023】
-シリルエノールエーテル化合物-
上記シリルエノールエーテル化合物は、下記式(i)で表される化合物である。
【0024】
C(R)(R)=C(OSiR )(R) 式(i)
【0025】
式(i)中、R及びRは水素原子又は置換基を示す。この置換基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R又はRはRと連結して脂肪族環を形成してもよい。R又はRがRと連結して形成される脂肪族環は単環でもよく、縮合環でもよい。縮合環の場合、R又はRを環構成原子とする側の環が脂肪族環であれば、この脂肪族環に縮合する環は芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。また、R又はRがRと連結して形成される脂肪族環の環員数は6~20が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。R又はRがRと連結して形成される脂肪族環は炭化水素環が好ましい。
及びRは、両方が水素原子であることも好ましく、一方が水素原子で他方が置換基であることも好ましく、両方が置換基であることも好ましい。R及びRは互いに連結して環を形成することも好ましい。R及びRが互いに連結して形成される環は単環でもよく、縮合環でもよい。R及びRが互いに連結して形成される環の環員数は5~20が好ましく、5~15がより好ましく、5~10がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。R及びRが互いに連結して形成される環はシクロアルカン構造が好ましい。
【0026】
及びRとして採り得るアルキル基は、直鎖でも分岐を有してもよく、直鎖アルキル基が好ましい。R及びRとして採り得るアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3がさらに好ましく、メチル又はエチルがさらに好ましく、特に好ましくはメチルである。
【0027】
及びRとして採り得るシクロアルキル基は、環員数が3~8が好ましく、3~6がより好ましい。このシクロアルキル基の好ましい具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0028】
及びRとして採り得るアルケニル基は、直鎖でも分岐を有してもよく、直鎖アルケニル基が好ましい。このアルケニル基の炭素数は2~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。このアルケニル基の好ましい具体例として、例えば、ビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルが挙げられる。
【0029】
及びRとして採り得るアルキニル基は、直鎖でも分岐を有してもよく、直鎖アルキニル基が好ましい。このアルキニル基の炭素数は2~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。このアルキニル基の好ましい具体例として、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニル及びオクチニルが挙げられる。
【0030】
及びRとして採り得るアリール基は、単環でもよく、縮合環でもよい。このアリール基の炭素数は6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10がさらに好ましい。このアリール基の好ましい具体例として、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0031】
及びRとして採り得る複素環基は、芳香族性でもよく、脂肪族性でもよい。また、単環でもよく、縮合環でもよい。この複素環の環員数は3~20が好ましく、5~10がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。R及びRとして採り得る複素環基の好ましい具体例として、例えば、トリアゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペリジン、ピペラジン環、モルホリン環、ジヒドロピラン環、テトラヒドロピラン基、又はトリアジン環から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0032】
は置換基を示す。この置換基はアルキル基、アリール基、又はトリアルキルシリル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
として採り得るアルキル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルキル基の形態と同じである。
として採り得るアリール基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアリール基の形態と同じである。
として採り得るトリアルキルシリル基を構成するアルキル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルキル基の形態と同じである。
【0033】
は水素原子又は置換基を示す。ただし、Rが置換基の場合、この置換基は、OSiR が結合する炭素原子に対して酸素原子で結合する基ではない。Rが、OSiR が結合する炭素原子に対して酸素原子で結合する基である場合、上記式(i)で表される化合物は、後述のケテンシリルアセタール化合物に分類されることになる。
として採り得る置換基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基が好ましい。
【0034】
として採り得るアルキル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルキル基の形態と同じである。
として採り得るシクロアルキル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るシクロアルキル基の形態と同じである。
として採り得るアルケニル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルケニル基の形態と同じである。
として採り得るアルキニル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルキニル基の形態と同じである。
として採り得るアリール基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアリール基の形態と同じである。
として採り得る複素環基の好ましい形態は、R及びRとして採り得る複素環基の形態と同じである。
【0035】
上記シリルエノールエーテル化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式の二重結合から伸びる波線はメチル基又は単結合を意味し、かつ二重結合の幾何異性体の存在を示すものである。また、Meはメチル、Etはエチル、Phはフェニルを示す。
【0036】
【化1】
【0037】
-ケテンシリルアセタール化合物-
上記ケテンシリルアセタール化合物は、下記式(ii)で表される化合物である。
【0038】
C(R)(R)=C(OSiR )(OR) 式(ii)
【0039】
式(ii)中、R及びRは、式(i)中のR及びRと同義であり、好ましい形態も同じである。
ここで、R、R及びRの相互間の関係について記すと、R又はRはRと連結して脂肪族環を形成してもよい。R又はRがRと連結して形成される脂肪族環は単環でもよく、縮合環でもよい。縮合環の場合、R又はRを環構成原子とする側の環が脂肪族環であれば、この脂肪族環に縮合する環は芳香族環でもよく、また脂肪族環でもよい。また、R又はRがRと連結して形成される脂肪族環の環員数は6~20が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
また、R及びRは、両方が水素原子であることも好ましく、一方が水素原子で他方が置換基であることも好ましく、両方が置換基であることも好ましい。R及びRは互いに連結して環を形成することも好ましい。R及びRが互いに連結して形成される環は単環でもよく、縮合環でもよい。R及びRが互いに連結して形成される環の環員数は5~20が好ましく、5~10がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。R及びRが互いに連結して形成される環はシクロアルカン構造が好ましい。
【0040】
は、式(i)中のRと同義であり、好ましい形態も同じである。
【0041】
は置換基を示す。Rとして採り得る置換基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基が好ましい。
として採り得るアルキル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルキル基の形態と同じである。
として採り得るシクロアルキル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るシクロアルキル基の形態と同じである。
として採り得るアルケニル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルケニル基の形態と同じである。
として採り得るアルキニル基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアルキニル基の形態と同じである。
として採り得るアリール基の好ましい形態は、R及びRとして採り得るアリール基の形態と同じである。
【0042】
【化2】
【0043】
-スルホキシド化合物-
スルホキシド化合物は、2つの炭素原子がスルフィニル基(-S(=O)-)で連結された構造を有する化合物である。スルホキシド化合物は、活性化剤により活性種となりシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物と反応してスルホニウム塩を生成する。この反応及び反応原料それら自体は既に知られたものであり、この種の反応に用い得るスルホキシド化合物であれば特に制限なく用いることができる。
なかでも、環状スルホキシド化合物(環構成原子のSに=Oが結合した化合物)は、目的のスルホニウム塩化合物の生成効率が高められるため好ましい。環状スルホキシド化合物として、例えば、テトラヒドロチオフェン-1-オキシド化合物、1,4-チオキサン-4-オキシド化合物、チアン-1-オキシド化合物、チエパン-1-オキシド化合物、チオモルフォリン-4-メチル-1-オキシド化合物、及び1、4-ジチアン-1-オキシド化合物、トリメチレンスルホキシド等が挙げられ、テトラヒドロチオフェン-1-オキシド化合物又は1,4-チオキサン-4-オキシド化合物が好ましく、1,4-チオキサン-4-オキシド化合物がより好ましい。
【0044】
[流路(2)]
流路(2)は、導入口(Ib)から導入された、スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液を、上記合流部(3)へと供給する流路である。流路(2)の好ましい構造、及び構成材料(材質)は、上記流路(1)と同じである。
【0045】
上記導入口(Ib)から上記活性化剤溶液を導入する流速に特に制限はなく、流路の等価直径、上記活性化剤溶液の濃度、上記原料混合溶液の濃度、及び上記原料混合溶液の導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、0.1~5000mL/minが好ましく、0.5~3000mL/minがより好ましく、0.8~2000mL/minがさらに好ましい。また、0.1~1000mL/minとしてもよく、0.5~500mL/minとしてもよく、0.5~200mL/minとしてもよく、0.6~100mL/minとしてもよく、0.7~50mL/minとしてもよく、0.8~20mL/minとしてもよく、0.8~10mL/minとしてもよい。
【0046】
<活性化剤溶液>
流路(2)内を流通させる上記活性化剤溶液は、有機溶媒中に、スルホキシド化合物の活性化剤を溶解してなる溶液である。この有機溶媒としては、上記原料混合溶液の有機溶媒として挙げたものを好ましく用いることができる。上記活性化剤溶液と上記原料混合溶液には、同じ溶媒を用いてもよいし、互いの溶媒種が異なってもよい。互いの溶媒種が異なる場合には、互いに相溶する溶媒(混合したときに相分離しない溶媒)を用いることが好ましい。
【0047】
上記活性化剤溶液中の活性化剤の含有量に特に制限はなく、上記活性化剤溶液の導入流量、及び上記原料混合溶液の濃度と導入流量等を考慮し、適宜に調整されるものである。上記活性化剤溶液中の活性化剤の含有量は、例えば0.01~7M(モル/リットル)とすることができ、0.05~5Mが好ましく、0.1~5Mがより好ましい。工業的な大量生産を考慮すると、上記活性化剤溶液中の活性化剤の含有量は1M以上とすることが好ましく、1~5Mがより好ましい。
また、上記活性化剤溶液中の活性化剤の含有量と、上記原料混合溶液中のスルホキシド化合物との含有量の比は、上記活性化剤溶液と上記原料混合溶液とを合流した直後の合流液中において、モル比で、[スルホキシド化合物]/[活性化剤]が0.5~2となるようにすることが好ましく、0.7~1.3となるようにすることがより好ましく、0.9~1.1となるようにすることがさらに好ましい。
【0048】
流路(2)の温度は、例えば、-60~20℃とすることができ、-40~10℃が好ましく、-30~0℃とすることがより好ましく、-20~-10℃とすることがさらに好ましい。流路(2)の温度は、反応流路(4)の温度と同じ、又は近い温度域に設定することが好ましい。
【0049】
-活性化剤-
上記のスルホキシド化合物の活性化剤としては、スルホキシド化合物の活性化剤として通常用いられるものを広く適用することができる。例えば、酸無水物化合物はスルホキシド化合物の活性化剤として好適である。この酸無水物化合物は、好ましくはカルボン酸無水物、スルホン酸無水物又はリン酸無水物であり、より好ましくはスルホン酸無水物又はカルボン酸無水物であり、さらに好ましくはカルボン酸無水物である。
スルホキシド化合物の活性化剤の好ましい例として、トリフルオロ酢酸無水物、ポリリン酸、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、テトラフルオロスクシン酸無水物、ヘキサフルオログルタル酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロブタン酸無水物、無水酢酸、無水コハク酸、及び無水フタル酸などが挙げられる。なお、これらは一例であり、酸無水物化合物がスルホキシド化合物を活性化することは広く知られた事実なので、目的に応じてこの種の反応に用いられる通常の活性化剤を、適宜に選択して用いることができる。副反応低減の観点からはトリフルオロ酢酸無水物、無水酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物及びノナフルオロブタンスルホン酸無水物の少なくとも1種を用いることが好ましく、トリフルオロ酢酸無水物及び無水酢酸の少なくとも1種を用いることが好ましく、トリフルオロ酢酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0050】
[合流部(3)]
図1に示す実施形態では、上記原料混合溶液が流通する流路(1)と、上記活性化剤溶液が流通する流路(2)とを合流部(3)で合流し、合流液が反応流路(4)を下流へと流通中に、合流液中にスルホニウム塩化合物が生成する。
流路(1)と流路(2)との接続方法(合流部(3)の形態)に特に制限はなく、例えば、T字型ないしY字型のコネクターを用いることができる。このコネクターの材質は、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅若しくは銅合金、ニッケル若しくはニッケル合金、チタン若しくはチタン合金、石英ガラス、又はライムソーダガラスなどが好ましい。上記コネクターの市販品として、例えばミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM-1、YM-2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);GLサイエンス社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);;Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Valco社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);swagelok社製T字コネクタ、並びにIDEX社製SUST型ミキサー等が挙げられ、いずれも本発明に使用することができる。
【0051】
[反応流路(4)]
合流部(3)で合流した合流液は、反応流路(4)内へと流れ、反応流路(4)内を下流へ流通中に、活性化剤により活性化されたスルホキシド化合物と、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とが反応して、目的のスルホニウム塩化合物が生成する。なお、活性化剤により活性化されたスルホキシド化合物と、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物との反応それ自体は公知であり、例えば、特開2014-130280号公報、特開2004-170806号公報、及び特開2005-014514号公報等に記載されている。本発明は、この反応にフロー式反応を適用し、より穏やかな低温下で、短時間に、高い選択性で目的のスルホニウム塩化合物を得ることを可能とする発明である。
【0052】
反応流路(4)の形態に特に制限はなく、通常はチューブを用いる。反応流路(4)の好ましい材質は、上述した流路(1)の好ましい材質と同じである。また、反応流路(4)の等価直径と長さ、送液ポンプの流量設定等によって、反応時間を制御することができる。通常は、反応流路(4)の等価直径は0.1~50mmであることが好ましく、より好ましくは0.2~20mmであり、さらに好ましくは0.4~15mmであり、さらに好ましくは0.7~12mmであり、さらに好ましくは1~10mmである。また、反応流路(4)の等価直径は0.2~8mmとしてもよく、0.4~7mmとしてもよく、0.7~5mmとしてもよく、0.8~4mmとすることも好ましい。また、反応流路(4)の長さは、0.5~50mが好ましく、1~30mがより好ましい。
【0053】
反応流路(4)の温度は、例えば、-60~30℃とすることができ、-40~10℃が好ましく、-30~0℃とすることがより好ましい。また、本発明の製造方法では、反応流路の温度を、従来のバッチ式反応における反応温度より高めても、副反応を抑えて目的のスルホニウム塩化合物を、短時間で、より高い選択性で得ることができる。すなわち、本発明の製造方法では反応流路(4)の温度を-20℃以上とすることができ、-18℃以上とすることもでき、-15℃以上とすることもできる。したがって、反応流路(4)の温度は、-20~5℃とすることも好ましく、-18~0℃がより好ましく、-15~-5℃とすることがさらに好ましい。
【0054】
反応流路(4)内を流通する液の流通時間(反応時間)は特に制限されない。本発明ではフロー式反応を採用しており、バッチ式反応に比べて短時間で目的のスルホニウム化合物を高い選択性で得ることができる。したがって、上記流通時間(反応時間)は、10分以下とすることができ、8分以下とすることも好ましく、6分以下とすることも好ましく、5分以下とすることも好ましく、4分以下とすることも好ましく、3.5分以下とすることも好ましく、3分以下とすることもできる。上記流通時間(反応時間)は、通常は0.1分以上であり、0.5分以上が好ましく、1分以上がより好ましい。上記流通時間(反応時間)は、0.5~5分がさらに好ましく、0.5~4分がさらに好ましく、1~3.5分がさらに好ましく、1~3分が特に好ましい。
反応流路(4)の下流側末端よりでてきた反応液を回収し、反応液中に目的のスルホニウム塩化合物を得ることができる。また、必要により、反応液中のスルホニウム塩化合物を濃縮、結晶化、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により精製し、所望の純度へと高めることもできる。
【0055】
次に、図2に示す第2実施形態の各構成について以下に説明する。
【0056】
[流路(5)]
流路(5)は、導入口(Ic)から導入された、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物を含有する原料溶液Aを、上記合流部(8)へと供給する流路である。流路(5)の好ましい構造、構成材料(材質)は、上記流路(1)と同じである。
【0057】
上記導入口(Ic)から上記原料溶液Aを導入する流速に特に制限はなく、流路の等価直径、上記原料溶液Aの濃度、上記原料溶液Bの濃度及び導入流量、上記活性化剤溶液の濃度及び導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、0.1~5000mL/minが好ましく、0.5~3000mL/minがより好ましく、0.8~2000mL/minがさらに好ましい。また、0.1~1000mL/minとしてもよく、0.5~500mL/minとしてもよく、0.5~200mL/minとしてもよく、0.6~100mL/minとしてもよく、0.7~50mL/minとしてもよく、0.8~20mL/minとしてもよく、0.8~10mL/minとしてもよい。
【0058】
<原料溶液A>
流路(5)内を流通させる上記原料溶液Aは、有機溶媒中に、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物を溶解してなる溶液である。この有機溶媒としては、上記第1実施形態における原料混合溶液の有機溶媒として挙げたものを好ましく用いることができる。
【0059】
上記原料溶液A中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量に特に制限はなく、上記原料溶液Aの導入流量、上記原料溶液Bの濃度及び導入流量、上記活性化剤溶液の濃度及び導入流量等を考慮し、適宜に調整されるものである。上記原料溶液A中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量は、例えば0.01~14Mとすることができ、0.05~10Mが好ましく、0.1~5Mがより好ましい。工業的な大量生産を考慮すると、上記原料混合溶液中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物の含有量は1M以上とすることが好ましく、1~5Mがより好ましい。
【0060】
流路(5)の温度は、例えば、-60~20℃とすることができ、-40~10℃が好ましく、-30~0℃とすることがより好ましく、-20~-10℃とすることがさらに好ましい。流路(5)の温度は、反応流路(9)の温度と同じ、又は近い温度域に設定することが好ましい。
【0061】
[流路(6)]
流路(6)は、導入口(Id)から導入された、スルホキシド化合物を含有する原料溶液Bを、上記合流部(8)へと供給する流路である。流路(6)の好ましい構造、及び構成材料(材質)は、上記流路(1)と同じである。
【0062】
上記導入口(Id)から上記原料溶液Bを導入する流速に特に制限はなく、流路の等価直径、上記原料溶液Bの濃度、上記原料溶液Aの濃度及び導入流量、上記活性化剤溶液の濃度及び導入流量等を考慮し、適宜に調整されるものである。例えば、0.1~5000mL/minが好ましく、0.5~3000mL/minがより好ましく、0.8~2000mL/minがさらに好ましい。また、0.1~1000mL/minとしてもよく、0.5~500mL/minとしてもよく、0.5~200mL/minとしてもよく、0.6~100mL/minとしてもよく、0.7~50mL/minとしてもよく、0.8~20mL/minとしてもよく、0.8~10mL/minとしてもよい。
【0063】
<原料溶液B>
流路(6)内を流通させる上記原料溶液Bは、有機溶媒中に、スルホキシド化合物を溶解してなる溶液である。この有機溶媒としては、上記第1実施形態における原料混合溶液の有機溶媒として挙げたものを好ましく用いることができる。
【0064】
上記原料溶液B中のスルホキシド化合物の含有量に特に制限はなく、上記原料溶液Bの導入流量、上記原料溶液Aの濃度及び導入流量、上記活性化剤溶液の濃度及び導入流量等を考慮し、適宜に調整されるものである。上記原料溶液B中のスルホキシド化合物の含有量は、0.01~7M(モル/リットル)とすることができ、0.05~5Mが好ましく、0.1~5Mがより好ましい。工業的な大量生産を考慮すると、上記活性化剤溶液中の活性化剤の含有量は1M以上とすることが好ましく、1~5Mがより好ましい。
また、上記原料溶液B中のスルホキシド化合物の含有量と、上記原料溶液A中のシリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物との含有量の比は、上記原料溶液Aと上記原料溶液Bと活性化剤溶液とを合流した直後の合流液中において、モル比で、[シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物]/[スルホキシド化合物]を0.3~3とすることが好ましく、0.5~2とすることがより好ましく、1~1.5とすることがさらに好ましい。
【0065】
流路(6)の温度は、例えば、-60~20℃とすることができ、-40~10℃が好ましく、-30~0℃とすることがより好ましく、-20~-10℃とすることがさらに好ましい。流路(6)の温度は、反応流路(9)の温度と同じ、又は近い温度域に設定することが好ましい。
【0066】
[流路(7)]
流路(7)は、導入口(Ie)から導入された、スルホキシド化合物の活性化剤を含有する活性化剤溶液を、上記合流部(8)へと供給する流路である。流路(7)の好ましい構造、及び構成材料(材質)は、上記流路(1)と同じである。
【0067】
上記導入口(Ie)から上記活性化剤溶液を導入する流速に特に制限はなく、流路の等価直径、上記活性化剤溶液の濃度、上記原料溶液A及びBの濃度と導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、0.1~5000mL/minが好ましく、0.5~3000mL/minがより好ましく、0.8~2000mL/minがさらに好ましい。また、0.1~1000mL/minとしてもよく、0.5~500mL/minとしてもよく、0.5~200mL/minとしてもよく、0.6~100mL/minとしてもよく、0.7~50mL/minとしてもよく、0.8~20mL/minとしてもよく、0.8~10mL/minとしてもよい。
【0068】
流路(7)に導入する活性化剤溶液中の活性化剤の種類及び含有量の好ましい範囲は、上記第1実施形態における活性化剤溶液中の活性化剤の種類と含有量の説明をそのまま適用することができる。
また、上記活性化剤溶液中の活性化剤の含有量と、上記原料溶液B中のスルホキシド化合物との含有量の比は、上記活性化剤溶液と上記原料溶液Bとを合流した直後の合流液中において、モル比で、[スルホキシド化合物]/[活性化剤]が0.5~2となるようにすることが好ましく、0.7~1.3となるようにすることがより好ましく、0.9~1.1となるようにすることがさらに好ましい。
【0069】
流路(7)の温度は、例えば、-60~20℃とすることができ、-40~10℃が好ましく、-30~0℃とすることがより好ましく、-20~-10℃とすることがさらに好ましい。さらに好ましい。流路(7)の温度は、反応流路(9)の温度と同じ、又は近い温度域に設定することが好ましい。
【0070】
なお、上記では第2実施形態の説明として、流路(5)に原料溶液A、流路(6)に原料溶液B、流路(7)に活性化剤溶液を導入する形態について説明したが、第2実施形態はこの形態に限定されるものではない。例えば、原料溶液Aは流路(5)ではなく流路(6)に導入してもよい。この場合、原料溶液Bを流路(5)に導入することになる。同様に、活性化剤溶液を流路(6)に導入し、原料溶液Bを流路(7)に導入してもよい。
【0071】
[合流部(8)]
図2に示す実施形態では、上記原料溶液Aが流通する流路(5)と、上記原料溶液Bが流通する流路(6)と、上記活性化剤溶液が流通する流路(7)とを合流部(8)で合流し、合流液が反応流路(9)を下流へと流通中に、合流液中にスルホニウム塩化合物が生成する。
流路(5)と流路(6)と流路(7)との接続方法(合流部(8)の形態)に特に制限はなく、例えば、十字コネクタを用いることができる。上記十字コネクタとして市販品を広く用いることができ、市販品として例えば、Upchurch社製クロスコネクター;swagelok社製ユニオン・クロス;EYELA社製4方ジョイント等を用いることができる。
【0072】
[反応流路(9)]
合流部(8)で合流した合流液は、反応流路(9)内へと流れ、反応流路(9)内を下流へ流通中に、活性化剤により活性化されたスルホキシド化合物と、シリルエノールエーテル化合物又はケテンシリルアセタール化合物とが反応して、目的のスルホニウム塩化合物が生成する。
反応流路(9)について、その好ましい構造、材質、設定温度、及び反応流路内を流通する液の流通時間(反応時間)は、それぞれ、上記第1実施形態における反応流路(4)において説明した好ましい構造、材質、設定温度、及び反応流路内を流通する液の流通時間(反応時間)と同じである。
反応流路(9)の下流側末端よりでてきた反応液を回収し、反応液中に目的のスルホニウム塩化合物を得ることができる。また、必要により、反応液中のスルホニウム塩化合物を濃縮、結晶化、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により精製し、所望の純度へと高めることもできる。
【0073】
本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0074】
[実施形態1]
図1に示すフロー式反応システムを用いて本発明の製造方法を実施し、各種スルホニウム塩化合物を得た。フロー式反応システムの各部の詳細は次の通りである。
【0075】
<流路(1)及び流路(2)>
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ50cmのSUS316チューブを使用した。
<合流部(3)>
SUS316製T型ユニオンティーを使用した。
<反応流路(4)>
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ9mのSUS316チューブを使用した。
【0076】
図1に示すフロー式反応システム全体を恒温槽内に設置し、システム全体を一体的に、下記の各実施例及び比較例に記載する温度に制御した。
【0077】
(実施例1)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。TMSはトリメチルシリルを示す。
【0078】
【化3】
【0079】
[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを1.54M、ジメチルスルホキシドを2.32Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を25mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を20mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.40mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速0.96mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、46%であった。この生成率(%)は、化学シフト3.91ppmのピークの積分値を4.00ppm~3.60ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
なお、H-NMRの条件は下記の通りである(以下の同様)。
装置:AvanceCore (ブルカー社製)
周波数:400MHz
積算回数:16回
重溶媒:重クロロホルム
サンプル調製法:サンプル50μLを重クロロホルム0.6mLで希釈して調製
【0080】
(比較例1)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得ることを試みた。
【0081】
【化4】
【0082】
[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシラン2.70g、及びジメチルスルホキシド1.81gを、ジクロロメタン5.24mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシランの濃度は1.54M、ジメチルスルホキシドの濃度は2.32Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.86mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例1と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、0%であった。
このように、実施例1のフロー式反応をバッチ式反応に代えた場合には、-15℃の反応温度で目的のスルホニウム塩化合物を得ることができなかった。
【0083】
(実施例2)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0084】
【化5】
【0085】
[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを0.17M、ジメチルスルホキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を25mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を20mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.40mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速0.96mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、7.9%であった。この生成率(%)は、化学シフト3.91ppmのピークの積分値を4.00ppm~3.60ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0086】
(実施例3)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0087】
【化6】
【0088】
[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を50mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を20mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.44mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速1.01mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、26%であった。この生成率(%)は、化学シフト3.93ppmのピークの積分値を、3.93ppm、3.75ppm及び3.66ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0089】
(比較例2)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0090】
【化7】
【0091】
[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシラン0.30g、及び1,4-チオキサン-4-オキシド0.31gを、ジクロロメタン9.43mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシランの濃度は0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドの濃度は0.25Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.94mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例2と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、16%であった。
実施例3と比較例2との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも10%(1.6倍)高められることがわかった。
【0092】
(実施例4)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0093】
【化8】
【0094】
(ブタ-1,3-ジエン-2-イルオキシ)トリメチルシランを0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を50mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を20mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.43mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速1.01mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、24%であった。この生成率(%)は、化学シフト5.69ppmのピークの積分値を2で除した値を、5.69ppmのピークの積分値を2で除した値と2.32ppmのピークの積分値を3で除した値との和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0095】
(比較例3)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0096】
【化9】
【0097】
(ブタ-1,3-ジエン-2-イルオキシ)トリメチルシラン0.24g、及び1,4-チオキサン-4-オキシド0.31gを、ジクロロメタン9.49mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、(ブタ-1,3-ジエン-2-イルオキシ)トリメチルシランの濃度は0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドの濃度は0.25Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.95mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例3と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、14%であった。
実施例4と比較例3との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも10%(1.7倍)高められることがわかった。
【0098】
(実施例5)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。TBSはt-ブチルジメチルシリルを示す。
【0099】
【化10】
【0100】
tert-ブチル[(1-メトキシビニル)オキシ]ジメチルシランを0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を50mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を25mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.43mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速1.01mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、35%であった。この生成率(%)は、化学シフト3.71ppmのピークの積分値を、3.71ppmと3.67ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0101】
(比較例4)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0102】
【化11】
【0103】
tert-ブチル[(1-メトキシビニル)オキシ]ジメチルシラン0.32g、及び1,4-チオキサン-4-オキシド0.31gを、ジクロロメタン9.40mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、tert-ブチル[(1-メトキシビニル)オキシ]ジメチルシランの濃度は0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドの濃度は0.25Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.95mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例4と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、21%であった。
実施例5と比較例4との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも14%(1.7倍)高められることがわかった。
【0104】
(実施例6)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0105】
【化12】
【0106】
トリメチル(ビニロキシ)シランを0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を50mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を25mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.44mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速1.01mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、29%であった。この生成率(%)は、化学シフト5.70ppmのピークの積分値を2で除した値を、5.69ppmのピークの積分値を2で除した値と2.20ppmのピークの積分値を3で除した値との和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0107】
(比較例5)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0108】
【化13】
【0109】
トリメチル(ビニロキシ)シラン0.20g、及び1,4-チオキサン-4-オキシド0.30gを、ジクロロメタン9.52mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、トリメチル(ビニロキシ)シランの濃度は0.17M、1,4-チオキサン-4-オキシドの濃度は0.25Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.94mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例5と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、9.4%であった。
実施例6と比較例5との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも20%(3.1倍)近く高められることがわかった。
【0110】
(実施例7)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0111】
【化14】
【0112】
(ブタ-1,3-ジエン-2-イルオキシ)トリメチルシランを0.17M、テトラヒドロチオフェン-1-オキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を50mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を25mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.43mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速1.01mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、85%であった。この生成率(%)は、化学シフト6.23ppmのピークの積分値を、6.23ppmと5.90ppmのピークの積分値の和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0113】
(比較例6)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0114】
【化15】
【0115】
(ブタ-1,3-ジエン-2-イルオキシ)トリメチルシラン0.24g、及びテトラヒドロチオフェン-1-オキシド0.26gを、ジクロロメタン9.46mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、(ブタ-1,3-ジエン-2-イルオキシ)トリメチルシランの濃度は0.17M、テトラヒドロチオフェン-1-オキシドの濃度は0.25Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.94mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例6と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、51%であった。
実施例7と比較例6との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも34%(1.7倍)高められることがわかった。
【0116】
(実施例8)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0117】
【化16】
【0118】
トリメチル(ビニロキシ)シランを0.17M、テトラヒドロチオフェン-1-オキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を50mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を25mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.44mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速1.01mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、57%であった。この生成率(%)は、化学シフト3.34ppmのピークの積分値を2で除した値を、3.34ppmのピークの積分値を2で除した値と2.18ppmのピークの積分値を3で除した値との和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0119】
(比較例7)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0120】
【化17】
【0121】
トリメチル(ビニロキシ)シラン0.24g、及びテトラヒドロチオフェン-1-オキシド0.26gを、ジクロロメタン9.52mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、トリメチル(ビニロキシ)シランの濃度は0.17M、テトラヒドロチオフェン-1-オキシド濃度は0.25Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.94mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例7と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、7.4%であった。
実施例8と比較例7との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも50%(7.7倍)近く高められることがわかった。
【0122】
(実施例9)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0123】
【化18】
【0124】
[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを0.17M、テトラヒドロチオフェン-1-オキシドを0.25Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を50mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を25mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速1.43mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速1.01mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、83%であった。この生成率(%)は、化学シフト1.81ppmのピークの積分値を、1.81ppmと1.49ppmと1.17ppmのピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0125】
(比較例8)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0126】
【化19】
【0127】
[(1-メトキシ-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシラン0.30g、及びテトラヒドロチオフェン-1-オキシド0.27gを、ジクロロメタン9.45mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、[(1-メトキシ-2‐メチルプロパ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランの濃度は0.17M、テトラヒドロチオフェン-1-オキシドの濃度は0.25Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を0.37Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.94mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例8と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、0.5%であった。
実施例9と比較例8との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも82.5%(166倍)高くなることがわかった。
【0128】
(実施例10)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0129】
【化20】
【0130】
上記化学式の二重結合から伸びる波線は、二重結合の幾何異性体の存在を示すものであり、E体、Z体又はこれらの混合物のいずれかであることを示す。
【0131】
[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを1.54M、1,4-チオキサン-4-オキシドを4.63Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を150mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を100mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速3.43mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速2.34mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、98%であった。この生成率(%)は、化学シフト7.01ppmのピークの積分値を、6.85~7.10ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【0132】
(比較例9)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0133】
【化21】
【0134】
[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシラン4.30g、及び1,4-チオキサン-4-オキシド5.56gを、ジクロロメタン1.22mL中で混合して溶解した後、-15℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシランの濃度は1.54M、1,4-チオキサン-4-オキシドの濃度は4.63Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-15℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液6.86mLを5分間かけて滴下し、その後、-15℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例9と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、80%であった。
実施例10と比較例9との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも18%(1.2倍)高く、かつ、その生成率は98%であり、格段に高い選択性で目的のスルホニウム塩化合物が得られることがわかった。
【0135】
(実施例11)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0136】
【化22】
【0137】
[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを1.54M、1,4-チオキサン-4-オキシドを4.63Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を150mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を100mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-40℃(反応温度-40℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速3.43mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速2.34mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、92%であった。この生成率(%)は、化学シフト7.01ppmのピークの積分値を、6.85~7.10ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
実施例10と実施例11との対比から、フロー式反応を採用することにより、より副反応が生じにくいとされる-40℃で反応させるよりも、それよりも格段に温度が高い-15℃で反応させる方が、目的のスルホニウム塩の生成率が高められることがわかった。
【0138】
(比較例10)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0139】
【化23】
【0140】
[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシラン1.07g、及び1,4-チオキサン-4-オキシド1.39gを、ジクロロメタン7.81mL中で混合して溶解した後、-40℃に冷却して原料混合溶液とした。この原料混合液中、[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ)トリメチルシランの濃度は1.54M、1,4-チオキサン-4-オキシドの濃度は4.63Mである。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を調製し、-40℃に冷却して活性化剤溶液とした。
原料混合溶液に、活性化剤溶液1.71mLを5分間かけて滴下し、その後、-40℃で3分間撹拌した。
この反応液をH-NMR測定に付し、実施例9と同様にしてスルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、84%であった。
実施例11と比較例10との対比から、フロー式反応を採用して-40℃という従来法の反応温度とした場合、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも良化するものの、その程度は8%(1.1倍)にとどまるものであった。
【0141】
(実施例12)
反応流路(4)に外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ1.91mのSUS316チューブを使用した以外は、上記の実施様態1のフロー式反応システムと同じシステムを用いて、下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0142】
【化24】
【0143】
[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを1.54M、1,4-チオキサン-4-オキシドを4.63Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を150mL調製し、これを原料混合溶液とした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を100mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料混合溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ia)から流路(1)内へ流速3.43mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ib)から流路(2)内へ流速2.34mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(4)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、96%であった。この生成率(%)は、化学シフト7.01ppmのピークの積分値を、6.85~7.10ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
実施例12と比較例9との対比から、フロー式反応を採用して-15℃の反応温度とすることにより、目的のスルホニウム塩化合物の生成率はバッチ式反応よりも16%(1.2倍)高く、かつ、その生成率は96%であり、格段に高い選択性で目的のスルホニウム塩化合物が得られることがわかった。また、反応流路の流路径を大きくしても、高効率にスルホニウム塩化合物が得られることがわかった。
【0144】
[実施形態2]
図2に示すフロー式反応システムを用いて本発明の製造方法を実施し、各種スルホニウム塩化合物を得た。フロー式反応システムの各部の詳細は次の通りである。
【0145】
<流路(5)、流路(6)及び流路(7)>
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ50cmのSUS316チューブを使用した。
<合流部8>
SUS316製十字コネクタを使用した。
<反応流路(9)>
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ9mのSUS316チューブを使用した。
【0146】
図2に示すフロー式反応システム全体を恒温槽内に設置し、システム全体を一体的に、下記の各実施例に記載する温度に制御した。
【0147】
(実施例13)
下記反応スキームに従ってスルホニウム塩化合物を得た。
【0148】
【化25】
【0149】
[(1-(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル)オキシ]トリメチルシランを1.54Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を100mL調製し、これを原料溶液Aとした。
また、1,4-チオキサン-4-オキシドを4.63Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を100mL調製し、これを原料溶液Bとした。
また、トリフルオロ酢酸無水物を3.38Mの濃度で含むジクロロメタン溶液を100mL調製し、これを活性化剤溶液とした。
恒温槽の設定温度を-15℃(反応温度-15℃)とした。原料溶液Aを、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ic)から流路(5)内へ流速1.08mL/minで送液した。また、原料溶液Bを、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Id)から流路(6)内へ流速0.54mL/minで送液した。また、活性化剤溶液を、ポンプ(フロム社製、UI-22-110S)を用いて導入口(Ie)から流路(7)内へ流速0.74mL/minで送液した。
上記条件における滞留時間(反応時間)は180秒である。十分に系内が上記溶液ないし合流液で置き換わった後、反応流路(9)から排出される反応液をサンプル容器に採取した。この反応液をH-NMR測定に付し、スルホニウム塩化合物の生成率(%)を決定したところ、97%であった。この生成率(%)は、化学シフト7.01ppmのピークの積分値を6.85~7.10ppmに存在するピークの積分値の総和で除した値に、100を乗じて算出される値である。
【符号の説明】
【0150】
10、20 フロー式反応システム
Ia 原液混合溶液導入口
Ib 活性化剤溶液導入口
Ic 原液溶液A導入口
Id 原液溶液B導入口
Ie 活性化剤溶液導入口
1、2、5、6、7 流路
3、8 合流部
4、9 反応流路
図1
図2