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特開2024-103317廃液排出機構、処理装置、及び清掃方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103317
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】廃液排出機構、処理装置、及び清掃方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01L21/304 648K
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007585
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】國原 淳
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC23
5F157BB23
5F157BB37
5F157BB45
5F157CC41
5F157CF16
5F157CF42
5F157CF44
5F157DC01
(57)【要約】
【課題】内部に付着した固形物を除去して清掃する。
【解決手段】廃液が流入する廃液槽と、該廃液槽に流入する該廃液の経路となる流入路と、該廃液槽から排出される該廃液の経路となる排出路と、該排出路を経た該廃液槽からの該廃液の排出を規制する開閉機構と、該廃液槽に溜まる該廃液を攪拌する攪拌ユニットと、を備え、該排出路を経た該廃液の排出の規制を該開閉機構で実施して該廃液槽内に該廃液を溜め、該攪拌ユニットを作動させて該廃液槽内で該廃液を攪拌し、該開閉機構による該規制を解除することにより該排出路を経て該廃液槽から該廃液を排出する。好ましくは、該攪拌ユニットは、該開閉機構による該規制が実施されることで該廃液槽内に溜まる該廃液を攪拌するように該廃液に流体を噴射する流体供給ノズルを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液が流入する廃液槽と、
該廃液槽に流入する該廃液の経路となる流入路と、
該廃液槽から排出される該廃液の経路となる排出路と、
該排出路を経た該廃液槽からの該廃液の排出を規制する開閉機構と、
該廃液槽に溜まる該廃液を攪拌する攪拌ユニットと、を備え、
該排出路を経た該廃液の排出の規制を該開閉機構で実施して該廃液槽内に該廃液を溜め、該攪拌ユニットを作動させて該廃液槽内で該廃液を攪拌し、該開閉機構による該規制を解除することにより該排出路を経て該廃液槽から該廃液を排出することを特徴とする廃液排出機構。
【請求項2】
該攪拌ユニットは、該開閉機構による該規制が実施されることで該廃液槽内に溜まる該廃液を攪拌するように該廃液に流体を噴射する流体供給ノズルを含むことを特徴とする請求項1に記載の廃液排出機構。
【請求項3】
該攪拌ユニットは、
該開閉機構による該規制が実施されることで該廃液槽内に溜まる該廃液中で回転する回転羽根部と、
該回転羽根部に接続され、該回転羽根部の回転中心となる回転軸と、
該回転軸に接続され、該回転軸を回転させることにより該回転羽根部を該廃液中で回転させる回転駆動源と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の廃液排出機構。
【請求項4】
ワークに液体を供給する液体供給ノズルと、
該液体供給ノズルを収容する処理室と、
該処理室の底部に落下した該液体を該廃液として該処理室から排出する請求項1から請求項3のいずれかに記載の廃液排出機構と、を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項5】
廃液が流入する廃液槽と、該廃液槽に流入する該廃液の経路となる流入路と、該廃液槽から排出される該廃液の経路となる排出路と、を備える廃液排出機構を清掃する清掃方法であって、
該排出路を経た該廃液槽からの該廃液の排出の規制を実施して該廃液槽内に該廃液を貯留する規制ステップと、
該規制ステップの後、該廃液槽内に貯留された該廃液を攪拌する攪拌ステップと、
該攪拌ステップの後、該廃液槽からの該廃液の排出の規制を解除して該排出路を経て該廃液槽から該廃液を排出する排出ステップと、
を備えることを特徴とする清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液が流入する廃液槽と、廃液槽へ流入する廃液の経路となる流入路と、廃液槽から排出される廃液の経路となる排出路と、を備える廃液排出機構、この廃液排出機構に接続されており半導体ウェーハ等のワークを処理する処理装置、及び該廃液排出機構の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に搭載されるデバイスチップの製造工程では、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成された円板状のウェーハが用いられる。このウェーハを薄化し、その後に分割予定ラインに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。例えば、ウェーハの薄化には研削装置が使用され、ウェーハの分割には切削装置やレーザ加工装置が使用される。
【0003】
研削装置や切削装置では、ウェーハ等のワーク(被加工物)を保持する保持ユニットと、保持ユニットで保持したワークを加工する加工ユニットと、加工されるワーク等に純水等の加工水を供給する加工水供給ユニットと、を備える。研削装置や切削装置でワークを加工すると、ワークや加工具から細かい加工屑が生じる。生じた加工屑は、加工水とともに加工室から排出される。また、研削装置や切削装置は、加工後のワークを洗浄水で洗浄する洗浄ユニットを備える(特許文献1参照)。
【0004】
また、レーザ加工装置は、ワークを保持する保持ユニットと、保持ユニットで保持したワークをレーザ加工する加工ユニットと、を備える。ワークをレーザ加工するとワークが部分的に溶融し、デブリと呼ばれる屑が飛散する。レーザ加工装置は、このデブリからワーク上面を保護するために、ワーク上面を水溶性樹脂膜で覆い、レーザ加工後に上面にデブリが付着した水溶性樹脂膜を水で洗い流す。レーザ加工装置は、ワークに液状の樹脂材料と、洗浄水と、を供給できるスピンナユニットを備える(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-7058号公報
【特許文献2】特開2004-322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研削装置や切削装置、レーザ加工装置等の処理装置(加工装置)では、様々な目的で液体が使用される。そして、処理装置は、使用された各種の液体を廃液として集め処理装置から排出する廃液排出機構を備える。廃液排出機構は、廃液が集まる廃液槽と、廃液槽に集まった廃液が排出される液路となる廃液路と、を備える。
【0007】
ワークが加工されて発生した加工屑や、水溶性樹脂を含む廃液は、速やかに廃液排出機構により排出されることが望ましい。しかしながら、廃液槽内に一部の廃液が残留したり廃液槽の壁面に廃液が付着したりするため、廃液が乾燥して固形物が廃液槽の内面に固着し堆積する。その結果、詰まりが生じて廃液が廃液槽から円滑に排出されなくなり、廃液排出機構の廃液排出能力が低下する。
【0008】
そのため、廃液槽等を定期的に清掃する必要があり、清掃を実施する都度、廃液排出機構に接続された処理装置の稼働を停止する必要があった。そして、清掃作業中に処理装置を稼働できないため、清掃作業が処理装置の生産性や稼働効率を低下させる要因になっていた。また、廃液排出機構の清掃作業それ自体が大きな手間である。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、内部に付着した固形物を除去して清掃できる廃液排出機構、廃液排出機構に接続された処理装置、及び廃液排出機構の清掃方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、廃液が流入する廃液槽と、該廃液槽に流入する該廃液の経路となる流入路と、該廃液槽から排出される該廃液の経路となる排出路と、該排出路を経た該廃液槽からの該廃液の排出を規制する開閉機構と、該廃液槽に溜まる該廃液を攪拌する攪拌ユニットと、を備え、該排出路を経た該廃液の排出の規制を該開閉機構で実施して該廃液槽内に該廃液を溜め、該攪拌ユニットを作動させて該廃液槽内で該廃液を攪拌し、該開閉機構による該規制を解除することにより該排出路を経て該廃液槽から該廃液を排出することを特徴とする廃液排出機構が提供される。
【0011】
好ましくは、該攪拌ユニットは、該開閉機構による該規制が実施されることで該廃液槽内に溜まる該廃液を攪拌するように該廃液に流体を噴射する流体供給ノズルを含む。
【0012】
さらに好ましくは、該攪拌ユニットは、該開閉機構による該規制が実施されることで該廃液槽内に溜まる該廃液中で回転する回転羽根部と、該回転羽根部に接続され、該回転羽根部の回転中心となる回転軸と、該回転軸に接続され、該回転軸を回転させることにより該回転羽根部を該廃液中で回転させる回転駆動源と、を含む。
【0013】
本発明の他の一態様によれば、ワークに液体を供給する液体供給ノズルと、該液体供給ノズルを収容する処理室と、該処理室の底部に落下した該液体を該廃液として該処理室から排出する上述の廃液排出機構と、を備えることを特徴とする処理装置が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の一態様によれば、廃液が流入する廃液槽と、該廃液槽に流入する該廃液の経路となる流入路と、該廃液槽から排出される該廃液の経路となる排出路と、を備える廃液排出機構を清掃する清掃方法であって、該排出路を経た該廃液槽からの該廃液の排出の規制を実施して該廃液槽内に該廃液を貯留する規制ステップと、該規制ステップの後、該廃液槽内に貯留された該廃液を攪拌する攪拌ステップと、該攪拌ステップの後、該廃液槽からの該廃液の排出の規制を解除して該排出路を経て該廃液槽から該廃液を排出する排出ステップと、を備えることを特徴とする清掃方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る廃液排出機構、処理装置、及び清掃方法では、廃液が流入する廃液槽からの廃液の排出を一度規制する。この状態で廃液槽にさらなる廃液が流入すると、廃液が廃液槽に貯留されていき、廃液槽の内壁が下方から徐々に廃液中に沈む。そのため、廃液槽の内壁に固着した固形物が廃液中に沈み、廃液が固形物を浸食する。
【0016】
その上で、廃液槽に貯留された廃液を攪拌すると、流れる廃液により内壁から固形物が剥がれ、廃液槽中の固形物が廃液中に舞い上がる。その後、廃液槽からの廃液の排出の規制を解除すると、固形物を取り込んだ廃液が廃液槽から排出される。すなわち、これにより廃液排出機構を清掃できる。本発明の一態様に係る廃液排出機構、処理装置、及び清掃方法では、廃液槽をこのように清掃することにより、固形物の固着を抑制したり、固着した固形物を除去したりできる。
【0017】
この清掃作業は、作業者の手に依らず容易に実施可能である。また、廃液排出機構への廃液の流入を停止させることなく清掃を実施できるため、廃液排出機構に接続された処理装置を停止させる必要がない。そのため、処理装置の生産性や稼働効率の低下を抑制できる。
【0018】
したがって、本発明の一態様により、内部に付着した固形物を除去して清掃できる廃液排出機構、及び廃液排出機構に接続された処理装置、廃液排出機構の清掃方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】処理装置で処理されるワークの一例を模式的に示す斜視図である。
図2】処理装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図3】処理室を模式的に示す斜視図である。
図4】処理室を模式的に示す断面図である。
図5図5(A)は、廃液排出機構の廃液槽を模式的に示す斜視図であり、図5(B)は、廃液排出機構の廃液槽の内部構造を模式的に示す斜視図である。
図6】廃液排出機構の廃液槽を模式的に示す断面図である。
図7図7(A)は、排出路の入り口に設けられた閉じられた開閉機構を模式的に示す斜視図であり、図7(B)は、排出路の入り口に設けられた開けられた開閉機構を模式的に示す斜視図である。
図8図8(A)は、変形例に係る攪拌ユニットが組み込まれた廃液槽を模式的に示す斜視図であり、図8(B)は、変形例に係る攪拌ユニットが組み込まれた廃液槽を模式的に示す断面図である。
図9】第2変形例に係る攪拌ユニットを模式的に示す側面図である。
図10】廃液排出機構と複数の処理装置の接続関係を模式的に示す接続図である。
図11】廃液排出機構の清掃方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図では、説明の便宜のために各構造物の大きさや形状について簡略化して表示している場合や、外見上に現れる特徴を強調して表示している場合がある。そのため、各構造物は各図に示された形状、大きさ、角度等には限定されない。
【0021】
まず、本実施形態に係る廃液排出機構が接続される処理装置(加工装置)において処理(加工)されるワーク(被加工物)について説明する。図1には、ワーク1を模式的に示す斜視図が含まれている。ワーク1は、例えば、シリコン等の材料で形成された円板状のウェーハであり、互いに概ね平行でそれぞれ平坦な表面1a及び裏面1bを備える。
【0022】
ワーク1の表面1aには、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)3が設定される。ワーク1の表面1aの分割予定ライン3で区画された各領域には、それぞれ、IC、LSI等のデバイス5が形成される。
【0023】
なお、ワーク1の材質、構造、大きさ等に制限はない。例えばワーク1は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)等でなる基板であってもよい。また、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、ワーク1にはデバイス5が形成されていなくてもよい。
【0024】
ワーク1を薄化し、ワーク1を分割予定ライン3に沿って分割すると、デバイス5をそれぞれ備える複数の薄型のチップ(デバイスチップ)が製造される。分割されるワーク1の裏面1bには、ダイシングテープと呼ばれる図1に示すテープ9が予め貼着される。そして、テープ9の外周部は、金属等で形成されたリングフレーム11に予め貼着され、リングフレーム11の開口部11aがテープ9により塞がれる。ワーク1は、テープ9及びリングフレーム11と一体化されてフレームユニット13(図2参照)として取り扱われる。
【0025】
ワーク1の分割には、例えば、環状の切削ブレードを備える切削装置や、ワーク1にレーザビームを照射するレーザ加工ユニットを備えるレーザ加工装置が使用される。また、ワーク1の薄化には、ワーク1を裏面1b側から研削する研削装置が使用される。さらに、研削後のワーク1の裏面1b側に残る研削痕を除去するために、研磨装置が使用される。
【0026】
ワーク1は、このような加工装置において加工される合間に、洗浄装置で洗浄されたり、テープ貼着装置でダイシングテープや保護テープ等のテープ9に貼着されたり、各種の処理を受ける。ワーク1に加工や各種の処理を実施する処理装置では、純水や液状樹脂等の各種の液体が使用される。そして、各処理装置では、使用済みの液体や余分な液体等が集められ、廃液として排出される。本実施形態に係る廃液排出機構は、各処理装置に組み込まれて使用される。
【0027】
次に、廃液排出機構が組み込まれて使用される処理装置について説明する。処理装置は、ワーク1に切削、レーザ加工、研削、研磨、洗浄、テープ貼着、樹脂膜成膜等の処理を実施する装置である。以下、本実施形態に係る処理装置の一例として、ワーク1をレーザ加工するレーザ加工装置について説明する。しかしながら、処理装置はレーザ加工装置に限定されない。
【0028】
図2は、レーザ加工装置2を模式的に示す斜視図である。レーザ加工装置2には、フレームユニット13の状態のワーク1が搬入される。レーザ加工装置2は、フレームユニット13の状態のワーク1を吸引保持するチャックテーブル28と、該チャックテーブル28の上方に配設されたレーザ加工ユニット34と、を備える。
【0029】
レーザ加工装置2は、基台4の上面の前角部に配設されたカセット載置台6aを備える。カセット載置台6aには、複数のワーク1が収容されたカセット8が載せられる。また、レーザ加工装置2は、基台4の上方にフレームユニット13の状態のワーク1を搬送するための搬送ユニット10と、搬送レール12と、を備える。
【0030】
レーザ加工装置2の基台4の上面には、X軸ガイドレール14と、X軸移動プレート16と、X軸ボールねじ18と、X軸パルスモータ20と、を備えるX軸移動機構(加工送り機構)が配設されている。基台4の上面には、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール14が設けられており、X軸ガイドレール14にはX軸移動プレート16がスライド可能に取り付けられている。
【0031】
X軸移動プレート16の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール14に平行なX軸ボールねじ18が螺合されている。X軸ボールねじ18の一端には、X軸パルスモータ20が連結されている。X軸パルスモータ20によりX軸ボールねじ18を回転させると、X軸移動プレート16がX軸ガイドレール14に沿ってX軸方向に移動する。
【0032】
X軸移動プレート16の上面には、Y軸ガイドレール22と、Y軸移動プレート24と、Y軸ボールねじ26と、Y軸パルスモータ(不図示)と、を備えるY軸移動機構(割り出し送り機構)が配設されている。Y軸移動プレート24の上面には、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール22が設けられており、Y軸ガイドレール22にはY軸移動プレート24がスライド可能に取り付けられている。
【0033】
Y軸移動プレート24の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール22に平行なY軸ボールねじ26が螺合されている。Y軸ボールねじ26の一端には、Y軸パルスモータが連結されている。Y軸パルスモータによりY軸ボールねじ26を回転させると、Y軸移動プレート24がY軸ガイドレール22に沿ってY軸方向に移動する。
【0034】
Y軸移動プレート24の上には、チャックテーブル28が配設される。チャックテーブル28の上面側には、多孔質部材(不図示)が配されている。または、チャックテーブル28の上面側に複数の溝が形成されている。チャックテーブル28は、例えば、ステンレス鋼や、石英部材等により形成される。チャックテーブル28の上面は、ワーク1を保持する保持面28aとなる。チャックテーブル28は、保持面28aに垂直な軸の周りに回転可能である。
【0035】
チャックテーブル28は、該多孔質部材または該溝に接続された吸引源(不図示)を有する。保持面28a上にテープ9を介してワーク1が載せられ、多孔質部材の孔または該溝を通して該ワーク1に対して吸引源により生じた負圧を作用させると、ワーク1はチャックテーブル28に吸引保持される。また、チャックテーブル28の周囲には、フレームユニット13を構成するリングフレーム11を固定するクランプ28bが備えられている。
【0036】
レーザ加工装置2の基台4の上面の後部には、レーザ加工ユニット34を支持する立設部30が配設されている。立設部30の上部にはチャックテーブル28の上方まで伸びた支持部32の基端側が接続され、支持部32の先端側にはレーザ加工ユニット34と、撮像ユニット36と、が配設されている。レーザ加工ユニット34は、チャックテーブル28の上方に配設された加工ヘッド34aと、加工ヘッド34aに隣接する位置に配設された撮像ユニット36と、を備える。
【0037】
レーザ加工ユニット34は、ワーク1が吸収できる波長のレーザビームをパルス発振し、チャックテーブル28に保持されたワーク1に該レーザビームを集光させる機能を有する。例えば、レーザ加工ユニット34は、Nd:YAGまたはNd:YVO等をレーザ媒質として使用してレーザを発振させ、例えば、波長532nmまたは355nm等のレーザビームをワーク1に集光させる。
【0038】
撮像ユニット36は、チャックテーブル28に保持されたワーク1を撮像する機能を有する。撮像ユニット36を用いると、ワーク1の分割予定ライン3に沿ってレーザビームを照射できるように加工ヘッド34aに対するワーク1の位置を調整するアライメントを実施できる。
【0039】
チャックテーブル28で保持されたワーク1にレーザ加工ユニット34からレーザビームを照射してワーク1をレーザ加工すると、アブレーションによりワーク1が部分的に除去され、ワーク1に加工溝が形成される。このとき、ワーク1がレーザビームにより部分的に溶融してデブリと呼ばれる屑が発生し、周囲に飛散する。この屑はワーク1の表面1aに付着するため、ワーク1から形成されたデバイスチップの品質の低下の要因となる。
【0040】
そこで、レーザ加工されるワーク1の表面1aは、予め水溶性樹脂膜で形成された保護膜により覆われる。この場合、ワーク1がレーザ加工されて飛散する屑は、水溶性樹脂膜の上面に付着する。そのため、レーザ加工されたワーク1を洗浄水で洗浄すると、水溶性樹脂膜とともに屑が洗い流されるため、ワーク1から形成されたデバイスチップに屑が残らない。すなわち、高品質なデバイスチップが得られる。
【0041】
レーザ加工装置2は、保護膜塗布ユニット兼洗浄ユニットとして機能する処理ユニット38を収容する処理室4aが基台4の上面に形成されている。処理室4aは、処理ユニット38が作動している間、図示しない蓋体により閉じられてもよい。これにより、処理ユニット38で使用される各種の液体の処理室4a外部への飛散が抑制される。図3は、処理室4aを模式的に示す斜視図である。図3では、説明の便宜のため外壁44の一部の構成が切除された状態で処理ユニット38が示されている。
【0042】
次に、保護膜塗布ユニット兼洗浄ユニットとして機能する処理ユニット38について説明する。処理ユニット38では、レーザ加工される前のワーク1に液状樹脂が供給され、ワーク1の表面1aに水溶性樹脂膜が形成される。また、処理ユニット38では、レーザ加工されたワーク1が洗浄水により洗浄される。
【0043】
処理ユニット38は、スピンナテーブル機構42と、外壁44と、スピンナテーブル機構42で保持されたワーク1に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構46と、スピンナテーブル機構42で保持されたワーク1を洗浄する洗浄機構48と、を備える。
【0044】
スピンナテーブル機構42は、スピンナテーブル50と、スピンナテーブル50を上面に垂直な方向に沿った軸の周りに回転させるモータ52と、モータ52を上下方向に移動可能に支持する支持機構54と、を有する。
【0045】
スピンナテーブル50の上部には、上方に露出する多孔質部材56が配設されている。スピンナテーブル50の内部には一端が図示しない吸引源に接続され、他端が多孔質部材56に接続された吸引路(不図示)が配設されている。スピンナテーブル50の上にワーク1を載せ、該吸引源を作動させて該吸引路及び多孔質部材56を通してワーク1に負圧を作用させると、ワーク1がスピンナテーブル50に吸引保持される。すなわち、多孔質部材56の上面が保持面となる。
【0046】
スピンナテーブル50の上部の外周側には、フレームユニット13のリングフレーム11を保持するクランプ57が配設されている。クランプ57は、スピンナテーブル50の回転により生じる遠心力により下側の錘部分が外周側に移動することで自動的に上側の把持部が内周側に倒れてリングフレーム11を把持する。
【0047】
スピンナテーブル50の下部は、出力軸58の上端が接続されており、出力軸58の下端にはモータ52が接続されている。出力軸58は、モータ52により生じた回転力をスピンナテーブル50に伝達する。
【0048】
モータ52は、支持機構54により支持されている。支持機構54は、モータ52に取り付けられた複数のエアシリンダ60を備え、それぞれのエアシリンダ60の下部には支持脚62が接続されている。各エアシリンダ60を同時に作動させると、モータ52及びスピンナテーブル50を昇降できる。ワーク1の搬出入時には、支持機構54を作動させて所定の搬出入位置にスピンナテーブル50を上昇させ、ワーク1への処理を実施する際には、所定の処理実施位置にスピンナテーブル50を下降させる。
【0049】
外壁44は、処理室4aを側方から囲む円筒状の側壁44aと、側壁44aの下端から内周側に延在する円環状の底壁44bと、底壁44bの内周から上方に立設した円筒状の内周壁44cと、により構成される。内周壁44cの内側は貫通孔64となり、貫通孔64には出力軸58が通される。
【0050】
スピンナテーブル50の下面には、出力軸58及び内周壁44cを外周側から囲む大きさのカバー部材66が設けられている。スピンナテーブル50が処理実施位置に下降すると、内周壁44cが該カバー部材66に囲まれるため、貫通孔64を経たモータ52側への液体の飛散が抑制される。
【0051】
処理室4aを囲む外壁44の底壁44bには、液状樹脂供給機構46のパイプ状の供給軸部68が突き通されている。供給軸部68は、スピンナテーブル50の外側においてスピンナテーブル50の上面に垂直な方向に沿って伸長したパイプ状の部材であり、スピンナテーブル50の上面の高さよりも高い位置に達し、上端に供給腕部70が接続されている。供給軸部68の基端側には供給軸部68を回転させるモータ72(図8等参照)が接続されており、供給軸部68はモータ72により該垂直な方向の周りに回転される。
【0052】
供給腕部70は、供給軸部68からスピンナテーブル50の中央までの距離に相当する長さで供給軸部68の伸長方向に垂直な方向に伸長したパイプ状の部材であり、供給腕部70の先端には下方に向いた供給ノズル74が配設される。液状樹脂供給機構46は、図示しない液状樹脂供給源を備え、供給軸部68及び供給腕部70を経て供給ノズル74からスピンナテーブル50に保持されたワーク1に向けて液状樹脂を噴出させる。
【0053】
供給ノズル74から液体として液状樹脂を噴出させながらモータ52を作動させてスピンナテーブル50を回転させると、ワーク1にスピンコーティングを実施できる。そして、ワーク1の上面に水溶性樹脂膜を形成できる。ここで、液状樹脂供給源から供給され供給ノズル74から噴出する液体である液状樹脂には、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等が用いられる。
【0054】
外壁44の底壁44bには、さらに、洗浄機構48のパイプ状の洗浄軸部76が突き通されている。洗浄軸部76は、スピンナテーブル50の外側においてスピンナテーブル50の上面に垂直な方向に沿って伸長したパイプ状の部材であり、スピンナテーブル50の上面の高さよりも高い位置に達し、上端に洗浄腕部78が接続されている。洗浄軸部76の基端側には洗浄軸部76を回転させるモータ80(図4等参照)が接続されており、洗浄軸部76はモータ80により該垂直な方向の周りに回転される。
【0055】
洗浄腕部78は、洗浄軸部76からスピンナテーブル50の中央までの距離に相当する長さで洗浄軸部76の伸長方向に垂直な方向に伸長したパイプ状の部材であり、洗浄腕部78の先端には下方に向いた洗浄ノズル82が配設される。洗浄機構48は、図示しない洗浄液供給源を備え、洗浄軸部76及び洗浄腕部78を経て洗浄ノズル82からスピンナテーブル50に保持されたワーク1に向け洗浄液を噴出させる。
【0056】
水溶性樹脂膜が表面1aに形成されレーザ加工されたワーク1をスピンナテーブル50で保持し、スピンナテーブル50を回転させながら洗浄ノズル82から液体として純水等の洗浄液を噴射させると、ワーク1の表面1aが洗浄される。すなわち、レーザ加工によりワーク1の表面1aに飛散したデブリ等の屑とともに水溶性樹脂膜が除去される。なお、ワーク1に噴射される洗浄液は主に純水により構成される。洗浄ノズル82は、空気や窒素等の高圧の気体が純水に混合されて形成された二流体を噴射してもよい。
【0057】
ここで、処理ユニット38は、液状樹脂供給機構46及び洗浄機構48に代えて、両者の機能を併せ持つ一つの流体供給機構を備えてもよい。この流体供給機構は、液状樹脂と洗浄液とを切り替えてワーク1に供給できる。また、処理ユニット38は、洗浄機構48で洗浄されたワーク1に乾燥空気等の気体を噴射してワーク1を乾燥させる乾燥機構をさらに備えてもよい。
【0058】
外壁44の底壁44bには排液口84が設けられており、排液口84には排液路86として機能する配管が接続されている。排液路86は、後述の本実施形態に係る廃液排出機構に接続されている。液状樹脂供給機構46の供給ノズル74や洗浄機構48の洗浄ノズル82等の液体供給ノズルによりワーク1に供給された液状樹脂、洗浄液等の液体は、底壁44bに落下する。底壁44bに落下したこれらの液体は、廃液として排液口84から排液路86を経て廃液排出機構に進み、レーザ加工装置2から排出される。
【0059】
次に、レーザ加工装置(処理装置)2でワーク1が加工(処理)される流れについて説明する。加工されるワーク1は、フレームユニット13の状態で図1に示されるカセット8に収容されてレーザ加工装置2に搬入される。カセット8は、複数のフレームユニット13を収容する機能を有する。カセット8は、カセット載置台6aに載置される。
【0060】
フレームユニット13は、カセット8から搬送ユニット10により搬送レール12上に引き出され、搬送ユニット10により処理ユニット38の処理室4aに収容されたスピンナテーブル50上に搬送される。
【0061】
処理ユニット38が処理室4aの上方を閉じる図示しない蓋体を備える場合、予め蓋体による処理室4aの閉鎖が解除される。また、スピンナテーブル50は、所定の搬出入位置に予め上昇させておく。スピンナテーブル50にワーク1(フレームユニット13)が搬送された後、スピンナテーブル50を所定の処理実施位置に下降させ、蓋体で処理室4aを閉じる。
【0062】
次に、被加工物であるワーク1の表面1aに液状樹脂を塗布して水溶性樹脂膜を形成する。図4は、処理ユニット38の処理室4aで液状樹脂が供給されるワーク1を模式的に示す断面図である。処理ユニット38の処理室4aでは、例えば、スピンコーティングにより液状樹脂がワーク1に塗布される。
【0063】
まず、スピンナテーブル50を鉛直方向に沿った軸の周りに回転させながら、ワーク1の表面1aの中央付近に供給ノズル74の吐出口から液状樹脂88を供給する。この場合、遠心力により液状樹脂88が外周方向に移動し、ワーク1の表面1aに概略均一な厚さで液状樹脂が塗布される。このとき、一部の液状樹脂88はワーク1の外側に進み、底壁44bに落下し、排液口84(図3参照)から排液路86を通して後述の廃液排出機構に至る。
【0064】
ワーク1への液状樹脂88の供給を停止し、液状樹脂88を乾燥させると、ワーク1に水溶性樹脂膜が形成される。その後の、処理ユニット38の処理室4aからワーク1を搬出し、チャックテーブル28の保持面28aに搬送する。そして、チャックテーブル28の吸引源を作動させ、テープ9を介して被加工物であるワーク1をチャックテーブル28で吸引保持するとともに、クランプ28bにリングフレーム11を把持させる。
【0065】
次に、チャックテーブル28をレーザ加工ユニット34の下方に移動させ、撮像ユニット36によりワーク1の表面1aを撮像し、分割予定ライン3の位置に関する情報を取得する。そして、該情報を基に、チャックテーブル28を保持面28aに垂直な方向に沿った軸の周りに回転させてX軸方向に分割予定ライン3を合わせる。それとともに、チャックテーブル28を移動させて加工ヘッド34aを分割予定ライン3の延長線の上方に位置づける。
【0066】
そして、レーザ加工ユニット34にレーザを発振させながら、チャックテーブル28をX軸方向に沿って移動させ、分割予定ライン3に沿ってワーク1にレーザビームを照射する。ワーク1が吸収性を有する波長のレーザビームを分割予定ライン3に沿って照射すると、アブレーションによりワーク1に加工溝が形成される。
【0067】
一つの分割予定ライン3に沿ってアブレーション加工を実施した後、チャックテーブル28を割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って移動させ、同様に他の分割予定ライン3に沿ってアブレーション加工を実施する。X軸方向に沿ったすべての分割予定ライン3に沿ってアブレーション加工を実施した後、チャックテーブル28を回転させ、他の方向に沿った分割予定ライン3に沿って同様に加工を実施する。
【0068】
こうして、すべての分割予定ライン3に沿ってレーザ加工が実施され加工溝が形成されると、ワーク1が加工溝により分割され、個々のチップが形成される。個々のチップは、引き続きテープ9に支持される。
【0069】
なお、ワーク1をレーザ加工すると、ワーク1が部分的に溶融してデブリが発生し、加工溝の周囲に飛散する。しかしながら、ワーク1の表面には水溶性樹脂膜が形成されているため、デブリがワーク1に直接的に付着することはない。その後、ワーク1は、チャックテーブル28から再び処理ユニット38に搬送される。
【0070】
処理ユニット38のスピンナテーブル50でテープ9を介してワーク1を保持し、処理室4aの内部で洗浄機構48によりワーク1を洗浄する。すなわち、スピンナテーブル50を鉛直方向に沿った軸の周りに回転させながら、ワーク1の表面1aの中央付近に洗浄ノズル82の吐出口から洗浄液を供給する。すると、デブリ等の加工屑が水溶性樹脂膜ともに洗い流され、加工屑等を含む洗浄液が底壁44bに落下し、排液口84(図3参照)から排液路86を通して後述の廃液排出機構に至る。
【0071】
ワーク1の洗浄が完了した後、加工されたワーク1を含むフレームユニット13をカセット8に収容する。そして、カセット8に収容されている他のワーク1を同様にレーザ加工装置2で次々に加工し、カセット8に戻す。カセット8に収容されたすべてのワーク1が加工された後、カセット8をレーザ加工装置2から搬出する。
【0072】
次に、本実施形態に係る廃液排出機構について説明する。廃液排出機構は、例えば、レーザ加工装置(処理装置)2の内部に組み込まれて使用される。または、レーザ加工装置(処理装置)2の外部に設置されて使用される。廃液排出機構は、レーザ加工装置2の各所に接続されるとともに、レーザ加工装置2が設置された工場等の排出設備に接続される。廃液排出機構には各所で排出された廃液等が集められ、廃液排出機構90を経て工場等の排出設備に廃液等が進む。
【0073】
図5(A)は、本実施形態に係る廃液排出機構90を模式的に示す斜視図であり、主に廃液槽92の外観を示している。図5(B)は、本実施形態に係る廃液排出機構90の内部構造を模式的に示す斜視図である。図5(B)には、一部の外壁が切除されている廃液槽92が模式的に示されており、廃液槽92の切断面が示されている。また、図6は、廃液槽92を模式的に示す断面図である。
【0074】
廃液排出機構90の箱型の廃液槽92は、例えば、4つの側壁92a,92b,92c,92dと、底壁92eと、天井壁92fと、により構成されており、密閉されている。メンテナンスや清掃等に使用される開閉可能な扉がいずれかの側壁92a,92b,92c,92d等に設けられてもよく、いずれかの側壁92a,92b,92c,92d等が取り外し可能でもよい。
【0075】
廃液排出機構90は、レーザ加工装置2の各所に接続された流入路94,96,98,100を備える。流入路94,96,98,100は廃液槽92の外壁に設けられており、この流入路94,96,98,100のうちの一つまたは複数は、廃液槽92に流入する液体(廃液)の経路となる。また、この流入路94,96,98,100のその他は、廃液槽92に流入する気体(空気)の経路として使用されてもよい。
【0076】
例えば、廃液槽92の側壁92aには流入路94が設けられており、流入路94には図3に示す処理室4aの排液路86が接続される。そして、処理室4aで生じた廃液が排液路86及び流入路94を経て廃液槽92に流入する。また、廃液槽92の天井壁92fには、流入路100が設けられている。この流入路100は、例えば、レーザ加工装置2の各所に設けられたドレンパン等に接続されており、レーザ加工装置2の各所で生じた雑排水が廃液として流入路100から廃液槽92に流入する。
【0077】
さらに、廃液槽92の側壁92aには、流入路96が設けられている。処理室4aの内壁には図示しない排気口が形成されており、この排気口と流入路96が配管で構成される送気路により結ばれる。また、廃液槽92の天井壁92fには排気ダクト102が設けられており、排気ダクト102はレーザ加工装置2が設置される工場等の排気設備等に接続されている。
【0078】
この送気路または排気ダクト102には、ファン等の図示しない送気機構が配設されている。この送気機構は、送気路を通して処理室4a内の空気を廃液槽92に送るとともに、排気ダクト102を通じて廃液槽92内の空気を工場等の排気設備に送る機能を備える。
【0079】
処理室4aでワーク1を処理する間にワーク1に供給される液状樹脂や洗浄水等の液体の一部は、ワーク1に衝突したときに処理室4aの内部で空気中に飛散する。そして、処理室4aの空気中に飛散した液体のうち小さな粒子は、そのまま空気中に長期間浮遊し続ける。
【0080】
そして、この浮遊する小さな粒子は、処理室4aの隙間から漏れ出たり、処理室4aへのワークの搬出入時に蓋体が開けられたりしたときに外部の空気中に拡散する。そして、ミスト化した液体がワーク1に再付着したり、レーザ加工装置2の構成要素に付着したりすると、汚染源となる。
【0081】
そこで、レーザ加工装置2では、処理室4a中の空気が送気路を通じて吸引され続けることが好ましく、吸引された空気が廃液排出機構90の廃液槽92を通じて排気ダクト102から排出されることが好ましい。ここで、廃液槽92に到達した空気が廃液槽92の内壁112等に接触するときに空気中に含まれるミスト化した液体が内壁112等に付着するため、ミスト化した液体の量が低減された状態で空気が排気ダクト102から排出される。
【0082】
さらに、廃液排出機構90の廃液槽92の天井壁92fには、流入路98が設けられている。流入路98には、レーザ加工ユニット34(図2参照)の近傍に達する吸気口を備える配管で構成された吸気路が接続される。
【0083】
レーザ加工ユニット34でワーク1をレーザ加工すると、ワーク1からデブリが生じて周囲に飛散し汚染源となる。そこで、ワーク1のレーザ加工を実施する間、レーザ加工ユニット34の近傍や、ワーク1の加工点の近傍の空気を吸気口から吸引することで、発生するデブリの一部を吸引できる。また、レーザ加工ユニット34の近傍の空気を吸気口から吸引すると、空気に含まれる水分も吸引できる。
【0084】
そして、図5(B)に示す通り、流入路98は、廃液槽92の壁面に形成された流入口116に通じている。廃液槽92の内部には流入口116に対面する気水分離板118が設けられており、流入路98を通り流入口116から廃液槽92に流入する空気は、気水分離板118に衝突する。
【0085】
レーザ加工ユニット34の近傍から吸引され廃液槽92に流入した空気が気水分離板118に衝突すると、この空気に含まれていた水分やデブリ等の塵が気水分離板118に付着したり落下したりする。そして、水分や塵の量が少なくなった空気が排気ダクト102から廃液槽92の外部に排出される。
【0086】
なお、気水分離板118は、廃液槽92の内部を前後に完全に分離してはならない。例えば、気水分離板118と底壁92eとの間には、廃液の通過できる隙間が設けられるとよい。また、気水分離板118と、側壁92a,92dの間にも隙間が設けられることが好ましい。
【0087】
廃液槽92では、流入した廃液が溜まるとともに流入した空気に含まれた水分や屑等が落下して廃液に混入される。そして、処理室4aで使用された液体、レーザ加工装置2の各所で排出された水、デブリ等の屑が混入した廃液は、まとめて廃液槽92から排出される。
【0088】
廃液排出機構90は、廃液槽92に接続された排出路104を備える。排出路104は、廃液槽92から排出される廃液の経路となる。排出路104は、例えば、廃液槽92の側壁92dに接続されており、側壁92dの内面に形成された排出口114に通じている。そして、例えば、排出路104の下流側には、レーザ加工装置2が設置された工場等の廃液処理設備に接続されている。廃液槽92の内部の廃液は、排出口114から排出路104に進み、この廃液処理設備に排出される。
【0089】
廃液槽92の底壁92eは、加工屑等を含む廃液を排出口114に進行させるために傾斜している。例えば、図5(B)に示す通り排出口114が側壁92dにおいて側壁92cに近い位置に形成されている場合、底壁92eの内面には、互いに対面する側壁92bから側壁92cに向けて下降する傾斜面108が形成される。さらに、排出口114の近傍においては、互いに対面する側壁92aから側壁92dに向けて下降する傾斜面110が底壁92eの内面に形成される。
【0090】
ここで、廃液槽92の寸法の一例を説明する。廃液槽92の互いに対面する側壁92b及び側壁92cの距離は、350mm以上500mm以下とされる。また、互いに対面する側壁92a及び92dの距離は、100mm以上150mm以下とされる。このとき、傾斜面108の最も高い位置と、傾斜面110の最も低い位置と、の高さの差は、30mm以上40mm以下とされる。ただし、廃液槽92の寸法はこれに限定されない。
【0091】
ここで、傾斜面108及び傾斜面110の斜度が大きすぎると、後述の通り廃液槽92の内部に廃液を溜める際に大量の廃液と長い時間が必要となる。そのため、傾斜面108及び傾斜面110の斜度は20%以下とされることが好ましく、10%以下とされることがより好ましい。ただし、傾斜面108及び傾斜面110の斜度はこれに限定されない。
【0092】
ワーク1が加工されて発生した加工屑や、水溶性樹脂を含む廃液は、速やかに廃液排出機構90により排出されることが望ましい。しかしながら、廃液槽92内に一部の廃液が残留したり廃液槽92の壁面に廃液が付着したりするため、廃液槽92内では廃液が乾燥して固形物が固着し堆積する。その結果、廃液排出機構90の廃液排出能力が低下し、詰まりが生じてしまう。
【0093】
そのため、従来は廃液排出機構90に接続された処理装置(レーザ加工装置2)を停止させ、廃液槽92等を定期的に清掃する必要があった。しかしながら、清掃作業中に処理装置を稼働できないため、清掃作業が処理装置の生産性や稼働効率を低下させる要因になっていた。また、廃液排出機構90の清掃作業それ自体が大きな手間である。
【0094】
そこで、本実施形態に係る廃液排出機構90では、廃液の乾燥や廃液に混入している屑等に起因する廃液槽92の内面への固形物の固着を抑制する。すなわち、廃液槽92の内面に付着した固形物や堆積した固形物を洗い流して排出口114から排出する。これにより、廃液槽92を分解等することなく、また、処理装置の稼働を停止することなく、容易に清掃を実施する。
【0095】
具体的には、本実施形態に係る廃液排出機構90は、廃液槽92からの廃液の排出を規制して廃液槽92に廃液を溜めて、この廃液を攪拌して流れを作り、これにより廃液槽92の内面を清掃して固形物を除去する。以下、廃液槽92の清掃に寄与する構成を中心に廃液排出機構90の説明を続ける。
【0096】
廃液排出機構90は、排出路104を経た廃液槽92からの廃液の排出を規制する開閉機構を備える。図7(A)及び図7(B)には、廃液の排出を規制する一例に係る開閉機構122を模式的に示す斜視図が含まれている。また、図6は、開閉機構122が廃液の排出を規制することにより廃液130が溜まっている廃液槽92を模式的に示す断面図である。
【0097】
開閉機構122は、例えば、廃液槽92の排出口114を開閉できるように構成される。例えば、開閉機構122は、排出口114を遮蔽する遮蔽板124と、遮蔽板124を昇降させる図示しない昇降機構と、を備える。遮蔽板124は、排出口114の全体を覆うことのできる大きさ及び形状に形成される。そして、遮蔽板124の両側辺には、鉛直方向に沿った図示しないガイドレールが設けられ、遮蔽板124の鉛直方向以外の方向の移動がガイドレールにより規制される。
【0098】
そして、開閉機構122の昇降機構は、例えば、遮蔽板124に接続されたエアシリンダ等により構成される。または、昇降機構は、遮蔽板124に接続されたワイヤーと、このワイヤーの巻き上げ及び展開が可能なモータ等の回転駆動源と、により構成される。ただし、昇降機構はこれに限定されない。
【0099】
昇降機構を作動させると、遮蔽板124を鉛直方向に沿って昇降できる。すなわち、図7(A)に示すように遮蔽板124が排出口114を遮蔽する遮蔽位置と、図7(B)に示すように遮蔽板124が排出口114を遮蔽しない退避位置と、に遮蔽板124が昇降する。
【0100】
レーザ加工装置2が稼働しており、処理室4a等から排出された液体が廃液槽92に流れ続ける状態において開閉機構122を作動させて遮蔽板124で排出口114を塞ぐと、排出路104を経た廃液槽92からの廃液130の排出が規制される。そのため、廃液槽92で貯留される廃液130が徐々に増え、廃液130の液面の高さが徐々に高くなる。このとき、廃液槽92の内部の壁面に付着していた固形物等が廃液130中に沈む。
【0101】
また、廃液排出機構90は、廃液槽92に溜まる廃液130を攪拌する攪拌ユニットをさらに備える。攪拌ユニットは、例えば、廃液槽92の底壁92eの中心と概ね重なる中心を有する渦状の流れを廃液130に生じさせることで廃液130を攪拌する。廃液130にこのような流れを生じさせる方法に制限はない。
【0102】
一例に係る攪拌ユニットは、図5(A)、図5(B)、図6等に示すように、開閉機構122による規制が実施されることで廃液槽92内に溜まる廃液130を攪拌するように廃液130に流体を噴射する流体供給ノズル106を含む。流体供給ノズル106は、廃液槽92の一つの側壁92bに設けられる。攪拌ユニットは、さらに、流体供給ノズル106の基端に接続された流体供給源を備える。
【0103】
流体供給ノズル106は、廃液槽92に廃液130が貯留されたときに廃液槽92中に開いた供給口の全体が廃液130中に沈む位置、大きさ、及び形状となるように廃液槽92に配設される。攪拌ユニットは、流体供給源から供給された流体を流体供給ノズル106から廃液130中に噴射することにより、廃液130に流れを生じさせる。
【0104】
このときに廃液130により強い流れを生じさせるために、流体供給ノズル106の供給口は底壁92eの中心に向いていないことが好ましく、側壁92bの水平方向の中心に設けられていないことが好ましい。別の観点から説明すると、流体供給ノズル106は側壁92bに隣接する2つの側壁92a,92dのうちの一方に比較的近い位置に配設されることが好ましく、供給口はこの一方の側壁92a,92dに沿った方向に向いていることが好ましい。これにより、渦状の流れが廃液130に生じる。
【0105】
流体供給源が供給し流体供給ノズル106から廃液130に噴出される流体は、例えば、窒素ガス、空気等の気体である。そして、2mm以上3mm以下の内径の流体供給ノズル106から100L/分程度の流量で流体供給ノズル106から流体が噴射されることが好ましい。ただし、流体供給ノズル106から噴射される流体はこれに限定されず、市水や純水等の液体でもよい。または、高圧気体と液体とが混合されて形成された二流体が流体供給ノズル106から噴射されてもよい。
【0106】
なお、廃液排出機構90の攪拌ユニットが備える流体供給ノズル106は、一つに限定されない。廃液排出機構90の攪拌ユニットは、複数の流体供給ノズルを備えてもよい。ここで、攪拌ユニットとして複数の流体供給ノズルを備える変形例に係る廃液排出機構について説明する。図8(A)は、変形例に係る廃液排出機構126の内部構造を模式的に示す斜視図であり、図8(B)は、変形例に係る廃液排出機構126を模式的に示す断面図である。
【0107】
図8(A)及び図8(B)では、廃液排出機構126の変更のない要素について図5(B)及び図6に示される廃液排出機構90の対応する要素と同じ符号を付す。そして、変更のない要素について説明を省略する。
【0108】
変形例に係る廃液排出機構126の攪拌ユニットは、流体供給ノズル106に加え、第2流体供給ノズル128を備える。第2流体供給ノズル128は、廃液槽92における配設位置が異なることを除いて流体供給ノズル106と同様に構成される。廃液排出機構126は、第2流体供給ノズル128は、流体供給ノズル106が接続された流体供給源に接続されてもよく、流体供給ノズル106が接続されていない流体供給源に接続されてもよい。
【0109】
第2流体供給ノズル128は、流体供給ノズル106が配設された側壁92bに対面する側壁92cに配設され、流体供給ノズル106と正対しないことが好ましい。すなわち、第2流体供給ノズル128から噴射される流体は、流体供給ノズル106から噴射される流体と正面から衝突しないことが好ましい。
【0110】
別の観点から説明すると、第2流体供給ノズル128は、側壁92cに隣接する2つの側壁92a,92dのうちの一方に比較的遠い位置に配設されることが好ましく、供給口はこの一方の側壁92a,92dに沿った方向に向いていることが好ましい。例えば、流体供給ノズル106が側壁92aから遠く側壁92dに近い位置に配設されている場合、第2流体供給ノズル128は、側壁92aに近く側壁92dから遠い位置で側壁92cに配設されることが好ましい。
【0111】
攪拌ユニットがこのように配設された流体供給ノズル106及び第2流体供給ノズル128を備える場合、この両方から同時に流体を噴射させることにより、廃液槽92に溜まる廃液130により強い流れを生じさせることができる。すなわち、両者から噴出する流体が廃液130に生じさせる流れを互いに強め合い、廃液130でより強力に廃液槽92を洗浄できる。
【0112】
本実施形態に係る廃液排出機構90では、開閉機構122により廃液130の排出が規制された後、廃液130が十分に溜まったときに攪拌ユニットを作動させる。廃液排出機構90は、廃液槽92に廃液130が十分に溜まっているか否かを判定する際に使用されるフロートセンサー等の液面センサー120を備えるとよい。
【0113】
液面センサー120として機能するフロートセンサーは、廃液130に浮くフロート部を備える。液面センサー120のフロート部は、廃液130が一定の高さを超えた時に図6に示すように廃液130に浮かび上がり、廃液130の液面の上昇に伴って上昇する。そして、液面センサー120は、フロート部の高さを検出することで廃液130の液面の高さを検出する。または、液面センサー120は、廃液130の液面の高さが攪拌ユニットの作動に適した所定の高さ位置に達しているか否かを検出する。
【0114】
ただし、液面センサー120はフロートセンサーに限定されず、廃液130に光を照射して液面からの反射光により液面の高さを特定する光学式のセンサーでもよい。また、液面センサー120は、廃液130に向けて超音波を照射し液面で反射されて戻る超音波に基づいて液面の高さを特定する超音波式のセンサーでもよい。
【0115】
ここで、攪拌ユニットの作動に適した廃液130の液面の高さとは、側壁92dに設けられた排出口114の上端を超える高さである。この高さに液面が達するように廃液130を廃液槽92に溜めておくと、廃液排出機構90が稼働する際に廃液130の正常な排出を妨げるような固形物を十分に清掃により除去できる。逆に言えば、この高さを超えて廃液槽92の内面に付着した固形物は、廃液槽92からの廃液130の正常な排出の妨げになりにくい。
【0116】
また、攪拌ユニットが流体供給ノズル106により構成される場合、この廃液130の液面の高さは、流体供給ノズル106の供給口が廃液130に浸かる高さである。ただし、攪拌ユニットの作動に適した廃液130の液面の高さはこれに限定されない。流体供給ノズル106から噴射される流体により廃液130を十分に攪拌できるのであれば、流体供給ノズル106の供給口の一部が廃液130から露出されているときに流体供給ノズル106から流体が噴射されてもよい。
【0117】
廃液排出機構90は、廃液130の液面が攪拌ユニットの作動に適した高さに達したことが液面センサー120により検出されたとき、攪拌ユニットが作動して廃液130の攪拌を開始するとよい。
【0118】
また、例えば、レーザ加工装置(処理装置)2は、処理ユニット38、レーザ加工ユニット34、各種の移動機構等の各構成要素を制御するコントローラ(制御ユニット)を備え、コントローラが廃液排出機構90を制御してもよい。この場合、コントローラは、廃液排出機構90の開閉機構122を制御して排出路104を通じた廃液130の排出を規制する。そして、廃液130の液面が攪拌ユニットの作動に適した高さに達したことを液面センサー120が検出したときに攪拌ユニットの作動を開始する。
【0119】
ここで、レーザ加工装置(処理装置)2のコントローラは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、HDD、SSD、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、コントローラの機能が実現される。
【0120】
なお、廃液排出機構90は、開閉機構122、攪拌ユニット等の構成要素を制御するコントローラを備えてもよい。そして、レーザ加工装置2のコントローラに代えて廃液排出機構90のコントローラが攪拌ユニットを作動させて廃液130の攪拌を遂行してもよい。この場合、前述のレーザ加工装置2のコントローラの説明は、廃液排出機構90のコントローラの説明として適宜読み替えられる。
【0121】
廃液排出機構90は、廃液槽92からの廃液130の排出を規制して廃液槽92に廃液130を溜めて、この廃液130を攪拌して流れを作る。すると、廃液槽92の内面に付着していた固形物が廃液130に浸食されたり、廃液130の流れにより内面から除去されたりする。また、廃液槽92の底壁92eに堆積した固形物が流れる廃液130により廃液130中に巻き上がる。このように、固形物が廃液130に取り込まれることにより廃液槽92の清掃が進行する。
【0122】
攪拌ユニットの作動が開始されてから所定の時間が経過し廃液槽92の清掃が十分に実施されたとき、開閉機構122を作動させて排出路104を通じた廃液槽92からの廃液130の排出の規制が解除されるとよい。例えば、開閉機構122が遮蔽板124により排出口114を塞いでいる場合、遮蔽板124を上昇させて排出口114を開放する。
【0123】
開閉機構122による規制が解除されると、廃液130に取り込まれた固形物が廃液130とともに排出路104に進み、廃液槽92から排出される。このときに、通常稼働時と比較して多量の廃液130が勢いよく排出路104を流れるため、排出路104の清掃も実施される。
【0124】
以上に説明する通り、本実施形態に係る廃液排出機構90では、排出路104を経た廃液130の排出の規制を開閉機構122で実施して廃液槽92内に廃液130を溜める。そして、攪拌ユニットを作動させて廃液槽92内で廃液130を攪拌し、固形物等を廃液130に取り込ませる。その後、開閉機構122による規制を解除することにより排出路104を経て廃液槽92から廃液130を排出する。
【0125】
これにより、廃液排出機構90が組み込まれたレーザ加工装置(処理装置)2を停止することなく廃液排出機構90の清掃を実施できる。むしろ、レーザ加工装置2の稼働に伴って発生する廃液130を積極的に利用して清掃を実施できる。また、この清掃を実施するに際し、廃液排出機構90を分解して廃液槽92を開放する必要もなく、作業者等が手作業で清掃を実施する必要もない。すなわち、廃液排出機構90の清掃が極めて容易に実施される。
【0126】
なお、レーザ加工装置(処理装置)2では、ワーク1にレーザ加工や液状樹脂83の供給、洗浄等の処理が実施される間に廃液排出機構90の清掃が実施されてもよく、ワーク1に処理が実施されていないときに清掃が実施されてもよい。
【0127】
例えば、カセット載置台6aに置かれたカセット8の入れ替えや、レーザ加工装置2のメンテナンス時等のタイミングで清掃が実施されてもよい。この場合、流入路94,100から廃液槽92に廃液130が流れ込まなければ、開閉機構122で排出路104を経た廃液130の流出を規制しても、攪拌ユニットを作動させるのに適した量で廃液130が廃液槽92に溜まることがない。
【0128】
そこで、レーザ加工装置2においてワーク1に何らの処理が実施されていなくても、処理室4aから液体が廃液槽92に流れ込むとよい。例えば、洗浄機構48(図3参照)に洗浄ノズル82からの液体の噴射を実施させ、液体を処理室4aの底壁44bに落下させ、排液路86を通じて廃液槽92に液体を送り続ける。これにより、攪拌ユニットを適切に作動できる程度に廃液槽92に廃液130を溜められる。
【0129】
次に、清掃を容易に実施できる廃液排出機構90の使用態様として、廃液排出機構90の清掃方法について説明する。図11は、廃液排出機構90の清掃方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。上述の廃液排出機構90の各構成要素の説明は、この清掃方法の各ステップに関する説明として適宜参照できる。
【0130】
廃液排出機構90の清掃方法では、まず、正常に稼働する廃液排出機構90において、排出路104を経た廃液槽92からの廃液130の排出の規制を実施して廃液槽92内に廃液130を貯留する規制ステップS10を実施する。このとき、流入路94,100から廃液槽92への液体の流入が継続するとよく、廃液槽92に所定の量で廃液130が貯められるとよい。廃液槽92に十分な廃液130が貯留されたことは、例えば、液面センサー120により確認されるとよい。
【0131】
そして、規制ステップS10の後、廃液槽92内に貯留された廃液130を攪拌する攪拌ステップS20を実施する。攪拌ステップS20では、廃液排出機構90の攪拌ユニットを作動させて廃液130に流れを生じさせ、廃液130を攪拌する。これにより、廃液槽92の内部に付着した固形物が廃液130に分散するとともに、底壁92eに堆積した固形物が廃液130中に舞い上がる。
【0132】
攪拌ステップS20の後、廃液槽92からの廃液130の排出の規制を解除して排出路104を経て廃液槽92から廃液130を排出する排出ステップS30を実施する。すなわち、排出ステップS30では、開閉機構122を作動させて規制を解除することで、固形物を含む廃液130を廃液槽92から排出路104を通じて排出する。これにより、廃液排出機構90を清掃できる。
【0133】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、攪拌ユニットが流体供給ノズル106により構成される場合と、流体供給ノズル106及び第2流体供給ノズル128により構成される場合と、について説明した。しかしながら、本発明の一態様に係る廃液排出機構はこれに限定されず、攪拌ユニットは他の機構により実現されてもよい。
【0134】
図9は、第2の変形例に係る攪拌ユニット132を模式的に示す側面図である。攪拌ユニット132は、廃液槽92の底壁92eを貫く回転軸134と、廃液槽92の外側において回転軸134の基端に接続された回転駆動源136と、廃液槽92の内側において回転軸134の先端に接続された回転羽根部138と、を備える。
【0135】
回転羽根部138は、開閉機構122により排出路104を通じた廃液130の排出の規制が実施され廃液槽92内に廃液130が溜められたときに廃液130に浸る位置、大きさ、形状で廃液槽92中に配設される。回転軸134は、回転羽根部138の回転中心となる。回転駆動源136はモータにより構成される。回転駆動源136を作動させると回転軸134が回転し、これにより回転羽根部138を廃液130中で回転できる。
【0136】
回転羽根部138は、一部分または全体が廃液130に浸る状態で回転することにより廃液130を攪拌できる。そのため、攪拌ユニット132の稼働に適した廃液130の液面の高さは、回転羽根部138の一部分または全体が廃液130に浸るときの液面の高さとなる。
【0137】
回転羽根部138が廃液130中で回転すると廃液130が攪拌され、廃液槽92の内面に付着した固形物が廃液130に取り込まれるとともに、廃液槽92に沈む固形物が廃液130中に舞い上がる。その後に排出路104にかかる規制を解除して固形物を廃液130とともに廃液槽92から排出すると、廃液槽92の清掃が完了する。このように、回転羽根部138を回転させることで廃液130を攪拌する攪拌ユニット132は、流体を噴射する攪拌ユニットとは異なり、流体を消費することがない。
【0138】
攪拌ユニット132の回転駆動源136は、レーザ加工装置(処理装置)2または廃液排出機構のコントローラ(制御ユニット)に接続されてもよく、このコントローラにより制御されるとよい。コントローラは、開閉機構122を制御して廃液130の貯留を開始し、廃液130の液面が攪拌ユニット132の稼働に適した高さとなったことが液面センサー120により確認されたときに回転駆動源136を作動させて、廃液130の攪拌を遂行する。
【0139】
なお、回転駆動源136は廃液130を攪拌するときにだけ作動してもよく、廃液130を攪拌しないときにも作動してもよい。例えば、レーザ加工装置2の通常稼働時に各所から排出される液体が廃液130として廃液槽92に流れ込み、この廃液130が回転軸134に接触すると、回転軸134の周りに固形物が付着して堆積することがある。そして、回転軸134に固形物が付着した状態で回転駆動源136を作動させると、回転軸134が回転しないことがある。
【0140】
そこで、回転駆動源136を常時作動させて回転軸134を常時回転させてもよい。回転している回転軸134には、固形物が付着しにくい。そのため、廃液130を攪拌するときに回転軸134を円滑に回転できる。また、回転羽根部138が常時回転していると、清掃のために開閉機構122を作動させて廃液130を廃液槽92に貯留を開始したとき、廃液130の液面が回転する回転羽根部138の下端に達したときから廃液130の攪拌が開始される。
【0141】
なお、上記実施形態では、排出口114を開閉する遮蔽板124により排出路104を通じた廃液130の排出を規制する開閉機構122を実現する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、排出路104を規制する開閉機構はこれに限定されず、開閉機構は廃液槽92の外側において排出路104の途中に設けられてもよい。
【0142】
例えば、排出路104には、開閉機構としてバタフライバルブ等のバルブが組み込まれてもよい。バタフライバルブは、排出路104を横断する回転軸と、この回転軸に接続された円板状の弁体と、弁体の平面形状を断面形状に有する通路と、を備える。回転軸は、円板状の弁体の一つの直径と重なる。
【0143】
バタフライバルブは、回転軸を回転させることで弁体の外周全域が通路の内面に接触するように弁体の向きを変えて通路を塞ぎ、排出路104を閉鎖できる。また、回転軸を回転させることで廃液130の流れる方向に沿わせるように弁体の向きを変えて通路を開放し、排出路104の閉鎖を解除できる。このように、排出路104を通じた廃液槽92からの廃液130の排出の規制と、その解除と、をバタフライバルブ等のバルブにより実施できる。
【0144】
なお、上記実施形態では、一つの処理装置(レーザ加工装置2)において各所で排出された液体が廃液として廃液排出機構90の廃液槽92に集められ、廃液槽92から廃液が排出される場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、廃液排出機構90は複数の処理装置に接続されてもよく、そのそれぞれから排出される液体が廃液として集められてもよい。
【0145】
図10は、複数の処理装置140,142,144,146と、そのそれぞれと送液管148により接続された廃液排出機構150と、の接続関係を模式的に示す概念図である。廃液排出機構150は、送液管148に接続された流入路152と、廃液の排出経路となる排出路154と、廃液が集められる廃液槽と、を備える。
【0146】
送液管148は、処理装置140,142,144,146にそれぞれ通じた複数の枝管と、すべての枝管が接続された主管と、により構成されてもよく、主管が流入路152に接続されてもよい。または、廃液排出機構150は複数の流入路を備えてもよく、送液管148は複数の配管から構成されてもよい。この場合、各配管がいずれかの処理装置140,142,144,146と、いずれかの流入路と、を接続する。
【0147】
このように、複数の処理装置140,142,144,146で一つの廃液排出機構150を共有する場合、処理装置の数だけ廃液排出機構を準備する必要がないため、全体としてコストを低減できる。この廃液排出機構も、廃液を廃液槽中に貯留させて廃液を攪拌することで、廃液槽の内面を清掃できる。
【0148】
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0149】
1 ワーク
1a 表面
1b 裏面
3 分割予定ライン
5 デバイス
9 テープ
11 リングフレーム
11a 開口部
13 フレームユニット
2 レーザ加工装置
4 基台
4a 処理室
6a カセット載置台
8 カセット
10 搬送ユニット
12 搬送レール
14 X軸ガイドレール
16 X軸移動プレート
18 X軸ボールねじ
20 X軸パルスモータ
22 Y軸ガイドレール
24 Y軸移動プレート
26 Y軸ボールねじ
28 チャックテーブル
28a 保持面
28b クランプ
30 立設部
32 支持部
34 レーザ加工ユニット
34a 加工ヘッド
36 撮像ユニット
38 処理ユニット
42 スピンナテーブル機構
44 外壁
44a 側壁
44b 底壁
44c 内周壁
46 液状樹脂供給機構
48 洗浄機構
50 スピンナテーブル
52 モータ
54 支持機構
56 多孔質部材
57 クランプ
58 出力軸
60 エアシリンダ
62 支持脚
64 貫通孔
66 カバー部材
68 供給軸部
70 供給腕部
72 モータ
74 供給ノズル
76 洗浄軸部
78 洗浄腕部
80 モータ
82 洗浄ノズル
83 液状樹脂
84 排液口
86 排液路
88 液状樹脂
90 廃液排出機構
92 廃液槽
92a,92b,92c,92d 側壁
92e 底壁
92f 天井壁
94,96,98,100 流入路
102 排気ダクト
104 排出路
106 流体供給ノズル
108,110 傾斜面
112 内壁
114 排出口
116 流入口
118 気水分離板
120 液面センサー
122 開閉機構
124 遮蔽板
126 廃液排出機構
128 第2流体供給ノズル
130 廃液
132 攪拌ユニット
134 回転軸
136 回転駆動源
138 回転羽根部
140,142,144,146 処理装置
148 送液管
150 廃液排出機構
152 流入路
154 排出路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11