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特開2024-103318果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム
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  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図1
  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図2
  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図3
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  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図9
  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図10
  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図11
  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図12
  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図13
  • 特開-果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103318
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】果菜の収量予測に関する学習データ作成装置、機械学習装置、予測装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240725BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240725BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007586
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 忠重
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】果菜の収量を精度良く予測する。
【解決手段】果菜の収量を予測する予測用アルゴリズム5の学習に用いる学習データ4を作成するための学習データ作成装置1であって、圃場90における環境データ41に基づいて個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出部11と、圃場90において栽培されている果菜の葉を含む画像42に基づいて、葉に関する指標を算出する葉指標算出部12と、個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出部13と、圃場90において収穫された果菜の過去の所定の期間内の収量43に基づいて、果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出部14と、果菜の過去の所定の期間内の収量43を、群落光合成量と、収量変化に関する指標とに関連付けて、学習データ4を作成する学習データ作成部15と、を備える、学習データ作成装置1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムの学習に用いる学習データを作成するための学習データ作成装置であって、
圃場における環境データに基づいて個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出部と、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出部と、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出部と、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出部と、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量を、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標とに関連付けて、学習データを作成する学習データ作成部と、
を備える、学習データ作成装置。
【請求項2】
前記群落光合成量算出部は、前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とを入力とし、前記果菜の複数の株に関する群落光合成速度の測定値から算出される群落光合成量を出力として機械学習された、学習済みの機械学習モデルに基づいて、前記群落光合成量を算出する、請求項1に記載の学習データ作成装置。
【請求項3】
前記収量変化指標算出部は、前記果菜の所定の期間内の前記収量変化に関する、正規化された前記指標を算出する、請求項1に記載の学習データ作成装置。
【請求項4】
前記葉指標算出部は、人工知能を用いた画像解析により、前記画像において前記葉の領域を抽出する葉領域抽出部を備える、請求項1に記載の学習データ作成装置。
【請求項5】
前記葉に関する前記指標は、前記葉の葉面積指数と、前記葉の受光効率指数との少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の学習データ作成装置。
【請求項6】
前記葉指標算出部は、前記画像を二値化することにより得られる、前記画像において前記葉以外の領域が占める割合を用いて、前記葉面積指数を算出する葉面積指数算出部を備える、請求項5に記載の学習データ作成装置。
【請求項7】
前記葉指標算出部は、前記画像について前記葉の領域の相対輝度を積算することにより、前記受光効率指数を算出する受光効率指数算出部を備える、請求項5に記載の学習データ作成装置。
【請求項8】
前記個葉光合成量算出部は、前記環境データと、植物生理生態モデルとに基づいて、前記個葉光合成量を算出する、請求項1に記載の学習データ作成装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の学習データ作成装置によって作成された学習データに基づいて、前記果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムを学習する学習部、
を備える、機械学習装置。
【請求項10】
前記予測用アルゴリズムは、人工ニューラルネットワークを用いて構成されている、請求項9に記載の機械学習装置。
【請求項11】
圃場における環境データを取得する環境データ取得部と、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像を取得する果菜画像取得部と、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量を取得する過去収量取得部と、
前記環境データに基づいて、個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出部と、
前記画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出部と、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出部と、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出部と、
請求項9に記載の機械学習装置によって学習された予測用アルゴリズムに従って、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標と、前記果菜の過去の所定の期間内の収量とに基づいて、前記果菜の収量を予測する収量予測部と、
を備える、予測装置。
【請求項12】
果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムの学習に用いる学習データを作成するための学習データ作成方法であって、
圃場における環境データに基づいて、個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出ステップと、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出ステップと、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出ステップと、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出ステップと、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量を、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標とに関連付けて、学習データを作成する学習データ作成ステップと、
を含む、学習データ作成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の学習データ作成方法によって作成された学習データに基づいて、前記果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムを学習する学習ステップ、
を含む、機械学習方法。
【請求項14】
圃場における環境データを取得する環境データ取得ステップと、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像を取得する果菜画像取得ステップと、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量を取得する過去収量取得ステップと、
前記環境データに基づいて、個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出ステップと、
前記画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出ステップと、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出ステップと、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出ステップと、
請求項13に記載の機械学習方法によって学習された予測用アルゴリズムに従って、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標と、前記果菜の過去の所定の期間内の収量とに基づいて、前記果菜の収量を予測する収量予測ステップと、
を含む、予測方法。
【請求項15】
コンピュータに、
請求項12に記載の学習データ作成方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
請求項13に記載の機械学習方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項17】
コンピュータに、
請求項14に記載の予測方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜の収量を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、営農現場においても情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)を導入する取り組みが進められている。例えば下記特許文献1に記載の収穫量予測方法によると、機械学習により構築したモデルを用いて農作物の収穫量を予測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-171217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
穀類、果樹類、野菜類等といった種々の農作物のうち、例えば果樹類と野菜類に属する果菜類と(以下、本明細書中では、作物分類における果樹類と野菜類に属する果菜類とをまとめて果菜と称する)については、収量を予測することが困難である。果菜の収量は、雰囲気の気温、湿度、CO濃度および日照量等といった環境条件だけではなく、作物としての果菜の状態に大きく影響を受けるためである。
【0005】
例えばりんごやみかん等の果樹類を一例として説明する。果樹の生長サイクルにおいて、光合成により生成された糖が葉や根の栄養生長に主に費やされている段階では、花弁や果実の生殖生長は鈍化する。しかしこれにより果樹は樹力を蓄え、時間差を経たその後の生殖生長の勢いを増すことができる。その後果実の収量はピークを迎えるものの、果樹は樹力を失って、再び樹力を蓄える期間が必要となる。果樹類の収量はこのような生長サイクルを繰り返しながら変化するため、環境条件のデータから果樹類の収量を直接的に予測することは困難である。果実を食用とするトマト、きゅうり、なすび等の果菜類についても果樹類と同様に、果菜類の状態は生長サイクルに応じて大きく影響を受け、果菜類の収量を直接的に予測することは困難である。
【0006】
本発明は、果菜の収量を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
(項1)
果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムの学習に用いる学習データを作成するための学習データ作成装置であって、
圃場における環境データに基づいて個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出部と、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出部と、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出部と、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出部と、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量を、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標とに関連付けて、学習データを作成する学習データ作成部と、
を備える、学習データ作成装置。
(項2)
前記群落光合成量算出部は、前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とを入力とし、前記果菜の複数の株に関する群落光合成速度の測定値から算出される群落光合成量を出力として機械学習された、学習済みの機械学習モデルに基づいて、前記群落光合成量を算出する、項1に記載の学習データ作成装置。
(項3)
前記収量変化指標算出部は、前記果菜の所定の期間内の前記収量変化に関する、正規化された前記指標を算出する、項1または2に記載の学習データ作成装置。
(項4)
前記葉指標算出部は、人工知能を用いた画像解析により、前記画像において前記葉の領域を抽出する葉領域抽出部を備える、項1から3のいずれか一項に記載の学習データ作成装置。
(項5)
前記葉に関する前記指標は、前記葉の葉面積指数と、前記葉の受光効率指数との少なくともいずれかを含む、項1から4のいずれか一項に記載の学習データ作成装置。
(項6)
前記葉指標算出部は、前記画像を二値化することにより得られる、前記画像において前記葉以外の領域が占める割合を用いて、前記葉面積指数を算出する葉面積指数算出部を備える、項5に記載の学習データ作成装置。
(項7)
前記葉指標算出部は、前記画像について前記葉の領域の相対輝度を積算することにより、前記受光効率指数を算出する受光効率指数算出部を備える、項5または6に記載の学習データ作成装置。
(項8)
前記個葉光合成量算出部は、前記環境データと、植物生理生態モデルとに基づいて、前記個葉光合成量を算出する、項1から7のいずれか一項に記載の学習データ作成装置。
(項9)
項1から8のいずれかに記載の学習データ作成装置によって作成された学習データに基づいて、前記果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムを学習する学習部、
を備える、機械学習装置。
(項10)
前記予測用アルゴリズムは、人工ニューラルネットワークを用いて構成されている、項9に記載の機械学習装置。
(項11)
圃場における環境データを取得する環境データ取得部と、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像を取得する果菜画像取得部と、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量を取得する過去収量取得部と、
前記環境データに基づいて、個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出部と、
前記画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出部と、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出部と、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出部と、
項9または10に記載の機械学習装置によって学習された予測用アルゴリズムに従って、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標と、前記果菜の過去の所定の期間内の収量とに基づいて、前記果菜の収量を予測する収量予測部と、
を備える、予測装置。
(項12)
果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムの学習に用いる学習データを作成するための学習データ作成方法であって、
圃場における環境データに基づいて、個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出ステップと、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出ステップと、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出ステップと、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出ステップと、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量を、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標とに関連付けて、学習データを作成する学習データ作成ステップと、
を含む、学習データ作成方法。
(項13)
項12に記載の学習データ作成方法によって作成された学習データに基づいて、前記果菜の収量を予測する予測用アルゴリズムを学習する学習ステップ、
を含む、機械学習方法。
(項14)
圃場における環境データを取得する環境データ取得ステップと、
前記圃場において栽培されている果菜の葉を含む画像を取得する果菜画像取得ステップと、
前記圃場において収穫された前記果菜の過去の所定の期間内の収量を取得する過去収量取得ステップと、
前記環境データに基づいて、個葉光合成量を算出する個葉光合成量算出ステップと、
前記画像に基づいて、前記葉に関する指標を算出する葉指標算出ステップと、
前記個葉光合成量と前記葉に関する前記指標とに基づいて、群落光合成量を算出する群落光合成量算出ステップと、
前記果菜の過去の所定の期間内の収量に基づいて、前記果菜の収量変化に関する指標を算出する収量変化指標算出ステップと、
項13に記載の機械学習方法によって学習された予測用アルゴリズムに従って、前記群落光合成量と、前記収量変化に関する前記指標と、前記果菜の過去の所定の期間内の収量とに基づいて、前記果菜の収量を予測する収量予測ステップと、
を含む、予測方法。
(項15)
コンピュータに、
項12に記載の学習データ作成方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
(項16)
コンピュータに、
項13に記載の機械学習方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
(項17)
コンピュータに、
項14に記載の予測方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、果菜の収量を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る果菜収量予測支援システムの概略的な構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る学習データ作成装置および機械学習装置の機能を説明するためのブロック図である。
図3】本発明において導入する植物生理生態モデルを説明するための模式的な図である。
図4】過去の所定期間について、環境データに基づいて個葉光合成量を算出する概念を説明するための図である。
図5】人工知能を用いた画像解析により葉の領域を抽出した一例を示す図である。
図6】過去の所定期間について、葉を含む画像データに基づいて葉に関する指標を算出する概念を説明するための図である。
図7】過去の所定期間について、個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて群落光合成量を算出する概念を説明するための図である。
図8】過去の所定期間について、植物91の過去の収量データに基づいて収量変化に関する指標を算出する概念を説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態に係る予測用アルゴリズムに用いる人工ニューラルネットワークを説明するための模式的な図である。
図10】本発明の一実施形態に係る予測装置の機能を説明するためのブロック図である。
図11】本発明の一実施形態に係る機械学習装置を用いて予測用アルゴリズムの機械学習を行う手順を説明するためのフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態に係る機械学習装置を用いて予測用アルゴリズムの機械学習を行う手順を説明するためのフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る予測装置と学習済の予測用アルゴリズムとを用いて果菜収量を予測する手順を説明するためのフローチャートである。
図14】本発明の一実施形態に係る予測装置と学習済の予測用アルゴリズムとを用いて果菜収量を予測する手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
[予測支援システム]
<システムの概要>
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る果菜収量予測支援システムの概略的な構成を模式的に示す図である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る果菜収量予測支援システム100(以下、単に予測支援システム100とも記載する)は、学習データ作成装置1と、機械学習装置2と、予測装置3とを備える。学習データ作成装置1、機械学習装置2、および予測装置3は、例えばネットワーク10を介してデータの送受信が可能な態様で、有線または無線により直接的または間接的に接続されている。
【0013】
本実施形態では、学習データ作成装置1および機械学習装置2は、例えば試験研究用の圃場90を管理する組織または者(以下、単に管理者とも記載する)によって使用される。予測装置3は、例えば小規模な圃場80における生産者(以下、単に生産者とも記載する)によって使用される。圃場90の管理者は、例えば国や県の農業試験場や、国公立または私立の研究機関および大学等、並びにそれら組織における研究者等である。管理者は、圃場90に設置されている開放型のチャンバーを用いて、後述する群落光合成量算出部13の学習に必要なデータを測定することが可能な測定技術を有している。
【0014】
圃場90、80において栽培される植物91,81について説明する。収量を予測しようとする対象である、生産者の圃場80において栽培されている植物81の種類は、管理者の圃場90において栽培されている植物91の種類と同じである。圃場90,80において栽培される植物は果菜であり、果実を食用とするトマト、きゅうり、なすび等の果菜類や、りんごやみかん等の果樹類とすることができる。
【0015】
学習データ4の作成に用いる環境データ41、植物91の葉を含む画像42、および植物91の過去の収量データ43は、植物91を囲う透明な開放型のチャンバーが設置されている圃場90において取得される。取得されたデータ41,42,43は学習データ作成装置1に入力され記録される。圃場90におけるデータ41,42,43の取得については後述する。
【0016】
学習データ作成装置1は、植物の収量を予測する予測用アルゴリズム5の学習に用いる学習データ4を作成する。学習データ4は、試験研究用の圃場90において測定されるデータ41,42,43に基づいて作成される。作成された学習データ4は、機械学習装置2に提供される。好ましくは、学習データ4および予測用アルゴリズム5は植物の種類毎に作成される。
【0017】
機械学習装置2は、学習データ作成装置1によって作成された学習データ4に基づいて、予測用アルゴリズム5を学習する。学習された予測用アルゴリズム5は、予測装置3に提供される。
【0018】
生産者の圃場80では、圃場80における環境データおよび植物81の葉を含む画像が、感知装置6および撮像装置7を用いて取得される。
【0019】
予測装置3は、機械学習装置2によって学習された予測用アルゴリズム5に従って、群落光合成量と収量変化に関する指標と過去の所定期間内の収量とに基づいて、植物81の収量を予測する。これにより、果菜の収量を精度良く予測することが可能になる。群落光合成量は、個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて算出される。個葉光合成量および葉に関する指標は、生産者の圃場80において取得された環境データおよび植物81の葉を含む画像に基づいて算出される。本実施形態では、過去の21日間の収量を、過去の所定期間内の収量とする。
【0020】
本実施形態では、予測用アルゴリズム5は、植物(果菜)を囲う透明な開放型のチャンバーのような測定システムが設置されている試験研究用の圃場90側において予め学習されている。小規模な圃場80側は、学習済の予測用アルゴリズム5を試験研究用の圃場90側から取得する。これにより、小規模な圃場80における生産者は、高度な測定技術が要求される高価な測定システムを、生産者が運営する圃場80において用いることなく、果菜の収量を精度良く予測することが可能になる。
【0021】
試験研究用の圃場90において、植物91は透明な開放型のチャンバー92で囲われている。チャンバー92には吸気口93と排気口94とが設けられており、チャンバー92内に外気が通気される。チャンバー92内のCO濃度は、外気がチャンバー92内を通る間に、植物91による光合成により変化する。ガス分析装置95は、COの濃度および水蒸気の濃度を、吸気口93および排気口94のそれぞれについて測定することができる。吸気口93に設けられた流量計96は、チャンバー92内に流入する外気の流量を測定することができる。
【0022】
圃場90におけるデータ41,42,43の取得について説明する。本実施形態では、環境データ41として、光合成光量子束密度(photosynthetic photon flux density; PPFD)(単位[μmol・m-2・s-1])、雰囲気のCO濃度C(単位[μmol・mol-1])、雰囲気の気温T(単位[℃])、および雰囲気の湿度VPD(vapor pressure deficit)(単位[kPa])の4つを用いる。
【0023】
本実施形態では、光合成光量子束密度PPFDはPPFDセンサ97を用いて測定される。COの濃度はガス分析装置95を用いて測定される。気温は熱電対98a,98b
を用いて測定される。湿度は、ガス分析装置95によって測定される水蒸気の濃度と、熱電対98a,98bを用いて測定される気温とから算出される。
【0024】
環境データ41は、本実施形態では6時間おきに21日間(過去の所定期間)にわたって取得され、過去の所定期間の環境データ41として、合計で84セットの環境データ41が取得される。
【0025】
本実施形態では、圃場90において栽培されている植物91の葉を含む画像42は、チャンバー92の天井面に取り付けられた撮像装置99(デジタルカメラ99)を用いて撮像され、画像データが取得される。画像42は、植物91を天井面から地面(土壌)に向かって見下ろした直下視(nadir view)画像であり、撮像範囲に植物91の葉が含まれている画像である。撮像装置99により撮像される画像42の色空間はRGB形式である。
【0026】
植物91の葉を含む画像データ42は、本実施形態では1時間おきに21日間(過去の所定期間)にわたって取得され、過去の所定期間の画像データ42として、合計で504つの画像データ42が取得される。
【0027】
植物91の過去の収量データ43は、本実施形態では1日おきに21日間(過去の所定期間)にわたって取得される。収量データ43は、圃場90において実際に収穫された植物91の収量である。
<ハードウェア構成>
【0028】
学習データ作成装置1、機械学習装置2、および予測装置3は、例えば汎用コンピュータやタブレットPC、スマートフォン等を用いて構成することができる。これら学習データ作成装置1、機械学習装置2、および予測装置3のすべてを汎用コンピュータで構成することができるし、一部をタブレットPCやスマートフォンで構成することもできる。
【0029】
例えばスマートフォンを用いると、予測装置3と、後述する撮像装置7と表示装置8と入力装置9とが一体化された統合型の予測装置を構成することができる。スマートフォンを用いたこのような統合型の予測装置に、さらに別体の感知装置6を例えばWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信方式を用いて通信可能に接続することにより、営農現場において生産者が手軽に使用することが可能なユーザ端末を提供することができる。
【0030】
学習データ作成装置1、機械学習装置2、および予測装置3のそれぞれは、ハードウェアの構成として、データ処理を行うCPU等のプロセッサ(図示せず)と、プロセッサがデータ処理の作業領域に使用する主記憶装置(図示せず)と、データの一時保存に使用する補助記憶装置19,29,39とを備えている。それぞれの補助記憶装置19,29,39には、データ41,42,43、学習データ4、予測用アルゴリズム5、学習データ作成プログラム、機械学習プログラム、予測プログラム等が適宜記憶されている。
【0031】
予測装置3には、ハードウェアの構成として、感知装置6と撮像装置7とが接続されている。感知装置6および撮像装置7は、予測装置3のユーザである生産者が、圃場80における環境データと植物81の葉を含む画像とを取得するために用いられる。
【0032】
本実施形態では、感知装置6は、圃場80における環境データとして、光合成光量子束密度PPFDと、雰囲気のCOの濃度と、雰囲気の気温と、雰囲気の湿度とを測定する。感知装置6は、これら環境データのそれぞれを測定するための各種のセンサを備えている。例えば、光合成光量子束密度PPFDを測定するセンサには、公知のPPFDセンサを用いることができる。COの濃度を測定するセンサには公知のCOセンサを用いることができ、気温および湿度を測定するセンサには公知の温湿度センサを用いることができる。これらセンサはすべて手持ち型の機器で実現することができ、感知装置6は手軽に使用することが可能である。
【0033】
撮像装置7は、圃場80において栽培されている植物81の葉を含む画像を撮像し、画像データを取得する。圃場90において取得される画像42と同様に、本実施形態では、撮像装置7が撮像する画像は植物81の直下視画像であり、撮像範囲に一株の植物81の葉が概ね全て含まれている画像である。撮像装置7にはデジタルカメラ7を用いることができる。
【0034】
なお、後述する図10に示すように、本実施形態では、予測装置3は表示装置8を備えている。表示装置8には例えば液晶モニタを用いることができ、予測装置3は、予測装置3のユーザである生産者に情報を表示することができる。また、予測装置3には、入力装置9を接続することができる。入力装置9には、例えばキーボード、タッチパネル、マウス等を用いることができ、予測装置3はユーザからの入力操作を受け付けることができる。予測装置3は、例えばユーザが感知装置6を用いて測定した環境データの値や、圃場80における植物81の過去の収量を、入力装置9を介して取得することもできる。表示装置8と入力装置9とが一体化されたタッチパネルを、予測装置3に接続してもよい。
[学習データ作成装置]
【0035】
図2は、本発明の一実施形態に係る学習データ作成装置および機械学習装置の機能を説明するためのブロック図である。
【0036】
学習データ作成装置1は、機能ブロックとして、個葉光合成量算出部11と、葉指標算出部12と、群落光合成量算出部13と、収量変化指標算出部14と、学習データ作成部15とを備えている。葉指標算出部12は、機能ブロックとして、葉領域抽出部121と、葉面積指数算出部122と、受光効率指数算出部123とを備えている。これらの機能ブロックは、集積回路等を用いてハードウェアとして実装することができる。或いは、これらの機能ブロックは、学習データ作成装置1のプロセッサが、学習データ作成プログラムを学習データ作成装置1の主記憶装置に読み出して実行することにより、ソフトウェアとして実装することもできる。
【0037】
個葉光合成量算出部11は、圃場90における環境データ41に基づいて個葉光合成量を算出する。本実施形態では、個葉光合成量算出部11は、環境データ41と、植物生理生態モデル(plant physio-ecological model)とに基づいて、個葉光合成速度(single-leaf photosynthetic rate)を算出し、算出した個葉光合成速度から個葉光合成量を算出する。
【0038】
図3は、本発明において導入する植物生理生態モデルを説明するための模式的な図である。(A)は葉緑体を示しており、(B)は葉の断面図を示している。
【0039】
本実施形態では、植物生理生態モデルは、光合成生化学モデル(biochemical model of photosynthetic)と、輸送方程式と、気孔コンダクタンスモデルと、熱収支モデルとを含む。光合成生化学モデルは、(A)に示す葉緑体における作用に関連する。輸送方程式、気孔コンダクタンスモデル、および熱収支モデルは、(B)に示す葉における作用に関連する。本実施形態では、これら4つのモデルを表す以下のそれぞれの数式に環境データ41の値を代入して、連立方程式を解くことにより、個葉光合成速度Aを算出する。
【0040】
光合成生化学モデルは次の式1~式4で表される。
【数1】
【0041】
光合成生化学モデルでは、光合成速度を、CO濃度に律速されるRubisco-limited段階における光合成速度AL,cと、光量により主に律速されるRuBP-limited段階における光合成速度AL,jとの2つの律速段階における2つの光合成速度に分けて、これら2つの光合成速度AL,c,AL,jのうち、速度が低い方を個葉光合成速度Aとしている。
【0042】
なお、図3の(B)に示す葉肉コンダクタンスgは実測が困難である。そのため、本実施形態において導入する光合成生化学モデルでは、葉緑体内のCO濃度Cと葉内細胞間のCO濃度Cとの間にほとんど差が無いと仮定して、C=Cとしている。
【0043】
輸送方程式は次の式5および式6で表される。
【数2】
【0044】
気孔コンダクタンスモデルは次の式7で表される。
【数3】
【0045】
熱収支モデルは次の式8で表される。
【数4】
【0046】
式1~式8および図3中に表されている変数について説明する。
【0047】
PPFD、C、T、およびVPDはそれぞれ、光合成光量子束密度PPFD、雰囲気のCO濃度、雰囲気の気温、および雰囲気の湿度であり、圃場90,80において環境データとして取得される。
【0048】
L,AL,c,AL,jは光合成速度(単位[μmol・m-2・s-1])を意味する。ALは個葉光合成速度である。AL,cはRubisco-limited段階における光合成速度である。AL,jはRuBP-limited段階における光合成速度である。
【0049】
cmaxは、カルボキシル化の最大速度(単位[μmol・m-2・s-1])であり、植物の種類毎に定める値である。Rは、日中の呼吸数(day respiration rate)(単位[μmol・m-2・s-1])である。Γは、日中の呼吸数Rが無い場合のCO同化のCO補償点(単位[μmol・m-2・s-1])である。
【0050】
,C,Cは葉のCO濃度(単位[μmol・mol-1])を意味する。Cは葉内細胞間のCO濃度である。Cは葉緑体内のCO濃度である。Cは葉の表面のCO濃度である。Oは葉内細胞間のO濃度(単位[mol・mol-1])である。
【0051】
,KはMichaelis-Menten定数(単位[μmol・mol-1])である。Kはカルボキシル化のMichaelis-Menten定数である。Kはカルボキシル化酸素化のMichaelis-Menten定数である。
【0052】
Jは電子伝達速度(単位[μmol・m-2・s-1])であり、植物の種類毎に定める値である。Jmaxは電子伝達速度Jの最大値である。θはJ-PPFD曲線のコンベクシティ(convexity)である。φはJ-PPFD曲線の初期勾配(initial slope)である。
【0053】
,g,gは葉のコンダクタンス(単位[mol・m-2・s-1])を意味する。gは気孔コンダクタンスである。gは葉面境界層コンダクタンスである。gは葉肉コンダクタンスである。g,gは、気孔コンダクタンスgのフィッティング・パラメータである。VPDは葉面と雰囲気との飽差(単位[Pa])である。
【0054】
ρは空気の密度(1.204kg・m-3)である。Cは定圧力での空気の比熱(1010J・kg-1・K-1)である。
【0055】
L,γ,Rni,s,gHR,gLWは熱収支モデルを記述する変数である。TLは葉温(単位[K])である。γは乾湿計定数(単位[Pa・K-1])である。Rniは等温純放射(単位[W・m-2・s-1])である。sは温度に対する飽和水蒸気圧の傾き(単位[Pa・K-1])である。gHRは放射と葉面境界層における顕熱輸送との合計コンダクタンス(単位[m・s-1])である。gLWは葉面境界層と気孔における水分子輸送の合成コンダクタンス(単位[m・s-1])である。
【0056】
式1~式8中に表されている変数のうち、別の測定により予め値を決定しておく変数およびその値を以下に示す。以下に示す値はすべて葉温が25℃における値である。
cmax=90.58[μmol・m-2・s-1
max=154.99[μmol・m-2・s-1
=1.39[μmol・m-2・s-1
=404.9[μmol・mol-1
=278.4[μmol・mol-1
Γ=42.75[μmol・mol-1
θ=0.7
φ=0.36
=0.034[mol・m-2・s-1
=4.43
【0057】
変数Vcmax,Jmax,R,K,K,Γは温度依存性を有するパラメータである。変数Vcmax,R,K,K,Γの値は、葉温が25℃のときの値をもとにアレニウス式により求める。変数Jmaxは葉温が25℃のときの値をもとに修正アレニウス式により求める。アレニウス式は公知であるので本明細書における詳細な説明は省略する。
【0058】
図4は、過去の所定期間について、環境データに基づいて個葉光合成量を算出する概念を説明するための図である。図示するように、本実施形態では、気温T、CO濃度C、光合成光量子束密度PPFD、湿度VPDを含む環境データ41が6時間おきに取得されている。これら気温T、CO濃度C、光合成光量子束密度PPFD、湿度VPDのそれぞれの値は6時間毎の平均値である。個葉光合成量算出部11は、環境データ41のこれら6時間毎の平均値を用いて、図3を参照して説明した植物生理生態モデルに基づいて、個葉光合成速度を算出する。この算出した個葉光合成速度は6時間毎の平均値であるので、算出した個葉光合成速度と時間(すなわち6時間)との積を算出することにより、個葉光合成量を算出する。算出した個葉光合成量は6時間にわたる積算値である。
【0059】
再び図2を参照する。葉指標算出部12は、圃場90において栽培されている植物91の葉を含む画像42に基づいて、葉に関する指標を算出する。本実施形態では、葉に関する指標として、葉面積指数(Leaf Area Index; LAI)と、葉の受光効率指数とを算出する。これら指標の算出に先立って、葉領域抽出部121が葉の領域を抽出する。
【0060】
葉領域抽出部121は、人工知能を用いた画像解析により、植物91の葉を含む画像42において葉の領域を抽出する。本実施形態では、葉領域抽出部121は、人工知能の一例である深層学習を用いた公知の画像認識の手法に基づいて、画像42において葉の領域を抽出する。葉領域抽出部121は、葉以外の領域であると判別した領域を黒色に置き換える。後述するように、黒色の領域は相対輝度Lの値がゼロである。
【0061】
図5は、人工知能を用いた画像解析により葉の領域を抽出した一例を示す図である。(A)は葉の領域を抽出する前の画像であり、(B)は人工知能により葉の領域を抽出した後の画像である。
【0062】
(A)および(B)において、符号101で示す領域は植物の葉の領域である。(A)において符号102で示す領域は、植物を栽培する土壌を覆うビニールシートである。例えば葉領域抽出部121は、人工知能を用いた画像解析により、(A)において符号102で示すこのようなビニールシートの領域を、葉以外の領域であると判別する。このビニールシートの領域のように、葉以外の領域であると判別された領域は、(B)において符号103で示すように黒色で表示されている。
【0063】
再び図2を参照する。葉面積指数算出部122は、植物91の葉を含む画像42を二値化することにより得られる、画像42において葉以外の領域が占める割合を用いて、葉面積指数LAIを算出する。例示的には、画像の二値化とは画像の白黒化を意味する。本実施形態では、植物91の葉を含む画像42は、植物91を天井面から地面に向かって見下ろした直下視画像である。このような直下視画像を二値化(すなわち白黒化)することにより、葉を含む画像42を葉の領域aと葉以外の領域aNLとに二分すると、葉以外の領域が占める割合Pは、P=aNL/(aNL+a)と表される。Pを用いると、葉面積指数LAIは、次の式9に基づいて算出することができる。
【数5】
【0064】
葉面積指数LAIの算出について詳述する。植物の株を天井面から地面に向かって見下ろした直下視画像を考える。このような直下視画像において、大きさがLの葉面積指数を有する株を、鉛直方向下向きに株の表面から底面にかけて十分に大きな数のN個の層に分割することを考える。分割したそれぞれの層内には、株が有する葉の一部が含まれていることとする。このとき以下の4つの事項を仮定する。
【0065】
仮定1:葉は方位的に均一かつ空間的にランダムに分布している。
仮定2:各層が有する葉面積指数は等しい。すなわちL/N=ΔLである。
仮定3:光線は鉛直下向きに照射され、各層において光線が葉に複数回接触する確率は、光線が葉に一回のみ接触する確率よりも極めて小さくゼロである。
仮定4:各層において光線が葉に接触する確率は、仮定1に基づいてすべての層において等しい。その確率は、各層が有する葉面積指数を水平投影した値に等しく、係数をGとするとGΔLと表すことができ、光線が葉に接触しない確率は(1-GΔL)と表すことができる。
【0066】
光線が株の表面から底面にかけてN個の層を通過する際に、すべての層において葉と接触しない確率Pは、組合せの記号Cを用いて次の式10のように記述される。
【数6】
【0067】
ここでNを無限に大きくすると、式10は次の式11のように変形することができる。
【数7】
【0068】
式11は、確率Pが葉面積指数の大きさLのポアソン分布の関係にあることを示している。ここで、葉の傾斜角が球面分布していると仮定すると、係数G=0.5と近似することができる。この近似により式11を変形することにより、次の式12を得ることができる。
【数8】
【0069】
式12により、植物の株の直下視画像において葉以外の領域が占める割合(P)から、葉面積指数LAIを算出することができる。
【0070】
受光効率指数算出部123は、植物91の葉を含む画像42について、葉の領域の相対輝度を積算することにより受光効率指数を算出する。
【0071】
相対輝度は、基準白色に対して正規化された値である。RGB形式の画像において或る画素のRGB値をそれぞれR,G,Bで表すと、その画素の相対輝度Lは例えば次の式13によって計算することができる。
【0072】
相対輝度L=0.2126×R+0.7152×G+0.0722×B (式13)
【0073】
受光効率指数算出部123は、RGB形式の画像42を輝度画像に変換し、変換した輝度画像において、葉の領域に含まれるそれぞれの画素について相対輝度を算出し、画像42内の全ての画素について算出したそれら相対輝度を積算する。画像42について算出される相対輝度Lの積算値を、植物91の直上で計測された光合成光量子束密度PPFDの値で除算したものが、受光効率指数である。受光効率指数は次の式14によって計算することができる。
【数9】
【0074】
なお、本実施形態では、RGB形式の画像42は、葉領域抽出部121により葉以外の領域は既に黒色に置き換えられている。黒色のRGB値は、R=0、G=0、B=0である。すなわち、黒色の領域については相対輝度Lの値がゼロとなり、RGB形式の画像42において黒色に置き換えられている葉以外の領域については、相対輝度Lの積算値に寄与しない。
【0075】
図6は、過去の所定期間について、葉を含む画像データに基づいて葉に関する指標を算出する概念を説明するための図である。図示する例では、葉に関する指標は葉面積指数LAIである。図示するように、本実施形態では、植物91の葉を含む画像データ42が1時間おきに取得されている。葉指標算出部12は、1時間おきに取得されている画像データ42に基づいて、葉に関する指標として1時間毎の葉面積指数LAIを算出する。次に葉指標算出部12は、算出した1時間毎の葉面積指数LAIの値を用いて、葉面積指数LAIの6時間毎の平均値を算出する。
【0076】
群落光合成量算出部13は、個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて群落光合成量を算出する。図7は、過去の所定期間について、個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて群落光合成量を算出する概念を説明するための図である。図示する例では、葉に関する指標は葉面積指数LAIである。
【0077】
例えば群落光合成量算出部13は、予め機械学習された学習済みの機械学習モデルに基づいて、群落光合成量を算出する。一例として、機械学習モデルは、ニューラルネットワークを用いて構成することができる。機械学習モデルは、個葉光合成量と葉に関する指標とを入力として設定し、植物91の複数の株に関する群落光合成速度の測定値から算出される群落光合成量を出力として設定して、予め機械学習しておく。
【0078】
本実施形態では、植物91の群落光合成速度の測定値は、圃場90に設置されているチャンバー92を用いて取得される。植物91の株当たりの光合成速度は、吸気口93と排気口94との間のCOの濃度差と、チャンバー92内に流入する外気の流量との積から算出することができる。チャンバー92を用いて測定したデータから算出される光合成速度は、チャンバー92内において栽培されている植物91の複数の株に関する光合成速度であり、このような光合成速度は群落(canopy)の光合成速度と呼ばれている。群落が複数の株で構成されている場合、群落の光合成速度は、複数の株それぞれについての株当たりの光合成速度の和である。チャンバー92が設置されている圃場90においては、群落の光合成速度の値は、チャンバー92が囲う植物91の複数の株について、それぞれの株当たりの光合成速度の値を積算した値である。
【0079】
収量変化指標算出部14は、圃場90において収穫される植物91の過去の所定の期間内の収量43に基づいて、植物91の収量変化に関する指標を算出する。図8は、過去の所定期間について、植物91の過去の収量データに基づいて収量変化に関する指標を算出する概念を説明するための図である。
【0080】
図示するように、本実施形態では、植物91の収量データが1日おきに21日間にわたって取得されている。収量変化指標算出部14は、例えば次の式15によって、植物91の収量変化に関する指標を計算する。
【数10】
【0081】
式15により各時点での収量を0から1に正規化し、21ステップの変化を有する正規化された指標を計算する。この正規化された指標は、過去の所定の期間(21日間)内における植物91の収量の変化の傾向を表している。式15により算出される収量変化に関する指標は、植物91(果菜)の種類に応じて異なる値であり、植物91(果菜)の生長サイクルに応じて異なる値である。
【0082】
学習データ作成部15は、圃場90において収穫される植物91の過去の所定の期間内の収量43を、群落光合成量と収量変化に関する指標とに関連付けて、学習データ4を作成する。学習データ4は、予測用アルゴリズム5の学習に用いるデータセットであり、入力層51に設定されるデータと出力層53に設定されるデータとがセットにされたデータである。作成した学習データ4は例えば補助記憶装置19に記憶される。
【0083】
作成した学習データ4は、学習データ作成装置1から機械学習装置2へ送信されて、機械学習装置2の補助記憶装置29に記憶される。機械学習装置2は、受信した学習データ4を用いて、予測用アルゴリズム5の機械学習を行う。
[機械学習装置]
【0084】
再び図2を参照する。機械学習装置2は、機能ブロックとして学習部21を備えている。学習部21は、集積回路等を用いてハードウェアとして実装することができる。或いは、学習部21は、機械学習装置2のプロセッサが、機械学習プログラムを機械学習装置2の主記憶装置に読み出して実行することにより、ソフトウェアとして実装することもできる。
【0085】
学習部21は、学習データ作成装置1によって作成された学習データ4に基づいて、植物の収量を予測する予測用アルゴリズム5を学習する。
【0086】
図9は、本発明の一実施形態に係る予測用アルゴリズムに用いる人工ニューラルネットワークを説明するための模式的な図である。
【0087】
本実施形態では、予測用アルゴリズム5は、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network; ANN)を用いて構成されている。予測用アルゴリズム5は、ニューラルネットワークを構成する層として、入力層51と、中間層52と、出力層53とを含んでいる。学習データ4は、それぞれが互いに関連付けられた、植物91の過去の所定の期間内の収量43と、群落光合成量と、収量変化に関する指標とから構成されている。学習部21は、群落光合成量と収量変化に関する指標と過去の所定の期間内の収量43とを入力層に設定し、過去の所定の期間内の収量43を出力層に設定して、予測用アルゴリズム5を学習する。学習には、過去のデータをランダムに選択して使用する。例えば、学習の起点となる日を想定し、その起点日から例えば4週間前まで遡って、収量変化、群落光合成量、収量変化に関する指標などのパラメータを作成し、これらを用いて予測用アルゴリズム5を学習する。予測用アルゴリズム5の評価は、学習に使用しない過去のデータの残りの分を用いて行う。学習に使用する過去データと評価に用いる過去データとの比率は、例えば7:3である。学習済の予測用アルゴリズム5は補助記憶装置29に記憶される。
【0088】
なお、予測用アルゴリズムの学習を行う際に、出力層53に対する説明性が高い学習データを入力層51に設定することにより、学習データ4の量が従来よりも少量であっても、高い精度での予測が可能になる。すなわち、入力層51に設定するデータと、出力層53に設定するデータとの間の論理的な因果関係が向上するほど、より少ない量の学習データで予測用アルゴリズム5の学習を行うことができる。
【0089】
本実施形態では、予測用アルゴリズム5に順伝播型ニューラルネットワーク(Feedforward Neural Network)を用いる。予測用アルゴリズム5のニューラルネットワークは、中間層52に複数の層を含んでいる。ニューラルネットワークの学習アルゴリズムとして、予測用アルゴリズム5における重みパラメータ(シナプスウェイト)の調整には、誤差逆伝播法(back propagation)法を用いる。
【0090】
学習済の予測用アルゴリズム5は、機械学習装置2から予測装置3へ送信されて、予測装置3の補助記憶装置39に記憶される。予測装置3は、受信した学習済の予測用アルゴリズム5を用いて、生産者の圃場80における植物81の収量を予測する。
[予測装置]
【0091】
図10は、本発明の一実施形態に係る予測装置の機能を説明するためのブロック図である。
【0092】
予測装置3は、機能ブロックとして、環境データ取得部31と、果菜画像取得部32と、過去収量取得部33と、個葉光合成量算出部34と、葉指標算出部35と、群落光合成量算出部36と、収量変化指標算出部37と、収量予測部38とを備えている。葉指標算出部35は、機能ブロックとして、葉領域抽出部351と、葉面積指数算出部352と、受光効率指数算出部353とを備えている。これらの機能ブロックは、集積回路等を用いてハードウェアとして実装することができる。或いは、これらの機能ブロックは、予測装置3のプロセッサが、予測プログラムを予測装置3の主記憶装置に読み出して実行することにより、ソフトウェアとして実装することもできる。
【0093】
予測装置3には、感知装置6と撮像装置7とが接続されている。予測装置3のユーザは、感知装置6および撮像装置7を用いて、圃場80における環境データと植物81の葉を含む画像とを取得する。
【0094】
環境データ取得部31は、圃場80における環境データを感知装置6から取得する。取得する環境データの種類は、学習データ作成装置1において学習データ4の作成に用いた環境データ41と同じである。本実施形態では、感知装置6および撮像装置7を用いて、圃場80における環境データとして、光合成光量子束密度PPFDと、雰囲気のCO濃度Cと、雰囲気の気温Tと、雰囲気の湿度VPDとを取得する。
【0095】
果菜画像取得部32は、圃場80において栽培されている植物81の葉を含む画像を撮像装置7から取得する。本実施形態では、植物81の葉を含む画像を取得する方法は、圃場90において植物91の葉を含む画像を取得する方法と同じである。すなわち、撮像される植物81の葉を含む画像は、撮像装置7を用いて撮像され、画像データが取得される。取得された画像は、植物81を上方から地面に向かって見下ろした直下視画像であり、撮像範囲に一株の植物81の葉が概ね全て含まれている画像である。撮像装置7により撮像される画像の色空間はRGB形式である。
【0096】
過去収量取得部33は、圃場80において実際に収穫された植物81の過去の所定期間内の収量データを取得する。本実施形態では、入力装置9を介して植物81の過去の収量データを取得する。
【0097】
個葉光合成量算出部34は、図2に示す学習データ作成装置1の個葉光合成量算出部11と同一の機能を有している。個葉光合成量算出部34は、環境データ取得部31により取得した、圃場80における環境データに基づいて、植物81に関する個葉光合成量を算出する。
【0098】
葉指標算出部35は、図2に示す学習データ作成装置1の葉指標算出部12と同一の機能を有している。すなわち、葉指標算出部35が備える葉領域抽出部351、葉面積指数算出部352、および受光効率指数算出部353は、葉指標算出部12が備える葉領域抽出部121、葉面積指数算出部122、および受光効率指数算出部123と同一の機能を有している。
【0099】
葉指標算出部35は、果菜画像取得部32により取得した、圃場80において栽培されている植物81の葉を含む画像に基づいて、葉に関する指標を算出する。葉領域抽出部351は、人工知能を用いた画像解析により、植物81の葉を含む画像において葉の領域を抽出する。葉面積指数算出部352は、植物81の葉を含む画像を二値化することにより得られる、画像において葉以外の領域が占める割合を用いて、葉面積指数LAIを算出する。受光効率指数算出部353は、植物81の葉を含む画像について、葉の領域の相対輝度を積算することにより、受光効率指数を算出する。
【0100】
群落光合成量算出部36は、図2に示す学習データ作成装置1の群落光合成量算出部13と同一の機能を有している。群落光合成量算出部36は、植物81に関する個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて、植物81に関する群落光合成量を算出する。
【0101】
収量変化指標算出部37は、図2に示す学習データ作成装置1の収量変化指標算出部14と同一の機能を有している。収量変化指標算出部37は、圃場80において実際に収穫された植物81の過去の所定期間内の収量データに基づいて、植物81の収量変化に関する指標を算出する。
【0102】
収量予測部38は、機械学習装置2によって学習された予測用アルゴリズム5に従って、植物81に関する群落光合成量と収量変化に関する指標と過去の所定期間内の収量とに基づいて、植物81の収量を予測する。
【0103】
補助記憶装置39には、学習済の予測用アルゴリズム5が記憶されている。収量予測部38は、群落光合成量算出部36により算出した群落光合成量と、収量変化指標算出部37により算出した収量変化に関する指標と、過去の所定期間内の収量とを、学習済の予測用アルゴリズム5の入力層51に入力することにより、植物81の収量の予測値が出力層53から出力される。本実施形態では、出力層53から出力される予測値は表示装置8に表示され、予測装置3のユーザである生産者に提示される。
【0104】
これにより、生産者は果菜の収量を精度良く予測することが可能になる。本実施形態では、予測用アルゴリズム5は、試験研究用の圃場90側において予め学習されており、生産者の小規模な圃場80側は、学習済の予測用アルゴリズム5を試験研究用の圃場90側から取得する。これにより、生産者は、植物(果菜)を囲う透明な開放型のチャンバーのような高価な測定システムを用いることなく、果菜の収量を精度良く予測することが可能になる。
[機械学習の手順]
【0105】
図11および図12は、本発明の一実施形態に係る機械学習装置を用いて予測用アルゴリズムの機械学習を行う手順を説明するためのフローチャートである。
【0106】
機械学習の手順は、例えば試験研究用の圃場90の管理者である農業試験場の研究者により、学習データ作成装置1および機械学習装置2を用いて行われる。
【0107】
機械学習の手順は、予測用アルゴリズム5の学習に用いる学習データ4を作成するステップS1~ステップS8と、作成された学習データ4に基づいて予測用アルゴリズム5を学習するステップS9とを含む。ステップS1~ステップS8の手順は、学習データ作成装置1を用いて行われ、ステップS9の手順は機械学習装置2を用いて行われる。
【0108】
ステップS1において、圃場90における環境データ41および植物91の収量データ43を取得する。ステップS2において、圃場90において栽培されている植物91の葉を含む画像42を取得する。
【0109】
図1に示すように、環境データ41は、例えば農業試験場の研究者が、圃場90に設置されている開放型のチャンバー92を用いて取得する。植物91の収量43は、圃場90において研究者が実際に植物91を収穫して取得する。植物91の葉を含む画像42は、チャンバー92の天井面に取り付けられた撮像装置99を用いて取得される。これらデータ41,42,43は、所定の時間おきに所定期間(例えば21日間)にわたって取得される。これら取得した環境データ41、植物91の葉を含む画像データ42、および植物91の収量データ43は、学習データ作成装置1の補助記憶装置19に記憶される。
【0110】
ステップS3(個葉光合成量算出ステップ)において、個葉光合成量算出部11は、取得した環境データ41に基づいて個葉光合成量を算出する。
【0111】
ステップS4(葉指標算出ステップ)において、葉指標算出部12は、取得した植物91の葉を含む画像データ42に基づいて、葉に関する指標を算出する。ステップS4では、次に説明するステップS4a~ステップS4cの手順を行う。
【0112】
ステップS4a(葉領域抽出ステップ)において、葉領域抽出部121は、人工知能を用いた画像解析により、植物91の葉を含む画像42において葉の領域を抽出する。
【0113】
ステップS4b(葉面積指数算出ステップ)において、葉面積指数算出部122は、植物91の葉を含む画像42を二値化することにより得られる、画像42において葉以外の領域が占める割合を用いて、葉面積指数を算出する。
【0114】
ステップS4c(受光効率指数算出ステップ)において、受光効率指数算出部123は、植物91の葉を含む画像42について、葉の領域の相対輝度を積算することにより、受光効率指数を算出する。
【0115】
ステップS5(群落光合成量算出ステップ)において、群落光合成量算出部13は、個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて群落光合成量を算出する。
【0116】
ステップS6(収量変化指標算出ステップ)において、収量変化指標算出部14は、圃場90において収穫される植物91の過去の所定の期間内の収量43に基づいて、植物91の収量変化に関する指標を算出する。
【0117】
ステップS7(学習データ作成ステップ)において、学習データ作成部15は、圃場90において収穫される植物91の過去の所定の期間内の収量43を、ステップS5において算出した群落光合成量と、ステップS6において算出した収量変化に関する指標とに関連付けて、学習データ4を作成する。作成した学習データ4は補助記憶装置19に記憶される。
【0118】
また、学習データ4は、学習データ作成装置1から機械学習装置2へ送信されて、機械学習装置2の補助記憶装置29に記憶される。機械学習装置2は、受信した学習データ4を用いて、予測用アルゴリズム5の機械学習を行う。
【0119】
ステップS8において、学習データ4の数が十分であるか否かを、例えば学習データ作成装置1自身が判定する。学習データ4の数が十分ではない場合は、ステップS1~ステップS7の手順を繰り返す。学習データ4の数が十分である場合は、ステップS9の手順を行う。例示的には、ステップS9の手順を行うために必要な学習データ4の数は、約144セット程度である。
【0120】
ステップS9(学習ステップ)において、学習部21は、学習データ作成装置1において作成された学習データ4に基づいて、植物の収量を予測する予測用アルゴリズム5を学習する。学習済の予測用アルゴリズム5は補助記憶装置29に記憶される。
【0121】
また、学習済の予測用アルゴリズム5は、機械学習装置2から予測装置3へ送信されて、予測装置3の補助記憶装置39に記憶される。予測装置3は、受信した学習済の予測用アルゴリズム5を用いて、生産者の圃場80における植物81の収量を予測する。
[予測の手順]
【0122】
図13および図14は、本発明の一実施形態に係る予測装置と学習済の予測用アルゴリズムとを用いて光合成速度を予測する手順を説明するためのフローチャートである。
【0123】
予測の手順は、例えば小規模な圃場80における生産者により、予測装置3を用いて行われる。予測の手順は、次のステップS11~ステップS18を含む。
【0124】
ステップS11(環境データ取得ステップ)において、圃場80における環境データを取得する。ステップS12(果菜画像取得ステップ)において、圃場80において栽培されている植物81の葉を含む画像を取得する。
【0125】
図1に示すように、環境データおよび植物81の葉を含む画像は、例えば植物81を栽培する農家における生産者が、圃場80において感知装置6および撮像装置7を用いて取得する。
【0126】
ステップS13(過去収量取得ステップ)において、圃場80において実際に収穫された植物81の過去の所定期間内の収量データを取得する。
【0127】
ステップS14(個葉光合成量算出ステップ)において、個葉光合成量算出部34は、取得した環境データに基づいて個葉光合成量を算出する。
【0128】
ステップS15(葉指標算出ステップ)において、葉指標算出部35は、取得した植物81の葉を含む画像に基づいて、葉に関する指標を算出する。ステップS15では、次に説明するステップS15a~ステップS15cの手順を行う。
【0129】
ステップS15a(葉領域抽出ステップ)において、葉領域抽出部351は、人工知能を用いた画像解析により、植物81の葉を含む画像において葉の領域を抽出する。
【0130】
ステップS15b(葉面積指数算出ステップ)において、葉面積指数算出部352は、植物81の葉を含む画像を二値化することにより得られる、画像において葉以外の領域が占める割合を用いて、葉面積指数を算出する。
【0131】
ステップS15c(受光効率指数算出ステップ)において、受光効率指数算出部353は、植物81の葉を含む画像について、葉の領域の相対輝度を積算することにより、受光効率指数を算出する。
【0132】
ステップS16(群落光合成量算出ステップ)において、群落光合成量算出部36は、個葉光合成量と葉に関する指標とに基づいて群落光合成量を算出する。
【0133】
ステップS17(収量変化指標算出ステップ)において、収量変化指標算出部37は、圃場80において実際に収穫された植物81の過去の所定期間内の収量データに基づいて、植物81の収量変化に関する指標を算出する。
【0134】
ステップS18(収量予測ステップ)において、収量予測部38は、機械学習方法によって学習された予測用アルゴリズム5に従って、ステップS14において算出した個葉光合成量と、ステップS15において算出した葉に関する指標と、ステップS13において取得した過去の所定期間内の収量とに基づいて、植物81の収量を予測する。得られた予測値は、例えば表示装置8に表示され、予測装置3のユーザである生産者に提示される。
【0135】
これにより、生産者は果菜の収量を精度良く予測することが可能になる。本実施形態では、予測用アルゴリズム5は、試験研究用の圃場90側において予め学習されており、生産者の小規模な圃場80側は、学習済の予測用アルゴリズム5を試験研究用の圃場90側から取得する。これにより、生産者は、植物(果菜)を囲う透明な開放型のチャンバーのような高価な測定システムを用いることなく、果菜の収量を精度良く予測することが可能になる。
【0136】
以上、本発明の一実施形態に係る学習データ作成装置、機械学習装置、および予測装置、並びに学習データ作成方法、機械学習方法、および予測方法によると、果菜の収量を予測することができる。
[その他の形態]
【0137】
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0138】
上記実施形態では、予測用アルゴリズム5の構成に人工ニューラルネットワークを用いているが、予測用アルゴリズム5は人工ニューラルネットワークに限定されない。学習データを用いて予測用アルゴリズムを学習することができる限り、予測用アルゴリズムには種々の機械学習アルゴリズムを用いることができる。
【0139】
上記実施形態では、葉指標算出部12は、葉に関する指標として、葉面積指数および葉の受光効率指数の両方を算出しているが、葉に関する指標として算出する指標は、葉面積指数および葉の受光効率指数の少なくともいずれかとすることができる。
【0140】
上記実施形態では、学習データ作成装置1と機械学習装置2とはそれぞれ別の装置として構成されているが、これら学習データ作成装置1および機械学習装置2を一体化して一つの装置として構成することができる。
【0141】
上記実施形態では、学習データ作成装置1、機械学習装置2、および予測装置3は、ネットワーク10を介して互いに通信可能に接続されているが、これら学習データ作成装置1、機械学習装置2、および予測装置3は、例えばDVD-ROMやメモリカード等の記録媒体を介してデータ交換可能に接続することができる。
【0142】
上記実施形態では、圃場90の管理者が学習データ作成装置1および機械学習装置2を使用しているが、学習データ作成装置1および機械学習装置2を取り扱う者は圃場90の管理者に限定されない。例えば、圃場90におけるデータ41,42,43の取得を圃場90の管理者が行い、学習データの作成および予測用アルゴリズムの機械学習を、機械学習の技術に精通した、例えばデータサイエンティストが行うこともできる。
【0143】
上記実施形態では、学習データ作成装置1および機械学習装置2は、試験研究用の圃場90において使用され、予測装置3は、生産者の小規模な圃場80において使用されているが、果菜の収量を予測する圃場は区別されない。例えば、果菜を囲う透明な開放型のチャンバーは、生産者の小規模な圃場80に設置されてもよい。或いは、学習データ4の作成に用いる環境データ41を、公知の感知装置6を用いて取得してもよい。これらの場合、生産者の小規模な圃場80において学習データ作成装置1および機械学習装置2を使用して、学習データ4を作成して予測用アルゴリズム5を予め学習することができ、圃場80において、学習済の予測用アルゴリズムを含む予測装置3を使用して、圃場80における果菜の収量を予測することができる。同様に、試験研究用の圃場90において、学習データ作成装置1、機械学習装置2および予測装置3を使用して、圃場90における果菜の収量を予測することができる。学習データ作成装置1および機械学習装置2は、試験研究用の圃場90および生産者の小規模な圃場80のどちらに設置されてもよい。果菜を囲う透明な開放型のチャンバーも、試験研究用の圃場90および生産者の小規模な圃場80のどちらに設置されてもよい。開放型のチャンバーを使用する理由は、群落光合成量算出部13の学習に必要なデータを測定することにある。
【0144】
上記実施形態では、学習データ作成装置1は一体の装置として実現されているが、学習データ作成装置1は一体の装置である必要はなく、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置19等が別所に配置され、これらが互いにネットワークで通信可能に接続されていてもよい。機械学習装置2および予測装置3についても、学習データ作成装置1と同様である。また、予測装置3に接続される感知装置6、撮像装置7、表示装置8、および入力装置9についても、これらが一箇所に配置される必要はなく、それぞれが別所に配置されて互いにネットワークで通信可能に接続されていてもよい。
【0145】
上記実施形態では、学習データ作成装置1の各機能ブロックは、単一のプロセッサで実行されているが、これら各機能ブロックは単一のプロセッサで実行される必要はなく、複数のプロセッサで分散して実行されてもよい。機械学習装置2および予測装置3についても、学習データ作成装置1と同様である。
【0146】
学習データ作成装置1、機械学習装置2、および予測装置3の各機能ブロックは、一部または全部が、ネットワーク10を介して接続されるサーバ装置(図示せず)においてクラウド化されていてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1 学習データ作成装置
2 機械学習装置
3 予測装置
4 学習データ
5 予測用アルゴリズム
6 感知装置(センサ)
7 撮像装置(デジタルカメラ)
8 表示装置
9 入力装置
10 ネットワーク
11 個葉光合成量算出部
12 葉指標算出部
121 葉領域抽出部
122 葉面積指数算出部
123 受光効率指数算出部
13 群落光合成量算出部
14 収量変化指標算出部
15 学習データ作成部
19 補助記憶装置
21 学習部
29 補助記憶装置
31 環境データ取得部
32 果菜画像取得部
33 過去収量取得部
34 個葉光合成量算出部
35 葉指標算出部
351 葉領域抽出部
352 葉面積指数算出部
353 受光効率指数算出部
36 群落光合成量算出部
37 収量変化指標算出部
38 収量予測部
39 補助記憶装置
41 環境データ
42 画像データ
43 過去の収量データ
51 入力層
52 中間層
53 出力層
80 生産者の圃場
81 植物
90 試験研究用の圃場
91 植物
92 チャンバー
93 吸気口
94 排気口
95 ガス分析装置
96 流量計
97 PPFDセンサ
98a,98b 熱電対
99 撮像装置(デジタルカメラ)
100 果菜収量予測支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14