(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103378
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】エポキシ化ポリブタジエンを含有する組成物、接着剤及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240725BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20240725BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240725BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20240725BHJP
C08C 19/06 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K5/3445
C08L53/02
C08L71/12
C08C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007667
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直美
(72)【発明者】
【氏名】岩島 智幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 康友紀
(72)【発明者】
【氏名】古荘 義雄
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC112
4J002AC11X
4J002BP011
4J002BP01W
4J002CH073
4J002CH07Y
4J002EU116
4J002FD156
4J002GJ01
4J100AS02P
4J100BC54H
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA55
4J100HA29
4J100HC36
4J100HE14
4J100JA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、比誘電率及び誘電正接等の電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】エポキシ化ポリブタジエンと、硬化剤、硬化促進剤および重合開始剤から選択される少なくとも一つと、を含有する組成物であって、前記エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量が390g/eq以上850g/eq未満である、組成物。前記エポキシ化ポリブタジエンの数平均分子量が500以上5000未満であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化ポリブタジエンと、
硬化剤、硬化促進剤および重合開始剤から選択される少なくとも一つと、
を含有する組成物であって、
前記エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量が390g/eq以上850g/eq未満である、組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化ポリブタジエンの数平均分子量が500以上5000未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記硬化剤がイオン性液体化合物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記イオン性液体化合物が含窒素複素環カチオンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記含窒素複素環カチオンがイミダゾリウムカチオン又はその誘導体を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
さらに、エラストマー成分を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記エラストマー成分がスチレン系エラストマーである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、フェニレンエーテル骨格を有する樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の組成物を含む、接着剤。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化ポリブタジエンと、硬化剤、硬化促進剤および重合開始剤のうち少なくとも一つと、を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の1つであるプリント基板では、大量のデータを高速で処理するために、高周波数への対応が進んでいる。しかし、通信のための伝送信号が熱変換されることで発生する誘電損失は、高周波数であるほど大きくなるため、特に第5世代移動通信システム(以下、5Gともいう)において、誘電損失の小さい(低誘電性の)材料の開発が求められている。
【0003】
誘電損失は、誘電体の電気特性に依存し、周波数と誘電体の比誘電率の平方根と、誘電体の誘電正接との積によってその大きさが決まる。従って、誘電損失を抑制するためには比誘電率及び誘電正接が低い材料が必要となる。しかし、接着剤用途において低誘電性の材料は、主剤分子の極性が低いために接着性が発現しづらく、接着性の向上が求められる。
【0004】
ポリブタジエンは極性基を有していないため、低誘電性材料として重宝されている。ただし、前述の通り接着性や耐熱性、機械特性等が十分でないため、他ポリマーとの併用使用や他成分との共重合体とすることでそれら欠点を補っている(特許文献1~3)。しかし、これら組成物においても、電気特性と接着性の両方を十分には満たしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-099711号公報
【特許文献2】国際公開第2020/096036号
【特許文献3】特開2021-105070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、硬化物の比誘電率及び誘電正接等の電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行い、エポキシ化ポリブタジエンと、硬化剤、硬化促進剤および重合開始剤から選択される少なくとも一つと、を含み、前記エポキシ化ポリブタジエンが規定の範囲のエポキシ当量である組成物は、硬化物が電気特性と接着性の両方に優れたものとなることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の各項に関するものである。
[1]エポキシ化ポリブタジエンと、
硬化剤、硬化促進剤および重合開始剤から選択される少なくとも一つと、
を含有する組成物であって、
前記エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量が390g/eq以上850g/eq未満である、組成物。
【0009】
[2]前記エポキシ化ポリブタジエンの数平均分子量が500以上5000未満である、[1]に記載の組成物。
【0010】
[3]前記硬化剤がイオン性液体化合物である、[1]又は[2]に記載の組成物。
【0011】
[4]前記イオン性液体化合物が含窒素複素環カチオンを含む、[3]に記載の組成物。
【0012】
[5]前記含窒素複素環カチオンがイミダゾリウムカチオン又はその誘導体を含む、[4]に記載の組成物。
【0013】
[6]さらに、エラストマー成分を含有する、[1]~[5]の何れか一項に記載の組成物。
【0014】
[7]前記エラストマー成分がスチレン系エラストマーである、[6]に記載の組成物。
【0015】
[8]さらに、フェニレンエーテル骨格を有する樹脂を含有する、[1]~[7]の何れか一項に記載の組成物。
【0016】
[9][1]~[8]の何れか一項に記載の組成物を含む、接着剤。
【0017】
[10][1]~[8]の何れか一項に記載の組成物又は[9]に記載の接着剤の硬化物。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、硬化物の比誘電率及び誘電正接等の電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.組成物
以下、本発明の組成物について説明する。
本開示の組成物は、エポキシ化ポリブタジエンと、硬化剤、硬化促進剤および重合開始剤から選択される少なくとも一つと、を含有することを特徴の一つとするものである。本発明によれば、硬化物の電気特性と接着性の両方に優れたものを提供することができる。
【0020】
A.エポキシ化ポリブタジエン
まず、本開示の組成物に含まれるエポキシ化ポリブタジエン(以下、「本開示のエポキシ化ポリブタジエン」ともいう。)について説明する。
本開示のエポキシ化ポリブタジエンは、エポキシ当量が390g/eq以上850g/eq未満である。
【0021】
本開示のエポキシ化ポリブタジエンを用いることで、硬化物の電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができる。
【0022】
以下、本開示のエポキシ化ポリブタジエンについて、詳細に説明する。
エポキシ化ポリブタジエンは、ポリブタジエンの不飽和結合基の一部をエポキシ化することで得られるものである。具体的には、ポリブタジエンを過酸化水素又は過酸類によりエポキシ化することによって製造する。本開示のエポキシ化ポリブタジエンは、エポキシ当量が390g/eq以上850g/eq未満のものであり、目的のものを製造するには、過酸類としてメタクロロ過安息香酸を用いるのが好ましい。また、メタクロロ過安息香酸の量により、エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量をコントロールする事ができる。(例えば、エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量を590~620g/eqにするには、原料のポリブタジエン中の不飽和結合基1モルに対し、メタクロロ過安息香酸を0.14モル用いるとよい。エポキシ当量を780~810g/eqにするには、メタクロロ過安息香酸をポリブタジエン中の不飽和結合基1モルに対し、0.10モル用いるとよい。)
【0023】
エポキシ当量はJIS K7236に準拠して測定することができる。
【0024】
本発明で用いられる前記ポリブタジエンは、1,4-繰り返し単位、1,2-繰り返し単位又はこれらの両方を有するポリブタジエンである。なお、前記1,4-繰り返し単位は、下記式(1-4A)または(1-4B)で表され、これらの繰り返し単位はポリブタジエンの構成成分として混ざっていてもよく、また、1,2-繰り返し単位は、下記式(1-2)で表されるものであり、さらに、式(1-4A)、(1-4B)及び(1-2)の何れかにおける不飽和結合基が水素添加されたものが構成成分として混ざっていてもよい。また、前記ポリブタジエンの分子両末端は、水素原子、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、及びヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも一種である。
【化1】
【化2】
【0025】
本開示において、前記ポリブタジエンは、前記ポリブタジエンの全構成単位100モル%中、1,4-繰り返し単位の比率が75モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。また前記ポリブタジエンの全構成単位100モル%中、1,2-繰り返し単位の比率が25モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0026】
本開示で用いられるポリブタジエンは市販された製品を使用してもよい。市販製品としては、例えば、NissoPBのB-1000、B-2000、B-3000(いずれも日本曹達(株)製)等が挙げられる。
【0027】
本開示において、エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量は390g/eq以上850g/eq未満であることが好ましく、600g/eq以上830g/eq未満であることがより好ましく、600g/eq以上810g/eq未満であることが更に好ましい。
エポキシ化ポリブタジエンが前記構造であることで、硬化物の電気特性と接着性(以降、単に「電気特性と接着性」とも記載する。)の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0028】
本開示において、エポキシ化ポリブタジエンの数平均分子量は500以上5,000未満であることが好ましく、800以上4,000未満であることがより好ましく、1,000以上3,500未満であることが更に好ましい。
分子量を500以上とすることで、硬化性が低下することを防止できるため好ましく、分子量を5,000未満とすることで、他成分(溶媒等)との相溶性が低下することを防止できるため好ましい。
【0029】
前記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、予め同条件で測定した標準ポリスチレンの検出時間-分子量の曲線より求める。カラムはSHODEXのKF-802又はKF-803を用いる。
【0030】
本開示において、エポキシ化ポリブタジエンの分子両末端は、水素原子、シアノ基、水酸基及びヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、水素原子及びシアノ基から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
エポキシ化ポリブタジエンが前記構造であることで、電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0031】
前記エポキシ化ポリブタジエンの含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の樹脂成分(エポキシ化ポリブタジエン、エラストマー成分、フェニレンエーテル骨格を有する樹脂、環状エーテル成分、活性エステル化合物及びカルボン酸無水物化合物の合計)100質量部中、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上40質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0032】
前記エポキシ化ポリブタジエンの含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の固形分100質量部中、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上40質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0033】
前記エポキシ化ポリブタジエンの含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物100質量部中、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上7質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0034】
B.硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤
本開示の組成物に含まれる、硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤について詳細に説明する。前記硬化剤には、潜在性硬化剤も含まれる。
本開示において、硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示の組成物においては、潜在性硬化剤を用いることが好ましい。硬化性、貯蔵安定性に優れるからである。
【0035】
前記潜在性硬化剤とは、例えば常温(25℃)では活性を持たないが、加熱等の刺激を加えることにより活性化して前記組成物の硬化を促進する機能を有するものである。
潜在性硬化剤の活性化温度は常温(25℃)より高い温度であればよく、60℃以上250℃以下であることが好ましく、80℃以上200℃以下であるものがより好ましい。前記組成物が硬化性に優れたものとなるからである。
本開示において、潜在性硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記潜在性硬化剤としては、例えば、特開2019-038891号公報に記載のジシアンジアミド型潜在性硬化剤、イミダゾール型潜在性硬化剤、イオン性化合物等が挙げられる。
【0037】
前記ジシアンジアミド型潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド単独、若しくは必要に応じて、後述するエポキシ樹脂硬化促進剤を併用したものが挙げられる。
ジシアンジアミド型潜在性硬化剤の市販品としては、PTIジャパン株式会社製のオミキュアDDA-5、三菱化学株式会社製DICY7、DICY15、DICY50等が挙げられる。
【0038】
前記イミダゾール型潜在性硬化剤としては、イミダゾール化合物、イミダゾール化合物とエポキシ化合物との反応物であるエポキシアダクト型イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0039】
イミダゾール型潜在性硬化剤として用いられるイミダゾール化合物としては、イミダゾール構造とエポキシ構造とが反応して得られる構造を有しないものであり、例えば、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、及び2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。
また、後述するエポキシアダクト型イミダゾール化合物の製造に用いられるイミダゾール化合物も、イミダゾール型潜在性硬化剤として用いることができる。
【0040】
前記イミダゾール型潜在性硬化剤として用いられるイミダゾール化合物の市販品としては、例えば、2P4MHZ-PW(2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール)、2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)、C11Z(2-ウンデシルイミダゾール)、C11Z-CN(1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール)、C17Z(2-ヘプタデシルイミダゾール)、2E4MZ-CN(1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール)、2PZ-CN(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)、2MZ-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン)、2E4MZ-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン)、及び、2MAOK-PW(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物)(いずれも四国化成工業製、商品名)等が挙げられる。
【0041】
エポキシアダクト型イミダゾール化合物の製造に用いられるイミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
前記エポキシアダクト型イミダゾール化合物の製造に用いられるエポキシ化合物としては、例えば、後述する「C-3.環状エーテル成分」のエポキシ化合物に用いられる化合物等が挙げられる。
【0042】
イミダゾール型潜在性硬化剤として用いられるエポキシアダクト型イミダゾール化合物の市販品としては、例えば、アデカハードナーEH-5011S、アデカハードナーEH-5046S等が挙げられる。
【0043】
本開示の組成物においては、イオン性化合物を用いることが好ましい。イオン性化合物は溶剤との相溶性に優れるため、本開示の組成物が溶剤を含有する場合、組成物中に均一分散又は溶解することが容易であり、その結果、硬化反応を効率的に進行することができるためである。また本開示の組成物を低粘度とした場合でも、潜在性硬化剤の沈殿、凝集等が抑制されるからである。
【0044】
前記イオン性化合物は、カチオンとアニオンの塩である。
前記イオン性化合物は、イオン性液体化合物であってもよく、イオン性固体化合物であってもよいが、イオン性液体化合物であることが好ましい。イオン性液体化合物の方がより相溶性及び分散性に優れ、硬化性に優れたものとなるからである。
イオン性液体化合物とは、25℃、大気圧下で液体であるイオン性の化合物を意味する。イオン性固体化合物は、25℃、大気圧下で固体であるイオン性の化合物を意味する。本開示において、イオン性化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
前記イオン性化合物のカチオンとしては、例えば、含窒素複素環カチオンやテトラアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0046】
前記含窒素複素環カチオンは、含窒素複素環を有するカチオンを意味する。前記含窒素複素環としては、例えば、環骨格構成原子が窒素原子及び炭素原子からなる環、又は、窒素原子と炭素原子及び酸素原子とからなる環等が挙げられる。本開示においては、含窒素複素環は、環骨格構成原子が窒素原子及び炭素原子からなる環であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0047】
前記含窒素複素環カチオンの具体例としては、例えば、含窒素芳香族複素環カチオン及び含窒素脂肪族複素環カチオン等が挙げられる。
前記含窒素芳香族複素環カチオンとしては、5員環の含窒素芳香族複素環カチオン及び6員環の含窒素芳香族複素環カチオンが挙げられる。5員環の含窒素芳香族複素環カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン及びピラゾリウムカチオン等が挙げられる。6員環の含窒素芳香族複素環カチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン及びピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
また、前記含窒素脂肪族複素環カチオンとしては、例えば、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
前記含窒素複素環カチオンの環骨格中の窒素原子数に特に制限はないが、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0048】
本開示においては、前記イオン性化合物が含窒素複素環カチオンを含むことが好ましく、含窒素芳香族複素環カチオンを含むことがより好ましく、環骨格中に窒素原子を2つ含有する含窒素芳香族複素環カチオン又は5員環である含窒素芳香族複素環のカチオンを含むことが更に好ましく、環骨格中に窒素原子を2つ含有し、且つ5員環である含窒素芳香族複素環を含むことが特に好ましく、イミダゾリウムカチオン又はその誘導体を含むことが最も好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0049】
前記イミダゾリウムカチオン及びその誘導体としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
前述のイミダゾリウムカチオン及びその誘導体のなかでも、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムイオン及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン、並びに1-アリル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等のアルキルアルケニルイミダゾリウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
同様の観点から、ジアルキルイミダゾリウムイオンは1,3-ジアルキルイミダゾリウムイオンが好ましい。
【0050】
前記ピラゾリウムカチオン及びその誘導体としては、例えば、1-メチルピラゾリウムカチオン、3-メチルピラゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0051】
前記ピリジニウムカチオン及びその誘導体としては、例えば、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-(3-シアノプロピル)ピリジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピ
リミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0052】
前記ピリミジニウムカチオン及びその誘導体としては、例えば、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0053】
前記ピペリジニウムカチオン及びその誘導体としては、例えば、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0054】
前記ピロリジニウムカチオン及びその誘導体としては、例えば、1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-エチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0055】
前記テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラへキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、トリヘキシルテトラデシルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウム[DEME]カチオン、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムカチオン、N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム[TMPA]カチオン、トリメチル(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)アンモニウムカチオン、トリメチル-(4-ビニルベンジル)アンモニウムカチオン、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0056】
前記イオン性化合物のアニオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン、金属塩化物アニオン、シアナート系アニオン、カルボン酸系アニオン、スルホン酸系アニオン、スルホニル系アニオン、その他のフッ化物系アニオンやClO4
-、NO3
-等が挙げられる。
【0057】
前記シアナート系アニオンとは、シアノ基を有するアニオンを意味する。シアナート系アニオンとしては、例えば、CNS-(チオシアナートアニオン)、(CN)2N-(ジシアナミドアニオン)、B(CN)4
-(テトラシアノボレートアニオン)、NCS-(イソチオシアナートアニオン)、C(CN)3
-(トリシアノメタニド)等が挙げられる。
【0058】
前記シアナート系アニオンは、シアノ基を1~2個含有することが好ましく、(CN)2N-又はCNS-であることがより好ましく、(CN)2N-であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0059】
前記カルボン酸系アニオンとは、カルボン酸アニオン(*COO-、*は結合手を表す。)を有するアニオンを意味する。
カルボン酸系アニオンが1分子中に有するカルボン酸アニオンの数は1以上であればよく、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
カルボン酸系アニオンとしては、*COO-が炭化水素基に結合した炭化水素カルボン酸のアニオンであることが好ましく、脂肪族炭化水素基にカルボン酸アニオンが結合した、脂肪族カルボン酸のアニオンであることがより好ましく、一価の脂肪族カルボン酸のアニオンであることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0060】
前記カルボン酸系アニオンは、炭化水素カルボン酸のアニオンにおける1又は2以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
前記カルボン酸系アニオンの具体例としては、例えば、CH3COO-、C2H5COO-、C3H7COO-、C4H9COO-、C5H11COO-、C6H13COO-、C7H15COO-、C8H17COO-、C9H19COO-、C10H21COO-、C11H23COO-、(CH3)2CHCOO-、(CH3)3CCOO-及びC6H5COO-等のアルキルカルボン酸アニオン、並びにCF3COO-、C2F5COO-、C3F7COO-、C4F9COO-、C5F11COO-、C6F13COO-、C7F15COO-、C8F17COO-、C9F19COO-、C10F21COO-及びC11F23COO-等のフッ化アルキルカルボン酸アニオンが挙げられる。
【0061】
前記カルボン酸系アニオンは、炭素原子数が2以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、2以上5以下であることが更に好ましく、2以上3以下であることが特に好ましく、2であること、すなわち、カルボン酸系アニオンがアセテート系アニオンであることが最も好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
前記アセテート系アニオンとは、酢酸アニオン又は酢酸アニオンの1若しくは2以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたアニオンを表し、例えば、CH3COO-、CF3COO-等が挙げられる。
【0062】
前記ハロゲン化物イオンとはハロゲン原子のアニオンを意味する。ハロゲン化物イオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、F-等が挙げられる。
【0063】
前記金属塩化物アニオンとは金属原子を含むアニオンを意味する。金属塩化物アニオンとしては、例えば、AlCl4
-及びAl2Cl7
-等の塩化アルミニウムアニオンが挙げられる。
【0064】
前記スルホン酸系アニオンとは、スルホン酸アニオン(*SO3
-、*は結合手を表す。)を含むアニオンを意味する。スルホン酸系アニオンとしては、例えば、CH3SO3
-、CF3SO3
-、C4F9SO3
-、-O3S(CF2)3SO3
-及び-O3S(CF2)lSO3
-(但し、1は1~10の整数を表す。)等が挙げられる。
【0065】
前記スルホニル系アニオンとは、スルホニルアニオン(*SO2
-、*は結合手を表す。)を含むアニオンを意味する。スルホニル系アニオンとしては、例えば、(CF3SO2)3C-、(CF3SO2)(CF3CO)N-や下記一般式(α)乃至(γ)等が挙げられる。
(α)(CnF2n+1SO2)2N-(但し、nは1~10の整数を表す。)
(β)CF2(CmF2mSO2)2N-(但し、mは1~10の整数を表す。)
(γ)(CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2)(但し、p、qは1~10の整数を表す。)
【0066】
その他のフッ化物系アニオンとしては、例えば、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-及びTaF6
-等が挙げられる。
【0067】
前記イオン性化合物としては、特開2020-007568号公報にイオン性液体として記載の化合物が挙げられる。また、イオン性化合物の合成方法としても、例えば、特開2020-007568号公報に記載の方法を用いることができる。具体的には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート、1-エチル-3メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-ブチル-3メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアナート、3-シアノプロピルイミダゾリウムジシアナミド、1-アリルー3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルフォネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルホスホネート等が挙げられる。
【0068】
前記イオン性化合物の市販品としては、IL-P11、IL-P14、IL-IM1、IL-C1、IL-C3、IL-C5、IL-A1、IL-A2、IL-A3、IL-A4、IL-A5、IL-MA1、IL-MA2、IL-MA3、IL-OH1、IL-OH2、ILA21-9、ILP14-2(以上、広栄化学(株)製)及びエレクセルAS-110(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0069】
本開示においては、前記イオン性化合物のアニオンが、シアナート系アニオン及びカルボン酸系アニオンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、シアナート系アニオンを含むことが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0070】
本開示においては、イオン性化合物が、含窒素芳香族複素環カチオンとシアナート系アニオンとの組み合わせ、又は、含窒素芳香族複素環カチオンとカルボン酸系アニオンとの組み合わせを含むことがより好ましく、含窒素芳香族複素環カチオンとシアナート系アニオンとの組み合わせを含むことがより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0071】
潜在性硬化剤の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前述したエポキシ化ポリブタジエンや、後述する環状エーテル成分等のエポキシ基を含有する前記組成物の全成分100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上12質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0072】
潜在性硬化剤の含有量は、本開示のエポキシ化ポリブタジエン100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上12質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0073】
潜在性硬化剤の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の固形分100質量部に対し、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることが更に好ましく、0.3質量部以上3質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0074】
潜在性硬化剤の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物100質量部中、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることが更に好ましく、0.15質量部以上0.5質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0075】
本開示の組成物においては、所望の電気特性及び接着性が得られる範囲で、イオン性化合物と、イオン性化合物以外の他の潜在性硬化剤とを組み合わせて、潜在性硬化剤として用いることができる。
前記イオン性化合物以外の潜在性硬化剤の含有量としては、イオン性化合物100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0076】
本開示においては、公知のその他の硬化剤(潜在性硬化剤以外の硬化剤)、硬化促進剤または重合開始剤を用いることもできる。例えば、一級及び二級アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、チオール系硬化剤、有機ホスフィン系硬化剤、ホスホニウム塩系硬化剤、ルイス酸硬化促進剤、三級アミン系硬化促進剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、及びカチオン重合開始剤等が挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。前記その他の硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤の含有量は本開示の組成物の効果を損なわない範囲で適宜調整して用いればよいが、その他の硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤それぞれ又はそれら合計について、組成物中のエポキシ基を有する全成分、本開示のエポキシ化ポリブタジエン、組成物の固形分、及び組成物のそれぞれに対する比率として、上述した潜在性硬化剤について述べた量と同様の量にて用いることができる。
【0077】
前記一級及び二級アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、チオール系硬化剤、有機ホスフィン系硬化剤、ホスホニウム塩系硬化剤、ルイス酸硬化促進剤、三級アミン系硬化促進剤及びカチオン重合開始剤については、特開2021-181381号公報に記載のものが挙げられる。
前記エポキシ樹脂硬化促進剤としては、例えば、特開2019-038891号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0078】
C.その他の成分
C-1.エラストマー成分
本開示の組成物は、エラストマー成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
エラストマー成分は、一般に常温(25℃)でゴム弾性体の性能を示す無定形で軟質な重合体を表す。ゴム弾性体とは、常温でのヤング率が約1~100MPa程度と、小さな応力で破断することなく大きく伸び、しかも外力を除くとほとんど瞬間的に元に戻るというゴム弾性を示す物体を意味する。
【0079】
前記エラストマー成分としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマーの他に、ポリオキシメチレン、ポリイソブチレン、ポリオキシエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンイミン等の単独又は共重合の重合体が挙げられる。
また、ゴム変性エポキシ化合物のように、エラストマー成分と、エポキシ基等の環状エーテル基とを有する化合物は、エラストマー成分に該当するものとする。
ただし、前述した「A.エポキシ化ポリブタジエン」や、後述する「C-2.フェニレンエーテル骨格を有する樹脂」及び「C-4.活性エステル化合物及び/又はカルボン酸無水物化合物」は、エラストマー成分に該当しないものとする。
【0080】
前記スチレン系エラストマーはスチレン系モノマー由来のユニットを含有するものである。スチレン系モノマー由来のユニットとしては、例えば下記式(C-1)で表される構造が挙げられる。下記構造における芳香族環は水素添加されていてもよい。
【0081】
【化3】
(式中、R
c1は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、R
c2は、炭素原子数1~5のアルキル基である。tは、0~5の整数である。)
R
c1及びR
c2が表す炭素原子数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基等が挙げられ、炭素数1~3のアルキル基であってもよく、メチル基であってもよい。R
c1は水素原子であってもよい。
tは、0~2の整数であってもよく、0又は1であってもよく、0であってもよい。
【0082】
前記スチレン系エラストマーは、前記スチレン系モノマー由来のユニット以外に他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、例えば、ビニル系モノマー、カルボキシ含有モノマー、酸無水物モノマー、スルホン酸基含有モノマー、シアノ系モノマー、アミド系モノマー、マレイミド系モノマー、イタコンイミド系モノマー、オレフィン等が挙げられる。
【0083】
前記ビニル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0084】
前記カルボキシ含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0085】
前記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0086】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0087】
前記シアノ系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0088】
前記アミド系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0089】
前記マレイミド系モノマーとしては、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、及びN-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー等が挙げられる。
【0090】
前記イタコンイミド系モノマーとしては、例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等が挙げられる。
【0091】
前記オレフィンとしては、例えば、エタン、エチレン、プロピレン、ブタン、ブチレン、ブタジエン、水添ブタジエン、イソプレン、水添イソプレン又はその他のα-オレフィンからそれぞれ水素原子を2つ除いた二価の基が挙げられる。
【0092】
前記スチレン系エラストマーの具体例としては、ブロック共重合体として、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)樹脂、耐熱ABS樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)樹脂、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン(SBBS)樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)樹脂等の熱可塑性樹脂、並びに、これらのブタジエンあるいはイソプレンの不飽和結合基を水素添加したスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)樹脂、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)樹脂、スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)樹脂、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)樹脂等の水素添加スチレン系エラストマー樹脂が挙げられる。これらは単独でも複数の混合物でも使用可能である。
SBSは「ポリスチレン-ポリブタジエン」と呼ばれることがあり、SEBSは「ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン」と呼ばれることがあり、SEPSは「(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)」と呼ばれることがあり、SEEPSは「(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)」と呼ばれることがあり、SBBSは「(ポリスチレン-ポリ(ブタジエン-ブチレン)ブロック-ポリスチレン)」と呼ばれることがある。
【0093】
前記オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~20のα-オレフィンの共重合体が挙げられる。ジシクロペンタジエン等の炭素数2~20の非共役ジエンとα-オレフィンとの共重合体や、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBR等も含まれる。
【0094】
前記ウレタン系エラストマーとしては、例えば、低分子のエチレングリコールとジイソシアネートからなるハードセグメントと高分子(長鎖)ジオールとジイソシアネートからなるソフトセグメントとの構成単位からなるエラストマーが挙げられる。
【0095】
前記ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体を重縮合して得られるエラストマーが挙げられる。
但し、ジカルボン酸のカルボキシ基と、フェノール性水酸基とが、エステル化したエステル結合を2個以上有するものは、活性エステル化合物であり、ポリエステル系エラストマーに該当しないものとする。
【0096】
前記ポリアミド系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとしてポリアミドを、ソフトセグメントとしてポリエーテルやポリエステルを用いたポリエーテルブロックアミド型エラストマーやポリエーテルエステルブロックアミド型エラストマーが挙げられる。
【0097】
前記アクリル系エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル-ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0098】
前記シリコーン系エラストマーとしては、例えば、オルガノポリシロキサンを主成分したもので、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系等が挙げられる。
【0099】
前記ゴム変性エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化ブタジエン-スチレン共重合体、ポリジメチルシロキサンのエポキシ化合物等が挙げられる。また、後述する「C-3.環状エーテル成分」で挙げる各種エポキシ化合物の一部又は全部のエポキシ基を、両末端カルボン酸変性ブタジエン-アクリロニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られる化合物を用いることもできる。
【0100】
本開示においては、前記エラストマー成分として、側鎖に芳香環を持つ構成単位を有する重合体であることが好ましく、スチレン系エラストマーであることがより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0101】
本開示においては、前記スチレン系エラストマー成分として、SBS、SEBS、SEPS及びSEEPSから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、SEBS、SEPS及びSEEPSから選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましく、SEBSを含むことが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0102】
本開示においては、スチレン系エラストマーが、前記スチレン系モノマー由来のユニットが1以上配列されたブロック(以下、「スチレンブロック」ともいう。)と、オレフィンに由来するユニットが1以上配列されたブロック(以下、「オレフィンブロック」ともいう。)とが配列されたブロック共重合体であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。ここでいうオレフィンブロックの好適な例としては、エチレンユニット及び/又はブチレンユニットとを有するブロックやエチレンユニット及び/又はプロピレンユニットを有するブロックが挙げられる。エチレンユニット及び/又はブチレンユニットとを有するブロックではエチレンユニット及びブチレンユニットが混合していてもよく、エチレンユニット及びプロピレンユニットを有するブロックでは、エチレンユニット及びプロピレンユニットが混合していてもよい。
【0103】
本開示において、スチレン系エラストマーが、スチレンブロックとオレフィンブロックとを有するブロック共重合体である場合、スチレン系エラストマー中の、スチレンに由来するユニットとオレフィンに由来するユニットは合計で50質量%以上を占めることが好ましく、80質量%以上を占めることがより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0104】
本開示においては、前記スチレン系エラストマー中のスチレン系モノマーに由来するユニットは、30質量%以上80質量%以下を占めることが好ましく、35質量%以上75質量%以下を占めることがより好ましく、特に、40質量%以上75質量%以下を占めることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。特にスチレンに由来するユニットが上記の範囲の比率であることが好ましい。
【0105】
本開示の組成物におけるエラストマー成分として、スチレン系エラストマーとして好適に使用することができる市販品としては、例えば以下のものが挙げられる。
タフプレン(登録商標)シリーズ:A、125、126S(スチレン系モノマーに由来するユニット含量40%)、アサプレン(登録商標)シリーズ:T-411、T-432、T-437(同30%)、T-438(同35%)、T-439(同45%)、(以上SBS)、タフテック(登録商標)Hシリーズ:H1221(同12%)、H1062、H1521(同18%)、H1052(同20%)、H1053(同29%)、H1051(同42%)、H1517(同43%)、H1043(同67%)、(以上SEBS)、タフテックPシリーズ:P1083(同20%)、P1500(同30%)、P5051(同47%)、P2000(同50%)、(以上SBBS)、タフテックMシリーズ:M1943(同20%)、M1913、M1911、MP10(同30%)、(以上、変性SEBS)(以上、旭化成工業株式会社製);エラストマーARシリーズ(SEBS、アロン化成株式会社製);クレイトン(登録商標)Dシリーズ:D0243、D0246、D1101、D1102、D1116、D1118、D1152、D1155、D1184、D1189、D1191、D1192、D4150、D4153、D4270、DX1000(以上SBS)、D1111、D1113、D1114D1117、D1119、D1124、D1126、D1161、D1162、D1163、D1164、D1170、D1171、D1173、D1183、D1193(以上SIS)、クレイトン(登録商標)Gシリーズ:A1535、A1536、G1633、G1640、G1641、G1642、G1643、G1645、G1650、G1651、G1652、G1654、G1657、G1660、G1701、G1702、G1726、G1730、G1740、G1765、G2705、G2708、G2806、G2832、G2836、G2874、G4609、G4610、G7705、G7720、G7723、G7820(以上SEBS又はSEPS)(以上、クレイトンポリマージャパン株式会社製);TRシリーズ:TR2000(同40%)、TR2001(同40%)、TR2003(同43%)、TR2250(同52%)、2500(同35%)、TR2601(同30%)、TR2787(同30%)、TR2827(同24%)、TR2086(同45%)、(以上SBS)、SISシリーズ:SIS5002(同22%)、SIS5229(同15%)、SIS5250(同20%)、SIS5403(同15%)、SIS5506(同16%)(以上SIS)、ダイナロン(登録商標)シリーズ:8600P(同15%)、8300P(同9%)、8903P(同35%)、9901P(同53%)(以上、SEBS)(以上、JSR株式会社製);デンカSTR(SBS、電気化学工業株式会社製);クインタック(登録商標)シリーズ:3421(同14%)、3450(同19%)、3270(同24%)、3280(同25%)、3190(同30%)、3390(同48%)、3620(同14%)、3433N(同16.5%)、3520(同15%)(以上、SIS)、ゼオフィットシリーズ:ZFT1330(SBS、同30%)(以上日本ゼオン株式会社製);TPE-SBシリーズ(SEBS、住友化学株式会社製);ラバロン(登録商標)シリーズ(SEBS、三菱化学株式会社製);セプトン(登録商標)シリーズ:1020(SEP、同36%)、2002(同30%)、2004F(同18%)、2005(同20%)、2006(同35%)、2063(同13%)、2104(同65%)、(以上SEPS)、4033(同30%)、4044(同32%)、4055(同30%)、4077(同30%)、4099(同30%)(以上SEEPS)、8004(同31%)、8006(同33%)、8007L(同30%)、(以上SEBS)、HG252(同28%、SEEPS-OH)、ハイブラ-(登録商標)シリーズ:5125(同20%)、5127(同20%)(以上、SIS)、7125F(同20%、SEPS)、7311F(同12%、SEEPS)(以上、株式会社クラレ製);レオストマー、アクティマー(以上、リケンテクノス株式会社製)等。
【0106】
本開示において、エラストマー成分のMFR(2.16kg)は0.5g/10min以上15g/10min以下であることが好ましく、1.0g/10min以上10g/10min以下であることがより好ましく、1.5g/10min以上5g/10min以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
MFRは、ISO1133に準拠して測定される。
【0107】
本開示においては、エラストマー成分の密度は、0.85g/cm3以上1.5g/cm3以下であることが好ましく、0.90g/cm3以上1.2g/cm3以下であることがより好ましく、0.95g/cm3以上1.0g/cm3以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
エラストマー成分の比重の好ましい範囲としては、前記の密度の範囲から「g/cm3」の単位を除いた同様の数値範囲が挙げられる。
エラストマーの密度及び比重は、ISO1183に準拠して測定できる。
【0108】
前記エラストマー成分の含有量は、前記組成物の固形分100質量部中、5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、15質量部以上75質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上70質量部以下であることが更に好ましい。組成物中の潜在性硬化剤等の含有量の調整が容易となり、電気特性、接着性及び硬化性の全てに優れた組成物を提供することができるからである。
【0109】
前記エラストマー成分の含有量は、前記組成物100質量部中、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、8質量部以上30質量部以下であることが更に好ましい。電気特性、接着性及び硬化性の全てに優れた組成物を提供することができるからである。
【0110】
前記エラストマー成分の含有量は、前述したエポキシ化ポリブタジエンや、後述する環状エーテル成分等のエポキシ基を含有する前記組成物の全成分100質量部に対し、50質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上900質量部以下であることがより好ましく、150質量部以上600質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0111】
前記エラストマー成分の含有量は、本開示のエポキシ化ポリブタジエン100質量部に対し、50質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上900質量部以下であることがより好ましく、150質量部以上600質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0112】
C-2.フェニレンエーテル骨格を有する樹脂
本開示の組成物は、フェニレンエーテル骨格を有する樹脂を含有することができる。
ここで、フェニレンエーテル骨格とは、下記一般式(2-1)で表される構造を重合体の主鎖を構成する構成単位として有するものをいう。
【0113】
【0114】
フェニレンエーテル骨格を有する樹脂としては、水酸基を末端に有するもの、グリシジルエーテル基を末端に有するもの、並びにスチレン基、アクリレート基及びビニル基等のエチレン性不飽和基を末端に有するもの等の各種反応性基を有するもの等も用いることができるが、末端にエチレン性不飽和基を有するものが好ましく、末端にスチレン基を有するものがより好ましく、下記一般式(2-2)で表されるものが特に好ましい。前記組成物の硬化物が、電気特性及び接着性に一層優れるものとなるからである。
【0115】
【化5】
(式中、-(O-X-O)-は下記一般式(2-3)を表し、
-(Y-O)-は下記一般式(2-4)を表し、
複数存在するYは同一であってもよく、異なるものであってもよく、
a及びbはそれぞれ独立に、0~100の整数を示し、a及びbの少なくともいずれか一方が1以上である。j及びkはそれぞれ独立に、1~10の整数を示す。)
【0116】
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
X
1は、直接結合又は二価の有機基を表す。)
【0117】
【化7】
(式中、R
10及びR
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
R
9及びR
11は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を表す。)
【0118】
一般式(2-3)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8並びに一般式(2-4)のR9、R10、R11及びR12で表される炭素原子数1~6のアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記鎖状のアルキル基としては、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基等が挙げられる。分岐を有するアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソアミル基、tert-アミル基等が挙げられる。
【0119】
前記環状のアルキル基としては、例えば、シクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基等が挙げられる。
【0120】
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0121】
前記シクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル等が挙げられる。
【0122】
前記一般式(2-3)におけるX1で表される二価の有機基としては、炭素原子数1~12のアルキレン基、炭素原子数2~12のアルケニレン基、炭素原子数2~12のアルキニレン基等、炭素原子数6~20の二価の芳香環含有基等が挙げられる。二価の有機基の1つ、又は、2つ以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0123】
前記一般式(2-3)中のX1で表される炭素原子数1~12のアルキレン基としては、直鎖又は分岐を有していてもよく、例えば、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。
【0124】
前記一般式(2-3)中のX1で表される炭素原子数2~12のアルケニレン基としては、例えば、エチレニレン基、メチルエチニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
【0125】
前記一般式(2-3)中のX1で表される炭素原子数2~12のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
【0126】
前記一般式(2-3)中のX1で表される炭素原子数6~20の二価の芳香環含有基としては、下記の芳香環から2個の水素原子を除いた芳香環基、該芳香環基と二価の連結基とが連結した基等が挙げられる。
【0127】
前記2個の水素原子を除く前の芳香環としては、単環構造の芳香環又は縮合多環構造の芳香環が挙げられる。
単環構造の芳香環としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、2,4,6-トリメチルベンゼン等が挙げられる。
縮合多環構造の芳香環は、芳香環を含む縮合環を表し、例えば、芳香環で形成される縮合環と、芳香環と脂環とで形成される縮合環を表す。前記縮合多環構造の芳香環の具体例としては、例えば、ペンタレン環、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、ヘプタレン環、ビフェニレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、トリフェニレン環、ピレン環等が挙げられる。
【0128】
前記脂環は、単環式脂環又は多環式脂環が挙げられ、それらを1種又は2種以上含んでいてもよい。
前記単環式脂環としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロオクタン、シクロオクテン等が挙げられる。
前記多環式脂環としては、ビシクロヘプタン、トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、デカリン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0129】
前記芳香環基と連結する二価の連結基としては、例えば、-S-、-O-、カルボニル基、炭素原子数1~4のアルキレン基若しくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
【0130】
前記芳香環基と連結する二価の連結基に用いられる炭素原子数1~4のアルキレン基としては、前記一般式(2-3)中のX1で用いられるアルキレン基のうち、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
【0131】
前記二価の芳香環含有基において、芳香環を2個以上有していてもよい。芳香環を2個以上有する芳香環含有基としては、例えば、ビフェニレン基、ジフェニルスルフィドから2個の水素原子を引き抜いた基、ベンゾイルフェニレン基等が挙げられる。
【0132】
前記一般式(2-3)中のX1で表される炭素原子数6~20の二価の芳香環含有基としては、具体的には、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)基、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)基、フェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、1-フェニルエチリデン基等が挙げられる。
【0133】
前記一般式(2-2)で表される化合物としては、式中のXが一般式(2-3)において、R1、R2、R3、R6、R7及びR8が炭素原子数1~3のアルキル基であり、R4及びR5が、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基のいずれかであるものが好ましく、R1、R2、R3、R6、R7及びR8が炭素原子数1~3のアルキル基であり、R4及びR5が水素原子であるものがより好ましく、R1、R2、R3、R6、R7及びR8がメチル基であり、R4及びR5が水素原子である化合物が更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
また、j及びkはそれぞれ独立して、1~5の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1~2の整数であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0134】
前記一般式(2-4)において、R10及びR12が炭素原子数1~3のアルキル基であり、且つR9及びR11が水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、R10及びR12がメチル基であり、且つR9及びR11が水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基であるものがより好ましく、R10及びR12がメチル基であり且つ、R9及びR11が水素原子であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0135】
前記一般式(2-3)中のX1は、直接結合又は炭素原子数1~12のアルキレン基であることが好ましく、直接結合又は1~5のアルキレン基であることがより好ましく、直接結合であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0136】
前記フェニレンエーテル骨格を有する樹脂として好適に使用することができる市販品としては、例えば、三菱瓦斯化学社製OPE-2Gly、OPE-2St、OPE-2EA、OPE1200st等のOPE(二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー)シリーズ、SABICジャパン合同会社製ノリル(登録商標)PPO640、SA120、SA90、SA9000等が挙げられる。
【0137】
前記フェニレンエーテル骨格を有する樹脂の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量が、500以上3,000以下であることが好ましく、800以上2,000以下であることがより好ましく、1,000以上1,500以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0138】
前記フェニレンエーテル骨格を有する樹脂の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の樹脂成分100質量部中、3質量部以上75質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上40質量部以下であることが更に好ましく、15質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0139】
前記フェニレンエーテル骨格を有する樹脂の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の固形分100質量部中、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上30質量部以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0140】
前記フェニレンエーテル骨格を有する樹脂の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物100質量部中、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下であることが更に好ましく、3質量部以上10質量部以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0141】
前記フェニレンエーテル骨格を有する樹脂の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前述したエポキシ化ポリブタジエンや、後述する環状エーテル成分等のエポキシ基を含有する前記組成物の全成分100質量部に対して、20質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上300質量部以下であることが更に好ましく、60質量部以上180質量部以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0142】
前記フェニレンエーテル骨格を有する樹脂の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、本開示のエポキシ化ポリブタジエン100質量部に対して、20質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上300質量部以下であることが更に好ましく、60質量部以上180質量部以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0143】
C-3.環状エーテル成分
本開示の組成物は、環状エーテル基を有する化合物(以下、「環状エーテル化合物」と称する場合がある。)を1種又は2種以上含んでいてもよい。
前記環状エーテル基としては、環構造の中にエーテル結合を少なくとも1種有するものであればよく、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。すなわち、環状エーテル成分として、エポキシ化合物又はオキセタン化合物等の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0144】
なお、環状エーテル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物は、環状エーテル化合物に含まれるものとする。
前記エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
なお、前述した「A.エポキシ化ポリブタジエン」はエポキシ基を有するが、当該環状エーテル化合物に該当せず、「エポキシ化ポリブタジエン」に該当するものとする。
同様に、「B.硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤」の項に記載したイオン性化合物、「C-1.エラストマー成分」、「C-2.フェニレンエーテル骨格を有する樹脂」及び後述する「C-4.活性エステル化合物及び/又はカルボン酸無水物化合物」の項に記載した活性エステル化合物並びにカルボン酸無水物化合物のうち、環状エーテル基を有する化合物も当該環状エーテル化合物に含まれないものとする。
また、環状エーテル基と共にアルコキシシリル基を有する化合物は、通常、シランカップリング剤に分類されるものであり、前記環状エーテル化合物には該当しないものとする。例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基と共にアルコキシシリル基を有する化合物は、通常、シランカップリング剤に分類されるものであり、環状エーテル成分としてのエポキシ化合物に該当しないものとする。
【0145】
前記環状エーテル化合物として用いられるエポキシ化合物には、前述したエポキシ化ポリブタジエン、イオン性化合物、エラストマー成分、フェニレンエーテル骨格を有する樹脂、活性エステル化合物、カルボン酸無水物化合物及びアルコキシシリル基を有する化合物を除く、エポキシ基を含む全ての化合物が含まれるものとする。例えば、エポキシ基及びオキセタン基の両者を含む化合物は、エポキシ化合物に該当するものとする。
このようなエポキシ化合物としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物及び複素環含有エポキシ化合物等が挙げられる。
【0146】
前記芳香族エポキシ化合物とは、芳香環及びエポキシ基を有し、複素環を含有しない化合物を意味する。芳香環及び脂環を有する化合物は、芳香族エポキシ化合物に該当するものとする。
【0147】
前記芳香環としては、単環構造の芳香環又は縮合多環構造の芳香環が挙げられ、それらを1種又は2種以上含んでいてもよい。
単環構造の芳香環としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、2,4,6-トリメチルベンゼン等が挙げられる。
縮合多環構造の芳香環は、芳香環を含む縮合環を表し、例えば、芳香環で形成される縮合環と、芳香環と脂環とで形成される縮合環を表す。前記縮合多環構造の芳香環の具体例としては、例えば、ペンタレン環、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、ヘプタレン環、ビフェニレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、テトラセン環、トリフェニレン環、ピレン環等が挙げられる。
本開示においては、芳香環がベンゼン環であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0148】
前記脂環としては、フェニレンエーテル骨格を有する樹脂にて用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0149】
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の一価のフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル化物;少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ化合物;レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール類のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノール、ベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル;スチレンオキサイド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
【0150】
前記芳香族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、国際公開13/172145号、特開2020-55993号公報等に記載されるものを挙げることができる。
【0151】
前記脂肪族エポキシ化合物は、エポキシ基を有し、芳香環及び複素環を含まない化合物を表す。
前記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物及び鎖状エポキシ化合物等が挙げられる。
前記脂環式エポキシ化合物とは、脂環を有する脂肪族エポキシ化合物を意味する。
前記鎖状エポキシ化合物とは、脂環を含まない脂肪族エポキシ化合物を意味する。
本開示の組成物においては、脂肪族エポキシ化合物が脂環式エポキシ化合物であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0152】
前記脂環式エポキシ化合物は、脂環を有する脂肪族エポキシ化合物である。前記脂環としては、「芳香族エポキシ化合物」の項で記載した脂環と同様の内容とすることができる。
【0153】
また、前記脂環式エポキシ化合物は、シクロアルケンオキサイド構造を有するエポキシ化合物であってもよい。
前記シクロアルケンオキサイド構造は、シクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド構造やシクロペンテンオキサイド構造のように、脂肪族環とエポキシ環とが環構造の一部を共有する構造である。また、このようなシクロアルケンオキサイド構造のシクロアルカン中の水素原子を1つ除いた基を「エポキシシクロアルキル基」と称する場合がある。
【0154】
前記脂環式エポキシ化合物として、より具体的には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、N,N,N’,N’-テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-シクロヘキサンジメタンアミン、ジグリシジル-オクタヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン等を挙げることができる。
【0155】
前記鎖状エポキシ化合物は、脂環を含まない脂肪族エポキシ化合物である。
前記鎖状エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー、等が挙げられる。
代表的な化合物として、ジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル等の、多価アルコールのグリシジルエーテル、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種、又は、2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、及び脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。
更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、又はこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル等が挙げられる。
【0156】
前記脂肪族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、国際公開2019/177134号、特許第6103653号公報等に記載のものを挙げることができる。
【0157】
前記複素環含有エポキシ化合物は、複素環を含有するエポキシ化合物を表す。芳香環及び複素環を含有するエポキシ化合物は、複素環含有エポキシ化合物に該当するものとする。
前記複素環としては、環を構成する原子が炭素原子以外の原子を含み、芳香族性を有しないものであればよい。このような複素環としては、例えば、環骨格構成原子中のヘテロ原子が窒素のみである複素環、環骨格構成原子のヘテロ原子が酸素のみである複素環、環骨格構成原子のヘテロ原子が窒素及び酸素のみである複素環、及び環骨格構成原子のヘテロ原子が硫黄のみである複素環等が挙げられる。
環骨格構成原子中のヘテロ原子が窒素のみである複素環としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロカルバゾール環、カプロラクタム環、イソシアヌル環及びヒダントイン環等が挙げられる。本開示においては、環骨格構成原子中のヘテロ原子が窒素のみである複素環がカルボニル基を有するもの、具体的には、カプロラクタム環、イソシアヌル環及びヒダントイン環等であることが好ましい。前記組成物の硬化物が、電気特性及び接着性に一層優れるものとなるからである。
環骨格構成原子のヘテロ原子が酸素のみである複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン環、ジヒドロベンゾフラン環及びテトラヒドロピラン環等が挙げられる。
環骨格構成原子のヘテロ原子が窒素及び酸素のみである複素環としては、例えば、モルホリン環等が挙げられる。
環骨格構成原子のヘテロ原子が窒素及び硫黄のみである複素環としては、例えば、チオモルホリン環等が挙げられる。
本開示においては、複素環が、環骨格構成原子中のヘテロ原子が窒素のみである複素環であることが好ましく、カルボニル基を有し且つ環骨格構成原子中のヘテロ原子が窒素のみである複素環であることがより好ましく、イソシアヌル環であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0158】
前記複素環含有エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、特開2022-018893号公報、特開2016-141799号公報に記載のものを挙げることができる。
【0159】
前記オキセタン化合物は、オキセタン環を有し、エポキシ基を有しない化合物である。
このようなオキセタン化合物としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4-フルオロ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4-メトキシ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等を挙げることができる。
【0160】
前記環状エーテル成分の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の樹脂成分100質量部中、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上40質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0161】
前記環状エーテル成分の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の固形分100質量部中、0.1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上40質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0162】
前記環状エーテル成分の含有量は、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物100質量部中、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上7質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0163】
C-4.活性エステル化合物及び/又はカルボン酸無水物化合物
本開示の組成物は、活性エステル化合物又はカルボン酸無水物化合物を含有することで、硬化物の物性を良好に維持したまま、比誘電率及び誘電正接を低くすることができる。
本開示の組成物は、活性エステル化合物のみを含む場合、カルボン酸無水物化合物を含む場合、活性エステル化合物及びカルボン酸無水物化合物の両方を含む場合のいずれかであってもよいが、活性エステル化合物を含む場合が好ましく、活性エステル化合物のみを含む場合がより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0164】
本開示の組成物は、活性エステル化合物及びカルボン酸無水物化合物の合計の含有量が、組成物の固形分100質量部中、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、3質量部以上35質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上30質量部以下であることが更に好ましく、7質量部以上25質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0165】
前記活性エステル化合物は、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物である。活性エステル基は、多価カルボン酸化合物のカルボキシ基と、フェノール性水酸基を有する化合物(以下、「フェノール性化合物」と称する場合がある。)のフェノール性水酸基とがエステル化反応(縮合反応)をすることで形成されるエステル結合である。但し、「B. 硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤」の項目にて前述したイオン性化合物は、当該活性エステル化合物から除くものとする。
本開示の組成物において、活性エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0166】
前記多価カルボン酸化合物としては、カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸化合物、カルボキシ基を2個以上有する芳香族カルボン酸化合物等が挙げられる。
前記カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸若しくはこれらのアルキルエステル(例えば、炭素原子数1~3以下のアルキル基とエステル結合したもの)等が挙げられる。
前記カルボキシ基を2個以上有する芳香族カルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、ピロメリット酸若しくはこれらのアルキルエステル(例えば、炭素原子数1~3以下のアルキル基とエステル結合したもの)等が挙げられる。
【0167】
本開示においては、前記多価カルボン酸化合物が、芳香族カルボン酸化合物であることが好ましく、フタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸であることがより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0168】
前記フェノール性化合物としては、フェノール性水酸基を2個以上有するものであることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0169】
前記フェノール性水酸基を2個以上有するフェノール性化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等のジヒドロキシベンゼン類;ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールE、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS等のビスフェノール類、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;フェノールフタリン、フェノール性水酸基を2個以上有するジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリヒドロキシベンゾフェノン、ベンゼントリオール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0170】
本開示の組成物においては、前記フェノール性化合物は、ビスフェノール類、ジヒドロキシナフタレン類、フェノール性水酸基を2個以上有するジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂であることが好ましく、ビスフェノール類であることがより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0171】
また、前記活性エステル化合物としては、芳香族カルボン酸化合物と、フェノール性化合物とがエステル化反応した化合物であることが好ましく、カルボキシ基を2個以上有する芳香族カルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を2個以上有するフェノール性化合物とがエステル化反応した化合物であることがより好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0172】
前記重合体として、好適に使用することができる市販品としては、ユニチカ(株)製の「Uポリマー(登録商標)」、「ユニファイナー(登録商標)」シリーズ、住友化学社「エコノール」シリーズ、セラニーズ社(米国)製の「デュレル」シリーズ、デュポン社製「アリロン」シリーズ等が挙げられる。
【0173】
前記活性エステル化合物の分子量としては、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量が、500以上30,0000以下であることが好ましく、800以上10,000以下であることがより好ましく、1,000以上4,000以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0174】
本開示の組成物が、活性エステル化合物を含有する場合、活性エステル化合物の含有量としては、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の樹脂成分100質量部中、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上30質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以上25質量部以下であることが特に好ましい。前記組成物は、電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0175】
本開示の組成物が、活性エステル化合物を含有する場合、活性エステル化合物の含有量としては、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の固形分100質量部中、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上30質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以上25質量部以下であることが特に好ましい。前記組成物は、電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0176】
本開示の組成物が、活性エステル化合物を含有する場合、活性エステル化合物の含有量としては、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物100質量部中、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以上7質量部以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0177】
前記カルボン酸無水物化合物とは、2分子のカルボン酸を脱水縮合して環状構造を形成した化合物を意味する。前記カルボン酸無水物化合物としては、例えば、脂環を含み、芳香環を含まない脂環式カルボン酸無水物化合物や、芳香環を含む芳香族カルボン酸無水物化合物が挙げられる。
【0178】
前記脂環式カルボン酸無水物化合物とは、2分子のカルボン酸を脱水縮合して脂環の環状構造を有する構造の化合物を意味する。この脂環は、環構造中に炭素-炭素不飽和結合を一部有していてもよい。また、脂環は橋かけ構造を有していてもよい。橋かけ構造の脂環としては、例えば、ビシクロ環が挙げられる。
前記脂環は、単環であってもよく、多環構造であってもよい。
前記脂環は、5員環~10員環であることが好ましく、5員環~8員環であることが好ましく、6員環又は8員環であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0179】
前記脂環は、1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよい。
前記脂環が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシル基、炭素原子数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6~20のアリール基及びカルボキシ基等が挙げられる。
【0180】
前記脂環の置換基としての炭素原子数1~10のアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記鎖状のアルキル基としては、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。分岐を有するアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソアミル基、tert-アミル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、tert-オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基等が挙げられる。
【0181】
前記環状のアルキル基としては、例えば、シクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基等が挙げられる。
【0182】
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、アダマンチル基、デカハイドロナフチル基等が挙げられる。
【0183】
前記シクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、シクロノニルメチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、2-シクロヘプチルエチル、2-シクロオクチルエチル、3-シクロブチルプロピル、3-シクロペンチルプロピル、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘプチルプロピル、4-シクロブチルブチル、4-シクロペンチルブチル等が挙げられる。
【0184】
前記脂環の置換基としての炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、前記炭素原子数1~10のアルキル基とエーテル結合が結合した基を表し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0185】
前記炭素原子数2~10のアシル基は、脂肪族のアシル基を表し、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、メタクリロイル基、オクタノイル基等が挙げられる。
【0186】
前記炭素原子数2~10のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0187】
前記炭素原子数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、アズレニル基等が挙げられる。
【0188】
本開示においては、前記カルボン酸無水物化合物が、脂環式カルボン酸無水物化合物であることが好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0189】
前記化合物の具体例としては、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロイソベンゾフラン-1,3-ジオン、ヘキサヒドロ-5-メチルイソベンゾフラン-1,3-ジオン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-メチルヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-2,3-ジオン、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0190】
前記脂環式カルボン酸無水物化合物として好適に使用することができる市販品としては、例えば、リカシッド(登録商標)MH、MH-700、MH-700G、MH-T、MTA-15、HNA-100(以上、新日本理化(株)製)、HN-2200、HN-2000、HN-5500、MHAC-P(以上、昭和電工マテリアルズ(株)製)等が挙げられる。
【0191】
本開示の組成物において、カルボン酸無水物化合物として脂環式カルボン酸無水物化合物を含む場合、脂環式カルボン酸無水物化合物の含有量は、カルボン酸無水物化合物100質量部中、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることが更に好ましく、100質量部、すなわち、脂環式カルボン酸無水物化合物のみを含むことが特に好ましい。脂環式カルボン酸無水物化合物の含有量が前述の範囲内であることで、電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
【0192】
前記芳香族カルボン酸無水物化合物は、2分子のカルボン酸を脱水縮合して芳香環の環状構造を有する化合物を表す。この芳香環は、1つ、又は、2つ以上の置換基を有していてもよい。
前記芳香環が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシル基、炭素原子数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6~20のアリール基及びカルボキシ基等が挙げられる。これらの置換基は、脂環式カルボン酸無水物化合物の置換基と同様とすることができる。
【0193】
前記芳香族カルボン酸無水物化合物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート酸二無水物、2,2′,3,3′-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0194】
前記芳香族カルボン酸無水物化合物として好適に使用することができる市販品としては、例えば、リカシッド(登録商標)TMEG-S、TMEG-100、TMEG-200、TMEG-500、TECG-600、TMTA-C、TDA-100、MTA-15(以上、新日本理化(株)製)等が挙げられる。
【0195】
本開示の組成物が、カルボン酸無水物化合物を含有する場合、カルボン酸無水物化合物の含有量としては、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の樹脂成分100質量部中、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上30質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以上25質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
本開示においては、前記カルボン酸無水物化合物の含有量は、前記組成物の樹脂成分100質量部中、11質量部以上15質量部以下であることが最も好ましい。前記組成物は、誘電正接がより抑制された硬化物を形成することができるからである。
【0196】
本開示の組成物が、カルボン酸無水物化合物を含有する場合、カルボン酸無水物化合物の含有量としては、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の固形分100質量部中、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上30質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以上25質量部以下であることが特に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
本開示においては、前記カルボン酸無水物化合物の含有量は、前記組成物の固形分100質量部中、8.5質量部以上11質量部以下であることが最も好ましい。前記組成物は、誘電性正接がより抑制された硬化物を形成することができるからである。
【0197】
本開示の組成物が、カルボン酸無水物化合物を含有する場合、カルボン酸無水物化合物の含有量としては、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物100質量部中、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以上7質量部以下であることが更に好ましい。電気特性と接着性の両方に優れた組成物を提供することができるからである。
本開示においては、前記カルボン酸無水物化合物の含有量は、前記組成物100質量部中、2.1質量部以上3質量部以下であることが特に好ましい。前記組成物は、誘電性正接がより抑制された硬化物を形成することができるからである。
【0198】
C-5.溶剤
本開示の組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。
前記溶剤は、常温(25℃)大気圧下で液状であり、組成物中の各成分を分散又は溶解可能なものであり、前記エポキシ化ポリブタジエン、硬化剤、硬化促進剤及び重合開始剤、エラストマー成分、フェニレンエーテル骨格を有する樹脂、環状エーテル成分、活性エステル化合物並びにカルボン酸無水物化合物と反応しないものである。
また、前記溶剤は、前記組成物の各成分を分散又は溶解するために用いられるものであるため、それら成分が常温(25℃)大気圧下で液状であっても、前記溶剤には含まれない。
【0199】
このような溶剤としては、水、有機溶剤のいずれも用いることができるが、有機溶剤を好ましく用いることができる。
【0200】
前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、1-t-ブトキシ-2-プロパノール、シクロヘキサノールアセテート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて混合溶剤として使用してもよい。
前記有機溶剤の中でも、ケトン類、アルコール系溶剤、エーテルエステル系溶剤又は芳香族系溶剤等であることが好ましく、ケトン類又は芳香族系溶剤であることがより好ましい。前述した各成分の溶解性が高いからである。
【0201】
前記溶剤の含有量は、前記組成物が、所望の電気特性及び接着性が得られるものであれば、特に制限されるものではないが、前記組成物の固形分100質量部に対し、1質量部以上1,000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上800質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上400質量部以下であることが更に好ましく、250質量部以上350質量部以下であることが特に好ましい。前述した各成分を均一に分散又は溶解することができるからである。
【0202】
C-6.その他の樹脂成分
本開示の組成物は、前記組成物中の各成分以外の樹脂をさらに含有することができる。
前記樹脂としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリイミド;ポリウレタン;エポキシ樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられ、これらの基材は1種又は2種以上の混合樹脂として使用することができる。
【0203】
C-7.その他の添加剤等
本開示の組成物は、前記組成物中の各成分以外の添加剤等をさらに含有することができる。
本開示の組成物には、付着付与剤;軟化剤;耐光性付与剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物;可塑剤;安定剤;消泡剤;レベリング剤;分散剤;難燃剤;滑剤;帯電防止剤;無機微粒子;分散剤;分散助剤;p-アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、t-ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;接着促進剤;充填剤;表面調整剤;凝集防止剤;触媒;架橋剤;増粘剤;連鎖移動剤;増感剤;シランカップリング剤;界面活性剤:ブルーイング剤:各種染顔料:流動改質剤:耐衝撃性向上剤:バインダー樹脂:等の慣用の添加物を加えることができる。
【0204】
前記その他の樹脂成分及び添加剤等の含有量は、組成物100質量部中に、50質量部以下とすることができる。
【0205】
D.その他
本開示の組成物の製造方法としては、前記エポキシ化ポリブタジエン及び、硬化剤等の各成分を所望の配合量含むことができる方法であればよく、公知の混合手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、必要により加熱処理しながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより製造することができる。この場合の、撹拌、溶融、混合、分散に使用する装置は特に限定されるものではなく、本開示においては、撹拌器、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、遊星攪拌機等を使用することができる。また、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0206】
前記組成物の用途としては、電気特性及び接着性が要求される用途であれば特に限定されるものではないが、例えば、接着剤、プリント配線基板のレジスト材料の他、レジストインキ、カーフィルター用顔料レジストインキ、半導体封止剤、インキ、プラスチック塗料、紙印刷、フィルムコーティング、ガラスコーティング、飛散防止塗料、家具塗装等の種々のコーティング分野、FRP、ライニング、更にエレクトロニクス分野における絶縁ワニス、絶縁シート、積層版、プラズマディスプレイパネル、ディスプレイ素子等の表示媒体や、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体、絶縁材、構造材、光導波路クラッド等を挙げることができ、これらの中でも特に5G用途に用いられるものに好適である。
【0207】
本開示においては、前記用途が、接着剤であることが好ましく、導電性材料と絶縁性材料との接着用、又は絶縁性材料と絶縁性材料との接着用であることがより好ましい。接着性及び電気特性に優れるという効果が最大限発揮できるからである。
前記組成物が接着剤に用いられる場合、接着対象として用いられる絶縁性材料としては、回路基板において絶縁性基材に用いられる材料を挙げることができる。
このような絶縁性材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)、フッ素樹脂(PTFE等)、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー(LCP)等の有機絶縁性材料、ガラス等の無機酸化物材料等が挙げられる。
導電性材料と、絶縁性材料との組み合わせとしては、液晶ポリマーのフィルムと、銅箔とを張り合わせた積層体等のように、金属材料又は炭素材料等の導電性材料と、有機絶縁性材料との組み合わせを挙げることができる。
絶縁性材料と、絶縁性材料との組み合わせとしては、液晶ポリマーのフィルムと、液晶ポリマーのフィルムとを張り合わせた積層体等のように、有機絶縁性材料と有機絶縁性材料との組み合わせ、液晶ポリマー等の有機絶縁性材料とガラス等の無機酸化物材料との組み合わせを挙げることができる。
【0208】
2.接着剤
次に、本発明の接着剤について説明する。
本開示の接着剤は、前記「1.組成物」に記載の本開示の組成物からなる、接着剤である。
【0209】
本発明によれば、前記組成物を用いることで、電気特性と接着性の両方に優れた接着剤を提供することができる。
なお、前記組成物については、前記「1.組成物」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0210】
接着剤の塗布方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター等の溶液キャスティング法、各種の印刷、浸漬、転写等の公知の方法により基材上に塗布又は塗膜を形成するものである。成形された組成物の形状は前記方法で製造できるものであれば立体的なものからシート状のものまで限定されない。
【0211】
3.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、本開示の組成物の硬化物であり、前記「2.接着剤」に記載の本開示の接着剤の硬化物であることが好適である。
【0212】
本発明によれば、電気特性と接着性の両方に優れた硬化物を提供することができる。
なお、前記接着剤については、前記「2.接着剤」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0213】
本開示の硬化物は、ISO規格29862に準拠して測定した90度ピール試験において、接着力が3MPa以上であることが好ましく、4MPa以上であることがより好ましい。
【0214】
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の組成物に対して、活性エネルギー線を照射する工程、又は加熱する工程を含む。
【0215】
本工程において、組成物の硬化に用いられるエネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストローム~7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができる。好ましくは、波長300~450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯、発光ダイオード等が用いられる。カチオン重合性成分の重合が容易だからである。
【0216】
エネルギー線の照射量に特に制限はなく、組成物の組成によって適宜決定することができる。上記照射量は、組成物中の成分の劣化防止の観点から、照射量は365nmにおいて、100mJ/cm2~2000mJ/cm2が好ましい。
【0217】
本工程において、上記硬化方法が、加熱する方法を用いてもよい。例えば、エネルギー線を照射する方法及び加熱する方法を併用してもよく、2つの方法をこの順でおこなってもよい。組成物の硬化を効率的に進めることができるからである。
【0218】
本工程における組成物の塗膜を加熱する方法としては、ホットプレート等の熱板や、大気オーブン、イナートガスオーブン、真空オーブン、熱風循環式オーブン等を用いる方法が挙げられる。
塗膜を加熱する際の加熱温度としては、特に限定されないが、60℃以上250℃以下であることが好ましく、80℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0219】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。前記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0220】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0221】
[合成例1] (エポキシ化ポリブタジエンA1(エポキシ当量396)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン、分子量1200)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)8.87gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.3gを得た。収率は91%であった。エポキシ当量(JIS K7236に準拠して測定。以降同様。)は396g/eqであった。また、数平均分子量(GPCにより測定。以降同様。)は1300であった。
【0222】
[合成例2] (エポキシ化ポリブタジエンA2(エポキシ当量610)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)6.90gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.2gを得た。収率は92%であった。エポキシ当量は610g/eqであった。また、数平均分子量は1300であった。
【0223】
[合成例3] (エポキシ化ポリブタジエンA3(エポキシ当量695)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)5.42gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.1gを得た。収率は91%であった。エポキシ当量は695g/eqであった。また、数平均分子量は1300であった。
【0224】
[合成例4](エポキシ化ポリブタジエンA4(エポキシ当量801)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)4.93gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.2gを得た。収率は92%であった。エポキシ当量は801g/eqであった。また、数平均分子量は1300であった。
【0225】
[合成例5](エポキシ化ポリブタジエンA5(エポキシ当量799)、分子量2200)
反応容器にB-2000(日本曹達製ポリブタジエン、分子量2100)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)4.93gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.2gを得た。収率は92%であった。エポキシ当量は799g/eqであった。また、数平均分子量は2200であった。
【0226】
[合成例6](エポキシ化ポリブタジエンA6(エポキシ当量791)、分子量3300)
反応容器にB-3000(日本曹達製ポリブタジエン、分子量3200)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)4.93gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.3gを得た。収率は93%であった。エポキシ当量は791g/eqであった。また、数平均分子量は3300であった。
【0227】
[合成例7](エポキシ化ポリブタジエンA7(エポキシ当量153)、分子量1400)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)24.7gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.9gを得た。収率は90%であった。エポキシ当量は153g/eqであった。また、数平均分子量は1400であった。
【0228】
[合成例8] (エポキシ化ポリブタジエンA8(エポキシ当量230)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)14.8gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.6gを得た。収率は91%であった。エポキシ当量は230g/eqであった。また、数平均分子量は1300であった。
【0229】
[合成例9](エポキシ化ポリブタジエンA9(エポキシ当量302)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)12.3gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.3gを得た。収率は92%であった。エポキシ当量は302g/eqであった。また、数平均分子量は1300であった。
【0230】
[合成例10] (エポキシ化ポリブタジエンA10(エポキシ当量877)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)4.44gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.3gを得た。収率は93%であった。エポキシ当量は877g/eqであった。また、数平均分子量は1300であった。
【0231】
[合成例11] (エポキシ化ポリブタジエンA11(エポキシ当量1130)、分子量1300)
反応容器にB-1000(日本曹達製ポリブタジエン)10.8g、ジクロロメタン400mLを入れて溶解させた。メタクロロ過安息香酸(30質量%の水を含有)3.45gを添加し、室温で12時間反応させた。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。その後、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して、透明粘性液体のエポキシ化ポリブタジエン10.3gを得た。収率は93%であった。エポキシ当量は1130g/eqであった。また、数平均分子量は1300であった。
【0232】
(エポキシ化ポリブタジエンまたはその他のエポキシ化合物)
A12:JP-200(日本曹達製、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ当量210~240、分子量2200)
A13:EP-4100E(ADEKA製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)
【0233】
(潜在性硬化剤)
B1:1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(潜在性硬化剤、イオン性液体化合物、含窒素複素環カチオンとシアナート系アニオンの塩)
【0234】
(エラストマー成分)
C1:DYNARON9901P(JSR製SEBS、スチレンに由来するユニットの含量53質量%、MFR230℃、2.16kgf:3.3g/10min、比重0.97)
【0235】
(フェニレンエーテル骨格を有する樹脂)
D1:OPE1200st(三菱瓦斯化学株式会社製、前記一般式(2-2)で示される変性ポリフェニレンエーテル(前記一般式(2-3)におけるR1、R2、R3、R6、R7、R8がメチル基であり、R4、R5が水素原子であり、X1が直接結合であり、及びkが1であり、一般式(2-4)におけるR10、R12がメチル基であり、R9、R11が水素原子である樹脂)、Mn=1200)
【0236】
(溶剤)
E1:メチルエチルケトン(MEK)
【0237】
[評価]
1.硬化物1の電気特性
(組成物1の調製)
エポキシ化ポリブタジエンA1を10.0g、SI-100(三新化学工業社製、芳香族スルホニウム塩、熱カチオン重合開始剤)を1.00g、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を1.00gを容器に入れ、プラネタリーミキサーを用いて均一に混合し、実施例1-1の組成物を得た。
エポキシ化ポリブタジエンA1の代わりにエポキシ化ポリブタジエンA2~A12及びその他のエポキシ化合物A13をそれぞれ用いた以外は上記の実施例1-1の組成物の調製と同様にして、それぞれ組成物1である実施例1-2~1-6、比較例1-7~1-13の各組成物を得た。
【0238】
(硬化物1の作製)
前記各組成物1(実施例1-1~1-6、比較例1-7~1-13の各組成物)をそれぞれ離型処理したガラス容器(内径22mm)に、厚さが1.0cmになる様に入れた。容器ごとオーブンに入れ、60℃で1時間、100℃で1時間、180℃で1時間加熱し、硬化させた。冷却後に容器から取り出し、硬化物1(実施例1-1~1-6、比較例1-7~1-13の各硬化物)を得た。
【0239】
(電気特性の測定)
硬化物1を鑢で平滑にした後、直径22mm×厚さ8~10mmの試験片に対し、誘電率測定装置(AET製、同軸共振器MS46122B)を用いて、周波数10GHzの条件で23℃にて比誘電率及び誘電正接を測定し、以下の基準で評価を行った。結果を表1に示す。
【0240】
<評価基準>
(比誘電率)
○:2.3以下
△:2.3超え2.4以下
×:2.4超え
なお、比誘電率が小さいほど、電気特性に優れる(低誘電性である)と判断できる。
【0241】
(誘電正接)
○:0.010以下
△:0.010超え0.015以下
×:0.015超え
なお、誘電正接が小さいほど、電気特性に優れると判断できる。
【0242】
【0243】
2.硬化物2の電気特性及び接着性
(組成物2の調製)
下記表2に示す通りに各原料を容器に入れ、プラネタリーミキサーを用いて均一に混合し、組成物2(実施例2-1~2-6、比較例2-7~2-13の各組成物)を得た。表2の配合の単位は質量部である。
【0244】
(硬化物2の作製)
組成物2を離型処理したガラス容器(内径22mm)に、厚さが4.0cmになる様に入れた。容器ごとオーブンに入れ、60℃で1時間、100℃で2時間、180℃で1時間加熱し、硬化させた。冷却後に容器から取り出し、硬化物2(実施例2-1~2-6、比較例2-7~2-13の各硬化物)を得た。
【0245】
(電気特性の測定)
硬化物2を鑢で平滑にした後、直径22mm×厚さ8~10mmの試験片に対し、誘電率測定装置(AET製、同軸共振器MS46122B)を用いて、周波数10GHzの条件で23℃にて比誘電率及び誘電正接を測定し、以下の基準で評価を行った。結果を表2に示す。
【0246】
<評価基準>
(比誘電率)
◎:2.2以下
○:2.2超え2.3以下
△:2.3超え2.4以下
×:2.4超え
なお、比誘電率が小さいほど、電気特性に優れる(低誘電性である)と判断できる。
【0247】
(誘電正接)
◎:0.003以下
○:0.003超え0.004以下
△:0.004超え0.005以下
×:0.005超え
なお、誘電正接が小さいほど、電気特性に優れると判断できる。
【0248】
(接着性の評価)
前記組成物2を、第1の基材であるポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトン100H」)上に、硬化後の厚み(接着層の厚み)が25μmとなるようにバーコーターで塗布し、次いで、80℃で3分間加熱することで、溶剤を除去した。
次いで、乾燥後の塗膜上に第2の基材である銅箔(福田金属箔工業製「CF-T49A-DS-HD2-12」)を重ね合わせたあと、真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「V130」)を用いてラミネート処理(30秒かけて2.0hPa以下に減圧した後、100℃で、0.5MPaの圧力で30秒間圧着)を行い、0.01MPaの圧力をかけながら、180℃で60分間加熱処理を行い、評価用サンプルを得た。
この評価用サンプルを用いて、ISO規格29862に準拠して、90度ピール試験を行った。測定装置として、卓上荷重測定器FTN1-13A(アイコーエンジニアリング(株)製)を用い、測定温度25℃、引張速度5mm/minの条件で、第1の基材のポリイミドを90°方向に引っ張り、ポリイミドフィルムが第2の基材から剥離する際の最大強度を接着力(MPa)として評価を行った。結果を表2に示す。
【0249】
<評価基準>
◎:4MPa以上
○:3MPa以上~4MPa未満
△:2MPa以上~3MPa未満
×:2MPa未満
なお、接着力(MPa)が大きい程、接着性に優れると判断できる。
【0250】
【0251】
表1及び表2から、エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量が所定範囲内である本発明の各実施例の組成物は、比誘電率、誘電正接等の電気特性、及び接着力が両立できることが判る。一方、エポキシ当量が本発明の範囲外であるエポキシ化ポリブタジエン又はエポキシ化ポリブタジエン以外のエポキシ化合物を用いた組成物は、硬化物の電気特性又は接着力が実施例の組成物に比して劣る。