(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103470
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】単色化された荷電粒子源におけるゼロロスピークを狭めるための技術
(51)【国際特許分類】
H01J 37/05 20060101AFI20240725BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20240725BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20240725BHJP
G01N 23/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01J37/05
H01J37/26
G01N23/04
G01N23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006479
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】63/480,868
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヘンストラ
(72)【発明者】
【氏名】アリ モハマディ-ゲイダーリ
【テーマコード(参考)】
2G001
5C101
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA12
2G001BA16
2G001CA03
2G001EA01
2G001EA09
2G001GA01
2G001HA13
2G001JA02
2G001JA04
2G001KA13
5C101AA04
5C101AA23
5C101EE34
5C101EE38
5C101EE59
5C101EE69
(57)【要約】
【課題】 荷電粒子光学装置、システム、及び方法を提供すること。
【解決手段】 荷電粒子光学装置は、実質的にビーム軸上に配置された分散要素を含むことができ、分散要素は、ビーム軸に平行な分散平面内のエネルギーによって荷電粒子のビームの粒子を分散させるように構成される。荷電粒子光学装置は、第1のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置でビーム軸上に配置されたセレクタを含むことができる。荷電粒子光学装置は、非分散要素を含むことができる。荷電粒子光学装置は、ビーム軸上の第2のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置でセレクタの下流のビーム軸上に配置されたカットオフを含むことができる。第2のクロスオーバ平面は、第1のクロスオーバ平面の下流にあり得る。カットオフは、電子に対して不透明であり、ビーム軸と実質的に位置合わせされた開口を画定する材料を含むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子光学装置であって、
ビーム軸上に配置された分散要素であって、前記ビーム軸に平行な分散平面内のエネルギーによって荷電粒子のビームの粒子を分散させるように構成されている、分散要素と、
第1のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置で前記ビーム軸上に配置されたセレクタと、
非分散要素であって、前記分散平面内のエネルギーによって前記荷電粒子のビームの粒子を少なくとも部分的に非分散するように構成されている、非分散要素と、
前記ビーム軸上の第2のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置で前記セレクタの下流の前記ビーム軸上に配置されたカットオフであって、前記第2のクロスオーバ平面が、前記第1のクロスオーバ平面の下流にあり、前記カットオフが、電子に対して不透明である材料を含み、前記ビーム軸と実質的に位置合わせされた開口を画定する、カットオフと、を備える、荷電粒子光学装置。
【請求項2】
1/1000限界において約80meV以下のターゲットエネルギーからのエネルギー偏差を有する荷電粒子のビームを出力するように構成されており、1/1000限界が、前記ターゲットエネルギーにおけるエネルギー分布のピークよりも1000倍小さい電子ビームのエネルギー分布の値に対応する、請求項1に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項3】
前記カットオフが、ダブルナイフエッジ又はスリットを使用して、前記開口を画定する、請求項1に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項4】
前記開口が、クロスオーバポイントにおいて前記ビーム軸を横切る方向における約200nm~約700nmの幅によって特徴付けられる、請求項1又は3に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項5】
前記開口が、クロスオーバポイントにおいて前記ビーム軸を横切る方向における約300nmの幅によって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項6】
前記エネルギー偏差が、1/1000限界において約50meVである、請求項2に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項7】
前記エネルギー偏差が、1/1000限界において約25meVである、請求項2又は6に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項8】
前記エネルギー偏差が、1/1000限界において約15meVである、請求項2又は6に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項9】
複数のクロスオーバ平面が、前記非分散要素の下流の前記ビーム軸上に画定され、第2のクロスオーバが、前記複数のクロスオーバ平面の前記非分散要素に最も近い、請求項1~3のいずれか一項に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項10】
第3のクロスオーバ平面が、前記非分散要素と前記第2のクロスオーバ平面との間の前記ビーム軸上に画定される、請求項2に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項11】
前記電子ビームが、線集束ビーム又は点集束ビームである、請求項2に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項12】
前記分散要素が、第1のウィーンフィルタを備え、前記非分散要素が、前記第1のウィーンフィルタの下流に第2のウィーンフィルタを備え、前記セレクタが、前記第1のウィーンフィルタと前記第2のウィーンフィルタとの間の前記ビーム軸上又はその近くに配置されたスリットを備える、請求項1に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項13】
前記第1のウィーンフィルタが、Pi分散要素であり、前記第2のウィーンフィルタが、Pi非分散要素である、請求項12に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項14】
前記第1のウィーンフィルタが、半-Pi分散要素であり、前記第2のウィーンフィルタが、半-Pi非分散要素である、請求項12に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項15】
前記分散要素、前記セレクタ、及び前記非分散要素がともに、完全非分散モノクロメータの少なくとも一部を形成する、請求項1に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項16】
前記ビーム軸が、モノクロメータ内で湾曲している、請求項14に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項17】
前記モノクロメータが、ミラーモノクロメータ又はΩ型モノクロメータである、請求項16に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項18】
前記セレクタの下流の前記ビーム軸上に配置されており、前記クロスオーバ平面、前記第2のクロスオーバ平面、又は前記第3のクロスオーバ平面において、前記電子ビームを前記ビーム軸上に収束させるように構成された1つ以上の電子レンズを更に備える、請求項10に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項19】
前記1つ以上のレンズが、電磁レンズ又は静電レンズを備える、請求項18に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項20】
前記1つ以上のレンズが、静電加速セクション又は静電減速セクションを備える、請求項18に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項21】
前記1つ以上のレンズのうちの1つ以上のレンズの下流、及び前記クロスオーバ平面の上流に配置された非分散要素を更に備える、請求項18に記載の荷電粒子光学装置。
【請求項22】
透過型電子顕微鏡であって、
ビーム軸に沿って位置合わせされた電子ビームを生成するように構成された電子源と、
ビーム軸上に配置されたモノクロメータであって、
ビーム軸上に配置された分散要素であって、前記ビーム軸に平行な分散平面内のエネルギーによって荷電粒子のビームの粒子を分散させるように構成されている、分散要素と、
第1のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置で前記ビーム軸上に配置されたセレクタと、
非分散要素であって、前記分散平面内のエネルギーによって前記荷電粒子のビームの粒子を少なくとも部分的に非分散するように構成されている、非分散要素と、
前記ビーム軸上の第2のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置で前記非分散要素の下流の前記ビーム軸上に配置されたカットオフであって、電子に対して不透明である材料を含み、前記ビーム軸上に位置合わせされた開口を画定する、カットオフと、を備える、モノクロメータと、を備える、透過型電子顕微鏡。
【請求項23】
前記透過型電子顕微鏡が、1/1000限界において約80meV以下のターゲットエネルギーからのエネルギー偏差を有する電子ビームを出力するように構成されている、請求項22に記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項24】
前記電子源と前記モノクロメータとの間の前記ビーム軸上に配置された電子光学要素を更に備える、請求項22に記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項25】
前記電子光学要素が、電磁レンズ又は静電レンズを備える、請求項24に記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項26】
前記電子光学要素が、加速要素又は減速要素を備える、請求項24に記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項27】
前記電子光学要素が、前記ビームを前記ビーム軸に向かって集束させるように構成されており、前記モノクロメータ及び前記非分散要素がともに、完全非分散ダブルウィーンフィルタの少なくとも一部を形成する、請求項24に記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項28】
前記電子光学要素が、前記ビーム軸に向かって実質的に平行な又は発散するビームを出力するように構成されており、前記モノクロメータ及び前記非分散要素がともに、半pi-半-piダブルウィーンフィルタの少なくとも一部を形成する、請求項24に記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項29】
約1nA~約100nAの電子流と、試料における約10keV~約1500keVのターゲットエネルギーと、を含む、電子ビームを選択的に透過させるように構成されている、請求項22に記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項30】
荷電粒子の単色ビームを生成する方法であって、
ビーム軸に沿って位置合わせされた電子ビームを生成することであって、前記電子ビームが、ターゲットエネルギーを含むそれぞれのエネルギーを有する電子を含む、生成することと、
前記ビーム軸上に配置されたモノクロメータを使用して、前記電子ビームの電子のサブセットを選択することであって、前記電子のサブセットが、前記ターゲットエネルギーの周りのエネルギー分布を有する単色化されたビームを含む、選択することと、
カットオフを使用して、前記単色化されたビームの前記エネルギー分布を狭めることであって、前記カットオフが、前記ビーム軸上の前記単色化されたビームのクロスオーバ平面に実質的に対応する位置で前記モノクロメータの下流の前記ビーム軸上に配置され、前記カットオフが、電子に対して不透明である材料を含み、前記ビーム軸と位置合わせされた開口を画定する、狭めることと、
前記カットオフの下流で前記カットオフから前記単色化されたビームを出力することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記単色化されたビームが、1/1000限界において約80meV以下のターゲットエネルギーからのエネルギー偏差を有し、1/1000限界が、前記ターゲットエネルギーにおけるエネルギー分布のピークよりも1000倍小さい前記電子ビームのエネルギー分布の値に対応する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、1つ以上の機械によって実行されるときに、前記機械に、請求項30又は31に記載の方法を含む動作を実施させる命令を記憶する、1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、荷電粒子顕微鏡コンポーネント、システム、及び方法を対象とする。特に、いくつかの実施形態は、単色化された電子源を対象とする。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子顕微鏡法及び微量分析は、材料を電子ビームに曝露することを含む。電子と試料との間の相互作用は、撮像及び分析に使用することができる異なる型の検出可能な信号を生成する。透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopes、TEM)では、ナノ材料及び結晶材料の原子及び分子構造の画像を含む詳細な情報を原子スケールで展開することができる。
【0003】
数オングストローム~数十オングストローム程度の長さスケールなど、徐々に小さくなる長さスケールでの材料のTEM分析は、電子エネルギー損失分光法(electron energy loss spectroscopy、EELS)などの損失分光法技術を含む。EELSは、ゼロロスピークの幅を参照して説明される狭く定義されたビームエネルギー分布に部分的に依存する。したがって、例えば、エネルギー損失分光法の分野において、改善されたゼロロスピーク幅のためのコンポーネント、システム、及び方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、荷電粒子光学装置は、実質的にビーム軸上に配置された分散要素を含むことができ、分散要素は、ビーム軸に平行な分散平面内のエネルギーによって荷電粒子のビームの粒子を分散させるように構成される。荷電粒子光学装置は、第1のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置でビーム軸上に配置されたセレクタを含むことができる。荷電粒子光学装置は、非分散要素を含むことができる。非分散要素は、分散平面内のエネルギーによって荷電粒子のビームの粒子を少なくとも部分的に非分散するように構成することができる。荷電粒子光学装置は、ビーム軸上の第2のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置でセレクタの下流のビーム軸上に配置されたカットオフを含むことができる。第2のクロスオーバ平面は、第1のクロスオーバ平面の下流にあり得る。カットオフは、電子に対して不透明であり、ビーム軸と実質的に位置合わせされた開口を画定する材料を含むことができる。
【0005】
荷電粒子光学装置は、1/1000限界において約80meV以下のターゲットエネルギーからのエネルギー偏差を有する荷電粒子のビームを出力するように構成され得、1/1000限界は、ターゲットエネルギーにおけるエネルギー分布のピークよりも1000倍小さい電子ビームのエネルギー分布の値に対応する。カットオフは、ダブルナイフエッジ又はスリットを使用して開口を画定することができる。開口は、クロスオーバポイントにおいてビーム軸を横切る方向における約200nm~約700nmの幅によって特徴付けられ得る。開口は、クロスオーバポイントにおいてビーム軸を横切る方向における約300nmの幅によって特徴付けられ得る。非分散要素の下流のビーム軸上に複数のクロスオーバ平面を画定することができる。第2のクロスオーバは、複数のクロスオーバ平面の非分散要素に最も近くすることができる。第3のクロスオーバ平面は、非分散要素と第2のクロスオーバ平面との間のビーム軸上に画定することができる。電子ビームは、線集束ビーム若しくは点集束ビーム、又は他の形態とすることができる。
【0006】
分散要素は、第1のウィーンフィルタと、第1のウィーンフィルタの下流にある第2のウィーンフィルタと、を含むことができる。セレクタは、第1のウィーンフィルタと第2のウィーンフィルタとの間のビーム軸上又はその近くに配置されたスリットと、を含むことができる。分散要素、セレクタ、及び非分散要素はともに、完全非分散モノクロメータの少なくとも一部を形成することができる。荷電粒子光学装置は、セレクタの下流のビーム軸上に配置されており、クロスオーバ平面、第2のクロスオーバ平面、又は第3のクロスオーバ平面において電子ビームをビーム軸上に収束させるように構成された1つ以上の電子レンズを更に含むことができる。
【0007】
エネルギー偏差は、1/1000限界において約50meVであり得る。エネルギー偏差は、1/1000限界において約25meVであり得る。エネルギー偏差は、1/1000限界において約15meVであり得る。第1のウィーンフィルタはPi分散要素であり、第2のウィーンフィルタはPi非分散要素とすることができる。第1のウィーンフィルタは、半Pi分散要素とすることができる。第2のウィーンフィルタは、半Pi非分散要素とすることができる。ビーム軸は、湾曲させることができる。ビーム軸は、モノクロメータ内で湾曲させることができる。モノクロメータは、ミラーモノクロメータ又はΩ型モノクロメータとすることができる。1つ以上のレンズは、電磁レンズ又は静電レンズを含むことができる。1つ以上のレンズは、静電加速セクション又は静電減速セクションを含むことができる。荷電粒子光学装置は、1つ以上のレンズのうちの1つ以上のレンズの下流、及びクロスオーバ平面の上流に配置された非分散要素を更に含むことができる。
【0008】
一態様では、透過型電子顕微鏡は電子源を含むことができる。電子源は、ビーム軸に沿って実質的に位置合わせされた電子ビームを生成するように構成することができる。透過型電子顕微鏡は、ビーム軸上に配置されたモノクロメータを含むことができる。モノクロメータは、ビーム軸上に配置された分散要素を含むことができる。分散要素は、ビーム軸に平行な分散平面内のエネルギーによって荷電粒子のビームの粒子を分散させるように構成することができる。モノクロメータは、第1のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置でビーム軸上に配置されたセレクタを含むことができる。モノクロメータは、非分散要素を含むことができる。非分散要素は、分散平面内のエネルギーによって荷電粒子のビームの粒子を少なくとも部分的に非分散するように構成することができる。透過型電子顕微鏡は、ビーム軸上の第2のクロスオーバ平面に実質的に対応する位置で、非分散要素の下流のビーム軸上に配置されたカットオフを含むことができる。カットオフは、電子に対して不透明である材料を含むことができ、ビーム軸と位置合わせされた開口を画定することができる。
【0009】
荷電粒子光学装置は、1/1000限界において約80meV以下のターゲットエネルギーからのエネルギー偏差を有する電子ビームを出力するように構成される。
【0010】
透過型電子顕微鏡は、電子源とモノクロメータとの間のビーム軸上に配置された電子光学要素を更に含むことができる。電子光学要素は、電磁レンズ又は静電レンズを含むことができる。電子光学要素は、加速要素又は減速要素を含むことができる。電子光学要素は、ビーム軸に向かってビームを集束させるように構成することができる。モノクロメータ及び非分散要素はともに、完全非分散ダブルウィーンフィルタの少なくとも一部を形成することができる。
【0011】
電子光学要素は、ビーム軸に向かって実質的に平行な又は発散するビームを出力するように構成することができる。モノクロメータ及び非分散要素はともに、半-pi-半-pi-ダブルウィーンフィルタの少なくとも一部を形成することができる。透過型電子顕微鏡は、約1nA~約100nAの電子流及び約10keV~約1500keVの試料におけるターゲットエネルギーを含む電子ビームを選択的に透過するように構成することができる。
【0012】
1つ以上の態様では、荷電粒子の単色ビームを生成する方法は、ビーム軸に沿って実質的に位置合わせされた電子ビームを生成するステップを含むことができる。電子ビームは、ターゲットエネルギーを含むそれぞれのエネルギーを有する電子を含むことができる。方法は、ビーム軸上に配置されたモノクロメータを使用して電子ビームの電子のサブセットを選択することを含むことができる。電子のサブセットは、ターゲットエネルギー付近のエネルギー分布を有する単色化されたビームを含むことができる。方法は、カットオフを使用して単色化されたビームのエネルギー分布を狭めることを含むことができ、カットオフは、ビーム軸上の単色化されたビームのクロスオーバ平面に実質的に対応する位置で、モノクロメータの下流のビーム軸上に配置される。カットオフは、電子に対して不透明であり、ビーム軸と位置合わせされた開口を画定する材料を含むことができる。方法はまた、カットオフの下流のカットオフから単色化されたビームを出力することを含むことができる。
【0013】
一態様では、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、1つ以上の機械によって実行されるときに、マシンに前述の態様の方法の動作を実施させる命令を記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の前述の態様及び多くの付随する利点が、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することでより良好に理解されるので、より容易に認識されるであろう。
【0015】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による、質量分析計(transmission electron microscope、TEM)システムを例解する概略図である。
【
図2A】現在の技術による、透過型電子顕微鏡(TEM)システムで使用するように構成された例示的な単色化された電子源を例解する概略図である。
【
図2B】現在の技術による、
図2Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なゼロロスピークグラフである。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、分散モノクロメータ及び完全非分散モノクロメータ用の例示的な荷電粒子光学装置を例解する概略図である。
【
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、分散モノクロメータ及び部分非分散モノクロメータ用の例示的な荷電粒子光学装置を例解する概略図である。
【
図3C】本開示のいくつかの実施形態による、湾曲軸モノクロメータ用の例示的な荷電粒子光学装置を例解する概略図である。
【
図3D】本開示のいくつかの実施形態による、分散モノクロメータ用の例示的荷電粒子光学装置を例解する概略図である。
【
図4A】本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅よりもはるかに広い開口幅を使用した
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なゼロロスピークグラフである。
【
図4B】本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅よりもわずかに広い開口幅を使用した
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なゼロロスピークグラフである。
【
図4C】本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅よりもわずかに広い開口幅を使用して
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なビーム広がり図である。
【
図4D】本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅に近似する開口幅を使用して
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なゼロロスピークグラフである。
【
図4E】本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅に近似する開口幅を使用して
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なビーム広がり図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による、荷電粒子の単色化されたビームを生成するための例示的なプロセスのブロックフロー図である。
【0016】
図面において、同様の参照番号は、別段の指定がない限り、様々な図の全体にわたって同様の部分を指す。必要に応じて図面における混乱を低減させるために、要素の全てのインスタンスが必ずしも標識されているわけではない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、説明される原理を例解することに重点が置かれている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例解的な実施形態を例解及び説明してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示において様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。以下の段落では、ゼロロスピーク幅を改善するための荷電粒子顕微鏡システム、コンポーネント、及び方法の実施形態が提供される。本開示の実施形態は、改善された電子光学装置を組み込んだ透過型電子顕微鏡を含む。改善された電子源は、完全非分散、部分的非分散、又は分散モノクロメータ、又は分散が完全に、部分的に、無視できる程度に、又は全く行われないモノクロメータを含むことができ、ターゲットエネルギー付近に分布したエネルギーを有する電子の単色化されたビームのエネルギー分布を狭めるように構成される。電子光学装置は、ビーム軸上のクロスオーバ平面に対応する位置でモノクロメータの下流のビーム軸上に配置されたカットオフを含むことができる。
図3A~
図3Dを参照してより詳細に説明するように、カットオフは、電子に対して不透明である材料を含むことができ、ビーム軸と実質的に位置合わせされた開口を画定することができる。カットオフは、円形開口、スリット、ナイフエッジ、ダブルナイフエッジなどの開口を画定することができる。
【0018】
電子エネルギー損失分光法(EELS)などのエネルギー損失分光法は、試料を透過した電子の非弾性散乱を測定する微量分析技術である。非弾性散乱は、電子と試料との間のエネルギー伝達を含み、これは、試料を透過した電子のエネルギー損失スペクトルを生成するように構成された分光計を使用して測定することができる。エネルギー損失スペクトルの分析を通して、詳細な材料情報(例えば、接合配置、元素組成など)が、さもなければ分析することが困難である軽元素の試料を含めて、開発され得る。
【0019】
非弾性散乱なしに試料を通過する(例えば、試料へのエネルギーをほとんど又は全く失っていない)電子は、エネルギー損失スペクトルにおいてゼロロスピーク又は「zero-loss peak、ZLP」を形成する。ゼロロスピークの幅は、主に電子源のエネルギー分布を反映する。それは典型的には約0.2eV~2.0eVであるが、単色化された源ではより狭めることができる。価電子からの情報、例えばプラズモン共鳴及びバンド間遷移は、典型的にはゼロロスピークの約50eV内のエネルギー損失スペクトル情報から導出することができる。内殻イオン化などの内殻電子からの情報は、典型的にはゼロロスピークから100eVを超える情報から導出することができる。
【0020】
価電子情報は、詳細な接合情報が求められる軽元素、有機材料、及び/又は分子試料の微量分析に使用される。そのような技術は、「振動EELS」と称され、ゼロロスピークの約0.05eV~約1eV内のエネルギー損失スペクトルに現れる、伸長、屈曲、シザリング、及び他の原子及び分子接合遷移を調べる。このように、ゼロロスピークの幅は、ゼロロスピークに起因するバックグラウンドに少なくとも部分的により、振動EELSの制限因子となる。「1/1000限界」におけるゼロロスピークの幅は、
図2Bを参照してより詳細に説明されるように、単色化された電子源のエネルギー分布を説明するために使用されるメトリック(半値全幅、すなわちFWHMを含む他のメトリックの中でもとりわけ)である。1/1000限界は、ゼロロスピーク(例えば、0eVの損失)のピークよりも1000倍小さい電子ビームのエネルギー分布の値に対応する。
【0021】
1/1000限界におけるゼロロスピークの幅に対する改善は、選択平面の上流で生じる荷電粒子のビームにおけるクーロン相互作用又は他の粒子間エネルギー伝達の影響を減衰させることに少なくとも部分的に基づくことができる。源によって放出される荷電粒子のエネルギーの分布を狭めることはまた、荷電粒子分光システムの性能(例えば、信号対雑音及び/又は信号対バックグラウンド特性)を改善することができる。例解的な例では、源、モノクロメータ、並びに付加的及び/又は代替的な光学要素の動作パラメータの組み合わせを介して、本開示の荷電粒子光学装置は、1/1000限界において約80meV以下のターゲットエネルギーからのエネルギー偏差を有する電子ビームを出力するように構成されることができる。
【0022】
振動EELSのための色電子ビームを生成するための典型的な手法は、湾曲した電子ビーム経路と、構造的及び動作的に複雑な複数の電磁プリズムとを利用するアルファ型モノクロメータ又はオメガ型モノクロメータを使用することを含む。そのような源は、典型的には、1/1000限界において80meVより大きい幅を呈する(例えば、α型モノクロメータでは86meVであるが、幅は、プローブ電流を犠牲にしてより小さくすることができ、EELS性能に有意な影響を与える)。これに関連して、ゼロロスピークの「幅」は、ゼロロスピークの中心からゼロロスピークのエッジまで測定される半幅を指す。荷電粒子モノクロメータに関する刊行物における引用された分解能値は、80meV未満であり得る(例えば、いくつかのα型モノクロメータに関して約10meVで引用される)が、そのような値は、典型的には、1/1000限界において測定された幅ではなく、ゼロロスピークの半値半幅(half-width at half-maximum、HWHM)を参照する(半値全幅(full-width at half-maximum、FWHM)を約20meVにし、FWHMは、典型的には、ZLP幅に関して引用される)ことに留意されたい。したがって、1/1000限界において約80eV以下のゼロロスピーク半幅によって特徴付けられる単色化された荷電粒子源が必要とされている。有利に、本開示の実施形態は、振動EELSに好適な単色化されたビーム(例えば、1/1000限界において約80meV以下の幅を有する)を生成するように構成された電子光学システム及び/又は他の荷電粒子システムを含む。更に、本開示の実施形態は、例えば、モノクロメータの下流のZLPテールを減衰させることによって、振動EELに用いられる典型的なα型モノクロメータよりも構造的及び動作的に複雑ではない。
【0023】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な質量分析計(TEM)システム100を例解する概略図である。以下の説明では、例示的なTEMシステム100の内部コンポーネント及び機能の詳細は、簡略化のために省略され、
図2A及び
図2Bで説明される典型的なシステムとは対照的に、
図3A~
図5を参照してより詳細に説明されるような本開示の実施形態、並びに荷電粒子の単色化されたビームのエネルギー分解能を増大させるための技術に説明の焦点を当てる。例示的なTEMシステム100は、電子源セクション110と、対物セクションを含むTEMカラムと、撮像セクションと、を含む。本開示は電子銃セクション110に焦点を当てる。要約すると、電子源セクション110は、電子ビームが形成され、真空を通してTEMカラム内に伝導されるように、高電圧電界放出源又は他の放出電子源を含むことができる電子源に通電するように構成された電子機器を含む。
【0024】
TEMカラムは、電磁レンズ及び静電レンズ、並びに電子ビームの特性を制御するための複数の開口など、ビーム形成用のコンポーネントを含む。TEMカラムコンポーネントは、とりわけ、コンデンサレンズ、対物レンズ、投影レンズ、並びに対応する開口を含む。撮像セクションは、試料撮像及び/又はマイクロ分析で使用するための画像、スペクトル、及び他のデータを生成するように構成された1つ以上の型の検出器、センサ、スクリーン、及び/又は光学系を含む。例えば、撮像セクションは、とりわけ、シンチレータスクリーン、双眼鏡、透過型電子顕微鏡(TEM)検出器(例えば、画素化電子検出器、二次電子検出器、カメラ、及び電子エネルギー損失分光(EELS)分光計を含むことができる。
【0025】
図3A~
図5を参照してより詳細に説明するように、TEMシステム100は、荷電粒子光学装置115を含むことができる。荷電粒子光学装置115は、1つ以上のモノクロメータ、1つ以上の電磁レンズ、1つ以上の静電レンズ、1つ以上の荷電粒子加速器要素、1つ以上の荷電粒子減速器要素、並びに/又は電子ビームの一部を遮断及び/若しくは減衰する1つ以上の開口及び/若しくはスリットを含むことができる(例えば、スリット又は開口を画定する箔は、一部の電子が、結果として生じるEELSスペクトルを妨害しない散乱角及び/又はエネルギー損失で箔を依然として貫通することができるように、好適な厚さであり得る)。荷電粒子光学装置115の構成要素の構成は、例示的なTEMシステム100が、より構造的かつ動作的に複雑な既存のシステムと比較して、1/1000限界において測定される改善された(例えば、相対的に狭い)ゼロロスピーク又は「ZLP」のエネルギー分解能によって特徴付けられる単色化された電子ビームを生成することを可能にする。更に、荷電粒子光学装置115は、例示的なTEMシステム100が、
図2A及び
図2Bを参照してより詳細に説明するように、より複雑なアルファ型モノクロメータを含むことなく、比較可能な光学装置で現在利用可能な電流よりも10pAを超える相対的に高い電流で振動EELSを実施することを可能にする。
【0026】
図2Aは、現在の技術による、透過型電子顕微鏡(TEM)システムで使用するように構成された例示的な分散単色化された電子源を例解する概略図である。電子ビームは、とりわけ、熱イオンショットキー源、電界放出(field emission、FEG)源(例えば、ショットキーFEG源又は冷FEG(cold FEG、CFEG)源)などの源によって生成される。ビームの外側の範囲は、図を簡略化し、源の下流の分散要素に説明を集束させるために示されているが、電子は、例解された線の間にも放出されることが理解される。示される分散モノクロメータでは、電子ビームは、ビーム軸に平行な分散平面(例えば、「x-z」平面)内のエネルギーによって電子を空間的に分散させるように構成された半-piウィーンフィルタを通過する。示される半piウィーンフィルタは、「ダブル集束」ウィーンフィルタの一例であり、図示のXZ平面及び直交するYZ平面(図示せず)内で集束する。
【0027】
ターゲットエネルギー(「U」)とは異なるエネルギーを有する電子ビームの部分を選択的に遮断するために、モノクロメータの下流にセレクタが配置される。
図2Aの源では、セレクタは焦点平面に配置されており、各個々のエネルギーは分散方向(X)に集束され、非分散方向(Y)にも電子エネルギーに依存する点に集束することができる。電子ビームの分散に少なくとも部分的に起因して、セレクタは、所与の公差を超えてターゲットエネルギー(「U±ΔU」)から逸脱するエネルギーを有する電子を選択的に遮断することができ、ここで、「ΔU」は、ターゲットエネルギーからの偏差を指す。電子ビームが分散されるビーム軸上のクロスオーバ平面にセレクタを載置することにより、セレクタの後のビーム電流が低くなるという犠牲を払って、モノクロメータのエネルギー分解能が改善される。低減されたビーム電流は、振動EELSに関する
図2Aの構成の欠点である。振動EELS情報が見出されるゼロロスピークの領域におけるノイズの相対的な顕著性は、ビーム電流の減少とともに増加する。したがって、信号対雑音及び信号対バックグラウンドは、
図2Aのモノクロメータを使用して収集された振動EELSスペクトルのデータ分析に影響を及ぼす有意な要因となる。
【0028】
図2Bは、現在の技術による、
図2Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なゼロロスピーク(ZLP)グラフである。
図2Bのグラフは、先行技術と共有される本開示のいくつかの実施形態の優れた特性を説明するために提供される。そのために、
図3A~
図5において後で参照される概念及びスペクトル的特徴が考察される。
図2Bのグラフは、ゼロに正規化されたターゲットエネルギーに対する差分エネルギー偏差「ΔU」(横座標、線形スケール)に対してプロットされたゼロロスピークの値(縦座標、対数スケール)を示すデータ系列を含む(垂直軸に関してわずかな非対称性が見られる)。説明を簡単にするために、ゼロロスピーク値の対数スケールは、ターゲットエネルギーに対応するピーク値における1の値に正規化されている。
図2Aのモノクロメータの性能は、EELSに対する現在のベンチマークZLP幅に対応せず、これは、先で説明されるように、動作がより複雑なアルファ型モノクロメータによって生成される。
【0029】
EELSにおいて、半値におけるZLPの幅(FWHM又はHWHM)は、モノクロメータの好適性の意味のある指標である。典型的にはわずかに非対称であり、正の微分エネルギーに向かってバイアスされるピーク形状に少なくとも部分的に基づいて、幅値を判定するために、様々なピークフィッティング技術を適用することができる。振動情報は、ZLPピーク位置(ZLPの起点)の300meV内に見出され、典型的にはZLPバックグラウンドに対して低強度であるので、ZLPの最大強度(
図2Bにおいて強度=1)よりも2桁及び/又は3桁小さいZLPの幅は、振動EELSの意味のあるパラメータとなる。ZLP/1000強度は、「1/1000限界」と称される。
【0030】
1/1000限界においてのZLPの半幅は、振動EELSに対する単色化された荷電粒子源の好適性の現在のベンチマークである。
図2Bに示されるように、ZLP/1000における半幅は、ZLP/100における半幅よりも有意に大きい。特定の物理的機構に束縛されるものではないが、ZLP/100とZLP/1000との間のZLPの形状は、セレクタのビーム上流における粒子間相互作用(例えば、電子ビームの場合のクーロン相互作用)によって影響を受けることが理解される。
図2Aのモノクロメータにおけるコンポーネントの構成は、そのような相互作用のエネルギー分散を修復することにおいて、対処されていない。結果として、
図2Aのモノクロメータの1/1000限界におけるZLPの幅は、約180meVである。振動EELSの現在のベンチマークは、約86meVであり、先で説明されるアルファモノクロメータを装備するTEMシステムによって提供される。本開示の実施形態は、
図3A~
図4Fを参照してより詳細に説明されるように、この共有特性に関して有意な改善を表し、80MeV以下のZLP/1000幅を生成するように構成されている。
【0031】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、完全非分散源用の例示的な荷電粒子光学装置300を例解する概略図である。
図3Aは、振動EELSのための改善されたTEMシステム(例えば、
図1のTEMシステム100)の文脈における電子光学装置に焦点を当てているが、説明される実施形態は、他の荷電粒子システム(例えば、イオンビームシステム、デュアルビームシステムなど)を含む本開示の範囲を限定することを意図していない。例示的な荷電粒子光学装置300は、1つ以上の光学要素305と、モノクロメータ310と、源325から放出された電子ビーム320をフィルタリングして変換するように構成されたカットオフ315と、を含む。例示的な荷電粒子光学装置300は、ビーム軸Aに平行な分散平面(「X-Z」)内に例解されており、
図1の荷電粒子光学装置115の例における荷電粒子光学コンポーネントを含む。電子ビーム320は、例示的な装置300のコンポーネントの集束/脱集束効果を例解するために軸方向光線として示されている。したがって、電子ビーム320の軸方向光線は、先に
図2Aに示されたエネルギーU+/-dUを有するビームを除いて、通常のエネルギーUに対する軸方向ビームエンベロープを示す。
図3Aは、一定の縮尺で示されておらず、例示的な荷電粒子装置300の構成コンポーネントの相対位置を表すために概略的に示されている。
図3A~
図3Cに例解する軸方向光線は、「選択平面」とも称される平面335において反対称であり得るが、(例えば、
図4B、
図4D、及び
図4Fのように)平面335において鏡面対称性を欠き得る。この文脈において、「反対称」とは、条件x(-z)=-x(z)を満たす選択平面におけるビームの形状を指す。
図3A~
図3Dにおいて、荷電粒子光学装置の1つ以上の要素は、再位置決め、再順序付け、及び/又は省略され得ることが理解される。以下の図を参照すると、荷電粒子光学装置が、モノクロメータ内の選択平面(
図3Aのスリット335に対応する)を含むビーム経路図を使用して例解されている。モノクロメータは、選択平面に関して鏡面対称、非対称、及び/又は選択平面に対して反対称であり得ることが企図される。
【0032】
光学要素305は、電子ビーム320を成形、形成、集束、デフォーカス、加速、減速、又は別様に変換するように構成された電磁要素及び/又は静電要素を表す。このようにして、光学要素305は、磁気円形レンズ、六極子レンズ、八極子レンズ、加速器、減速器などであるか、又はそれらを含むことができる。例示的な装置300のモノクロメータ310は、2つの全-pi又は分数-pi集束ウィーンフィルタ330が設けられたダブルウィーンフィルタを含む。示されるように、モノクロメータ310は、電子ビーム320をビーム軸A上に集束させるように構成された光学要素305の下流のビーム軸A上に配置される。このようにして、ダブルウィーンフィルタの第1のウィーンフィルタ330-1は、収束ビームを受け取り、X-Z平面内の入射ビームのエネルギー成分を分散させるように構成される。セレクタ335は、第1のウィーンフィルタ330-1と第2のウィーンフィルタ330-2との間に配置される。セレクタ335は、モノクロメータ310の下流の電子ビーム320のターゲットエネルギー「U」を選択することの一部として、2つのウィーンフィルタ330の間の焦点においてX軸に沿って位置決め及び/又は再位置決めすることができるスリット又は開口を画定する。有利には、光学装置300は、ターゲットエネルギー「U」の電子をビーム軸A上に集束させ、対応するクロスオーバ平面340にカットオフ315を配置することによって、セレクタ335の下流で生じるクーロン相互作用を補正するように構成され、それによって、ビーム軸A上のカットオフ315の上流のモノクロメータ310及び/又は光学要素305によって過集束又は過少集束される、ターゲットエネルギー(例えば、「U±ΔU」)から逸脱する電子を遮断する。
【0033】
本開示の文脈では、クロスオーバ平面340は、仮想源平面(例えば、抽出器が源325のコンポーネントである場合、抽出器の下から見た見かけの源サイズの平面)と共役である。場合によっては、軸方向ビームは、一方又は両方のセレクタ平面内の線焦点(例えば、点焦点とは対照的に)によって特徴付けられる。
図3AにおいてXZ平面として定義される分散平面において、仮想源平面において軸光線x
a(z)=0であり、各クロスオーバ平面340においてx
a(z)=0であり、カットオフ315は、クロスオーバ平面340に又はその近くに載置することができる。直交YZ平面では、仮想源平面においてy
a(z)=0であり、y
a(z)は、x
a(z)=0のときはいつでもゼロに等しくなり得るが(例えば、円形電子光学系の場合)、ビームが2つのカットオフ平面340内の少なくとも1つの線焦点によって特徴付けられるときのように(例えば、
図4Bに例解するように)、非ゼロにもなり得る。第1のクロスオーバ平面は、点集束ビームの場合、光源の像平面を指すことができる。クロスオーバ平面は、線集束ビームの場合、非分散方向(例えば、Y方向)に線集束を搬送する平面を指すことができる。
【0034】
例示的な装置300のモノクロメータ310は、分散及び完全非分散モノクロメータとして構成される。このようにして、第2のウィーンフィルタ330-2は、電子ビーム320をX-Z平面内で非分散させ、電子ビーム320を、モノクロメータ310の下流のある距離でビーム軸A上に位置決めされたクロスオーバ平面340上に集束させるように構成される。本開示の分散要素及び非分散要素(例えば、ウィーンフィルタ330)の文脈において、分散要素は、(例えば、速度の関数によって表される)エネルギーに少なくとも部分的に基づいて、ビーム軸A(例えば、X軸)を横切る方向における電子の空間的分離を増加させ、非分散要素は、ビーム軸を横切る方向における電子の空間的分離を減少させる。
【0035】
例示的な装置300において、カットオフ315は、モノクロメータ310の後の第1のクロスオーバ平面340-1の位置でビーム軸A上に配置される。いくつかの実施形態では、カットオフ315は、第1のクロスオーバ平面340-1よりもモノクロメータ310から遠い第2のクロスオーバ平面340-2の位置で、ビーム軸A上に、又はビーム軸Aに対して軸外に配置される。いくつかの実施形態では、光学装置300は、第2のクロスオーバ平面340-2に位置決めされたカットオフ315を伴って構成され、モノクロメータ310の下流の光学要素305は、荷電粒子加速器(例えば、静電加速器)として構成される。
【0036】
カットオフ315は、ターゲットエネルギーから逸脱したエネルギーを有する電子ビーム320の電子の通過を吸収するか又は別様に妨げる材料を含むことができ、ターゲットエネルギー付近のエネルギーを有する電子が通過することができる開口317を更に画定する。開口317は、ナイフエッジ、ダブルナイフエッジ、スリット、円形開口、スロット開口、又はカットオフ315が電子を選択的に遮断することを可能にする他の幾何形状によって画定することができる。
図4A~
図4Fを参照してより詳細に説明するように、開口317は、幅(例えば、
図4Dの幅435)によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、開口317の幅及び/又は開口の位置は、(例えば、自律的に、及び/又は例示的な装置300と動作可能に結合された1つ以上の制御システムとの人間の相互作用に従って)修正することができる。同様に、例示的な光学装置300の1つ以上のコンポーネントの動作パラメータは、カットオフ315が配置されるクロスオーバ平面340においてX軸に沿って空間的エネルギー分布を変化させるように修正され得る。このようにして、例示的な光学装置300は、所与の閾値(例えば、約80meV以上のΔU)を超えるマージンだけターゲットエネルギーから逸脱する電子を遮断するように構成することができる。このようにして、
図3A~
図3Dの例示的な装置は、ZLPの幅を1/1000限界において約80meV以下、例えば70meV、60meV、50meV、40meV、30meV、20meV以下、それらの分数及び補間を含む、に狭めることができ、現在の技術のモノクロメータの対応する性能を上回るZLP幅の有意な改善を表す。
【0037】
図3Aは、モノクロメータ310の出口における電子320の収束ビームを例解する。いくつかの実施形態では、電子ビームは、モノクロメータ310の出口において、強く収束しているか、わずかに収束しているか、平行であるか、わずかに発散しているか、又は強く発散している。したがって、カットオフ315の位置は、モノクロメータ310の構成に少なくとも部分的に基づくことができる。軸方向ビームを収束させる文脈において、「強く」という用語は、約5cm未満(例えば、約1cm~約3cm)のモノクロメータ出射平面とクロスオーバ平面340との間の距離を指すために使用される。この文脈において、「わずかに」という用語は、モノクロメータ出射平面とクロスオーバ平面340との間の距離が約5cmを超える(例えば、約5cm~約10cm)ことを指すために使用される。
【0038】
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態による、分散モノクロメータ及び部分非分散モノクロメータ345用の例示的な荷電粒子光学装置350を例解する概略図である。
図3Aの例示的な装置300とは対照的に、
図3Bの例示的な装置350は、電子の平行ビーム320、電子の発散するビーム320、及び/又は電子の収束ビーム320を受け取るように構成された部分非分散モノクロメータ345を含む。この文脈において、「部分的に非分散」とは、クロスオーバ平面340において分散されず、クロスオーバ平面340から離れて分散されるビームを指す。例示的な装置300のモノクロメータ310は、平行な電子ビーム320、わずかに発散する電子ビーム320、及び/又は収束する電子ビーム320を受け取るように構成される。例示的な装置350のモノクロメータ345は、第1の半-piウィーンフィルタ355-1、第2の半-piウィーンフィルタ355-2、及び第1の半-piウィーンフィルタ355-1と第2の半-piウィーンフィルタ355-2との間に配置されたセレクタ335を使用して、ターゲットエネルギー「U」に実質的に等しいエネルギーを有する電子ビーム320内の電子のサブセットを選択するように構成されたダブルウィーンフィルタを含む。更に、例示的な装置350のモノクロメータ345は、分散がクロスオーバポイント340(例えば、モノクロメータ345の後の第1のクロスオーバポイント340-1)で消失するか又はかなり消失する分散ビームを出力する一方で、クロスオーバポイント340で角度分散を呈する。これは、非分散ビームを出力するモノクロメータを説明する「完全非分散」である例示的な装置300のモノクロメータ310とは対照的である。
【0039】
電子ビーム320が例示的な装置350に対して分散されないクロスオーバポイント340にカットオフ315を位置決めすることは、少なくとも部分的に、カットオフ315がターゲットエネルギーで電子を遮断しないため、振動EELSに対するモノクロメータ345の性能を改善させる。モノクロメータ345は、ターゲットエネルギー付近のエネルギーを有する電子のサブセットを選択するために電子ビーム320をフィルタリングするように構成することができる。クーロン相互作用は、ZLPを広げる、モノクロメータ345の下流の電子ビーム320内のエネルギー分布の広がりを誘発することができるが、カットオフ315をクロスオーバ平面340に位置決めすることは、閾値以上の差分エネルギーだけターゲットエネルギーから逸脱するエネルギーを有する電子を遮断することができる。例示的な装置350関して例解されるように、光学要素305は、電子ビーム320をビーム軸A上に集束させるようにビーム軸A上に配置されることができ、それは、ほぼターゲットエネルギーを有する電子をクロスオーバ平面340上に集束させ、ターゲットエネルギーから逸脱する電子をカットオフ315の材料内に送るように構成された加速器又は他の要素を含むことができる。
【0040】
図3Cは、本開示のいくつかの実施形態による、湾曲軸モノクロメータ用の例示的な荷電粒子光学装置360を例解する概略図である。例示的な装置360は、
図3Aの例示的な装置300と同様に、Ω型モノクロメータ365に含まれる分散要素及び非分散要素の作用によってビーム軸線Aが湾曲される(「Ω」)型モノクロメータ365を含む完全非分散構成である。Ω型モノクロメータ365は、ビーム軸A上に収束する出力ビームを生成する集束モノクロメータとして構成され得る。いくつかの実施形態では、Ω型モノクロメータ365は、ビーム軸Aに対して発散しているか又は平行である出力ビームを生成するように構成され得る。湾曲又は方向転換されたビーム軸Aを呈するモノクロメータの他の例は、ミラーモノクロメータ、アルファ型モノクロメータ、マンダリン構成、及びW型構成を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、カットオフ315は、示されるように、1つ以上の光学要素305の下流のクロスオーバ平面340上に、又は集束モノクロメータの場合のように、光学要素305の前のモノクロメータの下流に配置することができる。
【0041】
図3Dは、本開示のいくつかの実施形態による375、分散モノクロメータ用の例示的荷電粒子光学装置370を例解する概略図である。
図2Aを参照してより詳細に説明するように、分散モノクロメータ375は、電子の分散ビーム320を出力するように構成された単一のウィーンフィルタを含む。そのために、例示的な装置370は、分散モノクロメータ375の下流に1つ以上の光学要素305及び非分散要素380を含み、その下流に第1のクロスオーバポイント340-1が形成される。いくつかの実施形態では、非分散要素380の上流の1つ以上の光学要素305は、加速器を含む。しかしながら、
図2Aとは対照的に、例示的な装置370の加速器は、セレクタ335の下流に配置されており、非分散要素380は、
図2Aの単色化された源には存在しない。非分散要素380は、
図3A~
図3Cの全pi-フィルタ330又は半pi-フィルタ355と比較して、相対的に弱くすることができる。この文脈では、「相対的に弱い」は、電子ビーム320を完全に非分散しない非分散要素を指すために使用される。たとえそうであっても、クロスオーバ平面340にカットオフ315を配置することは、ZLPの幅を1/1000限界において効果的に狭めることができ、例示的な装置370を振動EELSに好適な構成にし、
図2Aのアルファ型構成又は単色化された源などの既存の源に対して改善される。
【0042】
図4A~
図4Fは、
図3A~
図3Dの例示的な荷電粒子光学装置のために開発された一連の比較例を例解する。提示されたデータは、クーロン相互作用のための物理モデルを含むモンテカルロ(例えば、確率論的)シミュレーション方法を使用して、装置の構成コンポーネントをシミュレーションすることによって生成された。提示される例は、EELSにおける用途のために構成された典型的なTEMシステム(例えば、
図1のTEMシステム100)の例証である。したがって、シミュレーションは、約5meV~約30meVのFWHM及び約10pA~約200pAのビーム電流によって特徴付けられる電子の単色化されたビームを生成するように構成されたTEMシステムに対応し、TEMシステムの動作パラメータは、様々な例にわたって(例えば、約30kV~約300kVの加速電圧に対して)一貫して維持される。
図4A~
図4Bは、現在の技術におけるように、カットオフを省略した光学装置に対応する。
図4C~
図4Fは、1/1000限界においてのZLP幅に対する開口サイズ(例えば、
図3Aの開口317)の影響を例解するために異なる幅のカットオフを含む光学装置に対応する。
図4A、
図4C、及び
図4Eにおいて、グラフは、
図2Bと同様に、正規化された強度対差分エネルギーをプロットしている。
図4B、
図4D、及び
図4Fにおいて、グラフは、ビーム軸A(例えば、「X-Y」)を横切る平面内の電子ビーム320のビューに類似した電子の空間的分布をプロットしている。したがって、
図4B、
図4D、及び
図4Fの軸は、X軸及びY軸における位置を表し、ビーム軸Aは、グラフの実質的に中心にある。
【0043】
図4Aは、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な装置300への入口における電子ビーム320の幅(入力ビーム幅と称される)よりもはるかに広い開口317幅を使用して、カットオフ315を省略する、又はカットオフ315を含む、
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的ゼロロスピークZLPグラフである。
図4AにおけるZLPのFWHMは、125pAの単色化されたプローブ電流に対して約12meVであると判定され、ZLP/100における半幅410は、約70meVであると判定されたが、ZLPは、振動EELSに対して意味のある差分エネルギーの範囲内で1/1000限界(例えば、ZLP/1000)に達しなかった。
図Aのグラフは、下流のクーロン相互作用を減衰させない完全非分散モノクロメータと比較して、カットオフ(例えば、
図3Aのカットオフ315)を含むことによってもたらされるZLPのエネルギー分解能の改善を強調するために、比較例として提示されている。
【0044】
図4Bは、本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅よりもわずかに広い開口幅を使用した
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なゼロロスピークグラフである。
図4CのZLPのFWHMは、約11.5meVであると判定され、
図4AのZLP FWHMから実質的に変化せず、約90pAの単色化されたプローブ電流(プローブ電流の約30%の減少)を有する。ZLP/1000における幅420は、約20meVであると判定され、例示的な装置が、振動EELSに好適である1/1000限界におけるZLP幅内のビームを出力し、単色化された源に対する現在のベンチマークに対して有意に改善されることを示す。
図4Cのグラフは、モノクロメータの下流のクロスオーバポイントにカットオフ(例えば、
図3Aのカットオフ315)を含めることによってもたらされるZLPのエネルギー分解能の有意な改善を示す。
【0045】
図4Cは、本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅よりもわずかに広い開口幅を使用して
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なビーム広がり図である。X-Z平面における空間的分布は、
図4Dのグラフに視覚化されている。
図4D及び
図4Fのグラフと比較して、約1μm以下(例えば、約500nm)の開口317の幅は、空間における電子ビームの幅425を低減し、エネルギー空間における1/1000限界においてのZLPの幅の低減をもたらすことができる。幅425が電子源325によって生成されるビームの幅よりも広い
図4Dでは、
図4DのX軸を中心とした非対称分布が見られる。これは、モノクロメータ310の作用がX-Z平面に限定されていることに起因する。いくつかの実施形態では、モノクロメータ310は、ビーム軸Aに関して対称であり、したがって、分布は、X軸に関してあまりグループ化されない。
【0046】
図4Dは、本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅に近似する開口幅を使用して
図3Aの電子源についてシミュレーションされた例示的なゼロロスピークグラフである。
図4EのZLPのFWHMは約10meVであると判定され、
図4AのZLP FWHMから実質的に変化せず、単色化されたプローブ電流は、約72pAであった(プローブ電流の約60%の減少)。ZLP/1000における幅430は、約15meVであると判定され、例示的な装置が、振動EELSに好適である1/1000限界におけるZLP幅内のビームを出力し、単色化された源に対する現在のベンチマークに対して有意に改善されることを示す。更に、ビームは、振動EELSに好適な約10pA~約100pAの単色化されたプローブ電流によって特徴付けることができる。
図4Eのグラフは、モノクロメータの下流のクロスオーバポイントにカットオフ(例えば、
図3Aのカットオフ315)を含めることによってもたらされるZLPのエネルギー分解能の有意な改善を示す。
【0047】
図4Eは、本開示のいくつかの実施形態による、入力ビーム幅に近似する開口317幅を使用して、
図3Aの電子源セクション及びモノクロメータ光学系についてシミュレーションされた例示的なビーム広がり図である。
図4B及び
図4Dのグラフと比較すると、源325(例えば、約300~1000nm)でのビームの巾に近似する開口317の巾は、空間における電子ビームの巾425を低減させ、エネルギー空間における1/1000限界においてのZLPの巾の低減をもたらすことができる。有利に、拡大又は縮小光学系なしで、アルファ型モノクロメータは、典型的には、10nm程度(例えば、10nm~40nm)の入力源幅を必要とし、プローブ電流の低減及びモノクロメータの上流の相対的に複雑なビーム形成光学系を伴う。開口317の幅を低減することは、1/1000限界においてZLPの幅を改善することができるが、30~300keVの範囲の電子エネルギーに対しては、開口317のサイズの実用的な下限は約500nmであり得る。加えて、
図4E~
図4Fで説明された構成は、電子ビームの空間的テールを低減する。例えば、STEMプローブ中の空間的テールを除去することができる。角度分解EELSとしても知られる運動量分解EELSでは、運動量分解能を同様に改善することができ、その結果、開口サイズが低減すると、開口は、ターゲットエネルギーから逸脱する電子及び/又は開口平面内のビーム軸から逸脱する電子を遮断する。
【0048】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、荷電粒子の単色化されたビームを生成するための例示的なプロセス500のブロックフロー図である。
図1~
図4Fを参照して説明したように、例示的なプロセス500を構成する1つ以上の動作は、荷電粒子顕微鏡(例えば、
図1のTEMシステム100)のコンポーネント及び/又は、これらに限定されないが特性評価システム、ネットワークインフラストラクチャ、データベース、及びユーザインターフェイスデバイスを含む、追加のシステム若しくはサブシステムと動作可能に結合されたコンピュータシステムによって実行され得る。そのために、動作は、1つ以上の機械可読媒体内に機械実行可能命令として記憶され得る。
【0049】
例示的なプロセス500の動作は、例えば振動EELSワークフローを実施することの一部として、繰り返され、再順序付けされ、及び/又は省略され得る。そのために、例示的なプロセス500の動作は、システムによって実施されるものとして説明され、動作は、プロセッサ又は他の論理回路と荷電粒子顕微鏡の電子要素又は電気機械要素との間で制御信号を生成し通信することを含むことができることが理解される。例示的なプロセス500の動作は、明確にするために電子顕微鏡との関連で説明される。本開示の実施形態は、色イオンビームを生成するためのプロセス、並びにデュアルビームシステムなどの他の荷電粒子構成を含む。
【0050】
例示的なプロセス500は、動作505において荷電粒子のビームを生成することを含む。
図3A~
図3Dの電子ビーム320は、動作505の荷電粒子ビームの一例である。荷電粒子のビームを生成することは、エミッタ源(例えば、
図3Aの源325)を、エミッタ源に結合された高電圧電源を変調することによって通電することを含むことができる。当業者によって理解されるように、動作505は、源を取り囲む環境を高真空若しくは超高真空に排気すること、又は内部較正試験、洗浄サイクル、若しくは荷電粒子顕微鏡システムの動作の一部を形成する他のプロセスを完了することなど、1つ以上の動作及び/又はサブ動作によって先行され得る。そのために、例示的なプロセス500のいくつかの実施形態では、例えば、電子顕微鏡が1つの動作モード(例えば、TEM撮像モード)から別の動作モード(例えば、スポットモードEELS)に切り替わる場合、荷電粒子ビームを生成することは、振動EELSなどの微量分析を容易にするために(例えば、コンピュータシステムによって実行される1つ以上の制御命令を介して)源の動作を修正することを指すことができる。
【0051】
例示的なプロセス500は、動作510において、単色化されたビームを含む荷電粒子のビームの荷電粒子のサブセットを選択することを含む。
図2A及び
図3A~
図4Fを参照してより詳細に説明されるように、モノクロメータは、荷電粒子光学装置(例えば、
図1の電子光学装置115)の一部として含まれ、(例えば、
図3Aのモノクロメータ310のダブルウィーンフィルタを使用して)源から放出される荷電粒子からエネルギー分布の領域を選択的にフィルタリング、遮断、又は別様に除去することができる。モノクロメータは、撮像及び微量分析に利用可能なビーム電流を制限するので、いくつかの荷電粒子システムは、損失分光法を実施する一部として、本開示の荷電粒子光学装置を選択的に作動させることができる。電子のサブセットを選択することは、ターゲットエネルギー「U」の周りのエネルギー分布を有する単色化されたビームを生成する。いくつかの実施形態では、ターゲットエネルギーは、分析される試料の組成に少なくとも部分的に基づいて判定することができる。例えば、ターゲットエネルギーは、荷電粒子顕微鏡コンポーネントの性能特性によって判定することができるが、本開示の荷電粒子光学装置の1つ以上のパラメータを修正してターゲットエネルギーを変化させ(例えば、
図3Aのセレクタ335をX軸に沿って平行移動させることによって)、試料材料の電子遷移をより良好に解析することができる。
【0052】
例示的なプロセス500は、動作515において、単色化されたビームのエネルギー分布を狭めることを含む。いくつかの実施形態では、エネルギー分布を狭くすることは、ターゲットエネルギーから逸脱する(例えば、電子の場合、クーロン相互作用の結果として)モノクロメータの下流の荷電粒子を選択的に遮断すること、方向転換すること、吸収すること、又は別様に減衰させることを含む。
図3A~
図4Fを参照してより詳細に説明するように、カットオフ(例えば、
図3Aのカットオフ315)は、本開示の荷電粒子光学装置のビーム軸(例えば、
図3Aのビーム軸A)上に配置することができる。カットオフは、
図4A~
図4Fを参照してより詳細に説明されるように、荷電粒子エネルギー分布の幅を空間的に制限するアプローチにおいて、荷電粒子のビームのクロスオーバ平面(例えば、
図3Aのクロスオーバ平面340)に対応するビーム軸上の位置に配置することができる。
【0053】
例示的なプロセス500は、動作520において、単色化されたビームを出力することを含む。動作520のサブ動作は、1つ以上の荷電粒子光学系(例えば、
図3A~
図3Dの光学要素305)を介して単色化されたビームを形成すること、成形すること、方向転換すること、又は別様に変換することを含むことができる。例解的な例では、動作520は、対物セクション内に保持された試料のスポットモードEELS微量分析のためにビームを調整するために、多様な電子光学レンズ及び開口を含むTEMカラムセクション内に色電子ビームを結合することを含むことができる。
【0054】
先行する説明では、様々な実施形態について説明した。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な構成及び詳細について記載してきた。しかしながら、実施形態は、具体的な詳細がなくても実施され得ることが当業者には明らかであろう。更には、説明される実施形態を不明瞭にしないように、周知の特徴が省略又は簡略化されている場合がある。本明細書に説明される例示的な実施形態は、電子顕微鏡システム、及び特にTEMシステムを中心としているが、これらは、非限定的な例解的な実施形態として意図される。本開示の実施形態は、そのような実施形態に限定されず、むしろ、原子スケールでの材料の撮像、微量分析、及び/又は処理に広範囲の粒子を適用することができる荷電粒子ビームシステムに対処することを意図している。そのような粒子は、TEMシステム、SEMシステム、STEMシステム、イオンビームシステム、マルチビームシステム及び/又は粒子加速器システムにおける電子若しくはイオンを含み得るが、それらに限定されない。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路を含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、命令は、1つ以上のデータプロセッサで実行されるときに、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書で開示される1つ以上の方法の一部若しくは全部、及び/又は1つ以上のプロセス若しくはワークフローの一部若しくは全部を実施させる。本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路に、本明細書で開示される1つ以上の方法の一部若しくは全部及び/又は1つ以上のプロセスの一部若しくは全部を実施させるように構成された命令を含む非一時的機械可読記憶媒体において有形で具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0056】
使用されている用語及び表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現を使用するに際して、示され説明される特徴又はその一部分のいかなる同等物も除外する意図はないが、請求される範囲内で様々な修正が可能であることが理解される。したがって、本開示は、具体的な実施形態及び任意選択的な特徴を含むが、本明細書で開示される概念の修正及び変形が、当業者によってなされることが可能であり、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【0057】
用語が明示的な定義なしに使用される場合、その用語が荷電粒子顕微鏡システムの分野又は他の関連分野における特別な意味及び/又は具体的な意味を有しない限り、その語の通常の意味が意図されることを理解されたい。「約」又は「実質的に」という用語は、記述された特性からの逸脱を示すために使用され、その逸脱の範囲内では、記載されている構造の対応する機能、特性、又は属性への影響がほとんどない又は全くない。寸法パラメータが別の寸法パラメータに「実質的に等しい」と記載されている例解する例では、「実質的に」という用語は、比較されている2つのパラメータが、製造公差又はシステムの動作に固有の信頼区間などの許容限界内で等しくない可能性があることを反映することが意図される。同様に、位置合わせ又は角度配向などの幾何学的パラメータが、「約」垂直、「実質的に」垂直、又は「実質的に」平行として説明される場合、「約」又は「実質的に」という用語は、位置合わせ又は角度配向が、許容限界内で、厳密に記述された条件と異なり得る(例えば、厳密に垂直ではない)ことを反映することが意図される。一例では、単色化された電子源の光学コンポーネント(例えば、
図3Aのカットオフ315)は、ビーム軸(例えば、
図3Aのビーム軸A)と「実質的に位置合わせ」することができ、これは、空間内のビームの位置に影響を及ぼす物理現象(例えば、ビームドリフト)から生じる正確な位置合わせからのずれを含むことができる。直径、長さ、幅などの寸法値について、「約」という用語は、記述される値から最大で±10%の偏差を説明するものと理解することができる。例えば、「約10mm」の寸法は、9mm~11mmの寸法を説明することができる。
【0058】
本明細書は、例示的な実施形態を提供するものであり、本開示の範囲、適用可能性、又は構成を限定することを意図するものではない。むしろ、例示的な実施形態に続く説明は、当業者に、様々な実施形態を実現することを可能にする説明を提供する。添付の特許請求の範囲に記載されている趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができることを理解されたい。実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が本明細書で与えられる。しかしながら、実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることが理解されるであろう。実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないために、例えば、本開示の具体的なシステムコンポーネント、システム、プロセス、及び他の要素が、概略図の形態で示され得るか、又は例解図から省略され得る。他の場合、周知の回路、プロセス、コンポーネント、構造、及び/又は技術が、不必要な詳細を伴わずに示され得る。
【外国語明細書】