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特開2024-103617粘着剤層、粘着フィルム、粘着剤層付き光学フィルム及び粘着剤層付き偏光板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103617
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】粘着剤層、粘着フィルム、粘着剤層付き光学フィルム及び粘着剤層付き偏光板
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240725BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240725BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240725BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087355
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2022170450の分割
【原出願日】2018-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
(57)【要約】
【課題】優れたリワーク性、耐久性を有し、輝度ムラの発生がなく、また、被着体として薄型の液晶セルに対して、粘着剤層を介して光学フィルムを貼合した場合において、液晶表示パネルにカールが生じることがなく、耐凹み性も良好な粘着剤層を提供する。
【解決手段】(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーと、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーとを、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が150万~300万のアクリル系ポリマーが、3官能以上のイソシアネート化合物である架橋剤によって架橋された粘着剤層であって、架橋後のゲル分率は、58%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、架橋剤と、シランカップリング剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、
(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、
(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とを、
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が150万~300万のアクリル系ポリマーであり、
前記架橋剤が、3官能以上のイソシアネート化合物である架橋剤によって架橋された粘着剤層であって、
架橋後のゲル分率は、58%以下であることを特徴とする粘着剤層。
【請求項2】
20μm厚の耐凹み性が、10g以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層。
【請求項3】
パネルのカール量が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層。
【請求項4】
樹脂フィルムの片面に、請求項1に記載の粘着剤層を積層してなることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項5】
偏光板を被着体に貼合するために用いられることを特徴とする請求項4に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
離型フィルムの片面に、請求項1に記載の粘着剤層を形成し、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項7】
前記離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成において、前記粘着剤層の厚さが20μmであり、耐凹み性が10g以上であることを特徴とする請求項6に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項6に記載の粘着フィルムにより形成してなる粘着剤層が積層されてなり、離型フィルム/粘着剤層/光学フィルムの構成であることを特徴とする粘着剤層付き光学フィルム。
【請求項9】
偏光板の片面に、請求項1に記載の粘着剤層が積層されてなり、離型フィルム/粘着剤層/偏光板の構成であることを特徴とする粘着剤層付き偏光板。
【請求項10】
前記粘着剤層付き偏光板が、液晶表示パネルとの貼合に用いられることを特徴とする請求項9に記載の粘着剤層付き偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着フィルムに関する。さらに詳細には、表示パネルに組み込まれる光学フィルムの貼合用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムに関する。
また、本発明は、優れたリワーク性、耐久性を有し、色の濃淡などの輝度ムラ発生の要因となる表示パネルのカールが生じない、良好な耐カール(ベンディング)性を有する粘着剤組成物及びそれを用いた粘着フィルムを提供するものである。
さらに、本発明に係る粘着剤組成物を用いた粘着剤層は、荷重がかかった時の耐凹み性にも優れている。
【背景技術】
【0002】
近年では、画像を表示するディスプレイ(画像表示装置)としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等、各種表示方式のディスプレイが広く普及している。これらのディスプレイを構成する表示パネルには、様々な機能を有する光学フィルムが、粘着剤層を用いて組み込まれている。以下、代表例として液晶ディスプレイに使われている液晶表示パネルについて説明する。
例えば、一般的な液晶表示パネルは、2枚のガラス基板の間に液晶が封入され、該ガラス基板の表面に、偏光板が粘着剤層を用いて貼合された構成である。
【0003】
また、液晶表示パネルでは、偏光板の他に、例えば、位相差板、輝度向上フィルム、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学フィルムが組み込まれる。
通常、液晶表示パネルに組み込まれた光学フィルムの、縦方向及び横方向の熱収縮率は均一ではなく、また、複数の光学フィルムが積層されている場合には、それぞれの光学フィルムの熱収縮率が異なっている。そのため、ディスプレイの使用環境(温度、湿度)の変化によって、液晶表示パネルに組み込まれている光学フィルムは、寸法変化を生じる。そのことに起因して、液晶表示パネルにカールが生じ、変形する。その際、液晶表示パネルにおいて、光学フィルムの貼合に使用されている粘着剤層には、光学フィルムの寸法変化に伴う応力が掛かる。例えば、液晶表示パネルにカールが生じた場合には、表示画像に色の濃淡などの輝度ムラが生じるという問題があった。
【0004】
また、種々の用途に用いられる液晶表示パネルの中でも、特に、車載用の液晶表示パネル(車載モニター、カーナビゲーション向け等)においては、テレビ・パソコン用の液晶表示パネルに比べて、実施される耐久性の試験条件(高温:例えば、105℃、高温・高湿条件:例えば、85℃、85%RH、高温低温繰り返し等)が一層厳しいため、液晶表示パネルに組み込まれる光学フィルムの寸法変化・応力の発生が、より起こり易い。
【0005】
また、近年、液晶表示パネルは、より軽量なものとするために、薄型化が進んでおり、液晶表示パネルが、貼合された光学フィルムの寸法変化・応力に耐えられず、カールしてしまう問題も顕在化してきており、ディスプレイのより厳しい条件での、カール等の不具合の抑制、発生防止(耐カール性)が求められている。
【0006】
表示画像の色の濃淡などのムラを改善する従来技術の一例として、例えば、高分子量のアクリル系ポリマーを用いて、架橋によるゲル分率を小さくした粘着剤層を用いることが開示されている(特許文献1)。
この粘着剤層を用いると、耐熱性及び耐湿熱性を満足するだけでなく、偏光フィルム等の部材の寸法変化による応力を緩和して、光漏れや色むらを大幅に抑制できるとされている。
【0007】
また、表示画像の色の濃淡などのムラを改善する従来技術の別の方法として、芳香環を有するアクリル系モノマーを共重合させた高分子量のポリマーを用いて、特定の範囲の粘性係数を有する粘着剤層を用いることが開示されている(特許文献2)。この粘着剤層を用いると、液晶素子に色むら・白ヌケ現象が発生しない光学用粘着剤組成物を得ることができるとされている。
【0008】
さらに、表示画像の色の濃淡などのムラを改善する従来技術の別の方法として、特定の範囲の分岐度を有するアクリル系ポリマーを用いて、低いゲル分率とした粘着剤層を用いることが開示されている(特許文献3)。
この粘着剤組成物を用いた粘着剤層であれば、液晶表示パネルを構成するガラス基板と偏光板とを粘着剤層を介して貼合した際に、ガラス基板の反りを抑制できるとされている。
【0009】
ところで、特許文献1に係る発明においては、重量平均分子量を調整することにより、表示画像のムラを解決することを技術思想としていて、粘着剤層を形成する粘着剤組成物中のアクリル系ポリマーの重量平均分子量が、50万以上200万以下であると規定している。
しかしながら、特許文献1の実施例1~6で用いているアクリル系ポリマーは、重量平均分子量が70万~140万の範囲内のものであり、重量平均分子量が140万を超えるものについては、発明の効果が実証されていない。
また、特許文献1に係る発明の粘着剤層は、ゲル分率を1~50%とすることが好ましいとしており、特許文献1の実施例1、2、4、5においては、ゲル分率が40%未満である。
特許文献1に係る発明の効果を確認するために、追試を行ったところ、特許文献1に係る発明の粘着剤層は、耐久性や耐熱性の点において、まだ、不十分であることが確認できた。
【0010】
また、特許文献2に係る発明は、特定の範囲の粘性係数を有する粘着剤層がずれることにより歪みを緩和させ、液晶素子の色むら・白ヌケ現象を解決することを技術思想としている。
また、特許文献2に係る発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーの共重合体の重量平均分子量が100万~200万であるとしているが、実施例1~11で用いている共重合体の重量平均分子量は、120万~127万であり、重量平均分子量が127万を超えるものについては、発明の効果が実証されていない。
そうすると、特許文献2に係る発明の粘着剤層は、特許文献1に係る発明の粘着剤層と同様に、耐熱性や耐久性の点において、不十分であることが懸念される。
【0011】
また、特許文献3に係る発明は、特定の範囲の分岐度を有するアクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物を用い、低ゲル分率の粘着剤層を形成することにより、分岐鎖の絡み合いにより、耐久性を維持しながら応力の緩和を図ることを技術思想としている。
また、特許文献3の実施例1~14において、用いている(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、40万~130万であり、粘着剤層のゲル分率が30質量%以下である。
そうすると、特許文献3に係る発明の粘着剤層は、ゲル分率が低いことに起因して、応力緩和性に優れているとしても、耐久性が不十分であることが懸念される。
【0012】
上記の通り、従来技術においては、画像表示装置の色の濃淡などの輝度ムラを低減する際に、液晶表示パネルに組み込まれている光学フィルムを貼合するための粘着剤層の、リワーク性、耐久性及び耐カール性を同時に解決することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004-091500号公報
【特許文献2】特開2007-169329号公報
【特許文献3】国際公開第2015/141382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の問題に鑑み、本発明の課題は、優れたリワーク性、耐久性を有し、色の濃淡などの輝度ムラ発生の要因となる表示パネルのカールが生じない、良好な耐カール(ベンディング)性を有する粘着剤組成物及びそれを用いた粘着フィルムを提供することである。
また、本発明の別の課題は、荷重がかかった時の耐凹み性に優れる粘着剤層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を解決するため、本発明は、
アクリル系ポリマーと、架橋剤と、シランカップリング剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、
(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、
(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とを、
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が150万~300万のアクリル系ポリマーであり、
前記架橋剤が、3官能以上のイソシアネート化合物である粘着剤組成物を提供するものである。
【0016】
本発明の粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、液晶表示パネルと光学フィルムとの貼合に用いることで、粘着剤層が、光学フィルムの寸法変化に伴い生じる収縮応力を緩和し、液晶表示パネルに生じるカールを低減するとともに、優れたリワーク性、高耐久性及び荷重がかかった時の耐凹み性を有する粘着剤層を形成し得るものである。
【0017】
本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層が、貼合される光学フィルムに生じる収縮応力を緩和し、液晶表示パネルに生じるカールを低減するとともに、優れたリワーク性、高耐久性及び耐凹み性を発現する理由の詳細は明らかでない。考えられる理由としては、粘着剤組成物のアクリル系ポリマーを構成する(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに基づく長鎖アルキル側鎖の柔軟性による応力の緩和と、アクリル系ポリマーにおける他の共重合成分との組み合わせによる硬さの発現、さらに架橋性成分による凝集力の向上が、上記特性の発現を可能にしていると推測される。
【0018】
前記アクリル系ポリマーが、前記(A)と、前記(B)と、前記(D)との合計100重量部に対して、
前記(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を、20重量部以上69重量部以下、
前記(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を、30重量部以上79重量部以下、
前記(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を、0重量部超過5重量部以下、
前記(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を、1~50重量部の割合で共重合させたアクリル系ポリマーであり、
前記粘着剤組成物において、前記(A)と、前記(B)と、前記(D)との合計100重量部に対して、前記3官能以上のイソシアネート化合物を、0.001重量部以上0.05重量部以下の割合で含有してなることが好ましい。
【0019】
前記(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種が、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0020】
前記(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレートから選択された少なくとも1種であり、前記(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0021】
前記(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種が、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0022】
また、前記シランカップリング剤が、エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。
【0023】
前記アクリル系ポリマーの分子量の分散度(Mw〔重量平均分子量〕/Mn〔数平均分子量〕)が、6.0以下であることが好ましい。
【0024】
偏光素膜の保護膜としてのPET(ポリエチレンテレフタレートフィルム:厚さ20μm)を表面基材とした厚さ140μmの偏光板と、厚さ0.4mmの無アルカリガラスとを、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を介して貼合し、JIS-Z0237に準拠して、180°方向に300mm/分の剥離速度で、ガラス面からPETを表面基材とした偏光板を剥離した時の粘着力が、4N/25mm以下であることが好ましい。当該粘着力は、1~4N/25mmが、さらに好ましい。
【0025】
そして、前記粘着剤組成物を溶剤に溶解してなる粘着剤組成物溶液のチキソトロピーインデックス(TI値)が、1.25以下であることが好ましい。
【0026】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を架橋してなる、厚さが20μmであり、耐凹み性が10g以上である粘着剤層を提供する。
【0027】
また、本発明は、樹脂フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層が積層されてなる粘着フィルムを提供する。
【0028】
前記粘着フィルムが、偏光板を被着体に貼合するために用いられる粘着フィルムであることが好ましい。
【0029】
また、本発明は、離型フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層が形成され、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成である粘着フィルムを提供する。
【0030】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層が積層されてなり、離型フィルム/粘着剤層/光学フィルムの構成である粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【0031】
また、本発明は、偏光板の片面に、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層が積層されてなり、離型フィルム/粘着剤層/偏光板の構成である粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0032】
また、本発明は、前記粘着剤層付き偏光板が用いられている液晶表示パネルを提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、優れたリワーク性や耐久性を有し、色の濃淡などの輝度ムラの発生がない、良好な耐カール(ベンディング)性を有する粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物を提供することができる。
また、薄型の液晶セルに対して、本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を介して光学フィルムを貼合した場合に、液晶表示パネルにカールが生じない、良好な耐カール(ベンディング)性を有しながら、粘着剤層に荷重がかかった時の耐凹み性にも優れる粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物を提供することができる。
また、塗工性においても良好な粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0035】
本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、シランカップリング剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とを、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が150万~300万のアクリル系ポリマーであり、前記架橋剤が、3官能以上のイソシアネート化合物である粘着剤組成物である。
【0036】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とをカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合して得られた共重合体である。本明細書中、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0037】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーを構成する(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖でも、分枝状でも、環状(脂環族)でもよい。
【0038】
アクリル系ポリマーに含まれるアルキル(メタ)アクリレートモノマーにおけるアルキル基の炭素数が7以下である場合、例えば、下記(B)を含むが、前記(A)を含まないアクリル系ポリマーでは、側鎖となるアルキル基の柔軟性が不十分となり、粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層による耐カール性の効果が発揮され難くなり好ましくない。一方、前記アルキル基の炭素数が多い場合、柔軟性が過多となり、荷重に対して粘着剤層が凹み易くなるとともに、アルキル基の結晶化が起こり易くなり粘着剤層の透明性が低下する場合があるため好ましくない。
【0039】
(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、これらのうち、アルキル基の炭素数がC8~C10のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種、なかでも、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレートから選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種との合計100重量部に対して、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを、20重量部以上69重量部以下の割合で共重合させることができる。
前記(A)の共重合割合の下限値としては、25重量部以上の割合とすることが好ましく、35重量部以上の割合とすることが特に好ましい。前記(A)の共重合割合の上限値としては、65重量部以下の割合であることが好ましく、55重量部以下の割合であることが特に好ましい。
【0041】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーを構成する(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレートからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖でも、分枝状でも、環状(脂環族)でもよい。
(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、2種以上を組み合わせて用いることも好ましく、例えば、ブチルアクリレート、特に、n-ブチルアクリレートとメチルアクリレートとを組み合わせることが好ましい。
【0042】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種との合計100重量部に対して、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを、30重量部以上79重量部以下の割合で共重合させることができる。
前記(B)の共重合割合の下限値としては、40重量部以上の割合とすることが好ましく、50重量部以上の割合とすることが特に好ましい。前記(B)の共重合割合の上限値としては、75重量部以下の割合であることが好ましく、65重量部以下の割合であることが特に好ましい。
【0043】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーを構成する(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上が好ましい。なかでも、(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種との合計100重量部に対して、(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を、0重量部超過5重量部以下、好ましくは、0.05~2.5重量部、特に好ましくは、0.1~2.0重量部、さらに好ましくは、0.5~1.5重量部の割合で含有させることができる。
【0045】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーを構成する(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマー(以下略称として「芳香族基含有モノマー」という場合がある。)としては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ、芳香族基または複素環を有するものを用いることができる。芳香族基含有モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;ビニルトルエン、α-ビニルトルエン等のビニルトルエン系モノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等の複素環を有するビニル系モノマー;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレート;N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等の複素環を含有する(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上が好ましい。なお、これらに例示される複素環のうち、ピペリドン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、ピロリジンは、環内に不飽和結合を有しない飽和複素環であり、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、イミダゾール、オキサゾールは、環内に不飽和結合を有する不飽和複素環(複素芳香環)である。上記の芳香族基含有モノマーは、水酸基及びカルボキシル基を含有しないモノマーであってもよい。
なかでも、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0046】
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーは、屈折率が高い粘着剤層を得るために、好ましく用いられる。また、本実施形態の粘着剤組成物において、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーは、アクリル系ポリマーを構成する他の成分とともに共重合されることで、粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層にある程度の硬さを与え、耐凹み性を発現する。
【0047】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種との合計100重量部のうち、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を、1~50重量部、好ましくは、3~40重量部、特に好ましくは、5~20重量部、共重合割合の上限値として、さらに好ましくは、15重量部以下の割合で含有させることができる。
【0048】
本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーは、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合して得られた共重合体である。
本実施形態の粘着剤組成物においてアクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。
【0049】
本実施形態では、アクリル系ポリマーとして使用される共重合体のガラス転移温度(以下、Tgと記す)は、-70℃以上-20℃以下が好ましい。Tgが-70℃未満であると、耐発泡性(耐久性)と耐凹み性が低下し、Tgが-20℃を超えると、耐カール性が低下し、また、輝度ムラが発生し易くなるので好ましくない。さらに、本実施形態の粘着剤組成物におけるアクリル系ポリマーとして使用される共重合体のTgは、-65℃~-30℃であることがより好ましい。
【0050】
また、本実施形態の粘着剤組成物においてアクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重量平均分子量は、150万~300万とすることができる。175万~275万の範囲であることが好ましく、200万~250万の範囲であることが特に好ましい。
アクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重量平均分子量が、上記下限値未満であると、耐久性が不十分となり、好ましくない。
【0051】
また、本実施形態の粘着剤組成物においてアクリル系ポリマーとして使用される共重合体の分子量の分散度(Mw〔重量平均分子量〕/Mn〔数平均分子量〕)が、6.0以下であることが好ましい。
アクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重量平均分子量が150万~300万であることに加え、共重合体の分子量の分散度が6.0以下であることにより、例えば、100℃を超える高温下に放置後の剥離耐久性を向上することができ、粘着剤層の剥がれや発泡の発生が抑制される。
共重合体の分子量の分散度としては、5.2以下であることがより好ましく、4.5以下であることが、さらに好ましい。
【0052】
本実施形態の粘着剤組成物においては、架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物を用いる。3官能以上のイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンやグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
なかでも、3官能以上のイソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
架橋剤の3官能以上のイソシアネート化合物は、前記(A)と、前記(B)と、前記(D)との合計100重量部に対して、0.001~0.05重量部の割合で含有させることができる。
【0053】
本実施形態の粘着剤組成物においては、粘着剤組成物中に、シランカップリング剤を含有させることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のメタクリロキシ基含有シランカップリング剤;ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロキシ基含有シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;ビニルトリクロロシラン等のクロロ基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤、等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種類、又は2種類以上を混合して用いることができ、添加量としては、粘着剤組成物の100重量部に対し、通常0.001~5重量部を添加するのが好ましい。
シランカップリング剤としては、エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
シランカップリング剤は、前記(A)と、前記(B)と、前記(D)との合計100重量部に対して、0.01~0.1重量部含有させることができる。
【0054】
本実施形態の粘着剤組成物としては、BH型粘度計(東機産業株式会社製)を用い、25℃において、ロータ回転数2rpmで測定した粘度と、20rpmで測定した粘度との比であるチキソトロピーインデックス(TI値)=〔2rpmでの粘度〕/〔20rpmでの粘度〕が、1.25以下である粘着剤組成物溶液を用いることができる。
上記TI値は、粘着剤組成物溶液の粘度特性における、粘度のせん断速度依存性を評価した値であり、いわゆる、「チキソトロピー粘性」の尺度となる値である。TI値は、粘着剤組成物溶液について、BH型粘度計を用いて、粘度を測定する際に、ロータの回転数を2rpm及び20rpmに変化させ測定し、その値の比率で、算出することができる。
TI値が高い場合には、せん断速度の変化に伴い、粘着剤組成物からなる塗布材料の粘度が小さくなる。例えば、粘着剤組成物からなる塗布材料を、樹脂フィルムに塗工する工程において、該塗布材料が、せん断変形により粘度が小さくなり、その結果として塗工性が悪化する。
【0055】
本実施形態の粘着剤組成物としては、TI値が1.25以下の粘着剤組成物溶液を用いることができる。TI値が、1.25を超える場合、粘着剤組成物の塗工性が悪化し、安定した塗工ができない。
一般に、アルキル基の炭素数がC8以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーをモノマー成分として使用し、重合して得られる分子量100万以上のアクリル重合体においては、炭素数がC8以上の長鎖アルキル基に基づく高分子鎖の絡み合いにより、チキソトロピー粘性が発現し、上記TI値が高くなる傾向があり、粘着剤組成物塗料として用いた場合に、塗工性が悪化する。
本実施形態の粘着剤組成物において、上記TI値範囲の粘着剤組成物溶液は、粘着剤組成物のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の種類や含有比率の調整、共重合体の重合方法の調整、酢酸エチル等の溶剤に溶解したときのアクリル系ポリマーの濃度の調整を行うことで得ることができる。
本実施形態の粘着剤組成物溶液は、アクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重量平均分子量が、150万以上であるにもかかわらず、TI値が1.25以下であることから、安定した塗工性が得られるものである。
【0056】
本実施形態の粘着剤組成物は、上記以外の任意の成分として、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0057】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋させることで形成することができる。架橋後の粘着剤層のゲル分率は、40~70%が好ましく、さらに、42~68%がより好ましく、45~65%が最も好ましい。粘着剤層のゲル分率が、この範囲外であると、耐熱性や耐久性が低下するので好ましくない。
【0058】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、薄い粘着剤層であることが望ましい。粘着剤層の厚さは、1~25μmが好ましく、より好ましくは、5~25μmであり、さらに好ましくは、5~20μmである。
また、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、光学部材と粘着剤層との間の屈折率差をなるべく小さくすることが望ましい。
【0059】
また、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる、20μm厚の粘着剤層の耐凹み性が、10g以上であることが好ましい。
また、偏光素膜の保護膜としてのPET(ポリエチレンテレフタレート;厚さ20μm)を表面基材とした厚さ140μmの偏光板と、厚さ0.4mmの無アルカリガラスとを、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を介して貼合し、JIS-Z0237に準拠して、180°方向に300mm/分の剥離速度で、ガラス面からPETを表面基材とした偏光板を剥離した時の粘着力が、4N/25mm以下であることが好ましい。当該粘着力が、1~4N/25mmであることが、さらに好ましく、1.2~3.8N/25mmであることが、特に好ましい。
【0060】
また、本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を積層させてなる粘着フィルムは、粘着剤層を、基材、光学フィルム、離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0061】
離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。1つの光学フィルム用粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合することが可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、レンズフィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等が挙げられる。
【0062】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させて得られる粘着剤層は、耐熱性及び耐久性に優れるので、偏光フィルム/粘着剤層/液晶表示パネルの構成で偏光フィルムと液晶表示パネルとを貼合する用途、更には、偏光フィルム/粘着剤層/位相差フィルム/粘着剤層/有機ELパネルの構成で、位相差フィルムと、偏光フィルム又は有機ELパネルとを貼合する用途に好適である。
【0063】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させて得られる粘着剤層、及び粘着フィルムは、画像表示装置に組み込まれる各種の光学フィルム、タッチパネル用の各種の光学フィルム、電子ペーパー用の各種の光学フィルム、液晶表示パネルに組み込まれる各種の光学フィルム、有機ELパネルに組み込まれる各種の光学フィルムの貼合に用いることができる。また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥離することで、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、層間に粘着剤層が用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成を得ることができる。
【0064】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させて得られる粘着剤層は、画像表示装置に組み込まれる各種の光学フィルムの貼合に好適に用いられる。本実施形態の粘着剤組成物を架橋させて得られる粘着剤層は、「偏光フィルム/粘着剤層」、「偏光フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「偏光フィルム/粘着剤層/位相差フィルム/粘着剤層」、「偏光フィルム/粘着剤層/位相差フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成でも好適に用いることができる。
【0065】
上述の画像表示装置としては、液晶表示装置(液晶表示パネル)、有機EL表示装置(有機ELパネル)、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられるが、これらに限定されない。以下、有機ELパネルを代表的な例に挙げて説明するが、これらの概念に基づく本実施形態の粘着剤層及び粘着フィルムは、液晶表示パネル等、他の画像表示装置にも適用可能である。
画像表示装置としては、特に高耐久性が求められる自動車等の車内で用いる、車載用のモニター、カーナビゲーション向け等の液晶表示パネルにも適用可能である。
【0066】
有機ELパネルに組み込まれる位相差フィルムの材質としては、ポリカーボネート化合物が挙げられ、逆波長分散性(複屈折が長波長ほど増大)を有する材料が好ましい。ポリカーボネート化合物は、重合体の繰り返し単位中にカーボネート結合(-O-CO-O-)を含む樹脂であり、各カーボネート結合の間に含まれる化学構造には、芳香族系、脂肪族系等の各種が知られている。繰り返し単位は1種でも2種以上でもよい。位相差フィルムの位相差としては、1/4λ又は1/2λ(波長λの1/4倍又は1/2倍)が挙げられる。
その中でも近年、有機ELパネルには外光反射防止のための円偏光板が必要になり、円偏光板は直線偏光フィルムと1/4λ位相差フィルムを2枚重ねにした構成であり、かつ位相差フィルム面を有機ELパネルに貼合されるため、ポリカーボネート系樹脂が原因となって耐久性、耐発泡性が劣るという欠点があった。
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させて得られる粘着剤層は、ポリカーボネート系樹脂からなる1/4λの位相差フィルムが組み込まれた偏光フィルムおよび有機ELパネルの、光学フィルムの貼合用としても利用価値が極めて高い。
【0067】
偏光フィルムとしては、ヨウ素分子(I)を含むポリビニルアルコール(PVA)層を偏光子とし、その両側に、トリアセチルセルロース(TAC)、COP(シクロオレフィンポリマー)、アクリル樹脂、ポリプロピレン(PP)等の光学特性(透明性など)の優れた材料を用いた樹脂フィルムを、保護層(偏光子の保護フィルムと呼ばれることもある)として積層した構成が一般に使用されている。さらに、保護層の樹脂フィルムが、位相差フィルムの機能を兼ねる場合もある。また、高耐久性が求められる用途にはヨウ素系では無く、染料系が用いられる場合もある。
【0068】
有機ELパネルとしては、有機発光ダイオード(OLED)構造を有し、正負の電極の間に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層など、複数の機能層が形成、積層された発光素子を有する構成が挙げられる。電極としては、透光性を有する透明電極層と、不透明な金属電極層が挙げられる。フレキシブルな有機ELパネルも製造可能であり、樹脂等のフレキシブル基材上に、箔、メッキ、印刷、蒸着、スパッタ等により、電極、配線、機能層などを形成することができる。
【実施例0069】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0070】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
反応容器、撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応容器にイソノニルアクリレート50重量部、ブチルアクリレート35重量部、メチルアクリレート10重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート0.2重量部、ベンジルアクリレート5重量部、とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1のアクリル系ポリマー溶液を得た。
[実施例2~8及び比較例1~5]
アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの種類、配合割合を、各々、表1の(A)~(D)群の記載のようにした以外は、上記の実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~5のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0071】
<粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した、反応容器内の実施例1のアクリル系ポリマー溶液に、キシリレンジイソシアネート(XDI)のアダクト体(タケネート(登録商標)D-110N;三井化学株式会社製)0.05重量部、シランカップリング剤(KBM-403;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製)0.05重量部を加えて撹拌混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の上に、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布後、90℃で5分間乾燥して粘着剤層を形成した。その後、乾燥した粘着剤層の上に、離型処理した離型フィルムを重ねて、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムからなる層構成とした。さらに23℃、50%RHの雰囲気下で7日間のエージング(養生)をすることにより、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~8及び比較例1~5]
アクリル系ポリマー以外の添加剤の種類、配合割合を、各々、表1の(G)群、(H)群の記載のようにした以外は、上記の実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~5の粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着フィルムを得た。
【0072】
【表1】
【0073】
表1において、(A)群の、アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(B)群の、アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(D)群の芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーとの合計を、100重量部とした。また、(A)~(D)群、(G)群、(H)群の添加割合として、重量部の数値を、略記号あるいは名称の後に示した。なお、(C)群は、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーであるが、比較例3では、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含む。また、(G)群は、3官能以上のイソシアネート化合物、(H)群は、シランカップリング剤である。
【0074】
また、表1に示した各成分の略記号に対する化合物名を、表2に示した。なお、コロネート(登録商標)Lは、東ソー株式会社の商品名である。TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、XDIはキシリレンジイソシアネートを意味する。シランカップリング剤のKBM-403、X-12-967C(3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物)、X-41-1805(メルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤)は、信越化学工業株式会社の商品名である。
【0075】
【表2】
【0076】
<試験方法及び評価>
得られた実施例1~8及び比較例1~5の粘着フィルムを使用して、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥離して、粘着剤層を表出させ、各種の測定用及び試験用試料とした。
【0077】
<粘着力の評価>
PET(厚さ20μm)を表面基材とした厚さ140μmの偏光板を、上記実施例1~8及び比較例1~5の粘着フィルムから得た粘着剤層を介して、8インチサイズの厚さ0.4mmの無アルカリガラスに貼合し、1時間放置した。その後、JIS-Z0237に準拠して、180°方向に300mm/分の剥離速度で、ガラス面からPETを表面基材とした偏光板を剥離した時の剥離強度を、粘着力(N/25mm)とした。
【0078】
<耐久性・輝度ムラの評価>
PET(厚さ20μm)を表面基材とした厚さ140μmの偏光板を、上記実施例1~8及び比較例1~5の粘着フィルムを使用して、8インチサイズの厚さ0.4mmの無アルカリガラスに貼合し、その後、105℃雰囲気下で500時間の保管後に、剥がれ、発泡等の欠点の有無を「耐久性」として評価し、及びバックライト上に置いた際の色の濃淡などの「輝度ムラ」の有無を評価した。耐久性評価では、粘着剤層の剥がれ、発泡等の欠点が発生している場合を「×」とし、欠点が全く無い場合を「〇」とした。また、輝度ムラの評価では、輝度にムラが認められる場合を「×」とし、ムラが無い場合を「〇」とした。
【0079】
<パネルカールの評価>
8インチサイズで、厚さ0.4mmの無アルカリガラスの裏表両面に、粘着剤組成物を架橋し形成した、厚さ20μmの粘着剤層のシートを介在させて、PETを表面基材とした厚さ140μmの偏光板をクロスニコルになるように貼合して試料パネルを作製し、80℃Dryで120時間放置した後のパネルのカールを計測した。数値は、平板上にパネルを載置した時のパネル端部の反り上がり高さである。
パネルのカール量が0.5mm以下である場合に、カールが生じていない良好な状態であるとした。
【0080】
<粘着剤組成物溶液のTI値の評価>
BH形粘度計(東機産業株式会社製)を用い、25℃に調整した18%粘着剤組成物溶液(溶剤:酢酸エチル)の粘度を、ロータ回転数2rpm及び20rpmで測定した。それぞれの回転数で測定した粘度の値からチキソトロピーインデックス(TI値)=〔2rpmでの粘度〕/〔20rpmでの粘度〕を算出した。TI値が、1.25を超える値である場合には、チキソトロピー粘性が著しく、良好な塗工性を有するものでないとした。
【0081】
<アクリル系ポリマーの平均分子量及び分子量の分散度(Mw/Mn)の評価>
ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)を使用して、アクリル系ポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を算出した。
【0082】
<耐凹み性の評価>
粘着剤組成物を架橋し形成した、20μm厚の粘着剤層のシートについて、表面に、直径5mmのスチールボールを接触させ、荷重を乗せた際の凹みを、目視で観察し評価した。荷重の質量を5gずつ増加させて凹みの観察を行い、凹みが生じない最大荷重を記録し、耐凹み性の尺度とした。荷重が10gで、凹みが生じない場合に、耐凹み性が良好であるとした。
【0083】
表3に、評価結果を示す。
【0084】
【表3】
【0085】
本願請求項1に記載の発明特定事項を全て満たし、本発明の粘着剤組成物の具体例である実施例1~8の粘着剤層は、リワーク性を考慮した、適度な粘着力を有するものであり、また、比較的高温での耐久性試験において、剥がれや浮き、発泡が生じておらず、良好な耐久性を有し、さらに、輝度ムラも発生していない。すなわち、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、偏光フィルム等の光学フィルムと、液晶表示パネルとの貼合に用いた時に、優れた耐熱性及び耐久性を発現し得るものであるといえる。
それだけでなく、光学フィルムと液晶表示パネルとを、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層で貼合した積層体では、光学フィルムに寸法変化が生じるような高温に放置された場合であっても、パネルのカールが非常に小さい状態を維持するとともに、粘着剤層自体は耐凹み性にも優れる結果が示されている。これは、環境条件により、収縮やそれに伴う応力が生じ易い光学フィルムの変形や応力を、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層が、パネル側に、その変形や応力の影響を伝搬させない性能を有しながらも、粘着剤層そのものも、変形し難い特性を有するという、これまでにない性能を有する粘着剤層を形成する粘着剤組成物の発明を提供し得ることを示している。
【0086】
また、アクリル系ポリマーについて、(A)アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量が少なく、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を有していない、比較例1の粘着剤組成物を用いた粘着剤層は、粘着力が高く、また、耐久性評価における高温処理後の剥がれや発泡はないものの、輝度ムラ及びパネルのカールが発生し、良好な性能を有していなかった。
【0087】
アクリル系ポリマーについて、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を有しておらず、重量平均分子量が本願請求項1で規定された数値範囲を下回り、また、シランカップリング剤を含有していない、比較例2の粘着剤組成物を用いた粘着剤層は、耐久性が充分でなく、輝度ムラ及びパネルのカールが発生し、耐凹み性にも劣っていた。また、粘着剤組成物溶液が、強いチキソトロピー粘性を示しており、塗工性にも劣っていた。
【0088】
アクリル系ポリマーについて、(C)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの代わりにカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを有し、また、架橋剤の含有量が過剰である、比較例3の粘着剤組成物では、粘着剤層の耐凹み性は良好であるものの、粘着力、輝度ムラ及びパネルのカールを含めた耐久性に劣っていた。また、粘着剤組成物溶液のチキソトロピー粘性も高く、塗工性が不良であった。
【0089】
また、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量が低く、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を含有せず、重量平均分子量が本願請求項1で規定された数値範囲を下回るアクリル系ポリマーを用い、また、シランカップリング剤を含有していない、比較例4の粘着剤組成物を用いた粘着剤層では、輝度ムラやパネルのカールが良好であるものの、耐久性の評価において、高温処理後の剥がれや発泡がみられ、耐凹み性も劣っていた。塗工性も良好なものでなかった。
【0090】
また、アクリル系ポリマーについて、(B)アルキル基の炭素数がC1~C5のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を含有していない、比較例5の粘着剤組成物を用いた粘着剤層では、耐久性の評価において、高温処理後の剥がれや輝度ムラが発生し、良好なものではなかった。
【0091】
このように、比較例1~5の粘着剤組成物を用いた粘着剤層は、充分な耐久性を有しておらず、また、パネルのカールの抑制と耐凹み性とを両立することができなかった。