(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103621
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087554
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2020012951の分割
【原出願日】2020-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】毛利野 哲
(72)【発明者】
【氏名】尾ヶ口 宗之
(57)【要約】
【課題】ミストの発生を抑制する。
【解決手段】布地400に対して液体を吐出するヘッド10と、布地400を保持するっプラテン40と、プラテン40上の布地400を検知する高さ検知手段80とを備え、高さ検知手段80は、発光部80Aと受光部80Bとを有し、発光部80Aは第1高さh1で射出光L1を、第1高さh1よりも低い第2高さh2で射出光L2をそれぞれ射出し、受光部80Bは、第1高さh1で射出光L1を、第2高さh2で射出光L2をそれぞれ受光して、第1高さh1及び第2高さh2で布地400を検知し、布地400が第1高さh1より低く、第2高さh2より高いときに印刷を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象に対して液体を吐出する液体吐出手段と、
前記印刷対象を保持する保持部材と、
前記保持部材上の前記印刷対象を検知する高さ検知手段と、を備え、
前記高さ検知手段は、第1高さ、及び、前記第1高さよりも低い第2高さで、前記印刷対象を検知する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記高さ検知手段が、前記第2高さで前記印刷対象を検知し、前記第1高さで前記印刷対象を検知していないときに、前記印刷対象に対する印刷動作を制御する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1高さは、前記印刷対象が前記液体吐出手段の吐出面に接触しない高さであり、
前記第2高さは、前記印刷対象と前記液体吐出手段の吐出面との間隔が所定間隔以内になる高さである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記高さ検知手段は、
前記第1高さで前記印刷対象を検知する第1検知手段と、
前記第2高さで前記印刷対象を検知する第2検知手段と、を含む
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1検知手段と前記第2検知手段とは、独立して、又は、一体で、高さを調整可能である
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記保持部材と前記高さ検知手段とを相対移動させて前記印刷対象を検知する検知動作を行うとき、
前記第1高さで前記印刷対象を検知したときには、前記検知動作を一旦停止し、所定時間経過後に、当該停止位置で、再度、前記第1高さで前記印刷対象を検知する動作を行う
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷対象に対する印刷を開始する前に、前記印刷対象の所定領域を前記高さ検知手段により前記印刷対象を検知する動作を行う
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1高さで前記印刷対象を検知したとき、又は、前記第1高さ及び前記第2高さでいずれも前記印刷対象を検知しないとき、前記高さ検知手段による検知動作を停止し、エラーを報知する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第1高さで前記印刷対象を検知したとき、又は、前記第1高さ及び前記第2高さでいずれも前記印刷対象を検知しないとき、前記印刷対象をセットする位置に前記保持部材を移動させる
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
前記保持部材は高さを調整可能であり、
前記第1高さで前記印刷対象を検知したとき、又は、前記第1高さ及び前記第2高さでいずれも前記印刷対象を検知しないとき、前記高さ検知手段による検知動作を停止し、前記保持部材を高さ調整可能な状態にする
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
前記第1高さで前記印刷対象を検知したときには、前記保持部材が高いこと、又は、前記保持部材を下げることを報知し、
前記第1高さ及び前記第2高さでいずれも前記印刷対象を検知しないときには、前記保持部材が低いこと、又は、前記保持部材を上げることを報知する
ことを特徴とする請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記印刷対象が布地である
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項13】
前記液体は顔料を含む
ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、例えばTシャツなどの布地に印刷を行う捺染装置がある。
【0003】
従来、インクを吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジに可撓性を有する検出板を備え、検出板が記録媒体に接触して撓んだことを検出したときにキャリッジを停止させるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、ヘッドと印刷対象の間隔が近すぎて接触することは回避できるが、ヘッドと印刷対象の間隔が遠すぎてミストが飛散する場合を検知できないという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ミストの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る印刷装置は、
印刷対象に対して液体を吐出する液体吐出手段と、
前記印刷対象を保持する保持部材と、
前記保持部材上の前記印刷対象を検知する高さ検知手段と、を備え、
前記高さ検知手段は、第1高さ、及び、前記第1高さよりも低い第2高さで、前記印刷対象を検知する
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ミストの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の斜視説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における高さ検知手段の説明に供する正面説明図である。
【
図5】同高さ検知手段による高さ検知動作と検知結果の説明に供する正面説明図である。
【
図7】同実施形態の高さ検知と印刷動作の制御に係る部分の説明に供するブロック説明図である。
【
図8】同実施形態における印刷制御手段による印刷動作の制御の説明に供するフロー図である。
【
図9】同実施形態における印刷制御手段による高さ検知動作の制御を含む布地(プラテン)の印刷待機位置への移動制御の説明に供するフロー図である。
【
図10】本発明の第2実施形態における印刷制御手段による高さ検知動作の制御を含む布地(プラテン)の印刷待機位置への移動制御の説明に供するフロー図である。
【
図11】本発明の第3実施形態における印刷制御手段による高さ検知動作の制御を含む布地(プラテン)の印刷待機位置への移動制御の説明に供するフロー図である。
【
図12】本発明の第4実施形態における高さ検知手段の高さ調整機構の説明に供する要部斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る印刷装置について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同印刷装置の斜視説明図、
図2は同じく平面説明図、
図3は同じく正面説明図である。
【0011】
印刷装置1は、液体を吐出する液体吐出手段であるヘッド10を搭載したキャリッジ11を備えている。ガイド部材12、13はキャリッジ11を主走査方向Xに往復移動可能に保持している。キャリッジ11は、主走査モータ14で回転される駆動プーリ15と従動プーリ16との掛け回したタイミングベルト17に連結し、主走査モータ14を駆動することによりキャリッジ11を主走査方向Xに往復移動させる。
【0012】
エンコーダシート18は主走査方向Xに沿って配置している。エンコーダシート18には周期的なスリットが設けられている。キャリッジ11は、エンコーダシート18のスリットを読み取る読み取りセンサを有し、読み取りセンサの読み取り結果から主走査方向Xにおけるキャリッジ11の位置を検出できる。
【0013】
コントローラボード50は、キャリッジ11の読み取りセンサの読み取り結果で得らえるキャリッジ位置から吐出位置でタイミングを合わせてヘッド10から液体であるインクを吐出させる制御をする。
【0014】
キャリッジ11上には4つのヘッド10が搭載されている。各ヘッド10は、液体を吐出するノズルを配列したノズル列を2列有している。キャリッジ11は、ヘッド10に供給する液体を一時的に貯留するサブタンクも搭載している。メインタンク21から、所要の色の液体を、供給チューブを介して送液ポンプによりサブタンクに送液する。
【0015】
印刷装置1は、印刷対象としての布地400を保持する保持部材であるプラテン40を備えている。プラテン40は、昇降機構41上に搭載して上下方向Zの高さを調整可能としている。プラテン40の昇降機構41はスライダ42上に搭載されている。スライダ42は、主走査方向Xと直交する副走査方向Yに延設したスライドレール43上に移動可能に載置されている。
【0016】
スライダ42は、タイミングベルト45を介して副走査駆動機構により副走査方向Yに往復移動される。スライダ42が副走査方向Yに往復移動されることにより、プラテン40も副走査方向Yに往復移動される。
【0017】
主走査方向の一端側には、ヘッド10の維持回復を行うメンテナンスユニット60が配置されている。メンテナンスユニット60は、ヘッド10のノズル面をキャッピングする吸引キャップ61と、ヘッド10のノズル面を保湿のためにキャッピングする保湿キャップ62と、ヘッド10のノズル面を払拭する払拭部材63を備えている。吸引キャップ61には吸引ポンプが接続されている。
【0018】
主走査方向の他端側には、吐出受け66が配置されている。コントローラボード50は、印刷途中で、ヘッド10から吐出受け66に液体を吐出させることにより、ヘッド10の維持回復を行う。
【0019】
また、主走査方向の一端側及び他端側には、プラテン40上の布地400を検知する高さ検知手段80の発光部80Aと受光部80Bとが配置されている。高さ検知手段80は、枠体2に取り付けられている。
【0020】
なお、プラテン40上部側に、測距センサを配置し、高さ検知を行ってもよい。
【0021】
また、印刷装置1は、電源ボタン70、操作部71、電源ユニット72などを備えている。
【0022】
この印刷装置1において、Tシャツなどの布地(印刷対象)に印刷を行うときには、布地400をプラテン40上にセットする。その後、操作部71での操作により、スライダ42を介してプラテン40を装置内後方へ完全に引き込む動作を行う。
【0023】
プラテン40を引き込むとき、プラテン40上の布地400がヘッド10と干渉するか否かなどを高さ検知手段80で検知する。このとき、ヘッド10と布地400が衝突する場合には、プラテン40の引き込みが停止され、あるいは、布地400をセットする位置にプラテン40が戻される
【0024】
プラテン40の引き込みが完了したとき、印刷データ待機状態となる。ここで、印刷装置1が外部の情報処理装置から印刷データを受信したときに印刷動作が開始される。あるいは、予めコントローラボード50に印刷データが蓄積されていた場合には、操作部71で当該印刷データを選択することによって印刷動作が開始される。
【0025】
待機状態から、印刷動作を制御するとき、印刷動作の制御には、上述の印刷を開始することや、印刷を許可すること、次のフローに移ること、印刷開始可能であることを作業者へ報知することなども含まれる。
【0026】
印刷動作が開始されると、スライダ42を介してプラテン40が印刷開始位置まで移動される。その後,キャリッジ11の移動とヘッド10からの液体吐出が行われて、1行分が印刷される。1行分が印刷されると、スライダ42を介してプラテン40が1行分移動される。キャリッジ11の1スキャンとスライダ42の間欠移動の繰り返しを行うことにより、布地400の所望の領域に印刷が行われる。印刷完了後、プラテン40は装置手前まで戻されて印刷終了となる。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態における高さ検知手段について
図4も参照して説明する。
図4は同高さ検知手段の説明に供する正面説明図である。
【0028】
高さ検知手段80は、第1検知手段81と、第2検知手段82とを含む。第1検知手段81は、第1高さh1で印刷対象である布地400を検知する。第2検知手段82は、第1高さh1よりも低い第2高さh2で印刷対象である布地400を検知する。
【0029】
第1検知手段81は、発光部81A及び受光部81Bを有し、発光部81Aは第1高さh1で射出光L1を射出し、受光部81Bは第1高さh1の射出光L1を受光する。受光部81Bに射出光L1が入射されたときは、第1高さh1で布地400を検知しない状態、受光部81Bに射出光L1が入射されないときは、第1高さh1で布地400を検知した状態となる。
【0030】
第2検知手段82は、発光部82A及び受光部82Bを有し、発光部82Aは第2高さh2で射出光L2を射出し、受光部82Bは第2高さh2の射出光L2を受光する。受光部82Bに射出光L2が入射されたときは、第2高さh2で布地400を検知しない状態、受光部82Bに射出光L2が入射されないときは、第2高さh2で布地400を検知した状態となる。
【0031】
なお、第1検知手段81の発光部81Aと第2検知手段82の発光部82Aとを併せて高さ検知手段80の発光部80Aとし、第1検知手段81の受光部81Bと第2検知手段82の受光部82Bとを併せて高さ検知手段80の受光部80Bとする。
【0032】
ここで、第1高さh1は、ヘッド10のノズル面10aと印刷対象である布地400とが接触しない高さである。第2高さh2は、ヘッド10のノズル面(吐出面)10aと布地400の表面とのギャップ(間隔)が、ヘッド10から液体を吐出したときに発生する液体のミスト量が許容範囲に収まる所定間隔の高さである。第1高さh1及び第2高さh2は、いずれも、ヘッド10のノズル面10aとプラテン40との間に位置する。
【0033】
高さ検知手段80による布地400の高さ(表面の高さ)を検知する検知動作を行うときには、プラテン40を副走査方向Yに移動させることで、布地400の所定領域を走査する。所定領域には、印刷対象の一部、全域が含まれる。
【0034】
ここで、高さ検知手段による高さ検知動作と検知結果について
図5及び
図6も参照して説明する。
図5及び
図6は同説明に供する正面説明図である。
【0035】
図4の例では、第2高さh2の射出光L2が布地400で遮られ、第1高さh1の射出光L1が布地400で遮られていないので、布地400の表面は、第2高さh2よりも高く、第2高さh1よりも低いことになる。
【0036】
このときの布地400の表面の高さは、ヘッド10と布地400とが干渉せず、発生するミスト量が許容できる範囲内に収まる高さである。つまり、布地400の表面が第2高さh2よりも高く、第2高さh1よりも低い状態であれば,印刷中に、ヘッド10と布地400とが擦れるおそれもなく、ミストの飛散も抑制される。したがって、この状態で印刷を行う。
【0037】
図5の例では、第2高さh2の射出光L2及び第1高さh1の射出光L1がいずれも布地400で遮られているので、布地400の表面は、第1高さh1よりも高いことになる。
【0038】
このときの布地400の表面の高さは、ヘッド10と布地400とが接触する高さであるので、ヘッド10を移動させて印刷を行うことができない状態である。
【0039】
図6の例では、第2高さh2の射出光L2及び第1高さh1の射出光L1がいずれも布地400で遮られていないので、布地400の表面は、第2高さh2よりも低いことになる。
【0040】
このときの布地400の表面の高さは、ヘッド10と布地400との間隔がミストの経範囲を超えるほどに広く、印刷動作を行うと、液体が細かく散ってしまい、ミストが大量に発生する。ミストの発生により、エンコーダシート18や読み取りセンサが汚れて正確なキャリッジ位置の検知を行えないなど、装置の不具合につながる。したがって、このときも印刷を行うことができない。
【0041】
次に、本実施形態の高さ検知と印刷動作の制御に係る部分について
図7のブロック説明図を参照して説明する。
【0042】
印刷制御手段801は、ヘッド駆動制御部802を介してヘッド10を駆動制御する。印刷制御手段801は、主走査駆動部803を介して主走査モータ14を駆動して、キャリッジ11を主走査方向Xに往復移動させる。印刷制御手段801は、副走査駆動部804を介して副走査モータ44を駆動して、プラテン40を副走査方向Yに往復移動させる。
【0043】
印刷制御手段801は、高さ検知手段80の第1検知手段81及び第2検知手段82の各検知結果を入力し、プラテン40上の布地400が第1高さh1、第2高さh2で検知されたか否かを判別する。
【0044】
印刷制御手段801は、プラテン40上の布地400の高さの検知動作を行うときには、副走査駆動部804を介して副走査モータ44を駆動して、プラテン40を副走査方向Yに移動させながら、高さ検知手段80の第1検知手段81及び第2検知手段82の各検知結果を取り込んで、プラテン40上の布地400が第1高さh1、第2高さh2で検知されたか否かを判別する。
【0045】
そして、印刷制御手段801は、第2高さh2で布地400を検知し、第1高さh1で布地400を検知しないときに、布地400に対する印刷動作を制御する。
【0046】
次に、本発明の第1実施形態における印刷制御手段による印刷動作の制御について
図8のフロー図を参照して説明する。
【0047】
印刷制御手段801は、布地400がセットされたプラテン40を装置後方の引き込み位置(印刷待機位置でもある)まで移動させる(ステップS101、以下、単に「S101」というように表記する。)。
【0048】
その後、印刷動作を開始する(S102)。
【0049】
次に、印刷制御手段による高さ検知動作の制御を含む布地(プラテン)の印刷待機位置への移動制御について
図9のフロー図を参照して説明する。
【0050】
次に、本発明の第1実施形態における印刷制御手段による高さ検知動作の制御を含む布地(プラテン)の印刷待機位置への移動制御について
図9のフロー図を参照して説明する。
【0051】
まず、変数S2に「0」をセットする(ステップS1、以下、単に「S1」というように表記する。)。
【0052】
次いで、布地400がセットされたプラテン40を装置後方に移動させる引き込み動作を開始する(S2)。
【0053】
そして、第1検知手段81が第1高さhで布地400を検知したか否かを判別する(SS3)。
【0054】
このとき、第1検知手段81が第1高さhで布地400を検知していなければ、第2検知手段82が第2高さhで布地400を検知したか否かを判別する(S4)。
【0055】
ここで、第2検知手段82が第2高さhで布地400を検知したときには、変数S2に「1」をセットする(S5)。
【0056】
その後、第2検知手段82が第2高さhで布地400を検知していないときにはそのまま、プラテン40が引き込み終了位置(印刷待機位置)まで到達したか否かを判別する(S6)。
【0057】
このとき、プラテン40が引き込み終了位置(印刷待機位置)まで到達していなければ、ステップS3に戻って処理を繰り返す。
【0058】
これに対し、プラテン40が引き込み終了位置(印刷待機位置)まで到達したときには、引き込み動作を終了する(S8)。
【0059】
そして、変数S2が「1」か否かを判別し(S9)、変数S2が「1」であれば、布地400の印刷待機位置への移動成功として処理を終了し、変数S2が「1」でなければ、布地400の印刷待機位置への移動失敗として処理を終了する。
【0060】
一方、ステップS3において、第1検知手段81が第1高さh1で布地400を検知したときには、プラテン40の引き込み動作を終了し(S10)、布地400の印刷待機位置への移動失敗として処理を終了する。
【0061】
つまり、高さ検知手段80により第1高さh1で布地400を検知したときには、布地400とヘッド10とが接触するため、検知動作を終了し、失敗とする。
【0062】
また、高さ検知手段80により第1高さh1及び第2高さh2のいずれでも布地400を検知できないまま、印刷待機位置(引き込み終了位置)に到達したときには、ヘッド10と布地400の間隔が開きすぎており、ミストが大量発生するなどの不具合につながるため、失敗とする。
【0063】
これらに対し、高さ検知手段80により第1高さh1で布地400を検知しないで、第2高さh2で布地400を検知したときには、ヘッド10と布地400との間隔が適正であるので、成功とする。
【0064】
このプラテン40の印刷待機位置への移動による布地400の高さ検知制御は、プラテン40の副走査方向全域にわたって走査を実施した方が、ヘッド10と布地400との接触防止やミストの大量発生を防止する上で効果的である。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態における印刷制御手段による高さ検知動作の制御を含む布地(プラテン)の印刷待機位置への移動制御について
図10のフロー図を参照して説明する。
【0066】
まず、ステップS11~S19は、前記第1実施形態のステップS1~S19と同じ処理であるので、説明を省略する。
【0067】
本実施形態では、ステップS13において、第1検知手段81が第1高さh1で布地400を検知したときには、プラテン40の引き込み動作(相対移動)を一旦停止する(S20)。そして、所定時間待機する(S21)。所定時間経過後、当該プラテン40の引き込み動作を停止した停止位置で、再度、第1検知手段81が第1高さh1で布地400を検知したか否かを判別する(S22)。
【0068】
ここで、第1検知手段81が第1高さh1で布地400を検知していないときには、プラテン40の引き込み動作を再開し(S21)、ステップ13に戻って検知動作を続行する。
【0069】
これに対し、再度、第1検知手段81が第1高さh1で布地400を検知したときには、布地400の印刷待機位置への移動失敗として処理を終了する。
【0070】
つまり、プラテン40を副走査方向Yに移動して引き込み動作を行うとき、プラテン40に微小な振動が発生することがある。プラテン40が振動すると、プラテン40に載っている布地400も振動する。このとき布地400の表面が高さ検知手段80による第1高さh1の検知限界近傍であった場合,布地400の振動による高さの変動によって第1高さh1であると検知されることがある。
【0071】
そこで、高さ検知手段80により第1高さh1で布地400が検知されたときには、一旦、プラテン40の移動を停止して、振動が収まるまで所定時間待機する。そして、所定時間経過後に、再度、高さ検知手段80により第1高さh1で布地400を検知しているかを判別する。
【0072】
そして、高さ検知手段80による再度の検知において、第1高さh1で布地400を検知していないときには、プラテン40の引き込み動作を再開して、検知動作を再開する。
【0073】
これにより、プラテン40の振動の影響を排除して、より正確な検知動作を行うことができ、不必要に印刷動作を行わないことを防止できる。
【0074】
なお、高さ検知手段80により第2高さh2で布地400を検知したときには、再度の検知を行っていない(S15)が、上記と同様に、再度の検知を行うこともできる。
【0075】
次に、本発明の第3実施形態における印刷制御手段による高さ検知動作の制御を含む布地(プラテン)の印刷待機位置への移動制御について
図11のフロー図を参照して説明する。
【0076】
まず、ステップS31~S39は、前記第1実施形態のステップS1~S19と同じ処理であるので、説明を省略する。
【0077】
本実施形態では、ステップS33において、第1検知手段81が第1高さh1で布地400を検知したときには、プラテン40の引き込み動作を停止し(S40)、プラテン40を布地400がセットされるセット位置(初期位置)に復帰移動させる(S41)。
【0078】
そして、プラテン高さNG(不良)を操作部71に表示し、プラテン40の高さ調整後の動作再開を指示する動作再開ボタンも表示する(S42)。
【0079】
その後、ユーザーによってプラテン40の高さが調整され(S43)、ユーザーが動作再開ボタンを押下したときに、ステップS31に移行して、検知動作を最初から再開する。
【0080】
また、ステップS39において、変数S2=1でないときも、ステップS41に移行して、プラテン40の高さの再調整を行う。
【0081】
これにより、布地400の高さが高すぎる場合に、プラテン40の高さ調整を行って、動作を再開できる。なお、布地400をセットし直して動作再開ボタンが押下されたときでも、検知動作は再開される。
【0082】
また、検知動作の取り消しを指示するキャンセルボタンを備えて、検知動作を取り消し、最初から動作を再開することもできる.
【0083】
次に、本発明の第4実施形態について
図12ないし
図14を参照して説明する。
図12は同実施形態における高さ検知手段の高さ調整機構の説明に供する要部斜視説明図、
図13は同じく拡大斜視説明図、
図14は同じく正面説明図である。
【0084】
本実施形態では、高さ検知手段80は、第1検知手段81と、第2検知手段82とを含む。第1検知手段81は、第1高さh1で布地400を検知する。第2検知手段82は第2高さh2で布地400を検知する。
【0085】
なお、第1検知手段81は、主走査方向に射出光を射出する発光部81Aと、射出光を受光する受光部81Bとで構成されている。同様に、第2検知手段82は、主走査方向に射出光を射出する発光部と、射出光を受光する受光部82Bとで構成されている。
【0086】
そして、第1検知手段81の受光部81Bは、高さ調整機構90により高さを調整可能である。高さ調整機構90は、受光部81Bを取り付けたL字のブラケット91を有している。L字のブラケット91は本体のフレーム9にぶら下げられた調整ねじ92によって高さを調整可能としている。スプリング93は、調整ネジ92とL字ブラケット91の間に圧をかけることで、常に、調整ねじ92にて規定した間隔を保つためのものである。第1検知手段81の発光部81Aにも高さ調整機構90が設けられる。
【0087】
つまり、布地400には種々の厚さがあるため、第1高さh1を固定すると、布地400が厚くなったときに対応できなくなる。そこで、第1検知手段81の高さを調整する高さ調整手段である高さ調整機構90を備えることで、布地40の厚さの変化に対応して第1高さh1を変更することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、第1検知手段81による検知高さである第1高さh1を変更できるようにしているが、第2検知手段82による検知高さである第2高さh2についても同様にして変更することができる。
【0089】
この場合、第1検知手段81と第2検知手段82とを独立して高さ調整可能とすることもでき、あるいは、第1検知手段81と第2検知手段82とを一体で高さ調整可能とすることもできる。
【0090】
また、例えば、高さ検知手段は、複数の発光部を列状に配置した発光手段と、複数の受光部を列状に配置した受光手段とで構成することができる。このような高さ検知手段を使用すれば、使用する発光部と受光部とを選択可能とすることで、第1高さ及び第2高さを調整(変更)可能とすることもできる。つまり、高さ検知手段は、別体の第1検知手段と第2検知手段とで構成するものに限られない。
【0091】
上記実施形態では保持部材がトレイである例で説明しているが、カセットなどとすることもできる。
【0092】
また、上記実施形態では、印刷対象が布地である場合について説明しているが、これに限るものではない。布地以外の印刷対象を保持部材にセットして印刷する場合にも同様に本発明を適用することができる。
【0093】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0094】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0095】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0096】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0097】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0098】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0099】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0100】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0101】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0102】
本願発明は、顔料を含む液体を吐出する印刷装置において好適に用いられる。
【0103】
印刷対象として布を用いる場合、滲みが少なく、発色や耐光性がよいこと、印字後の洗浄工程が不要であることから顔料が好適に用いられる。しかしながら、顔料は固く、ノズル面に付着し、擦れることでノズル面を傷つけ、吐出不良を生じる場合がある。
【0104】
そのため、ミスト等によるノズル面への顔料付着が起こると、その後のノズル面クリーニング動作時にノズル面を傷つけることや、印刷対象に付着した顔料とノズル面が直接接触することでノズル面を傷つけることがある。
【0105】
したがって、ミストを抑制し、さらに印刷対象とノズル面が接触せず、安定した印字動作を提供する本発明は、顔料を含む液体(インク)を用いる場合に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0106】
1 印刷装置
10 ヘッド(液体吐出手段)
11 キャリッジ
40 プラテン
80 高さ検知手段
81 第1高さ検知手段
82 第2高さ検知手段
90 高さ調整機構
400 布地
801 印刷制御手段
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出対象に対して液体を吐出する液体吐出手段と、
前記液体吐出対象を保持する保持部材と、
前記保持部材上の前記液体吐出対象を検知する高さ検知手段と、を備え、
前記高さ検知手段は、第1高さ、及び、前記第1高さよりも低い第2高さで、前記液体吐出対象を検知し、
前記高さ検知手段が、前記第2高さで前記液体吐出対象を検知し、前記第1高さで前記液体吐出対象を検知していないとき、前記液体吐出手段は前記液体吐出対象に液体を吐出し、
前記液体吐出対象を保持した前記保持部材を移動させているときに、前記高さ検知手段が前記第1高さで前記液体吐出対象を検知したとき、前記保持部材の移動を停止させる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記高さ検知手段が前記第2高さで前記液体吐出対象を検知しないとき、前記液体吐出手段は前記液体吐出対象に液体を吐出しない
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1高さは、前記液体吐出対象が前記液体吐出手段の吐出面に接触しない高さであり、
前記第2高さは、前記液体吐出対象と前記液体吐出手段の吐出面との間隔が所定間隔以内になる高さである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記高さ検知手段は、
前記第1高さで前記液体吐出対象を検知する第1検知手段と、
前記第2高さで前記液体吐出対象を検知する第2検知手段と、を含み、
前記第1検知手段と前記第2検知手段とは、独立して、又は、一体で、高さを調整可能である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出手段による前記液体吐出対象に対する液体の吐出を開始する前に、前記高さ検知手段が、前記液体吐出対象の所定領域を検知する動作を行う
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記保持部材は高さを調整可能であり、
前記第1高さで前記液体吐出対象を検知したとき、又は、前記第2高さで前記液体吐出対象を検知しないとき、前記保持部材の移動を停止し、前記保持部材を高さ調整可能な状態にする
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出対象を保持した前記保持部材を前記液体吐出対象をセットする位置から液体吐出待機位置に移動させた後、
前記保持部材の移動と前記液体吐出手段による前記液体吐出対象への液体の吐出
を繰り返し、
前記液体吐出手段による前記液体吐出対象への液体の吐出が完了した後、前記保持部材を前記液体吐出対象をセットする位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1高さで前記液体吐出対象を検知したとき、又は、前記第1高さ及び前記第2高さでいずれも前記液体吐出対象を検知しないとき、エラーを報知する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の印刷装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体装置は、
液体吐出対象に対して液体を吐出する液体吐出手段と、
前記液体吐出対象を保持する保持部材と、
前記保持部材上の前記液体吐出対象を検知する高さ検知手段と、を備え、
前記高さ検知手段は、第1高さ、及び、前記第1高さよりも低い第2高さで、前記液体吐出対象を検知し、
前記高さ検知手段が、前記第2高さで前記液体吐出対象を検知し、前記第1高さで前記液体吐出対象を検知していないとき、前記液体吐出手段は前記液体吐出対象に液体を吐出し、
前記液体吐出対象を保持した前記保持部材を移動させているとき、前記高さ検知手段が、前記第1高さで前記液体吐出対象を検知したとき、前記保持部材の移動を停止させる
構成とした。