IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図1
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図2
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図3
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図4
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図5
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図6
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図7
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図8
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図9
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図10
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図11
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図12
  • 特開-欠陥検査方法および欠陥検査装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010366
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】欠陥検査方法および欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20240117BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240117BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240117BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240117BHJP
   G01N 21/896 20060101ALI20240117BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240117BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240117BHJP
【FI】
G01N21/89 H
G02B5/30
G02B5/20 101
G01N21/892 A
G01N21/896
C08J5/18 CER
C08J7/04 Z CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111669
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】守田 正人
(72)【発明者】
【氏名】久門 義明
(72)【発明者】
【氏名】亀井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏昌
【テーマコード(参考)】
2G051
2H148
2H149
4F006
4F071
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB02
2G051BA11
2G051CB02
2G051CC07
2G051CC20
2G051DA06
2H148BD21
2H148BD22
2H148BG14
2H149AA22
2H149AB01
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA12
2H149DA23
2H149DA26
2H149EA17
2H149EA19
2H149FA03W
2H149FA24Y
2H149FA33Y
2H149FA40W
2H149FA56Y
2H149FA58Y
2H149FB08
4F006AA02
4F006AB62
4F006AB64
4F006AB66
4F006BA15
4F006CA05
4F071AA09
4F071AB26
4F071AC10
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
【課題】 液晶の面内配向方向が厚み方向に変化するツイスト配向液晶層を含む位相差フィルムの欠陥を精度よく検出することができる欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】 第1偏光子と第2偏光子との間にツイスト配向液晶層を含む被検査体を配置する工程1と、第1偏光子側から光を照射し透過した光の透過光量が最小となるように第1偏光子および第2偏光子の吸収軸の角度αおよび角度βを求める工程2と、角度α1が角度αに対して±5°の範囲となり、角度β1が角度βに対して±50°の範囲となるよう第1偏光子および第2偏光子の角度を調整する工程3と、第1偏光子側から光を照射して第2偏光子を透過した光を受光して画像を取得する工程4と、画像に基づいて被検査体に存在する欠陥を検出する工程5と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1偏光子と、第2偏光子との間に、厚み方向にねじれ配向した液晶化合物を固定してなるツイスト配向液晶層を含む被検査体を配置する工程1と、
前記第1偏光子側から前記第2偏光子側に向かって光を照射した際に、前記第1偏光子、前記被検査体、および、前記第2偏光子を透過した光の透過光量が最小となる、光の照射方向からみた面内方向の任意の基準線に対する、前記第1偏光子の吸収軸の角度α、および、前記第2偏光子の吸収軸の角度β、を求める工程2と、
前記第1偏光子の吸収軸の角度α1が前記工程2で求めた角度αに対して±5°の範囲となり、前記第2偏光子の吸収軸の角度β1が、前記工程2で求めた角度βに対して±50°の範囲となるよう前記第1偏光子および前記第2偏光子の角度を調整するか、または、前記第1偏光子の吸収軸の角度α1が前記工程2で求めた角度αに対して±50°の範囲となり、前記第2偏光子の吸収軸の角度β1が、前記工程2で求めた角度βに対して±5°の範囲となるよう前記第1偏光子および前記第2偏光子の角度を調整する工程3と、
前記工程3の後に、前記第1偏光子側から前記第2偏光子側に向かって光を照射して、前記第2偏光子を透過した光を受光して、画像を取得する工程4と、
前記画像に基づいて、前記被検査体に存在する欠陥を検出する工程5と、を有する欠陥検査方法。
【請求項2】
前記被検査体が長尺なフィルム状物であり、前記被検査体を長手方向に搬送しつつ、前記工程4を実施するものであり、
前記被検査体の搬送方向であるMD方向において、被検査体の表面の垂線に対して前記光の入射角度を0~40°の範囲で傾斜させた、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記被検査体が長尺なフィルム状物であり、前記被検査体を長手方向に搬送しつつ、前記工程4を実施するものであり、
前記被検査体の搬送方向と直交するTD方向において、被検査体の表面の垂線に対して前記光の入射角度を0~40°の範囲で傾斜させた、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記被検査体が、前記ツイスト配向液晶層とCプレートとを含む、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
前記被検査体が、前記ツイスト配向液晶層とAプレートとを含む、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記被検査体が、前記ツイスト配向液晶層と2軸異方性層とを含む、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記被検査体が、2以上の前記ツイスト配向液晶層を含む、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記工程4において、光を照射する光源と、前記第2偏光子を透過した光を受光する受光器との間に、カラーフィルタを含む、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の欠陥検査方法を実施する欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位相差フィルムの局所的な位相差変動によって生じる点欠陥をインラインで計測する方法は、クロスニコルに配置した2枚の偏光子で位相差フィルムを挟み、光源で照明した際の透過光の変動をカメラ等の受光器で検出するというものであった。
【0003】
例えば、特許文献1には、検査対象フイルムを光学的に検出した光電信号に基づいてフイルムの欠陥を検査するフイルムの欠陥検査装置において、検査対象フイルムの一方の面側に配置された第1の偏光板と検査対象フイルムの他方の面側に配置された第2の偏光板とからなり、各偏光板がフイルム面と平行とされるとともに、いずれか一方の偏光板が検査対象フイルムの遅相軸に対して略平行であり、各偏光板がクロスニコル配置とされた偏光ユニットと、検査対象フイルムの一方の面側に配置され、第1の偏光板を介して検査対象フイルムに光を照射する光源と、検査対象フイルムの他方の面側に配置され、検査対象フイルムから射出され第2の偏光板を透過した光源からの光を受光する受光手段とを備え、受光手段は、その光軸がフイルム面の法線となすあおり角をθ1とし、フイルム面上における検査対象フイルムの遅相軸と直交する基準線とのなす回転角をθ2としたときに、「15°≦θ1≦35°」、「20°≦θ2≦60°」の条件を満たす位置に配されているフイルムの欠陥検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-327915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の方法は、計測対象の位相差フィルムが、二軸性光学異方性層または一軸性光学異方性層であるとの前提であるため、位相差フィルムを挟む2つの偏光板はクロスニコルに配置される。
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、液晶化合物の面内配向方向が厚み方向に変化するツイスト配向異方性層(ツイスト配向液晶層)を含む位相差フィルムを計測する場合、従来の方法では光学異方性層の光学特性の変化に対して受光量の変化が小さく、点欠陥の検出精度が劣る問題があることが分かった。
【0007】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、液晶の面内配向方向が厚み方向に変化するツイスト配向液晶層を含む位相差フィルムの欠陥を精度よく検出することができる欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 第1偏光子と、第2偏光子との間に、厚み方向にねじれ配向した液晶化合物を固定してなるツイスト配向液晶層を含む被検査体を配置する工程1と、
第1偏光子側から第2偏光子側に向かって光を照射した際に、第1偏光子、被検査体、および、第2偏光子を透過した光の透過光量が最小となる、光の照射方向からみた面内方向の任意の基準線に対する、第1偏光子の吸収軸の角度α、および、第2偏光子の吸収軸の角度β、を求める工程2と、
第1偏光子の吸収軸の角度α1が工程2で求めた角度αに対して±5°の範囲となり、第2偏光子の吸収軸の角度β1が、工程2で求めた角度βに対して±50°の範囲となるよう第1偏光子および第2偏光子の角度を調整するか、または、第1偏光子の吸収軸の角度α1が工程2で求めた角度αに対して±50°の範囲となり、第2偏光子の吸収軸の角度β1が、工程2で求めた角度βに対して±5°の範囲となるよう第1偏光子および第2偏光子の角度を調整する工程3と、
工程3の後に、第1偏光子側から第2偏光子側に向かって光を照射して、第2偏光子を透過した光を受光して、画像を取得する工程4と、
画像に基づいて、被検査体に存在する欠陥を検出する工程5と、を有する欠陥検査方法。
[2] 被検査体が長尺なフィルム状物であり、被検査体を長手方向に搬送しつつ、工程4を実施するものであり、
被検査体の搬送方向であるMD方向において、被検査体の表面の垂線に対して光の入射角度を0~40°の範囲で傾斜させた、[1]に記載の欠陥検査方法。
[3] 被検査体が長尺なフィルム状物であり、被検査体を長手方向に搬送しつつ、工程4を実施するものであり、
被検査体の搬送方向と直交するTD方向において、被検査体の表面の垂線に対して光の入射角度を0~40°の範囲で傾斜させた、[1]または[2]に記載の欠陥検査方法。
[4] 被検査体が、ツイスト配向液晶層とCプレートとを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の欠陥検査方法。
[5] 被検査体が、ツイスト配向液晶層とAプレートとを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の欠陥検査方法。
[6] 被検査体が、ツイスト配向液晶層と2軸異方性層とを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の欠陥検査方法。
[7] 被検査体が、2以上のツイスト配向液晶層を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の欠陥検査方法。
[8] 工程4において、光を照射する光源と、第2偏光子を透過した光を受光する受光器との間に、カラーフィルタを含む、[1]~[7]のいずれかに記載の欠陥検査方法。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の欠陥検査方法を実施する欠陥検査装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶の面内配向方向が厚み方向に変化するツイスト配向液晶層を含む位相差フィルムの欠陥を精度よく検出することができる欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の欠陥検査方法の一例を実施する欠陥検査装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明の欠陥検査方法で検査する被検査体の一例を概念的に示す図である。
図3】本発明の欠陥検査方法で検査する被検査体の他の一例を概念的に示す図である。
図4】本発明の欠陥検査方法で検査する被検査体の他の一例を概念的に示す図である。
図5】本発明の欠陥検査方法で検査する被検査体の他の一例を概念的に示す図である。
図6】角度αおよび角度βを説明するための図である。
図7】角度αおよび角度βを説明するための図である。
図8】角度αおよび角度βを説明するための図である。
図9】角度αおよび角度βを説明するための図である。
図10図1に示す欠陥検査装置における光の入射角度の範囲を説明するための概念図である。
図11図1に示す欠陥検査装置における光の入射角度の範囲を説明するための概念図である。
図12】光源の波長分布を模式的に示すグラフである。
図13】実施例で用いたカラーフィルタの特性を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を表す表記である。
本明細書において、「同一」等の用語は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。また、本明細書において、角度についての「同一」等の用語は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
【0013】
[欠陥検査方法および欠陥検査装置]
本発明の欠陥検査方法は、
第1偏光子と、第2偏光子との間に、厚み方向にねじれ配向した液晶化合物を固定してなるツイスト配向液晶層を含む被検査体を配置する工程1と、
第1偏光子側から第2偏光子側に向かって光を照射した際に、第1偏光子、被検査体、および、第2偏光子を透過した光の透過光量が最小となる、光の照射方向からみた面内方向の任意の基準線に対する、第1偏光子の吸収軸の角度α、および、第2偏光子の吸収軸の角度β、を求める工程2と、
第1偏光子の吸収軸の角度α1が工程2で求めた角度αに対して±5°の範囲となり、第2偏光子の吸収軸の角度β1が、工程2で求めた角度βに対して±50°の範囲となるよう第1偏光子および第2偏光子の角度を調整するか、または、第1偏光子の吸収軸の角度α1が工程2で求めた角度αに対して±50°の範囲となり、第2偏光子の吸収軸の角度β1が、工程2で求めた角度βに対して±5°の範囲となるよう第1偏光子および第2偏光子の角度を調整する工程3と、
工程3の後に、第1偏光子側から第2偏光子側に向かって光を照射して、第2偏光子を透過した光を受光して、画像を取得する工程4と、
画像に基づいて、被検査体に存在する欠陥を検出する工程5と、を有する、欠陥検査方法である。
【0014】
また、本発明の欠陥検査装置は、上記欠陥検査方法を実施する欠陥検査装置である。
【0015】
図1に本発明の欠陥検査方法の一例を実施する欠陥検査装置の一例を模式的に示す。
図1に示す欠陥検査装置100は、被検査体10を挟んで配置される第1偏光子102および第2偏光子104と、第1偏光子102の被検査体10とは反対側に配置される光源106と、第2偏光子104の被検査体10とは反対側に配置される受光器108と、第2偏光子104と受光器108との間に配置されるカラーフィルタ110と、受光器108が受光した光から画像を生成する画像生成部120と、取得した画像に基づいて被検査体10に存在する欠陥を検出する欠陥検出部122と、記憶部124と、制御部126と、を有する。
【0016】
<被検査体>
まず、欠陥検査装置100が実施する本発明の欠陥検査方法で検査する被検査体10について説明する。
【0017】
被検査体10は、厚み方向にねじれ配向した液晶化合物を固定してなるツイスト配向液晶層を含む位相差フィルムである。ツイスト配向液晶層とは、液晶化合物を厚さ方向に捩じれ配向した光学異方性層である。
【0018】
図2図5それぞれに、ツイスト配向液晶層を含む被検査体10の例を示す。
【0019】
図2に示す被検査体10aは、ツイスト配向液晶層12とCプレート14とを有する。なお、図示例においては、被検査体10aは、ツイスト配向液晶層12およびCプレート14を有するものとしたが、支持体、配向膜、接着層等のこれ以外の層を有していてもよい。この点については、後述する図2図5に示す被検査体についても同様である。
【0020】
〔ツイスト配向液晶層〕
図2に示すように、ツイスト配向液晶層12は、厚み方向(図2中、z軸方向)を螺旋軸とする捩れ配向した液晶化合物LCを含む。ツイスト配向液晶層12は、いわゆる螺旋構造を持ったキラルネマチック相、コレステリック相などを示すことが好ましい。液晶化合物LCについては後段で詳述するが、ツイスト配向液晶層12で使用される液晶化合物LCとしては、ネマチック液晶相を示す液晶化合物が好ましく用いられる。なお、上記相を形成する際には、ネマチック液晶相を示す液晶化合物と後述するキラル剤とを混合したものが使用されることが好ましい。
【0021】
液晶化合物が捩れ配向するとは、ツイスト配向液晶層12の厚み方向を軸として、ツイスト配向液晶層12の一方の主表面から他方の主表面までの液晶化合物が捩れることを意図する。それに伴い、液晶化合物の配向方向(面内遅相軸方向)が、ツイスト配向液晶層12の厚さ方向の位置によって異なる。
【0022】
なお、ツイスト配向液晶層12中の液晶化合物の捩れ方向には2種類あるが、右捩れでも左捩れでも構わない。図2において、右捩れとは、図中上側からツイスト配向液晶層12を観察した際の右捩れ(時計回りの捩れ)を意図する。
【0023】
ツイスト配向液晶層12における、一方の主表面から他方の主表面までの液晶化合物の捩れ角には特に制限はなく、被検査体10に求められる性能等に応じて適宜設定される。一例として、ツイスト配向液晶層12における液晶化合物の捩れ角度(液晶化合物の配向方向の捩れ角度)は、90±30°の範囲(60~120°の範囲内)であることが好ましく、色味ムラがより抑制される点で、90±20°の範囲(70~110°の範囲内)であることがより好ましく、90±10°の範囲(80~100°の範囲内)であることがさらに好ましい。
なお、捩れ角度の測定方法は、Axometrics社のAxoScan(ポラリメーター)装置を用い同社の装置解析ソフトウェアを用いて測定する。
【0024】
〔Cプレート〕
Cプレート14としては、ポジティブCプレート(以下、正のCプレートともいう)であってもネガティブCプレート(以下、負のCプレートともいう)であってもよい。
ここで、ポジティブCプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nz > nx ≒ nyを満たす光学部材(光学異方性層)のことを言う。また、ネガティブCプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nx ≒ ny > nzを満たす光学部材(光学異方性層)のことを言う。
【0025】
Cプレート14としては、特に制限はなく公知のCプレートが利用可能である。製造のしやすさ等の観点から、Cプレート14は、液晶化合物を用いて形成された層、または、延伸したポリマーフィルム(延伸フィルム)であることが好ましい。
【0026】
図3に示す被検査体10bは、ツイスト配向液晶層12とAプレート16とを有する。ツイスト配向液晶層12は、上述したツイスト配向液晶層12と同様の構成を有する。
【0027】
〔Aプレート〕
Aプレート16としては、ポジティブAプレート(以下、正のAプレートともいう)であってもネガティブAプレート(以下、負のAプレートともいう)であってもよい。
ここで、ポジティブAプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nx > ny ≒ nzを満たす光学部材(光学異方性層)のことを言う。また、ネガティブAプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nz ≒ nx > nyを満たす光学部材(光学異方性層)のことを言う。
【0028】
Aプレート16としては、特に制限はなく公知のAプレートが利用可能である。製造のしやすさ等の観点から、Aプレート16は、液晶化合物を用いて形成された層、または、延伸したポリマーフィルム(延伸フィルム)であることが好ましい。
【0029】
図4に示す被検査体10cは、ツイスト配向液晶層12と2軸異方性層18とを有する。ツイスト配向液晶層12は、上述したツイスト配向液晶層12と同様の構成を有する。
【0030】
〔2軸異方性層〕
2軸異方性層18としては、特に制限はなく公知の2軸異方性層が利用可能である。製造のしやすさ等の観点から、2軸異方性層18は、液晶化合物を用いて形成された層、または、延伸したポリマーフィルム(延伸フィルム)であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の欠陥検査方法で検査する被検査体の他の例としては、ツイスト配向液晶層と支持体とを有し、支持体として、一般的な位相差層を用いて、ツイスト配向液晶層と支持体とで広帯域な位相差板(λ/4位相差板)となる積層体も挙げられる。
具体的には、ツイスト配向液晶層および支持体は以下の構成を満たすものであることが好ましい。
【0032】
波長550nmで測定したツイスト液晶層(ツイスト液晶層の液晶化合物)の屈折率異方性Δnとツイスト液晶層の厚みdとの積Δndの値は、下記式(1)を満たす。
式(1) 256nm≦Δnd≦316nm
なかでも、式(1A)を満足することが好ましく、さらに式(1B)を満足することがより好ましい。
式(1A) 266nm≦Δnd≦306nm
式(1B) 276nm≦Δnd≦296nm
【0033】
波長550nmで測定した支持体のレタデーション値(面内レタデーション)であるReB(550)は、下記式(2)を満たす。
式(2) 67.5nm≦ReB(550)≦127.5nm
なかでも、式(2A)を満足することが好ましく、さらに式(2B)を満足することがより好ましい。
式(2A) 77.5nm≦ReB(550)≦117.5nm
式(2B) 87.5nm≦ReB(550)≦107.5nm
支持体の550nmにおける厚み方向のレタデーション値(Rth(550))は特に制限されないが、-110~110nmが好ましく、-80~80nmがより好ましい。
【0034】
このような積層体については、特許5966079号公報に詳細に記載されている。特許5966079号公報において第1光学異方性層がツイスト配向液晶層に相当し、第2光学異方性層が支持体に相当する。
【0035】
図5に示す被検査体10dは、ツイスト配向液晶層12aとツイスト配向液晶層12bとを有する。ツイスト配向液晶層12aおよびツイスト配向液晶層12bは、上述したツイスト配向液晶層12と同様の構成を有する。
【0036】
ツイスト配向液晶層12aおよびツイスト配向液晶層12bは、同じ構成であってもよく、あるいは、捩じれ角、厚さ、および、液晶化合物の種類等のいずれかが互いに異なるものであってもよい。
【0037】
(液晶化合物)
ツイスト配向液晶層12、Cプレート14、Aプレート16、および、2軸異方性層18の形成に用いられる液晶化合物の種類については、特に制限されない。例えば、低分子液晶化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋または熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層、あるいは、高分子液晶化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。
【0038】
一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(ディスコティック液晶化合物)に分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井正男著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上のディスコティック液晶化合物、または棒状液晶化合物とディスコティック液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0039】
なお、棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、および、特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができる。ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]、および、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができる。なお、棒状液晶化合物およびディスコティック液晶化合物とも、これらに限定されない。
【0040】
ツイスト配向液晶層12、Cプレート14、Aプレート16、および、2軸異方性層18は、温度変化および/または湿度変化を小さくできることから、重合性基を有する棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いて形成することがより好ましい。液晶化合物は2種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の重合性基を有していることが好ましい。
【0041】
つまり、ツイスト配向液晶層12、Cプレート14、Aプレート16、および、2軸異方性層18は、重合性基を有する棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物が重合等によって固定されて形成された層であることが好ましく、この場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。ディスコティック液晶化合物および棒状液晶化合物に含まれる重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが好ましく挙げられ、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0042】
(位相差フィルムの形成方法)
被検査体である位相差フィルムは、種々の方法で作製することができる。その一例は、以下の通りである。
【0043】
まず、高分子フィルムおよびガラス板等の支持体を用意し、その上に、必要に応じて配向膜を形成し、支持体表面または配向膜表面に、重合性基を有する液晶化合物および所望によりキラル剤等の添加剤を含むツイスト配向液晶層形成用組成物を塗布して、塗膜を形成する。この塗膜を所望により加熱して、塗膜中の液晶化合物の分子を捩れ配向させ、その後、固化する温度まで冷却して、硬化処理(紫外線の照射(光照射処理)もしくは加熱処理)により重合を進行させて、その捩れ配向を固定し、旋光作用のあるツイスト配向液晶層を得る。液晶組成物の塗布は後述の溶媒を含有した液晶組成物の塗布液を公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。また、インクジェット装置を用いて吐出して形成してもよい。
【0044】
次に、ツイスト配向液晶層上(または、その上に必要に応じて形成した配向膜表面上)に、重合性基を有する液晶化合物および所望によりキラル剤等の添加剤を含む第2光学異方性層形成用組成物を塗布して、塗膜を形成する。その後、配向状態にある重合性基を有する液晶化合物に対して、硬化処理(加熱処理または光照射処理)を施し、第2の光学異方性層(ツイスト配向液晶層12b、Cプレート14、Aプレート16、あるいは、2軸異方性層18)を形成する。
【0045】
ツイスト配向液晶層を形成するためのツイスト配向液晶層形成用組成物、および、第2の光学異方性層(ツイスト配向液晶層12b、Cプレート14、Aプレート16、あるいは、2軸異方性層18)を形成するための第2光学異方性層形成用組成物は、液晶化合物に加えて、キラル剤、重合開始剤等を含むことが好ましい。
【0046】
(重合開始剤)
配向させた液晶化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、重合開始剤を用いて、液晶化合物に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
重合開始剤の使用量は、組成物の固形分の0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
(キラル剤)
キラル剤は、液晶化合物を捩れ配向させるために添加されるが、勿論、液晶化合物が、分子内に不斉炭素を有する等、光学活性を示す化合物である場合は、キラル剤の添加は不要である。また、製造方法によっては、および捩れ角度によっては、キラル剤の添加は不要である。キラル剤としては、併用する液晶化合物を相溶するものであれば、特に構造についての制限はない。公知のキラル剤(例えば、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」,第3章4-3項,TN、STN用カイラル剤,199頁,1989年に記載)のいずれも用いることができる。キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が挙げられる。また、キラル剤は、液晶性を有していてもよい。
【0048】
(他の添加剤)
ツイスト配向液晶層形成用組成物、および、第2光学異方性層形成用組成物は、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等含有してもよい。これらを添加することで、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0049】
また、液晶化合物を所望の配向状態にするために、ツイスト配向液晶層形成用組成物、および、第2光学異方性層形成用組成物は、配向制御剤を含有してもよい。添加剤としては各種公知のものを使用できる。
【0050】
このような被検査体である位相差フィルムのより具体的な例としては、特許第5753922号、特許第5960743号、および、特許第5966079号に記載の円偏光板用位相差板が挙げられる。
【0051】
次に、欠陥検査装置100の構成を説明する。
【0052】
図1に示す欠陥検査装置100は、図中、紙面に垂直な方向に被検査体10を搬送しつつ、被検査体10に存在する欠陥を検出するものである。
【0053】
<第1偏光子および第2偏光子>
第1偏光子102および第2偏光子104は、公知の直線偏光子であり、被検査体10を挟んで平行に配置される。図示例においては、第1偏光子102は、被検査体10の幅(被検査体の搬送方向と直交する方向の幅、図中左右方向の幅)よりも大きな幅を有し、被検査体10を左右方向に全面的に覆っている。一方、第2偏光子104は、後述する複数の受光器108に対応して、各受光器108の前に複数、図示例においては5枚、幅方向に配列されている。
【0054】
ここで、第1偏光子102および第2偏光子104は、第1偏光子102側から第2偏光子104側に向かって光を照射した際に、第1偏光子102、被検査体10、および、第2偏光子104を透過した光の透過光量が最小となる、光の照射方向からみた面内方向の任意の基準線に対する、第1偏光子102の吸収軸の角度α、および、第2偏光子104の吸収軸の角度β、を求める工程2で求められた角度αおよび角度βに基づいてそれぞれ配置される。
この点については、後に詳述する。
【0055】
<光源>
光源106は、第1偏光子102の被検査体10とは反対側に配置されて、第1偏光子102、被検査体10、および、第2偏光子104を透過する方向に光を照射する。
【0056】
光源106としては、例えば、発光ダイオード、レーザー(例えば、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、及びYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザー)、ランプ(例えば、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、および、水銀キセノンランプ)が挙げられる。
【0057】
被検査体を長手方向に搬送しつつ各種処理を行う、いわゆる、インライン検査では、光源は、白色発光ダイオード、発光ダイオードをアレイ状に複数配列したものでもよいし、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀ランプ、および、水銀キセノンランプ等にレンズと拡散板または光ファイバを組み合わせることで直線状あるいはアレイ状に発光する光源を用いてもよい。
また、インライン検査ではない場合には、上記直線状あるいはアレイ状に発光する光源以外に、発光ダイオード、および、ランプ等と拡散板とを組み合わせて2次元的に発光する光源を用いてもよい。
【0058】
光源106から発せられる光のスペクトルは、特に限定はないが、単色光であってもよく、あるいは、例えば、波長380~780nmの可視光範囲で広いスペクトルを有していてもよい。
【0059】
<受光器>
受光器108は、第2偏光子104の被検査体10とは反対側に配置され、光源106が照射し、第1偏光子102、被検査体10および第2偏光子104を透過した光を受光して光電変換により、電気信号に変換して出力するものである。図示例においては、受光器108は、幅方向(図中左右方向)に5つ配列されており、それぞれ、第1偏光子102、被検査体10および第2偏光子104の幅方向の異なる領域を透過した光を受光し、幅方向の異なる領域に対応する電気信号を出力する。すなわち、図示例において、受光器108は、被検査体10を幅方向に分割撮影している。
【0060】
受光器108は、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサー等の従来公知の撮像素子、および、撮像素子に光を結像する光学系を有している。また、受光器108は、複数の画素が1次元的(直線状)に配列されたラインセンサーであってもよいし、複数の画素が2次元的に配列された2次元センサーであってもよい。また、光学系としては、受光器108に入射する光を撮像素子に結像することができれば特に限定はなく、1枚、または、2枚以上のレンズを有する構成とすればよい。
【0061】
<カラーフィルタ>
カラーフィルタ110は、光源106から照射された光が受光器108にて受光される光路上に配置される、公知のカラーフィルタである。図示例においては、カラーフィルタ110は、複数の受光器108に対応して、各受光器108の前に複数、図示例においては5枚、幅方向に配列されている。
【0062】
カラーフィルタ110が透過する波長には特に限定はないが、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、あるいは、黄色(Y)の光を透過させるものが例示される。中でも黄色(Y)、緑色(G)、あるいは赤色(R)、の光を透過させるカラーフィルタを用いることが好ましい。
【0063】
カラーフィルタ110を有することにより、特定の波長域の光を受光器108にて受光させることができ、その結果、欠陥の検出精度を向上できる。
【0064】
また、図示例においては、カラーフィルタ110は、第2偏光子104と受光器108との間に配置されている。しかしながら、これに限定はされず、光源106と受光器108との間であればいずれの位置に配置されてもよい。例えば、カラーフィルタ110は、光源106と第1偏光子102との間に配置されてもよく、第1偏光子102と被検査体10との間に配置されてもよく、被検査体10と第2偏光子104との間に配置されてもよい。
【0065】
<画像生成部>
画像生成部120は、受光器108が出力した電気信号から画像(画像データ)を生成する。電気信号から画像データを生成する方法は従来公知の方法で実施される。また、図示例においては、幅方向に5つの受光器108を有しており、また、隣接する受光器108が受光する領域は一部重複するように配置されている。そのため、画像生成部120は、5つの受光器108がそれぞれ出力した電気信号から生成した画像の位置合わせを行って合成して1つの画像データを生成する。
画像生成部120が生成した画像データは欠陥検出部122に送信される。
なお、画像生成部120は、生成した複数の画像データを合成せずに欠陥検出部122に送信して、欠陥検出部122が各画像データに対して欠陥検出を行ってもよい。
【0066】
<欠陥検出部>
欠陥検出部122は、画像生成部120から受信した画像データに基づいて被検査体10に存在する欠陥を検出する。欠陥検出部122は、画像生成部120から直接、画像データを受信してもよく、あるいは、後述する記憶部124に格納された画像データを読み出して欠陥を検出する処理を行ってもよい。
【0067】
欠陥検出部122は、例えば、取得した画像データに対して、鮮鋭化処理、2値化処理、ノイズ除去処理、サイズ判定、および、欠陥検出処理等の処理をこの順に行う。欠陥検出部122が行う処理については、後に詳述する。
なお、画像生成部120から合成していない複数の画像データを受信した場合には、各画像データに対して、上記各処理を行って欠陥を検出し、欠陥を集計する際に、同じ欠陥を重複してカウントしないようにしてもよい。
【0068】
<記憶部>
記憶部124は、画像生成部120が生成した画像データおよび/または欠陥検出部122が検出した欠陥の情報(位置、大きさ等)を記憶する、公知の記憶手段(記憶媒体)である。記憶部124に格納された画像データおよび/または欠陥の情報は、必要に応じて、図示しない表示部(モニタ)に表示するために読み出される。また、記憶部124に格納された画像データは、欠陥検出部122で欠陥を検出するために読み出されてもよい。
【0069】
<制御部>
制御部126は、操作者により操作部から入力された指令に基づいて欠陥検査装置100の各部の制御を行う部位である。また、制御部30は、操作部を用いて操作者によって入力された各種の情報を、必要な部位に供給する。操作部は、操作者が入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
【0070】
画像生成部120、欠陥検出部122、および、制御部126等は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成される。しかしながら、本発明においては、これらの部位をデジタル回路で構成してもよい。すなわち、画像生成部120、欠陥検出部122、記憶部124、および、制御部126等は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成されるものであってもよい。
【0071】
なお、図1に示す例では、第2偏光子104、カラーフィルタ110、および、受光器108はそれぞれ、幅方向に5つ配置される構成としたが、これに限定はされず、各1つ配置される構成であってもよく、あるいは、各2つ~4つ配置される構成であってもよく、各6つ以上配置される構成であってもよい。
【0072】
また、図1に示す例では、欠陥検査装置100は、図中、紙面に垂直な方向に搬送される被検査体10の欠陥を検出するものとしたが、これに限定はされず、枚葉状の被検査体10の欠陥を検出するものであってもよい。また、被検査体10は、長尺なフィルム状物で、欠陥検査装置100は、長手方向に搬送される被検査体10の欠陥を検出するものであってもよく、あるいは、被検査体10は、枚葉状で、欠陥検査装置100は、順次搬送される複数の被検査体10の欠陥を順次検出するものであってもよい。
【0073】
次に、上記のような欠陥検査装置により実施される本発明の欠陥検査方法について説明する。
【0074】
上述のとおり、本発明の欠陥検査方法は、工程1から工程5を有する。
【0075】
<工程1>
工程1は、第1偏光子102と、第2偏光子104との間に、厚み方向にねじれ配向した液晶化合物を固定してなるツイスト配向液晶層12を含む被検査体10を配置する工程である。
【0076】
例えば、図1に示すように、長尺な被検査体10を長手方向に搬送しつつ、欠陥の検出を行う場合には、被検査体10を、第1偏光子102と第2偏光子104との間を通過する搬送経路に挿通すればよい。
【0077】
<工程2>
工程2は、第1偏光子102側から第2偏光子104側に向かって光を照射した際に、第1偏光子102、被検査体10、および、第2偏光子104を透過した光の透過光量が最小となる、光の照射方向からみた面内方向の任意の基準線に対する、第1偏光子102の吸収軸の角度α(図6および図7参照)、および、第2偏光子104の吸収軸の角度β(図6および図7参照)、を求める工程である。一例として、欠陥検査方法が、長尺な被検査体10を長手方向に搬送しつつ、欠陥の検出を行うものである場合(インラインで欠陥検出を行う場合)には、搬送方向と直交する幅方向(TD方向)に平行な線を基準線として、第1偏光子102の吸収軸の角度α、および、第2偏光子104の吸収軸の角度βを求めればよい。
【0078】
工程2において角度αおよび角度βを求める方法としては、上記欠陥検査装置100を用いて実測により求める方法、および、シミュレーションにより求める方法がある。
【0079】
(実測により求める方法)
角度αおよび角度βを実測により求める方法としては、具体的には、まず、欠陥検査装置に被検査体10を配置する。
【0080】
第1偏光子102の吸収軸の角度、および、第2偏光子104の吸収軸を任意の初期角度(例えば、角度α=0°、角度β=0°)に設定し、光源106から光を照射して第1偏光子102、被検査体10、および、第2偏光子104を透過した光を受光器108で受光し、画像生成部120で画像データを生成して、保存する。
【0081】
次に、第1偏光子102の吸収軸または第2偏光子104の吸収軸の角度を所定のステップ、例えば、1°刻みで変えて、上記と同様に、光源106から光を照射して受光器108で受光し、画像生成部120で画像データを生成して、保存する。
【0082】
この操作を、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を所定のステップで変えて行い、第1偏光子102の吸収軸の角度および第2偏光子104の吸収軸の角度の組み合わせが異なる、複数の画像データを取得する。具体的には、例えば、第1偏光子102の角度を-89°に設定し、第2偏光子104の角度を-89°~90°の範囲で1°刻みで回転させてそれぞれの角度で画像データを取得する。次に、第1偏光子102の角度を-88°に設定し、第2偏光子104の角度を-89°~90°の範囲で1°刻みで回転させてそれぞれの角度で画像データを取得する。このように第1偏光子102の角度を1度刻みで回転させるごとに第2偏光子104の角度を-89~+90°の範囲で1°刻みで回転させて画像データを取得する動作を順次繰り返して、第1偏光子102の角度αと第2偏光子104の角度βの網羅的な組み合わせそれぞれで画像データを取得する。
【0083】
取得した画像データのうち、画像全体の平均輝度が最も低いものを透過した光の透過光量が最小となるものとみなし、この画像データを取得した際の第1偏光子102の吸収軸の角度および第2偏光子104の吸収軸の角度の組み合わせから、角度αおよび角度βを求めることができる。
【0084】
第1偏光子102の吸収軸の角度および第2偏光子104の吸収軸の角度をさらに精度よく決定するために、必要に応じて、上記のように1°刻みで求めた最適な角度の周辺でさらに小さな刻みでより最適な角度を求めてもよい。例えば、第1偏光子102の角度が64°、第2偏光子104の角度が-44°と求まった際に、さらに探索範囲を第1偏光子102については60~70°、第2偏光子104については-50~-40°として、0.1°刻みで上記と同様の方法で、最適な角度の組み合わせを求めてもよい。また、上記で角度の刻みは1°、0.1°に限定する必要はなく、探索効率を上げるために適宜調整してよい。
【0085】
求めた角度の関係の例を、図6図9に示す。図6図9は、光源106側から見た、第1偏光子102の吸収軸Dp1、ツイスト配向液晶層12の第1偏光子102側の表面の面内遅相軸Dt1、第2偏光子104側の表面の面内遅相軸Dt2、第2偏光子104の吸収軸Dp2、の方向を表す図である。また、図6図9には、支持体の遅相軸Dsも図示している。
【0086】
図6に示す例は、ツイスト配向液晶層12の第1偏光子102側の表面の面内遅相軸Dt1と第2偏光子104側の表面の面内遅相軸Dt2とが成す角度、すなわち、捩じれ角が81°の例である。また、第1偏光子102の吸収軸の角度αは、64°、第2偏光子104の吸収軸の角度βは、-44°である。
【0087】
また、図7に示す例は、ツイスト配向液晶層12の第1偏光子102側の表面の面内遅相軸Dt1と第2偏光子104側の表面の面内遅相軸Dt2とが成す角度、すなわち、捩じれ角が81°の例である。また、第1偏光子102の吸収軸の角度αは、-64°、第2偏光子104の吸収軸の角度βは、44°である。
【0088】
また、図8に示す例は、ツイスト配向液晶層12の第1偏光子102側の表面の面内遅相軸Dt1と第2偏光子104側の表面の面内遅相軸Dt2とが成す角度、すなわち、捩じれ角が-81°の例である。また、第1偏光子102の吸収軸の角度αは、-64°、第2偏光子104の吸収軸の角度βは、44°である。
【0089】
また、図9に示す例は、ツイスト配向液晶層12の第1偏光子102側の表面の面内遅相軸Dt1と第2偏光子104側の表面の面内遅相軸Dt2とが成す角度、すなわち、捩じれ角が-81°の例である。また、第1偏光子102の吸収軸の角度αは、-44°、第2偏光子104の吸収軸の角度βは、64°である。
【0090】
このように、第1偏光子102の吸収軸と第2偏光子104の吸収軸とのなす角度は、クロスニコル(90°)でない角度が選択され得る。また、第1偏光子102の吸収軸とツイスト配向液晶層12の第1偏光子102側の表面の面内遅相軸とのなす角度は、平行、直交および45°ではない角度が選択され得る。
【0091】
なお、上記例では、角度αが-89°~90°の範囲、角度βが-89°~90°の範囲となるように、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を所定のステップで変えて、透過光量が最小となる角度αおよび角度βを求めるものとしたが、これに限定はされず、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を適宜設定して、透過光量が最小となる角度αおよび角度βを探索してもよい。すなわち、各種の最適化アルゴリズムを用いて、最適な偏光子角度の組み合わせを効率的に決定してもよい。最適化アルゴリズムには、再急降下法、シンプレックス法、遺伝的アルゴリズム、などがある。
【0092】
また、上記のように、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を変えながら画像を取得する方法の場合には、欠陥検査装置100は、第1偏光子102を第1偏光子102の主表面に垂線な軸を回転軸として回転させる回転機構(角度調整機構)、および、第2偏光子104を第2偏光子104の主表面に垂直な軸を回転軸として回転させる回転機構(角度調整機構)を有していてもよい。あるいは、欠陥検査装置100(被検査体10)に対して、吸収軸を異なる角度でセット可能な偏光子を複数、準備し、セットする偏光子を変えながら画像を取得してもよい。
【0093】
また、欠陥検査装置100が、第1偏光子102を回転させる回転機構(角度調整機構)、および、第2偏光子104を回転させる回転機構(角度調整機構)を有する構成の場合には、各回転機構は、制御部126からの指令に基づいて、適切なタイミングで設定した刻み角度分、自動で回転するものであってもよく、手動で第1偏光子102および第2偏光子104を回転させるものであってもよい。
【0094】
(シミュレーションにより求める方法)
角度αおよび角度βをシミュレーションにより求める方法としては、市販の液晶シミュレータを用いる方法、および、各層の偏光特性をミュラーマトリクス行列で表して入射光を表すストークスベクトルを順次掛け合わせて出射光のストークスベクトルを求め、出射光量を算出する方法が挙げられる。
【0095】
市販の液晶シミュレータとしては、例えば、シンテック株式会社製LCD Masterを用いることができる。
具体的には、LCD Masterにて、光源106、第1偏光子102、被検査体10、第2偏光子104、カラーフィルタ110をこの順に並べたモデルを作成する。
【0096】
光源106は、後述する工程4で使用する光源106をモデル化する。例えば、光源106として白色LED(Light Emitting Diode)を用いる場合には、図12に示すグラフのようなスペクトルを持つデータを設定する。図12中、縦軸は光量を規格化した数値である。図12に示すグラフは、波長380~780nmの範囲で、5nm間隔で、光量を設定したグラフである。なお、光源のスペクトルデータは、不等間隔の波長で設定してもよい。例えば、輝線スペクトルを持つ光源の場合は、輝線部分は0.1nm間隔など細かく指定して、他は粗い間隔で指定してもよい。
【0097】
第1偏光子102および第2偏光子104は、理想的な直線偏光子としてモデル化する。
【0098】
被検査体10は、例えば、光源106側から、ツイスト配向液晶層12、正のCプレート14、および、支持体を有する場合には、これらをそれぞれモデル化する。
【0099】
ツイスト配向液晶層12は、面内に異常屈折率(ne)を持つ正の一軸性光学異方性層を積層したものであり、総層数は任意であるが例えば100層とし、各層内のne方位は一定であるが光源に近い層から順にある範囲で等間隔に変化していくように設定する。一例として、ツイスト配向液晶層12の光源106側の表面におけるne方位が14°、反対側の表面におけるne方位が95°である場合には、14°~95°の範囲を、100層の場合0.82°[(95-14)/(100-1)=0.82]間隔で変化させる。また、1層当たりの厚さは、ツイスト配向液晶層12に基づいて設定する。
【0100】
正のCプレート14は、液晶層であり、ne>noであって、ne方位は層の界面に垂直な方向とし、厚さを設定してモデル化する。ツイスト配向液晶層12、正のCプレート14とも、ne,noの値に特別な制約はないが、一例としてne=1.65、no=1.50があげられる。
支持体は、屈折率nx、ny、nz、厚さd、および、遅相軸方位を設定する。
屈折率nx、ny、nzは、ツイスト液晶層、ポジC層を支持体から剥離して得た支持体、または、液晶層塗布前の支持体をAxoscanで測定してRe、Rth、遅相軸を求め、これから平均屈折率nave(=(nx+ny+nz)/3)の値(例えば1.48)を仮定したうえで、下式を利用してnx,ny,nzを算出すればよい。
Re=(nx-ny)×d、Rth=((nx+ny)/2-nz)×d
上記を、380~780nm、10nm間隔で行う。例えば450、550、650nmの3波長で測定して他波長での値はコーシー(Cauchy)の分散公式を用いて補間、補外して求めてもよい。
【0101】
また、ツイスト配向液晶層12、正のCプレート14、および、支持体がこの順に接して積層されているものとしてモデル化する。
被検査体10が、複数のツイスト配向液晶層、Aプレート、2軸異方性層等を有する場合も同様にモデル化すればよい。
実際の各層の厚み(または屈折率)、遅相軸、Re、Rth、ne方位、ツイスト角等は、Axoscanを用いて求めることができる。
【0102】
カラーフィルタ110は、後述する工程4で使用するカラーフィルタ110をモデル化する。具体的には、使用するフィルタの分光透過率を380~780nm、10nm間隔で設定する(図13参照)。
【0103】
このようなモデルにおいて、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を所定のステップで変えて、透過光量をシミュレーションにより求める。例えば、角度αを-89°~90°の範囲、角度βを-89°~90°の範囲となるように第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を1°刻みで変えて、複数の角度αおよび角度βの組み合わせそれぞれにおける、透過光量を求める。これにより、求めた透過光量が最小となる角度αおよび角度βを求めることができる。
【0104】
なお、上記例では、角度αが-89°~90°の範囲、角度βが-89°~90°の範囲となるように、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を所定のステップで変えて、透過光量が最小となる角度αおよび角度βを求めるものとしたが、これに限定はされず、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を適宜設定して、透過光量が最小となる角度αおよび角度βを探索してもよい。例えば、前述のとおり、ステップの刻み幅を大きな値に設定して角度αおよび角度βを探索した後、求められた角度αおよび角度βの周辺でステップの刻み幅を細かくして再度探索してもよい。また、各種の最適化アルゴリズムを用いて、最適な偏光子角度の組み合わせを効率的に決定してもよい。
【0105】
各層の偏光特性をミュラーマトリクス行列で表して入射光を表すストークスベクトルを順次掛け合わせて出射光のストークスベクトルを求め、出射光量を算出する方法の場合も、第1偏光子102の吸収軸および第2偏光子104の吸収軸の角度を所定のステップで変えて、透過光量が最小となる角度αおよび角度βを求めればよい。
【0106】
<工程3>
工程3は、欠陥検査装置100において、第1偏光子102の吸収軸の角度α1が、工程2で求めた角度αに対して±5°の範囲となり、第2偏光子104の吸収軸の角度β1が、工程2で求めた角度βに対して±50°の範囲となるよう第1偏光子102および第2偏光子104の角度を調整する、あるいは、第1偏光子の吸収軸の角度α1が工程2で求めた角度αに対して±50°の範囲となり、第2偏光子の吸収軸の角度β1が、工程2で求めた角度βに対して±5°の範囲となるよう第1偏光子および第2偏光子の角度を調整する工程である。第1偏光子102の吸収軸の角度α1は、角度αに対して±3°の範囲であり、また、第2偏光子104の吸収軸の角度β1は、角度βに対して±20°の範囲であるのが好ましい。あるいは、第1偏光子102の吸収軸の角度α1は、角度αに対して±20°の範囲であり、また、第2偏光子104の吸収軸の角度β1は、角度βに対して±3°の範囲であるのが好ましい。
【0107】
なお、被検査体が第1偏光子側から順に、ツイスト配向液晶層、支持体、の順であり、ねじれ方向が反時計周り(左ねじれ)の場合は、第1偏光子の吸収軸角度はα±5の範囲°、第2偏光子の吸収軸角度はβ±50の範囲°が好ましい。
また、被検査体が第1偏光子側から順に、ツイスト配向液晶層、支持体、の順であり、ねじれ方向が時計周り(右ねじれ)の場合も、第1偏光子の吸収軸角度はα±5の範囲°、第2偏光子の吸収軸角度はβ±50の範囲°が好ましい。
また、被検査体が第1偏光子側から順に、支持体、ツイスト配向液晶層、の順であり、ねじれ方向が反時計周り(左ねじれ)の場合は、第1偏光子の吸収軸角度はα±50の範囲°、第2偏光子の吸収軸角度はβ±5の範囲°が好ましい。
また、被検査体が第1偏光子側から順に、支持体、ツイスト配向液晶層、の順であり、ねじれ方向が時計周り(右ねじれ)の場合も、第1偏光子の吸収軸角度はα±50の範囲°、第2偏光子の吸収軸角度はβ±5の範囲°が好ましい。
【0108】
欠陥検査装置100が、第1偏光子102を回転させる回転機構(角度調整機構)、および/または、第2偏光子104を回転させる回転機構(角度調整機構)を有している場合には、この回転機構によって第1偏光子102および/または第2偏光子104の角度を調整すればよい。
【0109】
あるいは、第1偏光子102の吸収軸の角度α1が角度αに対して±5°の範囲、あるいは、±50°の範囲となり、また、第2偏光子104の吸収軸の角度β1が角度βに対して±50°の範囲、あるいは、±5°の範囲となるような偏光子を準備して、この偏光子を第1偏光子102および/または第2偏光子104として欠陥検査装置100にセットして所望の角度を満たすものとしてもよい。
【0110】
<工程4>
工程4は、第1偏光子102側から第2偏光子104側に向かって光を照射して、第2偏光子104を透過した光を受光して、画像を取得する工程である。
【0111】
上記のように工程3で角度α1および角度β1が所望の範囲となるように第1偏光子102および第2偏光子104の吸収軸の角度を調整した後に、例えば、図1のように、被検査体10を搬送するものである場合には、被検査体10の搬送を開始し、光源106から光を照射して、第1偏光子102、被検査体10、および、第2偏光子104(さらに、カラーフィルタ110)を透過した光を受光器108で受光し、受光器108が出力した電気信号から画像生成部120が画像(画像データ)を生成する。
【0112】
被検査体10は搬送されているため、受光器108および画像生成部120は、一定の間隔で撮影(受光、電気信号の出力および画像データの生成)を行い、通過する被検査体10の長手方向の各位置に対応する複数の画像データを順次生成する。なお、撮影間隔は、被検査体10の長手方向の全域を撮影するように設定してもよいし、長手方向に所定距離、離した領域を撮影するように設定してもよい。
【0113】
<工程5>
工程5は、取得した画像に基づいて、被検査体に存在する欠陥を検出する工程である。
【0114】
工程4における被検査体10の撮影は、透過光量が最小となる条件で行っているが、被検査体10(ツイスト配向液晶層12)に欠陥があると、欠陥部分ではΔnd(=(ne-no)×厚み)が、正常部に対して高く、あるいは、低くなる。そのため、透過光量(輝度)が正常部に対して増加、あるいは、減少する。Δndが高くなった、あるいは低くなった際に透過光量が増加するか減少するかは、ツイスト配向液晶層の条件および使用するフィルタ等によっても異なるので一概に言えないが、いずれの場合も、正常な特性から変化した欠陥として検知できる。なお、本手法では両者を区別せずに欠陥を検出するが、検出した欠陥位置のもとの画像を確認し、欠陥部が輝度の上昇したものか減少したものかを分類して、欠陥の解析に役立ててもよい。
【0115】
ここで、前述のとおり、従来、位相差フィルムの欠陥を検出する場合には、位相差フィルムを挟む2つの偏光板はクロスニコルに配置されて行われていた。
【0116】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、液晶化合物の面内配向方向が厚み方向に変化するツイスト配向液晶層(ツイスト配向異方性層)を含む位相差フィルムを計測する場合、従来の方法では光学異方性層の光学特性の変化に対して受光量の変化が小さく、点欠陥の検出精度が劣る問題があることが分かった。
【0117】
これに対して、本発明では、第1偏光子、被検査体、および、第2偏光子を透過した光の透過光量が最小となるように、第1偏光子の吸収軸の角度α、および、第2偏光子の吸収軸の角度βを求め、第1偏光子102の吸収軸の角度α1を角度αに近い角度に設定し、また、第2偏光子104の吸収軸の角度β1を角度βに近い角度に設定して欠陥検出を行うことで、点欠陥の検出精度を向上することができる。
【0118】
工程4で生成された画像データは、直接、あるいは、一旦、記憶部124に記憶された後、欠陥検出部122に読み出され、欠陥検出に用いられる。
【0119】
欠陥検出部122による欠陥の検出方法としては、公知の欠陥検出方法が適宜、利用可能である。また、欠陥検出部122は、欠陥検出の前に、取得した画像データに対して、各種の画像処理を行ってもよい。一例として、欠陥検出の前に、取得した画像データに対して鮮鋭化処理、ノイズ除去処理、2値化処理の処理を行う。
鮮鋭化処理、ノイズ除去処理、2値化処理等は、一般的な画像処理ソフト(たとえばImageJ)で行うことができる。
【0120】
各種の処理を行って欠陥検出を行うことで、ツイスト配向液晶層を含む被検査体10の欠陥の位置、サイズ等の情報を得ることができる。
【0121】
なお、図1に示す例では、光源106からの光は、被検査体10の主表面に対して略垂直な方向から入射するものとしたが、これに限定はされない。被検査体10の主表面の垂線に対して、所定の角度傾斜する方向から光が入射する構成であってもよい。その際、工程2および工程4で、光源106からの光の角度は同じとするのが好ましい。
【0122】
例えば、被検査体10が長尺なフィルム状物であり、被検査体10を長手方向に搬送しつつ、工程4を実施するものである場合に、工程2および工程4を行う際に、被検査体10に対して、欠陥検査装置100の配置を被検査体10の搬送方向に0~40°の範囲で傾斜させてもよい。すなわち、被検査体10の主表面の垂線に対して光の入射角度が被検査体10の搬送方向(TD方向)に0°~40°の範囲で傾いていてもよい(図10参照)。あるいは、被検査体10に対して、欠陥検査装置100の配置を被検査体10の搬送方向と直交する方向(幅方向)に0°~40°の範囲で傾斜させてもよい。すなわち、被検査体10の主表面の垂線に対して光の入射角度が被検査体10の搬送方向と直交する方向(MD方向)に0°~40°の範囲で傾いていてもよい(図11参照)。
【0123】
ここで、本発明の欠陥検査方法で欠陥の検出を行う被検査体10としては、光源106側から見て被検査体10の搬送方向を0°、反時計回りを+とした座標系において、ツイスト配向液晶層12は光源106側の界面のne方位(光源106側の界面の面内遅相軸方位)が約14°(9°~19°)、受光器108側の界面のne方位が約95°(90°~100°)、Δnd=155~175nmである被検査体が好ましく例示される。このような被検査体10に対して、本発明の欠陥検査方法を実施することで好適に欠陥を検出することができる。
ここで、ne方位とは、異常光屈折率方位を意味する。
【0124】
あるいは、本発明の欠陥検査方法で欠陥の検出を行う被検査体10としては、光源106から見て、ツイスト配向液晶層12は光源106側の界面のne方位が約85°(80°~90°)、受光器108側の界面のne方位が約166°(161°~171°)、Δnd=155~175nmである被検査体も好ましく例示される。
【0125】
あるいは、本発明の欠陥検査方法で欠陥の検出を行う被検査体10としては、光源106から見て、ツイスト配向液晶層12は光源106側の界面のne方位が約-14°(-19°~-°)、受光器108側の界面のne方位が約-95°(-100°~-90°)、Δnd=155~175nmである被検査体も好ましく例示される。
【0126】
あるいは、本発明の欠陥検査方法で欠陥の検出を行う被検査体10としては、光源106から見て、ツイスト配向液晶層12は光源106側の界面のne方位が-85°(-90°~-80°)、受光器108側の界面のne方位が-166°(-171°~161°)、Δnd=155~175nmである被検査体も好ましく例示される。
【0127】
以上、本発明の欠陥検査方法および欠陥検査装置について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例0128】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量、物質量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0129】
<被検査体Aの作製>
ツイスト配向液晶層を有する被検査体を下記手順で作製した。
【0130】
<セルロースアシレートフィルム(支持体)の作製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、さらに90℃で10分間加熱した。その後、得られた組成物を、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過して、ドープを調製した。ドープの固形分濃度は23.5質量%であり、可塑剤の添加量はセルロースアシレートに対する割合であり、ドープの溶剤は塩化メチレン/メタノール/ブタノール=81/18/1(質量比)である。
【0131】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート(アセチル置換度2.86、粘度平均重合度310)
100質量部
糖エステル化合物1(下記式(S4)に示す) 6.0質量部
糖エステル化合物2(下記式(S5)に示す) 2.0質量部
シリカ粒子分散液(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0.1質量部
溶剤(塩化メチレン/メタノール/ブタノール)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0132】
【化1】
【0133】
【化2】
【0134】
上記で作製したドープを、ドラム製膜機を用いて流延した。0℃に冷却された金属支持体上に接するようにドープをダイから流延し、その後、得られたウェブ(フィルム)を剥ぎ取った。なお、ドラムはSUS製であった。
【0135】
流延されて得られたウェブ(フィルム)を、ドラムから剥離後、フィルム搬送時に30~40℃で、クリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてテンター装置内で20分間乾燥した。引き続き、ウェブをロール搬送しながらゾーン加熱により後乾燥した。得られたウェブにナーリングを施した後、巻き取った。
【0136】
得られたセルロースアシレートフィルムの膜厚は40μmであり、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)は1nm、波長550nmにおける厚み方向のレタデーションRth(550)は26nmであった。
【0137】
(アルカリ鹸化処理)
前述のセルロースアシレートフィルムを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0138】
――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0139】
<ツイスト配向液晶層およびポジディブCプレートの形成>
(ポジディブCプレートの形成)
上記作製したセルロースアシレートフィルムの上に、ギーサー塗布機を用いて、下記の組成の棒状液晶化合物を含む光学異方性層塗布液(c)を塗布して、組成物層を形成した。その後、フィルムの両端を保持し、フィルムの塗膜が形成された面の側に、フィルムとの距離が5mmとなるように冷却板(9℃)を設置し、フィルムの塗膜が形成された面とは反対側に、フィルムとの距離が5mmとなるようにヒーター(75℃)を設置し、2分間乾燥させた。
【0140】
次いで、温風にて60℃、1分間加熱し、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら365nmのUV(ultraviolet)-LEDを用いて、照射量100mJ/cmの紫外線を照射した。その後、温風にて120℃1分間アニーリングすることで、前駆体層を形成した。
【0141】
得られた前駆体層に、室温で、ワイヤーグリッド偏光子を通したUV光(超高圧水銀ランプ;UL750;HOYA製)を7.9mJ/cm(波長:313nm)照射することで、表面に配向制御能を有する組成物層を形成した。
【0142】
なお、形成した組成物層の膜厚は0.56μmであった。波長550nmにおける面内レタデーションReは0nmであり、波長550nmにおける厚み方向のレタデーションRthは-76nmであった。棒状液晶化合物の長軸方向のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、フィルム面に対して、垂直に配向していることを確認した。
このようにして、ポジティブCプレートを形成した。
【0143】
――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物(c)
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶化合物(A) 100質量部
重合性モノマー(A-400、新中村化学工業社製) 4.0質量部
下記の重合開始剤S-1(オキシム型) 5.0質量部
下記の光酸発生剤D-1 3.0質量部
下記の重合体M-1 2.0質量部
下記の垂直配向剤S01 2.0質量部
下記の光配向性ポリマーA-1 2.0質量部
メチルエチルケトン 42.3質量部
メチルイソブチルケトン 627.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0144】
棒状液晶化合物(A)(以下、化合物の混合物)
【化3】
【0145】
重合開始剤S-1
【化4】
【0146】
光酸発生剤D-1
【化5】
【0147】
重合体M-1(各繰り返し単位中の数値は全繰り返し単位に対する含有量(質量%)を表す。また、重量平均分子量は60000であった。)
【化6】
【0148】
垂直配向剤S01
【化7】
【0149】
光配向性ポリマーA-1(各繰り返し単位中に記載の数値は、全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(質量%)を表し、左側の繰り返し単位から40質量%、25質量%、35質量%であった。また、重量平均分子量は69300であった。)
【化8】
【0150】
(ツイスト配向液晶層の形成)
次いで、上記作製したポジティブCプレートの上に、ギーサー塗布機を用いて、下記の組成の棒状液晶化合物を含む光学異方性層塗布液(t)を塗布し、80℃の温風で60秒間加熱した。続いて、得られた組成物層に対して80℃にてUV照射(500mJ/cm)を行い、液晶化合物の配向を固定化して、ツイスト配向液晶層を形成した。
【0151】
ツイスト配向液晶層の厚みは1.21μmであり、波長550nmにおけるΔndは165nm、液晶化合物の捩れ角度は81°であった。フィルムの幅方向を0°(長手方向を90°)とすると、ツイスト層側から見たとき、液晶化合物の配向軸角度は、空気側が14°、ポジティブCプレートに接する側が95°であった。
【0152】
なお、光学異方性層に含まれる液晶化合物の配向軸角度は、基板の幅方向を基準の0°として、光学異方性層の表面側から基板を観察し、時計回り(右回り)の時を負、反時計回り(左回り)の時を正として表してある。
【0153】
また、液晶化合物の捩れ角度は、光学異方性層の表面側から基板を観察し、表面側(手前側)にある液晶化合物の配向軸方向を基準に、基板側(奥側)の液晶化合物の配向軸方向が時計回り(右回り)の時を負、反時計回り(左回り)の時を正として表してある。
【0154】
――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物(t)
――――――――――――――――――――――――――――――――
上記の棒状液晶化合物(A) 70質量部
下記の棒状液晶化合物(B) 30質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
光重合開始剤(Irgacure819、BASF社製) 3質量部
下記の左捩れキラル剤(L1) 0.50質量部
下記の含フッ素化合物 0.20質量部
メチルイソブチルケトン 126質量部
プロピオン酸エチル 126質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0155】
棒状液晶化合物(B)
【化9】
【0156】
左捩れキラル剤(L1)Buはブチル基を表す。
【化10】
【0157】
含フッ素化合物D(各繰り返し単位中の数値は全繰り返し単位に対する含有量(質量%)を表し、左側の繰り返し単位の含有量は76質量%で、右側の繰り返し単位の含有量は24質量%であった。また、重量平均分子量は27300であった。)
【化11】
上記手順によって、長尺状のセルロースアシレートフィルム上に、ポジティブCプレートとツイスト配向液晶層とが直接積層された積層体を作製し、被検査体Aとした。
【0158】
なお、UV光の照射によりツイスト配向液晶層の液晶化合物の配向を固定化する際のフィルムの裏面側を支持する支持ロールに、多数の細分化した耐熱テープをランダムに貼り付け、当該箇所において支持ロールから液晶化合物への伝熱を周囲に対して変化させることで、ツイスト配向液晶層の配向を固定化する際の温度を変化させ、周囲とはΔndが異なる点欠陥を作り出した。
【0159】
<被検査体Bの作製>
ツイスト配向液晶層の厚みを1.24μmとした以外は、被検査体Aと同様にして被検査体Bを作製した。
ツイスト配向液晶層の波長550nmにおけるΔndは170nm、液晶化合物の捩れ角度は84°であった。
【0160】
<被検査体Cの作製>
ツイスト配向液晶層の厚みを1.17μmとした以外は、被検査体Aと同様にして被検査体Cを作製した。
ツイスト配向液晶層の波長550nmにおけるΔndは160nm、液晶化合物の捩れ角度は79°であった。
【0161】
[実施例1]
光源、第1偏光子、第2偏光子、カラーフィルタ、受光器をこの順に配置して欠陥検査装置とした。第1偏光子と第2偏光子との間に被検査体が配置される。
【0162】
光源としては、白色LEDを用いた。
【0163】
第1偏光子および第2偏光子としては、再表2020-031784号公報の段落[0128]に記載される方法で作製した偏光子を用いた。なお、第2偏光子としては、市販品(例えば、ケンコートキナー社製PLフィルタ)を用いることもできる。
【0164】
カラーフィルタとしては、図13にYで示す分光透過率特性を有するイエロー(Y)のカラーフィルタを用いた。
【0165】
受光器としては、CMOS型のラインセンサーカメラを用いた。
【0166】
<工程2>
上記で作製した被検査体Aおよび欠陥検査装置の層構成をシンテック株式会社製LCD Master上でモデル化した。光源側から見て被検査体の搬送方向を90°、反時計回りを+とした座標系において、ツイスト配向液晶層は、光源側の界面のne方位が14°、受光器側の界面のne方位が95°、Δnd=165nmとしてモデル化した。
【0167】
このモデルにおいて、第1偏光子の吸収軸および第2偏光子の吸収軸の角度をそれぞれ所定のステップで変えて、シミュレーションにより透過光量を求めた。具体的には、角度αを-89°~90°の範囲、角度βを-89°~90°の範囲となるように第1偏光子の吸収軸および第2偏光子の吸収軸の角度を1°刻みで変えて、複数の角度αおよび角度βの組み合わせそれぞれにおける、透過光量を求めた。これにより、求めた透過光量が最小となる角度αおよび角度βを求めた。その結果、角度αは64.4°、角度βは-43.9°であった。
【0168】
<工程1>
欠陥検査装置の第1偏光子と第2偏光子との間に被検査体Aを、ツイスト配向液晶層が第1偏光子側になるようにして配置した。
【0169】
<工程3>
欠陥検査装置において、第1偏光子の吸収軸の上記座標系における角度を64.4°、第2偏光子の吸収軸の上記座標系における角度は-43.9°にセットした。この時、ツイスト配向液晶層の第1偏光子側の表面の面内遅相軸に対する第1偏光子の吸収軸の角度α1はα、第1偏光子の吸収軸に対する第2偏光子の吸収軸の角度β1はβである。すなわち、α1-α=0°、β1-β=0°である。
【0170】
<工程4>
光源から光を照射して、第1偏光子、被検査体A、第2偏光子、および、カラーフィルタを透過した光を受光器で受光し、被検査体を搬送しつつ連続撮影することで、搬送方向5000mm×幅手方向1340mmの領域の画像データを取得した。なお、画像データの輝度は10bitの画像とした。
また、測定の際、正常部の画素値が130となるように、各実施例、比較例ごとに、ラインセンサーカメラのゲイン値を調整した。
【0171】
<工程5>
取得した画像データに対して、ImageJを用いて、鮮鋭化処理、ノイズ除去処理、2値化処理を行った後に、欠陥検出処理(個数、サイズ判定)を行った。
【0172】
鮮鋭化処理は、sharpen機能を使用した。
【0173】
2値化処理は、各画素について、この画素から、画像を取得した被検査体のMD方向、TD方向それぞれ50mm離れた4点の画素値の平均値±1%を閾値とし、これを超える差を有する場合を1としてそれ以外の場合を0とした。
【0174】
ノイズ除去処理は、median Filterを用いた。
【0175】
欠陥検出処理(個数、サイズ判定)は、欠陥検出処理(個数、サイズ判定)は、particle analyzeで行った。なお、サイズが100μm~10mmのサイズの欠陥を抽出した。
【0176】
欠陥検出の結果、1cm2あたり3.56個の欠陥が検出された。
【0177】
また、欠陥検出の精度の指標としてコントラスト(Michelsonコントラスト)を評価した。
まず、被検査体の検査の後、工程5で得られた欠陥の位置情報を基に、いくつかの欠陥をAxoscanで解析してΔndが2nm高くなっているものを選び、その欠陥の場所で検知したコントラスト値を求めた。
具体的には、工程5で得られた欠陥の位置情報から、工程4で取得した画像データ中の欠陥位置における輝度値(Lmin)と、正常部における輝度値(Lmax)とから、コントラスト=|Lmax-Lmin|/(Lmax+Lmin)×100を算出した。その結果、コントラストは、2.1であった。なお、正常部における輝度値Lmaxは、欠陥部から5cm程度離れた、欠陥部を囲む10cm角の正方形の4つの頂点と4辺の中央の合計8点それぞれの10×10=100画素の輝度値を取得し、この8点の平均値を正常部における輝度値Lmaxとして算出する。また、欠陥部の輝度値Lminは、検出された1つの欠陥領域中の平均値である。
【0178】
[実施例2~7、比較例1~2]
工程3において、第1偏光子の吸収軸の上記座標系における角度、第2偏光子の吸収軸の上記座標系における角度を表1に示す角度に調整して、工程4および工程5を実施した以外は、実施例1と同様にして欠陥検出およびコントラストの算出を行った。
【0179】
[実施例8~11]
カラーフィルタを表1に示すカラーフィルタに変更して各工程を実施した以外は、実施例1と同様にして欠陥検出およびコントラストの算出を行った。
なお、赤色(R)カラーフィルタ、緑色(G)カラーフィルタ、および、青色(B)カラーフィルタとしては、図13にそれぞれ示す分光透過率特性を有するカラーフィルタを用いた。
【0180】
[比較例3]
第1偏光子の吸収軸と第2偏光子の吸収軸とをクロスニコル(90°)に配置し、クロスニコルの関係を保ったまま、透過率が最小となる角度を探索した後、この角度に設定して、カラーフィルタなしで工程4および工程5を実施したが、欠陥を検出できなかった。
この際の、第1偏光子の吸収軸角度α1は55.7°、第2偏光子の吸収軸角度β1は-34.3°であった。この角度は、実施例1で実施した工程2で求めた角度α(=64.4°)、および、角度β(=-43.9°)との差がそれぞれ、α1-α=-9°、β1-β=10°であった。
【0181】
[実施例12]
被検査体Aに代えて、被検査体Bを用いた以外は、実施例1と同様にして欠陥検出およびコントラストの算出を行った。なお、工程2において、ツイスト配向液晶層は、上記座標系で、光源側の界面のne方位が12°、受光器側の界面のne方位が95°、Δnd=170nmとしてモデル化した。また、工程3において、第1偏光子の吸収軸の角度α1はα±0°、第2偏光子の吸収軸の角度β1はβ±0°となるように第1偏光子および第2偏光子をセットした。
【0182】
[実施例13]
被検査体Aに代えて、被検査体Cを用いた以外は、実施例1と同様にして欠陥検出およびコントラストの算出を行った。なお、工程2において、ツイスト配向液晶層は、上記座標系で、光源側の界面のne方位が16°、受光器側の界面のne方位が95°、Δnd=160nmとしてモデル化した。また、工程3において、第1偏光子の吸収軸の角度α1はα±0°、第2偏光子の吸収軸の角度β1はβ±0°となるように第1偏光子および第2偏光子をセットした。
【0183】
[実施例14~21]
工程2および工程4において、光の照射方向を、被検査体の搬送方向、および/または、幅方向に、表1に示す角度傾斜させた以外は実施例1と同様にして欠陥検出およびコントラストの算出を行った。
結果を表2に示す。コントラストは3以上をA、1.5以上3未満をB、1.5未満をCと判定した。コントラストが高いほど欠陥の検出精度に優れることを意味する。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
表2に示すとおり、本発明の欠陥検査方法は、比較例に対して欠陥の検出数、および、コントラストが高く、欠陥の検出精度に優れることがわかる。
【0187】
また、実施例1、8~11の対比から、カラーフィルタを用いることが好ましく、中でも、黄色(Y)、緑色(G)、あるいは、赤色(R)のカラーフィルタを用いることが好ましいことがわかる。
なお、上記実施例では、ツイスト配向液晶層のねじれ方向が、いずれも空気界面側からポジティブCプレート側に向かって反時計回り(左回り)としたが、ツイスト配向液晶層のねじれ方向が時計回り(右回り)の場合も同様に適用可能である。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【符号の説明】
【0188】
10 被検査体
12、12a、12b ツイスト配向液晶層
14 Cプレート
16 Aプレート
18 2軸異方性層
100 欠陥検査装置
102 第1偏光子
104 第2偏光子
106 光源
108 受光器
110 カラーフィルタ
120 画像生成部
122 欠陥検出部
124 記憶部
126 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13