(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103689
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089894
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2022545293の分割
【原出願日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2020143290
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】苅部 樹彦
(57)【要約】
【課題】ユーザが異常部を十分に且つ効率的に検査することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置(1)は、超音波プローブ(2)と、超音波画像を生成する画像生成部(22)と、モニタ(24)と、超音波プローブ(2)の位置情報を取得する位置センサ(14)と、超音波画像を解析して被検体の正常部と異常部との境界を認識する境界認識部(27)と、超音波プローブ(2)の位置情報と認識された境界とに基づいて走査すべき方向を特定し且つ走査すべき方向をユーザに指示する指示制御部(28)を備え、異常部に対して互いに直交する2方向のうち一方の方向に超音波プローブを走査する際に、異常部の両側の境界が認識された場合、指示制御部(28)は、2方向のうち他方の方向の走査に移行することをユーザに指示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成する画像生成部と、
前記超音波画像を表示するモニタと、
前記超音波プローブに取り付けられ且つ前記超音波プローブの位置情報を取得する位置センサと、
前記超音波プローブの走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部と、
前記超音波画像を解析することにより、前記被検体の正常部と前記異常部との境界を認識する境界認識部と、
前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報と前記境界認識部により認識された前記境界とに基づいて前記超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された前記走査すべき方向を前記走査方向指示部により前記ユーザに指示する指示制御部と
を備え、
前記異常部に対して互いに直交する2方向のうち一方の方向に前記超音波プローブを走査する際に、前記境界認識部により前記異常部の両側の境界が認識された場合、前記指示制御部は、前記2方向のうち他方の方向の走査に移行することを前記走査方向指示部により前記ユーザに指示する超音波診断装置。
【請求項2】
前記指示制御部は、前記境界認識部により認識された前記境界に基づいて、前記被検体の正常部と前記異常部との残りの境界を推定し、推定された前記残りの境界に基づいて、前記走査すべき方向を特定する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波画像を前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報に対応させて保存するメモリと、
前記超音波プローブの走査の軌跡を算出して前記モニタに表示する軌跡算出部と
を備え、
前記モニタに表示された前記軌跡上の任意の位置が前記ユーザにより指定されると、前記任意の位置に対応する前記超音波画像が前記メモリから読み出されて前記モニタに表示される請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成する画像生成部と、
前記超音波画像を表示するモニタと、
前記超音波プローブに取り付けられ且つ前記超音波プローブの位置情報を取得する位置センサと、
前記超音波プローブの走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部と、
前記超音波画像を解析することにより、前記被検体の正常部と前記異常部との境界を認識する境界認識部と、
前記境界認識部により認識された前記境界に基づいて前記被検体の正常部と前記異常部との残りの境界を推定し、前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報と、推定された前記残りの境界とに基づいて前記超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された前記走査すべき方向を前記走査方向指示部により前記ユーザに指示する指示制御部と
を備える超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波画像を前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報に対応させて保存するメモリと、
前記超音波プローブの走査の軌跡を算出して前記モニタに表示する軌跡算出部と
を備え、
前記モニタに表示された前記軌跡上の任意の位置が前記ユーザにより指定されると、前記任意の位置に対応する前記超音波画像が前記メモリから読み出されて前記モニタに表示される請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成する画像生成部と、
前記超音波画像を表示するモニタと、
前記超音波プローブに取り付けられ且つ前記超音波プローブの位置情報を取得する位置センサと、
前記超音波プローブの走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部と、
前記超音波画像を解析することにより、前記被検体の正常部と前記異常部との境界を認識する境界認識部と、
前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報と前記境界認識部により認識された前記境界とに基づいて前記超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された前記走査すべき方向を前記走査方向指示部により前記ユーザに指示する指示制御部と、
前記超音波画像を前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報に対応させて保存するメモリと、
前記超音波プローブの走査の軌跡を算出して前記モニタに表示する軌跡算出部と
を備え、
前記モニタに表示された前記軌跡上の任意の位置が前記ユーザにより指定されると、前記任意の位置に対応する前記超音波画像が前記メモリから読み出されて前記モニタに表示される超音波診断装置。
【請求項7】
前記走査方向指示部は、前記超音波プローブに取り付けられたLEDランプにより形成され、
前記指示制御部は、前記LEDランプの発光色または明滅により前記走査すべき方向を指示する請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記走査方向指示部は、前記モニタにより形成され、
前記指示制御部は、前記モニタに前記走査すべき方向を表示する請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記超音波プローブは振動機構を含み、
前記走査方向指示部は、前記振動機構により形成され、
前記指示制御部は、前記振動機構の振動パターンにより前記走査すべき方向を指示する請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記超音波プローブに接続されたタブレット端末を備え、
前記タブレット端末は振動機構を含み、
前記走査方向指示部は、前記振動機構により形成され、
前記指示制御部は、前記振動機構の振動パターンにより前記走査すべき方向を指示する請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記指示制御部は、前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報に基づいて、前記超音波プローブと走査済み領域との間に隙間が生じている場合に、前記走査済み領域に近づける走査方向を特定する請求項1~10のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記指示制御部は、前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報に基づいて、走査済み領域との重なりを少なくする走査方向を特定する請求項1~11のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記指示制御部は、前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報に基づいて、前記境界認識部により認識された前記境界を通る走査方向を特定する請求項1~11のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記超音波画像と前記超音波プローブの位置情報とに基づいて、前記超音波プローブが被検体の体表から離れることにより、前記超音波画像により描出されていない部分を識別して前記モニタに表示する不描出部分抽出部を備える請求項1~13のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成し、
前記超音波プローブに取り付けられた位置センサにより前記超音波プローブの位置情報を取得し、
前記超音波画像を解析することにより、前記被検体の正常部と前記異常部との境界を認識し、
取得された前記超音波プローブの位置情報と認識された前記境界とに基づいて前記超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された前記走査すべき方向をユーザに指示し、
前記異常部に対して互いに直交する2方向のうち一方の方向に前記超音波プローブを走査する際に、前記異常部の両側の境界が認識された場合、前記2方向のうち他方の方向の走査に移行する超音波診断装置の制御方法。
【請求項16】
超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成し、
前記超音波プローブに取り付けられた位置センサにより前記超音波プローブの位置情報を取得し、
前記超音波画像を解析することにより、前記被検体の正常部と前記異常部との境界を認識し、
認識された前記境界に基づいて前記被検体の正常部と前記異常部との残りの境界を推定し、
取得された前記超音波プローブの位置情報と、推定された前記残りの境界とに基づいて前記超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された前記走査すべき方向をユーザに指示する超音波診断装置の制御方法。
【請求項17】
超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成し、
前記超音波プローブに取り付けられた位置センサにより前記超音波プローブの位置情報を取得し、
前記超音波画像を解析することにより、前記被検体の正常部と前記異常部との境界を認識し、
取得された前記超音波プローブの位置情報と認識された前記境界とに基づいて前記超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された前記走査すべき方向をユーザに指示し、
前記超音波画像を前記位置センサにより取得された前記超音波プローブの位置情報に対応させてメモリに保存し、
前記超音波プローブの軌跡を算出して表示し、
表示された前記軌跡上の任意の位置が前記ユーザにより指定されると、前記任意の位置に対応する前記超音波画像が前記メモリから読み出されて表示される超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の異常部を観察するための超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの超音波診断を支援することができる超音波診断装置が開発されている。例えば、特許文献1には、被検体の部位において超音波プローブによりスキャンが行われた領域の位置情報を記憶し、まだ検査されていない領域を表示することにより、ユーザの超音波診断を支援する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波診断装置を用いて被検体内に生じた褥瘡および静脈炎の一種である浮腫等の異常部に対する検査が行われることがある。このような異常部は、一般的に、被検体内において3次元的な広がりを有しているため、ユーザが一見しただけでは、どの範囲まで異常部が広がっているか判断することが難しい。そのため、例えば特許文献1に開示されている技術を用いたとしても、異常部と正常部との境界を把握することが難しく、既に走査された領域を何度も走査してしまう、異常部が広がっている領域をくまなく走査できない、異常部だけではなく正常部についても入念に検査してしまう等、異常部の検査が十分に且つ効率的に行われないことがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであり、異常部を十分に且つ効率的に検査することができる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の超音波診断装置は、超音波プローブと、超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成する画像生成部と、超音波画像を表示するモニタと、超音波プローブに取り付けられ且つ超音波プローブの位置情報を取得する位置センサと、超音波プローブの走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部と、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と異常部との境界を認識する境界認識部と、位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報と境界認識部により認識された境界とに基づいて超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された走査すべき方向を走査方向指示部によりユーザに指示する指示制御部とを備え、異常部に対して互いに直交する2方向のうち一方の方向に超音波プローブを走査する際に、境界認識部により異常部の両側の境界が認識された場合、指示制御部が、2方向のうち他方の方向の走査に移行することを走査方向指示部によりユーザに指示することを特徴とする。
【0007】
この場合に、指示制御部は、境界認識部により認識された境界に基づいて、被検体の正常部と異常部との残りの境界を推定し、推定された残りの境界に基づいて、走査すべき方向を特定できる。
また、超音波診断装置は、超音波画像を位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報に対応させて保存するメモリと、超音波プローブの走査の軌跡を算出してモニタに表示する軌跡算出部とを備えることができ、モニタに表示された軌跡上の任意の位置がユーザにより指定されると、任意の位置に対応する超音波画像がメモリから読み出されてモニタに表示されてもよい。
【0008】
本発明に係る第2の超音波診断装置は、超音波プローブと、超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成する画像生成部と、超音波画像を表示するモニタと、超音波プローブに取り付けられ且つ超音波プローブの位置情報を取得する位置センサと、超音波プローブの走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部と、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と異常部との境界を認識する境界認識部と、境界認識部により認識された境界に基づいて被検体の正常部と異常部との残りの境界を推定し、位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報と、推定された残りの境界とに基づいて超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された走査すべき方向を走査方向指示部によりユーザに指示する指示制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
この場合に、超音波診断装置は、超音波画像を位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報に対応させて保存するメモリと、超音波プローブの走査の軌跡を算出してモニタに表示する軌跡算出部とを備えることができ、モニタに表示された軌跡上の任意の位置がユーザにより指定されると、任意の位置に対応する超音波画像がメモリから読み出されてモニタに表示されてもよい。
【0010】
本発明に係る第3の超音波診断装置は、超音波プローブと、超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成する画像生成部と、超音波画像を表示するモニタと、超音波プローブに取り付けられ且つ超音波プローブの位置情報を取得する位置センサと、超音波プローブの走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部と、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と異常部との境界を認識する境界認識部と、位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報と境界認識部により認識された境界とに基づいて超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された走査すべき方向を走査方向指示部によりユーザに指示する指示制御部と、超音波画像を位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報に対応させて保存するメモリと、超音波プローブの走査の軌跡を算出してモニタに表示する軌跡算出部とを備え、モニタに表示された軌跡上の任意の位置がユーザにより指定されると、任意の位置に対応する超音波画像がメモリから読み出されてモニタに表示されることを特徴とする。
【0011】
走査方向指示部は、超音波プローブに取り付けられたLEDランプにより形成され、指示制御部は、LEDランプの発光色または明滅により走査すべき方向を指示できる。
また、走査方向指示部は、モニタにより形成されてもよく、指示制御部は、モニタに走査すべき方向を表示することもできる。
また、超音波プローブは振動機構を含んでもよく、走査方向指示部は、振動機構により形成され、指示制御部は、振動機構の振動パターンにより走査すべき方向を指示することもできる。
また、超音波プローブに接続されたタブレット端末を備えてもよく、タブレット端末は振動機構を含み、走査方向指示部は、振動機構により形成され、指示制御部は、振動機構の振動パターンにより走査すべき方向を指示することもできる。
【0012】
指示制御部は、位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報に基づいて、超音波プローブと走査済み領域との間に隙間が生じている場合に、走査済み領域に近づける走査方向を特定できる。
また、指示制御部は、位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報に基づいて、走査済み領域との重なりを少なくする走査方向を特定できる。
もしくは、指示制御部は、位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報に基づいて、境界認識部により認識された境界を通る走査方向を特定できる。
また、超音波診断装置は、超音波画像と超音波プローブの位置情報とに基づいて、超音波プローブが被検体の体表から離れることにより、超音波画像により描出されていない部分を識別してモニタに表示する不描出部分抽出部を備えることもできる。
【0013】
本発明に係る超音波診断装置の第1の制御方法は、超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成し、超音波プローブに取り付けられた位置センサにより超音波プローブの位置情報を取得し、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と異常部との境界を認識し、取得された超音波プローブの位置情報と認識された境界とに基づいて超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された走査すべき方向をユーザに指示し、異常部に対して互いに直交する2方向のうち一方の方向に超音波プローブを走査する際に、異常部の両側の境界が認識された場合、2方向のうち他方の方向の走査に移行することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る超音波診断装置の第2の制御方法は、超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成し、超音波プローブに取り付けられた位置センサにより超音波プローブの位置情報を取得し、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と異常部との境界を認識し、認識された境界に基づいて被検体の正常部と異常部との残りの境界を推定し、取得された超音波プローブの位置情報と、推定された残りの境界とに基づいて超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された走査すべき方向をユーザに指示することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る超音波診断装置の第3の制御方法は、超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成し、超音波プローブに取り付けられた位置センサにより超音波プローブの位置情報を取得し、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と異常部との境界を認識し、取得された超音波プローブの位置情報と認識された境界とに基づいて超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された走査すべき方向をユーザに指示し、超音波画像を位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報に対応させてメモリに保存し、超音波プローブの軌跡を算出して表示し、表示された軌跡上の任意の位置がユーザにより指定されると、任意の位置に対応する超音波画像がメモリから読み出されて表示されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、超音波診断装置が、超音波プローブと、超音波プローブを用いて被検体の異常部に対して超音波ビームの走査を行うことにより超音波画像を生成する画像生成部と、超音波画像を表示するモニタと、超音波プローブに取り付けられ且つ超音波プローブの位置情報を取得する位置センサと、超音波プローブの走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部と、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と異常部との境界を認識する境界認識部と、位置センサにより取得された超音波プローブの位置情報と境界認識部により認識された境界とに基づいて超音波プローブを走査すべき方向を特定し且つ特定された走査すべき方向を走査方向指示部によりユーザに指示する指示制御部とを備え、異常部に対して互いに直交する2方向のうち一方の方向に超音波プローブを走査する際に、境界認識部により異常部の両側の境界が認識された場合、指示制御部が、2方向のうち他方の方向の走査に移行することを走査方向指示部によりユーザに指示するため、異常部を十分に且つ効率的に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における送受信回路の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1における超音波プローブのLEDランプの例を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における画像生成部の内部構成を示すブロック図である。
【
図6】Cobblestone-likeパターンを模式的に示す図である。
【
図7】Cloud-likeパターンを模式的に示す図である。
【
図8】液体の貯留が認められるパターンを模式的に示す図である。
【
図9】異常部に対する超音波プローブの1回の走査の軌跡を模式的に示す図である。
【
図10】異常部に対する超音波プローブの2回の走査の軌跡を模式的に示す図である。
【
図11】実施の形態1に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】異常部に対する超音波プローブの3回の走査の軌跡を模式的に示す図である。
【
図13】異常部に対する超音波プローブの4回の走査の軌跡を模式的に示す図である。
【
図14】実施の形態1における超音波プローブのLEDランプの他の例を模式的に示す図である。
【
図15】LEDランプの点滅例を模式的に示す図である。
【
図16】実施の形態2に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図17】実施の形態2においてモニタに表示されるユーザへの指示の例を模式的に示す図である。
【
図18】異常部における未走査部分を通る走査ラインを模式的に示す図である。
【
図19】実施の形態3に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図20】実施の形態3の変形例に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図21】実施の形態4に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図22】実施の形態4における不描出部分の表示例を示す図である。
【
図23】実施の形態5に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0019】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置1の構成を示す。超音波診断装置1は、超音波プローブ2と診断装置本体3を備えている。超音波プローブ2と診断装置本体3は、無線通信により互いに接続されている。
【0020】
超音波プローブ2は、振動子アレイ11を備えており、振動子アレイ11に、送受信回路12およびプローブ側無線通信部13が順次接続されている。また、超音波プローブ2に、位置センサ14およびLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)ランプ15が取り付けられており、位置センサ14とLEDランプ15は、それぞれ、プローブ側無線通信部13に接続されている。また、送受信回路12とプローブ側無線通信部13は、プローブ制御部16に接続されている。
【0021】
診断装置本体3は、本体側無線通信部21を有しており、本体側無線通信部21に、画像生成部22、表示制御部23およびモニタ24が順次接続されている。また、診断装置本体3は、メモリ25を有しており、メモリ25にメモリ制御部26が接続されている。また、メモリ制御部26は、画像生成部22および表示制御部23に接続されている。また、画像生成部22に境界認識部27が接続され、境界認識部27に指示制御部28が接続されている。指示制御部28は、本体側無線通信部21に接続されている。
【0022】
また、本体側無線通信部21、画像生成部22、表示制御部23、メモリ制御部26、境界認識部27および指示制御部28に、本体制御部29が接続されている。また、本体制御部29に入力装置30が接続されている。
また、画像生成部22、表示制御部23、メモリ制御部26、境界認識部27、指示制御部28および本体制御部29により本体側プロセッサ31が構成されている。
【0023】
図1に示す超音波プローブ2の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の振動子を有している。これらの振動子は、それぞれ送受信回路12から供給される駆動信号にしたがって超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく信号を出力する。各振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0024】
送受信回路12は、プローブ制御部16による制御の下で、振動子アレイ11から超音波を送信し且つ振動子アレイ11により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する。送受信回路12は、
図2に示すように、振動子アレイ11に接続されるパルサ32と、振動子アレイ11から順次直列に接続される増幅部33、AD(Analog Digital)変換部34およびビームフォーマ35を有している。
【0025】
パルサ32は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、プローブ制御部16からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0026】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ2の振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して、電気信号である受信信号を発生させ、これらの受信信号を増幅部33に出力する。
【0027】
増幅部33は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をAD変換部34に送信する。AD変換部34は、増幅部33から送信された信号をデジタルの受信データに変換し、これらの受信データをビームフォーマ35に送信する。ビームフォーマ35は、プローブ制御部16からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、AD変換部34により変換された各受信データに対してそれぞれの遅延を与えて加算することにより、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、AD変換部34で変換された各受信データが整相加算され且つ超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が取得される。
【0028】
プローブ側無線通信部13は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含む回路等により構成されており、プローブ制御部16の制御の下で、診断装置本体3の本体側無線通信部21と無線通信を行う。この際に、プローブ側無線通信部13は、送受信回路12により生成された音線信号に基づいてキャリアを変調することにより音線信号を表す伝送信号を生成し、生成された伝送信号を、診断装置本体3の本体側無線通信部21に無線送信する。また、プローブ側無線通信部13は、位置センサ14により取得された超音波プローブ2の位置情報についても同様にして伝送信号も生成し、生成された伝送信号を本体側無線通信部21に無線送信する。
【0029】
キャリアの変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調)または16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation:16直角位相振幅変調)等が用いられる。
【0030】
位置センサ14は、超音波プローブ2の位置情報を検出するためのセンサである。位置センサ14は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサおよび磁気センサ等により構成される。
【0031】
LEDランプ15は、ユーザに見えるように超音波プローブ2に取り付けられ、超音波プローブ2の走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部として使用される。例えば、
図3に示すように、LEDランプ15は、右ランプ15Aと左ランプ15Bにより構成されており、右ランプ15Aと左ランプ15Bは、いずれも、超音波プローブ2のハウジングHの外側に発光部分が位置するように配置されている。この場合には、例えば、右ランプ15Aまたは左ランプ15Bが点灯することにより、超音波プローブ2を右ランプ15A側に移動させる指示または超音波プローブ2を左ランプ15B側に移動させる指示が可能である。
【0032】
プローブ制御部16は、予め記憶しているプログラムに基づいて超音波プローブ2の各部の制御を行う。
また、図示しないが、超音波プローブ2には、超音波プローブ2の各部に電力を供給するバッテリが内蔵されている。
【0033】
診断装置本体3の本体側無線通信部21は、プローブ側無線通信部13と同様に電波の送信および受信を行うためのアンテナを含む回路等により構成されており、本体制御部29の制御の下で、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部13と無線通信を行う。この際に、本体側無線通信部21は、プローブ側無線通信部13から無線送信された伝送信号を復調して音線信号および超音波プローブ2の位置情報を得る。本体側無線通信部21は、得られた音線信号を画像生成部22に送出し、得られた超音波プローブ2の位置情報を画像生成部22とメモリ制御部26を介してメモリ25に送出する。
【0034】
また、本体側無線通信部21は、指示制御部28から送出される指示情報に基づいてキャリアを変調することにより音線信号を表す伝送信号を生成し、生成された伝送信号をプローブ側無線通信部13に無線送信する。キャリアの変調方式としては、プローブ側無線通信部13により用いられる変調方式と同様に、例えば、ASK、PSK、QPSKまたは16QAM等が用いられる。
【0035】
画像生成部22は、
図4に示すように、信号処理部36、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)37および画像処理部38が順次直列に接続された構成を有している。
信号処理部36は、本体側無線通信部21から送出された音線信号に対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
【0036】
DSC37は、信号処理部36で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部38は、DSC37から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部23に送出すると共に、メモリ制御部26を介してメモリ25に送出する。以降は、画像処理部38により画像処理が施されたBモード画像信号を、単に、超音波画像と呼ぶ。
【0037】
メモリ25は、画像生成部22により診断毎に生成された一連の複数フレームの超音波画像と、超音波プローブ2の位置情報を保存するメモリである。メモリ25としては、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0038】
メモリ制御部26は、メモリ25へのデータの保存と読み出しを制御するものである。具体的には、メモリ制御部26は、画像生成部22により生成された超音波画像と、その超音波画像が撮影された際の超音波プローブ2の位置情報とを、互いに対応付けてメモリ25に保存する。また、メモリ制御部26は、本体制御部29の指示にしたがってメモリ25に保存された超音波画像と、超音波プローブ2の位置情報とを読み出し、読み出した超音波画像と位置情報とを表示制御部23に送出するか、画像生成部22を介して境界認識部27に送出する。
【0039】
境界認識部27は、画像生成部22により、異常部を含む断層面の超音波画像が生成された場合に、超音波画像を解析することにより、被検体の正常部と被検体の異常部との境界を認識する。ここで、本発明における異常部とは、例えば、いわゆる褥瘡が生じている箇所、褥瘡の周辺において浮腫が生じている箇所、静脈炎の一種である浮腫が生じている箇所およびそれらの周辺領域等を指す。
【0040】
超音波画像において異常部を表す構造の例としては、例えば、
図5に示す不明瞭な層構造A1、
図6に示すCobblestone-like(敷石状)パターンA2、
図7に示すCloud-like(雲状)パターンA3、および、
図8に示すような輝度が低く液体の貯留が認められるパターンA4が挙げられる。
図5に示す不明瞭な層構造A1は弱い浮腫に対応し、
図6に示すCobblestone-likeパターンA2は強い浮腫に対応し、
図7に示すCloud-likeパターンA3は壊死の疑いに対応し、
図8に示す貯留が認められるパターンA4は膿瘍、血腫または水腫の疑いに対応する。
【0041】
境界認識部27は、例えば
図5~
図8に示すような構造が存在する領域を被検体の異常部と認識し、正常部と異常部の境界を認識する。境界認識部27は、正常部と異常部の認識方法として、例えば、いわゆるU-net等のディープラーニングの方法、いわゆるテンプレートマッチングの方法、SVM(Support vector machine:サポートベクターマシン)およびadaboost(アダブースト)等を用いた機械学習手法、Csurka et al.: Visual Categorization with Bags of Keypoints, Proc. of ECCV Workshop on Statistical Learning in Computer Vision, pp.59-74 (2004)に記載されている機械学習手法等を用いることができる。
【0042】
例えば、
図9において点線の領域で示す軌跡C1のように、第1方向D1に沿って異常部Jを横断するように超音波プローブ2が走査された場合に、境界認識部27は、この走査で得られた複数フレームの超音波画像を解析することにより、異常部Jと正常部Nの境界B1およびB2を認識する。
【0043】
指示制御部28は、位置センサ14により取得された超音波プローブ2の現在の位置情報と、境界認識部27により認識された被検体の正常部Nと異常部Jの境界とに基づいて、超音波プローブ2の現在の位置に対して、超音波プローブ2を走査すべき方向を特定する。
【0044】
指示制御部28は、さらに、超音波プローブ2のLEDランプ15を用いて、特定された走査すべき方向をユーザに指示する。この際に、指示制御部28は、ユーザへの指示を表す指示情報を生成し、生成された指示情報を、本体側無線通信部21を介して超音波プローブ2のプローブ側無線通信部13に無線通信する。プローブ側無線通信部13により受信された指示情報は、LEDランプ15に送出され、LEDランプ15が指示情報にしたがって明滅する。
【0045】
例えば、
図9において点線の領域で示す軌跡C1のように、第1方向D1に沿って異常部Jを横断するように超音波プローブ2が走査された後に、第1方向D1と直交する第2方向D2に沿って超音波プローブ2が走査されることを考える。この場合に、指示制御部28は、1回目の走査で認識された異常部Jの境界B1またはB2を通るような方向を、2回目の走査において超音波プローブ2を走査すべき方向として特定する。
【0046】
例えば、2回目の走査において、
図10に示すように、位置P1に超音波プローブ2が配置された状態から超音波プローブ2が第2方向D2に沿って進行するように走査された場合に、指示制御部28は、境界B1を通るように、超音波プローブ2の進行方向を正面とした左方向を走査すべき方向として特定する。この場合に、指示制御部28は、超音波プローブ2を左方向に走査することを表す指示情報を生成して、生成された指示情報を、本体側無線通信部21と超音波プローブ2のプローブ側無線通信部13を介してLEDランプ15に送信する。
【0047】
これにより、指示制御部28は、例えば、
図3に示すように、LEDランプ15を構成する右ランプ15Aと左ランプ15Bのうち、超音波プローブ2の進行方向を正面とした左側に位置する右ランプ15Aを点灯させて、ユーザに超音波プローブ2を走査すべき方向を指示する。ユーザは、超音波プローブ2の向きを変更せずに、LEDランプ15の明滅にしたがって超音波プローブ2を移動させることにより、例えば、
図10に示す軌跡C2に沿って超音波プローブ2を走査することができる。
【0048】
本体制御部29は、予め記憶している制御プログラム等に基づいて、診断装置本体3の各部の制御を行う。
入力装置30は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。
【0049】
表示制御部23は、本体制御部29の制御の下、画像生成部22により生成された超音波画像等に対して所定の処理を施して、モニタ24に表示する。
モニタ24は、表示制御部23による制御の下、種々の表示を行う。モニタ24は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含む。
【0050】
なお、画像生成部22、表示制御部23、メモリ制御部26、境界認識部27、指示制御部28および本体制御部29を有する本体側プロセッサ31は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0051】
また、本体側プロセッサ31の画像生成部22、表示制御部23、メモリ制御部26、境界認識部27、指示制御部28および本体制御部29は、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成されることもできる。
【0052】
以下では、
図11に示すフローチャートを用いて、実施の形態1の超音波診断装置1の基本的な動作を詳細に説明する。
まず、ステップS1において、異常部Jの超音波画像を撮影するために、ユーザにより、被検体の体表上に超音波プローブ2が配置される。この状態から、
図9に示すように、第1方向D1に沿って超音波プローブ2が移動されながら超音波画像が撮影される。
【0053】
この際に、送受信回路12のパルサ32からの駆動信号にしたがって振動子アレイ11の複数の振動子から被検体内に超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各振動子から受信信号が送受信回路12の増幅部33に出力される。
【0054】
受信信号は、増幅部33で増幅され、AD変換部34でAD変換された後、ビームフォーマ35で整相加算されて、音線信号が生成される。この音線信号は、プローブ側無線通信部13から本体側無線通信部21に無線送信され、画像生成部22に送出される。音線信号に対して、画像生成部22の信号処理部36において包絡線検波処理が施されることでBモード画像信号となり、DSC37および画像処理部38を経て表示制御部23に出力され、表示制御部23の制御の下で超音波画像がモニタ24に表示される。
また、このようにして生成された超音波画像は、メモリ制御部26を介してメモリ25に保存される。
【0055】
次に、ステップS2において、位置センサ14により、超音波プローブ2の位置情報が取得される。取得された位置情報は、メモリ制御部26により、ステップS1で生成された超音波画像に対応付けられてメモリ25に保存される。
【0056】
続くステップS3において、
図9に示す第1方向D1に沿った超音波プローブ2の走査が終了したか否かが判定される。例えば、図示しないが、入力装置30を介してユーザにより、走査を終了する指示が入力された場合に、超音波プローブ2の走査が終了したと判定され、走査を終了する指示が入力されない場合に、超音波プローブ2の走査が続行されると判定される。
【0057】
ステップS3で第1方向D1に沿った超音波プローブ2の走査が終了されないで、続行されると判定された場合には、ステップS1に戻り、超音波画像が新たに生成されて、この超音波画像がメモリ25に保存され、続くステップS2で超音波プローブ2の位置情報が新たに取得されて、この位置情報が直前のステップS1で生成された超音波画像に対応付けられてメモリ25に保存される。このようにして、ステップS3で超音波プローブ2の走査が続行されると判定される限り、ステップS1~ステップS3の処理が繰り返される。
ステップS3で第1方向D1に沿った超音波プローブ2の走査が終了したと判定された場合には、ステップS4に進む。
【0058】
ステップS4において、境界認識部27は、ステップS1~ステップS3の繰り返しによりメモリ25に保存された複数フレームの超音波画像を解析することにより、
図9に示すように、被検体の正常部Nと異常部Jとの境界B1およびB2を認識する。
【0059】
続くステップS5において、超音波プローブ2の次の走査すなわち2回目の走査が行われるか否かが判定される。例えば、入力装置30を介してユーザにより、次の走査を行う指示が入力された場合に、次の走査が行われると判定され、次の走査を行わない指示が入力されると、次の走査を行わないと判定される。
ステップS5において、次の走査が行われると判定された場合にステップS6に進み、2回目の走査が開始される。
【0060】
ステップS6において、ユーザは、例えば
図10に示すように、第2方向D2に沿って超音波プローブ2を移動しながら走査をするために、被検体の体表上の位置P1に超音波プローブ2を配置する。この状態において、超音波プローブ2が移動されながら超音波画像が生成される。生成された超音波画像は、メモリ25に保存される。
【0061】
次に、ステップS7において、位置センサ14により、超音波プローブ2の位置情報が取得される。取得された超音波プローブ2の位置情報は、メモリ制御部26により、ステップS6で生成された超音波画像に対応付けられてメモリ25に保存される。
【0062】
続くステップS8において、指示制御部28は、ステップS4で認識された被検体の正常部Nと異常部Jとの境界B1、B2と、ステップS7で取得された超音波プローブ2の現在の位置情報とに基づいて、超音波プローブ2を走査すべき方向を特定する。
【0063】
ここで、1回目の走査の方向である第1方向D1とは異なる第2方向D2に沿って超音波プローブ2が走査される場合には、1回目の走査で認識された境界B1またはB2を通るように超音波プローブ2を走査することにより、1回目の走査で認識されなかった境界を通るように走査できる可能性が高くなると考えられる。そのため、指示制御部28は、1回目の走査で認識された2つの境界B1およびB2のうち、現在の超音波プローブ2の位置P1に近い方の境界B1を通るように、超音波プローブ2の進行方向である第2方向D2を正面とした左方向を、超音波プローブ2を走査すべき方向として特定する。
【0064】
次に、ステップS9において、指示制御部28は、特定された走査すべき方向を、超音波プローブ2に取り付けられたLEDランプ15の明滅によりユーザに指示する。今、超音波プローブ2の進行方向を正面とした左方向が、走査すべき方向として特定されているため、指示制御部28は、この左方向に超音波プローブ2を移動させることを表す指示情報を生成し、生成した指示情報を、本体側無線通信部21を介して超音波プローブ2のプローブ側無線通信部13に送信する。さらに、プローブ側無線通信部13に送信された指示情報は、LEDランプ15に送出される。
【0065】
これにより、指示制御部28は、例えば、
図3に示すように、LEDランプ15を構成する右ランプ15Aと左ランプ15Bのうち、超音波プローブ2の進行方向を正面とした左側に位置する右ランプ15Aを点灯させて、ユーザに超音波プローブ2を走査すべき方向を指示する。ユーザは、超音波プローブ2の向きを変更せずに、LEDランプ15の明滅にしたがって超音波プローブ2を移動させることにより、例えば、
図10に示す軌跡C2に沿って、ステップS4で認識された境界B1を通るように超音波プローブ2を走査することができる。
【0066】
このようにして、ユーザは、境界B1を通るように超音波プローブ2を走査できるため、異常部Jの未走査の領域を確実に走査して、異常部Jの検査の効率を向上することができる。
【0067】
ステップS10において、ステップS3と同様にして、2回目の走査が終了したか否かが判定される。
2回目の走査が終了せずに、続行されるとステップS10で判定された場合には、ステップS6に戻る。ステップS6で新たに超音波画像が生成されて、この超音波画像がメモリ25に保存され、続くステップS7で超音波プローブ2の位置情報が新たに取得されて、この位置情報が直前のステップS6で生成された超音波画像に対応付けられてメモリ25に保存される。
【0068】
さらに、ステップS8において、ステップS4で認識された被検体の正常部Nと異常部Jとの境界B1、B2と、ステップS7で新たに取得された超音波プローブ2の現在の位置情報とに基づいて、超音波プローブ2を走査すべき方向が新たに特定される。
続くステップS9において、LEDランプ15を用いて、ステップS8で新たに特定された走査すべき方向がユーザに指示される。
【0069】
このようにして、ステップS10において、2回目の走査が終了せずに続行されると判定されている限り、ステップS6~ステップS10の処理が繰り返される。
【0070】
なお、ステップS6~ステップS10が繰り返され、超音波プローブ2がユーザにより移動されることにより、ステップS8において、超音波プローブ2の進行方向すなわち第2方向D2が走査すべき方向として特定された場合には、ステップS9において、指示制御部28は、例えば、LEDランプ15の右ランプ15Aと左ランプ15Bをすべて消灯するか、すべて点灯することにより、走査すべき方向が第2方向D2であることをユーザに指示することができる。
【0071】
ステップS10において、2回目の走査が終了したと判定された場合には、ステップS4に戻る。
【0072】
ステップS4において、境界認識部27は、ステップS6~ステップS10の繰り返しによりメモリ25に保存された複数フレームの超音波画像を解析することにより、
図10に示す軌跡C2上に位置する、正常部Nと異常部Jとの境界を認識する。
続くステップS5において、次の走査すなわち3回目の走査が行われるか否かが判定される。ステップS5で次の走査が行われると判定された場合にステップS6に進み、3回目の走査が開始される。
【0073】
ステップS6において、ユーザは、例えば
図12に示すように、第1方向D1に沿って超音波プローブ2を移動しながら走査をするために、被検体の体表上の位置P2に超音波プローブ2を配置する。この状態において、超音波プローブ2が移動されながら超音波画像が生成される。生成された超音波画像は、メモリ25に保存される。
ステップS7において、位置センサ14により、超音波プローブ2の現在の位置情報が取得される。取得された位置情報は、ステップS6で生成された超音波画像に対応付けられてメモリ25に保存される。
【0074】
ステップS8において、指示制御部28は、1回目の走査の終了後と2回目の走査の終了後にそれぞれステップS4で認識された、正常部Nと異常部Jとの境界と、直前のステップS7で取得された超音波プローブ2の現在の位置情報とに基づいて、超音波プローブ2を走査すべき方向を特定する。
【0075】
ここで、現在の超音波プローブ2の位置P2は、1回目の走査の開始時に超音波プローブ2が配置された位置の近傍にあり、仮に、位置P2から第1方向D1に沿って真直ぐ走査されるとすると、1回目の走査の軌跡C1とほぼ同一の軌跡上を走査することになるため、検査としては、非効率的である。そのため、指示制御部28は、1回目の走査の軌跡C1との重なりを少なくする走査方向を、超音波プローブ2を走査すべき方向として特定する。
図12の例では、指示制御部28は、超音波プローブ2の進行方向である第1方向D1を正面とした左方向を、走査すべき方向として特定している。
【0076】
続くステップS9において、指示制御部28は、ステップS8で特定された走査すべき方向、すなわち、超音波プローブ2の進行方向である第1方向D1を正面とした左方向を、LEDランプ15の明滅により、ユーザに指示する。
これにより、ユーザは、超音波プローブ2の向きを変更せずに、LEDランプ15の明滅にしたがって超音波プローブ2を移動させることにより、例えば、
図12に示す軌跡C3に沿って超音波プローブ2を走査することができる。
【0077】
このようにして、ユーザは、既に走査された軌跡C1との重なりを少なくするように超音波プローブ2を走査することができるため、既に走査した箇所と同一の箇所を何度も走査してしまうことが防止され、異常部Jを十分に走査しながらも、検査の効率を向上させることができる。
【0078】
ステップS9の処理が完了すると、ステップS10に進み、3回目の走査が終了したか否かが判定される。3回目の走査が終了せず、続行されるとステップS10で判定された場合には、ステップS6に戻る。このようにして、3回目の走査が終了せず、続行されるとステップS10で判定される限り、ステップS6~ステップS10が繰り返される。
3回目の走査が終了したとステップS3で判定された場合には、ステップS4に戻る。
【0079】
ステップS4において、境界認識部27は、3回目の走査におけるステップS6~ステップS10の繰り返しによりメモリ25に保存された複数フレームの超音波画像を解析することにより、
図12に示す軌跡C3上に位置する、正常部Nと異常部Jとの境界を認識する。
続くステップS5において、次の走査すなわち4回目の走査が行われるか否かが判定される。ステップS5で次の走査が行われると判定された場合にステップS6に進み、4回目の走査が開始される。
【0080】
ステップS6において、ユーザは、例えば
図13に示すように、第2方向D2に沿って超音波プローブ2を移動しながら走査をするために、被検体の体表上の位置P3に超音波プローブ2を配置する。この状態において、超音波プローブ2が移動されながら超音波画像が生成される。生成された超音波画像は、メモリ25に保存される。
ステップS7において、位置センサ14により、超音波プローブ2の現在の位置情報が取得される。取得された位置情報は、ステップS6で生成された超音波画像に対応付けられてメモリ25に保存される。
【0081】
ステップS8において、指示制御部28は、1回目~3回目の走査の終了後にそれぞれステップS4で認識された、正常部Nと異常部Jとの境界と、直前のステップS7で取得された超音波プローブ2の現在の位置情報とに基づいて、正常部Nと異常部Jの既に認識された境界を通る走査方向を、超音波プローブ2を走査すべき方向を特定する。
図13の例では、指示制御部28は、超音波プローブ2の進行方向すなわち第2方向D2を正面とした右方向を、走査すべき方向として特定している。
【0082】
続くステップS9において、指示制御部28は、ステップS8で特定された走査すべき方向、すなわち、超音波プローブ2の進行方向である第2方向D2を正面とした右方向を、LEDランプ15の明滅により、ユーザに指示する。指示制御部28は、例えば、
図3に示す右ランプ15Aと左ランプ15Bのうち、超音波プローブ2の進行方向を正面とした右側に位置する左ランプ15Bを点灯することにより、この右方向に超音波プローブ2を移動することをユーザに指示する。
【0083】
これにより、ユーザは、超音波プローブ2の向きを変更せずに、LEDランプ15の明滅にしたがって超音波プローブ2を移動させることにより、例えば、
図13に示す軌跡C4に沿って超音波プローブ2を走査することができる。
【0084】
ステップS9の処理が完了すると、ステップS10に進み、4回目の走査が終了したか否かが判定される。4回目の走査が終了せず、続行されるとステップS10で判定された場合には、ステップS6に戻る。このようにして、4回目の走査が終了せず、続行されるとステップS10で判定される限り、ステップS6~ステップS10が繰り返される。
4回目の走査が終了したとステップS3で判定された場合には、ステップS4に戻る。
【0085】
ステップS4において、境界認識部27は、4回目の走査におけるステップS6~ステップS10の繰り返しによりメモリ25に保存された複数フレームの超音波画像を解析することにより、
図13に示す軌跡C4上に位置する、正常部Nと異常部Jとの境界を認識する。
【0086】
続くステップS5において、次の走査すなわち5回目の走査が行われるか否かが判定される。ステップS5で次の走査が行われると判定された場合にステップS6に進み、5回目の走査が開始される。
異常部Jの検査が十分に行われたとユーザが判断する等により、入力装置30を介してユーザにより、次の走査を行わない指示が入力されると、次の走査が行われないと判断される。その場合には、超音波診断装置1を用いて異常部Jを検査する動作が終了する。
【0087】
以上から、本発明の実施の形態1の超音波診断装置1によれば、異常部Jの未走査の領域を走査するように、ユーザによる超音波プローブ2の走査方向を誘導するため、異常部Jを十分に走査しながらも、検査の効率を向上させることができる。
【0088】
なお、実施の形態1では、画像生成部22は、診断装置本体3に備えられているが、診断装置本体3に備えられる代わりに、超音波プローブ2に備えられていてもよい。この場合に、画像生成部22で生成された超音波画像は、プローブ側無線通信部13から本体側無線通信部21に無線送信され、さらに、本体側無線通信部21から表示制御部23、メモリ制御部26および境界認識部27に送出される。
【0089】
また、LEDランプ15の例として、
図3に示すように、LEDランプ15が右ランプ15Aと左ランプ15Bにより構成されることが説明されているが、LEDランプ15の構成は、これに限定されない。
【0090】
例えば、
図14に示すように、LEDランプ15は、ハウジングHにおける超音波プローブ2の進行方向側の面に配置され、超音波プローブ2の進行方向を正面とした左右方向に複数の発光領域R1~R5を有する1つの光源から構成されていてもよい。
図14の例では、LEDランプ15は、5つの発光領域R1~R5を有している。この場合に、指示制御部28は、例えば
図15に示すように、超音波プローブ2の進行方向を正面とした右方向または左方向に沿って、5つの発光領域R1~R5を1つずつ順番に発光させていくことにより、走査すべき方向をユーザに指示することができる。
【0091】
また、走査すべき方向をユーザに指示する方法は、LEDランプ15の明滅に限定されない。例えば、LEDランプ15を複数の色の光源により構成し、指示制御部28が、LEDランプ15の発光色を変化させることにより、走査すべき方向をユーザに指示することもできる。
【0092】
また、第1方向D1に沿った超音波プローブ2の走査と第2方向D2に沿った超音波プローブ2の走査が交互に行われているが、超音波プローブ2の走査方法は、特にこれに限定されない。例えば、第1方向D1に沿った走査が終了した後に、次の走査として、第1方向D1に沿った走査が行われてもよく、第2方向D2に沿った走査が終了した後に、次の走査として、第2方向D2に沿った走査が行われてもよい。
【0093】
また、
図9に示すように、第1方向D1に沿った超音波プローブ2の1回の走査で、境界認識部27により、異常部Jの両側の境界B1およびB2の双方が認識された場合に、指示制御部28は、例えばLEDランプ15を一定時間点滅させる等により、第2方向D2に沿った走査に移行させることをユーザに指示することもできる。このように、一定の方向に沿って超音波プローブ2が走査され、異常部Jの両側の境界が認識された場合に、その一定の方向に対して直交する方向に沿った走査に移行させることにより、ユーザは、異常部Jの未走査の部分も含めた異常部Jの全体像を捉えやすくなり、より効率的に異常部Jの検査を行うことができる。
【0094】
また、指示制御部28は、境界認識部27により認識された境界に基づいて、被検体の正常部Nと異常部Jとの残りの境界すなわち未走査の境界を推定し、推定された残りの境界に基づいて、走査すべき方向を特定することもできる。この際に、指示制御部28は、例えば、超音波プローブ2が、推定された残りの境界に近づく方向を、走査すべき方向として特定することができる。これにより、超音波プローブ2が異常部Jの未走査の領域に誘導されるため、異常部Jを十分に走査しながらも、検査の効率を向上させることができる。
【0095】
また、指示制御部28は、位置センサ14により取得された超音波プローブ2の位置情報に基づいて、超音波プローブ2の現在の位置と走査済み領域との間に隙間が生じている場合に、超音波プローブ2を走査済み領域に近づける走査方向を、走査すべき方向として特定することもできる。これにより、未走査の領域が生じることを防止できるため、異常部Jを効率的に漏れなく走査することができる。
【0096】
また、ステップS1において超音波画像が生成され、ステップS2において超音波プローブ2の位置情報が取得されているが、超音波画像と超音波プローブ2の位置情報とが互いに対応してメモリ25に保存されるのであれば、ステップS2が行われてからステップS1が行われてもよく、ステップS1とステップS2が並列に行われてもよい。
【0097】
また、指示制御部28は、例えば、異常部Jのすべての境界が境界認識部27により認識された場合に、LEDランプ15用いてその旨をユーザに報知することができる。この際に、指示制御部28は、例えば、LEDランプ15を一定の点滅パターンで点滅させる等により、ユーザへの報知をすることができる。これにより、ユーザは、異常部Jを十分に走査できたことを把握することができるため、必要以上に超音波プローブ2の走査を行うことが防止され、より効率的に異常部Jの検査を行うことができる。
【0098】
実施の形態2
実施の形態1において、指示制御部28は、LEDランプ15を用いてユーザに超音波プローブ2の走査すべき方向を指示しているが、走査すべき方向を指示する方法は、これに限定されない。
【0099】
図16に、実施の形態2に係る超音波診断装置1Aの構成を示す。超音波診断装置1Aは、超音波プローブ2Aと診断装置本体3Aを有している。
【0100】
超音波プローブ2Aは、
図1に示す実施の形態1における超音波プローブ2において、LEDランプ15が取り除かれ、プローブ制御部16の代わりにプローブ制御部16Aを備えたものである。
診断装置本体3Aは、実施の形態1における診断装置本体3において、本体制御部29の代わりに本体制御部29Aを備え、指示制御部28が、本体側無線通信部21の代わりに表示制御部23に接続されたものである。
【0101】
超音波診断装置1Aでは、超音波プローブ2の走査すべき方向をユーザに指示するための走査方向指示部として、診断装置本体3Aのモニタ24が用いられる。
具体的には、指示制御部28は、位置センサ14により取得された超音波プローブ2Aの現在の位置情報と、境界認識部27により認識された、被検体の正常部Nと異常部Jとの境界に基づいて、超音波プローブ2Aの走査すべき方向を指示するための指示情報を生成し、生成された指示情報を表示制御部23に送出する。表示制御部23は、指示制御部28からの指示情報にしたがって、走査すべき方向をモニタ24に表示する。
【0102】
この際に、指示制御部28は、例えば
図17に示すように、モニタ24に表示されている超音波画像Uと一緒に、走査すべき方向をユーザに指示するための右側方向指示マークM1と左側方向指示マークM2を表示させる。この際に、指示制御部28は、例えば、走査すべき方向が、超音波プローブ2Aの進行方向を正面とした左側である場合には右側方向指示マークM1を強調して表示し、超音波プローブ2Aの進行方向を正面とした右側である場合には左側方向指示マークM2を強調して表示する。
【0103】
ここで、右側方向指示マークM1または左側方向指示マークM2を強調して表示するとは、右側方向指示マークM1または左側方向指示マークM2の表示色を変更すること、点滅させて表示すること等、右側方向指示マークM1または左側方向指示マークM2の表示態様を通常の表示態様に対して異ならせることである。
【0104】
以上のように、走査すべき方向をモニタ24に表示してユーザに指示する場合でも、実施の形態1においてLEDランプ15を用いてユーザに指示する場合と同様に、異常部Jの未走査の領域に超音波プローブ2Aの走査方向を走査すべき方向に誘導することができるため、異常部Jを十分に且つ効率的に検査することができる。
【0105】
なお、
図18に示すように、異常部Jの輪郭が途切れたような未走査部分Kがある場合に、指示制御部28は、境界認識部27により既に認識された境界に基づいてこの未走査部分Kを検出し、検出された未走査部分Kを通るように超音波プローブ2を走査すべき走査ラインLを特定してモニタ24に表示することもできる。
これにより、異常部Jの検査の漏れを防止し、検査の効率を向上させることができる。
【0106】
実施の形態3
超音波プローブ2を走査すべき方向は、例えば、超音波プローブ2を振動させることによってもユーザに指示されることができる。
図19に、実施の形態3に係る超音波診断装置1Bの構成を示す。超音波診断装置1Bは、
図1に示す実施の形態1の超音波診断装置1において、超音波プローブ2の代わりに超音波プローブ2Bを備えたものである。
【0107】
また、超音波プローブ2Bは、実施の形態1における超音波プローブ2において、LEDランプ15の代わりに振動機構39を備え、プローブ制御部16の代わりにプローブ制御部16Bを備えたものである。
【0108】
振動機構39は、小型のいわゆる振動モータ等により構成され、指示制御部28により生成された指示情報に基づいて超音波プローブ2Bをわずかに振動させるものである。
【0109】
指示制御部28は、例えば、超音波プローブ2Bの進行方向を正面とした左方向に超音波プローブ2Bを移動させることをユーザに示すために、振動機構39により、超音波プローブ2Bを一定時間内に1回だけ振動させ、超音波プローブ2Bの進行方向を正面とした右方向に超音波プローブ2Bを移動させることをユーザに示すために、振動機構39により、超音波プローブ2Bを一定時間内に2回連続で振動させることができる。このように、指示制御部28は、走査すべき方向に応じて定められた振動パターンで超音波プローブ2Bを振動させることにより、走査すべき方向をユーザに指示することができる。
【0110】
以上のように、走査すべき方向を、超音波プローブ2Bを振動させてユーザに指示する場合でも、実施の形態1においてLEDランプ15を用いてユーザに指示する場合と同様に、異常部Jの未走査の領域に超音波プローブ2Aの走査方向を走査すべき方向に誘導することができるため、異常部Jを十分に且つ効率的に検査することができる。
【0111】
なお、超音波プローブ2Bを振動させる代わりに、診断装置本体3を振動させることにより、走査すべき方向をユーザに指示することもできる。
図20に、実施の形態3の変形例に係る超音波診断装置1Cの構成を示す。超音波診断装置1Cは、超音波プローブ2Cと診断装置本体3Cを有している。
【0112】
超音波プローブ2Cは、
図1に示す実施の形態1の超音波プローブ2において、LEDランプ15が取り除かれ、プローブ制御部16の代わりにプローブ制御部16Cを備えたものである。
診断装置本体3Cは、実施の形態1の診断装置本体3において、振動機構40が追加され、本体制御部29の代わりに本体制御部29Cを備えたものである。また、本体側プロセッサ31の代わりに、本体制御部29Cを含む本体側プロセッサ31Cが構成されている。また、指示制御部28は、本体側無線通信部21に接続される代わりに、振動機構40に接続されている。
【0113】
振動機構40は、小型の振動モータ等により構成され、指示制御部28により生成された指示情報に基づいて診断装置本体3Bをわずかに振動させるものである。
【0114】
指示制御部28は、例えば、超音波プローブ2Bの進行方向を正面とした左方向に超音波プローブ2Bを移動させることをユーザに示すために、振動機構40により、診断装置本体3Bを一定時間内に1回だけ振動させ、超音波プローブ2Bの進行方向を正面とした右方向に超音波プローブ2Bを移動させることをユーザに示すために、振動機構40により、診断装置本体3Bを一定時間内に2回連続で振動させることができる。このように、指示制御部28は、走査すべき方向に応じて定められた振動パターンで診断装置本体3Bを振動させることにより、走査すべき方向をユーザに指示することができる。
【0115】
また、図示しないが、診断装置本体3Cに振動機構40が備えられているだけでなく、超音波プローブ2Cにも振動機構39が備えられていてもよい。この際に、指示制御部28は、例えば、走査すべき方向に応じて超音波プローブ2Cと診断装置本体3Cのいずれか一方を振動させることができる。
【0116】
指示制御部28は、超音波プローブ2Cまたは診断装置本体3Cの振動と走査すべき方向との対応関係を、例えば、超音波プローブ2Cまたは診断装置本体3Cをユーザの右手と左手のどちらで保持するかを表す機器保持情報により決定することができる。機器保持情報は、例えば、入力装置30を介してユーザにより入力されることができる。
【0117】
また、例えば、超音波プローブ2Cまたは診断装置本体3Cに、ユーザの指紋を読み取って、超音波プローブ2Cまたは診断装置本体3Cがユーザの右手と左手のどちらで保持されているかを認識する図示しない保持手認識部を備えることにより、指示制御部28は、保持手認識部の認識結果に基づいて、超音波プローブ2Cまたは診断装置本体3Cの振動と走査すべき方向との対応関係を決定することもできる。
【0118】
実施の形態4
異常部Jの検査中に、例えば、超音波プローブ2が被検体の体表から離れることにより、被検体の内部の断層面が超音波画像に描出されないことがある。この場合には、超音波画像により描出されていない部分をユーザに知らせることにより、検査の漏れを防止することができる。
【0119】
図21に、実施の形態4に係る超音波診断装置1Dの構成を示す。超音波診断装置1Dは、
図1に示す実施の形態1の超音波診断装置1において、診断装置本体3の代わりに診断装置本体3Dを備えたものである。また、本体側プロセッサ31の代わりに、本体制御部29Dと不描出部分抽出部41を含む本体側プロセッサ31Dが構成されている。
【0120】
診断装置本体3Dは、実施の形態1における診断装置本体3において、不描出部分抽出部41が追加され、本体制御部29の代わりに本体制御部29Dを備えたものである。
診断装置本体3Dにおいて、画像生成部22に不描出部分抽出部41が接続され、不描出部分抽出部41に、表示制御部23が接続されている。
【0121】
不描出部分抽出部41は、画像生成部22により生成された超音波画像Uと、位置センサ14により取得された超音波プローブ2の位置情報とに基づいて、超音波プローブ2が被検体の体表から離れることにより、超音波画像Uに描出されていない部分を識別して、識別した部分をモニタ24に表示するものである。
【0122】
この際に、不描出部分抽出部41は、画像生成部22により生成された複数フレームの超音波画像Uを解析して、被検体の内部の断層面が描出されていない超音波画像Uを特定し、その超音波画像Uに対応する超音波プローブ2の位置情報に基づいて、既に走査された被検体の体表上の領域のうち、被検体の断層面が超音波画像Uに描出されていない部分を識別することができる。また、不描出部分抽出部41は、例えば
図22に示すように、被検体の断層面が超音波画像Uに描出されていない不描出部分Fを、他の部分に対して強調してモニタ24に表示することができる。
【0123】
このように、実施の形態4に係る超音波診断装置1Dによれば、被検体の断層面が超音波画像Uに描出されていない不描出部分Fをモニタ24に表示するため、ユーザに、不描出部分Fの位置を把握させて、不描出部分Fの位置の再走査が必要か否かをユーザに判断させることができる。そのため、異常部Jの検査の漏れを防止しつつ、検査の効率を向上させることができる。
【0124】
なお、モニタ24に表示された不描出部分Fが、入力装置30を介してユーザにより選択された場合に、指示制御部28は、ユーザにより選択された不描出部分Fを通るように、超音波プローブ2の走査すべき方向を特定することができる。これにより、不描出部分Fの位置を確実に走査することができ、検査の漏れを防止することができる。
【0125】
実施の形態5
ユーザによる超音波プローブ2の走査の軌跡をモニタ24に表示させて、既に走査された領域をユーザに視覚的に把握させることもできる。
図23に、実施の形態5に係る超音波診断装置1Eの構成を示す。超音波診断装置1Eは、
図1に示す実施の形態1の超音波診断装置1において、診断装置本体3の代わりに診断装置本体3Eを備えたものである。
【0126】
診断装置本体3Eは、実施の形態1における診断装置本体3において、軌跡算出部42が追加され、本体制御部29の代わりに本体制御部29Eが備えられたものである。また、本体側プロセッサ31の代わりに、本体制御部29Eと軌跡算出部42を含む本体側プロセッサ31Eが構成されている。診断装置本体3Eにおいて、画像生成部22に軌跡算出部42が接続され、軌跡算出部42に表示制御部23が接続されている。
【0127】
軌跡算出部42は、例えば
図13に示すような超音波プローブ2の走査の軌跡C1~C4を算出して、算出された軌跡C1~C4をモニタ24に表示する。これにより、ユーザは、既に走査された被検体の体表上の領域を容易に把握しながら異常部Jの検査を行うことができる。
【0128】
また、モニタ24に表示された軌跡C1~C4上の任意の位置が、入力装置30を介してユーザにより指定された場合に、本体制御部29Eは、メモリ制御部26を制御することにより、ユーザに指定された位置に対応する超音波画像Uをメモリ25から読み出してモニタ24に表示させることができる。ユーザは、このようにしてモニタ24に表示された超音波画像Uを確認しながら異常部Jの検査を進めることができる。
【0129】
以上から、実施の形態5に係る超音波診断装置1Eによれば、超音波プローブ2の走査の軌跡C1~C4がモニタ24に表示され、ユーザに指定された軌跡C1~C4上の位置に対応する超音波画像Uがメモリ25から読み出されてモニタ24に表示されるため、ユーザは、検査の状況を容易に把握しながら効率的に検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0130】
1,1A,1B,1C,1D,1E 超音波診断装置、2,2A,2B,2C 超音波プローブ、3,3A,3C,3D,3E 診断装置本体、11 振動子アレイ、12 送受信回路、13 プローブ側無線通信部、14 位置センサ、15 LEDランプ、15A 右ランプ、15B 左ランプ、16,16A,16B,16C プローブ制御部、21 本体側無線通信部、22 画像生成部、23 表示制御部、24 モニタ、25 メモリ、26 メモリ制御部、27 境界認識部、28 指示制御部、29,29A,29C,29D,29E 本体制御部、30 入力装置、31,31A,31C,31D,31E 本体側プロセッサ、32 パルサ、33 増幅部、34 AD変換部、35 ビームフォーマ、36 信号処理部、37 DSC、38 画像処理部、39,40 振動機構、41 不描出部分抽出部、42 軌跡算出部、A1 不明瞭な層構造、A2 Cobblestone-likeパターン、A3 Cloud-likeパターン、A4 パターン、B1,B2 境界、C1~C4 軌跡、D1 第1方向、D2 第2方向、F 不描出部分、H ハウジング、J 異常部、L 走査ライン、M1 右側方向指示マーク、M2 左側方向指示マーク、N 正常部、P1~P3 位置、R1~R5 発光領域、U 超音波画像。