(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103798
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ノズルを構成する中栓及び点眼剤容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/18 20060101AFI20240725BHJP
B65D 53/02 20060101ALI20240725BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B65D47/18
B65D53/02
A61J1/05 313C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092988
(22)【出願日】2024-06-07
(62)【分割の表示】P 2020007831の分割
【原出願日】2020-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】田中 良到
(72)【発明者】
【氏名】金澤 麻子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
(57)【要約】
【課題】点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制しつつ、容器本体との間に隙間が生じにくい中栓及びこれを備える点眼剤容器を提供する。
【解決手段】容器本体1の口部2に装着されてノズルを構成する中栓10であって、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層からなる接液部10aと、口部2に接する外周部に設けられた緩衝部15とを有し、緩衝部15は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含まない材質からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されてノズルを構成する中栓であって、
環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層からなる接液部と、前記口部に接する外周部に設けられた緩衝部とを有し、前記緩衝部は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含まない材質からなることを特徴とする中栓。
【請求項2】
前記中栓は、前記口部の先端面に接触するフランジ部と、前記口部の内面に接触する脚部とを有し、前記緩衝部は、少なくとも前記脚部の外周面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中栓。
【請求項3】
前記中栓の前記口部に接する外周部は、前記緩衝部を介して前記口部の内面に接する部分よりも前記容器本体の収容部に近い側に、前記接液部が直接前記口部の内面に接触する部分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の中栓。
【請求項4】
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層が、COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)又はCOC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の中栓。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の中栓と、前記中栓が装着される口部を有する容器本体とを備えることを特徴とする点眼剤容器。
【請求項6】
前記容器本体は、少なくとも内容液に接する面に環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有することを特徴とする請求項5に記載の点眼剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを構成する中栓及びこれを備える点眼剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点眼剤を収容した点眼剤容器としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製容器が広く用いられている。特許文献1には、樹脂成形品からなる容器本体を備えた点眼剤容器を、所定の積層フィルムに密封包装することが記載されている。容器本体は、点眼剤の収容部と、収容部から突出したノズル部とを備え、ノズル部を目に向けて収容部を手指で押圧することにより、点眼剤容器から点眼剤を点眼することができるように構成されている。
【0003】
従来の点眼剤容器の構成樹脂において、ポリエチレン等は、安価であるが薬剤(有効成分等)が吸着しやすい欠点がある。包装袋等の包装容器において、内容成分の非吸着性に優れた樹脂として、環状オレフィン共重合体(コポリマー)が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-107322号公報
【特許文献2】国際公開第2003/043895号
【特許文献3】国際公開第2004/080370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
収容部における点眼剤の収着(吸着又は吸収)を抑制するには、点眼剤の有効成分を収着しにくい材料を採用する必要がある。しかし、本発明者らの検討によれば、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を中栓に用いるとき、上述したPE、PP、PET等の樹脂に比べて環状オレフィン共重合体(コポリマー)が硬いため、中栓と容器本体との間に隙間が生じて、この隙間から水蒸気、薬剤等の漏出又は流入の課題を有することが判明した。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制しつつ、容器本体との間に隙間が生じにくい中栓及びこれを備える点眼剤容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、容器本体の口部に装着されてノズルを構成する中栓であって、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層からなる接液部と、前記口部に接する外周部に設けられた緩衝部とを有することを特徴とする中栓を提供する。
【0008】
前記中栓は、前記口部の先端面に接触するフランジ部と、前記口部の内面に接触する脚部とを有し、前記緩衝部は、少なくとも前記脚部の外周面に設けられていてもよい。
前記中栓の前記口部に接する外周部は、前記緩衝部を介して前記口部の内面に接する部分よりも前記容器本体の収容部に近い側に、前記接液部が直接前記口部の内面に接触する部分を有してもよい。
前記緩衝部が、ポリエチレン樹脂、ゴム、エラストマーから選択される材料から構成されてもよい。
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層が、COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)又はCOC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の少なくとも1種を含んでもよい。
【0009】
また、本発明は、前記中栓と、前記中栓が装着される口部を有する容器本体とを備えることを特徴とする点眼剤容器を提供する。
前記容器本体は、少なくとも内容液に接する面に環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の中栓は、非収着性に優れた環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層からなる接液部と、口部に接する外周部に設けられた緩衝部とを有することにより、点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制しつつ、容器本体との間の隙間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の中栓を容器本体の口部に装着した例を示す断面図である。
【
図2】第2実施形態の中栓を容器本体の口部に装着した例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1に、第1実施形態の中栓10を容器本体1の口部2に装着した例を示す。第1実施形態の点眼剤容器は、ノズル部11を有する中栓10と、中栓10が装着される口部2を有する容器本体1とを備える滴下容器からなる。容器本体1は、口部2からノズル部11が突出する方向とは反対方向に、内容物が収容される収容部5を有する。内容物は、液体からなる内容物、又は液体を含む内容物である。中栓10を口部2に装着すると、中栓10がノズル部11により容器本体1のノズルを構成する。
図1では、一般的な静置状態として、ノズル部11が上方、収容部5が下方に配置されている。点眼剤容器を使用する際、ノズル部11が下向き又は斜め下向きに配置される。また、点眼剤容器を保管する際、ノズル部11を横向きにしてもよい。
【0014】
ノズル部11は、収容部5に通じるノズル孔12を有する。収容部5に収容された内容物が、ノズル孔12を通じて容器本体1の外部に滴下される。第1実施形態の中栓10は、口部2の先端面2aに接触するフランジ部13と、口部2の内面2bに接触する脚部14と、脚部14の内側においてノズル部11が収容部5に向けて延長された内筒部16を有する。ノズル孔12は、内筒部16の先端部16aまで連続して形成されている。脚部14の内面と内筒部16の外面との間には、空隙部17が形成されている。
【0015】
図2に、第2実施形態の中栓20を容器本体1の口部2に装着した例を示す。第2実施形態の中栓20は、脚部24の内側がノズル孔22の内面まで樹脂で充填され、第1実施形態の内筒部16及び空隙部17を有しないこと以外は、第1実施形態の中栓10と同様に構成されている。この場合、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂から脚部24を成形することにより、脚部24が肉厚でも、成形不良を抑制することができる。ノズル部21、フランジ部23等は、第1実施形態と同様に構成することができる。
【0016】
中栓10,20は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層からなる接液部10a,20aと、口部2に接する外周部に設けられた緩衝部15,25と、を有する。中栓10,20の接液部10a,20aは、内容物の液体に接触し得る箇所の少なくとも一部又は全部である。接液部10a,20aを構成し得る部位としては、ノズル孔12,22におけるノズル部11,21の内面、フランジ部13,23の内面、脚部14,24の内面及び外面、内筒部16の内面及び外面などが挙げられる。ここで、ノズル部11,21、脚部14,24、内筒部16の内面とは、ノズル孔12,22を中心とした径方向の内側の面である。また、フランジ部13,23の内面とは、ノズル部11,21が先端部11a,21aに向けて突出する側とは反対側の面である。これらの外面とは、それぞれの内面とは反対側の面である。中栓10,20のうち、緩衝部15,25以外の部分を中栓本体部10b,20bとして、全て環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂から構成してもよい。
【0017】
中栓10,20は、非収着性(非吸着性)に優れた樹脂として、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有する。環状オレフィン共重合体(コポリマー)としては、いわゆる一般的にCOP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)、COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)等が挙げられる。これにより、内容物が中栓10,20に収着されることを抑制することができる。
【0018】
COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)としては、例えば2種以上の環状オレフィンの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)は、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、メタセシス等による環状オレフィンの開環重合体、又はその水素添加物である。COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)は、COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)等に比べて脂環式構造を含有する比率が高く、非収着性(非吸着性)に優れる。
【0019】
COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)としては、例えば少なくとも1種の環状オレフィンと、少なくとも1種の非環状オレフィンとの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)は、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、又はその水素添加物である。
【0020】
環状オレフィン共重合体(コポリマー)の構成モノマーとして使用される環状オレフィンは、少なくとも1つの環構造を有する不飽和炭化水素(オレフィン)である。例えば、炭素原子数が3~20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカン及びその誘導体、炭素原子数が3~20のモノシクロアルケン及びその誘導体、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン(ノルボルネン系モノマー)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0021】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びその誘導体が挙げられる。ノルボルネン誘導体としては、アルキル基等の置換基を有する化合物、ノルボルナジエンのように不飽和結合を2以上有する化合物、3つ以上の環構造を有し、そのうち2つの環構造がノルボルネン骨格を構成する化合物が挙げられる。3つ以上の環構造を有するノルボルネン系モノマーとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセン(ジヒドロジシクロペンタジエン)や、ノルボルネンまたはジヒドロジシクロペンタジエンに1分子以上のシクロペンタジエンがディールス・アルダー反応により付加した化合物(例えばテトラシクロドデセン、ペンタシクロペンタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等)、これらの水素添加物、二重結合の位置が異なる異性体、アルキル置換体等が挙げられる。
【0022】
COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の構成モノマーとして使用される非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、3-デセン、3-ドデセン等のアルケン類が挙げられる。
【0023】
接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bを構成する樹脂成分は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)の少なくとも1種のみでもよく、環状オレフィン共重合体(コポリマー)と他の樹脂等との混合物でもよい。接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bにおける環状オレフィン共重合体(コポリマー)の割合は、例えば40~100重量%が挙げられる。接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bに配合し得る他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0024】
接液部10a,20aにおいて、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層(収着抑制層)の厚さは、特に限定されないが、50~3000μmの範囲が好ましい。収着抑制層の厚さの具体例としては、50μm、100μm、150μm、200μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、1000μm、1500μm、2000μm、2500μm、3000μm、あるいはこれらの中間の厚さを含む範囲が挙げられる。収着抑制層には上記範囲より厚い部分が存在してもよい。例えば中栓本体部10b,20bのように、接液部10a,20aより中栓10,20の内部まで収着抑制層を設ける場合は、3000μmより厚い部分が存在してもよい。接液部10a,20aの表面に対する収着抑制層の割合は、表面積比で80%以上が好ましく、90%程度、95%程度、100%程度などが挙げられる。
【0025】
緩衝部15,25は、少なくとも脚部14,24の外周面に設けられている。この脚部14,24の外周面は、中栓10,20の口部2に接する外周部の一例である。
図1では、緩衝部15が脚部14に形成された部分15aと、緩衝部15がフランジ部13に形成された部分15bとが連続して形成されている。
図2では、緩衝部25が脚部24に形成された部分25aを有するが、緩衝部25がフランジ部23には形成されておらず、フランジ部23が直接、口部2の先端面2aと接触している。中栓10,20の口部2に接する外周部の少なくとも一部に緩衝部15,25を設けることにより、接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bよりも柔軟な材質からなる緩衝部15,25が口部2に接するため、中栓10,20と容器本体1との間の隙間を抑制することができる。中栓10,20の口部2に接する外周部の全部に緩衝部15,25を設けてもよい。
【0026】
緩衝部15がフランジ部13に形成された部分15bは、少なくともフランジ部13が口部2の先端面2aに面する側に形成される。緩衝部15がフランジ部13に形成された部分15bの範囲は特に限定されず、フランジ部13の径方向における外周面まで緩衝部15を延長してもよく、さらには、フランジ部13からノズル部11が突出する側まで緩衝部15を延長することも可能である。
【0027】
緩衝部15,25は、ノズル孔12,22を中心とした周方向に連続して環状に形成されることが好ましい。中栓10,20の周方向の一部に緩衝部15,25を形成することも可能である。例えば所定の間隔を介して、複数の緩衝部15,25を周方向に沿って形成してもよい。あるいは、周方向の一部に緩衝部15,25を設けない箇所を局所的に配置し、それ以外の箇所に周方向でC字状に緩衝部15,25を設けてもよい。
【0028】
緩衝部15,25は、例えば、ポリエチレン樹脂、ゴム、エラストマー等から選択される樹脂等の材料から構成することができる。緩衝部15,25の厚さは、特に限定されないが、例えば50μm、100μm、150μm、200μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、1000μm、あるいはこれらの中間の厚さを含む範囲が挙げられる。なお、緩衝部15,25に内容物の液体が接触しない限りは、緩衝部15,25の厚さが上記数値より厚くても差し支えない。
【0029】
緩衝部15,25を構成するポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体(エチレンホモポリマー)、エチレンと炭素数が4個のα-オレフィン(1-ブテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C4-LLDPE)、エチレンと炭素数が6個のα-オレフィン(1-ヘキセン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C6-LLDPE)、エチレンと炭素数が8個のα-オレフィン(1-オクテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C8-LLDPE)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン―ビニルアルコール共重合体(EVOH)などが挙げられる。
【0030】
緩衝部15,25を構成するゴム、エラストマーとしては、例えば天然ゴム、合成ゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。緩衝部15,25を構成する樹脂成分は、ポリエチレン樹脂、ゴム、エラストマーの少なくとも1種のみでもよく、ポリエチレン樹脂、ゴム、エラストマーのうち2種以上の混合物、又は他の樹脂等との混合物でもよい。緩衝部15,25におけるポリエチレン樹脂又はゴム、エラストマーの割合は、例えば50~100重量%が挙げられる。緩衝部15,25に配合し得る他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0031】
接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bと緩衝部15,25との間に、他の層が設けられてもよい。樹脂層間の接着性に支障がない場合は、接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bと緩衝部15,25とが、直接接触するように積層されてもよい。接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bと緩衝部15,25との間に他の層を介在させる場合における他の層の厚さは、例えば150μm以下が好ましい。
【0032】
脚部14,24の外周面は、緩衝部15,25を介して口部2の内面2bに接する部分14b,24bよりも容器本体1の収容部5に近い側に、接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bが直接、口部2の内面2bに接触する部分14a,24aを有してもよい。この部分14a,24aにおいて接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bが直接、口部2の内面2bに接触することにより、内容物と緩衝部15,25との接触を抑制することができる。
【0033】
中栓10,20の口部2に接する外周部において、接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bが口部2の内面2bに接する部分14a,24aの面積(A)と、中栓10,20が緩衝部15,25を介して口部2の内面2bに接する部分の面積(B)との割合は、緩衝部15,25による緩衝の効果を高めるため、(A)/(B)の比が小さいことが好ましい。例えば、(A)/(B)が0.3以下、0.2以下、0.1以下、0.05程度、0.02程度、0.01程度などが挙げられる。緩衝部15,25が、中栓10,20の口部2に接する外周部と、接液部10a,20aとの境界部付近まで延長されてもよい。緩衝部15,25が、中栓10,20と口部2の内面との間に隙間ができる部分に接する場合、緩衝部15,25が前記隙間に接する幅は、短いことが好ましい。
【0034】
中栓10,20の製造は、中栓本体部10b,20bを成形した後に緩衝部15,25をヒートシール、接着などで接合してもよく、二色成形などを用いて中栓本体部10b,20b及び緩衝部15,25を同時に樹脂成形してもよい。また、中栓本体部10b,20bを成形した後に、中栓本体部10b,20bと金型との間にインサート成形で緩衝部15,25を樹脂成形してもよい。インサート成形の場合は、緩衝部15,25の成形中に中栓本体部10b,20bの形状が維持されることが好ましい。このため、緩衝部15,25の成形温度に比べて、中栓本体部10b,20bを構成する材料の融点(あるいは耐熱性等)が高いことが好ましい。中栓本体部10b,20bを金型で成形する場合、例えば
図2に示すように、金型に樹脂を注入するゲート部26を、例えばフランジ部23の端部付近に配置してもよい。フランジ部23の周方向で少なくとも2箇所以上にゲート部26を配置すると、樹脂の流れをより円滑にすることができる。
【0035】
容器本体1は、中栓10,20が装着される口部2と、収容部5を囲む胴部4とを有する。口部2と胴部4との間には、段階的に縮径する肩部3を有してもよい。少なくとも容器本体1は、少なくとも内容液に接する面に、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有することが好ましい。容器本体1に用いられる環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂は、上述した中栓10,20の接液部10a,20a又は中栓本体部10b,20bに用いられる環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂と同様の選択肢から適宜設計してもよいが、これらの樹脂が同一でもよく、異なる樹脂でもよい。
【0036】
容器本体1は、補強層、ガスバリア層、紫外線吸収層、酸素吸収層、印刷層等を有してもよい。容器本体1を構成する各層の積層方法としては、ドライラミネート、押出ラミネート、共押出、塗布等が挙げられ、各層の材料、組み合わせ等に応じて適宜選択することができる。容器本体1は、全体が無色透明でもよく、厚さ方向又は面方向の一部又は全部が着色されてもよい。容器本体1の成形法としては、特に限定されないが、例えばブロー成形等が挙げられる。容器本体1の容器種類としては、特に限定されないが、例えばボトル容器が挙げられる。
【0037】
点眼剤容器は、ノズル部11,21を保護するため、キャップCを有してもよい。キャップCは、中栓10,20のノズル部11,21又は容器本体1の口部2、肩部3、胴部4の少なくともいずれかに対して、開閉又は着脱可能に連結されることが好ましい。収容部5の容量は、特に限定されないが、例えば20ml以下であり、3ml、5ml、10ml、15ml、20ml等が挙げられる。
【0038】
点眼剤としては、水性点眼剤、油性点眼剤、用時溶解点眼剤、懸濁性点眼剤などが挙げられる。点眼剤は、有効成分以外の添加剤として、可溶化剤、安定化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、防腐剤、粘稠化剤などを含有してもよい。
点眼剤に用いられる有効成分の具体例としては、プロスタグランジン関連薬として、イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ビマトプロスト;非ステロイド性抗炎症薬として、ジクロフェナクナトリウム、プラノプロフェン、ブロムフェナクナトリウム水和物、ネパフェナク;ビタミンB製剤として、シアノコバラミン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム;抗アレルギー成分として、アシタザノラスト水和物、アンレキサノクス、イブジラスト、エピナスチン塩酸塩、オロパタジン塩酸塩、クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェンフマル酸塩、トラニラスト、ペミロラストカリウム、レボカバスチン塩酸塩;免疫抑制薬として、シクロスポリン、タクロリムス水和物;β遮断薬として、カルテオロール塩酸塩、チモロールマレイン酸塩、ニプラジロール、ベタキソロール塩酸塩、レボブノロール塩酸塩;α1遮断薬として、ブナゾシン塩酸塩;α2刺激薬として、ブリモニジン酒石酸塩;副交感神経刺激薬として、ピロカルピン塩酸塩;交感神経刺激薬として、ジピベフリン塩酸塩;コリンエステラーゼ阻害薬として、ジスチグミン臭化物;白内障治療薬として、グルタチオン、ピレノキシン;抗菌薬として、ガチフロキサシン水和物、ジベカシン硫酸塩、トスフロキサシントシル酸塩水和物、トブラマイシン、バンコマイシン塩酸塩、モキシフロキサシン塩酸塩、レボフロキサシン水和物、塩酸ロメフロキサシン、オフロキサシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン;β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬配合剤として、ドルゾラミド塩酸塩、ブリンゾラミド等が挙げられる。
【0039】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本実施形態の中栓を有する滴下容器は、点眼剤容器に限らず、他の内容物を収容する容器に適用することも可能である。例えば点鼻剤、点耳剤、その他、投与に際して薬液を患部に滴下する方式の薬剤または化粧水などの容器が挙げられる。
環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層において、環状オレフィン共重合体(コポリマー)に代えて、又は環状オレフィン共重合体(コポリマー)と共に、環状オレフィンの単独重合体、又はその水素添加物を配合することも可能である。
【実施例0040】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0041】
(中栓の作製)
中栓本体部の材質をCOP、緩衝部の材質をPEとし、外周面に環状の緩衝部を有する中栓を作製した。実施例1では、中栓本体部の脚部の内側に空隙部を介して内筒部を設けた。実施例2では、中栓本体部の脚部の内側がノズル孔まで樹脂で充填された構造とした。比較のため、比較例1では、緩衝部を省略して、PEで中栓を作製した。
【0042】
(残存率の測定)
直径24mm、高さ45mmの褐色ガラス瓶に中栓をそれぞれ1個と、内容液として株式会社資生堂の化粧水「リバイタル(登録商標)ローションEX I」を3ml入れ、アルミテープで封をした。中栓全体を内容液に浸漬させ、蓋にアルミテープを用いて褐色ガラス瓶の口を密封して、温度40℃、相対湿度75%の環境下で保管した。中栓を浸漬する前の内容液における酢酸トコフェロール(ビタミンE)の濃度(初期濃度)は、約477ppmであった。28日間保管した後の内容液における酢酸トコフェロール(ビタミンE)の濃度(浸漬後濃度)を測定した。初期濃度と浸漬後濃度とから、残存率を次の式1のように算出した。
(式1) 残存率(%)=(浸漬後濃度/初期濃度)×100(%)
【0043】
実施例1では、浸漬後濃度は約427ppm、残存率は約89.5%であった。
実施例2では、浸漬後濃度は約428ppm、残存率は約89.7%であった。
比較例1では、浸漬後濃度は約341ppm、残存率は約71.5%であった。
【0044】
(漏れ試験)
収容部の容量が6.9mlで、最内層が環状オレフィン樹脂からなる容器本体を準備した。この容器本体の口部に、それぞれ実施例1、2又は比較例1、2の中栓を装着した。なお、実施例1、2及び比較例1の中栓は、残存率の測定で用いたものと同じである。また、比較例2の中栓は、環状オレフィン樹脂で全体を作製した。
実施例1、2では、容器本体の口部において、中栓の緩衝部が環状オレフィン樹脂の最内層に接触するように構成されている。
【0045】
容器本体の収容部から底部を切り取って、後述する検査液を注入するための開口部を形成した。また、容器本体の口部に装着した中栓のノズル部をアルミフィルムでシールした。ノズル部が下方で容器本体の底部が上方を向くように逆さ向きに置いて、検査液(株式会社イチネンケミカルズ製、ヒートシールチェッカーJIP310、赤色染料入り)を開口部から注入した。逆さ向きのまま1週間静置した後で、白い布等(拭き取り具)を用いて容器本体の口部と中栓との接触部を拭き取り、検査液の赤色が白い拭き取り具の上に認識されるかどうかで、中身の漏れがあるかどうか判定した。
【0046】
実施例1、2及び比較例1では、容器本体の口部と中栓との接触部に漏れがなかった。
比較例2では、容器本体の口部と中栓との接触部に漏れが確認された。
【0047】
(まとめ)
容器本体の口部に接する外周部に緩衝部を設けた実施例1、2では、成分の残存率が高く、口部と中栓との接触部に漏れがなかった。
中栓全体をPEから構成した比較例1では、口部と中栓との接触部に漏れはなかったが、成分の残存率が低くなった。
中栓全体を環状オレフィン樹脂から構成した比較例2では、成分の残存率は実施例1、2と同様に高いと推測されるが、口部と中栓との接触部に中身の漏れが生じた。
以上の結果から、実施例1、2の中栓によれば、中栓への点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制しつつ、中栓と容器本体との間に隙間や漏れが生じにくいことが確認された。
C…キャップ、1…容器本体、2…口部、2a…口部の先端面、2b…口部の内面、3…肩部、4…胴部、5…収容部、10,20…中栓、10a,20a…接液部、10b,20b…中栓本体部、11,21…ノズル部、11a,21a…ノズル部の先端部、12,22…ノズル孔、13,23…フランジ部、14,24…脚部、14a,24a…脚部が直接口部に接触する部分、14b,24b…緩衝部を介して口部の内面に接する部分、15,25…緩衝部、15a,25a…緩衝部が脚部に形成された部分、15b…緩衝部がフランジ部に形成された部分、16…内筒部、16a…内筒部の先端部、17…空隙部、26…ゲート部。